(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0034】
<レジストパターン形成方法>
当該レジストパターンの形成方法は、フォトレジスト組成物によりレジスト膜を形成する工程(以下、「レジスト膜形成工程」ともいう)、上記レジスト膜を露光する工程(以下、「露光工程」ともいう)、及び上記露光されたレジスト膜を現像する工程(以下、「現像工程」ともいう)を備えるレジストパターン形成方法であって、上記フォトレジスト組成物が、重量平均分子量が1,000以上7,500以下であり、かつ酸の作用により解離する酸解離性基を含む構造単位を有する重合体、感放射線性酸発生体及び溶媒を含有し、上記フォトレジスト組成物の固形分含量が20質量%以上60質量%以下であることを特徴とする。
以下、当該レジストパターン形成方法について説明する。
【0035】
(レジスト膜形成工程)
本工程では、後述するフォトレジスト組成物によりレジスト膜を形成する。レジスト膜を形成する基板としては、例えば、シリコンウエハ、アルミニウム等で被覆されたウエハ等が挙げられる。塗布方法としては、例えば、回転塗布等が挙げられる。
【0036】
上記レジスト膜の膜厚としては2μm以上20μm以下が好ましく、3μm以上15μm以下がより好ましい。レジスト膜の膜厚を上記特定範囲とすることで、レジストパフォーマンスをより向上させることができる上、より十分なエッチング耐性を確保することができる。
【0037】
後述するフォトレジスト組成物を塗布した後、必要に応じて、70℃〜160℃程度の温度で加熱処理(以下、「プレベーク(PB)」ともいう。)を行ってもよい。
【0038】
なお、環境雰囲気中に含まれる塩基性不純物等の影響を防止するため、例えば、特開平5−188598号公報等に記載の保護膜を、レジスト膜上に設けることもできる。
【0039】
[露光工程]
本工程では、上記レジスト膜形成工程で形成したレジスト膜を露光する。この露光は、例えば、所定のマスクパターンを介して行う。
【0040】
上記露光に使用される電磁波又は荷電粒子線としては、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線等の電磁波、電子線、α線等の荷電粒子線等を適宜選択することができるが、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)又はKrFエキシマレーザー光(波長248nm)に代表される遠紫外線が好ましく、特にKrFエキシマレーザー光(波長248nm)が好ましい。露光量等の露光条件は、フォトレジスト組成物の配合組成や添加剤の種類等に応じて、適宜選定される。
【0041】
なお、高精度で微細なレジストパターンを安定して形成するために、露光後に、例えば、60℃〜160℃の温度で30秒以上加熱処理(以下、「ポストエクスポージャーベーク(PEB)」ともいう)を行なうことが好ましい。PEBの温度が70℃未満であると、基板の種類による感度のばらつきが増大するおそれがある。
【0042】
[現像工程]
本工程では、上記露光工程において露光したレジスト膜を、アルカリ現像液を用いて現像し、ポジ型のレジストパターンを形成する。
【0043】
アルカリ現像液としては、アルカリ金属水酸化物、アンモニア、モノ−、ジ−又はトリ−アルキルアミン類、モノ−、ジ−又はトリ−アルカノールアミン類、複素環式アミン類、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド類、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物を、通常、1質量%〜10質量%、好ましくは1質量%〜5質量%、特に好ましくは1質量%〜3質量%の濃度となるように溶解させたアルカリ性水溶液が好適に用いられる。また、上記アルカリ現像液には、例えば、メタノールやエタノール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適宜添加することもできる。
【0044】
現像工程における処理条件としては、通常、10℃〜50℃で10秒〜200秒、好ましくは15℃〜30℃で15秒〜100秒、より好ましくは20℃〜25℃で15秒〜90秒である。
【0045】
現像液には、例えば、有機溶媒を添加することもできる。このような有機溶媒としては、例えば、
アセトン、メチルエチルケトン、メチルi−ブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、3−メチルシクロペンタノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン等のケトン類;
メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、1,4−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジメチロール等のアルコール類;
テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;
酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−アミル等のエステル類;
トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;
フェノール、アセトニルアセトン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。なお、これらの有機溶媒は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0046】
上記現像液中の有機溶媒の含有割合は、上記アルカリ性水溶液100体積部に対して、100体積部以下であることが好ましい。有機溶媒の含有割合が100体積部を超えると、現像性が低下して、露光部の現像残りが多くなるおそれがある。また、現像液には、界面活性剤等を適量添加することもできる。なお、現像液で現像した後、水で洗浄して乾燥することが好ましい。
【0047】
<基板の加工方法>
当該基板の加工方法は、上記レジストパターンの形成方法により形成されたレジストパターンをマスクとし、基板をエッチングする工程(以下、「エッチング工程」ともいう)、及び上記エッチング工程後、上記レジストパターンのエッチングにより基板上面の一部を露出させる工程(以下、「露出工程」ともいう)を備え、上記露出工程の後に、上記エッチング工程と上記露出工程とをこの順に少なくとも1回以上繰り返す基板の加工方法である。
【0048】
上記エッチング工程において、エッチング加工のマスクとして用いられるレジストパターンは、上述のレジストパターン形成方法と同様の方法により形成することができる。
以下、上記エッチング工程及び上記露出工程について説明する。
【0049】
[エッチング工程]
本工程においては、レジストパターンをマスクとし、基板をエッチングする。このエッチングは、フッ素系のガスを用いたドライエッチング条件で行うとよい。ドライエッチング条件は、基板のエッチング速度が速く、上層のレジスト膜の膜減りが小さいガス及び条件を選択することが好ましい。本工程によりレジストパターンの形状を基板に転写することができる。
【0050】
[露出工程]
本工程では、上記エッチング工程の後、上記レジストパターンのエッチングにより基板上面の一部を露出させる。上記レジストパターンのエッチングには、酸素系のガスを用いたドライエッチング条件で行うとよい。ドライエッチング条件は、レジスト膜のエッチング速度が速く、下層の基板の膜減りが小さいガス及び条件を選択することが好ましい。本工程により、さらに基板をエッチング加工するために用いられるマスクとしてのレジストパターンの形状を任意の形状に加工することができる。
【0051】
当該基板の加工方法では、上記露出工程の後、さらに、上記エッチング工程及び上記露出工程をこの順に少なくとも1回以上繰り返すことで、新たに露出した基板上面を含むレジスト膜に被覆されない基板面を繰り返しエッチング加工することができ、基板を3次元構造に加工することができる。
【0052】
なお、所望の3次元構造が得られれば、最後のエッチング工程の後、残ったレジストパターンをエッチングにより除去しても良い。
【0053】
<フォトレジスト組成物>
次に、上述したレジストパターン形成方法及び基板の加工方法において使用されるフォトレジスト組成物(以下、「フォトレジスト組成物(I)」ともいう)について説明する。フォトレジスト組成物(I)は、酸解離性基を含む構造単位(I)を有する[A]重合体、[B]酸発生体及び[C]溶媒を含有し、固形分含量が20質量%以上60質量%以下である。フォトレジスト組成物(I)は、[D]酸拡散制御体を含有してもよく、また、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の成分を含有してもよい。
【0054】
フォトレジスト組成物(I)は、上記[A]重合体が酸解離性基を含む構造単位(I)を有するため、例えばポジ型のフォトレジスト組成物として用いることができる。フォトレジスト組成物(I)は、[B]酸発生体等から発生する酸により、露光部における酸解離性基が解離して極性基を生じ、現像液に可溶となり、ポジ型のレジストパターンを効果的に形成することができる。ここで、「酸解離性基」とは、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基等の極性基の水素原子を置換する基であって、酸の作用により解離する基をいう。かかる酸解離性基を含む構造単位(I)としては、例えば後述する式(1−2)、式(1−4)等で表される構造単位等が挙げられる。
