(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6292241
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】遠心ファン
(51)【国際特許分類】
F04D 29/28 20060101AFI20180305BHJP
F04D 29/66 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
F04D29/28 K
F04D29/66 M
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-7180(P2016-7180)
(22)【出願日】2016年1月18日
(65)【公開番号】特開2017-129023(P2017-129023A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2016年10月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】柏原 貴士
(72)【発明者】
【氏名】山崎 登博
(72)【発明者】
【氏名】佐柳 恒久
(72)【発明者】
【氏名】仲山 聡通
【審査官】
鈴木 貴雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−038092(JP,A)
【文献】
特開2005−264882(JP,A)
【文献】
特許第2500696(JP,B2)
【文献】
特開2012−220125(JP,A)
【文献】
実開平05−073294(JP,U)
【文献】
特開2001−304189(JP,A)
【文献】
特開昭55−081299(JP,A)
【文献】
特開2000−009093(JP,A)
【文献】
英国特許出願公開第02502388(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/28
F04D 29/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸線周りに環状に配置される複数のブレード(70)と、前記ブレードを結ぶ主板(60)と、を有する羽根車(8)と、
固定子(10)と、前記主板に対向するとともに前記固定子の外周側に配置されるカップ形状の回転子(20)と、を有するアウターロータ型モータ(7)と、
を備えた、遠心ファンにおいて、
前記主板を前記回転子との間に挟むように前記主板よりも剛性の高い剛性部材(90)が配置され、前記主板と前記回転子との間に第1弾性部材(50)が配置され、かつ、前記主板と前記剛性部材との間に第2弾性部材(80)が配置されており、前記回転子、前記第1弾性部材、前記主板、前記第2弾性部材及び前記剛性部材が順に前記回転軸線方向に重なった状態で、前記回転子、前記第1弾性部材、前記主板、前記第2弾性部材及び前記剛性部材をまとめて前記回転軸線方向に挿通するボルト(40)を介して、前記回転子、前記主板及び前記剛性部材間が固定されている、
遠心ファン(4)。
【請求項2】
前記主板は、樹脂製であり、
前記剛性部材は、金属製である、
請求項1に記載の遠心ファン。
【請求項3】
前記ボルトは、前記回転子の径方向中央寄りの部分に位置している、
請求項1又は2に記載の遠心ファン。
【請求項4】
前記ボルトと前記主板との間には、第3弾性部材(55)が配置されている、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の遠心ファン。
【請求項5】
前記第3弾性部材は、前記第1弾性部材又は前記第2弾性部材と一体の部材である、
請求項4に記載の遠心ファン。
【請求項6】
前記ボルトは、3本以上あり、前記回転軸線周りに環状に配置されている、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の遠心ファン。
【請求項7】
前記ボルトは、前記回転子から前記剛性部材側に向かって延びており、
前記回転子、前記主板及び前記剛性部材間は、前記ボルトの前記剛性部材側の先端からナット(45)が螺合された状態で固定されている、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の遠心ファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心ファン、特に、アウターロータ型モータによって羽根車を回転駆動させる遠心ファンに関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和装置や空気清浄機等においては、空気の吸入や供給、排出のために遠心ファンが使用されることがある。遠心ファンは、主として、羽根車と、羽根車を回転駆動させるファンモータと、を有している。羽根車は、回転軸線周りに環状に配置される複数のブレードと、ブレードを結ぶ主板と、を有している。
