特許第6292041号(P6292041)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6292041
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/06 20060101AFI20180305BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20180305BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20180305BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   H01L27/06 311B
   H01L27/04 H
   H01L27/088 331D
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-120220(P2014-120220)
(22)【出願日】2014年6月11日
(65)【公開番号】特開2016-1634(P2016-1634A)
(43)【公開日】2016年1月7日
【審査請求日】2017年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】308014341
【氏名又は名称】富士通セミコンダクター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105360
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 光治
(72)【発明者】
【氏名】福田 昌俊
【審査官】 市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−272552(JP,A)
【文献】 特開2001−291827(JP,A)
【文献】 特開2007−189204(JP,A)
【文献】 特開平9−293881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/06
H01L 21/822
H01L 27/04
H01L 27/088
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
P型のシリコン基板上の一部の領域にN型不純物を有する第1のNウェルと、
前記第1のNウェル上に配置され、N型不純物を有する第2のNウェル及び第3のNウェルと、
前記第1のNウェル上で、第2のNウェル及び前記第3のNウェルの間に配置され、P型不純物を有するPウェルと、
前記第2のNウェルに電気的に接続されるN型不純物注入領域と、前記シリコン基板に電気的に接続されるP型不純物注入領域とを有するツェナーダイオードと、
前記第3のNウェル上に形成されたトランジスタと、
を含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記シリコン基板の表面には、前記第2のNウェルと前記Pウェルを分離する素子分離絶縁膜を有し、前記ツェナーダイオードの前記N型不純物注入領域及び前記P型不純物注入領域の深さは、素子分離絶縁膜の深さより浅いことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
P型のシリコン基板にN型不純物を有する第1のNウェルを形成し、
前記第1のNウェルにN型不純物を有する第2のNウェルと第3のNウェルを形成し、
前記第1のNウェル上で、前記第1のNウェルの前記第2のNウェルと前記第3のNウェルの間にP型不純物を有するPウェルを形成し、
前記第3のNウェル上にトランジスタを形成し、
前記第2のNウェルにN型不純物注入領域を形成し、前記第1のNウェル外の領域に前記N型不純物注入領域に接続されるP型不純物注入領域を形成してツェナーダイオードを形成することを含む半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記シリコン基板の表面に、素子分離絶縁膜を形成した後、前記第2のNウェル及び前記Pウェルを形成し、
前記ツェナーダイオードの前記N型不純物注入領域は、前記第2のNウェルに不純物を素子分離絶縁膜の深さより浅く注入して形成することを特徴とする請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第3のNウェル上の前記トランジスタのソース/ドレイン領域の形成と同時に前記P型不純物注入領域を形成することを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多層配線構造を有する半導体装置においては、保護回路を設け、使用中に静電気等の外部からの過大な電荷が入力されたときにトランジスタのゲート絶縁膜の劣化を防止するように構成されている。保護回路としては、例えば、MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)のゲートに電気的に接続される保護ダイオードがあげられる。また、別の保護回路としては、ツェナーダイオードがあげられる。ツェナーダイオードは、保護対象とするトランジスタが形成されたNウェルと、Pウェルとの間に設けられる。ツェナーダイオードは、N型不純物を注入したN型不純物注入領域と、P型不純物を注入したP型不純物注入領域とを接合させた構成を有し、N型不純物注入領域がNウェルに接して配置され、P型不純物注入領域がPウェルに接して配置される。
【0003】
例えば、P型のシリコン基板にNウェルを形成し、Nウェル上のトランジスタを有する半導体装置においては、Nウェル上のトランジスタに静電気等に起因する電荷が流入すると、電荷はNウェル内に蓄積され、Nウェルの電位が上昇する。これは、Nウェルと、P型のシリコン基板の界面が逆方向のPN接合になるため、Nウェルからシリコン基板に電荷を放出し難くなるためである。ここで、Nウェルの電位が所定値以上になるとゲート絶縁膜がダメージを受けるが、そのような電位より低い電位でツェナーダイオードがブレークダウンし、Nウェルに蓄積されていた電荷が、ツェナーダイオードを通ってPウェルに流入し、Pウェルから基板に放出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−251446号公報
