(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記トレッドプロファイルラインは、タイヤセンターラインを横切り、第1の曲率半径を有する第1のプロファイル領域と、前記第1のプロファイル領域の両端と接続され、それぞれ第2の曲率半径を有する2つの第2のプロファイル領域とを有し、
タイヤセンターラインから前記位置Bまでのタイヤ幅方向長さTWと、タイヤセンターラインから前記第1のプロファイル領域と前記第2のプロファイル領域との接続位置までのタイヤ幅方向長さTW1との比TW1/TWが0.5〜0.65である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
前記プロファイルラインは、タイヤセンターラインを横切り、第1の曲率半径を有する第1のプロファイル領域と、前記第1のプロファイル領域の両端と接続され、それぞれ第2の曲率半径を有する2つの第2のプロファイル領域とを有し、
前記トレッドパターンの周方向主溝群は、さらに、前記第3の周方向主溝よりも第2の側に設けられ、タイヤ周方向に延在し、前記3本の周方向主溝の溝幅より溝幅が狭い周方向細溝を有し、
前記第1のプロファイル領域と前記第2のプロファイル領域との接続位置は、前記第1の周方向主溝あるいは前記第1の周方向主溝の縁、及び前記周方向細溝あるいは前記周方向細溝の縁に位置する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
前記空気入りタイヤの総幅SWの半分と、タイヤセンターラインから前記位置Bまでのタイヤ幅方向長さTWとの比TW/(SW/2)が0.75〜0.95である、請求項1から7のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
正規リムに装着し、空気圧を180kPaとした、無負荷状態の条件で得られる前記空気入りタイヤの総幅SWと、正規リムに装着し、空気圧を180kPaとし、最大負荷荷重の55%の負荷状態の条件で得られる路面と接地する接地幅CPとの比CP/SWが0.75〜0.85である、請求項1から8のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
前記第1の半トレッド領域の溝面積比Sinが24〜28%であり、前記第2の半トレッド領域の溝面積比Soutが12〜16%である、請求項1から9のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
前記トレッドパターンは、さらに、前記第1の周方向主溝よりも第1の側に位置する第1のショルダー陸部の領域において、一端がタイヤ接地端において開口し、他端が第2の側に延びて前記第1のショルダー陸部の領域内で閉塞する、タイヤ周方向に間隔をあけて設けられた複数の第1のショルダーラグ溝を有し、
前記第1のラグ溝および前記第2のラグ溝は、前記第1のショルダーラグ溝よりもタイヤ幅方向に対し大きく傾斜し、かつ、タイヤ幅方向からタイヤ周方向の同じ側に向かって傾斜するとともに、前記第2のラグ溝は、前記第1のラグ溝よりもタイヤ幅方向に対する傾斜角度が大きい、請求項1から10のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
前記空気入りタイヤの車両装着時に前記第1の半トレッド領域を車両内側に配し、前記第2の半トレッド領域を車両外側に配するための情報がタイヤ表面に表示されている、請求項1から15のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の空気入りタイヤは、トレッドパターンが設けられないスリックタイヤであるため、このタイヤにトレッドパターンを設けても、ウェット操縦安定性が必ずしも向上するわけではない。さらには、トレッドパターンとして従来より用いられる周方向主溝やラグ溝を何ら工夫せずに設けると、空気入りタイヤの転動に起因する車外通過騒音が大きくなり、公道上で使用することができない。また、上述の空気入りタイヤを、55%以下の低扁平率で、装着すべきリムのリム径が16インチ以上のタイヤに適用しても、十分なウェット操縦安定性が得られない。具体的には、ウェット路面走行中の車両の横加速度の高さと、タイヤの路面に対する滑り開始時の車両挙動のコントロールのし易さも十分でない。
【0006】
そこで、本発明は、55%以下の低扁平率で、装着すべきリムのリム径が16インチ以上のトレッドパターン付き空気入りタイヤのような高性能の空気入りタイヤであって、ウェット操縦安定性に優れ車外通過騒音を低下させる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、空気入りタイヤである。当該空気入りタイヤは、
タイヤセンターラインを境としてタイヤ幅方向の第1の側に配されるトレッドパターンの第1の半トレッド領域と、タイヤセンターラインを境としてタイヤ幅方向の第2の側に配されるトレッドパターンの第2の半トレッド領域を有するトレッド部と、
前記トレッド部のタイヤ径方向内側に配されるベルト層と、を有し、
前記トレッド部の前記第1の半トレッド領域及び前記第2の半トレッド領域は、
正規リムに装着し、空気圧を180kPaとした、無負荷状態の条件におけるタイヤプロファイルにおいて、タイヤセンターライン上の前記トレッド部の表面の位置Aと、前記ベルト層のエッジを通りタイヤ径方向に平行な直線Pがトレッド部の表面と交差するトレッド表面の位置Bとの間を結ぶ直線Xと、位置Aからタイヤ幅方向に平行に引いた直線Yとのなす角βが3度以上7度以下となるトレッドプロファイルラインと、
前記第1の半トレッド領域に設けられたタイヤ周方向に延びる第1の周方向主溝と、前記第1の周方向主溝に対して第2の側に位置し、前記第1の半トレッド領域あるいはセンターラインの領域に設けられたタイヤ周方向に延びる第2の周方向主溝と、前記第2の半トレッド領域に設けられた第3の周方向主溝と、を含み、それぞれの溝深さが3〜6.5mmであり、前記第1の周方向主溝および前記第2の周方向主溝の溝幅の平均である平均溝幅Winと、前記第3の周方向主溝の溝幅Woutとの比Wout/Winが0.45〜0.75である、周方向主溝群と、
前記第1の周方向主溝から延びて前記第1の周方向主溝の第2の側に接する第1の陸部の領域内で閉塞する、タイヤ周方向に間隔をあけて設けられた複数の第1のラグ溝と、前記第2の周方向主溝から延びて前記第2の周方向主溝の第2の側に接する第2の陸部の領域内で閉塞する、タイヤ周方向に間隔をあけて設けられた複数の第2のラグ溝と、を含むラグ溝群を有する、トレッドパターンと、を有する。
