(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリアミド樹脂繊維の平均繊度と連続炭素繊維の平均繊度の比(ポリアミド樹脂繊維の平均繊度/連続炭素繊維の平均繊度)が20/80〜80/20である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の織物。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本発明における繊度とは、特に述べない限り、それぞれ、繊維の任意の10か所を測定した平均の繊度をいう。
本発明における「平行」とは、完全に平行なもののみを意味するのではなく、略平行を含む趣旨である。例えば、本明細書において、織物の規則的な構造を有する部分の経糸は互いに平行であり、同部分の緯糸は互いに平行である。
【0010】
本発明の織物は、経糸と緯糸の一方が、ポリアミド樹脂組成物からなるポリアミド樹脂繊維であり、他方が連続炭素繊維である織物であって、前記織物の任意の正方形部分であって、該正方形の一辺が経糸と平行であり、他の一辺が緯糸と平行になる部分(以下、「正方形(X)」ということがある)における、連続炭素繊維の平均繊維長が、前記正方形の一辺の長さの、1.1〜1.6倍であり、前記ポリアミド樹脂組成物が、ジアミン構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂であって、数平均分子量(Mn)が6,000〜30,000であり、その0.5〜5質量%が、分子量が1,000以下であるポリアミド樹脂を含むことを特徴とする。
このような織物とすることにより、賦形性と機械的強度という、相反するとも言える性能を両立させることが可能になる。
【0011】
本発明の織物は、通常、経糸と緯糸の一方が、ポリアミド樹脂組成物からなるポリアミド樹脂繊維であり、他方が連続炭素繊維である。
経糸と緯糸を形成するポリアミド樹脂繊維および連続炭素繊維は、通常は、ポリアミド樹脂繊維束および連続炭素繊維束である。これらの繊維束は、それぞれ、例えば、繊維を処理剤で処理して束状にしたものを用いることができる。これらの繊維の詳細については、後述する。
【0012】
本発明では、前記正方形(X)における、連続炭素繊維の平均繊維長が、前記正方形の一辺の長さの、1.1〜1.6倍であり、1.2〜1.5倍であることが好ましい。このような範囲とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される傾向にある。
さらに、本発明では、前記正方形(X)における、ポリアミド樹脂繊維の平均繊維長が、前記正方形(X)の一辺の長さの、1.0〜1.6倍であることが好ましく、1.1〜1.5倍であることがさらに好ましく、1.1〜1.2倍が特に好ましい。このような範囲とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される傾向にある。
ここでいう正方形(X)は、織物の規則的な構造をなしている領域から選択した正方形部分であって、該正方形の一辺が経糸と平行であり、他の一辺が緯糸と平行になる部分をいう。
図1は、本発明の織物の正方形(X)の一例を示したものであって、正方形内の縦線が経糸を示し、横線が緯糸を示している。従って、上記平均繊維長は、織物のどの任意の正方形を取っても同じとなる。
【0013】
本発明の織物は、その形態としては、特に制限はなく、平織、八枚朱子織、四枚朱子織、綾織等のいずれでもよく、平織が好ましい。平織はいわゆる斜子織であってもよい。好ましくは、平織であり、より好ましくは、経糸と緯糸を一本ずつ交互に浮き沈みさせて織る平織である。織物は、公知の方法によって、製造することができる。
【0014】
本発明の織物は、単位面積当たりの重さが50〜1000g/m
2であることが好ましく、100〜900g/m
2であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、織物のハンドリング性が良好となり、織物をさらに成形加工する際に繊維のずれが生じることが少なく、より良好な機械強度を有する成形品を得ることができる。
【0015】
次に、本発明で用いるポリアミド樹脂繊維および連続炭素繊維について述べる。
【0016】
<ポリアミド樹脂繊維>
本発明で用いるポリアミド樹脂繊維は、ジアミン構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂であって、数平均分子量(Mn)が6,000〜30,000であり、その0.5〜5質量%が、分子量が1,000以下のポリアミド樹脂であるポリアミド樹脂組成物を繊維状にしたものである。
本発明で用いるポリアミド樹脂繊維はその表面を処理剤によって処理された、ポリアミド樹脂繊維束であることが好ましい。
【0017】
<<ポリアミド樹脂繊維の特性>>
本発明で用いるポリアミド樹脂繊維は、ポリアミド樹脂組成物を連続的な繊維状にしたものであり、6mmを超える繊維長を有するポリアミド樹脂繊維をいう。本発明で使用するポリアミド樹脂繊維の平均繊維長に特に制限はないが、成形加工性を良好にする観点から、1〜20,000mの範囲であることが好ましく、より好ましくは100〜10,000m、さらに好ましくは1,000〜7,000mである。