【特許文献2】特開平9−293881号公報
【特許文献3】特開2001−291827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、この種の半導体装置において、ツェナーダイオードが容易にブレークダウンすると、半導体装置の使用時にリーク電流が発生し易くなる。その一方で、多層の配線構造を有する半導体装置を製造する過程では、成膜プロセスやエッチングプロセスにおいて導電膜がアンテナとして機能することにより、絶縁膜等に電荷が蓄積されることがある。このような製造工程で蓄積される電荷もゲート絶縁膜の劣化の原因になり得るので、製造工程においても電荷を基板に放出させる必要がある。
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、製造工程における電荷の蓄積を防止すると共に、使用時におけるリーク電流の発生を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一観点によれば、P型のシリコン基板上の一部の領域にN型不純物を有する第1のNウェルと、前記第1のNウェル上に配置され、N型不純物を有する第2のNウェル及び第3のNウェルと、前記第1のNウェル上で、第2のNウェル及び前記第3のNウェルの間に配置され、P型不純物を有するPウェルと、前記第2のNウェルに電気的に接続されるN型不純物注入領域と、前記シリコン基板に電気的に接続されるP型不純物注入領域とを有するツェナーダイオードと、前記第3のNウェル上に形成されたトランジスタと、を含むことを特徴とする半導体装置が提供される。
【0007】
また、実施形態の別の観点によれば、P型のシリコン基板にN型不純物を有する第1のNウェルを形成し、前記第1のNウェルにN型不純物を有する第2のNウェルと第3のNウェルを形成し、前記第1のNウェル上で、前記第1のNウェルの前記第2のNウェルと前記第3のNウェルの間にP型不純物を有するPウェルを形成し、前記第3のNウェル上にトランジスタを形成し、前記第2のNウェルにN型不純物注入領域を形成し、前記第1のNウェル外の領域に前記N型不純物注入領域に接続されるP型不純物注入領域を形成してツェナーダイオードを形成することを含む半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
製造工程でウェルに蓄積された電荷がツェナーダイオードを介して放出されるので、ウェルの電位上昇を抑えることが可能になり、ゲート絶縁膜の劣化を防止できる。また、トランジスタとツェナーダイオードの間の抵抗が確保されることにより、使用時のリーク電流の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A図1Aは、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程の一例を示す断面図(その1)である。
図1B図1Bは、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程の一例を示す断面図(その2)である。
図1C図1Cは、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程の一例を示す断面図(その3)である。
図1D図1Dは、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程の一例を示す断面図(その4)である。
図1E図1Eは、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程の一例を示す断面図(その5)である。
図2図2は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の構造の一例を示す断面図である。
図3図3は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置のツェナーダイオードのレイアウトの一例を示すもので、(a)が平面図、(b)が(a)のA−A線に沿った断面図である。
図4図4は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の等価回路の一例を示す図である。
図5図5は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の変形例を示す断面図である。
図6A図6Aは、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の製造工程の一例を示す断面図(その1)である。
図6B図6Bは、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の製造工程の一例を示す断面図(その2)である。
図7図7は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の構造の一例を示す断面図である。
図8図8は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置のツェナーダイオードのレイアウトの一例を示すもので、(a)が平面図、(b)が(a)のB−B線に沿った断面図である。
図9図9は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の等価回路の一例を示す図である。
図10図10は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の目的及び利点は、請求の範囲に具体的に記載された構成要素及び組み合わせによって実現され達成される。