【0003】
そして、このような遠心ファンのファンモータとして、特許文献1(特開2005−264882号公報)に示すようなアウターロータ型モータを採用する場合がある。アウターロータ型モータは、主として、固定子と、固定子の外周側に配置されるカップ形状の回転子と、を有している。そして、この遠心ファンは、アウターロータ型のファンモータの回転子が羽根車の主板に対向して配置されるとともに、回転子と主板との間にゴムワッシャ(弾性部材)が配置された状態で、ネジを螺挿することによって主板と回転子とが連結された構造を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のアウターロータ型のファンモータを採用した遠心ファンでは、主板と回転子との間に弾性部材が配置されているため、遠心ファンが設けられた空気調和装置等を輸送する際の振動や衝撃によって、回転子に対して主板が傾くような変形が発生しやすくなる。そして、このような主板の変形量が大きくなると、主板にネジが螺挿されている部分及びその周辺部分において、主板にひび割れが発生するおそれがある。また、主板と回転子との間に弾性部材が配置されているだけでは、遠心ファンを運転する際のコギング音等の騒音を十分に低減できないおそれがある。
【0005】
このように、上記従来のアウターロータ型のファンモータを採用した遠心ファンでは、輸送時に羽根車の主板が破損するおそれがあり、かつ、運転時の騒音が十分に低減されないおそれがある。
【0006】
本発明の課題は、アウターロータ型モータによって羽根車を回転駆動させる遠心ファンにおいて、輸送時の羽根車の主板の破損を防止し、かつ、運転時の騒音を十分に低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の観点にかかる遠心ファンは、羽根車と、アウターロータ型モータと、を有している。羽根車は、回転軸線周りに環状に配置される複数のブレードと、ブレードを結ぶ主板と、を有している。アウターロータ型モータは、固定子と、主板に対向するとともに固定子の外周側に配置されるカップ形状の回転子と、を有している。そして、ここでは、主板を回転子との間に挟むように
主板よりも剛性の高い剛性部材が配置され
、主板と回転子との間に第1弾性部材が配置され、かつ、主板と剛性部材との間に第2弾性部材が配置され
ており、回転子、第1弾性部材、主板、第2弾性部材及び剛性部材が順に回転軸線方向に重なった状態で、回転子、第1弾性部材、主板、第2弾性部材及び剛性部材をまとめて回転軸線方向に挿通するボルトを介して、回転子、主板及び剛性部材間が固定されている。ここで、剛性部材は、主板が樹脂製の部材である場合に金属製の部材を使用する等のように、主板よりも剛性の高い部材である。弾性部材は、ゴム製の部材のような弾性変形しやすい部材である。
【0008】
ここでは、主板を回転子との間に挟むように配置された剛性部材によって、輸送時に回転子に対して主板が傾くような変形の程度を抑制することができる。しかも、主板と剛性部材との間に配置された第2弾性部材によって、運転時の騒音の低減を図ることができる。
【0009】
このように、ここでは、主板と回転子との間に配置された第1弾性部材に加えて、主板を回転子との間に挟むように剛性部材を配置し、かつ、主板と剛性部材との間に第2弾性部材を配置することによって、輸送時の羽根車の主板の破損を防止し、かつ、運転時の騒音を十分に低減することができる。
【0010】
特に、ここでは、輸送時に回転子に対して主板が傾くような変形が発生すると、主板にボルトが挿通されている部分及びその周辺部分において、主板にひび割れが発生することが懸念される。しかし、ここでは、剛性部材によって変形の程度を抑えることができるため、主板のひび割れの発生を抑えることができる。
【0011】
第2の観点にかかる遠心ファンは、第1の観点にかかる遠心ファンにおいて、主板が樹脂製であり、剛性部材が金属製である。
【0012】
第3の観点にかかる遠心ファンは、第1又は第2の観点にかかる遠心ファンにおいて、ボルトが回転子の径方向中央寄りの部分に位置している。
【0013】
第
4の観点にかかる遠心ファンは、
第1〜第3の観点のいずれかにかかる遠心ファンにおいて、ボルトと主板との間に、第3弾性部材が配置されている。
