(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する塗布装置、塗布ロボットおよび塗布方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
(塗布装置)
まず、
図1を参照して実施形態に係る塗布装置の概要について説明する。
図1は、実施形態に係る塗布装置の概要説明図である。なお、
図1では、3次元で相互に直交するX軸、Y軸およびZ軸を規定している。かかる座標系は、他の図においても記載する場合がある。
【0012】
また、以下で説明する塗布装置は、たとえば、対象物となる鋼板などの被塗布面に接着剤などの塗布材料を塗布するものである。
【0013】
図1に示すように、塗布装置1は、吐出部2と、支持部3と、駆動部4とを備える。吐出部2は、塗布材料(たとえば、接着剤)を吐出する吐出口23を有する。支持部3は、吐出部2を、吐出口23の位置を中心に移動自在に支持する。すなわち、支持部3は、吐出口23の位置を固定しながら吐出部2の姿勢を変化させる。
【0014】
駆動部4は、支持部3に支持された吐出部2を、支持部3を介して移動させる。具体的には、駆動部4は、吐出部2を移動させるために、吐出部2へと回転駆動力を付与する駆動源を有する。なお、かかる駆動源としては、たとえば、サーボモータを用いることができる。
【0015】
そして、
図1に示すように、塗布装置1では、吐出口23の位置を変えずに吐出部2の姿勢を変化させるため、吐出口23の向きを被塗布面に対して常に面直に保つことができる。これにより、塗布材料を均一に塗布することができる。
【0016】
また、たとえば、塗布装置1を、吐出口23を被塗布面から一定距離として移動させながら塗布材料を塗布するような場合でも、吐出口23の向きを被塗布面に対して常に面直に保つことができる。これにより、塗布材料を均一に塗布することができる。
【0017】
なお、実施形態に係る塗布装置1では、駆動部4の出力軸と吐出部2の基側とを連結する連結部をさらに備える構成とした。また、連結部が、駆動部4に設けられる駆動側部材と、吐出部2に設けられる従動側部材とを備える構成とした。さらに、駆動側部材が開口を有し、従動側部材がピンを有する構成とした。かかる構成については、
図2A、
図2Bおよび
図3を用いて後述する。
【0018】
また、実施形態に係る塗布装置1では、支持部3が円弧状のレールを有し、吐出部2が円弧状のレールに沿って摺動する構成とした。かかる構成についても、
図2A、
図2Bおよび
図3を用いて後述する。
【0019】
また、実施形態に係る塗布装置1では、駆動部4を、吐出口23の中心軸に対して出力軸が直交するように配置する構成とした。かかる構成についても、
図2A、
図2Bおよび
図3を用いて後述する。
【0020】
なお、上述した塗布装置1では、吐出部2が、吐出口23の位置を中心として2次元的あるいは3次元的に姿勢を変化させるが、たとえば、
図1に示すように、吐出部2が、吐出口23の位置を中心としてYZ平面と平行な平面またはXZ平面と平行な平面に沿って姿勢を変化させる構成としてもよい。
【0021】
また、たとえば、
図1に示すように、吐出部2が、吐出口23の位置を中心としてYZ平面と平行な平面およびXZ平面と平行な平面のいずれにも姿勢を変化させる構成としてもよい。
【0022】
次に、
図2A、
図2Bおよび
図3を参照して実施形態に係る塗布装置1の詳細について説明する。
図2Aおよび
図2Bは、塗布装置1の模式斜視図である。なお、
図2Aは、塗布装置1を上方から見た図であり、
図2Bは、塗布装置1を下方から見た図である。
【0023】
図2Aおよび
図2Bに示すように、吐出部2は、本体21と、ノズル22とを備える。本体21内には、圧送ポンプ(図示せず)によって圧送される塗布材料が温調ケーブル(図示せず)などを通じて供給される。
