(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記通信異常検出部は、前記通信異常を検出するために前記第1制御部に設けられた第1通信異常検出部と、前記通信異常を検出するために第2制御部に設けられた第2通信異常検出部とを備え、
前記状態検出部は、前記第1制御部に設けられ、前記第1通信異常検出部が前記通信異常を検出した場合、前記第2制御部が正常状態にあるか否かを判定し、
前記第2制御部は、前記第2通信異常検出部が前記通信異常を検出した場合、前記電動機を前記零速度制御する請求項1〜5のいずれかに記載の旋回制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、第1、第2のCPUの通信異常が検出された場合、第2のCPUが異常であると判定されているが、第2のCPUは正常であるにも拘わらず通信異常が発生することもある。この場合、第2のCPUが旋回電動モータに対して旋回速度を零に維持する零速度制御を行うと、旋回体には、零速度制御による制動トルクと旋回ブレーキによる制動トルクとが加算された過大な制動トルクが付与されてしまう。
【0006】
本発明の目的は、通信異常が発生しても、旋回体に過大な制動トルクが付与されることを防止すると同時に、旋回体を確実に停止できる旋回制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による旋回制御装置は、旋回体と、前記旋回体を旋回させるための操作が入力される操作部とを備える建設機械の旋回制御装置であって、
前記旋回体を旋回駆動する電動機と、
前記旋回体を制動させるメカニカルブレーキと、
前記電動機の旋回速度を検出する速度検出部と、
前記操作部の操作量を検出する操作量検出部と、
前記旋回速度及び前記操作量に応じて前記メカニカルブレーキを制御すると共に、前記操作量に応じた目標速度に前記旋回速度が一致するように前記電動機を旋回させるトルク指令値を出力する第1制御部と、
前記トルク指令値を前記第1制御部から受信し、前記受信したトルク指令値に応じたトルクで前記電動機を作動させる第2制御部と、
前記第1制御部及び前記第2制御部間を通信可能に接続する通信線と、
前記通信線を介して行われる通信の異常の有無を検出する通信異常検出部と、
前記第2制御部が正常状態であるか否かを検出する状態検出部とを備え、
前記第2制御部は、前記通信異常検出部により通信異常が検出された場合、前記旋回速度が零になるように前記電動機を零速度制御し、
前記第1制御部は、前記通信異常検出部により通信異常が検出された場合、前記状態検出部により前記第2制御部が正常状態にあることが検出されていれば、前記メカニカルブレーキを非作動にし、前記状態検出部により前記第2制御部が異常状態にあることが検出されていれば、前記メカニカルブレーキを作動させる。
【0008】
本態様によれば、通信異常が検出された場合、第2制御部が正常状態であれば、第2制御部は旋回速度を零に保持する零速度制御を実施できるので、第1制御部は、メカニカルブレーキを非作動にする。そのため、過大な制動トルクが付与されることを防止できる。
【0009】
一方、通信異常が検出された場合、第2制御部が異常状態であれば、第2制御部は旋回体に制動トルクを付与することができない。そこで、本態様は、通信異常が検出された場合、第2制御部が異常状態であれば、第1制御部は、メカニカルブレーキを作動させる。これにより、旋回体は、メカニカルブレーキの制動トルクによって停止される。
【0010】
したがって、本態様は、第1、第2制御部間の通信異常が発生しても、旋回体に過大な制動トルクが付与されることを防止すると同時に、旋回体を確実に停止できる。
【0011】
上記態様において、前記電動機で発生する回生電力を蓄電する蓄電部と、
前記蓄電部に供給される充電電流を検出する電流検出部とを更に備え、
前記状態検出部は、前記電流検出部により検出された充電電流値が、所定の電流閾値より大きければ、前記第2制御部は正常状態にあると判定し、前記充電電流値が、前記電流閾値より大きくなければ、前記第2制御部は異常状態にあると判定してもよい。
【0012】
第2制御部が異常状態にある場合、第2制御部は電動機を適切に制動することができないので、電動機で発生する回生電力が低下する。そのため、第2制御部が異常状態にある場合に蓄電部に供給される充電電流は、第2制御部が正常状態にある場合に比べて低下する。
【0013】
本態様によれば、充電電流値が電流閾値よりも小さければ、第2制御部は異常状態にあると判定されているので、第2制御部が異常状態にあるか否かを正確に検出できる。
【0014】
上記態様において、前記第2制御部は、前記正常状態にある場合、前記正常状態であることを示す状態信号を出力し、
前記状態検出部は、前記状態信号を監視することで、前記第2制御部の異常の有無を判定してもよい。
【0015】
上記態様において、前記第1、第2制御部は、前記通信線を介して周期的に通信を行い、
前記通信異常検出部は、前記通信線において前記周期又は前記周期よりも長い一定時間以上、通信が行われなかった場合、前記通信異常と判定してもよい。
【0016】
本態様によれば、第1、第2制御部は、定期的に通信を行うので、通信線において一定時間以上、通信が行われたか否かを検出することで、通信異常を正確に検出できる。