【0014】
主板にボルトが挿通されている部分において主板とボルトとが直接接触していると、ボルトを介して主板と回転子との間で振動が伝わってしまい、第1及び第2弾性部材による運転時の騒音を低減させる効果に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0015】
そこで、ここでは、上記のように、ボルトと主板との間に第3弾性部材を配置するようにして、主板とボルトとが直接接触するのを避けるようにしている。
【0016】
これにより、ここでは、第1及び第2弾性部材による運転時の騒音の低減効果を十分に得ることができる。
【0017】
第
5の観点にかかる遠心ファンは、
第4の観点にかかる遠心ファンにおいて、第3弾性部材が、第1弾性部材又は第2弾性部材と一体の部材である。
【0018】
ここでは、第3弾性部材を第1弾性部材又は第2弾性部材と一体の部材にすることによって、弾性部材の個数を減らすことができるため、アウターロータ型モータに主板を連結する際の組立性を向上させることができる。
【0019】
第
6の観点にかかる遠心ファンは、
第1〜第5の観点のいずれかにかかる遠心ファンにおいて、ボルトが、3本以上あり、回転軸線周りに環状に配置されている。
【0020】
ここでは、3本以上のボルトを回転軸線周りに環状に配置することによって、アウターロータ型モータと主板との芯だしを確実に行うことができる。
【0021】
第
7の観点にかかる遠心ファンは、
第1〜第6の観点のいずれかにかかる遠心ファンにおいて、ボルトが、回転子から剛性部材側に向かって延びており、回転子、主板及び剛性部材間は、ボルトの剛性部材側の先端からナットが螺合された状態で固定されている。
【0022】
ここでは、ボルトによる回転子、主板及び剛性部材間の固定にあたり、ボルトの剛性部材側の先端からナットを螺合させるようにしているため、ボルトを弾性部材、主板及び剛性部材に挿通させながら、弾性部材、主板及び剛性部材を回転子に対して順に重ね合わせることができる。また、回転子、主板及び剛性部材間を締結する際には、ボルトの先端位置を基準にしてナットの締め付け代を管理することもできる。
【0023】
これにより、ここでは、アウターロータ型モータに主板を連結する際の組立性を向上させることができ、また、運転時の騒音の低減効果に影響する弾性部材の圧縮代を含めたナットの締め付け代を管理しつつ、ボルトを介して回転子、主板及び剛性部材間を適切に固定することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、主板と回転子との間に配置された第1弾性部材に加えて、主板を回転子との間に挟むように剛性部材を配置し、かつ、主板と剛性部材との間に第2弾性部材を配置することによって、輸送時の羽根車の主板の破損を防止し、かつ、運転時の騒音を十分に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる遠心ファンが採用された空気調和装置の外観斜視図である。
【
図3】ファンモータの構造、及び、ファンモータと羽根車の主板との連結構造を示す断面図である。
【
図4】ファンモータと主板との連結構造を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明にかかる遠心ファンの実施形態について、図面に基づいて説明する。尚、本発明にかかる遠心ファンの実施形態の具体的な構成は、下記の実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0027】
(1)空気調和装置の全体構成
図1に本発明の一実施形態にかかる遠心ファン4が採用された空気調和装置1の外観斜視図(天井は省略)を示す。空気調和装置1は、ここでは、天井設置型の空気調和装置であり、主として、内部に各種構成機器を収納するケーシング2と、ケーシング2の下側に配置された化粧パネル3と、を有している。
【0028】
空気調和装置1のケーシング2は、下面が開口した箱状の部材であり、
図2(空気調和装置1の概略側面断面図)に示されるように、空調室の天井に形成された開口に挿入されて配置されている。そして、化粧パネル3は、空調室の空気をケーシング2に吸入するために略中央に配置された吸入口3aと、ケーシング2から空調室に空気を吹き出すために吸入口3aの外周を囲むように配置された吹出口3bと、を有しており、天井の開口に嵌め込まれるように配置されている。
【0029】