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、典型例及び説明のためのものであって、本発明を限定するためのものではない。
【0011】
まず、図1Aに示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
図1Aに示すように、P型のシリコン基板1に、素子分離絶縁膜2を複数形成する。素子分離絶縁膜2には、例えば、シャロートレンチアイソレーション(STI)を使用する。STIは、基板1の素子分離領域に溝を形成し、その中にシリコン酸化等の絶縁膜を埋め込むことにより形成される。これにより、基板1の表面に複数の素子領域が形成される。
【0012】
次いで、基板1の表面に不純物をイオン注入し、ウェル10,11,12を形成する。例えば、素子領域にドーパント不純物としてn型不純物、例えばリンを注入するとD(Deep)Nウェル10又はNウェル11が形成される。また、素子領域にドーパント不純物としてp型不純物、例えばボロンを注入すると、Pウェル12が形成される。DNウェル10は、基板1の深い領域に形成される。DNウェル10では、不純物が、例えば、1×1015cm−3〜1×1016cm−3の濃度になるように注入される。また、Nウェル11及びPウェル12は、シリコン基板1のDNウェル10より表面側の領域に形成され、不純物が、例えば、1×1016cm−3〜1×1017cm−3の濃度になるように注入される。
【0013】
図1Aに示す例では、最初に、シリコン基板1の一部の領域にN型不純物を注入し、第1のNウェルであるDNウェル10を形成する。この後、DNウェル10の浅い領域の一部と、DNウェル10以外のシリコン基板1の浅い領域の一部に、N型不純物を導入し、複数のNウェル11を同時に形成する。さらに、DNウェル10の浅い領域の一部と、DNウェル10以外のシリコン基板1の浅い領域の一部に、P型不純物を導入し、複数のPウェル12を同時に形成する。Nウェル11とPウェル12は、例えば、シリコン基板1の表面に沿って交互に配置される。また、シリコン基板1のDNウェル10が形成されていない領域において、Nウェル11と隣接する領域には、Pウェル12が形成され、ここから、シリコン基板1の表面に沿って、Nウェル11、Pウェル12が交互に順番に配置される。
【0014】
続いて、図1Bに示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
シリコン基板1上には、トランジスタ活性領域の表面を熱酸化させてゲート絶縁膜13を形成する。ゲート絶縁膜13は、熱酸化によるシリコン酸化膜であり、その厚さは例えば1〜10nmである。また、ゲート絶縁膜13は、誘電率の高い材料で形成しても良い。
【0015】
この後、基板1の全面に、非晶質又は多結晶のシリコン膜を形成する。シリコン膜の膜厚は、例えば約50nmとする。シリコン膜をパターニングすることにより、ゲート電極14が形成される。ここで、ゲート電極14は、金属材料から形成しても良い。ゲート電極14は、Nウェル11とPウェル12のそれぞれに例えば1つずつ形成される。なお、ゲート電極14は、Nウェル11とPウェル12のそれぞれに複数形成されてもよい。
【0016】
続いて、ゲート電極14をマスクにしたイオン注入により、ゲート電極14の両側の領域に不純物を注入して、エクステンションソース/ドレイン領域15を形成する。エクステンションソース/ドレイン領域15には、不純物が、例えば、1×1017cm−3〜1×1018cm−3の濃度になるように注入する。例えば、Nウェル11上では、P型不純物、例えばボロンを注入してエクステンションソース/ドレイン領域15を形成する。また、例えば、Pウェル12上では、N型不純物、例えばリンを注入してエクステンションソース/ドレイン領域15を形成する。なお、短チャネル効果を抑制するために、ソース及びドレイン領域を形成する不純物と反対導電型の不純物を注入し、各ウェル11,12にポケット領域を形成しても良い。
【0017】
この後に、ゲート電極14を含むシリコン基板1の上側全面に絶縁膜を形成する。絶縁膜としては、例えばCVD法により形成された酸化シリコン膜が用いられる。そして、絶縁膜をエッチバックしてゲート電極14の両側部分のみを残し、絶縁性サイドウォール16を形成する。
【0018】
ここで、絶縁性サイドウォール16とゲート電極14をマスクにしてゲート電極14の両側に、不純物を再びイオン注入し、各ゲート電極14の側方のシリコン基板1にエクステンションソース/ドレイン領域15の深い領域を構成するソース/ドレイン拡散層を形成する。これによって、シリコン基板1にゲート電極14を挟むようにソース/ドレイン領域17が形成される。ソース/ドレイン領域17には、不純物を例えば、1×1018cm−3〜1×1019cm−3の濃度になるように注入する。また、素子分離絶縁膜2の間の他の領域には、不純物が注入されることにより、不純物注入領域18が形成される。不純物注入領域18には、不純物を例えば1×1018cm−3〜1×1019cm−3の濃度になるように注入する。また、DNウェル10上のNウェル11と、DNウェル10外のPウェル12の境界部分には、不純物を、例えば1×1017cm−3〜1×1019cm−3の高濃度になるように注入し、ツェナーダイオード20を形成する。なお、ツェナーダイオード20の不純物注入深さは、ソース/ドレイン領域17や他の不純物注入領域18と略同じである。また、不純物注入濃度が同じ場合には、ソース/ドレイン領域17や他の不純物注入領域18の形成プロセスと同時にツェナーダイオード20を形成できる。また、不純物の注入後に熱処理を行う。この熱処理によって、各ソース/ドレイン領域17及び不純物注入領域18が活性化されて低抵抗化する。
【0019】