【0008】
ここで、前記トレッドプロファイルラインは、タイヤセンターラインを横切り、第1の曲率半径を有する第1のプロファイル領域と、前記第1のプロファイル領域の両端と接続され、それぞれ第2の曲率半径を有する2つの第2のプロファイル領域とを有し、
タイヤセンターラインから前記位置Bまでのタイヤ幅方向長さTWと、タイヤセンターラインから前記第1のプロファイル領域と前記第2のプロファイル領域との接続位置までのタイヤ幅方向長さTW1との比TW1/TWが0.5〜0.65である、ことが好ましい。
【0009】
また、前記位置Aと前記接続位置との間を結ぶ直線と前記直線Yとのなす角度は、0.5〜2.0度である、ことが好ましい。
【0010】
前記プロファイルラインは、タイヤセンターラインを横切り、第1の曲率半径を有する第1のプロファイル領域と、前記第1のプロファイル領域の両端と接続され、それぞれ第2の曲率半径を有する2つの第2のプロファイル領域とを有し、
前記トレッドパターンの周方向主溝群は、さらに、前記第3の周方向主溝よりも第2の側に設けられ、タイヤ周方向に延在し、前記3本の周方向主溝の溝幅より溝幅が狭い周方向細溝を有し、
前記第1のプロファイル領域と前記第2のプロファイル領域との接続位置は、前記第1の周方向主溝あるいは前記第1の周方向主溝の縁、及び前記周方向細溝あるいは前記周方向細溝の縁に位置する、ことが好ましい。
【0011】
前記トレッドパターンは、さらに、前記周方向細溝と交差する、タイヤ周方向に間隔をあけて設けられた複数の第3のラグ溝を有し、
前記第3のラグ溝のタイヤ幅方向の両端のそれぞれがタイヤ周方向に延びる溝に接続されることなく、前記第3のラグ溝は前記周方向細溝のタイヤ幅方向の両側の陸部の領域内で閉塞することが好ましい。
【0012】
このとき前記第3のラグ溝は、タイヤ周方向に向かって凸となってトレッド表面内で湾曲する第1の湾曲溝であることが好ましい。
【0013】
さらに、前記第1のラグ溝は、タイヤ幅方向からタイヤ周方向に傾斜し、
前記第1の湾曲溝の凸の向きは、前記タイヤ幅方向を境にして前記第1のラグ溝の傾斜の向きと逆であることが好ましい。
【0014】
前記空気入りタイヤの総幅SWの半分と、タイヤセンターラインから前記位置Bまでのタイヤ幅方向長さTWとの比TW/(SW/2)が0.75〜0.95であることが好ましい。
【0015】
また、正規リムに装着し、空気圧を180kPaとした、無負荷状態の条件で得られる前記空気入りタイヤの総幅SWと、正規リムに装着し、空気圧を180kPaとし、最大負荷荷重の55%の負荷状態の条件で得られる路面と接地する接地幅CPとの比CP/SWが0.75〜0.85であることが好ましい。
【0016】
前記第1の半トレッド領域の溝面積比Sinが24〜28%であり、前記第2の半トレッド領域の溝面積比Soutが12〜16%であることが好ましい。
【0017】
前記トレッドパターンは、さらに、前記第1の周方向主溝よりも第1の側に位置する第1のショルダー陸部の領域において、一端がタイヤ接地端において開口し、他端が第2の側に延びて前記第1のショルダー陸部の領域内で閉塞する、タイヤ周方向に間隔をあけて設けられた複数の第1のショルダーラグ溝を有し、
前記第1のラグ溝および前記第2のラグ溝は、前記第1のショルダーラグ溝よりもタイヤ幅方向に対し大きく傾斜し、かつ、タイヤ幅方向からタイヤ周方向の同じ側に向かって傾斜するとともに、前記第2のラグ溝は、前記第1のラグ溝よりもタイヤ幅方向に対して傾斜角度が大きいことが好ましい。
【0018】
前記トレッドパターンは、さらに、前記第3の周方向主溝と交差する、タイヤ周方向に間隔をあけて設けられた複数の第4のラグ溝を有し、
前記第4のラグ溝のタイヤ幅方向の両端のそれぞれがタイヤ周方向に延びる溝に接続することなく、前記第4のラグ溝は前記第3の周方向細溝のタイヤ幅方向の両側の陸部の領域内で閉塞することが好ましい。
【0019】
前記第4のラグ溝は、タイヤ周方向に向かって凸となってトレッド表面内で湾曲する第2の湾曲溝であることが好ましい。
【0020】
前記第1のラグ溝は、タイヤ幅方向からタイヤ周方向に傾斜し、
前記第2の湾曲溝の凸の向きは、前記タイヤ幅方向を境にして前記第1のラグ溝の傾斜の向きと同じであることが好ましい。
【0021】
前記第1の周方向主溝の一対の溝壁のうち、前記第1のラグ溝の開口を有する溝壁と対向する溝壁は開口を有さず、タイヤ周方向の全周にわたって直線状に延び、
前記第2の周方向主溝の一対の溝壁のうち、前記第2のラグ溝の開口を有する溝壁と対向する溝壁は開口を有さず、タイヤ周方向の全周にわたって直線状に延びることが好ましい。
【0022】
さらに、前記空気入りタイヤの車両装着時に前記第1の半トレッド領域を車両内側に配し、前記第2の半トレッド領域を車両外側に配するための情報がタイヤ表面に表示されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
上記態様の空気入りタイヤでは、ウェット操縦安定性に優れ車外通過騒音を低下させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本実施形態の空気入りタイヤについて説明する。
なお、以下の説明において、タイヤ幅方向は、空気入りタイヤの回転軸と平行な方向である。タイヤ幅方向外側は、タイヤ幅方向において、タイヤ赤道面を表すタイヤセンターラインから離れる方向である。また、タイヤ幅方向内側は、タイヤ幅方向において、タイヤセンターラインに近づく側である。タイヤ周方向は、空気入りタイヤの回転軸を回転の中心として回転する方向である。タイヤ径方向は、空気入りタイヤの回転軸に直交する方向である。タイヤ径方向外側は、前記回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ径方向内側は、前記回転軸に近づく側をいう。
また、以降で説明する正規リムとは、JATMAに規定される「標準リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、正規内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」である。あるいは、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」とすることもできる。最大負荷荷重とは、正規内圧に対して規定されるものであり、ETRTOに規定されている。
以降で説明する接地幅は、平板上に形成される接地面におけるタイヤ幅方向の直線距離の最大値をいう。
【0026】
図1は、本実施形態の空気入りタイヤ(以降、単にタイヤという)1を示す。タイヤ1は、トレッドパターン2を有する競技用空気入りタイヤ(Sタイヤ)であり、低扁平率が55%以下で、装着すべきリムのリム径(タイヤ内径)が16インチ以上となっている。また、タイヤ幅としてタイヤ上に表記される数値(タイヤサイズ)は、195以上であることが好ましい。このような空気入りタイヤは、トレッドゴムのtanδが温度20℃において0.30以上である。
【0027】
[タイヤ構造]
図2は、本実施形態のタイヤ1のタイヤ回転軸を含む切断面でタイヤ1を切断したときのタイヤ1のプロファイルの図である。タイヤ1は、骨格材として、カーカスプライ層3と、ベルト層4と、一対のビードコア5とを有し、これらの骨格材の周りに、トレッドゴム6と、サイドゴム7と、ビードフィラーゴム8と、インナーライナゴム9と、を主に有する。さらに、タイヤ1は、ベルトカバー層10も備える。
図2に示す切断面では、理解のしやすさのため、第1のショルダーラグ溝41、第1のラグ溝45、第2のラグ溝47、湾曲溝51、第3のラグ溝49、第2のショルダーラグ溝43(いずれも後述)を、それぞれが含む状態で示している。
【0028】
カーカスプライ層3は、一対の円環状のビードコア5の間を巻きまわしてトロイダル形状を成した、有機繊維をゴムで被覆した2層の内側プライ層3a及び外側プライ層3bで構成されている。内側プライ層3a及び外側プライ層3bに配される有機繊維は、タイヤ幅方向に対して互いに異なる方向に傾斜して延びており、2層間で交錯するように有機繊維の傾斜角度が設定されている。この傾斜角度は、タイヤ幅方向に対して±30度の範囲内である。
【0029】
カーカスプライ層3のうち、タイヤセンターラインCLにおいてタイヤ径方向内側に配されている内側プライ層3a及びタイヤ径方向外側に配されている外側プライ層3bは、タイヤ径方向内側に向かって延びてビードコア5の周りに巻きまわされて、タイヤ径方向外側に向かって延びている。内側プライ層3aは、ビードフィラー5のタイヤ径方向外側の先端におけるタイヤ径方向の位置と同程度のタイヤ径方向の位置に端部を有する。一方、外側プライ層3bは、ビードコア5の周りに巻きまわされた後、内側プライ層3aの端部に対してタイヤ径方向外側に向かって延び、ベルト層4の端近傍で終了している。
【0030】
タイヤセンターラインCLを含むトレッド領域において、カーカスプライ層3のタイヤ径方向外側には、内側ベルト層4a及び外側ベルト層4bで構成されるベルト層4が設けられている。内側ベルト層4a及び外側ベルト層4bは、タイヤ周方向に対して、ベルト層4の延在する面内で、所定の角度、例えば20〜30度傾斜して配されたスチールコードにゴムを被覆した部材である。内側ベルト層4aのタイヤ幅方向の幅は外側ベルト層4bのタイヤ幅方向の幅に比べて広い。内側ベルト層4a及び外側ベルト層4bのスチールコードのタイヤ周方向に対する傾斜方向は互いに逆方向である。このため、内側ベルト層材4a及び外側ベルト層4bは、交錯層となっており、充填された空気圧によるカーカスプライ層3の膨張を抑制する。内側ベルト層4aのスチールコードのタイヤ幅方向に対する傾斜方向は、内側ベルト層4aと隣り合う外側プライ層3bの有機繊維の傾斜方向と同じである。
【0031】
ベルト層4のタイヤ径方向外側には、ベルト層4のタイヤ径方向外側からベルト層4を覆う、タイヤ周方向に延びる有機繊維をゴムで被覆した3層のベルトカバー層10が設けられている。3層のベルトカバー層10のうち、タイヤ径方向内側にある2層のベルトカバー層は、外側ベルト層4bのタイヤ幅方向に沿った幅全体を覆うように設けられている。3層のベルトカバー層10のうちタイヤ径方向外側に位置する最外層は、ベルト層4のタイヤ幅方向の端部を含むショルダー領域を覆うように設けられ、タイヤセンターラインCLを含むセンター領域には設けられていない。ベルトカバー層10のタイヤ径方向外側には、トレッドゴム6が設けられている。タイヤ1のトレッドゴム6が設けられた部分がトレッド部である。トレッドゴム6のタイヤ幅方向の両端部には、サイドゴム7が接続されてサイド部を形成している。サイドゴム7のタイヤ径方向内側の端には、リムクッションゴム部材が設けられ、タイヤ1を装着するリムと接触する。ビードコア5のタイヤ径方向外側には、ビードコア5の周りに巻きまわされる前のカーカスプライ層3の部分と、ビードコア5の周りに巻きまわされた後のカーカスプライ層5の部分との間に挟まれるようにビードフィラーゴム8が設けられている。タイヤ1とリムとで囲まれる空気を充填するタイヤ空洞領域に面するタイヤ1の内表面には、インナーライナゴム9が設けられている。
【0032】
この他に、タイヤ1は、ビードコア5の周りに巻きまわしたカーカスプライ層3とビードフィラーゴム8との間に挟む内側ビード補強材11a、及びビードコア5の周りに巻きまわされるカーカスプライ層3を包む外側ビード補強材11bを備える。
なお、
図2に示すタイヤ1の構造は一例であって、本実施形態のタイヤ1は、
図2に示す構造以外の構造を有してもよい。
なお、本実施形態のSタイヤであるタイヤ1のトレッドゴム6の最大厚さは、3.5〜8.5mmであることが好ましく、より好ましくは4.5〜6.5mmである。
【0033】
[トレッドパターン]
図3は、本実施形態のタイヤ1のトレッドパターン2を分かりやすく平面展開視した図である。トレッドパターン2を有するタイヤ1は、競技用タイヤに好適に用いることができる。
【0034】
本実施形態のタイヤ1は、
図3に示すトレッドパターン2をタイヤ周方向に並べたものであるが、タイヤ周方向にトレッドパターンを並べるとき、トレッドパターンにピッチバリエーションを施してもよい。
【0035】
トレッドパターン20を有するタイヤ1は、車両装着時のタイヤ幅方向の向きが指定されている。タイヤセンターラインCLを境として車両装着時に車両内側である第1の側(
図3においてINで示す側)に配されるトレッドパターン2の部分を内側領域(第1の半トレッド領域)20aと呼び、車両外側である第2の側(
図3においてOUTで示す側)に配されるトレッドパターン2の部分を外側領域(第2の半トレッド領域)20bと呼ぶ。なお、以下の説明では、簡単に、第1の側を内側と呼び、第2の側を外側とも呼ぶ。
このように、本実施形態のタイヤは、後述するように、周方向主溝のタイヤ幅方向の位置がタイヤセンターラインCLに対して非対称の位置にあるので、車両装着時のトレッドパターンのタイヤ幅方向の向きに関する情報、すなわち、第1の半トレッド領域が内側を向くか、外側を向くかに関する情報は、例えば、タイヤ表面、サイドウォール表面に文字、記号等により表示されていることが好ましい。
