(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、感放射線性樹脂組成物、硬化膜及びその形成方法、並びに表示素子を含む。以下、これらについて説明する。
【0015】
<感放射線性樹脂組成物>
本発明の感放射線性樹脂組成物は、[A]重合体、[B]感放射線性化合物及び[C]ホウ素化合物を含有する。当該感放射線性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、[D]任意成分を含有してもよい。
【0016】
<[A]重合体>
[A]重合体は、ヒドロキシル基を有する構造単位(以下「構造単位(A1)」ともいう)及びカルボキシル基を有する構造単位(以下「構造単位(A2)」ともいう)のうちの少なくとも一方を含む。この[A]重合体は、熱架橋性基を有する構造単位(以下「構造単位(A3)」ともいう)を含んでいてもよく、他の構造単位を含んでいてもよい。[A]重合体は、アルカリ現像液に対して可溶性を有するアルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。
【0017】
[構造単位(A1)]
構造単位(A1)は、ヒドロキシル基を有する。この構造単位(A1)を与える化合物(以下「(A1)化合物」ともいう)としては、例えば水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル、下記式(6)で表されるフェノール性水酸基含有不飽和化合物等が挙げられる。(A1)化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
上記式(6)中、R
4は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。R
5〜R
9は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は炭素数1〜4のアルキル基である。Yは、単結合、−COO−、又は−CONH−である。pは、0〜3の整数である。但し、R
5〜R
9の少なくとも1つは、水酸基である。
【0020】
上記水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えばヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2〜10)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2〜10)モノ(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メタクリロキシエチルグリコサイド等が挙げられる。
【0021】
上記式(6)で表されるフェノール性水酸基含有不飽和化合物としては、Y及びpの定義により、例えば下記式(6−1)〜式(6−5)で表される化合物等が挙げられる。なお、下記式(6−1)〜式(6−5)におけるR
4〜R
9は上記式(6)と同義である。
【0023】
上記式(6−1)中、qは1〜3の整数である。
【0026】
上記式(6−3)中、rは1〜3の整数である。
【0029】
(A1)化合物としては、α−メチル−p−ヒドロキシスチレン、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシフェニルメタクリレート、o−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレンが好ましい。これらの(A1)化合物は、単独で使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
[A]重合体の合成時における(A1)化合物の使用割合としては、この[A]重合体の合成に使用する不飽和化合物([A]重合体の構造単位を与え得る化合物)の合計において、30質量%以下が好ましく、5質量以上25質量%以下がより好ましい。(A1)化合物の使用割合を上記範囲とすることによって、優れた耐溶媒性等を有する硬化膜を形成できる。
【0031】
[構造単位(A2)]
構造単位(A2)は、カルボキシル基を有する。この構造単位(A2)を与える化合物(以下「(A2)化合物」ともいう)としては、例えば不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸の無水物、多価カルボン酸のモノ〔(メタ)アクリロイルオキシアルキル〕エステル、両末端にカルボキシル基と水酸基とを有するポリマーのモノ(メタ)アクリレート、カルボキシル基を有する不飽和多環式化合物及びその無水物等が挙げられる。(A2)化合物は、単独で使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
不飽和モノカルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等が挙げられる。
【0033】
不飽和ジカルボン酸としては、例えばマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等が挙げられる。
【0034】
不飽和ジカルボン酸の無水物としては、例えば上記ジカルボン酸として例示した化合物の無水物等が挙げられる。
【0035】
多価カルボン酸のモノ〔(メタ)アクリロイルオキシアルキル〕エステルとしては、例えばコハク酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、フタル酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕等が挙げられる。
【0036】
両末端にカルボキシル基と水酸基とを有するポリマーのモノ(メタ)アクリレートとしては、例えばω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0037】
カルボキシル基を有する不飽和多環式化合物及びその無水物としては、例えば5−カルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジカルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−6−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−6−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジカルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン無水物等が挙げられる。
【0038】
(A2)化合物としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸無水物が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸が、共重合反応性、アルカリ水溶液に対する溶解性及び入手の容易性からより好ましい。
【0039】
[A]重合体の合成時における(A2)化合物の使用割合としては、この[A]重合体の合成に使用する不飽和化合物([A]重合体の構造単位を与え得る化合物)の合計において、30質量%以下が好ましく、5質量以上25質量%以下がより好ましい。(A2)化合物の使用割合を上記範囲とすることによって、[A]重合体のアルカリ水溶液に対する溶解性を最適化すると共に、放射線感度に優れる感放射線性樹脂組成物が得られる。
【0040】
[構造単位(A3)]
構造単位(A3)は、熱架橋性基を有する。この構造単位(A3)を与える化合物(以下「(A3)化合物」ともいう)としては、例えばオキシラニル基(1,2−エポキシ構造)を有する化合物、オキセタニル基(1,3−エポキシ構造)を有する化合物、下記式(3)で表される基を有する化合物、下記式(4)で表される基を有する化合物、下記式(5)で表される基を有する化合物が挙げられる。(A3)化合物は、単独で使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0041】
なお、「熱架橋性基」とは、加熱することでカルボキシル基等と架橋される基をいい、構造単位(A3)の熱架橋性基は、典型的には構造単位(A2)のカルボキシル基と架橋される。[A]重合体は、構造単位(A3)の熱架橋性基が構造単位(A2)のカルボキシ基と架橋されることで、耐溶剤性等に優れる硬化膜を形成することができる。
【0043】
上記式(3)、式(4)及び式(5)中、*は結合手を示す。
【0044】
オキシラニル基を有する不飽和化合物としては、例えばアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−メチルグリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、アクリル酸3,4−エポキシブチル、メタクリル酸3,4−エポキシブチル、アクリル酸6,7−エポキシヘプチル、メタクリル酸6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、メタクリル酸3,4−エポキシシクロへキシルメチル等が挙げられる。これらのうち、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−メチルグリシジル、メタクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、メタクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルが、共重合反応性及び硬化膜の耐溶媒性等の向上の観点から好ましい。