さらに、ゲート電極14を含むシリコン基板1の上側全面に不図示のマスクを形成する。マスクには、トランジスタの形成領域及び不純物注入領域18の上面のみに開口部を設ける。ツェナーダイオード20の上には開口部は形成しない。続いて、マスクを使用して金属膜をスパッタ法により形成する。金属膜は、例えば、コバルト膜やニッケル膜の高融点金属が好ましいが、比較的に融点が低い金属であっても良い。この後、金属膜を加熱してシリコンと反応させる。これにより、ゲート電極14の上面と、ソース/ドレイン領域17と、不純物注入領域18の上のそれぞれに、コバルトシリサイド層やニッケルシリサイド層といった金属シリサイド層31A,31Bが形成される。前記のように、ツェナーダイオード20上には金属膜が形成されないので、ツェナーダイオード20上には、シリサイド膜は形成されない。ここまでの工程で、シリコン基板1の活性領域ごとに、ゲート絶縁膜13,ゲート電極14、ソース/ドレイン領域17によって構成されるトランジスタ(半導体素子)が形成される。
【0020】
次に、図1Cに示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
最初に、トランジスタを含むシリコン基板1の全面に、第1層間絶縁膜42を形成する。第1層間絶縁膜42には、例えば、シリコン窒化膜と、シリコン酸化(SiO)膜との積層構造を採用できる。シリコン窒化膜は、例えばプラズマCVD法によって形成する。シリコン酸化膜は、例えばTEOS(tetra ethoxy silane)ガスを用いたプラズマCVD法によって例えば約450〜550nmの厚さに形成する。第1層間絶縁膜42の表面は、化学的機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)法を用いて研磨し、シリコン基板1の表面から第1層間絶縁膜42の表面までの膜厚を所定値、例えば約150nm〜250nmに調整する。
【0021】
さらに、第1層間絶縁膜22の上に不図示のレジスト膜を塗布した後、レジスト膜にフォトリソグラフィ技術によって開口部を形成する。開口部は、トランジスタのゲート電極14の上方や、ソース/ドレイン領域17の上方、不純物注入領域18の上方に複数形成する。続いて、レジスト膜をマスクにしたドライエッチングにより、第1層間絶縁膜42を加工し、コンタクトホール45,46を複数形成する。エッチング深さは、金属シリサイド層31A,31Bに到達するまでとする。これにより、ソース/ドレイン領域17の上に、コンタクトホール45が形成される。さらに、ゲート電極14の上に、コンタクトホール46が形成される。この後、不図示のレジスト膜をアッシング等により除去する。
【0022】
続いて、コンタクトホール45,46内に、導電性プラグ47,48を形成する。具体的には、最初に、コンタクトホール45,46の内面に、密着層をスパッタ法によって形成する。密着層は、例えば3nm〜7nmのチタン膜と、例えば3nm〜7nmの窒化チタン膜とを積層して形成する。さらに、密着膜の上に、タングステン膜をCVD法により成長させる。タングステン膜は、各コンタクトホール45,46内に埋め込まれると共に、第1層間絶縁膜42の上方に、例えば例えば150nm〜250nmの厚さに成長させる。この後、第1層間絶縁膜42上に成長した余分なタングステン膜及び密着膜をCMP(Chemical Mechanical Polishing)法による研磨で除去する。この結果、コンタクトホール45内には、ソース/ドレイン領域17や不純物注入領域18に電気的に接続される導電性プラグ47が形成される。また、コンタクトホール46内には、ゲート電極14に電気的に接続される導電性プラグ48が形成される。
【0023】
次に、図1Dに示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
最初に、第1層間絶縁膜42上に、シリコン酸化膜等の第2層間絶縁膜51を形成する。続いて、第2層間絶縁膜51を不図示のレジスト膜をマスクにしてドライエッチングして配線溝52,53を形成する。さらに、配線溝52,53を含む第2層間絶縁膜51の全面にTaN膜を例えばスパッタ法にて約8nmの厚さに形成する。この後、TaN膜上に、導電材としてCu膜をメッキ法によって形成する。Cu膜の厚さは、例えば350nm〜450nmとする。表面のCu膜と、TaN膜をCMP法による研磨で順番に除去する。この研磨によって、1層目の配線55,56が形成される。配線55,56は、導電性プラグ47,48と電気的に接続される。
【0024】
さらに、図1Eに示すように、前記と同様の工程で第3層間絶縁膜61内に2層目の配線65を形成する。また、前記と同様の工程で第4層間絶縁膜71内に3層目の配線75を形成する。以降は、必要な総数だけ配線構造を形成することにより、半導体装置81を作製する。また、多層の配線構造内には、必要に応じて他の素子も形成される。
【0025】
次に、前記の各プロセスによって製造される半導体装置81の構成について説明する。
図2に示すように、DNウェル10とDNウェル10以外の領域の境界には、高濃度のPN接合を有するツェナーダイオード20が設けられている。ツェナーダイオード20は、シリコン活性領域の表面に、N型及びP型の高濃度のソース/ドレイン注入層であるNSD(N-Source Drain)領域21及びPSD(P-Source Drain)領域22を隣接させた構成を有し、シリコン活性領域の表面にはシリサイド層を形成せずに第1層間絶縁膜42で覆われている。また、N型不純物注入領域であるNSD領域21と、P型不純物注入領域であるPSD領域22の深さは、隣接する素子分離絶縁膜2の深さより浅い。
【0026】