以下、各構成成分について説明する。
【0055】
<[A]重合体>
[A]重合体は、酸解離性基を含む構造単位(I)を有し、かつ重量平均分子量が1,000以上7,500以下である重合体である。[A]重合体としては、構造単位(I)以外に、後述する式(1−1)で表される構造単位(II)を有していることが好ましく、後述する構造単位(III)、構造単位(IV)を有していてもよく、また、構造単位(I)〜(IV)以外にも、その他の構造単位を有していてもよい。[A]重合体は、各構造単位を1種又は2種以上有していてもよい。
以下、各構造単位について説明する。
【0056】
[構造単位(I)]
構造単位(I)は、酸解離性基を含む構造単位である。[A]重合体は、酸解離性基を含む構造単位(I)を有することでパターンを形成することができる。構造単位(I)としては、下記式(1−2)で表される構造単位が好ましい。
【0058】
上記式(1−2)中、R
3は、水素原子又はメチル基である。R
4は、酸解離性基を含まない1価の有機基である。cは、0〜3の整数である。cが2以上の場合、複数のR
4は同一でも異なっていてもよい。R
5は、1価の酸解離性基である。dは、1〜3の整数である。dが2以上の場合、複数のR
5は同一でも異なっていてもよい。但し、c+dは5以下である。
【0059】
上記R
3としては、水素原子が好ましい。
【0060】
上記R
4で表される酸解離性基を含まない1価の有機基としては、例えば、1価の炭化水素基、カルボキシ基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等のヒドロキシアルキル基、ヒドロキシシクロペンチル基、ヒドロキシシクロヘキシル基等のヒドロキシシクロアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等のシクロアルキルオキシ基、アミノエチル基、ジメチルアミノエチル基等の1価の窒素原子含有有機基などが挙げられる。
【0061】
上記R
5で表される1価の酸解離性基としては、例えば、置換メチル基、1−置換エチル基、1−分岐アルキル基、トリオルガノシリル基、トリオルガノゲルミル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、1価の環式酸解離性基等が挙げられる。
【0062】
上記置換メチル基としては、例えば、メトキシメチル基、メチルチオメチル基、エトキシメチル基、エチルチオメチル基、メトキシエトキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、ベンジルチオメチル基、フェナシル基、ブロモフェナシル基、メトキシフェナシル基、メチルチオフェナシル基、α−メチルフェナシル基、シクロプロピルメチル基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、ブロモベンジル基、ニトロベンジル基、メトキシベンジル基、メチルチオベンジル基、エトキシベンジル基、エチルチオベンジル基、ピペロニル基、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、n−プロポキシカルボニルメチル基、i−プロポキシカルボニルメチル基、n−ブトキシカルボニルメチル基、t−ブトキシカルボニルメチル基等が挙げられる。
【0063】
上記1−置換エチル基としては、例えば、1−メトキシエチル基、1−メチルチオエチル基、1,1−ジメトキシエチル基、1−エトキシエチル基、1−エチルチオエチル基、1,1−ジエトキシエチル基、1−プロポキシエチル基、1−シクロヘキシルオキシエチル基、1−フェノキシエチル基、1−フェニルチオエチル基、1,1−ジフェノキシエチル基、1−ベンジルオキシエチル基、1−ベンジルチオエチル基、1−シクロプロピルエチル基、1−フェニルエチル基、1,1−ジフェニルエチル基、1−メトキシカルボニルエチル基、1−エトキシカルボニルエチル基、1−n−プロポキシカルボニルエチル基、1−イソプロポキシカルボニルエチル基、1−n−ブトキシカルボニルエチル基、1−t−ブトキシカルボニルエチル基等が挙げられる。
【0064】
上記1−分岐アルキル基としては、例えば、i−プロピル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1−メチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基等が挙げられる。
【0065】
上記トリオルガノシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、エチルジメチルシリル基、ジエチルメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルi−プロピルシリル基、メチルジ−i−プロピルシリル基、トリ−i−プロピルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、ジ−t−ブチルメチルシリル基、トリ−t−ブチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基等が挙げられる。
【0066】
上記トリオルガノゲルミル基としては、例えば、トリメチルゲルミル基、エチルジメチルゲルミル基、ジエチルメチルゲルミル基、トリエチルゲルミル基、ジメチルi−プロピルゲルミル基、メチルジ−i−プロピルゲルミル基、トリ−i−プロピルゲルミル基、t−ブチルジメチルゲルミル基、ジ−t−ブチルメチルゲルミル基、トリ−t−ブチルゲルミル基、ジメチルフェニルゲルミル基、メチルジフェニルゲルミル基、トリフェニルゲルミル基等が挙げられる。
【0067】
上記アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0068】
上記アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、バレリル基、ピバロイル基、イソバレリル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オキサリル基、マロニル基、スクシニル基、グルタリル基、アジポイル基、ピペロイル基、スベロイル基、アゼラオイル基、セバコイル基、アクリロイル基、プロピオロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、オレオイル基、マレオイル基、フマロイル基、メサコノイル基、カンホロイル基、ベンゾイル基、フタロイル基、イソフタロイル基、テレフタロイル基、ナフトイル基、トルオイル基、ヒドロアトロポイル基、アトロポイル基、シンナモイル基、フロイル基、テノイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基等が挙げられる。
【0069】
上記1価の環式酸解離性基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、4−メトキシシクロヘキシル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオフラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、3−ブロモテトラヒドロピラニル基、4−メトキシテトラヒドロピラニル基、4−メトキシテトラヒドロチオピラニル基、3−テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド基等が挙げられる。
【0070】
これらの中でも、t−ブチル基、ベンジル基、1−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基、トリメチルシリル基、t−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニルメチル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオフラニル基、テトラヒドロチオピラニル基が好ましく、t−ブチル基がより好ましい。
【0071】
上記cとしては、0又は1が好ましく、製造の容易化の観点からは、0がより好ましい。上記dとしては、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
【0072】
上記式(1−2)で表される構造単位を与える重合性不飽和化合物としては、例えば、4−t−ブトキシスチレン、4−t−ブトキシ−α−メチルスチレン、4−(2−エチル−2−プロポキシ)スチレン、4−(2−エチル−2−プロポキシ)−α−メチルスチレン、4−(1−エトキシエトキシ)スチレン、4−(1−エトキシエトキシ)−α−メチルスチレン、アセトキシスチレン等が挙げられる。これらの中で、4−t−ブトキシスチレンが好ましい。
【0073】
上記式(1−2)で表される構造単位の含有割合としては、ポジ型のフォトレジスト組成物の場合、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、10モル%〜45モル%が好ましく、15モル%〜40モル%がより好ましい。式(1−2)で表される構造単位の含有割合を上記特定範囲とすることで、良好な感度を有し、高解像度のパターンを形成することができる。
【0074】
構造単位(I)の別の好適な一例として、下記式(1−4)で表される構造単位が挙げられる。
【0076】
上記式(1−4)中、R
8は、水素原子又はメチル基である。R
9は、1価の酸解離性基である。
【0077】
上記R
8としては、水素原子が好ましい。
【0078】
上記R