【0045】
オキセタニル基を有する不飽和化合物としては、例えば
3−(アクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−2−メチルオキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−3−エチルオキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−2−トリフルオロメチルオキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−2−ペンタフルオロエチルオキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−2−フェニルオキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−2,2−ジフルオロオキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−2,2,4−トリフルオロオキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−2,2,4,4−テトラフルオロオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)オキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−2−エチルオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−3−エチルオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−2−トリフルオロメチルオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−2−ペンタフルオロエチルオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−2−フェニルオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−2,2−ジフルオロオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−2,2,4−トリフルオロオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−2,2,4,4−テトラフルオロオキセタン等のアクリル酸エステル;
3−(メタクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2−メチルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−3−エチルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2−トリフルオロメチルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2−ペンタフルオロエチルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2−フェニルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2,2−ジフルオロオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2,2,4−トリフルオロオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2,2,4,4−テトラフルオロオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)オキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−エチルオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−3−エチルオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−トリフルオロメチルオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−ペンタフルオロエチルオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−フェニルオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2,2−ジフルオロオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2,2,4−トリフルオロオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2,2,4,4−テトラフルオロオキセタン等のメタクリル酸エステル等が挙げられる。
【0046】
(A3)化合物としては、オキシラニル基を有する不飽和化合物が好ましく、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルがより好ましい。
【0047】
[A]重合体の合成時における(A3)化合物の使用割合としては、この[A]重合体の合成に使用する不飽和化合物([A]重合体の構造単位を与え得る化合物)の合計において、65質量%以下が好ましく、25質量%以上60質量%以下がより好ましい。(A3)化合物の使用割合を上記範囲とすることで、優れた耐溶媒性等を有する硬化膜を形成することが可能となる。
【0048】
[他の構造単位]
[A]重合体は構造単位(A1)〜(A3)以外の他の構造単位を含んでいてもよい。他の構造単位としては、例えば(A1)〜(A3)化合物以外の不飽和化合物(以下、「(A4)化合物」ともいう)により与えられる構造単位(以下、「構造単位(A4)」ともいう)が挙げられる。(A4)化合物は、単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。
【0049】
(A4)化合物としては、例えばメタクリル酸鎖状アルキルエステル、メタクリル酸環状アルキルエステル、アクリル酸鎖状アルキルエステル、アクリル酸環状アルキルエステル、メタクリル酸アリールエステル、アクリル酸アリールエステル、不飽和ジカルボン酸ジエステル、ビシクロ不飽和化合物、マレイミド化合物、不飽和芳香族化合物、共役ジエン、テトラヒドロフラン骨格、フラン骨格、テトラヒドロピラン骨格、ピラン骨格、下記式(7)で表される骨格を含む不飽和化合物、その他の不飽和化合物が挙げられる。
【0051】
上記式(7)中、R
10は、水素原子又はメチル基である。sは1以上の整数である。
【0052】
メタクリル酸鎖状アルキルエステルとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸n−ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸n−ステアリル等が挙げられる。
【0053】
メタクリル酸環状アルキルエステルとしては、例えばメタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−メチルシクロヘキシル、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン−8−イル、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン−8−イルオキシエチル、メタクリル酸イソボロニルが挙げられる。
【0054】
アクリル酸鎖状アルキルエステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸n−ラウリル、アクリル酸トリデシル、アクリル酸n−ステアリルが挙げられる。
【0055】
アクリル酸環状アルキルエステルとしては、例えばシクロヘキシルアクリレート、2−メチルシクロヘキシルアクリレート、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン−8−イルアクリレート、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン−8−イルオキシエチルアクリレート、イソボロニルアクリレートが挙げられる。
【0056】
メタクリル酸アリールエステルとしては、例えばメタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジルが挙げられる。
【0057】
アクリル酸アリールエステルとしては、例えばフェニルアクリレート、ベンジルアクリレートが挙げられる。