ケーシング2内には、主として、化粧パネル3の吸入口3aを通じて空調室の空気をケーシング2内に吸入して外周方向に吹き出す遠心ファン4と、遠心ファン4の外周を囲む熱交換器5と、吸入口3aから吸入される空気を遠心ファン4に案内するためのベルマウス6と、が配置されている。遠心ファン4は、ケーシング2の天板2aの略中央に設けられたファンモータ7と、ファンモータ7に連結されて回転駆動される羽根車8と、を有している。
【0030】
羽根車8は、樹脂製の部材であり、主として、ファンモータ7に連結される円板状の主板60と、主板60の回転軸線O周りに主板60の反ファンモータ7側に環状に配置された複数のブレード70と、複数のブレード70を主板60との回転軸線O方向間に挟むように配置された環状のシュラウド75と、を有している。主板60は、その中央部に、略円錐台形状のハブ部61が吸入口3a側に向かって突出するように形成された部材であり、その外周部において、複数のブレード70のファンモータ7側の端部を結んでいる。シュラウド75は、その外周部から中央部の開口に向かうにつれて吸入口3a側に湾曲しながら突出するベル形状の部材であり、複数のブレード70の反ファンモータ7側の端部を結んでいる。ブレード70は、ここでは、羽根車8の回転方向に対して後傾したターボ翼形状の部材である。
【0031】
尚、遠心ファン4が設けられる空気調和装置1は、天井設置型のものに限定されるものではなく、他の型式であってもよい。また、ファンモータ7の構造、及び、ファンモータ7と羽根車8の主板60との連結構造については、後述する。
【0032】
(2)ファンモータの構造、及び、ファンモータと羽根車の主板との連結構造
次に、ファンモータ7の構造、及び、ファンモータ7と羽根車8の主板60との連結構造について、
図2〜
図5を用いて説明する。ここで、
図3は、ファンモータ7の構造、及び、ファンモータ7と羽根車8の主板60との連結構造を示す断面図である。
図4は、ファンモータ7と主板60との連結構造を示す分解斜視図である。
図5は、
図3の植込ボルト40(後述)付近を示す拡大図である。
【0033】
<ファンモータの構造>
まず、ファンモータ7の構造について説明する。
【0034】
ファンモータ7は、アウターロータ型モータであり、主として、固定子10と、主板60に対向するとともに固定子10の外周側に配置されるカップ形状の回転子20と、を有している。また、ファンモータ7は、ケーシング2の天板2aに固定されるモータベース30と、モータベース30から主板60側に向かって延びる固定シャフト31と、を有している。モータベース30は、天板2aに対向する略3角板形状の部材であり、その外周部に天板2aにボルト等で固定するための切り欠き32が形成されている。固定シャフト31は、回転軸線Oを中心とする円柱状の部材であり、モータベース30の中央部に回転不能に固定されている。また、モータベース30には、回転軸線O方向に貫通する通気孔33が形成されている。尚、モータベース30の形状は、略3角板形状ではなく、円板形状等の他の形状であってもよく、また、天板2aに固定するための切り欠き32が孔であってもよい。
【0035】
固定子10は、略筒形状の部材であり、固定シャフト31の外周側に配置されるとともに、モータベース30に固定されている。ここで、固定子10は、通気孔33を塞がないようにモータベース30に配置されている。固定子10は、主として、磁性体からなる固定子コア11と、固定子コア11に巻回される固定子巻線12と、を有している。
【0036】
回転子20は、主として、主板60のハブ部61に対向する略円板形状の回転子平板部21と、回転子平板部21の外周部から回転軸線Oに沿ってモータベース30側に延びる略筒形状の回転子外筒部22と、を有している。回転子外筒部22は、固定子10に対して界磁磁束を供給する磁極部材23を有している。磁極部材23は、エアギャップを介して固定子10の外周面に対向している。また、回転子20は、回転子平板部21の内周部から回転軸線Oに沿ってモータベース30側に延びる略筒形状の回転子内筒部24を有している。回転子内筒部24は、固定シャフト31の外周側で、かつ、固定子10の内周側に配置されており、軸受34、35を介して固定シャフト31に回転自在に支持されている。すなわち、回転子20は、モータベース30を介して固定シャフト31と一体になっている固定子10に対して、回転軸線O周りに回転自在に配置されている。また、回転子平板部21には、回転軸線O方向に貫通する通気孔25が形成されている。ここで、通気孔25は、回転軸線O周りに環状に複数(ここでは、3個)配置された長孔である。すなわち、ファンモータ7には、通気孔25、33を通じて、回転子20とモータベース30とによって形成された固定子10が配置される空間に対して、モータ冷却用の空気を流すことを可能にするための構成が形成されている(
