【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の欠点は、アンテナの容量において、特に電子装置(例えば携帯電話)の中の平坦な基板上のアンテナの容量において使用される非定常磁界放射体によって著しく取り除かれる。そこでは、本発明による放射体の本質は、該放射体が、長方形の少なくとも部分的にはフェライトコアを有するという事実にある。該コアは、少なくとも2つの細線を備えたワイヤで巻かれ、該細線は、隣同士で密接に配置され、かつ1つの細線の有効幅wは、円形コア断面において、±75%の偏差でコアの半径に対応する。他の有効コア断面において、1つの細線の幅は、±75%の偏差で等価的半径に対応する。
【0012】
コア半径に対する1つの細線の有効幅wについて、0.25から1.75までの比率、好ましくは0.5から1.5まで、特に好ましくは0.85から1.15までの比率、または、等価的コア半径は、サイズ寸法設計の唯一の確認方法ではない。放射体を発明する上で見えてくることであるが、密接なワイヤ巻き線に関連して、まさしく寸法関係を遵守することによって、いくつかの物理的パターンの相乗効果的な相互作用が示される。定められた間隔の範囲では、望ましくない渦磁界を形成することなく、ワイヤの異なる部分からの、及び個々のコイルからの磁界相互作用が創成される。それによって、コアの中の磁界は増幅され、かつ磁界は、コアの端子端部から外へ、コイルに沿って漏出できない。コア半径に対する1つの細線の有効幅wの定められた比率は、放射体またはアンテナにおいて、未だ観察されるパラメータではなかった。コアを備えた既存のアンテナにおいて、1つの細線の有効幅wは、コアの半径の0.001倍から0.1倍より小さな値を達成する。本発明によれば、放射体にとって好ましい比率は、1に近い。即ち、w=D/2であり、ここでDはコア直径、または等価的なコア直径である。
【0013】
放射体は、古典的電磁アンテナに対する代替物として使用される。これに対して、非接触NFC結合またはRFID結合の他の側では、標準的なNFC受信手段またはRFID受信手段によって、信号が受信され、かつ送信される。放射体は、強力でかつ均質な磁界を創成するためのタスクを有する。マイクロSDカードまたはSIMカード(加入者識別モジュール)の上で放射体を使用する場合、コア断面はより小さく(例えば、コア高さのパラメータ)、1mm未満である。マイクロSDカード上で放射体を使用する場合、コア長さは、コア断面の小さい方のパラメータの7倍以上である。コア長さは、通常、15mmを超えない。ナノSIMカード上で放射体を使用する場合、放射体の厚さは0.65mmよりも小さく、かつその長さは12mmを超えない。放射体は、特に、付加的な非接触通信チャンネルを創成するために使用される。本発明の放射体はまた、電界を生成する。しかしながら、受信装置の側では、電界は信号キャリアではない。電界は単に、小さい方の場の成分であり、これは、ホスト装置の遮蔽を貫通するための重要な寄与はしない。1mm未満のコア厚さを備えたアンテナの小型化では、一般に知られたより大きなアンテナ構造を単に比例的に寸法取りすることによっては解決できない技術的問題が生じる。先ず始めに、本発明によれば、細線直径が著しく減少することになるという事実によって、キャリア表面軸に平行な細線を使用することが明らかになる。このことは、非特許文献1による、アンテナ範囲を増加させるための一般的要求に反する。
【0014】
コアは長手方向に長方形であるが、その理由は、コアの端部が、表面上の利用可能な余地内で、互いに最も離れて配置されるためである。コアは湾曲していることも可能であるが、しかし最良の結果は、真直ぐなロッドコアによって達成される。その場合、磁力線は、最も長い経路において放射体の外側を囲み、かつ、それ故に、遮蔽された空間から外に漏出するには労力を有する。コアのフェライトは、放射体のインダクタンスが600nHから1200nHであったように、好ましくは750nHに近かったように比透磁率を事前設定するべきである。この基準を考慮すると、フェライトコアは、30から300の範囲に透磁率を有することが可能である。コア透磁率は、最大許容の磁気飽和及びコア断面の寸法選択肢の技術的可能性に従って、設定される。フェライトは、磁界特性及び属性を増幅する任意の材料を意味するものとする。
【0015】
本質的なこととして、磁界がコアからコア端部の外側に放射されるのを防止するために、細線が隣同士で密接に巻かれるものとする。細線ワイヤは、コアの遮蔽を形成する。隣接する細線のワイヤは、隣接するワイヤ間で、ワイヤの渦磁界が創成されることを防止する。近隣の細線間では、実質的に、ワイヤ絶縁体厚さの形態でちょうどギャップが存在する。一組の金属コイルは、コア遮蔽カバーを創成し、該遮蔽カバーは、磁界フローを支配する。
