(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(B)油性基剤が、シリコーン油、エステル油、炭化水素、高級アルコール及び脂肪酸からなる群より選択される1種または2種以上である、請求項4に記載のゲル状組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、油性基剤を良好にゲル化させることができる、新規なゲル化剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究した結果、特定のペプチド化合物が優れたゲル化能を有することを見出し、本発明を完成するに至った。さらに驚くべきことに、当該新規ゲル化剤は、ゲル化された油性基剤が経時変化によりゲル状組成物の表面からにじみ出る、いわゆる「発汗現象」を抑制することができることを見出した。
【0008】
即ち、本発明は、以下の態様を含む。
[1]式(1):
【0009】
【化1】
【0010】
[式(1)中、R
1、R
2a、R
2bおよびR
2cはそれぞれアルキル基であり、aおよびbは0または2の整数を表し、(a,b)=(0,2)または(a,b)=(2,0)である。]
で表されるペプチド化合物を含有する油性基剤のゲル化剤。
[2]R
1が炭素原子数3〜21のアルキル基であり、R
2a、R
2bおよびR
2cがそれぞれ炭素原子数1〜10のアルキル基である、上記[1]に記載の油性基剤のゲル化剤。
[3]R
1が1−エチルペンチル基もしくはウンデシル基であり、R
2a、R
2bおよびR
2cがいずれもブチル基である、上記[1]または[2]に記載の油性基剤のゲル化剤。
[4](A)上記[1]〜[3]のいずれかに記載の油性基剤のゲル化剤、および(B)油性基剤を含有するゲル状組成物。
[5](B)油性基剤が、シリコーン油、エステル油、炭化水素、高級アルコール及び脂肪酸からなる群より選択される1種または2種以上である、上記[4]に記載のゲル状組成物。
[6]ゲル状組成物全量に対し、(A)の配合量が、式(1)で表されるペプチド化合物の量にして0.01〜20質量%である、上記[4]または[5]に記載のゲル状組成物。
[7]形状が棒状である、上記[4]〜[6]のいずれかに記載のゲル状組成物。
[8]制汗剤、リップスティックまたは口紅である、上記[4]〜[7]のいずれかに記載のゲル状組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の油性基剤のゲル化剤は、少量の添加で油性基剤を良好にゲル化させることができ、かつ、油性基剤がゲル状組成物の表面からにじみ出る、いわゆる「発汗現象」を抑制することができる。またペプチド構造を有するため、優れたスキンケア機能、ヘアケア機能が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の油性基剤のゲル化剤は、特定のペプチド化合物を含有する。
ここで、本明細書において「ゲル化剤」とは、液体を増粘し、ゼリー状もしくは固形状にまで変化させる物質または組成物をいう。本発明においては特に、油性の液体(油性基剤)に対するゲル化剤として有用である。
【0013】
〔ペプチド化合物〕
本発明の油性基剤のゲル化剤に含有されるペプチド化合物は、式(1)で表される化合物である。
式(1):
【0015】
[式(1)中、R
1、R
2a、R
2bおよびR
2cはそれぞれアルキル基であり、aおよびbは0または2の整数を表し、(a,b)=(0,2)または(a,b)=(2,0)である。]
【0016】
式(1)中、R
1で示されるアルキル基は直鎖または分枝鎖のいずれであってもよく、炭素原子数3〜21のアルキル基であることが好ましい。
かかるアルキル基としては、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、1−エチルペンチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、tert−オクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イソオクタデシル基、2−ヘプチルウンデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基等が挙げられる。少量で有効なゲル強度を付与できるという観点から、炭素原子数5〜17のアルキル基であることがより好ましく、炭素原子数7〜13のアルキル基であることがさらに好ましく、1−エチルペンチル基またはウンデシル基であることが最も好ましい。
【0017】
式(1)中、R
2a、R
2b、R
2cで示されるアルキル基は直鎖または分枝鎖のいずれであってもよく、同一であっても異なっていてもよい。R
2a、R
2b、R
2cで示されるアルキル基としては、炭素原子数1〜10のアルキル基が好ましい。
かかるアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、tert−オクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基等が挙げられる。少量で有効なゲル強度を付与できるという観点から、炭素原子数3〜6のアルキル基であることがより好ましく、R
2a、R
2b、R
2cで示されるアルキル基がすべてブチル基であることがさらに好ましい。
【0018】
式(1)中、aおよびbは0または2の整数を表し、(a,b)=(0,2)または(a,b)=(2,0)である。すなわち、aが0である場合はbは2であり、aが2である場合はbは0である。
【0019】
式(1)で表されるペプチド化合物は、アミノ酸残基上に不斉炭素を有するが、この不斉炭素に基づくDL体比(D体/L体(質量/質量))は特に定めない。
【0020】
式(1)で表されるペプチド化合物は、自体公知の方法に従って、N−アシルグルタミン酸無水物、グルタミン酸塩およびアルキルアミンにより製造することができる。
【0021】
〔油性基剤のゲル化剤〕
本発明においては、上記式(1)で表されるペプチド化合物をそのまま用い、またはセチルアルコール、ステアリルアルコール、ステアリン酸、硬化油、固形パラフィン等の賦形剤等の添加剤を加えて、粉末状の油性基剤のゲル化剤として提供することができ、また、前記ペプチド化合物を、エタノール、イソプロパノール、ジプロピレングリコール等の溶剤に溶解または懸濁して、液状または懸濁液状の油性基剤のゲル化剤として提供することもできる。なお、本発明の目的には、粉末状の形態で提供することが好ましい。
本発明の油性基剤のゲル化剤全量に対する式(1)で表されるペプチド化合物の含有量は、0.1質量%〜100質量%であることが好ましく、1.0質量%〜100質量%であることがより好ましい。
【0022】
本発明の油性基剤のゲル化剤によりゲル化させ得る油性基剤としては、化粧料や医薬部外品に一般的に用いられる油性基剤であれば特に限定されず、例えば、メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシプロピレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン、オキシプロピレン)・メチルポリシロキサン共重合体、ステアロキシメチルポリシロキサン、ステアロキシトリメチルシラン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、オクタメチルポリシロキサン、デカメチルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラヒドロテトラメチルシクロテトラシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、シラノール変性ポリシロキサン、アルコキシ変性ポリシロキサン、脂肪酸変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、アルコキシ変性ポリシロキサンパーフルオロポリエーテル、ポリ酢酸ビニルジメチルポリシロキサンなどのシリコーン油;ミリスチン酸ミリスチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸イソプロピル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、モノステアリン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、フタル酸ジエチル、モノステアリン酸エチレングリコール、オキシステアリン酸オクチル、安息香酸アルキルエステル等のエステル油;流動パラフィン、ポリイソブテン、ワセリン、スクワラン等の炭化水素;セチルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール等の高級アルコール;イソステアリン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸等の脂肪酸;ラノリン、還元ラノリン、カルナウバロウ等のロウ;ミンク油、カカオ油、ヤシ油、パーム核油、ツバキ油、ゴマ油、ヒマシ油、オリーブ油等の油脂;エチレン・α−オレフィン・コオリゴマー等が挙げられる。
本発明の油性基剤のゲル化剤によりゲル化される油性基剤としては、シリコーン油、エステル油、炭化水素、高級アルコール及び脂肪酸が好ましく、シリコーン油、エステル油、炭化水素及び高級アルコールがより好ましい。
【0023】
〔ゲル状組成物〕
本発明はさらに、(A)上記した式(1)で表されるペプチド化合物を含有する油性基剤のゲル化剤、および(B)油性基剤を含有するゲル状組成物を提供する。
【0024】
本発明のゲル状組成物に含有される(B)油性基剤としては、上記に記載した油性基剤が挙げられ、それら油性基剤より1種または2種以上を選択して用いることができる。
本発明の目的には、シリコーン油、エステル油、炭化水素、高級アルコール及び脂肪酸からなる群より選択した1種または2種以上を用いることが好ましく、シリコーン油、エステル油、炭化水素及び高級アルコールからなる群より選択した1種または2種以上を用いることがより好ましい。