本発明で用いるポリアミド樹脂繊維は、通常、ポリアミド樹脂繊維が束状になったポリアミド樹脂繊維束を用いて製造するが、かかるポリアミド樹脂繊維束1本の当たりの合計繊度が、40〜600dtexであることが好ましく、50〜500dtexであることがより好ましく、200〜400dtexであることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される。かかるポリアミド樹脂繊維束を構成する繊維数は、1〜200fであることが好ましく、1〜50fであることがより好ましく、5〜45fであることがさらに好ましく、20〜40fであることが特に好ましい。このような範囲とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される。
本発明で用いるポリアミド樹脂繊維束は、引張強度が2〜10gf/dであるものが好ましい。このような範囲とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される傾向にある。
【0018】
<<ポリアミド樹脂繊維の処理剤>>
本発明で用いるポリアミド樹脂繊維は、処理剤で処理し、繊維束として用いることが好ましい。
本発明で用いるポリアミド樹脂繊維の処理剤は、ポリアミド樹脂繊維を束状に収束する機能を有するものであれば、その種類は特に定めるものではない。処理剤としては、エステル系化合物、アルキレングリコール系化合物、ポリオレフィン系化合物、フェニルエーテル系化合物を例示でき、より具体的には、界面活性剤が好ましい。
ポリアミド樹脂繊維の処理剤の量は、用いる場合、0.1〜2質量%であることが好ましく、0.5〜1.5質量%であることがより好ましい。
【0019】
<<ポリアミド樹脂繊維の処理剤による処理方法>>
ポリアミド樹脂繊維の処理剤による処理方法は、所期の目的を達成できる限り特に定めるものではない。例えば、処理剤を溶液に溶解させたものに配合し、ポリアミド樹脂繊維の表面に処理剤を付着させることが挙げられる。また、エアブローすることによっても処理できる。
【0020】
<<ポリアミド樹脂組成物>>
本発明のポリアミド樹脂繊維は、ポリアミド樹脂組成物からなるが、かかるポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂を主成分(通常は、組成物の90質量%以上がポリアミド樹脂)とするものである。かかるポリアミド樹脂は、ジアミン構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂であって、該ポリアミド樹脂の数平均分子量(Mn)が6,000〜30,000であり、該ポリアミド樹脂の0.5〜5質量%が、分子量が1,000以下のポリアミド樹脂である。
本発明において用いるポリアミド樹脂は、ジアミン構成単位(ジアミンに由来する構成単位)の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂を繊維状にしたものである。ジアミンの50モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸と重縮合されたキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂である。
好ましくは、ジアミン構成単位の70モル%以上、より好ましくは80モル%以上がメタキシリレンジアミンおよび/またはパラキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸構成単位(ジカルボン酸に由来する構成単位)の好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、特には80モル%以上が、炭素原子数が好ましくは4〜20の、α,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂である。
【0021】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の原料ジアミン成分として用いることが出来るメタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン、ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン等を例示することができ、1種又は2種以上を混合して使用できる。
ジアミン成分として、キシリレンジアミン以外のジアミンを用いる場合は、ジアミン構成単位の50モル%以下であり、30モル%以下であることが好ましく、より好ましくは1〜25モル%、特に好ましくは5〜20モル%の割合で用いる。
【0022】
ポリアミド樹脂の原料ジカルボン酸成分として用いるのに好ましい炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、例えばコハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が例示でき、1種又は2種以上を混合して使用できるが、これらの中でもポリアミド樹脂の融点が成形加工するのに適切な範囲となることから、アジピン酸またはセバシン酸が好ましく、セバシン酸が特に好ましい。
【0023】