【0016】
ホスト装置内の遮蔽素子間のわずかなギャップを通してさえも、放射体から磁界が漏出する場合、条件を達成するために、コア内の磁界は、可能な限り均質であることが必要であり、かつ同時に、小さなコア断面で最大の強度を有する。均質性の要求は、小さな放射体サイズでは、コア内の不均一な磁界強度が、大きな損失を示すという知見に関連する。周囲を横切る磁界の高い貫通性を達成するために、我々は高い磁界強度を要求する。
【0017】
両方の要求は、1つの細線の有効幅wが円形コア断面でのコア半径に対応する構成において、最も満たされる。1つの細線の有効幅wは1つのパラメータであり、該パラメータにおいて、細線ワイヤがコアの長さを反映する。ワイヤは異なる断面を有し、それ故に、1つの細線の有効幅wは、実際のワイヤ幅と異なる場合がある。最も普通の場合、細線ワイヤはリング形状または単純な平坦形状であるが、織り合わされていない場合、細線の有効幅wは、実質的にはワイヤ幅に等しい。一細線ワイヤの一部分が、隣接するワイヤの縁部で覆われるように平坦なワイヤを使用する場合、有効ワイヤ幅wは、既に隣接ワイヤを覆っている縁部を除いた幅と見なされる。基本的に、縁部はワイヤ幅の一部である。縁部は、平坦なワイヤの中でコアと接触する。密度が高く、密接なコイルにおいては、一細線ワイヤの有効幅wは、細線ピッチと同一である。
【0018】
有効幅wをコアの半径に、またはコアの等価的半径に一致させる要求は、有効幅wが実質的にコア半径に等しいことと理解されるべきである。コアの全体的断面パラメータが小さい場合、小さな技術的な偏差さえも、その規則からの逸脱を引き起こすが、一方では、依然として利益に到達するか、またはその原理の少なくとも十分に有用な効果に到達する。寸法的な関係を満足させることを受けて、条件は、それ故に、1つの状況を考慮する必要があり、その状況の場合、細線の有効幅wは、コアの半径の0.6から1.4倍までの範囲にあるか、またはコアの等価的半径である。0.6から1.4までの比率の程度では、最大磁気力の損失は10%である。比較的大きな比率範囲(0.25から1.75まで)でさえも、十分強くかつ好ましい結果が達成される。これに対して、先行技術では、有効幅及びコア半径について、異なるオーダーの比率が含まれる(0.001未満から0.1まで)。
【0019】
寸法的関係に関して、我々は磁気銃の効果を備えた放射体を創成するが、その場合、磁界は、小型コアの小さな断面から集中的に放射される。
【0020】
非円形断面の等価的半径という用語は、仮にリングが特定の非円形断面の断面形状と同じ面積を有した場合、リングが有すべき半径を意味する。非円形断面の等価的半径は、それ故に、板を横切る等価的半径である。例えば、辺「a」を備えたコアの正確に正方形の断面では、等価的半径はr
e= a/(π)
1/2である。丸められた縁部のない、パラメータ「a]、「b」の矩形断面では、等価的半径はr
e=(ab/π)
1/2である。コアは正方形、矩形、円形、または楕円形の断面を有することが可能であるか、または上述の形状の組み合わせることによって形成することが可能である。コアの最も一般的な形状は、スペースを利用するように設計され、通常、コアは円形または楕円形の断面形状を有する。若しくは、断面は、少なくとも部分的には矩形であり、特に正方形または長方形であり、好ましくは湾曲した角部を備える。
【0021】
【0022】
共振回路の品質がQ>>1と仮定すれば、その場合には関係式は、L=Ls及びRp=Q
2Rsのパターンに単純化され得る。
【0023】
損失をまかなうための電源パワーは、以下の通りである。
【0024】
【数1】
【0025】
仮にRsが実数部Re(Z)よりも小さい場合、インダクタンスLsは調節され得る。その状況では、インダクタンスLsに関して流れる電流I
Lは、以下の通りである。
【0026】
【数2】
【0027】
放射体の中央部における磁界は、以下の通りである。
【0028】
【数3】
【0029】
式中、Nは細線の数である。関係式は、更に以下の通り書き直される。
【0030】
【数4】
式中、R
1Nは、1つの細線に関する巻き線の標準化された損失であり、かつ、以下の特徴を有する。
【0031】
【数5】
【0032】
図2は、この場合、コア直径で除算されたコイル幅wに対するRs依存性を示す。
図2では、比率w/D=0.5に対応する点Cが記されている。最大コイル幅は、wmax=2πDである。より大きな幅では、ワイヤの相互的な重なりが生じる。グラフの残りの部分は、細線数がN=2.5からN=55までのエリアを含んでいる。
【0033】