図3に示されるタイヤ1は、車両の右輪に装着される。車両の左輪に装着されるタイヤのトレッドパターンは、
図3に示すトレッドパターン2と鏡像関係にある。
【0036】
トレッドパターン2は、周方向主溝群と、第1のショルダーラグ溝41および第2のショルダーラグ溝43と、複数の第1のラグ溝45および複数の第2のラグ溝47と、を主に有する。
【0037】
(周方向主溝群)
周方向主溝群は、タイヤ周方向に延在する3本の周方向主溝、すなわち第1の周方向主溝21、第2の周方向主溝23、第3の周方向主溝25(以下、単に、主溝21、主溝23、主溝25ともいう)を含む。第1の周方向主溝21は、内側領域20aに設けられ、第2の周方向主溝23は、第1の周方向主溝21に対してタイヤ幅方向における第2の側に位置し、内側領域20aまたはタイヤセンターラインCLの領域に設けられ、さらに、第3の周方向主溝25は外側領域20bに設けられている。このように外側領域20bに配される周方向溝の本数が、内側領域20aに配される周方向主溝の本数と等しいまたは少ないことによって、車外通過騒音が抑制される。第2の周方向主溝23は、本実施形態では、内側領域20aに設けられており、外側領域20bの周方向主溝の本数は、内側領域20aの周方向主溝の本数より少ない。なお、第2の周方向主溝23がタイヤセンターラインCLの領域に設けられている場合は、外側領域20bの周方向主溝の本数が内側領域20aの周方向主溝の本数と等しい。ここで、第2の周方向主溝23がタイヤセンターラインCLの領域に設けられているとは、タイヤセンターラインCLが、第2の周方向主溝23の領域上あるいは第2の周方向主溝23の縁を通ることをいう。
なお、
図1あるいは
図3に示すように、第1の周方向主溝21の一対の溝壁のうち、後述する第1のラグ溝45の開口を有する溝壁と対向する溝壁は開口を有さず、タイヤ周方向の全周にわたって直線状に延びており、第2の周方向主溝23の一対の溝壁のうち、後述する第2のラグ溝47の開口を有する溝壁と対向する溝壁は開口を有さず、タイヤ周方向の全周にわたって直線状に延びていることが好ましい。
【0038】
トレッドパターン2において、第1の周方向主溝21および第2の周方向主溝23の溝幅W21,W23の平均である平均溝幅Winと、第3の周方向主溝25の溝幅Woutとの比Wout/Winは0.45〜0.75である。なお、周方向溝の溝幅は、当該周方向溝のタイヤ幅方向のトレッド表面での長さであり、タイヤ新品時の溝幅である。比Wout/Winが0.45を下回ると、ウェット旋回時の外輪側のタイヤでの排水性能が低下し、ウェット操縦安定性が低下する。また、Woutが大きくなって比Wout/Winが0.45を下回ると、外側領域20bにおけるトレッドゴムのブロック剛性が高くなって、トレッドゴムが路面を打撃する音が大きくなり車外通過騒音を大きくする。外輪のタイヤとは、車両が例えば左旋回する際の車両右側に装着されたタイヤをいう。また、比Wout/Winが0.75を上回ると、車外通過騒音が悪化する。比Wout/Winは好ましくは0.5〜0.7であり、特に好ましくは0.6である。なお、第1の周方向主溝21の溝幅W21と、第2の周方向主溝23の溝幅W23は、互いに等しくてもよく、異なってもよい。
【0039】
トレッドパターン2において、第1の周方向主溝21、第2の周方向23、及び第3の周方向25の溝深さはそれぞれ3.0〜6.5mmであることが好ましい。溝深さが3.0mm未満であると、トレッドゴムのブロック剛性が過剰に高くなり、トレッドゴムが地面に接するときに発する音が大きくなり、さらに、ウェット操縦安定性が低下する。溝深さが6.5mmを超えると、トレッドゴムのブロック剛性が低下してドライ操縦安定性及びウェット操縦安定性が低下する。第1の周方向主溝21、第2の周方向23、及び第3の周方向25の溝深さは、より好ましくは3.5〜6.5mmであり、例えば、5.5mmである。例えば、溝幅W21,W23は7.0〜12.0mm、溝幅W25は3.8〜8.0mmである。第1の周方向主溝21、第2の周方向主溝23、及び第3の周方向主溝25の溝幅W21,W23,W25に対する第1の周方向主溝21、第2の周方向主溝23、及び第3の周方向主溝25の溝深さの割合(溝幅溝深さ比)はそれぞれ、70〜130%であることが好ましく、より好ましくは、90〜110%である。
【0040】
周方向主溝群は、さらに、
図3に示すように、周方向細溝27を含むことが好ましい。この場合、周方向細溝27は、第3の周方向主溝25に対して第2の側に位置し、第3の周方向主溝25に対してタイヤ幅方向の外側に設けられ、タイヤ周方向に延在する。周方向細溝27の溝幅W27は、第1の周方向主溝21、第2の周方向主溝23、及び第3の周方向主溝25の各溝幅より狭く、2.5mm以下である。ここで、外側領域20bは、内側領域20aと比べ、タイヤ周方向に延びる溝の溝幅が狭いとともに、タイヤ周方向に延びる溝の本数が少なく、溝面積比が小さくなる場合がある。このため、ブロック剛性が高くなりやすい。外側領域20bと内側領域20aとの間でブロック剛性の差が大きくなると、ドライ操縦安定性及びウェット操縦安定性が悪化する。本実施形態では、周方向細溝27が第3の周方向主溝25に対して第2の側の領域に位置することで、外側領域20bのブロック剛性が適正化され、内側領域20aと外側領域20bとのブロック剛性の差が小さく抑えられている。これにより左右旋回時のドライ操縦安定性及びウェット操縦安定性が確保される。
周方向細溝27の溝幅は、タイヤ騒音性能を向上させる観点から、3.0mm以下であることが好ましく、例えば1.5mmである。また、周方向細溝27の溝幅は、内側領域20bのブロック剛性との差を小さくする観点から、1.0mm以上であることが好ましく、例えば1.5mmである。
【0041】
周方向主溝群に含まれる4本の第1の周方向主溝21、第2の周方向主溝23、第3の周方向主溝25、及び周方向細溝27の溝幅W21,W23,W25,W27は、タイヤ騒音性能を向上させる観点から、第1の周方向主溝21または第2の周方向主溝23、第3の周方向主溝25、周方向細溝27の順に小さいことが好ましい。例えば、溝幅W21,W23は7.0〜12.0mm、溝幅W25は3.8〜8.0mm、溝幅W27は2.0〜3.0mmである。
【0042】
(ショルダーラグ溝)
第1のショルダー陸部は、第1の周方向主溝21に対して第1の側に設けられている。