【0058】
不飽和ジカルボン酸ジエステルとしては、例えばマレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチルが挙げられる。
【0059】
ビシクロ不飽和化合物としては、例えばビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジメトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジエトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−t−ブトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シクロヘキシルオキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−フェノキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(t−ブトキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(シクロヘキシルオキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(2’−ヒドロキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(ヒドロキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(2’−ヒドロキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシ−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシ−5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシメチル−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンが挙げられる。
【0060】
マレイミド化合物としては、例えばN−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−(4−ヒドロキシベンジル)マレイミド、N−スクシンイミジル−3−マレイミドベンゾエート、N−スクシンイミジル−4−マレイミドブチレート、N−スクシンイミジル−6−マレイミドカプロエート、N−スクシンイミジル−3−マレイミドプロピオネート、N−(9−アクリジニル)マレイミドが挙げられる。
【0061】
不飽和芳香族化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メトキシスチレンが挙げられる。
【0062】
共役ジエンとしては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンが挙げられる。
【0063】
テトラヒドロフラン骨格を含有する不飽和化合物としては、例えばテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイルオキシ−プロピオン酸テトラヒドロフルフリルエステル、3−(メタ)アクリロイルオキシテトラヒドロフラン−2−オンが挙げられる。
【0064】
フラン骨格を含有する不飽和化合物としては、例えば2−メチル−5−(3−フリル)−1−ペンテン−3−オン、フルフリル(メタ)アクリレート、1−フラン−2−ブチル−3−エン−2−オン、1−フラン−2−ブチル−3−メトキシ−3−エン−2−オン、6−(2−フリル)−2−メチル−1−ヘキセン−3−オン、6−フラン−2−イル−ヘキシ−1−エン−3−オン、アクリル酸−2−フラン−2−イル−1−メチル−エチルエステル、6−(2−フリル)−6−メチル−1−ヘプテン−3−オンが挙げられる。
【0065】
テトラヒドロピラン骨格を含有する不飽和化合物としては、例えば(テトラヒドロピラン−2−イル)メチルメタクリレート、2,6−ジメチル−8−(テトラヒドロピラン−2−イルオキシ)−オクト−1−エン−3−オン、2−メタクリル酸テトラヒドロピラン−2−イルエステル、1−(テトラヒドロピラン−2−オキシ)−ブチル−3−エン−2−オンが挙げられる。
【0066】
ピラン骨格を含有する不飽和化合物としては、例えば4−(1,4−ジオキサ−5−オキソ−6−ヘプテニル)−6−メチル−2−ピラン、4−(1,5−ジオキサ−6−オキソ−7−オクテニル)−6−メチル−2−ピランが挙げられる。
【0067】
その他の不飽和化合物としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニルが挙げられる。
【0068】
(A4)化合物としては、メタクリル酸鎖状アルキルエステル、メタクリル酸環状アルキルエステル、マレイミド化合物、テトラヒドロフラン骨格、フラン骨格、テトラヒドロピラン骨格、ピラン骨格、上記式(4)で表される骨格を有する不飽和化合物、不飽和芳香族化合物、又はアクリル酸環状アルキルエステルが好ましい。これらのうち、スチレン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ラウリル、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン−8−イル、p−メトキシスチレン、2−メチルシクロヘキシルアクリレート、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2〜10)モノ(メタ)アクリレート、又は3−(メタ)アクリロイルオキシテトラヒドロフラン−2−オンが、共重合反応性及びアルカリ水溶液に対する溶解性の点からより好ましい。
【0069】
[A]重合体の合成時における(A4)化合物の使用割合としては、この[A]重合体の合成に使用する不飽和化合物([A]重合体の構造単位を与え得る化合物)の合計において、通常75質量%以下であり、20質量%〜70質量%が好ましい。
【0070】
当該感放射線性樹脂組成物における[A]重合体の含有量としては、当該感放射線性樹脂組成物の全固形分質量中、通常40質量%以上90質量%以下であり、45質量%以上85質量%以下が好ましく、50質量%以上80質量%以下がより好ましい。[A]重合体の含有量が40質量%未満であると、当該感放射線性樹脂組成物における[B]感放射線性化合物の含有量が相対的に多くなるため、感放射線性が高くなりするおそれがある。一方、[A]重合体の含有量が80質量を超えると、当該感放射線性樹脂組成物における[B]感放射線性化合物の含有量が相対的に小さくなるため、当該感放射線性樹脂組成物に十分な感放射線性を付与することができないおそれがある。従って、[A]重合体の含有量が上記範囲外であると、微細なパターンの形成が困難となるおそれがある。
【0071】
<[A]重合体の合成方法>
[A]重合体は、例えば溶媒中で重合開始剤、必要に応じて分子量調製剤の存在下、(A1)化合物及び(A2)化合物のうちの少なくとも一方の化合物、必要に応じて(A3)化合物、(A4)化合物を共重合反応させることによって合成できる。
【0072】
(溶媒)
溶媒としては、例えばアルコール、グリコールエーテル、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート、ケトン、エステルが挙げられる。
【0073】
アルコールとしては、例えばベンジルアルコールが挙げられる。
【0074】
グリコールエーテルとしては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルが挙げられる。
【0075】
エチレングリコールアルキルエーテルアセテートとしては、例えばエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートが挙げられる。
【0076】
ジエチレングリコールモノアルキルエーテルとしては、例えばジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルが挙げられる。
【0077】
ジエチレングリコールジアルキルエーテルとしては、例えばジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルが挙げられる。
【0078】
ジプロピレングリコールジアルキルエーテルとしては、例えばジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルメチルエーテルが挙げられる。
【0079】
プロピレングリコールモノアルキルエーテルとしては、例えばプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテルが挙げられる。
【0080】
プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートとしては、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートが挙げられる。
【0081】
プロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネートとしては、例えばプロピレングリコールメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールエチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールプロピルエーテルプロピオネートが挙げられる。
【0082】
ケトンとしては、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、メチルイソアミルケトンが挙げられる。
【0083】
エステルとしては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸3−メトキシブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ヒドロキシ酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−エトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸ブチル、2−ブトキシプロピオン酸メチル、2−ブトキシプロピオン酸エチル、2−ブトキシプロピオン酸プロピル、2−ブトキシプロピオン酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸プロピル、3−エトキシプロピオン酸ブチル、3−プロポキシプロピオン酸メチルが挙げられる。
【0084】
これらの溶媒のなかでも、酢酸3−メトキシブチル、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、又はプロピレングリコールアルキルエーテルアセテートが好ましく、酢酸3−メトキシブチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートがより好ましい。
【0085】
(重合開始剤)
重合開始剤としては、一般的にラジカル重合開始剤として知られているものが使用できる。ラジカル重合開始剤としては、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1’−ビス−(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物、過酸化水素が挙げられる。ラジカル重合開始剤として過酸化物を用いる場合には、過酸化物を還元剤と共に用いてレドックス型開始剤としてもよい。
【0086】
(分子量調整剤)
分子量調整剤は、[A]重合体の重合反応において、[A]重合体の分子量を調整するものである。分子量調整剤としては、例えばクロロホルム、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素類;n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸等のメルカプタン類;ジメチルキサントゲンスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲン類;ターピノーレン、α−メチルスチレンダイマーが挙げられる。
【0087】
(重量平均分子量(Mw))
[A]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)としては、1,000〜30,000が好ましく、2,500〜15,000がより好ましい。[A]重合体の重量平均分子量(Mw)を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の放射線感度及び現像性を高めることができる。
【0088】
(分子量分布(Mw/Mn))
[A]重合体のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比である分子量分布(Mw/Mn)は、通常1以上5以下であり、1以上3以下が好ましく、1.5以上3.0以下がより好ましい。分子量分布(Mw/Mn)を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物は、放射線感度に優れ、硬化膜が耐溶媒性に優れたものとなる。なお、[A]重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、下記実施例において説明する条件のGPCにより測定した値である。
【0089】
<[B]感放射線性化合物>
[B]感放射線性化合物は、当該感放射線性樹脂組成物に感放射線性を付与するものである。この[B]感放射線性化合物としては、特に制限はないが、キノンジアジド化合物が好ましい。当該感放射線性樹脂組成物は、[B]感放射線性化合物としてキノンジアジド構化合物を含有することで、露光部が現像液で除去されるポジ型となる。また、当該感放射線性樹脂組成物は、[B]感放射線性化合物としてキノンジアジド化合物を含有することで、絶縁性(低誘電率)に優れる硬化膜を形成することができる。
【0090】
[B]感放射線性化合物としては、放射線の照射によりカルボン酸を発生する1,2−キノンジアジド化合物が好ましい。1,2−キノンジアジド化合物として、フェノール性化合物又はアルコール性化合物(以下、「母核」という。)と、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドの縮合物を用いることができる。
【0091】
[B]感放射線性化合物の母核としては、例えばトリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ペンタヒドロキシベンゾフェノン、ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、(ポリヒドロキシフェニル)アルカン、その他の母核を挙げられる。
【0092】
母核としては、具体的には、トリヒドロキシベンゾフェノンとして、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン等;テトラヒドロキシベンゾフェノンとして、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,3’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2’−テトラヒドロキシ−4’−メチルベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシ−3’−メトキシベンゾフェノン等;ペンタヒドロキシベンゾフェノンとして、2,3,4,2’,6’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン等;ヘキサヒドロキシベンゾフェノンとして、2,4,6,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、3,4,5,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン等;(ポリヒドロキシフェニル)アルカンとして、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、トリ(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン、4,4’−〔1−〔4−〔1−〔4−ヒドロキシフェニル〕−1−メチルエチル〕フェニル〕エチリデン〕ビスフェノール、ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインデン−5,6,7,5’,6’,7’−ヘキサノール、2,2,4−トリメチル−7,2’,4’−トリヒドロキシフラバンが挙げられる。
【0093】
また、その他の母核としては、例えば2−メチル−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−7−ヒドロキシクロマン、2−[ビス{(5−イソプロピル−4−ヒドロキシ−2−メチル)フェニル}メチル]、1−[1−(3−{1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル}−4,6−ジヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]−3−(1−(3−{1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル}−4,6−ジヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼン、4,6−ビス{1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル}−1,3−ジヒドロキシベンゼンが挙げられる。
【0094】
また、先に例示した母核のエステル結合をアミド結合に変更した1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸アミド、例えば2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸アミド等も好適に使用される。
【0095】
