【実施例】
【0016】
以下に、ロボットシステムに用いられる教示用治具、及び教示用治具を用いたロボット教示方法にかかる実施例について、図面を参照して説明する。
本例のロボットシステム1に用いられる教示用治具5は、
図1、
図2に示すように、ロボット2、締付工具3及び制御装置11を備えたロボットシステム1に用いられるものである。ロボット2は、移動先端部21の位置及び姿勢を3次元に変更可能である。締付工具3は、移動先端部21に取り付けられており、ソケット4が装着されるソケット装着部31を有している。締付工具3は、ソケット装着部31を回転させて、ワーク8の表面801に突出して設けられた被締付具81に対して、ソケット4に保持する締付具82の締付又は緩めを行うよう構成されている。制御装置11は、締付工具3及びロボット2の動作を制御するものである。
【0017】
教示用治具5は、被締付具81に対するソケット4の位置及び姿勢を教示する際に、ソケット装着部31に、ソケット4の代わりに取り付けられるものである。教示用治具5は、教示用治具5の中心軸線C2の姿勢(向き)が、被締付具81の中心軸線C1の姿勢(向き)と一致しているか否かを確認するための可視光Xを、被締付具81に照射するよう構成されている。
【0018】
以下に、本例のロボットシステム1に用いられる教示用治具5、及び教示用治具5を用いたロボット教示方法について、
図1〜
図4を参照して詳説する。
本例のロボットシステム1は、自動車のボディに対してドア(バックドア)を組み付ける工程において用いられる。より具体的には、ボディに設けられたワーク8としてのヒンジ部の表面801には、被締付具81としてのボルトが突出して設けられている。このボルトは、おねじが設けられた軸部として形成されている。そして、ヒンジ部にドアを合わせ、ボルトに対して締付具82としてのナットを締め付けることによって、ボディのヒンジ部にドアが取り付けられる。
【0019】
ロボットシステム1においては、移動先端部に設けられた保持部にドアを保持して、移動先端部を移動させるロボット(図示略)と、移動先端部21に設けられた締付工具3によって締付具82としてのナットの締付を行うロボット2とを用いる。ロボット2は、5軸以上の関節部をサーボモータによって回動させる多関節ロボットである。
【0020】
図1に示すように、制御装置11には、ロボット2の位置及び姿勢の教示(オンラインティーチング)を行う際に、作業者が操作可能な教示ペンダント12が設けられている。作業者は、教示ペンダント12を操作して、ロボット2を動作させ、締付工具3のソケット装着部31に取り付けられた教示用治具5を移動させることができる。また、作業者は、教示ペンダント12を操作して、複数の教示箇所における教示用治具5の位置及び姿勢のデータを、教示プログラムとして制御装置11に記憶させることができる。
【0021】
締付工具3は、モータによってソケット装着部31を回転させるよう構成されている。ソケット装着部31の先端部は、断面形状が多角形である軸形状に形成されている。ソケット4の一端には、ソケット装着部31に嵌合される嵌合凹部42が形成されており、ソケット4の他端には、ナットを保持するための保持凹部41が形成されている。
【0022】
図2に示すように、教示用治具5の一端側には、可視光Xを照射するライト51が設けられている。このライト51は、ロボット2又は締付工具3に設けられた電源、又は教示用治具5に配置された電池によって可視光Xを発する構造とすることができる。教示用治具5の他端には、ソケット4と同様に、締付工具3のソケット装着部31に嵌合される嵌合凹部52が形成されている。教示用治具5は、ソケット4の形状及び大きさと類似する形状及び大きさに形成されている。
締付工具3のソケット装着部31とソケット4の嵌合凹部42とは、回転トルクを伝達できる種々の形状にすることができる。
【0023】
図3、