【0024】
なお、本体21と圧送ポンプとの間に、たとえば、塗布材料の供給量を高精度で制御可能なサーボポンプを設けてもよい。ここで、サーボポンプは、圧力制御を行わないため、温度変化に伴う塗布材料の粘度変化の影響を受けない。したがって、サーボポンプを設けた場合、本体21とサーボポンプとの間に温調ケーブルではなく通常のケーブルを使用することができる。
【0025】
ノズル22は、本体21から突出して設けられる。ノズル22の先端面には、開口が設けられる。かかる開口は、上述した吐出口23となる。以下、塗布装置1では、吐出口23側を先側とし、本体21のノズル22がある側とは反対側を基側とする。
【0026】
また、ノズル22の基側には、開閉によって塗布材料の吐出および不吐出を切り替えるバルブ24が設けられる。なお、バルブ24の開閉制御は、塗布制御部(図示せず)が行う。
【0027】
また、吐出部2の基側、すなわち、本体21には、後述する支持部3のレール31に本体21を摺動可能に連結させる摺動部25が設けられる。かかる摺動部25は、レール31を把持し、レール31の曲率に沿った円弧方向に動作の自由度を有する。さらに、本体21には、後述する連結部6を構成するピン621がX軸負方向側へと突出して設けられる。ここで、ピン621は、先端にローラ621aを有する。なお、ローラ621aを省略し、回転自在なピンを本体に設けることとしてもよい。
【0028】
図2Aおよび
図2Bに示すように、支持部3は、レール31と、固定板32とを備える。レール31は、YZ平面と平行な平面に沿って延伸する円弧状に形成される。レール31は、レール31の中央に位置した状態の吐出部2における吐出口23の位置を中心(0度)にした場合にて、所定角度の中心角を有する。かかる中心角は、たとえば、90度程度であることが好ましい。図示の例では、レール31が、吐出口23の位置を0度として−α度〜+α度の中心角を有する。なお、レール31の中心角が90度よりも小さい角度であってもよく、大きい角度であってもよい。
【0029】
固定板32は、略扇形状に形成される。固定板32の円弧状の端縁におけるX軸正方向側には、レール31が固定される。また、固定板32のX軸負方向側は、後述する取付部5に固定される。
【0030】
支持部3は、吐出部2を、レール31が延伸する方向に摺動可能に支持する。また、
図2Bに示すように、支持部3には、吐出部2の移動を制限するストッパとなる突起33,33が設けられる。
【0031】
図2Aおよび
図2Bに示すように、駆動部4は、支持部3のX軸負方向側に設けられ、駆動源41と、減速機42とを備える。駆動源41は、たとえば、サーボモータであり、出力軸41aの向きが吐出口23の中心軸AXと直交する向きとなるように配置される。
【0032】
なお、吐出口23の中心軸AXとは、ノズル22の軸方向に延伸する線であり、かつ、吐出口23の中心を通る線である。また、減速機42は、駆動源41のX軸正方向側に駆動源41と同軸配置される。
【0033】
また、
図2Aおよび
図2Bに示すように、塗布装置1は、取付部5と、連結部6とをさらに備える。取付部5は、立板51と、天板52とを備える。立板51は、支持部3と駆動部4との間に設けられる。立板51には、X軸正方向側に支持部3の固定板32が固定される。また、立板51は、X軸負方向側が駆動部4の減速機42に固定される。さらに、立板51は、出力軸41aを貫通させる貫通孔(図示せず)を有する。
【0034】
天板52は、立板51に対して直交するように立板51の一端面に設けられる。天板52は、たとえば、後述する塗布ロボット10の先端(エンドエフェクタ)に取り付けられる。
【0035】
図2Aおよび