図3の空気の流れを示す矢印を参照)。
【0037】
<ファンモータと主板との連結構造>
次に、アウターロータ型モータからなるファンモータ7の回転子20と羽根車8の主板60との連結構造について説明する。
【0038】
ファンモータ7には、回転子20から回転軸線Oに沿って主板60側に向かって延びる植込ボルト40が設けられている。植込ボルト40は、回転子20の回転子平板部21の径方向中央寄りの部分に形成されたネジ孔26に螺合されている。ネジ孔26及び植込ボルト40は、回転軸線O周りに環状に複数(ここでは、3本)配置されており、ここでは、通気孔25の周方向間に配置されている。植込ボルト40は、主として、ネジ孔26に螺合されるモータ側ネジ部41と、座付ナット45(後述)が螺合する主板側ネジ部42と、モータ側ネジ部41と主板側ネジ部42との回転軸線O方向間に形成された段付き部43と、を有している。段付き部43は、モータ側ネジ部41及び主板側ネジ部42よりも直径が大きい円柱形状を有している。このため、植込ボルト40のモータ側ネジ部41は、段付き部43のモータ側ネジ部41側の端面がネジ孔26の周囲部分に当接した状態になるまで、ネジ孔26に螺挿されている。また、段付き部43の回転軸線O方向の寸法は、主板60、剛性部材90(後述)及び弾性部材50、55、80(後述)の合計の回転軸線O方向の厚み(弾性部材50、55、80については、圧縮代を考慮)と同じになるように設定されている。
【0039】
植込ボルト40が設けられたファンモータ7には、ゴム製の第1及び第3弾性部材50、55が設けられている。第1弾性部材50は、回転子20の回転子平板部21と同程度の直径を有する略円板形状の部材であり、回転子平板部21に対して回転軸線O方向に重なるように配置されている。第1弾性部材50には、回転子20のネジ孔26に対向する位置に、植込ボルト40の段付き部43が挿通可能な複数(ここでは、3個)の貫通孔51が形成されている。このため、第1弾性部材50は、植込ボルト40の段付き部43が貫通孔51を挿通した状態で、回転子平板部21に対して回転軸線O方向に重なっている。また、第1弾性部材50には、回転子平板部21に形成された通気孔25に対向する位置に通気孔52が形成されている。第3弾性部材55は、植込ボルト40の段付き部43が挿通される略筒形状の部材であり、ここでは、第1弾性部材50と一体の部材である。尚、第3弾性部材55は、第1弾性部材50とは別部材であってもよいが、組立性の観点から第1弾性部材50と一体の部材にするほうが好ましい。
【0040】
植込ボルト40、及び、第1及び第3弾性部材50、55が設けられたファンモータ7には、羽根車8の主板60が設けられている。主板60のハブ部61は、回転子20の回転子平板部21及び第1弾性部材50よりも直径が大きい略円板形状の部分を有しており、第1弾性部材50に対して回転軸線O方向に重なるように配置されている。ハブ部61には、回転子20のネジ孔26に対向する位置に、植込ボルト40の段付き部43が挿通した状態の第3弾性部材55が挿通可能な複数(ここでは、3個)の貫通孔62が形成されている。このため、ハブ部61は、第3弾性部材55が貫通孔62を挿通した状態で、第1弾性部材50に対して回転軸線O方向に重なっている。すなわち、主板60と回転子20との間に第1弾性部材50が配置されている。また、植込ボルト40と主板60との間に第3弾性部材55が配置されている。また、3本の植込ボルト40によってファンモータ7と主板60との芯だしがなされている。また、ハブ部61には、回転子平板部21及び第1弾性部材50に形成された通気孔25、52に対向する位置に通気孔63が形成されている。
【0041】
植込ボルト40、第1及び第3弾性部材50、55、及び、主板60が設けられたファンモータ7には、ゴム製の第2弾性部材80が設けられている。第2弾性部材80は、回転子20の回転子平板部21及び第1弾性部材50よりも直径が小さい略円板形状の部材であり、主板60のハブ部61に対して回転軸線O方向に重なるように配置されている。第2弾性部材80には、回転子20のネジ孔26に対向する位置に、植込ボルト40の段付き部43が挿通した状態の第3弾性部材55が挿通可能な複数(ここでは、3個)の貫通孔81が形成されている。このため、第2弾性部材80は、第3弾性部材55が貫通孔81を挿通した状態で、ハブ部61に対して回転軸線O方向に重なっている。
【0042】