上記炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸といった異性体等のナフタレンジカルボン酸等を例示することができ、1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0024】
ジカルボン酸成分として、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸を用いる場合は、成形加工性、バリア性の点から、テレフタル酸、イソフタル酸を用いることが好ましい。テレフタル酸、イソフタル酸の割合は、好ましくはジカルボン酸構成単位の30モル%以下であり、より好ましくは1〜30モル%、特に好ましくは5〜20モル%の範囲である。
【0025】
さらに、ジアミン成分、ジカルボン酸成分以外にも、ポリアミド樹脂を構成する成分として、本発明の効果を損なわない範囲でε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類も共重合成分として使用できる。
【0026】
ポリアミド樹脂として、ポリメタキシリレンアジパミド樹脂、ポリメタキシリレンセバカミド樹脂、ポリパラキシリレンセバカミド樹脂、及び、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの混合キシリレンジアミンをアジピン酸と重縮合してなるポリメタキシリレン/パラキシリレン混合アジパミド樹脂が好ましく、より好ましいものは、ポリメタキシリレンセバカミド樹脂、ポリパラキシリレンセバカミド樹脂、及び、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの混合キシリレンジアミンをセバシン酸と重縮合してなるポリメタキシリレン/パラキシリレン混合セバカミド樹脂である。これらのポリアミド樹脂は成形加工性が特に良好となる傾向にある。
【0027】
本発明において、ポリアミド樹脂としては、数平均分子量(Mn)が6,000〜30,000であり、そのうちの0.5〜5質量%が、分子量が1,000以下のポリアミド樹脂である。
【0028】
数平均分子量(Mn)が6,000〜30,000の範囲を外れると、得られる織物あるいはその成形品の強度が悪くなる。好ましい数平均分子量(Mn)は8,000〜28,000であり、より好ましくは9,000〜26,000であり、さらに好ましくは10,000〜24,000であり、特に好ましくは11,000〜22,000であり、特に好ましくは12,000〜20,000である。このような範囲であると、耐熱性、弾性率、寸法安定性、成形加工性が良好である。
【0029】
なお、ここでいう数平均分子量(Mn)とは、ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度[NH
2](μ当量/g)と末端カルボキシル基濃度[COOH](μ当量/g)から、次式で算出される。
数平均分子量(Mn)=2,000,000/([COOH]+[NH
2])
【0030】
また、ポリアミド樹脂は、分子量が1,000以下の成分を0.5〜5質量%含有することを必要とするが、このような低分子量成分をこのような範囲で含有することにより、ポリアミド樹脂の含浸性が良好となるため、すなわち加熱加工時にポリアミド樹脂の強化繊維間での流動性が良好となるため、成形加工時にボイドの発生を抑制することができることから、得られる成形品の強度が良好となる。5質量%を超えると、この低分子量成分がブリードして強度が悪化し、表面外観が悪くなってしまう。
分子量が1,000以下の成分の好ましい含有量は、0.6〜4.5質量%であり、より好ましくは0.7〜4質量%であり、さらに好ましくは0.8〜3.5質量%であり、特に好ましくは0.9〜3質量%であり、最も好ましくは1〜2.5質量%である。
【0031】
分子量が1,000以下の低分子量成分の含有量の調整は、ポリアミド樹脂重合時の温度や圧力、ジアミンの滴下速度などの溶融重合条件を調節して行うことができる。特に溶融重合後期に反応装置内を減圧して低分子量成分を除去し、任意の割合に調節することができる。また、溶融重合により製造されたポリアミド樹脂を熱水抽出して低分子量成分を除去してもよいし、溶融重合後さらに減圧下で固相重合して低分子量成分を除去してもよい。固相重合に際しては、温度や減圧度を調節して、低分子量成分を任意の含有量に制御することができる。また、分子量が1,000以下の低分子量成分を後からポリアミド樹脂に添加することでも調節可能である。
【0032】
なお、分子量1,000以下の成分量の測定は、東ソー社(TOSOH CORPORATION)製「HLC−8320GPC」を用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリメチルメタクリレート(PMMA)換算値より求めることができる。なお、測定用カラムとしては「TSKgel SuperHM−H」を2本用い、溶媒にはトリフルオロ酢酸ナトリウム濃度10mmol/lのヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を用い、樹脂濃度0.02質量%、カラム温度は40℃、流速0.3ml/分、屈折率検出器(RI)にて測定することができる。また、検量線は6水準のPMMAをHFIPに溶解させて測定し作成する。
【0033】