図2Bに示すように、連結部6は、駆動側部材61と、従動側部材62とを備える。駆動側部材61は、取付部5の立板51に沿って延伸する板状に形成され、本体21と立板51との間に設けられる。駆動側部材61の一端側には、駆動源41の出力軸41aが連結される。駆動側部材61は、出力軸41aの回転に連動して出力軸41aの軸まわりに旋回する。また、従動側部材62は、上述したピン621およびローラ621aを有する。
【0036】
また、駆動側部材61には、吐出口23の中心軸AX方向(
図2Aおよび
図2Bでは、Z軸方向)に延伸する長孔状の開口611が設けられる。開口611には、ピン621の先端に設けられたローラ621aが挿通される。連結部6では、駆動側部材61と従動側部材62との間で、駆動部4からの回転駆動力が伝達される。
【0037】
また、駆動側部材61に従動側部材62が追従する場合、開口611は、ローラ621aに対して、開口611の延伸方向への移動を許容するとともに、ローラ621aの軸まわりの回転を許容する。
【0038】
ここで、
図3を参照して塗布装置1の動作について説明する。
図3は、塗布装置1の動作説明図である。なお、
図3では、説明の便宜上、塗布装置1の動作に関与しない部分を一部省略している。
図3に示すように、吐出部2は、支持部3のレール31に沿って摺動する。
【0039】
駆動部4(
図2Aおよび
図2B参照)の出力軸41aが回転すると、出力軸41aに連動して連結部6がYZ平面と平行な平面に沿って旋回する。連結部6が旋回すると、ピン621を介して吐出部2がレール31に沿って摺動する。ここで、連結部6の旋回中心Pは、出力軸41aと同軸上にある。また、吐出部2の回転中心Oは、吐出口23の位置にある。したがって、上述したように、吐出口23の位置は移動しない。
【0040】
また、上述したように、吐出部2の移動範囲は、所定角度(好ましくは、90度程度)に規制されている。塗布装置1では、吐出部2は、レール31の中央に位置した状態を基準(0度)として、ZY平面と平行な平面に沿って所定の角度範囲を移動する。なお、
図3では、移動後の吐出部2および連結部6(開口611、ローラ621a)を二点鎖線で示している。
【0041】
また、
図3に示すように、吐出部2が基準位置(0度となる位置)にある場合、ピン621(
図2A参照)のローラ621aは、開口611の一方の端縁に当接している。連結部6がY軸正方向または負方向のいずれかへと旋回すると、連結部6に連動して吐出部2が同方向に回動する。
【0042】
吐出部2が、たとえば、+α度(Y軸正方向側にα度)回転すると、本体21がストッパである一方の突起33(
図2B参照)に当接する。また、吐出部2が、たとえば、−α度(Y軸負方向側にα度)回転すると、本体21が他方の突起33(
図2B参照)に当接する。かかる構成によって、吐出部2の移動を所定範囲内に規制することができる。
【0043】
また、吐出部2の回転中心Oと連結部6の旋回中心Pとは、吐出口23の中心軸AX上の異なる位置に配置される。たとえば、連結部6の旋回中心Pを吐出部2の回転中心Oの位置に配置すると、駆動部4の出力軸41aが回転中心Oに配置され、吐出口23による塗布材料吐出の妨げとなる。
【0044】
そこで、吐出部2の回転中心Oと連結部6の旋回中心Pとを、吐出口23の中心軸AX上の異なる位置に配置する。また、2つの中心O,Pを異なる位置に配置することで、連結部6の開口611を長孔状とする。さらに、開口611を長孔状とすることで、開口611が、吐出部2と連結部6とにおける回転軌跡の差を許容することができる。
【0045】
具体的には、連結部6が旋回すると、移動する開口611内をピン621(
図2A参照)のローラ621aが、開口611の延伸方向に直動するとともに、開口611内で軸まわりに回転する。このため、開口611は、ピン621によって自らの回転を阻まれることなく、かつ、ピン621を自らの回転に追従させることができる。
【0046】
上述した実施形態に係る塗布装置1によれば、吐出口23の位置を変えずに吐出部2の姿勢を変化させるため、吐出口23の向きを被塗布面に対して常に面直に保つことができる。これにより、塗布材料を均一に塗布することができる。