複数の第1のショルダーラグ溝41は、タイヤ周方向に間隔をあけて設けられている。第1のショルダーラグ溝41は、内側領域20aのうち、第1の周方向主溝21に対して車両内側である第1の側に位置する第1のショルダー陸部の領域31において、一端41aがタイヤ接地端22aにおいて開口し、他の端部41bがタイヤセンターラインCL側、すなわち、第2の側に向かって延びて第1のショルダー陸部の領域31内で閉塞する。なお、第1のショルダー陸部の領域31は、トレッドパターン2のうち、第1の周方向主溝21とタイヤ幅方向における接地端22aとにより画される、タイヤ周方向に延びる領域である。
【0043】
第2のショルダー陸部は、第3の周方向主溝25に対して第2の側に設けられている。
複数の第2のショルダーラグ溝43は、タイヤ周方向に間隔をあけて設けられている。第2のショルダーラグ溝43は、外側領域20bのうち、第3の周方向主溝25に対して第2の側に位置する第2のショルダー陸部の領域33において、一端43bの側ではタイヤ接地端22bで開口し、他端43aの側ではセンターラインCLの側、すなわち、第1の側に向かって延びて第2のショルダー陸部の領域33内で閉塞する。なお、第2のショルダー陸部の領域33は、トレッドパターン2のうち、第3の周方向主溝25とタイヤ幅方向におけるタイヤ接地端22bとにより画される、タイヤ周方向に延びる領域である。
第1のショルダーラグ溝41、第2のショルダーラグ溝43それぞれの接地端22a,22bと反対側の端部41b,43aにおいて、第1のショルダーラグ溝41、第2のショルダーラグ溝43が、第1のショルダー陸部の領域31、第2のショルダー陸部の領域33内で閉塞していることで、第1の周方向主溝21及び周方向細溝27内の空気の排出による放射音が接地端22a,22bにおいて生じないので、第1のショルダーラグ溝41及び第2のショルダーラグ溝43が第1の周方向主溝21及び周方向細溝27に接続されている場合に比べて、地面に接して発生するポンピング音が小さくタイヤの車外通過騒音は低下する。また、第1のショルダーラグ溝41及び第2のショルダーラグ溝43が、第1のショルダー陸部の領域31及び第2のショルダー陸部の領域33内で閉塞しているので、トレッドゴムのブロック剛性の低下を抑制することができ、コーナリング特性を安定させる。ここで、接地端22a,22bは以下のように定められる。接地端22a,22bは、タイヤ1を正規リムに組み付け、正規内圧を充填し、正規荷重の88%を負荷荷重とした条件において水平面に接地させたときの接地面のタイヤ幅方向端部である。正規荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。
【0044】
(ラグ溝)
複数の第1のラグ溝45は、タイヤ周方向に間隔をあけて設けられている。本明細書において、ショルダーラグ溝を含め、ラグ溝は、溝幅が3.5〜9.0mmであり、溝深さが2.5〜5.0mmである溝をいう。第1のラグ溝45は、第1の周方向主溝21および第2周方向主溝23によって画された第1の陸部の領域35において、一端45aが第1の周方向主溝21に開口し、他端45bが第1の陸部の領域35内に位置する。すなわち、第1のラグ溝45は、第1の周方向主溝21から第2の周方向主溝23に向かって延びて、第2の周方向主溝23と接続することなく、第1の陸部の領域35内で閉塞する。
複数の第2のラグ溝47は、タイヤ周方向に間隔をあけて設けられている。第2のラグ溝47は、第2の周方向主溝23および第3の周方向主溝25によって画された第2の陸部の領域37において、一端47aが第2の周方向主溝23に開口し、他端47bが第2の陸部の領域37内に位置する。すなわち、第2のラグ溝47は、第2の周方向主溝23から第3の周方向主溝25に向かって延びて、第3の周方向主溝25と接続することなく、第2の陸部の領域37内で閉塞する。
【0045】
このように第1のラグ溝45、第2のラグ溝47の端45b,47bが、第1の陸部の領域35、第2の陸部の領域37を画する第1の周方向主溝23及び第2の周方向主溝25と接続されずに第1の陸部の領域35、第2の陸部の領域37内に位置することで、第1の陸部の領域35、第2の陸部の領域37において、タイヤ周方向に連続する連続陸部(リブ)が形成される。第1のラグ溝45、第2のラグ溝47は、隣り合う主溝間をつなぐラグ溝ではないので、隣り合う主溝間をつなぐラグ溝において形成される音の発生原因となる気柱に比べて気柱は短く音圧が低減するので、タイヤの車外通過騒音が低減される。
【0046】
なお、複数の第1のラグ溝45、複数の第2のラグ溝47は、上述のように周方向主溝の縁のうち一方の縁から一方の側の陸部の領域に延びるように設けられるが、当該周方向主溝の縁のうち両方の縁から両方の側の陸部の領域に延びるように設けられてもよい。例えば、第2の周方向主溝23から、第2の陸部の領域37内に延びる第2のラグ溝47の他に、第1の陸部の領域35内に延びるラグ溝が設けられてもよく、ラグ溝が、第2の周方向主溝23と交差し、その両端が第1の陸部の領域35及び第2の陸部の領域37に位置するよう設けられてもよい。また、これらの態様が組み合わせられてもよい。この場合に、周方向主溝に対して同じ側の陸部の領域に設けられたラグ溝同士は、タイヤ幅方向に対し同じ方向に傾斜するよう延びて設けられることが好ましい。また、ラグ溝が周方向主溝と交差する場合は、当該ラグ溝が、タイヤ周方向のいずれかの側に湾曲または屈曲していることが好ましい。ラグ溝が湾曲している場合は、左右旋回時にラグ溝のエッジ全体が路面に対して同時に接触する、いわゆる線接触の状態が起きないように、ラグ溝の湾曲形状を定めるとよい。このようなラグ溝を形成することにより、耐摩耗性を確保でき、タイヤ騒音を抑制できる。
【0047】
第1のラグ溝45および第2のラグ溝47は、第1のショルダーラグ溝41よりもタイヤ幅方向に対し大きく傾斜し、かつ、タイヤ幅方向からタイヤ周方向の同じ側に向かって傾斜するとともに、第2のラグ溝47は第1のラグ溝45よりも、タイヤ幅方向に対する傾斜角度(鋭角)が大きいことが好ましい。すなわち、第2のラグ溝47の向きは、第1のラグ溝45の向きに比べてタイヤ周方向に近い。ここで、第1のショルダーラグ溝41の傾斜角度は、第1のショルダーラグ溝41が接地端22aと交わる部分の中心点と第1のショルダーラグ溝41の外側(第2の側)の端部の中心点とを結ぶ直線と、タイヤ幅方向とがなす角の角度であり、第1のショルダーラグ溝41は、タイヤ幅方向に対し傾斜していてもよく、傾斜していなくてもよい。また、第1のラグ溝45、第2のラグ溝47の傾斜角度は、それぞれの溝の延在方向の両端の中心点を結ぶ直線とタイヤ幅方向とのなす角の角度である。第1のショルダーラグ溝41、第1のラグ溝45及び第2のラグ溝47の傾斜角度は、タイヤ周方向に隣り合うラグ溝間の距離(ピッチ長さ)が長くなるほど大きくなるよう、ピッチ長さの大きさに応じて定められる。第1のショルダーラグ溝41、第1のラグ溝45、第2のラグ溝47はそれぞれ、タイヤ幅方向に対し、時計回り方向に傾斜してもよく、反時計回り方向に傾斜してもよい。