図3におけるグラフは、放射体の中心における磁界強度の依存性を示す。磁界の最大値(グラフにおける点A)は、仮にw=0.5Dとした場合にあたり、そのため、細線の有効幅wが、放射体のコアの半径に対応する場合である。点Bの左に対しては(非常に薄いワイヤ幅)、抵抗Rsは内部インピーダンスRe(Z)よりも大きく、かつ電源は、負荷に対して要求される電力を送達できない。このことにより、磁界強度は著しく減少する。点Bはまた、容量C2=0であるために、興味深く、結果としての共振回路は、
図4に示すように、直列共振回路に単純化される。そのような単純化された回路は、しかしながら、最大磁気力を供給しない。点Aの右側に対する磁界は減少するが、その理由は、幅wが増加するコイルは、放射体のコアの軸に関して、依然としてより大きな角度を形成するからである。
【0034】
ビオ・サバール(Biot−Savart)の法則に基づいて、ベクトルHxは、電流I
Lとベクトルrのベクトル積として計算され、我々の場合、rは放射体のコアの軸である。ベクトルHxは、巻き線(ピッチwを備える螺旋)の全ての曲線xにわたって積分する(式(1))。
【0035】
【数6】
【0036】
従って、その知見が示していることは、非常に広いコイルにおいては、角度αの開始が、係数cosαで磁界強度に強く影響を与えることである。これに反して、点Aの左側に対しては、角度αの影響は無視できるが、しかし
図2に示されるように、Rsの著しい損失を示し始めている。W=D/2の値から、損失Rsは著しく増加し始める(点C)。グラフは、最適な放射体インダクタンスは、約L=750nHであることを示している。放射体の与えられたパラメータの下では、w=D/2でインダクタンスがちょうどL=750nHであるような透磁率μを選ぶ必要がある。
【0037】
古典的な円形断面の単段コイルワイヤを使用する場合、ワイヤの曲げ半径に関して問題が生じる。その理由は、ワイヤの有効幅w(今はワイヤ直径に等しい)は、実質的にコア半径、例えば円形コアに等しいはずだからである。許容し得る最小のワイヤ曲げは、通常、曲げ半径の2倍以上と決定される。その場合、仮に放射体を配置するための構築高さを、我々は1ミリメートルしか有さないとすれば、コアの最大高さは、0.5ミリメートル未満となる。このことによって、壊れやすく、しかも小さなコア上の比較的太いワイヤの巻き線に関して、技術的問題及び複雑さが引き起こされる。巻き線に関する問題は、本発明によれば、コア半径に対する有効幅の比率によって引き起こされるが、その理由は、ワイヤがコアと比べて比較的広く、かつそれ故に、厚くあるべきだからである。
【0038】
空間の利用可能な高さをより良く利用し、かつ依然として本発明の基本的ルール(即ち、細線の有効幅wとコア半径との間の寸法的な関係)に従うために、平坦なワイヤを使用することを含むソリューションが発明された。コアを横切って巻いた後のワイヤの幅は、コアの半径に対応する。平坦なワイヤはコアの上で容易に巻かれ、かつ、断面高さにおいて、平坦なワイヤは多くのスペースを取らない。与えられたスペースは、その場合、放射体のコアのためにより良く使用できる。平坦なワイヤは、依然として十分に低い電気抵抗を有する。平坦なワイヤは、ワイヤの高さ、またはワイヤ厚さの2倍を超える幅を有する。
【0039】
更に、好ましい構成では、平坦なワイヤは、少なくとも2つの隣接するコイルワイヤのシステムによって置き換えることが可能であるが、しかしそれらは共に依然としてただ1つの細線を作るということであることが発見された。これらのワイヤも電気的に接続される。仮に、例えば我々が、平坦なワイヤを元のアスペクト比である1:3に置き換えたければ、我々は、そのような平坦なワイヤを置き換えるために、隣同士で巻かれた均一な円形断面の3つのワイヤを、あたかもこれが三段の細線であるかのように用いる。仮に我々が、平坦なワイヤを元の1:8の断面で置き換える場合、我々は隣同士に配置された円形断面の8つのワイヤを用いるが、あたかもこれは、機械用語では、八段の細線であるかのようである。1つの多段細線おけるワイヤは、互いの間で絶縁される必要はない。その理由は、これらのワイヤは、電気的に連結されたコイル端部を有するが、しかし、技術的な簡単化のために、同じ絶縁されたワイヤが、特定の細線の全てのワイヤのために使用され得るからである。他の配列において、1つの細線の縁のワイヤだけを電気的に絶縁することが可能であり、内部に配置されるワイヤは、絶縁性を有する必要はない。
【0040】
離れたコア端部から放射されることになる磁界に関して、均質で高い強度を達成するための努力は、多くの相反する要件に結びつく。可能な限り少ない数の細線を用いることが望ましいが、しかし細線の数を減少させると、コアの長さも削減される(コアはこれらの細線によって遮蔽される)。細線の数を減少させると、電流負荷もまた増加するが(これは信号放射のために必要である)、しかしながら、電流強度は、ホスト装置の素子によって制限される。平坦なワイヤを用いるか、または平行に保持された、多段の一細線ワイヤを用いることで、この対立した要求が衝突することを適切に除去される。