【0047】
また、吐出部2が円弧状のレール31に沿って摺動することで、吐出口23の位置を中心として位置固定しつつ、吐出部2を姿勢変化させることができる。さらに、レール31の中心角を90度程度とすることで、たとえば、塗布装置1を塗布ロボット10(
図6参照)に取り付けた場合に、塗布ロボット10と効率的に協働させることができる。
【0048】
また、駆動部4を、吐出口23の中心軸AXに対して出力軸41aが直交するように配置することで、吐出部2の移動制御が容易となるうえ、塗布装置1をコンパクトに構成することができる。
【0049】
また、駆動部4と吐出部2との間に連結部6を設けることで、支持部3を固定しつつ、吐出部2をレール31に沿って摺動させることができる。
【0050】
なお、上述した実施形態に係る塗布装置1では、連結部6において、駆動側部材61が開口611を有し、従動側部材62がピン621を有する構成とした。しかし、これに限定されず、たとえば、吐出部2に、駆動側部材61として位置が固定されたピニオンを設け、従動側部材62として円弧状のラックを設ける構成としてもよい。かかる構成では、出力軸41aの回転駆動力によってピニオンが回転し、ピニオンの回転によってラックが延伸方向へと移動する。かかるラックに吐出部2が取り付けられることで、吐出部2を、吐出口23の位置を中心として姿勢変化させることができる。これにより、構造簡素となる。
【0051】
また、上述した実施形態に係る塗布装置1では、レール31の両端付近に突起33,33を設けて吐出部2のストッパとしたが、たとえば、駆動側部材61の開口611の両端縁にピン621(ローラ621a)を当接させることでストッパ機能を有する構成としてもよい。かかる構成によれば、単独でストッパとして機能させることができることに加え、突起33,33によるストッパと併用することで、吐出部2の二重規制が可能となる。
【0052】
また、上述した実施形態に係る塗布装置1では、支持部3が、吐出部2が摺動可能なレール31を有する構成としたが、これに限定されず、たとえば、支持部3に円弧状のラックを設け、連結部6の従動側部材62がピニオンを有する構成としてもよい。かかる構成によれば、吐出部2を高精度で移動制御することができる。
【0053】
また、たとえば、支持部3に、吐出部2を移動させるためにボールネジを設ける構成としてもよい。かかる構成によっても、吐出部2を高精度で移動制御することができる。
【0054】
また、上述した実施形態に係る塗布装置1では、吐出部2が、1つのレール31を摺動することで、2次元的に姿勢変化する構成としたが、これに限定されず、たとえば、レール31と交差するような他のレールをさらに備えてもよい。次に、
図4A〜
図5Bを参照して吐出部2が3次元的に姿勢変化する例について説明する。
【0055】
図4Aは、塗布装置の他の例の模式側面図である。
図4Bは、塗布装置の他の例の模式正面図(一部断面図)である。また、
図5Aおよび
図5Bは、塗布装置の他の例の動作説明図である。なお、以下では、上述した実施形態に係る塗布装置1と異なる点を説明し、重複する説明を省略する。
【0056】
図4Aおよび
図4Bに示すように、塗布装置70は、上述した吐出部2、支持部(第1の支持部)3、駆動部(第1の駆動部)4、取付部(第1の取付部)5および連結部(第1の連結部)6に加え、第2の支持部71と、第2の駆動部72と、第2の取付部73と、第2の連結部74とをさらに備える。
【0057】
第2の支持部71は、第1の取付部5に後述する第2の連結部74を介して連結され、第1の支持部3のレール31(
図2Aおよび
図2B参照)と直交する向き(X軸方向)に延伸する円弧状の一対の他のレール711,711(
図4B参照)を有する。なお、一対の他のレール711,711は、後述する第2の取付部73の一対の立板731,731(