これらの母核の中でも特に、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−〔1−〔4−〔1−〔4−ヒドロキシフェニル〕−1−メチルエチル〕フェニル〕エチリデン〕ビスフェノールが好ましい。
【0096】
一方、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドとしては、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸クロリドが好ましい。1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸クロリドの具体例としては、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸クロリド及び1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリドを挙げることができる。この中でも、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリドを使用することが好ましい。
【0097】
母核と1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドとの縮合反応においては、フェノール性化合物又はアルコール性化合物中のOH基数に対して、好ましくは30モル%〜85モル%、より好ましくは50モル%〜70モル%に相当する1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドを用いることができる。縮合反応は公知の方法によって実施することができる。
【0098】
[B]感放射線性化合物の1,2−キノンジアジド化合物は、単独で使用してもよいし2種類以上を組み合わせて使用してもよい。[B]感放射線性化合物の使用割合は、[A]成分のアルカリ可溶性樹脂100質量部に対し、好ましくは5質量部〜100質量部、より好ましくは10質量部〜50質量部である。[B]感放射線性化合物の使用割合を5質量部以上とすることによって、現像液となるアルカリ水溶液に対する放射線の照射部分と未照射部分との溶解度の差が適切な範囲に維持され、パターニングが容易となることで、層間絶縁膜等の硬化膜の耐溶剤性が確保される。一方、[B]感放射線性化合物の使用割合を100質量部以下とすることによって、放射線照射部分においてアルカリ水溶液への十分な溶解度が得られ、現像の困難化を防止することができる。
【0099】
<[C]ホウ素化合物>
[C]ホウ素化合物は、ホウ素原子を含む化合物である。当該感放射線性樹脂組成物は、[C]ホウ素化合物を含有することで、現像性が向上し現像時の溶解コントラストが向上する。そのため、[A]重合体の疎水性を大きしても現像性を十分に確保できるため、従来トレードオフの関係にあった塗膜の現像性及び硬化膜の疎水性を共に確保することができる。その結果、当該感放射線性樹脂組成物により表示素子の絶縁膜等を形成する場合、塗膜の現像性を十分に確保しつつ、表示素子における配線の腐食を抑制することが可能となる。加えて、当該感放射線性樹脂組成物が[C]ホウ素化合物を含有することで、放射線感度が向上するため、塗膜の露光時の放射線照射量(露光量)を小さくすることができ、コスト的にも有利である。
【0100】
[C]ホウ素化合物としては、例えばホウ酸、ホウ酸エステル、ボロン酸、ボロン酸エステル、ジボロン酸、ジボロンエステル、保護ボロン酸、ボリン酸エステル、ボラン、ボロヒドリド、テトラフェニルボラート、テトラフルオロボラート、トリフルオロボラート、ボロントリハライド、B−ブロモカテコールボランが挙げられる。
【0101】
[C]ホウ素化合物としては、下記式(1)で表される化合物又は下記式(2)で表される部分構造を有する化合物がより好ましい。
【0103】
式(1)中、R
1及びR
2は、水素原子、置換若しくは非置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数6〜20のアリール基、置換若しくは非置換の炭素数7〜13のアラルキル基、又はトリアルキルシリル基である。nは、0から3の整数である。nが0又は1の場合、複数のR
1は同一であっても異なっていてもよい。nが2又は3の場合、複数のR
2は同一であっても異なっていてもよい。
式(2)中、R
3は、水素原子、置換若しくは非置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数1〜20のアルコキシル基である。mは、2から10の整数である。mが2以上の場合、複数のR
3は同一であっても異なっていてもよい。mが3以上の場合、ホウ素原子と酸素原子とで環構造を形成してもよい。
【0104】
上記R
1、R
2及びR
3で表される非置換の炭素数1〜20のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基が挙げられる。
【0105】
上記R
1及びR
2で表される非置換の炭素数6〜20のアリール基は、単環であっても、単環が連結した構造であっても、縮合環であってもよい。このようなアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオニル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基、ベンゾピレニル基、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、キノリル基、イソキノリル基、ピロリル基、インドレニル基、イミダゾリル基、カルバゾリル基、チエニル基、フリル基、ピラニル基、ピリドニル基、ベンゾキノリル基、アントラキノリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフリル基が挙げられる。
【0106】
上記R
1及びR
2で表される非置換の炭素数7〜13のアラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基が挙げられる。
【0107】
上記R
1及びR
2で表されるトリアルキルシリル基としては、例えばトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチル−tert−ブチルシリル基が挙げられる。
【0108】
上記R
3で表される非置換の炭素数1〜20のアルコキシル基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基等が挙げられる。
【0109】
上記R
1、R
2及びR
3の置換基としては、例えば炭素数1〜20のアルキル基(R
1、R
2及びR
3がアルキル基である場合を除く)、炭素数1〜12のアルコキシ基、アミノ基、ニトロソ基、メルカプト基、シリル基、シラノール基、スルフィノ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、カルボニル含有基、エステル含有基、エーテル含有基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、フェニル基、ビフェニル基、ハロゲン原子(フッ素・塩素・臭素・ヨウ素等)、これらの基及びハロゲン原子から選択される2以上が結合した基が挙げられる。
【0110】
上記式(1)で表される化合物としては、ホウ酸、メチルボロン酸、エチルボロン酸、n−プロピルボロン酸、i−プロピルボロン酸、n−ブチルボロン酸、2−メチルプロピルボロン酸、1−メチルプロピルボロン酸、t−ブチルボロン酸、n−ペンチルボロン酸、ネオペンチルボロン酸、n−ヘキシルボロン酸、n−ヘプチルボロン酸、n−オクチルボロン酸、2−エチルヘキシルボロン酸、n−ノニルボロン酸、n−デシルボロン酸、フェニルボロン酸、ナフチルボロン酸、アントラセニルボロン酸、9−フェナントニルボロン酸、ベンジルボロン酸、フェネチルボロン酸、トリメチルシリルボロン酸、トリエチルシリルボロン酸、ジメチル−tert−ブチルシリルボロン酸、1,2−フェニレンジボロン酸、1,3−フェニレンジボロン酸、1,4−フェニレンジボロン酸、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリ−n−プロピル、ホウ酸トリ−i−プロピル、ホウ酸トリ−1−メチルプロピル、ホウ酸トリ−2−メチルプロピル、ホウ酸トリ−t−ブチル、ホウ酸トリ−n−ブチル、ホウ酸トリ−n−ペンチル、ホウ酸トリネオペンチル、ホウ酸トリ−n−ヘキシル、ホウ酸トリ−n−オクチル、ホウ酸トリ−2エチルヘキシル、ホウ酸トリ−n−ノニル、ホウ酸トリ−n−デシル、ホウ酸トリフェニル、ホウ酸トリナフチル、ホウ酸トリアントラセニル、ホウ酸トリフェナントレニル、ホウ酸トリベンジル、ホウ酸トリフェネチル、ホウ酸トリス(トリメチルシリル)、ホウ酸トリス(トリエチルシリル)、ホウ酸トリス(ジメチル−tert−ブチルシリル)、これらの化合物が有する水素原子の少なくとも1つが置換基で置換された化合物が挙げられる。
【0111】
例示した式(1)で表される化合物の中でも、ホウ酸、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリス(トリメチルシリル)、ホウ酸トリ−n−オクチル、ホウ酸トリフェニル、フェニルボロン酸、9−フェナントレンボロン酸、又は1,4−フェニレンジボロン酸が好ましい。