DNウェル10上には、ツェナーダイオード20側から順番に、Nウェル11A(第2のNウェル)、Pウェル12A、Nウェル11B(第3のNウェル)、Pウェル12Bが交互に配置されている。Nウェル11Aの側面は、DNウェル10の側面と一致しており、Nウェル11A上には、ツェナーダイオード20のNSD領域21が設けられている。Pウェル12A上には、ツェナーダイオード20側からシリコン基板1の表面に沿って順番に保護ダイオード83と、不純物注入領域84と、N型MOSFT88が配置されている。ツェナーダイオード20と、保護ダイオード83と、不純物注入領域84と、N型MOSFT88の間には、素子分離絶縁膜2が1つずつ配置されており、隣り合う素子が直接に接触することを防止している。また、Nウェル11B上には、シリコン基板1の表面に沿って、P型MOSFET89と、不純物注入領域85と、保護ダイオード83が配置されており、シリコン基板2の表面において、隣り合う素子は素子分離絶縁膜2によって分離されている。
【0027】
また、DNウェル10以外の領域には、シリコン基板1の表面に沿って、ツェナーダイオード20側から順番にPウェル12C、Nウェル11C、Pウェル12Dが交互に配置されている。Pウェル12C上には、ツェナーダイオード20のPSD領域22が設けられている。Pウェル12C上には、シリコン基板1の表面に沿って、ツェナーダイオード20側から順番に不純物注入領域84と、N型MOSFT88が配置されており、隣り合う素子は素子分離絶縁膜2によって分離されている。Nウェル11C上には、シリコン基板1の表面に沿って、P型MOSFET89と、不純物注入領域85が配置されており、シリコン基板2の表面において、隣り合う素子は素子分離絶縁膜2によって分離されている。
【0028】
MOSFET88,89のソース、ドレイン、ゲートの各領域と、保護ダイオード83のそれぞれには、シリサイド層31A,31Bを介して配線55,56,65,75が接続されている。一部の配線55,56は、MOSFET88,89のゲート電極14に接続される配線55,56から分岐して保護ダイオード83に接続されている。
【0029】
ここで、図3にツェナーダイオード20のレイアウトの一例を示す。図3(a)は、ツェナーダイオード20の近傍の領域を拡大した平面図であり、図3(b)は図3(a)のA−A線に沿った断面図である。
Nウェル11A以外は、Pウェル12A,12Cが配置されている。DNウェル10上で、かつNウェル11A上の領域の一部において、ツェナーダイオード20のNSD領域21が配置される。また、Nウェル11Aに隣接するPウェル12C上の領域の一部にPSD領域22が配置される。NSD領域21及びPSD領域22は、シリサイド化されていない領域であり、表面上には第1層間絶縁膜42が配置されている。
【0030】
次に、図2を主に参照してツェナーダイオード20の作用について説明する。
配線55,56,65,75の形成プロセスにおいて、RIE法やCVD法を採用すると、配線55,56,65,75や導電性プラグ47,48がアンテナとなってプラズマの電荷が流れ込むことがある。ここで、以上の各プロセスにおいて、チャージダメージの影響が懸念される工程は、ゲート絶縁膜13の形成後のプロセスであって、プラズマCVD装置、RIE装置、フォトレジストのアッシング(酸素プラズマによる灰化)装置、イオン注入装置、スパッタ装置、純水洗浄装置などがある。
【0031】
この場合、Pウェル12AからNSD領域21に向かう方向は、PN接合の順方向である。さらに、各Pウェル12A,12BからDNウェル10に向かう方向、及び各Pウェル12A〜12Dから各Nウェル11A〜11Cに向かう方向は、PN接合の順方向になる。
一方、NSD領域21からPウェルに向かう方向は、PN接合の逆方向である。また、各Nウェル11A〜11Cから各Pウェル12A〜12Dに向かう方向は、PN接合の逆方向になる。さらに、各Nウェル11A〜11Cからシリコン基板1に向かう方向と、DNウェル10からシリコン基板1に向かう方向は、PN接合の逆方向になる。
【0032】
従って、半導体装置81の製造過程において、プラスの電荷が配線55,56,65,75から各ウェル11B,12A,12Bに流れ込むと、プラス電荷は各ウェル11B,12A,12BからDNウェル10に流入する。これは、各ウェル12A,12BからDNウェル10に向かう方向がPN接合の順方向であるためである。一方、DNウェル10からシリコン基板1に向かう方向は、PN接合の逆方向なので、プラス電荷はDNウェル10からシリコン基板1から放出され難い。このために、プラス電荷は、DNウェル10に蓄積されて電位が上昇する。
【0033】
ここで、ツェナーダイオード20のPSD領域22は、Pウェル12Cを介してシリコン基板1に接続されている。NSD領域21は、Nウェル11Aを介してDNウェル10に接続されている。言い換えると、DNウェル10からNウェル11Aを通して表面のNSD領域21に接続されている。このために、DNウェル10の電位が所定の電圧、例えば、5Vを越えると、ツェナーダイオード20がONになり、DNウェル10に蓄積されたプラス電荷が、Nウェル11AからNSD領域21及びPSD領域22を経由してPウェル12Cに流れ、Pウェル12Cからシリコン基板1にプラスの電荷が放出される。これにより、DNウェル10の電位上昇が抑えられる。
【0034】
さらに、図4図2に示す半導体装置81の等価回路を模式的に示す。
各Nウェル11A〜11C、各Pウェル12A〜12D、DNウェル10の抵抗をそれぞれRNW、RPW、RDNWとする。また、PN接合をダイオードD1〜D16で示している。ダイオードD1、D2は、保護ダイオード83に相当する。ダイオードD3〜D6は、Pウェル12AとDNウェル10の界面に相当する。ダイオードD7は、Pウェル12AとNウェル11Aの界面に相当する。ダイオードD8は、Pウェル12AとNウェル11Bの界面に相当する。ダイオードD9は、Nウェル11BとPウェル12Bの界面に相当する。ダイオードD10〜D16は、DNウェル10とシリコン基板1との界面に相当する。ダイオードD17は、Pウェル12CとNウェル11Aの界面に相当する。
【0035】