9で表される1価の酸解離性基としては、例えば、t−ブチル基、1−メチルシクロペンチル基、1−エチルシクロペンチル基、2−メチルアダマンチル基、2−エチルアダマンチル基等が挙げられる。
【0079】
上記式(1−4)で表される構造単位を与える単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸1−メチルシクロペンチル、(メタ)アクリル酸1−エチルシクロペンチル、(メタ)アクリル酸2−メチルアダマンチル、(メタ)アクリル酸2−エチルアダマンチル等が挙げられる。
【0080】
上記式(1−4)で表される構造単位の含有割合としては、ポジ型のフォトレジスト組成物の場合、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、0モル%〜60モル%が好ましく、10モル%〜50モル%がより好ましい。式(1−4)で表される構造単位の含有割合が60モル%を超えると、ドライエッチング耐性が不十分となる場合がある。
【0081】
また、構造単位(I)は、分子鎖間で2価の酸解離性基を介する架橋構造を形成する下記式(1−4−a)で表される構造単位であってもよい。[A]重合体が下記式(1−4−a)で表される構造単位を有すると、レジスト膜の現像において、極性基の生成と共に、[A]重合体の分子量が低下するため、ポジ型のフォトレジスト組成物の場合、コントラストを向上させることができる。
【0083】
上記式(1−4−a)中、R
10及びR
11は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基である。R
12は、2価の酸解離性基である。
【0084】
上記R
10及びR
11としては、水素原子が好ましい。
【0085】
上記R
12で表される2価の酸解離性基としては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルプロパンジイル基、1,1,4,4−テトラメチルブタンジイル基、1,1,5,5−テトラメチルペンタンジイル基等が挙げられる。これらの中で、1,1,4,4−テトラメチルブタンジイル基が好ましい。
【0086】
上記式(1−4−a)で表される構造単位を与える単量体としては、例えば、2,4−ジメチルペンタン−2,4−ジアクリレート、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジアクリレート、2,6−ジメチルヘプタン−2,6−ジアクリレート等が挙げられる。これらの中で、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジアクリレートが好ましい。
【0087】
上記式(1−4−a)で表される構造単位の含有割合としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、10モル%以下が好ましく、1モル%〜5モル%がより好ましい。式(1−4−a)で表される構造単位の含有割合が10モル%を超えると、フォトレジスト組成物(I)のパターン形成性が低下する場合がある。
【0088】
[構造単位(II)]
構造単位(II)は、下記式(1−1)で表される構造単位である。[A]重合体は、このような構造単位(II)を有することにより、アルカリ現像液に対する親和性を向上させることができる。
【0090】
上記式(1−1)中、R
1は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。R
2は、置換若しくは非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数1〜12のアルコキシ基又は置換若しくは非置換の炭素数6〜12の1価の芳香族炭化水素基である。aは、1〜3の整数である。bは、0〜3の整数である。a+bは5以下である。bが2以上の場合、複数のR
2は同一でも異なっていてもよい。
【0091】
上記R
1としては、水素原子、メチル基が好ましい。
【0092】
上記式(1−1)中、フェニル基に対する水酸基の結合位置は特に限定されないが、aが1である場合は、重合体鎖に結合している炭素原子に対して、o−位、m−位、p−位のいずれでもよく、好ましくはp−位である。aが2又は3の場合、結合位置は任意である。
【0093】
上記R
2で表される炭素数1〜12のアルキル基としては、直鎖状及び分岐状のいずれであってもよく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。
【0094】
上記R
2で表される炭素数1〜12のアルコキシ基としては、直鎖状及び分岐状のいずれであってもよく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
【0095】
上記R
2で表される炭素数6〜12の1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、トリル基等が挙げられる。
【0096】
上記R
2のアルキル基、アルコキシ基及びアリール基が有してもよい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;ヒドロキシ基、カルボキシ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。上記基は、上記置換基を1種単独で1個以上有していてもよく、また複数種を各1個以上有していてもよい。
【0097】
上記R
2としては、アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−ブチル基、t−ブチル基がより好ましい。
【0098】
上記aとしては、1又は2が好ましく、1がより好ましい。上記bとしては、0又は1が好ましく、製造の容易化の観点からは、0がより好ましい。また、上記式(1−1)で表される構造単位として特に好ましいのは、4−ヒドロキシスチレンの重合性不飽和結合が開裂して形成される構造単位である。
【0099】
上記構造単位(II)の含有割合としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、20モル%〜90モル%が好ましく、30モル%〜85モル%がより好ましく、40モル%〜80モル%がさらに好ましい。このような含有割合とすることにより、露光部の[A]重合体を現像液に対して十分に溶解させることができ、レジストパターンの形状を良好なものとすることが可能となる。
【0100】
[構造単位(III)]
構造単位(III)は、下記式(1−3)で表される構造単位である。
【0102】
上記式(1−3)中、R
6は、水素原子又はメチル基である。R
7は、1価の炭化水素基又は非酸解離性の1価のオキシ炭化水素基である。eは、0〜3の整数である。eが2以上の場合、複数のR
7は同一でも異なっていてもよい。
【0103】
上記R
6としては、水素原子が好ましい。
【0104】
上記R
7で表される1価の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0105】
上記R
7で表される非酸解離性の1価のオキシ炭化水素基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基等の1級又は2級のアルコキシ基;シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等のシクロアルキルオキシ基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基等のオキシ芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0106】
上記R
7としては、これらの中で、アルキル基、アルコキシ基が好ましく、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基がより好ましく、メチル基、メトキシ基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0107】
上記eとしては、0〜2の整数が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0108】
上記構造単位(III)を与える単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−メトキシスチレン、3−メトキシスチレン、4−メトキシスチレン等が挙げられる。これらの中で、スチレンが好ましい。
【0109】
上記構造単位(III)の含有割合としては、ポジ型のフォトレジスト組成物の場合は、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、20モル%以下が好ましく、0モル%〜10モル%がより好ましい。構造単位(III)の含有割合が20モル%を超えると、レジスト膜の現像性が低下するおそれがある。
【0110】
[その他の構造単位]
[A]重合体は、上記構造単位(I)〜(III)以外にもその他の構造単位を有していてもよい。
上記その他の構造単位としては、例えば、