【0112】
上記式(2)で表される部分構造を有する化合物としては、ホウ素原子と酸素原子とで環構造を形成する化合物が好ましい。
【0113】
上記式(2)で表される部分構造を有し、ホウ素原子と酸素原子とで環構造を形成する化合物としては、例えばボロキシン、トリフルオロボロキシン、トリクロロボロキシン、トリブロモボロキシン、トリメチルボロキシン、トリエチルボロキシン、トリ−N,N−ジメチルアミノボロキシン、トリメトキシボロキシン、トリエトシキボロキシン、トリ(n−プロポキシ)ボロキシン、トリ(1−メチルエトキシ)ボロキシン、トリ(n−ブトキシ)ボロキシン、トリ(iso−ブトキシ)ボロキシン、トリ(tert−ブトキシ)ボロキシン、トリ(n−ペンタノキシ)ボロキシン、トリ(n−ヘキサノキシ)ボロキシン、トリヘプタノキシボロキシン、トリエチレングリコールモノメチルエーテルオキシボロキシン、トリエチレングリコールモノエチルエーテルオキシボロキシン、トリジエチレングリコールモノメチルエーテルオキシボロキシン、トリジエチレングリコールモノエチルエーテルオキシボロキシン、トリ(シクロヘキサノキシ)ボロキシン、トリ(トリシクロ〔5.2.1.0
2,6〕デカ−8−イルオキシ)ボロキシン、トリノルボルノキシボロキシン、トリフェニルノルボルノキシボロキシン、トリシアノノルボルノキシボロキシン、トリイソノルボルノキシボロキシン、トリアダマントキシボロキシン、トリシクロデカノキシボロキシン、トリメントキシボロキシン、トリフェノキシボロキシン、トリベンゾイロキシボロキシンが挙げられる。
【0114】
例示した式(2)で表され部分構造を有する化合物の中でも、上記式(2)においてm=3である下記式(2−1)で表される化合物(2,4,6−トリオキシボロキシン)又は下記式(2−2)で表される化合物(2,4,6−トリフェニルボロキシン)が好ましい。
【0116】
[C]ホウ素化合物の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して0.1質量部以上20質量部以下が好ましく、0.5質量部以上15質量部以下がより好ましく、1質量部以上10質量部以下がさらに好ましい。[C]ホウ素化合物の含有量が0.1質量%未満であると、[C]ホウ素化合物を含有させることによる効果、すなわち当該感放射線性樹脂組成物の現像性及び放射線感度の改善効果を十分に得ることができないおそれがある。一方、[C]ホウ素化合物の含有量が20質量%を超えると、当該感放射線性樹脂組成物の保存安定性が低下するおそれがある。
【0117】
<[D]任意成分>
本発明による感放射線性樹脂組成物は、[A]重合体、[B]感放射線性化合物及び[C]ホウ素化合物以外に、必要に応じて[D]任意成分を含有していてもよい。[D]任意成分としては、例えば密着助剤、エポキシ樹脂、界面活性剤、エチレン性不飽和化合物、感熱性酸発生化合物、酸化物粒子、硬化剤が挙げられる。
【0118】
(密着助剤)
密着助剤は、当該感放射線性樹脂組成物と基板等との密着性を向上させるものである。密着助剤としては、官能性シランカップリング剤が好ましい。
【0119】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂は、当該感放射線性樹脂組成物から形成される硬化膜の耐熱性、表面硬度等の特性を向上させるものである。エポキシ樹脂としては、[A]重合体との相溶性に影響がない限り特に限定されない。エポキシ樹脂としては、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、グリシジルメタクリレートを(共)重合した樹脂等が挙げられる。
【0120】
(界面活性剤)
界面活性剤は、当該感放射線性樹脂組成物の塗布性を向上させるものである。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤が好ましい。
【0121】
(エチレン性不飽和化合物)
エチレン性不飽和化合物は、当該感放射線性樹脂組成物の放射線感度を向上させるものである。エチレン性不飽和化合物としては、分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有するものであれば特に限定はないが、トリメチロールプロパンに由来する骨格を有する化合物、ペンタエリスリトールに由来する骨格を有する化合物又はイソシアヌレート骨格を有する化合物が好ましい。
【0122】
(感熱性酸発生化合物)
感熱性酸発生化合物は、当該感放射線性樹脂組成物から形成される硬化膜の耐熱性、硬度等の特性を向上させるものである。感熱性酸発生化合物としては、スルホニウム塩、ベンゾチアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩などのオニウム塩が挙げられる。
【0123】
(酸化物粒子)
酸化物粒子は、当該感放射線性樹脂組成物から形成される硬化物の電気絶縁性を維持しつつ、誘電特性である比誘電率を制御するものである。酸化物粒子は、硬化膜の屈折率の制御、硬化膜の透明性の制御、硬化収縮を緩和することによるクラックの抑制、硬化膜の表面硬度向上という目的等でも使用することができる。酸化物粒子としては、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、インジウム、スズ、アンチモン、バリウム、セリウムが好ましい。
【0124】
(硬化剤)
硬化剤としては、例えば特開2012−88459号公報に記載の硬化剤を使用することができる。
【0125】
<感放射線性樹脂組成物の調製方法>
当該感放射線性樹脂組成物は、[A]重合体、[B]感放射線性化合物及び[C]ホウ素化合物、必要に応じて[D]任意成分を均一に混合することによって調製される。当該感放射線性樹脂組成物は、好ましくは適当な溶媒に溶解されて溶液状で用いられる。
【0126】
溶媒としては、含有成分を均一に溶解し、含有成分と反応しないものが用いられる。このような溶媒としては、例えば[A]重合体の合成に使用する溶媒として例示したものと同様な物が挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。先に例示した溶媒のうち、溶解性、固形分の分散性、組成物の塗布性等の観点から、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸3−メトキシブチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテート、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、ギ酸n−アミル、酢酸i−アミル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸i−プロピル、酪酸n−ブチル、又はピルビン酸エチルが好ましい。
【0127】
溶媒としては、先に例示したものに加え、高沸点溶媒を併用してもよい。高沸点溶媒としては、例えばベンジルエチルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテートが挙げられる。高沸点溶媒は、単独で使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0128】
当該感放射線性樹脂組成物における溶媒の含有量としては特に限定はないが、当該感放射線性樹脂組成物の塗工性、安定性等の観点から、50質量%〜95質量%が好ましく、60質量%〜90質量%がより好ましい。
【0129】
<硬化膜>
本発明の硬化膜は、当該感放射線性樹脂組成物から形成される。当該硬化膜は、当該感放射線性樹脂組成物から形成されているため耐溶媒性、密着性、耐配線腐食性及び絶縁性に優れる。なお、当該硬化膜の形成方法としては特に限定されないが、次に説明する硬化膜の形成方法を適用することが好ましい。
【0131】
本発明の硬化膜の形成方法は、当該感放射線性樹脂組成物を用いて基板上に塗膜を形成する工程(以下「工程(1)ともいう」)、上記塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程(以下「工程(2)ともいう」)、放射線照射後の塗膜を現像する工程(以下「工程(3)ともいう」)、及び現像後の塗膜を加熱する工程(以下「工程(4)ともいう」)を備える。
【0132】
[工程(1)]
工程(1)は、当該感放射線性樹脂組成物の溶液を基板に塗布することで行われ、好ましくはプレベークを行って溶媒を除去すること処理を含む。この工程(1)で使用する基板としては、例えばガラス基板、シリコンウエハー、プラスチック基板、これらの表面に金属層が形成された基板が挙げられる。プラスチック基板としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミド等のプラスチックを主成分とする基板が挙げられる。
【0133】