【0017】
上記態様において、前記速度検出部及び前記第2制御部間を繋ぐ信号線を更に備え、
前記第2制御部は、前記旋回速度を前記信号線を介して取得して、前記零速度制御を行ってもよい。
【0018】
本態様によれば、速度検出部及び第2制御部間は信号線で直接接続されているので、通信異常が発生したとしても、第2制御部は、速度検出部から信号線を介して旋回速度を取得でき、零速度制御を実現できる。
【0019】
上記態様において、前記通信異常検出部は、前記通信異常を検出するために前記第1制御部に設けられた第1通信異常検出部と、前記通信異常を検出するために第2制御部に設けられた第2通信異常検出部とを備え、
前記状態検出部は、前記第1制御部に設けられ、前記第1通信異常検出部が前記通信異常を検出した場合、前記第2制御部が正常状態にあるか否かを判定し、
前記第2制御部は、前記第2通信異常検出部が前記通信異常を検出した場合、前記電動機を前記零速度制御してもよい。
【0020】
本態様によれば、第1、第2制御部は、第1、第2通信異常検出部を備えているので、それぞれ、個別に通信異常を検出できる。そのため、第1制御部に設けられた状態判定部は、通信線を用いた通信を行わなくても、第1通信異常検出部から、直接、通信異常の発生に関する情報を取得できる。同様に、第2制御部は、第2通信異常検出部から、直接、通信異常の発生に関する情報を取得できる。ここで、第2制御部は、通信異常が発生すると無条件に零速度制御を実行するが、このとき、第2制御部は正常状態にあるので、上述したようにメカニカルブレーキは作動されない。これにより、零速度制御による制動トルクのみにより旋回体を制動させることができる。一方、第2制御部が異常状態にある場合、第2制御部は電動機を零速度制御できないが、このとき、上述したようにメカニカルブレーキが作動されるので、旋回体をメカニカルブレーキにより制動させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、第1、第2制御部間の通信異常が発生しても、旋回体に過大な制動トルクが付与されることを防止すると同時に、旋回体を確実に停止できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施の形態1)
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態における旋回制御装置が適用された建設機械1の外観図である。建設機械1は、ハイブリッドショベルで構成されているが、これは一例であり、油圧ショベル等のショベルカーで構成されてもよい。また、建設機械1としては、クレーン等の旋回体を備える建設機械であればどのような建設機械が採用されてもよい。
【0025】
建設機械1は、クローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に設けられた上部旋回体3(旋回体の一例)と、上部旋回体3に取り付けられた作業装置4とを備えている。
【0026】
作業装置4は、上部旋回体3に対して起伏可能に取り付けられたブーム15と、ブーム15の先端部に対して揺動可能に取り付けられたアーム16と、アーム16の先端部に対して揺動可能に取り付けられたバケット17とを備えている。
【0027】
また、作業装置4は、上部旋回体3に対してブーム15を起伏させるブームシリンダ18と、ブーム15に対してアーム16を揺動させるアームシリンダ19と、アーム16に対してバケット17を揺動させるバケットシリンダ20とを備えている。上部旋回体3はオペレータが搭乗するキャビンを備えている。
【0028】
図2は、本発明の実施の形態1における旋回制御装置が適用された建設機械1のシステム構成の一例を示すブロック図である。建設機械1は、エンジン101と、エンジン101の駆動軸Z1に連結された発電電動機102及び油圧ポンプ103と、バッテリ109(蓄電部の一例)の充放電及び発電電動機102の駆動を制御する発電インバータ104と、バッテリ109の充放電及び旋回電動機106の作動を制御する第2制御部220と、旋回電動機106(電動機の一例)の旋回速度を検出する速度検出部105と、上部旋回体3を旋回させる旋回電動機106と、旋回電動機106を制動させるメカニカルブレーキ107と、メカニカルブレーキ107のブレーキ圧を検出するブレーキ圧センサ108と、発電電動機102及び旋回電動機106により発電された電力が充電可能なバッテリ109と、オペレータの操作が入力される操作部110と、操作部110の操作量を検出する操作量検出部111と、建設機械1を制御する第1制御部210とを備えている。
【0029】
なお、
図2において、第1制御部210、第2制御部220、速度検出部105、旋回電動機106、メカニカルブレーキ107、ブレーキ圧センサ108、操作部110、操作量検出部111は旋回制御装置を構成する。
【0030】
エンジン101は、例えば、ディーゼルエンジンで構成される。発電電動機102は、エンジン101の動力により発電機として機能し、エンジン101の動力を電力に変換する。また、発電電動機102は、バッテリ109からの電力により電動機として機能し、エンジン101をアシストする。
【0031】
油圧ポンプ103は、エンジン101の動力により駆動して、作動油を吐出する。油圧ポンプ103から吐出された作動油は、図略のコントロールバルブを介して