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−メチルプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチルプロピル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−n−プロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−n−プロピル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸1−エチル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸8−メチル−8−トリシクロデシル、(メタ)アクリル酸8−エチル−8−トリシクロデシル、(メタ)アクリル酸3−メチル−3−テトラシクロドデセニル、(メタ)アクリル酸3−エチル−3−テトラシクロドデセニル、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、けい皮酸等の不飽和カルボン酸(無水物)類;
(メタ)アクリル酸2−カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸2−カルボキシ−n−プロピル、(メタ)アクリル酸3−カルボキシ−n−プロピル等の不飽和カルボン酸のカルボキシアルキルエステル類;
(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、クロトンニトリル、マレインニトリル、フマロニトリル等の不飽和ニトリル化合物;
(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、クロトンアミド、マレインアミド、フマルアミド等の不飽和アミド化合物;
マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等の不飽和イミド化合物;N−ビニル−ε−カプロラクタム、N−ビニルピロリドン、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−ビニルイミダゾール、4−ビニルイミダゾール等の含窒素ビニル化合物の単量体に由来する構造単位(IV)等が挙げられる。なお、構造単位(IV)は、酸解離性基を含まない。
【0111】
上記構造単位(IV)の含有割合としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、通常、25モル%以下であり、15モル%以下が好ましい。構造単位(IV)の含有割合が25モル%を超えると、形成されるレジストパターンの解像度が低下する場合がある。
【0112】
上記[A]重合体は、芳香環を含む構造単位を有することが好ましい。この芳香環を含む構造単位の含有割合としては、50モル%以上100モル%以下が好ましく、70モル%以上100モル%以下がより好ましく、80モル%以上100モル%以下がさらに好ましい。[A]重合体が上記構造単位を上記特定範囲で有することで、3次元のデバイス加工のような複数回のエッチング工程を有するプロセスでも十分なエッチング耐性を確保することができる。
【0113】
[A]重合体の例としては、例えば、4−ヒドロキシスチレン/4−t−ブトキシスチレン共重合体、4−ヒドロキシスチレン/4−t−ブトキシスチレン/アクリル酸1−メチルシクロペンチル共重合体、4−ヒドロキシスチレン/4−t−ブトキシスチレン/アクリル酸1−エチルシクロペンチル共重合体、4−ヒドロキシスチレン/4−t−ブトキシスチレン/スチレン共重合体、4−ヒドロキシスチレン/アクリル酸t−ブチル/スチレン共重合体、4−ヒドロキシスチレン/アクリル酸1−メチルシクロペンチル/スチレン共重合体、4−ヒドロキシスチレン/アクリル酸1−エチルシクロペンチル/スチレン共重合体、4−ヒドロキシスチレン/4−t−ブトキシスチレン/2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジアクリレート共重合体、4−ヒドロキシスチレン/アクリル酸2−エチルアダマンチル/スチレン共重合体、4−ヒドロキシスチレン/アクリル酸2−エチルアダマンチル共重合体、4−ヒドロキシスチレン/4―(1−エトキシエトキシ)スチレン/4−tert−ブトキシスチレン共重合体、4−ヒドロキシスチレン/4―(1−エトキシエトキシ)スチレン共重合体、4−ヒドロキシスチレン/4―(1−エトキシエトキシ)スチレン/スチレン共重合体、4−ヒドロキシスチレン/4−t−ブトキシスチレン/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体等が挙げられる。これらの中で、4−ヒドロキシスチレン/4−t−ブトキシスチレン/スチレン共重合体、4−ヒドロキシスチレン/4−t−ブトキシスチレン/2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジアクリレート共重合体及び4−ヒドロキシスチレン/4−t−ブトキシスチレン/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体が好ましい。
【0114】
<[A]重合体の合成方法>
[A]重合体を合成する方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、(i)置換又は非置換ヒドロキシスチレンのフェノール性水酸基を保護基で保護した単量体、例えば、ブトキシカルボニルオキシスチレン、ブトキシスチレン、アセトキスチレン、テトラヒドロピラニルオキシスチレン等と、構造単位(II)以外の所定の構造単位を与える単量体とを共に付加重合させた後、酸触媒又は塩基触媒を作用させることにより、保護基を加水分解して脱離させる方法;(ii)置換又は非置換ヒドロキシスチレンを、構造単位(II)以外の所定の構造単位に対応する単量体と共に付加重合させる方法等が挙げられる。これらの中で、[A]重合体を効率よく合成できる観点から、(i)の方法が好ましい。
【0115】
上記付加重合としては、例えば、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、熱重合等が挙げられるが、アニオン重合及びカチオン重合が、得られる共重合体の分散度(Mw/Mn比)を小さくできる点で好ましい。
【0116】
上記(i)の方法において加水分解反応に使用される酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸等の無機酸が挙げられる。また、塩基触媒としては、例えば、トリアルキルアミン等の有機塩基、水酸化ナトリウム等の無機塩基等が挙げられる。
【0117】
[A]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)の下限としては、1,000であり、2,000が好ましく、3,000がより好ましい。Mwの上限としては、7,500であり、7,000が好ましく、6,500がさらに好ましい。
【0118】
[A]重合体のMwとGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、1〜3が好ましく、1〜2がより好ましい。
【0119】
なお、上記Mw及びMnは、東ソー社のGPCカラム(G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本)を用い、流量1.0mL/分、溶出溶媒:テトラヒドロフラン、カラム温度:40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値である。
【0120】
フォトレジスト組成物(I)における[A]重合体の含有量としては、全固形分([C]溶媒以外の成分の合計質量)に対して、通常、70質量%以上であり、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。[A]重合体は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0121】
<[B]酸発生体>
[B]酸発生体は、露光により酸を発生する成分である。この発生した酸により[A]重合体等が有する酸解離性基が解離して酸性基等を生じ、[A]重合体の現像液への溶解性が変化することによりレジストパターンを形成することができる。フォトレジスト組成物(I)における[B]酸発生体の含有形態としては、後述するような低分子化合物の形態(以下、適宜「[B]酸発生剤」ともいう)でも、重合体の一部として組み込まれた形態でも、これらの両方の形態でもよい。[B]酸発生体は、1種又は2種以上を含んでいてもよい。
【0122】
[B]酸発生剤としては、非イオン性酸発生剤が好ましい。上記非イオン性酸発生剤としては、例えば、下記式(B1)で表されるN−スルホニルオキシイミド化合物等が挙げられる。
【0124】
上記式(B1)中、R
15は、アルキレン基、アリーレン基、アルコキシレン基、シクロアルキレン基、又は不飽和結合を有する環状骨格を含む2価の基である。R
16は、ハロゲン原子若しくはシクロアルキル基で置換されていてもよいアルキル基、エステル結合を有する基で置換されていてもよいシクロアルキル基、ハロゲン原子若しくはアルキル基で置換されていてもよいアリール基、又はフッ素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基若しくはカルボキシ基で置換されていてもよいアラルキル基である。
【0125】
上記N−スルホニルオキシイミド化合物としては、N−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(4−トルエンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ベンゼンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−{(5−メチル−5−カルボキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)スルホニルオキシ}スクシンイミド等が挙げられる。