植込ボルト40、第1〜第3弾性部材50、55、80、及び、主板60が設けられたファンモータ7には、主板60よりも剛性の高い剛性部材90が設けられている。例えば、剛性部材90は、金属製の部材からなる。剛性部材90は、第2弾性部材80よりも直径が大きい略円板形状の部材であり、第2弾性部材80に対して回転軸線O方向に重なるように配置されている。剛性部材90には、回転子20のネジ孔26に対向する位置に、植込ボルト40の段付き部43に挿通可能な複数(ここでは、3個)の貫通孔91が形成されている。このため、剛性部材90は、植込ボルト40の段付き部43が貫通孔91を挿通した状態で、第2弾性部材80に対して回転軸線O方向に重なっている。すなわち、主板60を回転子20との間に挟むように剛性部材90が配置されるとともに、主板60と剛性部材90との間に第2弾性部材80が配置されている。また、剛性部材90には、回転子平板部21、第1弾性部材50及び主板60に形成された通気孔25、52、63に対向する位置に通気孔92が形成されている。このため、遠心ファン4においては、ファンモータ7だけでなく、主板60や弾性部材50、55、80、剛性部材90を含む回転子20と主板60との連結構造にわたって、回転子20とモータベース30とによって形成された固定子10が配置される空間に対して、モータ冷却用の空気を流すことを可能にするための構成(すなわち、通気孔25、52、63、92)が形成されている(
図3の空気の流れを示す矢印を参照)。
【0043】
植込ボルト40、第1〜第3弾性部材50、55、80、主板60、及び、剛性部材90が回転子20に回転軸線O方向に重なるように配置された状態において、植込ボルト40の剛性部材90側の先端から座付ナット45を螺合させることによって、回転子20、主板60及び剛性部材90間が固定されている。ここでは、座付ナット45の座部46が植込ボルト40の段付き部43の主板側ネジ部42側の端面に当接した状態になるまで、座付ナット45が植込ボルト40の主板側ネジ部42に螺挿されている。また、この状態において、座付ナット45の反座部46側の端面と主板側ネジ部42の反段付き部43側の端面とが面一になるように設定されている。これにより、座付ナット45の締め付け代が管理されている。
【0044】
(3)遠心ファンの特徴
遠心ファン4における羽根車8の主板60とファンモータとの連結構造には、以下のような特徴がある。
【0045】
<A>
ここでは、上記のように、主板60を回転子20との間に挟むように剛性部材90が配置されるとともに、主板60と回転子20との間に第1弾性部材50が配置され、かつ、主板60と剛性部材90との間に第2弾性部材80が配置された状態で、回転子20、主板60及び剛性部材90間が固定されている。
【0046】
このため、ここでは、主板60を回転子20との間に挟むように配置された剛性部材90によって、輸送時に回転子20に対して主板60が傾くような変形の程度を抑制することができる。特に、ここでは、回転子20、主板60及び剛性部材90間が、ボルト40を介して固定されているため、輸送時に回転子20に対して主板60が傾くような変形が発生すると、主板60にボルト40が挿通されている部分及びその周辺部分において、主板60にひび割れが発生することが懸念される。しかし、ここでは、剛性部材90によって変形の程度を抑えることができるため、主板60のひび割れの発生を抑えることができる。特に、ここでは、上記のように、剛性部材90の直径を第2弾性部材80の直径よりも大きくしているため、主板60が傾くような変形の程度を十分に抑制することができる。
【0047】
しかも、ここでは、主板60と剛性部材90との間に配置された第2弾性部材80によって、運転時の騒音の低減を図ることができる。また、ここでは、上記のように、第2弾性部材80の直径を第1弾性部材50の直径よりも小さくしており、第2弾性部材80が主板60のハブ部61に接触する面積を小さく抑えるようにしている。また、第2弾性部材80の直径を剛性部材90の直径よりも小さくしており、第2弾性部材80が剛性部材90に接触する面積を小さく抑えるようにしている。これにより、回転子20側から剛性部材90側に振動が伝搬する面積が小さくなり、運転時の異音の発生を抑える効果がさらに向上できる。ここで仮に、第2弾性部材80の直径を第1弾性部材50の直径以上にしたり、また、第2弾性部材80の直径を剛性部材90の直径以上にすると、第2弾性部材80がハブ部61や剛性部材90に接触する面積が大きくなり、振動が伝搬する面積も増えるため、これにより、運転時の異音が大きくなるおそれがある。
【0048】
このように、ここでは、主板60と回転子20との間に配置された第1弾性部材50に加えて、主板60を回転子20との間に挟むように剛性部材90を配置し、かつ、主板60と剛性部材90との間に第2弾性部材80を配置することによって、輸送時の羽根車8の主板60の破損を防止し、かつ、運転時の騒音を十分に低減することができる。