当該感放射線性樹脂組成物の塗布方法としては、公知の塗布方法、例えばスプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法、バー塗布法、インクジェット法が挙げられる。これらの塗布方法の中でも、スピンコート法、バー塗布法又はスリットダイ塗布法が好ましい。プレベークを行う場合の加熱条件としては、当該感放射線性樹脂組成物の含有成分の種類、含有量等によっても異なるが、例えば60℃〜90℃で30秒間〜10分間程度とすることができる。塗膜の膜厚(プレベークを行う場合にはプレベーク後の値)としては、0.1μm〜8μmが好ましく、0.1μm〜6μmがより好ましく、0.1μm〜4μmがさらに好ましい。
【0134】
[(2)工程]
工程(2)は、工程(1)で形成した塗膜に、例えば所定のパターンを有するマスクを介して放射線を照射することで行われる。放射線としては、例えば紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線等が挙げられる。
【0135】
紫外線としては、例えばg線(波長436nm)、i線(波長365nm)が挙げられる。遠紫外線としては、例えばKrFエキシマレーザーが挙げられる。X線としては、例えばシンクロトロン放射線が挙げられる。荷電粒子線としては、例えば電子線が挙げられる。これらの放射線のうち、紫外線が好ましく、紫外線の中でもg線及び/又はi線を含む放射線が特に好ましい。放射線の露光量としては、30J/m
2〜1,500J/m
2が好ましく、400J/m
2が好ましい。
【0136】
[工程(3)]
工程(3)は、工程(2)で放射線を照射した塗膜に対して現像処理を行うことで行われる。この工程により、放射線の照射部分を除去し、所望のパターンを形成することができる。現像処理に用いられる現像液としては、アルカリ水溶液を用いることができる。アルカリ水溶液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジエチルアミノエタノール、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ〔4,3,0〕−5−ノナンを含む水溶液が挙げられる。また、現像液としては、アルカリ水溶液にメタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液、又は当該感放射線性樹脂組成物を溶解する各種有機溶媒を少量含むものを使用することもできる。さらに、現像方法としては、例えば液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法、シャワー法を利用することができる。現像時間は、感放射線性樹脂組成物の組成によって異なるが、例えば30秒〜120秒とすることができる。
【0137】
工程(3)の後には、リンス処理を行った後、さらに後露光を行うことが好ましい。リンス処理は、パターニングされた塗膜に対して流水洗浄による行うことができる。後露光は、高圧水銀灯等による放射線を全面に照射(後露光)することに行うことができる。この後露光により、塗膜中に残存する[B]感放射線性化合物の分解処理を行うことができる。後露光における放射線の露光量は、好ましくは2,000J/m
2〜5,000J/m
2程度である。
【0138】
[工程(4)]
工程(4)は、工程(3)で現像された塗膜を加熱・焼成(ポストベーク)することにより行われる。この工程(4)により、塗膜が硬化する。この塗膜の加熱・焼成は、ホットプレート、オーブン等の加熱装置を用いて行うことができる。また、工程(4)における焼成温度としては、200℃以下が好ましく、120℃〜180℃がより好ましく、120℃〜150℃がさらに好ましい。焼成時間としては、加熱装置の種類により異なるが、例えばホットプレート上で加熱処理を行う場合には5分〜40分、オーブン中で加熱処理を行う場合には30分〜80分とすることができ、ホットプレート上で加熱処理を行う場合には30分間以内が好ましく、オーブン中で加熱処理を行う場合には60分間以内が好ましい。
【0139】
当該製造方法によれば、当該感放射線性樹脂組成物の感放射線性を利用した露光、現像及び加熱によってパターンを形成する方法であるため、容易に微細かつ精巧なパターンを形成することができ、また耐溶剤性、耐配線腐食性及び絶縁性に優れる硬化膜を得ることができる。
【0140】
<表示素子>
本発明の表示素子は、当該硬化膜を備える。すなわち、当該硬化膜は、表示素子に好適に使用できる。当該表示素子としては、例えば液晶表示素子、有機EL素子が挙げられる。このような表示素子の硬化膜としては、例えば層間絶縁膜、保護膜、平坦化膜が挙げられる。
【実施例】
【0141】
以下、本発明について、実施例に基づいて詳述するが、本発明は以下の実施例に限定的に解釈されるものではない。なお、以下の合成例1及び2により得られる[A]重合体の特性は、下記の方法により測定した。
【0142】
[重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)]
[A]重合体のMw及びMnは、東ソー社の「GPCカラム(G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本)」を用い、下記分析条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
分子量分布(Mw/Mn)は、Mw及びMnの測定結果から算出した。
【0143】
(分析条件)
溶出溶媒 :テトラヒドロフラン
流量 :1.0mL/分
試料濃度 :1.0質量%
試料注入量 :100μL
カラム温度 :40℃
検出器 :示差屈折計
標準物質 :単分散ポリスチレン
【0144】
<合成例1>(重合体(A−1)の合成)
冷却管及び攪拌機を備えたフラスコに、重合開始剤としての2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)7質量部と、溶媒としてのジエチレングリコールエチルメチルエーテル200質量部とを仕込んだ。引き続き、構造単位(A2)を付与する化合物としてメタクリル酸16質量部、構造単位(A3)を付与する化合物としてメタクリル酸グリシジル40質量部、並びに他の構造単位(A4)を付与する化合物としてメタクリル酸トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン−8−イル16質量部、2−メチルシクロヘキシルアクリレート20質量部及びスチレン8質量部、さらに分子量調整剤としてα−メチルスチレンダイマー3質量部を仕込んで窒素置換した後、ゆるやかに撹拌を始めた。溶液の温度を70℃に上昇させ、この温度を4時間保持することによって重合体(A−1)を含む重合体溶液を得た。重合体(A−1)のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は8,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.3であった。また、ここで得られた重合体溶液の固形分濃度は34.4質量%であった。
【0145】
<合成例2>(重合体(A−2)の合成)
冷却管及び攪拌機を備えたフラスコに、重合開始剤としての2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)8質量部と、溶媒としてのジエチレングリコールエチルメチルエーテル220質量部とを仕込んだ。引き続き、構造単位(A1)を付与する化合物としてα−メチル−p−ヒドロキシスチレン10質量部、構造単位(A2)を付与する化合物としてメタクリル酸13質量部、構造単位(A3)を付与する化合物としてメタクリル酸グリシジル40質量部、並びに構造単位(A4)を付与する化合物としてN−シクロヘキシルマレイミド15質量部、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル12質量部及びメタクリル酸n−ラウリル10質量部、さらに分子量調整剤としてα−メチルスチレンダイマー3質量部を仕込んで窒素置換した後、ゆるやかに撹拌を始めた。溶液の温度を70℃に上昇させ、この温度を5時間保持することによって重合体(A−2)を含む重合体溶液を得た。重合体(A−2)のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は8,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.3であった。また、ここで得られた重合体溶液の固形分濃度は31.9質量%であった。
【0146】
<合成例3>(重合体(A−3)の合成)
冷却管及び攪拌機を備えたフラスコに、重合開始剤としての2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)8質量部と、溶媒としてのジエチレングリコールエチルメチルエーテル220質量部とを仕込んだ。引き続き、構造単位(A3)を付与する化合物としてメタクリル酸グリシジル40質量部、並びに構造単位(A4)を付与する化合物としてN−シクロヘキシルマレイミド20質量部、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル20質量部、メタクリル酸n−ラウリル10質量部及びスチレン10質量部、さらに分子量調整剤としてα−メチルスチレンダイマー3質量部を仕込んで窒素置換した後、ゆるやかに撹拌を始めた。溶液の温度を70℃に上昇させ、この温度を5時間保持することによって重合体(A−3)を含む重合体溶液を得た。重合体(A−3)のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は8,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.3であった。また、ここで得られた重合体溶液の固形分濃度は32.2質量%であった。