配線アンテナ82から集められたプラス電荷は、各ウェル10〜12及びPN接合ダイオードを経由してDNウェル10に集まる。そして、DNウェル10とシリコン基板1との間のPN接合ダイオードD10〜D16の逆方向電流で放出される電荷量より、流入する電荷量が大きい場合は、DNウェル10の電位が上昇する。DNウェル10が所定の電圧を越えると、ツェナーダイオード20がONになり、プラス電荷がDNウェル10からNウェル11A、ツェナーダイオード20、Pウェル12Cを経由して、シリコン基板1に向けて放出される。これにより、DNウェル10の電位上昇が抑えられ、保護ダイオード83の機能が確保されると共に、MOSFET88,89のゲート絶縁膜13の劣化が防止される。
【0036】
一方、MOSFET89とツェナーダイオード20の間に、Nウェル11B、DNウェル11、Nウェル11Aが配置されており、電気的な距離が長くなっており、MOSFET89とツェナーダイオード20の間の抵抗が大きくなっている。このために、半導体装置81の使用時に、MOSFET89からツェナーダイオード20を通してシリコン基板1に流れるリーク電流が抑制される。また、ツェナーダイオード20の深さは、素子分離絶縁膜2の底部より浅いので、Pウェル12Aとツェナーダイオード20の間の抵抗が大きくなっている。このために、半導体装置81の使用時に、Pウェル12A上の素子からツェナーダイオード20を通してシリコン基板1に流れるリーク電流が抑制される。
【0037】
以上、説明したように、半導体装置81は、ツェナーダイオード20を有するNウェル11Aと、MOSFET89を有するNウェル11BとをDNウェル10を介して接続し、プロセス中にDNウェル10に蓄積された電荷を、ツェナーダイオード20を介してシリコン基板1に放出するように構成した。プロセス中にDNウェル10の電位上昇を抑えることが可能になり、MOSFET88,89のゲート絶縁膜13の劣化を防止できる。また、ツェナーダイオード20とMOSFET89を同じウェル上に形成した場合に比べて、抵抗値が高くなるので、リーク電流を抑制できる。また、ツェナーダイオード20の深さを素子分離絶縁膜2の底部より浅く形成したので、Pウェル12Aからツェナーダイオード20に直接に電荷が流れ難くなり、Pウェル12A上の素子にリーク電流が抑制される。
【0038】
次に、半導体装置81の変形例について説明する。
図5(a)に示すツェナーダイオード20Aは、NSD領域21AがPウェル12C上まで延びている。PSD領域22Aは、Pウェル12C上に配置されている。NSD領域21からPウェル12Cに向かう方向は、PN接合の逆方向なので、NSD領域21AからPウェル12Cにはプラス電荷は流れ難い。DNウェル10の電位が所定値を越えると、ツェナーダイオード20Aがブレークダウンし、プラス電荷がNウェル11Aからツェナーダイオード20を経由してPウェル12Cに流れ、シリコン基板1に放出される。
【0039】
図5(b)に示すツェナーダイオード20Bは、PSD領域22BがNウェル11A上まで延びている。NSD領域21Bは、Nウェル11A上に配置されている。Nウェル11AからPSD領域22Bに向かう方向は、PN接合の逆方向なので、Nウェル11AからPSD領域22Bにはプラス電荷は流れ難い。DNウェル10の電位が所定値を越えると、ツェナーダイオード20Bがブレークダウンし、プラス電荷がNウェル11Aからツェナーダイオード20Bを経由してPウェル12Cに流れ、シリコン基板1に放出される。
図5(c)に示す構成では、DNウェル10がPウェル12CとNウェル11Aの境界よりPウェル12A側にずれている。このような構成においても、前記と同様の効果が得られる。
【0040】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について図面を参照して説明する。第1の実施の形態と同じ構成要素には、同一の符号を付している。また、第1の実施の形態と重複する説明は省略する。
まず、図6Aに示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
図6Aに示すように、シリコン基板1の表面に素子分離絶縁膜2を形成する。続いて、シリコン基板1の表面に不純物を注入してNウェル11とPウェル12を交互に複数形成する。続いて、シリコン基板1上に、ゲート絶縁膜13及びゲート電極14を順番に形成する。さらに、エクステンションソース/ドレイン領域15をイオン注入により形成した後、ゲート電極14の両側部に絶縁性サイドウォール16を形成する。絶縁性サイドウォール16とゲート電極14をマスクにしてソース/ドレイン領域17を形成する。同様に、素子分離絶縁膜2の間の他の領域に不純物を注入することにより、不純物注入領域18を形成する。各領域における不純物の注入濃度は、第1の実施形態と同じである。また、このとき、Nウェル11とPウェル12の境界にツェナーダイオード20が形成される。不純物注入濃度が同じ場合には、ソース/ドレイン領域17や他の不純物注入領域18の形成プロセスと同時にツェナーダイオード20を形成できる。
【0041】
さらに、ゲート電極14上及びソース/ドレイン領域17上にスパッタ法により金属膜を堆積させ、加熱処理によって金属シリサイド層31A,31Bを形成する。これによって、トランジスタ(半導体素子)が形成される。
【0042】
以降は、第1の実施形態と同様に、多層の配線構造を形成する。これによって、図6Bに示すように、多層の配線構造と半導体素子を有する半導体装置91が形成される。
【0043】
次に、図7を参照して半導体装置91の構成について説明する。
シリコン基板1上のNウェル11AとPウェル12Cの界面には、高濃度のPN接合を有するツェナーダイオード20が設けられている。ツェナーダイオード20は、シリコン活性領域の表面に、N型及びP型の高濃度のソースドレイン注入層であるNSD領域21及びPSD領域22を隣接させた構成を有し、シリコン活性領域の表面にはシリサイド層を形成せずに第1層間絶縁膜42で覆われている。また、NSD領域21及びPSD領域22の深さは、隣接する素子分離絶縁膜2の深さより浅い。
【0044】