【0048】
競技用タイヤは、直進、および、微小舵角〜大舵角での旋回に加え、高いシビアリティを持つサーキット走行が行われるが、特に、微小舵角〜大舵角での旋回が頻繁に行われる。このことを考慮して、タイヤ幅方向に隣接するラグ溝は、互いに異なる傾斜角度を有するよう形成されることが好ましい。タイヤ幅方向に隣接するラグ溝同士が同じ傾斜角度を有している場合は、ラグ溝同士が路面に対して同時に線接触するような舵角が生じることがある。この場合、線接触するラグ溝の延在方向と同じ方向に延びるラグ溝の縁を同時に捲る摩耗、いわゆる捲れ摩耗が発生し、捲れ摩耗が発生した部分を起点にして摩耗が進展し、早期摩耗に至るおそれがある。また、後述するように車両静止時の対地キャンバー角が負の角度範囲にあるネガティブキャンバーである場合は、車両内側に傾斜するように向いて装着される内側領域20aでの排水性を促進するために、タイヤ幅方向に隣接するラグ溝間で、傾斜する方向が同じであること、すなわち、タイヤ幅方向に対しいずれも時計回り方向またはいずれも反時計回り方向であることが好ましい。
このような観点から、第1のショルダーラグ溝41の傾斜角度は、タイヤ幅方向に対し0〜7度であり、第1のラグ溝45の傾斜角度はそれぞれ15〜50度であることが好ましい。さらに、第1のショルダーラグ溝41、第1のラグ溝45、第2のラグ溝47の傾斜角度は、第1のショルダーラグ溝41、第1のラグ溝45、第2のラグ溝47の順に小さいことが好ましい。すなわち、第1のショルダーラグ溝41の傾斜角度が最も小さく、第2のラグ溝47の傾斜角度が最も大きいことが好ましい。これらの傾斜角度の大きさの順が逆である場合は、接地端に近いラグ溝であるほど傾斜角度が急であるため、排水性が悪くなる。上記した順に傾斜角度が大きい場合に、第2のラグ溝47の傾斜角度は、30〜60度であることが好ましい。これにより、ウェット操縦安定性が向上する。なお、第1のショルダーラグ溝41の傾斜する方向は、第1のラグ溝45、第2のラグ溝47と異なる方向であってもよい。以上の観点から、第1のショルダーラグ溝41、第1のラグ溝45、第2のラグ溝47の傾斜角度は、例えば、タイヤ幅方向に対して反時計回り方向に、それぞれ5度、45度、50度である。
【0049】
トレッドパターン2は、さらに、複数の第3のラグ溝49を有する。複数の第3のラグ溝49は、周方向細溝27と交差し、タイヤ周方向に間隔をあけて設けられている。なお、第1のショルダーラグ溝41、第1のラグ溝45、及び第2のラグ溝47の溝幅R41,R45,R47のうちの最大溝幅Rinが、第3のラグ溝49及び第2のショルダーラグ溝の溝幅R49、R43のうちの最大溝幅Routよりも大きいまたは等しいことが好ましい。溝幅R41,R43,R45,R47,R49は、それぞれのラグ溝41,43,45,47,49の延在方向と直交する方向のトレッド表面での長さであり、タイヤ新品時のものをいう。溝幅R41,R45,R47は、互いに等しくてもよく、異なってもよい。溝幅R49,R43は、互いに等しくてもよく、異なってもよい。最大溝幅Rinが最大溝幅Routよりも大きいまたは等しいことにより、タイヤ1の車外通過騒音の発生が抑制される。最大溝幅Routと最大溝幅Rinとの比Rout/Rinは0.65〜1を満たすことがより好ましい。
【0050】
第3のラグ溝49は、具体的には、周方向細溝27と交差し、両端49a,49bがそれぞれ、第3の陸部の領域39、第2のショルダー陸部の領域33内で位置し、第3のラグ溝49のタイヤ幅方向の両端49a,49bのそれぞれがタイヤ周方向に延びる溝に接続されることなく、第3のラグ溝49は周方向細溝27のタイヤ幅方向の両側の陸部の領域内で閉塞する。なお、第3の陸部の領域39は、第3の周方向主溝25と周方向細溝27とにより画されるタイヤ周方向に延びる領域である。第3のラグ溝49は、より具体的には、周方向細溝27と交差する部分において、その両端に対してタイヤ周方向の一方の側に凸状に湾曲した湾曲溝となっている。本実施形態では、第3のラグ溝(第1の湾曲溝)49の凸の向きは、タイヤ幅方向を境にして、タイヤ幅方向からタイヤ周方向に傾斜する第1のラグ溝45の傾斜の向きと逆である。すなわち、第3のラグ溝49は、
図3の紙面下方に向かって凸となるよう湾曲している。これにより、左右旋回時にラグ溝のエッジ全体が路面に対して同時に接触する、いわゆる線接触の状態が起きない。第3のラグ溝49の溝深さは、周方向細溝27の溝深さと異なってもよく、等しくてもよい。
【0051】
トレッドパターン2は、さらに、複数の第4のラグ溝51を有している。複数の第4のラグ溝51は、タイヤ周方向に間隔をあけて設けられ、第3の周方向主溝25と交差する。第4のラグ溝51のタイヤ幅方向の両端のそれぞれがタイヤ周方向に延びる溝に接続することなく、第4のラグ溝51は第3の周方向主溝25のタイヤ幅方向の両側の陸部の領域37,39内で閉塞することが好ましい。第4のラグ溝51は、タイヤ周方向に向かって凸となってトレッド表面内で湾曲する湾曲溝(第2の湾曲溝)であるが、湾曲溝でなくてもよい。第4のラグ溝51が第2の湾曲溝である場合、第2の湾曲溝の凸の向きは、タイヤ幅方向を境にして、タイヤ幅方向からタイヤ周方向に傾斜した第1のラグ溝45の傾斜の向きと同じであることが好ましい。これにより、左右旋回時にラグ溝のエッジ全体が路面に対して同時に接触する、いわゆる線接触の状態が起き難くなる。
なお、第3のラグ溝(第1の湾曲溝)49および第4のラグ溝(第2の湾曲溝)51は、いずれか一方のみが湾曲し、他方が湾曲していなくてもよい。湾曲していない態様としては、例えば、当該溝の一端から他端に向かって一直線状に延びる態様、当該溝が第3の周方向主溝25と交差する部分において屈曲するくの字形状に延びる態様がある。また、第3のラグ溝(第1の湾曲溝)49および第4のラグ溝(第2の湾曲溝)51は、トレッドパターン2に設けられていなくてもよい。
第3のラグ溝(第1の湾曲溝)49および第4のラグ溝(第2の湾曲溝)51はそれぞれ、両端49a,49b、両端51a,51bが、隣接する他の周方向溝と接続されずに陸部内の領域に位置することが好ましい。例えば、第4のラグ溝(第2の湾曲溝)51の両端51a,51bがそれぞれ、第2の周方向主溝23、周方向細溝27と接続されずに、第2の陸部の領域37、第2のショルダー陸部の領域33内に位置し、第4のラグ溝(第2の湾曲溝)が陸部内の領域内で閉塞することが好ましい。
【0052】