ポリアミド樹脂組成物では、上記ポリアミド樹脂の0.01〜1質量%が、環状の化合物(ポリアミド樹脂)であることが好ましい。本発明において環状化合物とは、ポリアミド樹脂の原料であるジアミン成分とジカルボン酸成分からなる塩が環を形成してなる化合物をいい、以下の方法により定量することができる。
ポリアミド樹脂のペレットを超遠心粉砕機にて粉砕し、φ0.25mmのふるいにかけ、φ0.25mm以下の粉末試料10gを円筒ろ紙に測りとる。その後メタノール120mlにて9時間ソックスレー抽出を行い、得られた抽出液をエバポレータにて乾固しないように注意しながら10mlに濃縮する。なお、その際、オリゴマーが析出する場合は、適宜PTFEフィルターに通液して取り除く。得られた抽出液をメタノールにて50倍希釈した液を測定に供し、日立ハイテクノロジー社(Hitachi High−Technologies Corporation)製高速液体クロマトグラフHPLCによる定量分析を実施して環状化合物含有量を求める。
環状化合物をこのような範囲で含有することにより、得られる織物及びその成形品の強度が良好となり、さらにそりが少なくなり、寸法安定性がより向上しやすい傾向にある。
環状化合物のより好ましい含有量は、上記ポリアミド樹脂の0.05〜0.8質量%であり、さらに好ましくは0.1〜0.5質量%である。
【0034】
溶融重合により製造されたポリアミド樹脂中には、環状化合物が相当量含まれている場合が多く、通常、熱水抽出等を行ってこれらは除去されている。この熱水抽出の程度を調整することにより、環状化合物量を調整することができる。また、溶融重合時の圧力を調整することでも可能である。
【0035】
本発明で用いるポリアミド樹脂は、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn))が、好ましくは1.8〜3.1である。分子量分布は、より好ましくは1.9〜3.0、さらに好ましくは2.0〜2.9である。分子量分布をこのような範囲とすることにより、機械特性に優れた織物が得られやすい傾向にある。
ポリアミド樹脂の分子量分布は、例えば、重合時に使用する開始剤や触媒の種類、量及び反応温度、圧力、時間等の重合反応条件などを適宜選択することにより調整できる。また、異なる重合条件によって得られた平均分子量の異なる複数種のポリアミド樹脂を混合したり、重合後のポリアミド樹脂を分別沈殿させることにより調整することもできる。
【0036】
分子量分布は、GPC測定により求めることができ、具体的には、装置として東ソー社製「HLC−8320GPC」、カラムとして、東ソー社製「TSK gel Super HM−H」2本を使用し、溶離液トリフルオロ酢酸ナトリウム濃度10mmol/lのヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、樹脂濃度0.02質量%、カラム温度40℃、流速0.3ml/分、屈折率検出器(RI)の条件で測定し、標準ポリメチルメタクリレート換算の値として求めることができる。また、検量線は6水準のPMMAをHFIPに溶解させて測定し作成する。
【0037】
また、ポリアミド樹脂は、溶融粘度が、ポリアミド樹脂の融点+30℃、せん断速度122sec
-1、ポリアミド樹脂の水分率が0.06質量%以下の条件で測定したときに、50〜1200Pa・sであることが好ましい。溶融粘度を、このような範囲とすることにより、ポリアミド樹脂のフィルムまたは繊維への加工が容易となる。なお、後述するような、ポリアミド樹脂が融点を2つ以上有する場合は、高温側の吸熱ピークのピークトップの温度を融点とし、測定を行う。
溶融粘度のより好ましい範囲は、60〜500Pa・s、さらに好ましくは70〜100Pa・sである。
ポリアミド樹脂の溶融粘度は、例えば、原料ジカルボン酸成分およびジアミン成分の仕込み比、重合触媒、分子量調節剤、重合温度、重合時間を適宜選択することにより調整できる。
【0038】
また、ポリアミド樹脂は、吸水時の曲げ弾性率保持率が、85%以上であることが好ましい。吸水時の曲げ弾性率保持率を、このような範囲とすることにより、得られる織物及びその成形品の高温高湿度下での物性低下が少なく、そりなどの形状変化が少なくなる傾向にある。
ここで、吸水時の曲げ弾性率保持率とは、ポリアミド樹脂からなる曲げ試験片の0.1質量%の吸水時の曲げ弾性率に対する、0.5質量%の吸水時の曲げ弾性率の比率(%)として定義され、これが高いということは吸湿しても曲げ弾性率が低下しにくいことを意味する。
吸水時の曲げ弾性率保持率は、より好ましくは、90%以上、さらに好ましくは95%以上である。
ポリアミド樹脂の吸水時の曲げ弾性率保持率は、例えば、パラキシリレンジアミンとメタキシリレンジアミンの混合割合によりコントロールでき、パラキシリレンジアミンの割合が多いほど曲げ弾性率保持率を良好とすることができる。また、曲げ試験片の結晶化度をコントロールすることによっても調整できる。
【0039】
ポリアミド樹脂の吸水率は、23℃にて1週間、水に浸漬した後取り出し、水分をふき取ってすぐ測定した際の吸水率として1質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.6質量%以下、さらに好ましくは0.4質量%以下である。この範囲であると、得られる織物及びそれからなる成形品の吸水による変形を防止しやすく、また、加熱加圧時等の織物を成形加工する際の発泡を抑制し、気泡の少ない成形品を得ることができる。
【0040】
また、ポリアミド樹脂は、末端アミノ基濃度([NH