【0041】
小型サイズの放射体は、携帯通信装置内部のPCBボード上に配置するか、またはリムーバブルメモリカードの本体内に配置するか、またはSIMカード上に配置するか、またはバッテリ上に配置するか、または上記の組み合わせの中で配置することが可能である。
【0042】
本発明による放射体を、携帯通信装置(特に携帯電話)のPCBボードの直接上に用いると、アンテナとして使用される放射体は、特に小型サイズを有するという点で利点を提供し、かつそれは、ボード上のほぼどこにでも配置することが可能である。従来、NFCアンテナは、新しい各携帯電話モデルに対して特別に設計された。これに対して、アンテナループは、PCBボード上の、またはPCGボードの周りのより大きな表面エリアを取り囲んでいた。今まで、いくつかの携帯電話モデルの一製造業者は、いくつかのタイプのNFCアンテナを使用する必要があった。本発明の放射体を使用する場合、PCBボードの直接上で使用される場合でさえも、小型の放射体を使用すれば十分である。
【0043】
リムーバブルメモリカード上で放射体を使用する場合には、そのようなカードは、携帯通信装置の拡張スロットの中に挿入するために設計される。この場合、リムーバブルメモリカード基板上の放射体は、アンテナコアの軸がリムーバブルカードの本体の表面に対して主として平行に方向付けられるような方法で配置され、かつ放射体は、リムーバブルメモリカードの本体の周縁部で、コンタクト・インターフェース・ゾーンから外に位置する。有利なのは、仮に放射体が、リムーバブルメモリカードのコンタクト・インターフェース・ゾーンに関して、縁部の反対側である縁部に沿って位置する場合である。
【0044】
好ましいのは、巻き線軸の方向にあるコアパラメータであるコアの長さが、カードの寸法的可能性の中で可能な限り長い場合である。この場合は、最も長い磁力線が可能となり、かつ磁気フローの小さな部分のみが、短い経路の中で閉じられる。リムーバブルカードの本体の中に放射体を配置する場合、コア高さは1mmまでであり、幅は5mmまでであり、長さは15mmまでである。コンタクトのゾーンから外側への好ましい方位において、コアは、高さが0.7mmまでの、幅が1mmまでの、かつ長さが11mmまでの矩形断面を有する。
【0045】
SIMカード上で放射体を使用する場合には、放射体配置に対して、より大きなスペースが利用可能である。SIMカードはマイクロSDカードよりも大きく、かつまた、コンタクト領域におけるチップ外側の電子部品に関して、そのような高い貫通性を有していない。放射体は、SIMカード上で、異なる位置及び異なる回転で配置され得る。放射体をマイクロSIMカードまたはナノSIMカードの上に配置する場合、通常のSIMカードにおけるよりも、スペース的な選択肢はかなり限定される。そのような放射体の位置に対して、ソリューションが発明された。その場合、リムーバブルカード上の放射体は、増幅器(ブースター)と協力する時、該増幅器はスロットの中に、またはスロットのすぐ近傍に配置され、該スロットの中にカードが挿入される。
【0046】
増幅素子は、その場合、スペース、またはリムーバブルカードそれ自体の上の放射体表面のような、構築のためのより大きなスペース、またはより大きなエリアが利用可能である。増幅素子という用語は、磁界のエネルギーレベルを増加させない素子も含むが、しかし放射体から放射されるフローが、例えば単に方向的に向けられる、または均質化されるような素子を含む。増幅素子は、強磁性箔またはフェライト箔、若しくは共振回路などの形態をとることが可能なボード、の形態をとることが可能である。原則として、増幅素子は、スロットを、例えば電源などのための基板に接続するための新しい付加的なコンタクトを要求しないことが適切である。その場合、周囲(PCBボード、ホルダなど)の設計を変更せずに、新しいスロットを設計することが可能であり、それによってスロットの機能性が高められる。
【0047】
放射体及びスロットの中の増幅素子について述べた構成は、製造実施において十分使用可能である。何故ならば、スロットは外部供給の部品、外部製造のサブシステムであり、これによって、設計後に、ホスト装置の中に十分なスペースが既に確保されているからである。変更されないスペースの中で、我々は後に、増幅素子が補足されたスロットを配置できる。リムーバブルカード上の放射体とホスト装置内に位置する増幅素子との間の協力の原理もまた、より一般的に使用され得る。その場合、放射体は、カード、ジャック、バッテリ、他のアクセサリのようなリムーバブル素子に位置し、かつ増幅素子は、放射体の磁界の範囲内にあるスロット、コネクタ、リムバブルカバーに位置する。