第3のラグ溝(第1の湾曲溝)49および第4のラグ溝(第2の湾曲溝)51はそれぞれ、第3の周方向主溝25、周方向細溝27と溝深さが等しいことが好ましい。また、第3のラグ溝(第1の湾曲溝)49および第4のラグ溝(第2の湾曲溝)51の溝幅R49,R51はそれぞれ、第3の周方向主溝25、周方向細溝27の溝幅W25、W27より広いことが好ましい。
【0053】
(溝面積比)
トレッドパターン2の内側領域22aの溝面積比Sinは24〜28%であり、外側領域20bの溝面積比Soutは12〜16%であり、Sin>Soutであることが好ましい。なお、上記した条件において溝面積比Sout、Sinは、トレッドパターン2におけるタイヤ周方向に隣り合うラグ溝間の距離であるピッチ長さがタイヤ周上で異なっている場合、すなわち、トレッドパターン2においてピッチバリエーションが施されている場合、タイヤ全周における溝面積比で表される。また、溝面積比は、タイヤ新品時における、内側領域20aまたは外側領域20bの面積に占める、内側領域20aまたは外側領域20bに含まれる全ての溝の面積の割合をいう。ここでいう溝は、周方向主溝、周方向細溝、ショルダーラグ溝、ラグ溝を含み、溝以外の凹部領域(例えば、接地端20a,20bが位置するショルダー陸部の領域に設けられた、例えばディンプル状の孔等の複数の孔)は含まない。また、第1の周方向主溝21、第2の周方向主溝23には、第1のラグ溝45、第2のラグ溝47が接続される側のエッジが面取りされていてもよい。面取りされている場合は、面取りされたトレッド表面の領域も溝領域に含めて上記溝面積比Sin、Soutは算出される。
【0054】
溝面積比SoutがSinより小さいことで、車外通過騒音を抑制することができる。溝面積比Sinが24%未満、または、溝面積比Soutが12%を未満の場合は、ウェット操縦安定性が悪化し、ハイドロプレーニング性能も悪化する。一方、溝面積比Sinが28%を超える場合、または、溝面積比Soutが16%を超える場合は、ドライ路面でのコーナリング力を稼ぐことができず、ドライ路面における操縦安定性を十分に改良できない。
【0055】
(接地長)
本実施形態のタイヤ1は、車両静止時の対地キャンバー角が−1.5〜−4.5度の範囲でタイヤ1が車両側に傾斜して車両に装着される。この場合において、第2の周方向主溝23および第3の周方向主溝25のうちタイヤセンターラインCLに近い方の周方向主溝の縁におけるタイヤ周方向の接地長は、最大接地長Lの90%以上であることが好ましく、さらには95%以上であることが好ましい。
【0056】
本実施形態のトレッドパターン2が形成されるトレッドゴムは、タイヤ1が走行中発熱して路面に対して高い摩擦係数を有するゴム材料が選択される。発熱性は、例えば、動的粘弾性測定による60℃のtanδを用いて評価され、ゴム材料のtanδ(60℃)が大きいほどタイヤ1における走行中の発熱は大きくなる。この点で、60℃のtanδは、0.2以上であることが好ましい。
以上が、本実施形態のタイヤ1のトレッドパターン2の説明である。
【0057】
[タイヤプロファイル]
図4は、タイヤ1のタイヤプロファイルの詳細を説明する図である。タイヤプロファイルは、タイヤ1を、タイヤ回転軸を含む平面で切断したときのタイヤ断面である。タイヤ1を正規リムに装着し、空気圧を180kPaとした、無負荷状態の条件におけるタイヤプロファイルにおいて、タイヤセンターラインCLと交差するトレッド表面の位置、すなわちタイヤセンターラインCL上のトレッド表面の位置をAとし、ベルト層4の端(エッジ)、より具体的には、ベルト幅の長い内側ベルト層4aの端を通りタイヤ径方向に平行な直線Pと交差するトレッド表面の位置をBとする。このとき、トレッド部の第1の半トレッド領域及び第2の半トレッド領域におけるタイヤプロファイルは、位置A,Bを結ぶ直線Xと、位置Aからタイヤ幅方向に平行に引いた直線Yとのなす角βが3度以上7度以下となるトレッドプロファイルラインを有する。
【0058】
このように上記角βを3度以上7度以下とすることにより、ウェット操縦安定性に優れ車外通過騒音を低下させることができる。上記角βが3度より小さいと、位置Bを含むショルダー領域のトレッドプロファイルの直線Yからの落ち込み量、例えば位置Bにおける
図4中の距離Dが過剰に小さくなるので、コーナリング中の接地形状の変化が、スリップ角の変化に対して大きくなり易い。一方、上記角βが7度を超えると、位置Bを含むショルダー領域のトレッドプロファイルの直線Yからの落ち込み量、例えば位置Bにおける
図4中の距離Dが過剰に大きくなるので、スリップ角の変化に対する、タイヤ1の路面に垂直方向の撓み量が大きくなり易い。このためウェット操縦安定性を向上させることは難しい。
さらに、位置Aと接続位置Cとの間を結んだ直線と直線Yとのなす角度は、0.5〜2.0度であることが好ましい。
【0059】
ここで、プロファイルラインの好ましい一形態として、以下の態様があげられる。
すなわち、タイヤ1は、
図4に示すように、トレッド表面において、タイヤセンターラインCLを横切り、第1の曲率半径R1を有する第1のプロファイル領域と、この第1のプロファイル領域の両端と接続され、それぞれ第2の曲率半径R2を有する2つの第2のプロファイル領域とを有する。このとき、タイヤセンターラインCLから位置Bまでのタイヤ幅方向長さTWと、タイヤセンターラインCLから第1のプロファイル領域と第2のプロファイル領域との接続位置Cまでのタイヤ幅方向長さTW1との比TW1/TWが0.5〜0.65である、ことが好ましい。この場合、第1のプロファイル領域と第2のプロファイル領域とは、滑らかに接続されている。比TW1/TWが0.5より小さい場合、接地圧力が接地面のタイヤ幅方向の中央部に集中し、比TW1/TWが0.65より大きい場合、接地圧力がショルダー領域に集中する。このため、接地圧力の分布が偏り適正な分布とならず、車外通過騒音が大きくなる。
なお、第1の曲率半径R1は、例えば1000〜3000mmであり、第2の曲率半径R2は、例えば100〜350mmである。好ましくは、第1の曲率半径R1は、第2の曲率半径R2より大きく、例えば、第1の曲率半径R1は、第2の曲率半径R2の5.0〜10.0倍であることが好ましい。
【0060】
また、好ましい一形態として、トレッドプロファイルラインにおける第1のプロファイル領域と第2のプロファイル領域の境界位置Cは、第1の周方向主溝21あるいは第1の周方向主溝21の縁上、及び周方向細溝27上あるいは周方向細溝27の縁上にあることが好ましい。このように、接続位置Cが配置されることにより、トレッド表面における曲率半径が変化する接続位置Cにおいて、接地形状の変化が急激にならず滑らかに変化するので、ドライ操縦安定性及びウェット操縦安定性の向上に寄与することができる。