2])が好ましくは100μ当量/g未満、より好ましくは5〜75μ当量/g、さらに好ましくは10〜60μ当量/gであり、末端カルボキシル基濃度([COOH])は、好ましくは150μ当量/g未満、より好ましくは10〜120μ当量/g、さらに好ましくは10〜100μ当量/gのものが好適に用いられる。このような末端基濃度のポリアミド樹脂を用いることにより、ポリアミド樹脂をフィルム状又は繊維状に加工する際に粘度が安定しやすく、また、後述のカルボジイミド化合物との反応性が良好となる傾向にある。
【0041】
また、末端カルボキシル基濃度に対する末端アミノ基濃度の比([NH
2]/[COOH])は、0.7以下であるものが好ましく、0.6以下であるものがより好ましく、特に好ましくは0.5以下である。この比が0.7よりも大きいものは、ポリアミド樹脂を重合する際に、分子量の制御が難しくなる場合がある。
【0042】
末端アミノ基濃度は、ポリアミド樹脂0.5gを30mlのフェノール/メタノール(4:1)混合溶液に20〜30℃で攪拌溶解し、0.01Nの塩酸で滴定して測定することができる。また、末端カルボキシル基濃度は、ポリアミド樹脂0.1gを30mlのベンジルアルコールに200℃で溶解し、160℃〜165℃の範囲でフェノールレッド溶液を0.1ml加える。その溶液を0.132gのKOHをベンジルアルコール200mlに溶解させた滴定液(KOH濃度として0.01mol/l)で滴定を行い、色の変化が黄〜赤となり色の変化がなくなった時点を終点とすることで算出することができる。
【0043】
本発明のポリアミド樹脂は、反応したジカルボン酸単位に対する反応したジアミン単位のモル比(反応したジアミン単位のモル数/反応したジカルボン酸単位のモル数、以下「反応モル比」という場合がある。)が、0.97〜1.02であることが好ましい。このような範囲とすることにより、ポリアミド樹脂の分子量や分子量分布を、任意の範囲に制御しやすくなる。
反応モル比は、より好ましくは1.0未満、さらに好ましくは0.995未満、特には0.990未満であり、下限は、より好ましくは0.975以上、さらに好ましくは0.98以上である。
【0044】
ここで、反応モル比(r)は次式で求められる。
r=(1−cN−b(C−N))/(1−cC+a(C−N))
式中、
a:M1/2
b:M2/2
c:18.015 (水の分子量(g/mol))
M1:ジアミンの分子量(g/mol)
M2:ジカルボン酸の分子量(g/mol)
N:末端アミノ基濃度(当量/g)
C:末端カルボキシル基濃度(当量/g)
【0045】
なお、ジアミン成分、ジカルボン酸成分として分子量の異なるモノマーからポリアミド樹脂を合成する際は、M1およびM2は原料として配合するモノマーの配合比(モル比)に応じて計算されることはいうまでもない。なお、合成釜内が完全な閉鎖系であれば、仕込んだモノマーのモル比と反応モル比とは一致するが、実際の合成装置は完全な閉鎖系とはなりえないことから、仕込みのモル比と反応モル比が一致するとは限らない。仕込んだモノマーが完全に反応するとも限らないことから、仕込みのモル比と反応モル比が一致するとは限らない。したがって、反応モル比とは出来上がったポリアミド樹脂の末端基濃度から求められる実際に反応したモノマーのモル比を意味する。
【0046】
ポリアミド樹脂の反応モル比の調整は、原料ジカルボン酸成分およびジアミン成分の仕込みモル比、反応時間、反応温度、キシリレンジアミンの滴下速度、釜内の圧力、減圧開始タイミング等の反応条件を適当な値にすることにより、可能である。
ポリアミド樹脂の製造方法がいわゆる塩法である場合は、反応モル比を0.97〜1.02にするには、具体的には、例えば、原料ジアミン成分/原料ジカルボン酸成分比をこの範囲に設定し、反応を十分進めればよい。また溶融ジカルボン酸に連続的にジアミンを滴下する方法の場合は、仕込み比をこの範囲とすることの他に、ジアミンを滴下する最中に還流させるジアミン量をコントロールし、滴下したジアミンを反応系外に除去することでも可能である。具体的には還流塔の温度を最適な範囲にコントロールすることや充填塔の充填物、所謂、ラシヒリングやレッシングリング、サドル等を適切な形状、充填量に制御することで、ジアミンを系外に除去すればよい。また、ジアミン滴下後の反応時間を短くすることでも未反応のジアミンを系外に除去することができる。さらにはジアミンの滴下速度を制御することによっても未反応のジアミンを必要に応じて反応系外に除去することができる。これらの方法により仕込み比が所望範囲から外れても反応モル比を所定の範囲にコントロールすることが可能である。
【0047】
ポリアミド樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法、重合条件により製造される。ポリアミド樹脂の重縮合時に分子量調節剤として少量のモノアミン、モノカルボン酸を加えてもよい。例えば、キシリレンジアミンを含むジアミン成分とアジピン酸、セバシン酸等のジカルボン酸からなる塩を水の存在下に、加圧状態で昇温し、加えた水及び縮合水を除きながら溶融状態で重合させる方法により製造される。また、キシリレンジアミンを溶融状態のジカルボン酸に直接加えて、常圧下で重縮合する方法によっても製造できる。この場合、反応系を均一な液状状態で保つために、ジアミンをジカルボン酸に連続的に加え、その間、反応温度が生成するオリゴアミド及びポリアミドの融点よりも下回らないように反応系を昇温しつつ、重縮合が進められる。