【0025】
本発明のゲル状組成物における上記(A)の油性基剤のゲル化剤の配合量としては、油性基剤がゲル化される限り別段制限はない。ゲル強度及び上記した「発汗現象」の抑制効果に優れたゲル状組成物が得られるという観点から、ゲル状組成物全量に対する(A)の油性基剤のゲル化剤の配合量(質量%)の下限値は、上記した式(1)で表されるペプチド化合物の量にして0.01質量%が好ましく、0.03質量%がより好ましく、0.05質量%が更に好ましく、0.1質量%が一層好ましい。また、使用感に優れたゲル状組成物が得られるという観点から、ゲル状組成物全量に対する(A)の油性基剤のゲル化剤の配合量(質量%)の上限値は、上記した式(1)で表されるペプチド化合物の量にして20質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、7質量%が更に好ましく、5質量%が更に一層好ましく、3質量%が最も好ましい。
【0026】
本発明のゲル状組成物における上記(B)の油性基剤の配合量は、ゲル化が進行しさえすれば特段制限はない。ゲル状組成物全量に対する(B)の油性基剤の配合量(質量%)の下限値は、ゲルネットワークが形成され保持されるという観点から、10質量%が好ましく、20質量%がより好ましく、30質量%が更に好ましく、50質量%が更に一層好ましく、70質量%が最も好ましい。ゲル状組成物全量に対する(B)の油性基剤の配合量(質量%)の上限値は、効率的にゲルが形成され得るという観点から、99.99質量%が好ましく、99.9質量%がより好ましく、99質量%が更に好ましく、98質量%が一層好ましい。
【0027】
本発明のゲル状組成物には、各種キレート剤、制汗活性成分、界面活性剤、各種添加剤、各種粉体等の通常化粧料に使用し得る成分を、本発明の効果を阻害しない範囲で配合することができる。
本発明において、ゲル状組成物とは、狭義には(A)の油性基剤のゲル化剤と、(B)の油性基剤のみからなる組成物を意味し、また、広義には、更に上記の各種添加成分をも含む最終製品としての化粧料、芳香剤、医薬部外品等をも意味するものである。
【0028】
本発明のゲル状組成物に配合し得る各種キレート剤としては、特に制限はないが、好ましくはトリエチレンテトラミン、2−テノイルトリフルオロアセトン、チオグリコール酸、酒石酸、コハク酸、8−キノリノール、ピリジン−2,6−ジカルボン酸、ピリジン、1,10−テナントロリン、乳酸、8−ヒドロキシキノリン−5−スルホン酸、グリシン、2,2’−ピリジルエチレンジアミン、オーリントリカルボン酸、キシレノールオレンジ、5−スルホサリチル酸、サリチル酸、ピロカテコール−3,5−ジスルホネート、4,5−ジヒドロキシベンゼン−1,3−ジスルホン酸、1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N’,N’−四酢酸、クエン酸、オキサレート、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸、アセチルアセトン及びこれらの塩が挙げられ、これらより1種を選択して単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
本発明のゲル状組成物に配合し得る制汗活性成分とは、皮膚を強力に収斂させることによって汗の発生を抑える成分をいう。かかる制汗活性成分としては、クロルヒドロキシアルミニウム、塩化アルミニウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、硫酸アルミニウム、酸化亜鉛、パラフェノールスルホン酸亜鉛、ならびに、ジルコニルクロリドをアルミニウムヒドロキシド及びアルミニウムクロルヒドロキシドと反応させて製造されたジルコニウムアルミニウム複合体が挙げられ、これらより1種を選択して単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
本発明のゲル状組成物に配合し得る界面活性剤としては、例えば、N−長鎖アシル酸性アミノ酸塩やN−長鎖アシル中性アミノ酸塩などのN−長鎖アシルアミノ酸塩、N−長鎖アシル−N−メチルタウリン塩、アルキルサルフェート及びそのアルキレンオキシド付加物、脂肪酸アミドエーテルサルフェート、脂肪酸の金属塩及び弱塩基塩、スルホコハク酸系界面活性剤、アルキルフォスフェート及びそのアルキレンオキシド付加物、アルキルエーテルカルボン酸等のアニオン界面活性剤;グリセリンエーテル及びそのアルキレンオキシド付加物などのエーテル型界面活性剤、グリセリンエステルのアルキレンオキシド付加物、ソルビタンエステルのアルキレンオキシド付加物などのエーテルエステル型界面活性剤、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、グリセリンエステル、脂肪酸ポリグリセリンエステル、ソルビタンエステル、ショ糖脂肪酸エステルなどのエステル型界面活性剤、アルキルグルコシド類、硬化ヒマシ油ピログルタミン酸ジエステル及びそのエチレンオキシド付加物、ならびに脂肪酸アルカノールアミドなどの含窒素型界面活性剤等のノニオン界面活性剤;アルキルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライドなどの第4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩などの芳香族第4級アンモニウム塩、N−アシルアルギニンエステル等のカチオン界面活性剤;並びに、アルキルカルボキシベタイン、アルキルアミドベタインなどのベタイン型界面活性剤、N,N−ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸などのアミノカルボン酸型界面活性剤、2−アルキル−1−ヒドロキシエチル−1−カルボキシメチルイミダゾリニウムベタインなどのイミダゾリン型界面活性剤、3−(ラウロイルアミノ)−N,N−ジメチルプロパン−1−アミンN−オキシドなどのアミンオキシド型界面活性剤等の両性界面活性剤等が挙げられる。
本発明のゲル状組成物には、上記界面活性剤より1種を選択して単独で配合してもよく、2種以上を併用して配合してもよい。
【0031】
本発明のゲル状組成物に配合し得る各種添加剤としては、例えば、グリシン、アラニン、セリン、スレオニン、アルギニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、イソロイシン、ロイシン、バリンなどのアミノ酸類;グリセリン、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、イソプレングリコールなどの多価アルコール;ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸を含むポリアミノ酸及びその塩、ポリエチレングリコール、アラビアゴム類、アルギン酸塩、キサンタンガム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩、キチン、キトサン、水溶性キチン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジウム、ポリビニルピロリドン誘導体第4級アンモニウム、カチオン化プロテイン、コラーゲン分解物及びその誘導体、アシル化タンパク、ポリグリセリンなどの水溶性高分子;マンニトールなどの糖アルコール及びそのアルキレンオキシド付加物;エタノール、プロパノールなどの低級アルコール等の他、動植物抽出物、核酸、ビタミン、酵素、抗炎症剤、殺菌剤、防腐剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、色素、レーキ色素、酸化染料、pH調整剤、パール剤、湿潤剤等を挙げることができる。
本発明においては、必要に応じて、上記した添加剤より1種または2種以上を選択して用いることができる。
【0032】
各種粉体としては、例えば、ナイロンパウダー、ナイロンビーズ、シリコーンビーズ等の樹脂粉体、金属脂肪酸石鹸、アシルリジン、アシルグルタミン酸、アシルアルギニン、アシルグリシン等のアシルアミノ酸等の有機粉体;黄酸化鉄、赤色酸化鉄、黒酸化鉄、酸化クロム、酸化コバルト、カーボンブラック、群青、紺青、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化セリウム、雲母チタン、窒化ホウ素、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、炭化珪素、セリサイト、マイカ、タルク、カオリン、板状硫酸バリウム、バタフライ状硫酸バリウム、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化鉄等の無機顔料が挙げられ、これらは更にシリコーン処理、フッ素化合物処理、シランカップリング剤処理、シラン処理有機チタネート処理、アシル化リジン処理、脂肪酸処理、金属石鹸処理、油剤処理、アミノ酸処理等の表面処理が施してあってもかまわない。
本発明においては、必要に応じて、上記した粉体より1種または2種以上を選択して用いることができる。
【0033】
本発明のゲル状組成物の形状は特に限定されるものではないが、例えばペースト状、クリーム状等の半固形状、粒状、棒状、球状、シート状等の固形状の形状で提供することができ、特に棒状の形状で提供することが好ましい。
【0034】
本発明のゲル状組成物は、(A)油性基剤のゲル化剤を(B)油性基剤に添加して加熱溶解し、必要により他の添加成分を加えて均一に混合した後、びん、ジャー等の容器、または棒状等所望の形状を有する型に充填し、次いで室温に冷却することにより調製することができる。
また、粒状のゲル状組成物は、固化したゲルの粉砕、水相中に乳化した油滴のゲル化等により調製することができる。
【0035】