【0126】
上記非イオン性酸発生剤としては、スルホニルジアゾメタン化合物も好ましい。上記スルホニルジアゾメタン化合物としては、例えば、下記式(B2)で表される化合物等が挙げられる。
【0128】
上記式(B2)中、R
17及びR
18は、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいシクロアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基、又はフッ素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基若しくはカルボキシ基で置換されていてもよいアラルキル基である。
【0129】
上記スルホニルジアゾメタン化合物としては、例えば、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキサンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4―ジメチルベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4−t−ブチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4−クロロベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、メチルスルホニル・4−トルエンスルホニルジアゾメタン、シクロヘキサンスルホニル・4−トルエンスルホニルジアゾメタン、シクロヘキサンスルホニル・1,1−ジメチルエタンスルホニルジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエタンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1−メチルエタンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(3,3−ジメチル−1,5−ジオキサスピロ[5.5]ドデカン−8―スルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン−7−スルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
【0130】
[B]酸発生剤としては、オニウム塩も使用できる。
【0131】
オニウム塩化合物としては、下記式(B3)又は(B4)で表される化合物等が挙げられる。
【0133】
上記式(B3)中、R
19及びR
20は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、若しくは置換若しくは非置換の炭素数6〜18のアリール基であるか、又はこれらの基が互いに合わせられこれらが結合するヨウ素原子と共に構成される環状構造を表す。
上記式(B4)中、R
21、R
22及びR
23は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、若しくは置換若しくは非置換の炭素数6〜18のアリール基であるか、又はこれらの基のうちの2つが互いに合わせられこれらが結合する硫黄原子と共に構成される環状構造を表し、かつ残りの1つが置換若しくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は置換若しくは非置換の炭素数6〜18のアリール基を表す。
上記式(B3)及び(B4)中、X
−は、R−SO
3−である。Rは、非置換若しくはフッ素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基若しくはカルボキシ基で置換されていてもよいアルキル基、フッ素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基若しくはカルボキシ基で置換されていてもよいシクロアルキル基、フッ素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基若しくはカルボキシ基で置換されていてもよいアリール基、又はフッ素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基若しくはカルボキシ基で置換されていてもよいアラルキル基である。
【0134】
上記R−SO
3−としては、トリフルオロメタンスルホネート、ノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、10−カンファースルホネート、2−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、2,4−ジフルオロベンゼンスルホネート、パーフルオロベンゼンスルホネート、2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)エタンスルホネートが好ましい。
【0135】
上記以外の[B]酸発生剤としては、例えば、ジスルホニルメタン化合物、オキシムスルホネート化合物、ヒドラジンスルホネート化合物等が挙げられる。
【0136】
上記ジスルホニルメタン化合物としては、例えば、下記式(B5)で表される化合物等が挙げられる。
【0138】
上記式(B5)中、R
24及びR
25は、それぞれ独立して、直鎖状若しくは分岐状の1価の炭化水素基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はヘテロ原子を有する1価の有機基である。V及びWは、それぞれ独立して、水素原子、アリール基、直鎖状若しくは分岐状の1価の炭化水素基又はヘテロ原子を有する1価の有機基かつV及びWの少なくとも一方がアリール基であるか、VとWとが互いに合わせられ構成される少なくとも1個の不飽和結合を有する炭素単環構造又は少なくとも1個の不飽和結合を有する炭素多環構造を形成しているか、又はVとWとが互いに合わせられ構成される下記式(B6)で表される基を形成していてもよい。
【0140】
上記式(B6)中、V'及びW'は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基であるか、又は同一の若しくは異なる炭素原子に結合したV'とW'とが互いに合わせられ構成される炭素単環構造を形成する。nは、2〜10の整数である。nが2以上の場合、複数のV’は同一でも異なっていてもよく、複数のW’は同一でも異なっていてもよい。
【0141】
上記オキシムスルホネート化合物としては、例えば、下記式(B7)又は(B8)で表される化合物等が挙げられる。
【0143】
上記式(B7)中、R
26及びR
27は、それぞれ独立して、1価の有機基である。
上記式(B8)中、R
28〜R
31は、それぞれ独立して、1価の有機基である。
【0144】
[B]酸発生体の含有量としては、[B]酸発生体が[B]酸発生剤の場合、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部〜30質量部が好ましく、0.5質量部〜20質量部がより好ましい。[B]酸発生剤の含有量が0.1質量部以上であることにより、フォトレジスト組成物(I)の感度及び現像性が適度なものとなる。一方、[B]酸発生剤の含有量が30質量部以下であることにより、形成されたレジスト膜の放射線に対する透明性、パターン形状、耐熱性等が良好なものとなる。
【0145】
<[C]溶媒>
[C]溶媒は、少なくとも上記[A]重合体、[B]酸発生体、及び必要に応じて加えられる他の成分を溶解できれば特に限定されない。[C]溶媒は、1種又は2種以上を含んでいてもよい。
【0146】
上記[C]溶媒としては、20℃における粘度が1.5mPa・s以下である[C1]溶媒を含むことが好ましい。[C1]溶媒の粘度の下限としては、0.1mPa・sが好ましい。また、[C1]溶媒の[C]溶媒中の含有量としては、60質量%以上100質量%以下が好ましく、65質量%以上100質量%以下がより好ましい。そのような[C1]溶媒を用いることで、フォトレジスト組成物(I)の粘度を低くすることができ、製造時の生産性や塗布時のハンドリングの容易性を向上させることができる。
【0147】
上記[C1]溶媒としては、エステル化合物及び鎖状ケトン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0148】
上記エステル化合物としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート;
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート;
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸n−アミル、酢酸i−アミル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル等の脂肪族カルボン酸エステル;
メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、アセト酢酸メチル等のその他のエステル等が挙げられる。
これらの中で、
アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテートとしては、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートがより好ましい。
脂肪族カルボン酸エステルとしては、酢酸エステルが好ましく、酢酸n−ブチルがより好ましい。