シリコン基板1には、ツェナーダイオード20側から順番に、Nウェル11A、Pウェル12Aが交互に配置されている。Nウェル11上には、シリコン基板1の表面に沿って、ツェナーダイオード20のNSD領域21と、不純物注入領域85と、2つのP型MOSFET89と、不純物注入領域85と、保護ダイオード83が順番に配置されている。シリコン基板2の表面において、各素子は、素子分離絶縁膜2によって隔離されている。
【0045】
また、シリコン基板1上には、ツェナーダイオード20側から順番にPウェル12C、Nウェル11C、Pウェル12Dが交互に配置されている。Pウェル12C上には、ツェナーダイオード20のPSD領域22が設けられている。Pウェル12C上には、シリコン基板1の表面に沿って、ツェナーダイオード20側から順番に不純物注入領域84と、N型MOSFT88が配置されている。Nウェル11C上には、シリコン基板1の表面に沿って、P型MOSFET89と、不純物注入領域85が配置されている。シリコン基板2の表面において、各素子は、素子分離絶縁膜2によって隔離されている。
【0046】
MOSFET88,89のソース、ドレイン、ゲートのそれぞれには、シリサイド層31A,31Bを介して配線55,56,65,66,75が接続されている。一部の配線55,56は、MOSFET88,89のゲート電極14に接続される配線55,56から分岐して保護ダイオード83に接続されている。
【0047】
ここで、図8にツェナーダイオード20のレイアウトの一例を示す。図8(a)は、ツェナーダイオード20の近傍の領域を拡大した平面図であり、図8(b)は図8(a)のB−B線に沿った断面図である。
Nウェル11A上の領域の一部にNSD領域21が配置されている。また、Nウェル11Aに隣接するPウェル12C上の領域の一部にPSD領域22が配置される。NSD領域21及びPSD領域22は、シリサイド化されていない領域であり、表面層に第1層間絶縁膜42が配置される。
【0048】
次に、図7を主に参照してツェナーダイオード20の作用について説明する。
ゲート絶縁膜13を形成した後の配線55,56,65,66,75の形成プロセスにおいて、配線55,56,65,66,67や導電性プラグ47がアンテナとなってプラズマの電荷が流れ込むことがある。この場合、Nウェル11AからNSD領域21に向かう方向もPN接合の順方向である。さらに、各Pウェル12A,12Bから各Nウェル11A〜11Cに向かう方向は、PN接合の順方向になる。
【0049】
一方、NSD領域21からPウェル12Cに向かう方向は、PN接合の逆方向である。また、各Nウェル11A,11Cから各Pウェル12A〜12Dに向かう方向は、PN接合の逆方向になる。各Nウェル11A,11Cからシリコン基板1に向かう方向は、PN接合の逆方向である。
【0050】
従って、半導体装置91の製造過程において、プラスの電荷が配線55,56,65,66,75からNウェル11Aに流れ込むと、Nウェル11Aにプラス電荷が蓄積される。これは、Nウェル11Aからシリコン基板1に向かう方向は、PN接合の逆方向になるからである。このために、Nウェル11Aは、プラス電荷の蓄積によって電位が上昇する。
ここで、ツェナーダイオード20のPSD領域22は、Pウェル12Cを介してシリコン基板1に接続されている。NSD領域21は、Nウェル11Aに接続されている。このために、Nウェル11Aの電位が所定の電圧、例えば、5Vを越えると、ツェナーダイオード20がONになり、Nウェル11Aに蓄積したプラス電荷がNSD領域21及びPSD領域22を経由してPウェル12Cからシリコン基板1に放出される。これにより、Nウェル11Aの電位上昇が抑えられる。
【0051】
さらに、図9に、図7に示す半導体装置91の等価回路を模式的に示す。
Nウェル11A、各Pウェル12A,12Cの抵抗をそれぞれRNW、RPWとする。また、PN接合をダイオードD2,D9,D17,D21〜D27で示している。ダイオードD2は、保護ダイオード83に相当する。ダイオードD9は、Nウェル11AとPウェル12Aの界面に相当する。ダイオードD17は、Pウェル12CとNウェル11Aの界面に相当する。ダイオード21〜D27は、Nウェル11Aとシリコン基板1の界面に相当する。
【0052】
配線アンテナ82から集められたプラス電荷は、Nウェル11Aに集まる。そして、Nウェル11Aとシリコン基板1との間のPN接合ダイオードD21〜D27の逆方向電流で放出される電荷量より、流入する電荷量が大きい場合は、Nウェル11Aの電位が上昇する。Nウェル11Aが所定の電圧を越えると、ツェナーダイオード20がONになり、プラス電荷が、Nウェル11Aから、ツェナーダイオード20、Pウェル12Cを経由して、シリコン基板1に向けて放出される。これにより、Nウェル11Aの電位上昇が抑えられ、保護ダイオード83の機能が確保されると共に、MOSFET89のゲート絶縁膜13の劣化が防止される。
【0053】
また、ツェナーダイオード20の深さは、素子分離絶縁膜2の底部より浅いので、MOSFET89とツェナーダイオード20の間の抵抗が大きくなっている。このために、半導体装置81の使用時に、MPSFET89の素子からツェナーダイオード20を通してシリコン基板1に流れるリーク電流が抑制される。
【0054】
以上、説明したように、半導体装置91は、同じNウェル11A上で素子分離絶縁膜2により分離された領域にMOSFET89とツェナーダイオード20を形成した。これにより、Nウェル11Aに蓄積された電荷を、ツェナーダイオード20を介してシリコン基板1に放出することが可能になり、プロセス中にNウェル11Aの電位上昇を抑えることが可能になる。従って、MOSFET89のゲート絶縁膜13の劣化を防止できる。ツェナーダイオード20の深さを素子分離絶縁膜2の底部より浅く形成したので、Nウェル11Aからツェナーダイオード20に直接に電荷が流れ難くなり、Nウェル11A上の素子のリーク電流が抑制される。
【0055】
次に、半導体装置91の変形例について説明する。