【0048】
放射体を携帯電話バッテリ(蓄電池)の中で使用する場合、放射体のコアの、より多くの配置選択肢及び回転が利用可能である。原則として、異なる場所に、異なる相互的方位の状態で、より多くの放射体が、1つのバッテリの中に配置され得る。特定の放射体の活性化は、与えられた携帯電話における連続的な送信の結果に応じて選択され得る。
【0049】
本発明による磁界放射体から送信される信号は、与えられた周波数帯おける標準的な受信手段によって受信される。例えば、仮に放射体が、携帯電話とPOS端末リーダーとの間のNFC送信のために指定される場合、携帯電話側のアンテナは、フェライトコアを備えた磁界放射体の形態をとるが、しかしPOS端末NFCリーダー側には、一般的な受信アンテナが位置される。POS端末側で普及しているハードウェアを変更する必要を無くすために、既存の標準的装置にまさに準拠することが重要である。携帯電話側でのハードウェア変更は、携帯電話の既存の拡張スロットに加えて、リムーバブルメモリカード(特にマイクロSDフォーマット)を単に挿入するか、または、新しいSIMカードまたは新しいバッテリを挿入することによって起こる。携帯通信装置の拡張スロットは、装置の基本的通信機能に影響を与えないカードのためのスロットであり、その場合、拡張スロットは特に、しかし排他的ではないが、マイクロSDフォーマットのリムーバブルメモリカードのためのスロットである。
【0050】
技術的観点からは、コアが、非導電性基板上に位置するフェライトロッドで形成されれば、好ましい。非導電性基板は、コアの幅に対応する幅と、コアの長さに少なくとも等しい長さとを有する。細線ワイヤはフェライトロッドを横切って巻かれ、かつ非導電性基板も横切って巻かれ、これによって、ワイヤコイルは、非導電性基板でコアを機械的に支持する。非導電性基板は、コイルワイヤを接続するために、かつアンテナをリムーバブルメモリカードの本体に接続するために、両端に接続パッドを有することが可能である。接続パッド上には、多段コイルワイヤが各々接続され、かつこれらの放射体コンタクトは、ホスト装置の導電性回路に相互接続される。
【0051】
本発明による放射体で発生された磁界は、携帯通信装置の空間的構造における小さなギャップを貫通する能力を有する。例えば、カードとカードスロットとの間の、更にまたバッテリハウジングと隣接する携帯電話の本体との間の平坦なギャップは、磁界が形態電話本体から貫くことを十分可能にする。放射体の外へ放射される磁界は、例えばPOS端末の形態をした一般的なアンテナによって受信される通信チャンネルの反対側にある。実際には、放射体は主に携帯電話の内部に位置するが、携帯電話は、好ましくない構成において、金属カバーを有する。磁力線は、カバーの間の小さなギャップを通して、それ故に、NFCリーダーが位置する空間の中に出てくる。カバーは、しばしばカバーの下からバッテリを除去することを可能にするため、基本的に常に着脱可能であり、カバー部品の間にギャップを作る。カバーは、高い強度を備えた磁界が、本発明による放射体から外に貫くことを保証するのに十分である。
【0052】
放射体の共振特性は、コイルワイヤの位置及びパラメータを調節することによって達成することが可能であり、その結果、コイル自体が十分な能力を有するか、または全てのコイルワイヤのシステム全体が、おそらく電磁的環境連鎖を含めて十分な能力を有する。
【0053】
放射体は、異なる周囲の影響の下で、自身が適切に調整されるような方法で設計され得る。仮に放射体が電気伝導性材料の近くに位置する場合、放射体のインダクタンスは減少する。この特徴は、周囲(この中に放射体が位置する)に依存する放射パワーの自動制御に利用される。このことは、放射体を適用する上での汎用性を増加させる。放射体が配置される場合、異なるタイプの携帯電話の影響を考慮する必要がない。放射体は、ちょうどそれが金属カバーの中にある場合、例えば15MHzの共振に対して調整される。環境的な影響の下で、アンテナのインダクタンスは、1μHに減少して安定化される。しかしながら、仮にアンテナがハウジングの外側に配置される場合、インダクタンスは1.3μHに増加し、かつ共振は12MHzに移動する。放射体は14.4MHzの周波数を持つパワーを放射するので、最大パワーは、共振がその値に近い時に正確に放射される。何故ならば、その内部抵抗は、その時に最も小さいからである。しかしながら、仮に放射体がプラスチックカバーの下に配置される場合、共振は12MHzまで下方に移動し、かつ14.4MHzの周波数での内部抵抗は増加する。