本発明は、さらに、上記した本発明のゲル状組成物を含有する、またはそれ自体が本発明のゲル状組成物である、化粧料または医薬部外品を提供する。
本発明の化粧料または医薬部外品は、形状および大きさを問わず、具体的には、制汗剤、洗顔料、クレンジングジェル、乳液、マッサージクリーム、コールドクリーム、モイスチャージェル、パック、アフターシェイビングジェル、ファンデーション、リップスティック、口紅、チーク、マスカラ、シャンプー、リンス、育毛剤、トリートメント、ヘアコンディショナー、チック、セットローション、ヘアクリーム、ヘアワックス、ヘアムース、パーマ液、染毛剤、ヘアカラー、ヘアマニキュア、日焼け止めオイル、ハンドソープ、芳香剤及び湿布薬等として提供され、好ましくは、制汗剤、リップスティックまたは口紅等の棒状の形状を有する化粧料または医薬部外品として提供される。
【実施例】
【0036】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0037】
[合成例1]ペプチド化合物の合成
式(2)で表されるペプチド化合物を以下の通り合成した。
式(2):
【0038】
【化3】
(2)
【0039】
[式(2)中、aおよびbは0または2の整数を表し、(a,b)=(0,2)または(a,b)=(2,0)である。]
【0040】
<合成方法>
N−ラウロイル−L−グルタミン酸無水物31.1g(0.1mol)をトルエン400mLに加え、95℃で攪拌溶解した。これにグルタミン酸ナトリウム一水和物18.7g(0.1mol)を加え、5時間加熱還流攪拌を続けた後、室温まで放冷した。濃硫酸にてpHを1にし、析出した固体をろ過、乾燥し、30.6gの固体を得た(収率67%)。続いて、得られた固体30.6g(0.067mol)をメタノール300mLに懸濁させ、濃硫酸0.66g(0.0067mol)を加え、5時間加熱還流撹拌を行った。その後メタノールを減圧下留去し、ブチルアミンを49g(0.67mol)加え、再びこの溶液を5時間加熱還流した。過剰なブチルアミンを減圧下留去し、残渣を水で洗浄後、クロマトグラフィーにて精製し、目的物を41.8g(収率50%)得た。
NMR:
1H−NMRピーク(CD
3OD) δ:0.90−0.97(m,12H)、1.31−1.40(m,22H)、1.45−1.55(m,6H)、1.55−1.70(m,2H)、1.80−2.22(m,4H)、2.24−2.38(m,6H)、3.16−3.22(m,6H)、4.18−4.38(m,2H)
【0041】
NMR測定条件:核磁気共鳴装置(BRUKER社製、AVANCE 400)を用い、テトラメチルシランのピークを0ppmとして測定を行った。
【0042】
<油性基剤のゲル化剤の評価>
[ゲル化能]
シクロペンタシロキサン/オクチルドデカノール(80/20(質量比)混合物)[(B)成分]6gに、表1に示す実施例1及び比較例1〜3の各油性基剤のゲル化剤をそれぞれ1質量%となるように添加し、30mLサンプル管瓶に入れ加熱溶解した。溶解後、25℃の室温下に24時間静置し、ゲル状組成物を得た。得られたゲル状組成物のゲル強度をレオメータ(FUDOH RHEO METER NRM−2010−J−CW)にて測定し、以下の評価基準でゲル化能を評価した。アダプターはプルーム用・粘弾性用、10φを用い、試料台速度は6cm/minとした。結果を表1に示す。
<評価基準>
○:ゲル強度が30g以上
△:ゲル強度が1g以上30g未満
×:ゲル化しない
【0043】
[発汗現象の抑制作用]
上記と同様の手順にてゲル状組成物を得、得られたゲル状組成物における「発汗現象」、すなわちゲル状組成物の表面から油性基剤がにじみ出る現象の発生の有無を目視にて観察し、以下の評価基準で発汗現象の抑制作用を評価した。結果を表1に示す。
<評価基準>
○:発汗現象が見られない
×:発汗現象が見られる
【0044】
なお、本実験に使用した(A)成分および(B)成分は以下のとおりである。
(i)ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム:旭化成ケミカルズ株式会社製、「ペリセア L−30」
(ii)パルミチン酸デキストリン:千葉製粉株式会社製、「レオパール LK2」
(iii)12−ヒドロキシステアリン酸:東京化成工業株式会社製、試薬
(iv)シクロペンタシロキサン:東レ・ダウコーニング株式会社製、「SH245」
(v)オクチルドデカノール:高級アルコール工業株式会社製、「リソノール20SP」
【0045】
【表1】
【0046】
表1に示されるように、本発明の実施例1の油性基剤のゲル化剤は、1質量%の添加で十分な強度を有するゲルを形成することができ、これを含有するゲル状組成物においては、発汗現象が抑制された。
一方、既存の油性基剤のゲル化剤(比較例1〜3)を1質量%添加した場合には、ゲルの形成が認められなかった。
すなわち、合成例1のペプチド化合物を含有する本発明の油性基剤のゲル化剤は、他の既存の油性基剤のゲル化剤と比較して、少量の添加で油性基剤をゲル化させることができ、かつ「発汗現象」を抑制することが確かめられた。