その他のエステルとしては、メトキシプロピオン酸エステルが好ましく、メトキシプロピオン酸メチルがより好ましい。
【0149】
上記鎖状ケトン化合物としては、例えば、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン等が挙げられる。これらの中で、2−ヘプタノンが好ましい。
【0150】
[C1]溶媒は、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、脂肪族カルボン酸エステル及び鎖状ケトン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、上記群より選ばれる2種を含むことがより好ましい。[C1]溶媒が上記化合物を含むことで、フォトレジスト組成物(I)の粘度をより適度にすることができる。
【0151】
上記[C]溶媒としては、ヒドロキシ基を有する化合物及び環状ケトン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である[C2]溶媒をさらに含むことが好ましい。
【0152】
上記ヒドロキシ基を有する化合物としては、例えば、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−i−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル等が挙げられる。これらの中で、乳酸エチルが好ましい。
【0153】
上記環状ケトン化合物としては、例えば、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジヒドロフラン−2(3H)−オン等が挙げられる。これらの中で、シクロヘキサノンが好ましい。
【0154】
上記[C]溶媒は、固形分の溶解や粘度の調整などを目的として、上記[C1]溶媒、及び[C2]溶媒以外のその他の溶媒を含んでいてもよい。
【0155】
上記その他の溶媒としては、例えば、
トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;
プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル;
N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド;
γ−ブチロラクン等のラクトンなどが挙げられる。
【0156】
<[D]酸拡散制御体>
フォトレジスト組成物(I)は、[D]酸拡散制御体を含有することが好ましい。[D]酸拡散制御体は、露光により[B]酸発生体等から発生した酸のレジスト膜中における拡散現象を制御し、非露光領域での好ましくない化学反応を抑制する作用を有する。フォトレジスト組成物(I)における[D]酸拡散制御体の含有形態としては、後述するような低分子化合物の形態(以下、適宜「[D]酸拡散制御剤」ともいう)でも、重合体の一部として組み込まれた形態でも、これらの両方の形態でもよい。[D]酸拡散制御体は、1種又は2種以上を含んでいてもよい。
【0157】
[D]酸拡散制御剤としては、例えば、含窒素有機化合物、感光性塩基性化合物等が挙げられる。上記含窒素有機化合物としては、例えば、下記式(D−1)で表される化合物(以下、「含窒素化合物(i)」ともいう)、同一分子内に窒素原子を2個有する化合物(以下、「含窒素化合物(ii)」ともいう)、窒素原子を3個以上有するポリアミノ化合物や含窒素重合性化合物の重合体(以下、これらをまとめて「含窒素化合物(iii)」ともいう)、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物等が挙げられる。
【0159】
上記式(D−1)中、R
32、R
33及びR
34は、それぞれ独立して、水素原子、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基である。上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基の水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。
【0160】
含窒素化合物(i)としては、例えば、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、シクロヘキシルアミン等のモノ(シクロ)アルキルアミン類;ジ−n−ブチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、ジ−n−ヘキシルアミン、ジ−n−ヘプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジ−n−ノニルアミン、ジ−n−デシルアミン、シクロヘキシルメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のジ(シクロ)アルキルアミン類;トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デシルアミン、シクロヘキシルジメチルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン等のトリ(シクロ)アルキルアミン類;トリエタノールアミン等の置換アルキルアミン;アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、ナフチルアミン、2,4,6−トリ−tert−ブチル−N−メチルアニリン、N−フェニルジエタノールアミン、2,6−ジイソプロピルアニリン等の芳香族アミン類が挙げられる。
【0161】
含窒素化合物(ii)としては、例えば、エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ビス〔1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル〕ベンゼン、1,3−ビス〔1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル〕ベンゼン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジエチルアミノエチル)エーテル、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリジノン、2−キノキサリノール、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン等が挙げられる。
【0162】
含窒素化合物(iii)としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、2−ジメチルアミノエチルアクリルアミドの重合体等が挙げられる。
【0163】
アミド基含有化合物としては、例えば、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−オクチルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−ノニルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−デシルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジシクロヘキシルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−2−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、(S)−(−)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、(R)−(+)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−ブトキシカルボニルピロリジン、N−t−ブトキシカルボニルピペラジン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’N’−テトラ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,7−ジアミノヘプタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,8−ジアミノオクタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,9−ジアミノノナン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,10−ジアミノデカン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,12−ジアミノドデカン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N−t−ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−メチルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール等のN−t−ブトキシカルボニル基含有アミノ化合物のほか、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−アセチル−1−アダマンチルアミン、イソシアヌル酸トリス(2−ヒドロキシエチル)等が挙げられる。
【0164】