図4B参照)に設けられる。
【0058】
また、
図4Bに示すように、第2の支持部71は、支持台712と、一対の摺動部713,713とを備える。支持台712は、第1の取付部5が取り付けられることで、第1の取付部5を介して吐出部2、第1の支持部3、第1の駆動部4および第1の連結部6を支持する。
【0059】
また、一対の摺動部713,713は、後述する従動側部材742の連結板7422,7422に設けられ、それぞれ一対の他のレール711,711を把持する。かかる一対の摺動部713,713は、それぞれ一対の他のレール711,711の曲率に沿った円弧方向に動作の自由度を有する(
図4A参照)。
【0060】
第2の駆動部72は、第1の取付部5を他のレール711に沿って移動させる。すなわち、第2の駆動部72は、第1の取付部5を介して、吐出部2、第1の支持部3、第1の駆動部4および第1の連結部6を移動させる。
【0061】
図4Aに示すように、第2の駆動部72は、上述した第1の駆動部4と同様、X軸負方向側に設けられ、駆動源721と、減速機722とを備える。駆動源721は、たとえば、サーボモータであり、出力軸721aの向きが吐出口23の中心軸AXと直交する向きとなるように配置される。また、出力軸721aの先端には、後述する駆動側部材741(
図4B参照)の第1ベベルギヤ7411が設けられる。
【0062】
第2の取付部73は、一対の立板731,731と、天板732とを備える。一対の立板731,731には、第2の駆動部72が固定される。天板732は、一対の立板731,731に対して直交するように各立板731,731の一端面に設けられる。天板732は、たとえば、後述する塗布ロボット10の先端(エンドエフェクタ)に取り付けられる。
【0063】
図4Bに示すように、第2の連結部74は、駆動側部材741と、従動側部材742とを備える。駆動側部材741は、第1ベベルギヤ7411と、第2ベベルギヤ7412と、他の出力軸7413と、板体7414と、開口7415とを備える。上述したように、第1ベベルギヤ7411は、出力軸721aの先端に設けられる。第2ベベルギヤ7412は、第1ベベルギヤ7411と噛合するとともに、他の出力軸7413に設けられる。
【0064】
他の出力軸7413は、Y軸方向に沿って、出力軸721aと直交して配置される。他の出力軸7413は、両端が板体7414に固定される。また、板体7414には、長孔状の開口7415が設けられる。なお、板体7414および開口7415の詳細については、
図5Aを用いて後述する。
【0065】
図4Bに示すように、従動側部材742は、2つのピン7421,7421と、一対の連結板7422,7422とを備える。ピン7421は、一端側が連結板7422に固定されるとともに、他端側が板体7414の開口7415に挿通される。また、連結板7422の外側面には、摺動部713が設けられる。
【0066】
ここで、
図5Aを参照して駆動側部材741および従動側部材742の動作について説明する。
図5Aに示すように、第2の駆動部72から出力された回転駆動力は、第1ベベルギヤ7411と第2ベベルギヤ7412との噛合によって、出力軸721aと直交する他の出力軸7413に伝達される。
【0067】
他の出力軸7413が回転すると、たとえば、略矩形に形成された板体7414の他の出力軸7413が固定された側とは反対側(先端側)が矢線c方向へと揺動する。また、板体7414が、たとえば、
図5Aにおける二点鎖線で示す位置から実線で示す位置へと揺動すると、板体7414の長手方向に延伸した長孔状の開口7415に沿ってピン7421が摺動する。
【0068】
さらに、ピン7421が、
図5Aにおける二点鎖線で示す位置から実線で示す位置へと揺動すると、ピン7421が固定された連結板7422を介して、摺動部713が第2の支持部71の他のレール711に沿って他のレール711の円弧方向(矢線d方向)へと移動する。