【0147】
[感放射線性樹脂組成物の調製]
[A]重合体を含有する重合体溶液([A]重合体100質量部(固形分)に相当する量)に、[B]感放射線性化合物、及び[C]ホウ素化合物を混合し、固形分濃度が30質量%となるようにジエチレングリコールエチルメチルエーテルに溶解させた後、口径0.2μmのメンブランフィルタで濾過して、表1に示す組成である感放射線性樹脂組成物の溶液を調製した。なお、表1において、「−」は該当成分を配合していないことを意味する。
実施例1〜20の感放射線性樹脂組成物(S−1)〜(S−20)、比較例1〜4の感放射線性樹脂組成物(s−1)〜(s−4)の調製に用いた[A]重合体、[B]感放射線性化合物及び[C]ホウ素化合物は、以下に示す通りである。
【0148】
<[A]重合体>
A−1:合成例1で合成した重合体
A−2:合成例2で合成した重合体
A−3:合成例3で合成した重合体
【0149】
<[B]感放射線化合物>
B−1:4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール(1.0モル)と、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリド(2.0モル)との縮合物
【0150】
<[C]ホウ素化合物>
C−1:ホウ酸
C−2:ホウ酸トリブチル
C−3:ホウ酸トリス(トリメチルシリル)
C−4:ホウ酸トリ−n−オクチル
C−5:ホウ酸トリフェニル
C−6:フェニルボロン酸
C−7:9−フェナントレンボロン酸
C−8:1,4−フェニレンジボロン酸
C−9:2,4,6−トリメトキシボロキシン
C−10:2,4,6−トリフェニルボロキシン
【0151】
【表1】
【0152】
<評価>
実施例1〜20、比較例1及び2の感放射線性樹脂組成物の放射線感度及び保存安定性、これらの組成物から得られる塗膜の最適現像時間、現像マージン、硬化膜の耐溶剤性、配線腐食及び低誘電性について評価した。比較例3及び4の感放射線性樹脂組成物に関しては保存安定性、これらの組成物から得られる硬化膜の耐溶剤性、配線腐食及び低誘電性について評価した。評価方法は、以下に説明する通りであり、評価結果は表2に示した。なお、表2において、「−」は該当項目を評価していないことを意味する。
【0153】
[放射線感度の評価]
スピンナーを用いて感放射線性樹脂組成物の溶液をシリコン基板上に塗布した後、70℃にて3分間ホットプレート上でプレベークして膜厚3.5μmの塗膜を形成した。キヤノン社の「PLA−501F露光機(超高圧水銀ランプ)」を用い、露光時間を変化させて、所定のパターンを有するパターンマスクを介して塗膜に露光を行った。次いで、0.4質量%又は2.38質量%(表2参照)のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(現像液)を用い、液盛り法によって25℃で現像処理を行った。現像処理の時間は、0.4質量%の現像液を用いた場合は80秒、2.38質量%の現像液を用いた場合は90秒間とし、現像処理後、超純水で1分間、塗膜の流水洗浄を行い、乾燥させてウエハー上にパターンを形成した。このような露光及び現像処理において、3.0μmのライン・アンド・スペース(10対1)のスペース・パターンが完全に溶解するために必要な露光量を測定し、この露光量を放射線感度(J/m
2)とした。放射線感度は、400J/m
2以下の場合に良好であると判断される。
【0154】
[保存安定性の評価]
保存安定性は、感放射線性樹脂組成物の溶液を25℃で保存した際の粘度が、調製時の粘度の10倍の値に達するまでの時間として評価した。粘度測定には、ELD型粘度計(東京計器社)を用いた。保存安定性は、粘度が10倍に達するまでの時間が長いほど良好であるといえる。
【0155】
[最適現像時間及び現像マージンの評価]
スピンナーを用いて感放射線性樹脂組成物の溶液をシリコン基板上に塗布した後、70℃にて3分間ホットプレート上でプレベークして膜厚3.0μmの塗膜を形成した。ニコン社の「NSR1755i7A縮小投影露光機(NA=0.50、λ=365nm)」を用い、所定のパターンを有するパターンマスクを介して塗膜の露光を行った。露光量は、先の[放射線感度の評価]にて測定した放射線感度(表2参照)に相当する量とした。
【0156】
次に、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(現像液)を用い、液盛り法により25℃で1分間塗膜の現像処理を行った。現像液の濃度は、表2に示した通りである。現像処理後、塗膜を水でリンスし、乾燥させてウエハー上にパターンを形成した。ここで、0.8μmライン・アンド・スペースパターン(1対1)のスペース線幅が0.8μmとなるのに必要な現像時間(秒)を最適現像時間とした。また、最適現像時間からさらに現像を続けた、幅0.8μmのパターンが剥がれるまでの時間(秒)を測定し、この時間を現像マージンとして評価した。現像マージンは、30秒以上の場合に良好であると判断される。
【0157】
[耐溶剤性の評価]
スピンナーを用いて感放射線性樹脂組成物の溶液をシリコン基板上に塗布した後、70℃にて3分間ホットプレート上でプレベークして膜厚3.5μmの塗膜を形成した。キヤノン社の「PLA−501F露光機(超高圧水銀ランプ)」を用い、積算照射量が3,000J/m
2となるように塗膜に対して露光を行い、このシリコン基板をクリーンオーブン内にて220℃で1時間加熱して硬化膜を得た。ここで、得られた硬化膜の膜厚(T1)を測定した。次いで、この硬化膜が形成されたシリコン基板を、70℃に温度制御されたジメチルスルホキシド中に20分間浸漬させた後、硬化膜の膜厚(t1)を測定し、浸漬による膜厚変化率を以下の式に従い算出した。
【0158】
膜厚変化率(%)=(|t1−T1|/T1)×100
【0159】
耐溶剤性は、膜厚変化率が5%以下の場合に良好と判断される。なお、耐溶剤性の評価においては、硬化膜のパターニングは不要のため、現像工程は省略し、放射線照射工程、塗膜形成工程、及び加熱工程のみを行い評価に供した。
【0160】
[配線腐食の評価]
スピンナーを用いて感放射線性樹脂組成物をアルミで形成された櫛形の配線基板上に塗布した後、70℃にて3分間ホットプレート上でプレベークして膜厚3.0μmの塗膜を形成した。露光機(キャノン社の「MPA−600FA」)を用い、積算照射量が9,000J/m
2となるように塗膜を露光し、露光した基板をクリーンオーブン内にて200℃で30分加熱することにより、配線基板上に絶縁膜を形成した。この配線基板について、65℃/90%の湿熱条件下にて、500時間放置し、配線腐食試験を実施した。試験後の基板について、配線腐食の有無を顕微鏡で観察して配線腐食性を以下の基準で評価した。
【0161】
A:配線腐食なし(
図1(A)参照)
B:配線腐食あり(
図1(B)参照)
【0162】
[低誘電性の評価]
スピンナーを用いて感放射線性樹脂組成物の溶液を研磨したSUS304製基板上に塗布した後、70℃にて3分間ホットプレート上でプレベークして膜厚3.0μmの塗膜を形成した。キヤノン社の「PLA−501F露光機(超高圧水銀ランプ)」を用い、積算照射量が3,000J/m
2となるように塗膜に対して露光を行い、このシリコン基板をクリーンオーブン内にて220℃で1時間加熱して、膜厚3.0μmの硬化膜を得た。蒸着法により、この硬化膜についてのPt/Pd電極パターンを作成し、比誘電率測定用サンプルとした。横河・ヒューレットパッカード社の及び「HP4284AプレシジョンLCRメーター(HP16451B電極)」を用いて、周波数10kHzで、CV法により基板の比誘電率を測定した。低誘電性は、比誘電率が3.6以下のとき良好であると判断される。
【0163】
なお、低誘電性の評価においては、硬化膜のパターニングは不要のため、現像工程は省略し、放射線照射工程、塗膜形成工程及び加熱工程のみを行い評価に供した。
【0164】
【表2】
【0165】
表2の結果から明らかなように、[C]ホウ素化合物を含有させた実施例1〜20の感放射線性樹脂組成物は、[C]ホウ素化合物を含有させていない比較例1及び2の感放射線性樹脂組成物に比べて、放射線感度及び保存安定性に優れていた。
【0166】
[C]ホウ素化合物を含有させた実施例1〜20の感放射線性樹脂組成物から形成した塗膜及び硬化膜は、[C]ホウ素化合物を含有させていない比較例1及び2の塗膜及び硬化膜に比べて、現像マージンが同程度又はそれ以上であり、耐溶剤性、配線腐食及び低誘電性に優れるものであった。また、[A]ヒドロキシル基及びカルボキシル基のうちの少なくとも一方を有する構造単位を含む重合体を含む実施例1〜20の感放射線性樹脂組成物から形成した塗膜及び硬化膜は、[A]ヒドロキシル基及びカルボキシル基のいずれも含有させていない比較例3及び4に比べて、耐溶剤性、配線腐食及び低誘電性に優れるものであった。