放射体は、好ましい構成で設計され、かつ構築される。その結果、周波数及び/またはインダクタンス及び/または内部抵抗は、起こり得る最も好ましくない遮蔽、例えば完全カバーにおいて、最大送信パワーに事前設定される。その時、環境との関係において、遮蔽の削減率は、同じ入力通電時での送信パワーを減少させる。その理由は、隣接する遮蔽要素が、放射体の周波数及び/またはインダクタンス及び/または内部抵抗に影響を与えるからである。単純に、放射体によって送信するために、我々は囲まれた金属部品も意図的に使用する。それらが存在しないことによって、送信パワーにおける減少が引き起こされるが、しかし放射体は設定され、その結果、ゼロ遮蔽であってさえも、放射体送信のパワーは、標準のNFC手段またはRFID手段によって受信されるための最大性能を超える。
【0054】
本発明による磁界放射体は、原則として、リムーバブルメモリカードの本体またはSIMカードの本体から、PCBボードまたはバッテリから信号を送信するために使用されるはずである。通信の逆方向において、信号がリムーバブルメモリカード上で受信される場合、通常、電磁界強度に関しては問題がない。これに対して、この方向では、送信アンテナは寸法的に制限されない。原則として、特に、放射体(これは、受信アンテナとして役立つ)に向けての転送経路を最適化する必要はない。他の配列において、放射体は、リムーバブルカードに向けての信号を受信するための古典的コイル、個別のNFCアンテナとして補完され得る。
【0055】
最大有効電流負荷が標準のカードインターフェースに基づく場合、出力ドライバからの最大有効電流は、0.1Armsから0.2Armsの範囲であり得る。出力ドライバは、パワー増幅器出力段の一部である。コイルワイヤにおける電流は、0.8Armsの値を超えない。マイクロSDカード上のそのような設定及びの電力供給において、出力ドライバの出力抵抗は、10オーム未満であり得る。特定のインピーダンス値は、電圧、電流及び電力の事前設定比率に応じて変化してもよい。
【0056】
コア断面を縮小する場合、我々は、コア内で可能な最も高い磁界強度を達成するための試みをする。これによって、コア材料に対する要求が増える。フェライトコアの効率を増加させるための適切な方法は、周波数帯を可能な限り狭い周波数スペクトルに集中させることである。周波数スペクトル設計は、通常の変調原理によっては未だ大いに不確定であり、基本的には、非接触通信標準によって決定される。非接触通信標準によれば、送信されるデータは、サブキャリア周波数に変調され、これが基本のキャリア信号に結合される。周波数スペクトルが調整され、単一周波数に調節される場合、本発明による放射体は、新しい原理の変調に対して特に有利であることが示された。放射体は、サブキャリア周波数とは無関係に、送信周波数に狭く調整される。周波数スペクトルは、それ故に、鋭いピークを有し得る。
【0057】
放射体及び受信器は接続された変成器であり、受信器は第1周波数でキャリア信号を送信し、放射体の側では、データが変調され、かつ受信器に送信され、受信器は信号を解析する。その一方で、信号は、第1周波数でのキャリア信号と、キャリア周波数に対して第2周波数でのデータで変調されたサブキャリア周波数との形態で出現する。受信器では、キャリア信号は、アンテナ出力上の信号から分離され、かつ送信されたデータが復調される。放射体から受信器へのデータ送信における新しい変調の主題が意味するのは、特に、受信器周波数及び放射体周波数が異なり、かつ周波数における差異が、サブキャリア周波数に対応することである。受信器側で受信され、かつ復調される信号は、送信されたキャリア信号と放射体によって送信される復調されたデータとを結合することによって形成される。その場合、この結合は検出され、かつ受信器アンテナで受信される。周波数におけるこの差異は、不正確さによって引き起こされるのではなく、意図的でかつ意味のあるものである。周波数における差異は、サブキャリアの範囲内にあり、サブキャリアの用い方に対して、受信器が事前設定される。
【0058】
応答器において変成器接続を使用する場合、周波数信号は積極的に送信される必要はない。応答器アンテナの誘導回路が、必要とされる周波数で短絡されていれば十分である。応答器側でのこれらの変化は、受信器アンテナ出力上で測定され得る。
【0059】
放射体の送信周波数における変化は、受信器のキャリア周波数とは反対に、受信器側で受信された信号の評価方法を変化させる必要さえなく、かつ受信器の接続(配列)を変化させる必要もないような方法で選ばれる。送信周波数における変化は、キャリア周波数値の両側に対して事前設定されることが可能であるが、このことは、送信周波数が、受信器キャリア周波数の値よりも低い、または高い場合があり得ることを意味する。