【0048】
また、ポリアミド樹脂は、溶融重合法により製造された後に、固相重合を行っても良い。固相重合の方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法、重合条件により製造される。
【0049】
本発明においては、ポリアミド樹脂の融点は、150〜310℃であることが好ましく、180〜300℃であることがより好ましい。
また、ポリアミド樹脂のガラス転移点は、50〜100℃が好ましく、55〜100℃がより好ましく、特に好ましくは60〜100℃である。この範囲であると、耐熱性が良好となる傾向にある。
【0050】
なお、融点とは、DSC(示差走査熱量測定)法により観測される昇温時の吸熱ピークのピークトップの温度である。また、ガラス転移点とは、試料を一度加熱溶融させ熱履歴による結晶性への影響をなくした後、再度昇温して測定されるガラス転移点をいう。測定には、例えば、島津製作所社(SHIMADZU CORPORATION)製「DSC−60」を用い、試料量は約5mgとし、雰囲気ガスとしては窒素を30ml/分で流し、昇温速度は10℃/分の条件で室温から予想される融点以上の温度まで加熱し溶融させた際に観測される吸熱ピークのピークトップの温度から融点を求めることができる。次いで、溶融したポリアミド樹脂を、ドライアイスで急冷し、10℃/分の速度で融点以上の温度まで再度昇温し、ガラス転移点を求めることができる。
【0051】
本発明で用いるポリアミド樹脂組成物には、上記キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂以外の、他のポリアミド樹脂やエラストマー成分を含むこともできる。他のポリアミド樹脂としては、ポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド6/66、ポリアミド10、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸およびテレフタル酸からなるポリアミド66/6T、ヘキサメチレンジアミン、イソフタル酸およびテレフタル酸からなるポリアミド6I/6Tなどが挙げられる。これらの配合量はポリアミド樹脂組成物の5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
【0052】
エラストマー成分としては、例えば、ポリオレフィン系エラストマー、ジエン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、フッ素系エラストマー、シリコン系エラストマー等公知のエラストマーが使用でき、好ましくはポリオレフィン系エラストマー及びポリスチレン系エラストマーである。
これらのエラストマーとしては、ポリアミド樹脂に対する相溶性を付与するため、ラジカル開始剤の存在下または非存在下で、α,β−不飽和カルボン酸及びその酸無水物、アクリルアミド並びにそれらの誘導体等で変性した変性エラストマーも好ましい。
【0053】
このような他のポリアミド樹脂やエラエストマー成分の含有量は、ポリアミド樹脂組成物中の通常30質量%以下、好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【0054】
また、上記したポリアミド樹脂組成物は、一種類もしくは複数のポリアミド樹脂をブレンドして使用することもできる。
さらに、本発明の目的・効果を損なわない範囲で、本発明で用いるポリアミド樹脂組成物には、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスチレン樹脂等の樹脂を一種もしくは複数ブレンドすることもできる。これらの配合量はポリアミド樹脂組成物の10質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
【0055】
さらに、本発明の目的・効果を損なわない範囲で、本発明で用いるポリアミド樹脂組成物には、酸化防止剤、熱安定剤等の安定剤、耐加水分解性改良剤、耐候安定剤、艶消剤、紫外線吸収剤、核剤、可塑剤、分散剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤、着色剤、離型剤等の添加剤等を加えることができる。これらの詳細は、特許第4894982号公報の段落番号0130〜0155の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0056】
<連続炭素繊維>
本発明の織物は連続炭素繊維を含む。連続炭素繊維とは、6mmを超える繊維長を有する炭素繊維束をいう。本発明で使用する連続炭素繊維束の平均繊維長に特に制限はないが、成形加工性を良好にする観点から、1〜10,000mの範囲であることが好ましく、より好ましくは100〜10,000m、さらに好ましくは1,000〜7,000mである。
【0057】
連続炭素繊維束は、平均繊度が、50〜2000tex(g/1000m)であることが好ましく、60〜800texであることがより好ましく、60〜500texであることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、加工がより容易となり、得られる織物の弾性率・強度がより優れたものとなる。