図4に示すように、教示用治具5は、ライト51による可視光Xが被締付具81に照射されたときに、被締付具81の周囲に形成される影Yの状態によって、教示用治具5の中心軸線C2の姿勢が、被締付具81の中心軸線C1の姿勢と一致しているか否かを確認するよう構成されている。本例においては、ライト51による可視光Xが被締付具81に照射されたときに、作業者が、被締付具81の周囲に形成される影Yの状態を目視して、教示用治具5の中心軸線C2の姿勢が、被締付具81の中心軸線C1の姿勢と一致しているか否かを確認する。
【0024】
図3に示すように、教示用治具5のライト51によって被締付具81に可視光Xを照射するときに、教示用治具5の中心軸線C2が、被締付具81の中心軸線C1に対して傾斜している場合には、被締付具81の影Yが、被締付具81の中心から一方側に偏って形成される。この場合、作業者は、この被締付具81の影Yの偏りがなくなるように、教示ペンダント12を操作して教示用治具5の位置及び姿勢を変化させることができる。
【0025】
一方、
図4に示すように、教示用治具5のライト51によって被締付具81に可視光Xを照射するときに、教示用治具5の中心軸線C2が、被締付具81の中心軸線C1とほぼ一致している場合には、被締付具81の影Yが、ほとんど形成されないか、被締付具81の中心にほぼ集まって形成される。この場合、作業者は、被締付具81の影Yの状態を確認することによって、教示用治具5の中心軸線C2の姿勢が、被締付具81の中心軸線C1の姿勢に対してほぼ一致していることを確認することができる。
【0026】
本例の教示用治具5は、ワーク8の表面801に突出して設けられた被締付具81の姿勢に対して、締付工具3のソケット4の姿勢が一致する状態を、模擬的に簡単に形成することができるものである。
ロボット教示方法として、ロボット2の教示(被締付具81に対するソケット4の位置及び姿勢の教示)を行う際には、締付工具3のソケット装着部31に、ソケット4の代わりに教示用治具5を装着する。そして、作業者は、教示ペンダント12を操作してロボット2の移動先端部21を移動させることにより、教示用治具5を、ワーク8に設けられた被締付具81に近づける。
【0027】
このとき、
図3、
図4に示すように、教示用治具5のライト51から発せられる可視光Xが被締付具81に照射される。そして、作業者は、教示用治具5の中心軸線C2の姿勢が、ワーク8における被締付具81の中心軸線C1の姿勢と一致しているか否かを、被締付具81の周囲に形成される影Yの状態を目視して確認することができる。これにより、ワーク8における被締付具81の中心軸線C1の姿勢に対して、教示用治具5の中心軸線C2の姿勢を簡単に一致させることができる。
なお、教示用治具5の中心軸線C2の姿勢と、被締付具81の中心軸線C1の姿勢とは、被締付具81に対する締付具82の締付が可能な所定の誤差範囲を含んで一致していればよい。
【0028】
また、
図2に示すように、作業者は、教示ペンダント12を操作して、教示用治具5の中心軸線C2の姿勢をワーク8における被締付具81の中心軸線C1の姿勢に合わせるときには、教示用治具5の先端面501が被締付具81の先端面811に対面するよう、教示用治具5の位置を調整する。そして、作業者は、教示用治具5の位置及び姿勢を決定して、この位置及び姿勢を、教示プログラムにおける位置及び姿勢のデータとして、制御装置11に記憶させることができる。
【0029】
教示用治具5の位置は、教示用治具5の先端面501が被締付具81の先端面811から所定の距離離れた状態において教示することができる。そして、教示用治具5の位置は、ロボット2における機能を利用して、教示用治具5の姿勢が変化しない状態で、教示用治具5をその中心軸線C1の方向に移動させて変化させることができる。
また、教示用治具5を用いて、位置及び姿勢の仮の状態をロボット2に教示し、その後、ソケット4を用いて、最終的な位置及び姿勢をロボット2に教示することもできる。
【0030】
それ故、本例のロボットシステム1に用いられる教示用治具5、及び教示用治具5を用いたロボット教示方法によれば、ワーク8の表面801に突出する被締付具81に対する、ソケット4の位置及び姿勢の教示を簡単に行うことができる。