【0069】
このように、第2の連結部74は、第2の支持部71と第2の駆動部72との間に設けられ、第2の駆動部72からの回転駆動力を第2の取付部73へと伝達する。第2の連結部74では、たとえば、ベベルギヤなどの歯車とリンク機構とを組み合わせるなどして、第2の駆動部72の出力軸721aの回転駆動力を直線駆動力へと変換する。
【0070】
すなわち、第2の支持部71では、第1の取付部5を介して吐出部2を、他のレール711,711が延伸する方向に摺動可能とする。この場合、吐出部2は、吐出口23の位置を中心としてX軸方向に所定範囲移動することができる。
図4Aの例では、吐出部2は、吐出口23の位置を中心(0度)として−β度〜+β度の範囲を移動することができる。
【0071】
これにより、
図5Bに示すように、塗布装置70では、吐出部2が、吐出口23の位置を中心にX軸およびY軸方向の双方に移動する。すなわち、吐出部2は、3次元的に自由に姿勢変化することができる。
【0072】
上述した塗布装置70によれば、吐出口23の位置を変えずに吐出部2を姿勢変化させるため、吐出口23の向きを被塗布面に対して常に面直に保つことができる。これにより、塗布材料を均一に塗布することができる。
【0073】
また、第2の取付部73が円弧状の他のレール711に沿って摺動することで、第2の取付部73を介して、吐出口23の位置を中心として位置固定しつつ、吐出部2を姿勢変化させることができる。さらに、第1の支持部3のレール31(
図2Aおよび
図2B参照)の中心角に加え、第2の支持部71の他のレール711の中心角を所定角度(好ましくは、50度程度)とすることで、塗布ロボット10(
図6参照)と効率的に協働させることができる。
【0074】
(塗布ロボットおよび塗布方法)
次に、
図6を参照して実施形態に係る塗布ロボットについて説明する。
図6は、実施形態に係る塗布ロボットの模式斜視図である。なお、以下で説明する塗布ロボットは、単腕型のいわゆる多関節ロボットである。
【0075】
図6に示すように、塗布ロボット10は、床面などに設置される基台11上に、垂直軸(軸S)まわりに旋回自在に取り付けられた旋回ベース12を有する。旋回ベース12には、下部アーム13が水平軸(軸L)まわりに回転可能に軸支される。
【0076】
また、下部アーム13の上端部には、上部アーム14が水平軸(軸U)まわりに回転可能に軸支される。さらに、上部アーム14の先端には、上部アーム14の長さ方向の中心軸(軸R)まわりに回転可能に手首部15が取り付けられる。
【0077】
手首部15は、揺動体16と、回転体17とを備える。揺動体16は、R軸と直交する軸(軸B)まわりに回転可能に軸支されて揺動する。また、回転体17は、揺動体16の先端で回転軸(軸T)まわりに回転する。
【0078】
そして、回転体17の先端には、塗布ロボット10の先端軸である軸Tと吐出部2が基準位置にある状態における吐出口23の中心軸AXとが同軸となるように塗布装置1が取り付けられる。
【0079】
次に、
図7A〜
図8Bを参照して塗布ロボット10の塗布動作について説明する。
図7Aは、従来の塗布動作の説明図である。
図7Bは、
図7Aにおけるa部拡大図である。
図8Aは、塗布動作の説明図である。
図8Bは、
図8Aにおけるb部拡大図である。
【0080】
なお、塗布ロボット10(
図6参照)を用いて塗布工程を行う場合、塗布ロボット10は、予め設定された作業線に沿って対象物(以下、ワークという)Wの被塗布面に塗布材料を塗布する。また、塗布ロボット10は、塗布材料を吐出する吐出口23を、ワークWの被塗布面に対して常に一定距離に保ちつつ、塗布材料を塗布する。
【0081】
ここで、