連続炭素繊維束の平均引張弾性率は、50〜1000GPaであることが好ましい。このような範囲とすることにより、成形品の強度がより優れたものとなる。
【0058】
連続炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維を好ましく用いることができる。また、リグニンやセルロースなど、植物由来原料の炭素繊維も用いることができる。
【0059】
<<連続炭素繊維の処理剤>>
本発明で用いる連続炭素繊維は、処理剤によって処理されていることが好ましい。連続炭素繊維の処理剤としては、表面処理剤または収束剤が挙げられる。
【0060】
表面処理剤としては、例えば、エポキシ系化合物、アクリル系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等の官能性化合物からなるものが挙げられ、例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等であり、シラン系カップリング剤が好ましい。
シラン系カップリング剤としては、アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、グリシジルプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のトリアルコキシまたはトリアリロキシシラン化合物、ウレイドシラン、スルフィドシラン、ビニルシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。
【0061】
収束剤としては、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂、1分子中にアクリル基またはメタクリル基を有するエポキシアクリレート樹脂であって、ビスフェノールA型のビニルエステル樹脂、ノボラック型のビニルエステル樹脂、臭素化ビニルエステル樹脂等のビニルエステル系樹脂が好ましく挙げられる。またエポキシ系樹脂やビニルエステル系樹脂のウレタン変性樹脂であってもよい。
【0062】
前記処理剤の量は、連続炭素繊維の0.001〜1.5質量%であることが好ましく、0.1〜1.2質量%であることがより好ましく、0.5〜1.1質量%であることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される。
【0063】
<<連続炭素繊維の処理剤による処理方法>>
連続炭素繊維による処理剤による処理方法は、公知の方法を採用できる。例えば、連続炭素繊維を、処理剤を溶液に溶解させたものに添加し、連続炭素繊維の表面に処理剤を付着させることが挙げられる。また、処理剤を連続炭素繊維の表面にエアブローすることもできる。
さらに、市販品の連続炭素繊維を用いる場合、既に、表面処理剤や収束剤等の処理剤で処理されていることがあるので、そのまま用いても良い。また、所望の処理剤量で処理するために、かかる表面処理剤や収束剤を洗い落してから、再度処理することも好ましい。
【0064】
<成形品>
本発明の織物は、金型等を用いて、用途に応じた形状にした後加熱して、または、加熱しながら変形して成形することができる。
本発明の織物は、各種成形品に用いることができる。特に、本発明の織物は、賦形性に優れ、かつ、機械的強度を有するので、OA機器・通信機器等の筐体のように、角部を有する形状の成形品に好ましく用いることができる。
具体的には、本発明の成形品は、パソコン、OA機器、AV機器、携帯電話などの電気・電子機器、光学機器、精密機器、玩具、家庭・事務電気製品などの部品やハウジング、さらには自動車、航空機、船舶などの部品に好適に利用することができる。
【実施例】
【0065】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0066】
1.ポリアミド樹脂繊維の製造
<ポリアミド樹脂>
ポリアミド樹脂として、以下の製造例で得られたポリアミド樹脂、および以下の市販のメタキシリレンアジパミド樹脂(MXD6)を使用した。
【0067】
・メタキシリレンアジパミド樹脂
MXD6:メタキシリレンアジパミド樹脂(三菱瓦斯化学製、グレードS6007)、数平均分子量25000、分子量1000以下の成分の含有量0.51質量%
【0068】
<<製造例1>>
(ポリアミド(MPXD10)の合成)
セバシン酸を窒素雰囲気下の反応缶内で加熱溶解した後、内容物を攪拌しながら、パラキシリレンジアミン(三菱瓦斯化学(株)製)とメタキシリレンジアミン(三菱瓦斯化学(株)製)のモル比が3:7の混合ジアミンを、加圧(0.35Mpa)下でジアミンとセバシン酸とのモル比が約1:1になるように徐々に滴下しながら、温度を235℃まで上昇させた。滴下終了後、60分間反応継続し、分子量1,000以下の成分量を調整した。反応終了後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化し、ポリアミド(MPXD10)を得た。以下、「MPXD10」という。
【0069】
<<製造例2>>
(ポリアミド(PXD10)の合成)