ウレア化合物としては、例えば、尿素、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、1,1,3,3−テトラメチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、トリ−n−ブチルチオウレア等が挙げられる。
【0165】
含窒素複素環化合物としては、例えば、イミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2−フェニルベンズイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチル−1H−イミダゾール等のイミダゾール類;ピリジン、2−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2−エチルピリジン、4−エチルピリジン、2−フェニルピリジン、4−フェニルピリジン、2−メチル−4−フェニルピリジン、ニコチン、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、キノリン、4−ヒドロキシキノリン、8−オキシキノリン、アクリジン、2,2’:6’,2”−ターピリジン等のピリジン類;ピペラジン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン等のピペラジン類の他、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、キノザリン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペリジンエタノール、3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール、モルホリン、4−メチルモルホリン、1−(4−モルホリニル)エタノール、4−アセチルモルホリン、3−(N−モルホリノ)−1,2−プロパンジオール、1,4−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。これらの中で、イミダゾール類が好ましく、2−フェニルベンズイミダゾールがより好ましい。
【0166】
上記感光性塩基性化合物は、露光領域では対応する中性の物質に効率よく分解し、未露光部では分解せずにそのまま残る性質を有する成分である。このような感光性塩基性化合物は、非感光性の塩基性化合物に比べて、露光部に発生する酸を有効活用することができるため、感度を向上させることができる。
【0167】
上記感光性塩基性化合物としては、上記性質を有する限り特に限定されないが、下記式(D2−1)又は(D2−2)で表される化合物が好適に用いられる。
【0169】
上記式(D2−1)及び(D2−2)中、R
35〜R
39は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10の1価の脂環式炭化水素基又は炭素数1〜10のアルコキシ基である。上記アルキル基、脂環式炭化水素基及びアルコキシ基の水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。E
−及びQ
−は、それぞれ独立して、OH
−、R
D−O
−又はR
D−COO
−である。但し、R
Dは、1価の有機基である。
【0170】
上記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0171】
上記R
35〜R
39で表される炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。
【0172】
上記R
35〜R
39で表される炭素数3〜10の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、ノルボルニル基、ノルボルネニル基、アダマンチル基等が挙げられる。
【0173】
上記アルキル基及び脂環式炭化水素基の置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、アルコキシ基等が挙げられる。
【0174】
上記R
35〜R
39で表される炭素数1〜10のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
【0175】
置換されたアルキル基、脂環式炭化水素基及びアルコキシ基としては、例えば、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、パーフルオロシクロペンチル基、t−ブトキシカルボニルメチルオキシ基等が挙げられる。
【0176】
上記R
35〜R
39としては、水素原子、t−ブチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0177】
上記R
Dで表される1価の有機基としては、例えば、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基等が挙げられる。
【0178】
上記E
−及びQ
−で表されるアニオンとしては、OH
−、CH
3COO
−、及び下記式(X−1)〜(X−8)で表されるアニオンからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0180】
上記感光性塩基性化合物としては、トリフェニルスルホニウム化合物(上記式(D2−1)で表される化合物)であって、そのアニオン(E
−)が、OH
−、CH
3COO
−、並びに上記式(X−5)及び式(X−7)で表されるアニオンから選ばれる少なくとも1種である化合物が好ましい。
【0181】
[D]酸拡散制御体の含有量としては、[D]酸拡散制御体が[D]酸拡散制御剤である場合、[A]重合体100質量部に対して、15質量部以下が好ましく、0.001質量部〜10質量部がより好ましく、0.005質量部〜5質量部がさらに好ましく、0.05質量部〜3質量部が特に好ましい。[D]酸拡散制御剤の含有量が15質量部を超えると、レジストとしての感度や露光部の現像性が低下する場合がある。逆に、含有量が0.001質量部未満だと、プロセス条件によっては、レジストとしてのパターン形状や寸法忠実度が低下する場合がある。
【0182】
<その他の成分>
フォトレジスト組成物(I)は、その他の任意成分として必要に応じ、界面活性剤、増感剤、染料、顔料、接着助剤、4−ヒドロキシ−4’−メチルカルコン等のハレーション防止剤、形状改良剤、保存安定剤、消泡剤等を含有していてもよい。
【0183】
<フォトレジスト組成物の調製方法>
フォトレジスト組成物(I)は、例えば、[A]重合体、[B]酸発生体、必要に応じて含有する他の成分及び[C]溶媒を所定の割合で混合した後、フィルターで濾過することによって調製される。
【0184】
フォトレジスト組成物(I)の固形分含量の下限としては、20質量%であり、25質量%が好ましい。固形分含量の上限としては、60質量%であり、55質量%が好ましい。
【0185】
濾過に用いられるフィルターの孔径としては、通常1.0μm以下であり、0.5μm以下が好ましい。フォトレジスト組成物(I)は高固形分含量であっても粘度が低いため、孔径の小さいフィルターでも生産効率を低下させることなく濾過することができる。
【0186】
フォトレジスト組成物(I)の25℃における粘度の下限としては、50mPa・sが好ましく、60mPa・sがより好ましい。上記粘度の上限としては、150mPa・sが好ましく、130mPa・sがより好ましく、110mPa・sがさらに好ましく、90mPa・sが特に好ましい。上記粘度を上記特定範囲とすることで、製造プロセスにおいて、濾過速度や異物の捕集効率をより低下させることなく、また従来のエキシマレーザー用レジスト組成物の塗布装置に適用する場合においてより必要な流量が確保でき、かつ泡噛みの発生がより低減され、その結果、2〜20μmの高膜厚であっても均一な膜を形成することができる。
【0187】
フォトレジスト組成物(I)は、KrF露光用であることが好ましい。フォトレジスト組成物(I)は、パターンサイズ及びエッチング耐性の観点から、KrF露光において特に好適に用いることができる。
【実施例】
【0188】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。各種物性値の測定方法を以下に示す。
【0189】
[重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)]
重合体のMw及びMnは、東ソー社のGPCカラム(G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本)を用い、流量1.0mL/分、溶出溶媒:テトラヒドロフラン、カラム温度:40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
【0190】
[
13C−NMR分析]
重合体の
13C−NMR分析は、核磁気共鳴装置(日本電子社の「JNM−ECX400」)を使用し、測定した。
【0191】
<[A]重合体の合成>
[合成例1]
下記式(L−1)で表される化合物910g、下記式(L−2)で表される化合物358g、下記式(L−3)で表される化合物37g、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)105g及びt−ドデシルメルカプタン55gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル160gに溶解したのち、窒素雰囲気下、反応温度を70℃に保持して、16時間重合した。重合後、反応溶液を大量のn−ヘキサン中に滴下して、生成した重合体を凝固精製した。次いで、精製して得られた重合体に、再度プロピレングリコールモノメチルエーテル1,500gを加えた後、さらにメタノール3,000g、トリエチルアミン800g及び水150gを加えて、沸点にて還流させながら、8時間加水分解反応を行なった。反応後、溶媒及びトリエチルアミンを減圧留去し、得られた重合体をアセトンに溶解したのち、大量の水中に滴下して凝固させ、生成した白色粉末をろ過して、減圧下50℃で一晩乾燥し、重合体(A−1)を得た。得られた重合体(A−1)は、Mwが4,500、Mw/Mnが1.8であった。また、