図10(a)に示すツェナーダイオード20Cは、NSD領域21CがPウェル12C上まで延びている。PSD領域22Cは、Pウェル12C上に配置されている。NSD領域21からPウェル12Cに向かう方向は、PN接合の逆方向なので、NSD領域21CからPウェル12Cにはプラス電荷は流れ難い。Nウェル11Aの電位が所定値を越えると、ツェナーダイオード20がブレークダウンし、プラス電荷がNウェル11Aからツェナーダイオード20を経由してPウェル12Cに流れ、シリコン基板1に放出される。
図10(b)に示すツェナーダイオード20Dは、PSD領域22DがNウェル11A上まで延びている。NSD領域21Dは、Nウェル11A上に配置されている。Nウェル11AからPSD領域22Cに向かう方向は、PN接合の逆方向なので、Nウェル11AからPSD領域22Cにはプラス電荷は流れ難い。Nウェル11Aの電位が所定値を越えると、ツェナーダイオード20がブレークダウンし、プラス電荷がNウェル11Aからツェナーダイオード20を経由してPウェル12Cに流れ、シリコン基板1に放出される。
【0056】
ここで挙げた全ての例及び条件的表現は、発明者が技術促進に貢献した発明及び概念を読者が理解するのを助けるためのものであり、ここで具体的に挙げたそのような例及び条件に限定することなく解釈するものであり、また、明細書におけるそのような例の編成は本発明の優劣を示すこととは関係ない。本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、それに対して種々の変更、置換及び変形を施すことができる。
【0057】
以下に、前記の実施の形態の特徴を付記する。
(付記1) P型のシリコン基板上の一部の領域にN型不純物を有する第1のNウェルと、前記第1のNウェル上に配置され、N型不純物を有する第2のNウェル及び前記第3のNウェルと、前記第1のNウェル上で、第2のNウェル及び第3のNウェルの間に配置され、P型不純物を有するPウェルと、前記第2のNウェルに電気的に接続されるN型不純物注入領域と、前記シリコン基板に電気的に接続されるP型不純物注入領域とを有するツェナーダイオードと、前記第3のNウェル上に形成されたトランジスタと、を含むことを特徴とする半導体装置。
(付記2) 前記シリコン基板の表面には、前記第2のNウェルと前記Pウェルを分離する素子分離絶縁膜を有し、前記ツェナーダイオードの前記N型不純物注入領域及び前記P型不純物注入領域の深さは、素子分離絶縁膜の深さより浅いことを特徴とする付記1に記載の半導体装置。
(付記3) P型のシリコン基板にN型不純物を有する第1のNウェルを形成し、前記第1のNウェルにN型不純物を有する第2のNウェルと第3のNウェルを形成し、
前記第1のNウェル上で、前記第1のNウェルの前記第2のNウェルと前記第3のNウェルの間にP型不純物を有するPウェルを形成し、前記第3のNウェル上にトランジスタを形成し、前記第2のNウェルにN型不純物注入領域を形成し、前記第1のNウェル外の領域に前記N型不純物注入領域に接続されるP型不純物注入領域を形成してツェナーダイオードを形成することを含む半導体装置の製造方法。
(付記4) 前記シリコン基板の表面に、素子分離絶縁膜を形成した後、前記第2のNウェル及び前記Pウェルを形成し、前記ツェナーダイオードの前記N型不純物注入領域は、前記第2のNウェルに不純物を素子分離絶縁膜の深さより浅く注入して形成することを特徴とする付記3に記載の半導体装置の製造方法。
(付記5) 前記第3のNウェル上の前記トランジスタのソース/ドレイン領域の形成と同時に前記P型不純物注入領域を形成することを特徴とする付記4に記載の半導体装置の製造方法。
(付記6) P型のシリコン基板上にN型不純物を有する複数のNウェルと、複数の前記Nウェルの間に配置され、P型不純物を有するPウェルと、前記Nウェル上に形成されたN型不純物注入領域と、前記シリコン基板に電気的に接続されるP型不純物注入領域とを有するツェナーダイオードと、前記ツェナーダイオードの前記N型不純物注入領域が形成された前記Nウェルに形成されたトランジスタと、前記Nウェル上に形成され、前記ツェナーダイオードと前記トランジスタの間に配置された素子分離絶縁膜と、を含むことを特徴とする半導体装置。
(付記7) 前記ツェナーダイオードの前記N型不純物注入領域及び前記P型不純物注入領域の深さは、素子分離絶縁膜の深さより浅いことを特徴とする付記6に記載の半導体装置。
(付記8) P型のシリコン基板に素子分離絶縁膜を形成し、前記シリコン基板の表面にN型不純物を有する複数のNウェルを形成し、前記シリコン基板の表面の複数の前記Nウェルの間にP型不純物を有するPウェルを形成し、前記Nウェル上にトランジスタを形成し、前記Nウェルにおいて前記トランジスタの形成位置から前記素子分離絶縁膜を介して離れた位置にN型不純物注入領域を形成し、前記N型不純物注入領域を形成した前記Nウェルに隣接する前記PウェルにP型不純物注入領域を形成してツェナーダイオードを形成することを含む半導体装置の製造方法。
(付記9) 前記シリコン基板の表面に、素子分離絶縁膜を形成した後、前記Nウェル及び前記Pウェルを形成し、前記ツェナーダイオードの前記N型不純物注入領域は、前記Nウェルに不純物を素子分離絶縁膜の深さより浅く注入して形成することを特徴とする付記8に記載の半導体装置の製造方法。
(付記10) 前記Pウェル上の前記トランジスタのソース/ドレイン領域の形成と同時に前記N型不純物注入領域を形成することを特徴とする付記9に記載の半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0058】
1 シリコン基板
2 素子分離絶縁膜
10 DNウェル(第1のNウェル)
11 Nウェル
11A Nウェル(第2のNウェル)
11B Nウェル(第3のNウェル)
12 Pウェル
17 ソース/ドレイン領域
20 ツェナーダイオード
21 NSD領域(N型不純物注入領域)
22 PSD領域(P型不純物注入領域)
81,91 半導体装置
88,89 MOSFET(トランジスタ)
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10