撹拌機、分縮器、冷却器、温度計、滴下装置及び窒素導入管、ストランドダイを備えた内容積50リットルの反応容器に、精秤したセバシン酸(伊藤製油(株)製、製品名セバシン酸TA)8950g(44.25mol)、次亜リン酸カルシウム12.54g(0.074mol)、酢酸ナトリウム6.45g(0.079mol)を秤量して仕込んだ。反応容器内を十分に窒素置換した後、窒素で0.4MPaに加圧し、撹拌しながら20℃から190℃に昇温して55分間でセバシン酸を均一に溶融した。次いでパラキシリレンジアミン(三菱瓦斯化学(株)製)5960g(43.76mol)を撹拌下で110分を要して滴下した。この間、反応容器内温は293℃まで連続的に上昇させた。滴下工程では圧力を0.42MPaに制御し、生成水は分縮器及び冷却器を通して系外に除いた。分縮器の温度は145〜147℃の範囲に制御した。パラキシリレンジアミン滴下終了後、反応容器内圧力0.42MPaにて20分間重縮合反応を継続した。この間、反応容器内温は296℃まで上昇させた。その後、30分間で反応容器内圧力を0.42MPaから0.12MPaまで減圧した。この間に内温は298℃まで昇温した。その後0.002MPa/分の速度で減圧し、20分間で0.08MPaまで減圧し、分子量1,000以下の成分量を調整した。減圧完了時の反応容器内の温度は301℃であった。その後、系内を窒素で加圧し、反応容器内温度301℃、樹脂温度301℃で、ストランドダイからポリマーをストランド状に取出して20℃の冷却水にて冷却し、これをペレット化し、約13kgのポリアミド樹脂を得た。なお、冷却水中での冷却時間は5秒、ストランドの引き取り速度は100m/分とした。以下、「PXD10」という。
【0070】
ポリアミド樹脂の各種物性の測定法については、特許第4894982号公報の段落0157〜0168の記載に従った。
【0071】
ポリアミド樹脂の性能を以下の表に示す。
【表1】
【0072】
<ポリアミド樹脂の繊維化>
上記で得られたポリアミド樹脂は、以下の手法に従って繊維状にした。
真空乾燥機を用いて150℃、7時間乾燥させたポリアミド樹脂を30mmφのスクリューを有する単軸押出機にて溶融押出しし、60穴のダイからストランド状に押出した。押出した樹脂をエアブローで冷却して固化した。下部が処理剤に浸漬したロールを介して繊維に処理剤を塗布し、複数のガイドを通してロールにて巻き取りながら集束、延伸を施してポリアミド樹脂繊維束を得た。
【0073】
得られたポリアミド樹脂繊維束の各種物性は以下の手法に従って測定した。
<<繊維径>>
連続熱可塑性樹脂繊維の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、任意の10カ所の繊維の繊維径を測定し、平均値を算出した。
<<繊度>>
繊維1m当たりの重量を測定し、繊度に換算した。
<<引張強度>>
ポリアミド樹脂繊維束を23℃、50%RHの条件下で、引張試験機を用いて引張試験を実施し、最大応力を繊度で除し、単位繊度あたりの強度として求めた。
【0074】
ポリアミド樹脂繊維束の性能を以下の表に示す。
【表2】
【0075】
2.連続炭素繊維
連続炭素繊維として以下のものを用いた。
C繊維1:ポリアクリロニトリル系炭素繊維:東レ(株)(Toray Industries)製、トレカ(TORAYCA)T300−3000、3000フィラメント、1980dtex、引張弾性率:230GPa、平均繊維径7μm)
【0076】
3.織物の製造
上記で得られたポリアミド樹脂繊維束を経糸、連続炭素繊維束を緯糸として、レピア織機を用いて製織した。このとき、織物の任意の部位の正方形(X)(但し、正方形(X)の向かい合う2つの辺は経糸と平行であり、残りの2つの辺は緯糸と平行である。)の部分を構成するポリアミド樹脂繊維束および連続炭素繊維束の平均繊維長(単位:mm)と、単位面積当たりの質量が下記表となるように打ち込み本数を調整した。ここで、平均繊維長の測定は、織物中の任意の個所を、正方形(X)の向かい合う2つの辺は経糸と平行であり、残りの2つの辺は緯糸と平行であるよう正方形に切り取り、織物を構成する繊維束をほぐして一本取り出して、その長さを定規で測定する方法で行った。
【0077】
<曲げ強度の測定>
得られた織物を積層し、ポリアミド樹脂の融点+20℃、3MPaの条件にて熱プレスし、得られた成形品から、2mmt×10cm×2cmの試験片を切り出し、JIS K7171に準じて曲げ強度を測定した、
【0078】
<賦形性の測定>
織物を深さ2cm、半径2cmの半球状の金型で融点+20℃、1MPaの条件にて熱プレスし成形品を得た。歪みや、しわ等がなく成形できたものを「良好」、歪みやしわ等が発生した場合「不良」とした。
【0079】
<成形品外観>
同上の半球状サンプルの表面を観察し、連続炭素繊維の乱れが少ないものを「良好」、連続炭素繊維が乱れ外観が悪化したものを「不良」とした。
【0080】
結果を下記表に示す。
【表3】
【0081】
上記表から明らかなとおり、本発明の織物は機械的強度が高く、賦形性にも優れていた。これに対し、ポリアミド樹脂として本発明で規定する範囲外のものを用いた場合(比較例1)、機械的強度が劣っていた。また、ポリアミド樹脂として本発明で規定する範囲内のものを用いても、連続炭素繊維の平均繊維長が、正方形(X)の一辺の長さの1.1〜1.6倍の範囲を外れる場合(比較例2)、得られる成形品外観が劣ることが分かった。
【0082】
<比較例3>
特許第4894982号公報の実施例1に記載の複合材料の賦形性を上記に従って測定したところ、機械的強度は同等ながら、表面の炭素繊維がやや乱れており、実用レベルではあるものの、成形品外観が本願実施例のものよりも劣ることが分かった。