【0061】
また、好ましい一形態として、タイヤ1の総幅SWの半分と、タイヤセンターラインCLから位置Bまでのタイヤ幅方向長さTWとの比TW/(SW/2)が0.75〜0.95である。ここで、総幅SWとは、正規リムに装着し、空気圧を180kPaとした、無負荷状態の条件におけるタイヤ1の総幅である。
図4では、総幅SWの半分であるSW/2が示されている。比TW/(SW/2)が0.75〜0.95であることにより、ウェット操縦安定性により優れ、車外通過騒音をより大きく低下させることができる。
また、好ましい一形態として、正規リムに装着し、空気圧を180kPaとし、最大負荷荷重の55%の負荷状態の条件で得られる路面と接地する接地幅CPとの比CP/SWが0.75〜0.85である。比CP/SWが0.75より小さい場合、ウェット操縦安定性が低下し、比CP/SWが0.85より大きい場合、車外通過騒音が大きくなる。
【0062】
以上のように、タイヤ1は、トレッドパターン2を有し、
図4に示す角βを3度以上7度以下とすることにより、後述する実施例からわかるように、ウェット操縦安定性に優れ車外通過騒音を低下させることができる。従来、競技用空気入りタイヤの場合、接地幅を広くしてドライ操縦安定性及びウェット操縦安定性を大きくしていたが、一方において、車外通過騒音が極めて大きくなっていた。このため、本出願人は、55%以下の低扁平率で、装着すべきリムのリム径が16インチ以上の競技用タイヤにおいて、車外通過騒音を低減するために、上記角度βを大きくして、接地幅を比較的狭くすることにより、車外通過騒音を小さくすることができ、かつ、ウェット操縦安定性を向上することができることを知見し、本発明の空気入りタイヤを想到した。
【0063】
〔実施例〕
本実施形態のタイヤ1の効果を確認するために、種々のタイヤを作製した。作製したタイヤのタイヤサイズは、325/30ZR20 102Yであり、使用したリムは、20×11.5JJある。空気圧は180kPaとした。リム組みしたタイヤは、公道を走行可能な高ロードインデックスの車両に装着して下記試験を行った。作製したタイヤ構造は、
図2に示す構造を用いた。
ECE R117−02(ECE Regulation No.117 Revision 2)に定めるタイヤ騒音試験法に従って測定した車外通過音の大きさによって評価した。この試験では、試験車両を騒音測定区間の十分前から走行させ、当該区間の手前でエンジンを停止し、惰行走行させた時の騒音測定区間における最大騒音値(dB)(周波数800〜1200Hzの範囲の騒音値)を、基準速度に対し±10km/時の速度範囲をほぼ等間隔に8以上に区切った複数の速度で測定し、平均を車外通過騒音とした。最大騒音値dBは、騒音測定区間内の中間点において走行中心線から側方に7.5mかつ路面から1.2mの高さに設置した定置マイクロフォンを用いてA特性周波数補正回路を通して測定した音圧〔dB(A)〕である。
一方、ウェット操縦安定性では、屋外のタイヤ試験場の水深1mmであるウェット路面においてドライバーが試験車両を運転しつつ、官能評価をした。
車外通過騒音の計測結果として、後述する比較例1を基準にして各例の車外通過騒音の値との差分を求めた。数値がマイナスで絶対値が大きいほど車外通過騒音は低いことを示す。一方、ウェット操縦安定性については、後述する比較例1の評価を100として、比較例1に対する相対評価で表した。値が高いほど、操縦安定性が優れていることを示す。ウェット操縦安定性における評価項目は、横加速度の高さ(コーナリング限界性能)と、タイヤの路面に対する滑り開始時の車両挙動のコントロールのしやすさ(コーナリング限界を超えてからタイヤが滑り出した後の収束性)を特に重視した。
【0064】
下記表1には、比較例1〜3及び実施例1〜3の仕様を示す。下記表2には、比較例4〜6、及び実施例5〜7の仕様を示す。
表1,2における「ラグ溝端部の閉塞の有無」は、第1のショルダーラグ溝41、第1のラグ溝45および第2のラグ溝47の端部41b、端部45b及び47bが閉塞端か否かを表す。無しの場合、端部41b,45b及び47bが第1の周方向溝21、第2の周方向主溝23及び第3の周方向主溝25に開口していることを表す。また、表1,2における「溝深さ(mm)」は、第1の周方向主溝21、第2の周方向主溝23、及び第3の周方向主溝25の溝深さを表す。なお、第1の周方向主溝21、第2の周方向主溝23、及び第3の周方向主溝25の溝深さは同じである。
表1,2における「ラグ溝傾斜角(IN→OUT)」は、第1のショルダーラグ溝41、第1のラグ溝45および第2のラグ溝47のタイヤ幅方向に対する傾斜角度を順番に表す。
【0065】
比較例1では、比Wout/Winが0.4であり、本実施形態のタイヤ1に該当しない。比較例2では、角度βが2度であり、本実施形態のタイヤ1に該当しない。比較例3では、角度βが9度であり、本実施形態のタイヤ1に該当しない。比較例3では、ラグ溝(第1のラグ溝45,第2のラグ溝47)端部がいずれも閉塞しない。このため、比較例3は、本実施形態のタイヤ1に該当しない。比較例4では、第1のショルダーラグ溝41、第1のラグ溝45および第2のラグ溝47の端部41b、端部45b及び端部47bが第1の周方向主溝21、第2の周方向主溝23及び第3の周方向主溝25に開口している。このため、比較例4は本実施形態のタイヤ1に該当しない。比較例5,6は、比Wout/Winが0.4及び0.8であるため、本実施形態のタイヤ1に該当しない。
【0066】
表1,2の車外通過騒音の差及びウェット操縦安定性の評価結果によると、これらの性能について、実施例1〜7が比較例1〜6対比いずれも優れていることがわかる。これより、第1の周方向主溝21、第2の周方向主溝23、及び第3の周方向主溝25の溝深さが3〜6.5mmである空気入りタイヤにおいて、角度βが3度以上7度以下であり、第1のショルダーラグ溝41、第1のラグ溝45および第2のラグ溝47の端部がいずれも閉塞しており、比Wout/Winが0.45〜0.75であるとき、ウェット操縦安定性に優れ車外通過騒音を低下させることができる、ことがわかった。これより、本実施形態のタイヤ1の効果が確認できた。
また、実施例2,6,7の比較より、溝面積比Sinが24〜28%であり、溝面積比Soutが12〜16%である場合、十分な性能(バランスのとれた性能)が発揮されることもわかった。
【0069】
以上、本発明の空気入りタイヤについて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。