【0060】
相互距離が小さいことによって、変成器接続はアンテナシステムの中に創成されるが、該アンテナシステムは、受信器のアンテナと、相互誘導を備えた放射体とによって形成される。データ送信の間は、受信器は、そのキャリア周波数をアンテナに送り、放射体は異なる周波数で変調された信号をそのアンテナに送り、かつ、その後、異なる周波数の信号は、相互アンテナシステムの中で結合される。
【0061】
受信器のアンテナからの出力は、受信器において解析される。受信器のアンテナ上のこの出力は、あたかも放射体が、負荷変調を使用しながら、サブキャリア信号の変調を備えたキャリア周波数上で送信したのと同じ特性を有する。その後、周波数結合の結果から、信号キャリアは受信器の中で応答され、かつ、放射体はサブキャリア信号を物理的に使用していないにもかかわらず、得られた結果は、変調されたサブキャリア信号に対応する。送信されたデータは、現実には、それらが放射体の送信周波数に直接変調された場合でさえも、復調によって、この信号から受信される。データ進行方法は、受信器のためのこの種の構成によって変更されない。このことは、重要な要素である。その理由は、このことによって、新しい放射体を備えた既存の受信器を使用することが可能になるからである。
逆方向のデータフローは、今までと同じであり得る。
【0062】
本発明によって説明されたように、受信器は、受信器が自身のアンテナと共に有する相互誘導の外側に、その信号を送信する場合、送信された信号は、サブキャリア周波数を使用することに対応しない。その理由としては、放射体はサブキャリア周波数を送信せず、かつ標準の信号構造を期待すると思われる受信器は、この種の信号を評価できない、というものである。相互誘導が創成される場合のみ、異なる周波数を合併する物理的効果が生じる。これらの周波数間の差異は、期待されるサブキャリア周波数の範囲に対して慎重に設定される。受信された信号は、今までの既存のソリューションの中でなされるのと同じような方法で、受信器によって処理される。本発明の重要な寄与は、本発明が、既存の受信器側での変更を要求しないことである。放射体は、例えば、携帯電話の中に位置する。キャッシュレス支払いを実現する間、メモリカード上に放射体を備えた携帯電話は、POS端末リーダー内にある受信器に近づけられる。信号は、カードの中で発生され、かつキャリア周波数として受信器によって発生された周波数とは異なる周波数で変調される。受信器からの信号は、放射体からの信号と結合され、かつ結合された信号の形態で信号を形成するが、この信号は、受信器においては、既存の構造に従う信号のように見える。受信器、リーダーは、その後、合併され、結合された信号を、既存の処理における一般的な方法で処理する。
【0063】
送信されるデータが、放射体の周波数の位相φ=0°、またはφ=180°における変化によって、直接変調されれば適切である。放射体における変調では、送信される周波数の位相が、変調の間、基本単位時間etu当たりに1回変更されれば十分である。このように、より小さな回数の位相変化で十分であり、ある状況では、放射体側での変調管理に対する要求が下がり、かつノイズも下がる。
【0064】
説明された方法は、放射体と受信器との間の変成器接続における動作を可能にし、この方法の利点は、変成器接続係数k=0.2−0.001を備えた弱い変成器接続において主に現れる。
【0065】
既存の受信器を使用する観点からは、キャリア信号f
rが13.56MHz±7kHzの周波数を有していれば適切である。信号キャリア周波数と放射体の周波数との間の差異は、キャリア周波数によって、好ましくはキャリア周波数の1/16(これは847kHzに相当する)によって完全に形成される。周波数間のこの関係は、ハードウェアの観点からは有利であり(そこでは周波数の分割に対して、既存の電子素子を使用することが可能である)、かつ既存の標準に準拠するという観点からも有利である。放射体によって生成された周波数f
tは、13.56MHz+847kHz=14.4075MHzの値である。ここで、公差は同様に±7kHzである。
【0066】
受信器側で検出された信号は、キャリア周波数の一般的負荷変調の間の状況に対応する。しかしながら、本ソリューション及び本方法においては、アンテナ負荷は、サブキャリア信号の半波ごとに変化させなければならず、これは、キャリア周波数が13.56MHzの場合、約0.6μsごとである。本発明によるソリューション及び方法では、変更は、1etu当たりに1回だけ(そのため、約9.3μsごとである)なされれば十分である。変更のより小さな帯域幅によって、より小さなノイズが発生され、その値は、ノイズパワー=10.log(16)=12dBである。
【0067】