13C−NMR分析の結果、下記式(A−1)で表される各構造単位を有し、それぞれの構造単位の含有割合(モル%)はa/b/c=70.1/25.4/4.5であった。
【0192】
【化18】
【0193】
【化19】
【0194】
[合成例2]
上記式(L−1)で表される化合物920g、上記式(L−2)で表される化合物345g、上記式(L−3)で表される化合物40g、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)105g及びt−ドデシルメルカプタン30gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル1,600gに溶解したのち、窒素雰囲気下、反応温度を70℃に保持して、16時間重合した。重合後、反応溶液を大量のn−ヘキサン中に滴下して、生成した重合体を凝固精製した。次いで、精製して得られた重合体に、再度プロピレングリコールモノメチルエーテル1,500gを加えたのち、さらにメタノール3,000g、トリエチルアミン800g及び水150gを加えて、沸点にて還流させながら、8時間加水分解反応を行なった。反応後、溶媒及びトリエチルアミンを減圧留去し、得られた重合体をアセトンに溶解したのち、大量の水中に滴下して凝固させ、生成した白色粉末をろ過して、減圧下50℃で一晩乾燥し、重合体(A−2)を得た。得られた重合体(A−2)は、Mwが6,700、Mw/Mnが1.7であった。また
13C−NMR分析の結果、上記式(A−1)で表される各構造単位を有し、それぞれの構造単位の含有割合(モル%)は、a/b/c=70.8/24.5/4.7であった。
【0195】
[合成例3]
上記式(L−1)で表される化合物940g、上記式(L−2)で表される化合物325g、上記式(L−3)で表される化合物40g、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)79g及びt−ドデシルメルカプタン10gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル1,600gに溶解したのち、窒素雰囲気下、反応温度を70℃に保持して、16時間重合した。重合後、反応溶液を大量のn−ヘキサン中に滴下して、生成した重合体を凝固精製した。次いで、精製して得られた重合体に、再度プロピレングリコールモノメチルエーテル1,500gを加えたのち、さらにメタノール3,000g、トリエチルアミン800g及び水150gを加えて、沸点にて還流させながら、8時間加水分解反応を行なった。反応後、溶媒及びトリエチルアミンを減圧留去し、得られた重合体をアセトンに溶解したのち、大量の水中に滴下して凝固させ、生成した白色粉末をろ過して、減圧下50℃で一晩乾燥し、重合体(A−3)を得た。得られた重合体(A−3)は、Mwが12,000、Mw/Mnが1.7であった。また、
13C−NMR分析の結果、上記式(A−1)で表される各構造単位を有し、それぞれの構造単位の含有割合(モル%)は、a/b/c=72.2/23.1/4.7であった。
【0196】
[合成例4]
ポリ(p−ヒドロキシスチレン)(Mw4,500)480gをジオキサン2,000gに溶解したのち、窒素で30分間バブリングを行った。この溶液にエチルビニルエーテル160g、触媒としてp−トルエンスルホン酸ピリジニウム塩20gを添加し、12時間反応させた。この反応溶液を1質量%アンモニア水溶液に滴下して、重合体を沈澱させた。この重合体を50℃の真空乾燥器内で一晩乾燥し、重合体(A−4)を得た。得られた重合体(A−4)は、Mwが4,500、Mw/Mnが1.6であった。また、
13C−NMR分析の結果、下記式(A−4)で表される各構造単位を有し、それぞれの構造単位の含有割合(モル%)は、a/d=54.5/45.5であった。
【0197】
【化20】
【0198】
[合成例5]
下記式(L−1)で表される化合物940g、下記式(L−4)で表される化合物608g、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)130g及びt−ドデシルメルカプタン13gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル1,550gに溶解したのち、窒素雰囲気下、反応温度を70℃に保持して3時間、その後75℃に保持して3時間、さらに95℃に保持して1時間の工程で重合した。重合後、反応溶液を大量のn−ヘキサン中に滴下して、生成した重合体を凝固精製した。次いで、精製して得られた重合体に、再度プロピレングリコールモノメチルエーテル1,200gを加えたのち、さらにメタノール1,200g、トリエチルアミン230g及び水40gを加えて、70℃にて7時間加水分解反応を行なった。反応後、溶媒及びトリエチルアミンを減圧留去し、得られた重合体をアセトンに溶解したのち、大量の水中に滴下して凝固させ、生成した白色粉末をろ過して、減圧下50℃で一晩乾燥し、重合体(A−5)を得た。得られた重合体(A−5)は、Mwが13,500、Mw/Mnが2.4であった。また、
13C−NMR分析の結果、下記式(A−5)で表される各構造単位を有し、それぞれの構造単位の含有割合(モル%)は、a/e=55.3/44.7であった。
【0199】
【化21】
【0200】
【化22】
【0201】
<フォトレジスト組成物の調製>
フォトレジスト組成物の調製に用いた[A]重合体以外の各成分を以下に示す。
【0202】
[[B]酸発生剤]
B−1:N−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド
B−2:トリフェニルスルオニウム-トリフルオロメタンスルホネート
B−3:N−(5−メチル−5−カルボキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)スルホニルオキシスクシンイミド
【0203】
[[C]溶媒]
([C1]溶媒)
C1−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(20℃における粘度:1.3mPa・s)
C1−2:3−メトキシプロピオン酸メチル(20℃における粘度:1.1mPa・s)
C1−3:2−ヘプタノン(20℃における粘度:0.77mPa・s)
C1−4:酢酸n−ブチル(20℃における粘度:0.74mPa・s)
([C2]溶媒)
C2−1:乳酸エチル(20℃における粘度:2.6mPa・s)
【0204】
[(D)酸拡散制御剤]
D−1:2−フェニルベンズイミダゾール
【0205】
[実施例1]
[A]重合体としての(A−1)100質量部、[B]酸発生剤としての(B−1)6質量部、[C]溶媒としての[C1]溶媒である(C1−1)178質量部及び[D]酸拡散制御剤としての(D−1)0.4質量部を混合して均一溶液としたのち、テフロン(登録商標)製メンブレンフィルター(SUN−SRi社の「Titan3」、孔径1.0μm)でろ過して、フォトレジスト組成物(J−1)を調製した。
【0206】
[実施例2〜12及び比較例1〜2]
下記表1に示す種類及び含有量の各成分を用いた以外は実施例1と同様にしてフォトレジスト組成物(J−2)〜(J−12)及び(CJ−1)〜(CJ−2)を調製した。
【0207】
【表1】
【0208】
<レジスト膜の形成>
上記調製した各フォトレジスト組成物をシリコンウエハ上に1,100rpmで回転塗布したのち、110℃で60秒間PBを行い、レジスト膜を形成した。
【0209】
<評価>
上記調製したフォトレジスト組成物、及び上記形成したレジスト膜について、下記方法に従い評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0210】
[レジスト膜厚]
光干渉式膜厚測定装置(大日本スクリーン製造社の「VM−2010」)を用いて測定した(膜厚の単位はμm)。
【0211】
[粘度]
上記レジスト膜厚測定で用いたフォトレジスト組成物と同一の組成物をE型粘度計(東機産業社の「RE-80L」)を用いて25℃、4rpmの条件で測定した(粘度の単位はmPa・s)。
【0212】
[濾過流量]
フォトレジスト組成物1kgを、濾過圧力0.12MPa、23℃の温度で、孔径0.5μmのポリエチレン製フィルター(日本インテグリス社の「CWUH0S1S3」)を用いて6時間循環濾過した後、同一のフィルターから同一の濾過圧力で1分間に吐出されるフォトレジスト組成物の溶液量を測定し濾過流量(mL/min)とした。なお、加圧ポンプとしてはケミカルポンプ(ヤマダコーポレーション社の「DP−5F」)を用いた。
【0213】
[異物]
上記濾過流量の測定で得られたフォトレジスト組成物を、パーティクルセンサ(RION社の「KS−40B」)を用いて測定した。
フォトレジスト組成物中に含まれる0.2μm以上の異物が1mLあたり100個未満の場合は「良好」と、100個以上の場合は「不良」と判定した。
【0214】
【表2】
【0215】
表2の結果から分かるように、実施例のレジストパターン形成方法によれば、適度な粘度を有し、濾過流量を高めることができ、その結果、異物を低減しつつ、高膜厚のレジスト膜を形成することができる。なお、比較例1は固形分含量が高いため高粘度となり、濾過できなかった。