図7Aに示すように、従来は、塗布ロボットの軸Tと吐出口23Aの中心軸AXAとが常に一致する構成であった。たとえば、塗布ロボットが吐出部2Aを矢線方向に動作させながらワークWの被塗布面に塗布する場合、ビード形状を安定させるためには、吐出口23Aを被塗布面に対する面直を保つ必要がある。また、作業速度(吐出部2Aの移動速度)を一定に保つ必要がある。
【0082】
図7Bに示すように、被塗布面が曲面や傾斜面であると、従来は、塗布ロボットが常に姿勢を変化させながら軸Tを傾けることで、吐出口23Aにおいて被塗布面に対する面直を保つようにしていた。
【0083】
ところが、
図7Aにおけるa部では、吐出口23AをワークWに対して面直に保つために軸Tの姿勢(向き)を速やかに変える必要がある。上述した従来の塗布ロボットの構成では、軸Tの向きを変えるため、塗布ロボットの各軸を動作させ姿勢を変更するが、動作の遅い軸(負荷の大きい軸)の影響により、a部付近で大きな速度変動が生じることがある。
【0084】
また、
図7Aの例のみならず、吐出口の向きが軸Tと一致しているような塗布ロボットの構成では、吐出口の姿勢変更時に速度変更が生じやすいことが一般的に言える。
【0085】
図8Aに示すように、塗布ロボット10は、たとえば、吐出部2を矢線方向に動作させながらワークWの被塗布面に塗布する場合、被塗布面が平坦部分から曲面へと変化しても塗布装置を動作させて吐出部2が吐出口23の位置を中心として姿勢変化する動作を行う。
【0086】
すなわち、塗布ロボット10では、実質的に動作軸が1軸追加されており、自由度の冗長性を有している。これにより、特異点の姿勢を避けながら、各軸の動作が少なくなる動作を行うことができる。
【0087】
また、かかる塗布ロボット10には、追加された塗布装置の動作軸が吐出口23の位置を変えずに姿勢のみを変える機構であるため、一般的な自由度の冗長性を有するロボットに比べて作業の教示がしやすいという利点もある。
【0088】
したがって、
図8Bに示すように、塗布ロボット10は、軸Tを傾けることなく吐出口23の中心軸AXを被塗布面に対して直交する角度に保つことができる。すなわち、吐出口23は、被塗布面に対する面直を保つことができる。また、塗布ロボット10は、軸Tを傾けなくてよく、応答性の高い、すなわち、動作の速い吐出部2のみを動作させることで作業速度(吐出部2の移動速度)を略一定に保つことができる。
【0089】
上述した実施形態に係る塗布ロボット10によれば、塗布ロボット10が、吐出口23の位置を変えずに吐出部2を姿勢変化させるため、吐出口23の向きを被塗布面に対して常に面直に保つことができる。これにより、塗布材料を均一に塗布することができる。
【0090】
また、塗布ロボット10は、1軸追加されることから自由度の冗長性を有するため、作業速度が略一定となる動作を実現することができる。これにより、塗布材料を均一に塗布することができる。
【0091】
なお、上述した実施形態に係る塗布ロボット10では、吐出口23の中心軸AXが軸Tと同軸となるように塗布装置1を取り付けたが、これに限定されず、たとえば、吐出口23の中心軸AXが軸Rと同軸となるように塗布装置1を取り付けてもよい。かかる構成によれば、軸Tの場合と同様、1軸追加されることから自由度の冗長性を有するため、作業速度が略一定となる動作を実現することができる。
【0092】
また、上述した実施形態に係る塗布ロボット10では、ビード形状が丸ビードの場合を説明したため、吐出口23を面直に保つようにしたが、これに限定されず、たとえば、三角ビードの場合は、吐出口23の中心軸を一定の角度でワークWの被塗布面に対して多少傾ける必要がある。
【0093】
そして、上述した実施形態に係る塗布方法によれば、塗布工程において吐出口23の向きを被塗布面に対して常に面直に保つため、かかる塗布工程を含むことによって、塗布材料を均一に塗布することができる。
【0094】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。