本発明によるデータ送信方法によって、放射体のアンテナは狭い送信周波数に調整されることが可能になる。これに対して、サブキャリア周波数のために、アンテナの放射特性を考慮する必要はない。現実には、放射体は、サブキャリア周波数を使用しない。サブキャリア周波数は、周波数干渉の間だけ存在する。受信器は、サブキャリア周波数の受信を期待する。ISO14443による構成では、受信器のアンテナ出力上にサブキャリアが存在しなければ、いかなる種類の通信が起こることも妨げられる。
【0068】
説明された方法は、送信器が携帯通信装置の上または中に、好ましくはカード上に位置するような送信の間は、広いアプリケーションを見つける。そこでは、該カードは(取り外し可能な方法で)、携帯通信装置のスロット(SDカード、マイクロSDカード、SIMカード、マイクロSIMカード、ナノSIMカード)の中に配置される。その場合には、変成器結合係数を増加させることは実際に可能ではなく、かつ送信特性の改善が、本発明の中で説明された方法の主な利点である。放射体は、本発明で説明されるように、狭い周波数特性に調整されるが、これは送信周波数に対応する。逆のデータ過程の場合、異なる周波数が使用されるが、このことによって、放射体側/応答器側で、いかなる送信の困難さも創成されない。その理由として、リーダーは、比較的高いエネルギーで送信し、かつより高い周波数スペクトルでさえも送信するからである。リーダーは、例えば、POS端末の通信素子であり得る。
【0069】
本発明による放射体における変調の方法を実現するために、放射体、変調素子、復調素子、及び受信器の周波数と異なる周波数を備えた電磁波発生器から構成される接続(配列)が使用され得る。接続において電磁波発生器を使用することは、受信器の変成器接続及び送信器アンテナ誘導においては一般的ではない。その理由は、従来、送信器側では負荷変調が使用されてきたからである。我々の接続では、発生器は、電磁波の発振器である。そして、送信データは発振器の入力に接続される。
【0070】
放射体は、逆のデータフローの間でさえも、動作可能であるべきであり、放射体の復調素子は、センサ抵抗器の方を向いた誘導体の回転部に接続される。復調素子の中への入口で電圧ピークを除去するために、復調素子は、誘導子を介して接続される。回転部は張力を減少させ、かつインピーダンス回路を改善する。放射体回路の電力供給は、受信された電磁界から確保することが可能であり、この場合、送信器は受動素子であると考えることができる。しかしながら、電力供給は、それ自身の電力源によっても確保され得る。本ソリューションによる携帯電話において、メモリカードの中に放射体を埋め込む場合、送信器は、カードのインターフェースを通してエネルギーを供給され得る。
【0071】
ここで述べる周波数値は、適切な設定値であり、かつ既存の基準及び標準に対応する。しかし、周波数組み合わせの説明される方法を、完全に異なる周波数値に対してさえも適用することが可能である。その理由は、周波数結合器におけるサブキャリア信号の創成は、一般に妥当な波の発現に基づくからである。
【0072】
本発明によるカード上の放射体は、異なる携帯通信装置のスロットの中で、しかもバッテリの下に位置するスロットの中でさえも、優れた送信特性を有する。測定によって示されてきたのは、本発明によれば、放射体を備えたリムーバブルメモリカードを備えた携帯電話は、信頼できるNFC通信チャンネルを創成でき、これに対して、NFCリーダーに対する携帯電話の方向的な方位は、制限されないということである。付加的に創成された非接触チャンネルの信頼性に対する、異なる携帯電話構造の影響は、抑制される。
【0073】
放射体の接続及び記載されたデータ送信変調の方法は、他の送信ソリューション(例えば、センサからガルバノ分離されたデータ送信において、移動する要素、振動する要素などからのデータ送信の間)においてさえも使用され得る。本発明による接続(配列)及び方法によって、家庭用設備、電気器具、医療、自動車技術などで使用されるデータ送信において、送信システムを最適化することが可能になる。本発明は、放射体の部品上で信号の変調を単純化し、ノイズを下げ、かつ放射体の非常に狭く、かつ有効な調整を許容する。
【0074】
放射体の新しい構造的構成(放射体コア半径に対する1つの細線の有効幅の比率)に関連するこれらの効果は、変成器接続が弱い場合でさえも、送信特性を相乗作用的に改善する。このことによって、遮蔽された周囲からさえも、高品質のデータ送信のための前提条件が創成される。
【0075】
本発明は、
図1から
図26を用いて更に説明される。使用される表示スケール及び個々の構成要素の比率は、実施例における記述に対応しない場合があり、またスケール及び割合は、保護の範囲を狭めるものとして解釈され得ない。