【0049】
<B>
主板60にボルト40が挿通されている部分において主板60とボルト40とが直接接触していると、ボルト40を介して主板60と回転子20との間で振動が伝わってしまい、第1及び第2弾性部材50、80による運転時の騒音を低減させる効果に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0050】
そこで、ここでは、上記のように、ボルト40と主板60との間に第3弾性部材55を配置するようにして、主板60とボルト40とが直接接触するのを避けるようにしている。
【0051】
これにより、ここでは、第1及び第2弾性部材50、80による運転時の騒音の低減効果を十分に得ることができる。
【0052】
<C>
ここでは、上記のように、第3弾性部材55を第1弾性部材50と一体の部材にすることによって、弾性部材の個数を減らすことができるため、アウターロータ型モータ7に主板60を連結する際の組立性を向上させることができる。尚、弾性部材の個数を減らすという観点では、第3弾性部材55第2弾性部材80と一体の部材にしてもよい。但し、アウターロータ型モータ7に各部材50、55、60、80を順次重ねる際の組立性という観点においては、第3弾性部材55を第1弾性部材50と一体にするほうが好ましい。
【0053】
<D>
ここでは、上記のように、3本以上のボルト40を回転軸線O周りに環状に配置しているため、アウターロータ型モータ7と主板60との芯だしを確実に行うことができる。
【0054】
<E>
ここでは、上記のように、ボルト40が、回転子20から剛性部材90側に向かって延びており、回転子20、主板60及び剛性部材90間は、ボルト40の剛性部材90側の先端からナット45が螺合された状態で固定されている。
【0055】
このため、ここでは、ボルト40による回転子20、主板60及び剛性部材90間の固定にあたり、ボルト40の剛性部材90側の先端からナット45を螺合させるようにしているため、ボルト40を弾性部材50、55、80、主板60及び剛性部材90に挿通させながら、弾性部材50、55、80、主板60及び剛性部材90を回転子20に対して順に重ね合わせることができる。ここで仮に、ボルト40が回転子20から剛性部材90側に向かって延びるものではなく、剛性部材90側から回転子20側に向かって挿通されるものであるすると、複数の部材90、80、60、55、50の孔が合うように、複数の部材90、80、60、55、50を予め重ね合わせておく必要があるため、組立性が悪くなる。また、回転子20、主板60及び剛性部材90間を締結する際には、ボルト40の先端位置を基準にしてナット45の締め付け代を管理することもできる。
【0056】
これにより、ここでは、アウターロータ型モータ7に主板60を連結する際の組立性を向上させることができ、また、運転時の騒音の低減効果に影響する弾性部材50、55、80の圧縮代を含めたナット45の締め付け代を管理しつつ、ボルト40を介して回転子20、主板60及び剛性部材90間を適切に固定することができる。
【0057】
また、ここでは、上記のように、ボルト40の段付き部43の回転軸線O方向の寸法が、主板60、剛性部材90及び弾性部材50、55、80の合計の回転軸線O方向の厚み(弾性部材50、55、80については、圧縮代を考慮)と同じになるように設定されるとともに、ナット45の座部46がボルト40の段付き部43の主板側ネジ部42側の端面に当接した状態になるまで、ナット45がボルト40の主板側ネジ部42に螺挿されるようになっている。すなわち、ボルト40の段付き部43によっても、ナット45の締め付け代を管理することができるようになっている。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、アウターロータ型モータによって羽根車を回転駆動させる遠心ファンに対して、広く適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
4 遠心ファン
7 ファンモータ(アウターロータ型モータ)
8 羽根車
10 固定子
20 回転子
40 植込ボルト
45 座付ナット
50 第1弾性部材
55 第3弾性部材
60 主板
70 ブレード
80 第2弾性部材
90 剛性部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0060】
【特許文献1】特開2005−264882号公報