図1に示すブームシリンダ18〜バケットシリンダ20に供給される。
【0032】
発電インバータ104は、例えば、三相インバータで構成され、発電電動機102により変換された電力をバッテリ109に蓄電させる。また、発電インバータ104は、発電電動機102の発電機としての機能と、発電電動機102の電動機としての機能との切り換えを制御する。また、発電インバータ104は、第1制御部210の制御の下、発電電動機102のトルクを制御する。
【0033】
速度検出部105は、例えば、旋回電動機106のロータの回転角度を検出するロータリエンコーダと、検出された回転角度を微分することで、旋回電動機106の回転速度を算出するプロセッサとで構成されている。そして、速度検出部105は、算出した回転速度を実旋回速度として、信号線C2を介して第2制御部220に出力する。
【0034】
旋回電動機106は、例えば、3相モータで構成され、第2制御部220の制御の下、バッテリ109の電力により作動され、
図1に示す上部旋回体3を旋回させる。
【0035】
メカニカルブレーキ107は、例えば、油圧ポンプ103から吐出される駆動油によって作動する油圧ブレーキで構成され、旋回制御部214から出力されるブレーキ指令値にしたがって、旋回電動機106を制動させる。ここで、メカニカルブレーキ107は、例えば、旋回電動機106の回転軸に設けられたディスクを、ブレーキパッドで挟むことで上部旋回体3を制動させる。また、メカニカルブレーキ107は、制動を示すブレーキ指令値を受け付けた場合、旋回電動機106を制動させ、非制動を示すブレーキ指令値を受け付けた場合、旋回電動機106を開放させる。ブレーキ圧センサ108は、例えば、油圧センサで構成され、メカニカルブレーキ107の油圧をブレーキ圧として検出する。
【0036】
バッテリ109は、発電インバータ104の制御の下、発電電動機102が発電した電力を蓄電する。また、バッテリ109は、第2制御部220の制御の下、旋回電動機106の回生電力を蓄電する。バッテリ109には、充放電経路109b上に接続された電流センサ109a(電流検出部の一例)が設けられている。
【0037】
操作部110は、例えば、操作レバー112を備え、上部旋回体3を旋回させるためのオペレータによる操作を受け付ける。ここで、操作部110は、操作レバー112の傾倒角度に応じてパイロット圧を変化させる。操作レバー112は、例えば、左右方向に傾倒可能に構成され、上部旋回体3を右方向に旋回させる場合、例えば、右方向に傾倒され、上部旋回体3を左方向に旋回させる場合、左方向に傾倒される。また、操作レバー112は傾倒量が0の場合を含む一定の角度範囲が中立範囲に設定されている。
【0038】
操作量検出部111は、例えば、油圧センサで構成され、操作レバー112の傾倒量に応じて変化するパイロット圧を用いて、操作部110の操作量を検出する。具体的には、操作量検出部111は、操作レバーの右方向への傾倒量が中立範囲を超えて増大するにつれて、例えば正の方向に操作量を増大させ、操作レバーの左方向への傾倒量が中立範囲を超えて増大するにつれて、例えば負の方向に操作量を増大させる。ここで、操作量検出部111は、ポテンショメータで構成されてもよい。なお、操作量検出部111は、中立範囲以外の位置から中立範囲に操作レバー112が戻された場合、旋回停止の操作が入力されたことを検出する。
【0039】
第1制御部210は、例えば、CPU、書き換え可能なROM、RAM等を備えるマイクロコントローラで構成されている。そして、第1制御部210は、通信部211、通信異常検出部212、状態検出部213、及び旋回制御部214を備える。通信異常検出部212、状態検出部213、及び旋回制御部214は、CPUが制御プログラムを実行することで実現されてもよいし、専用のハードウェア回路で構成されてもよい。
【0040】
通信部211は、CAN(Controller Area Network)の通信規格に準拠した通信モジュールで構成され、第1、第2制御部210、220を、通信線C1を介して相互に通信可能に接続する。本実施の形態では、通信部211は、特に、旋回制御部214が算出したトルク指令値を第2制御部220に送信すると共に、第2制御部220から、速度検出部105で検出された実旋回速度を受信する。
【0041】
通信異常検出部212は、通信線C1を介して行われる通信の異常の有無を検出する。ここで、第1、第2制御部210、220は定期的に通信データを送受することで周期的に通信を行っている。したがって、通信異常検出部212は、通信部211からデータが送信されてから通信周期又は通信周期よりも長い一定時間以上、第2制御部220からの通信データを受信できなかった場合、通信異常が発生したと判定する。但し、これは一例であり、通信異常検出部212は、通信部211に問い合わせ信号を送信させ、第2制御部220からその問い合わせ信号に対する応答信号を一定時間内に受信できなかった場合に、通信異常が発生したと判定してもよい。通信異常が発生する原因としては、例えば、通信線C1の断線や、第2制御部220が異常状態になることが挙げられる。
【0042】
状態検出部213は、第2制御部220が正常状態にあるか否かを検出する。ここで、状態検出部213は、電流センサ109aが検出した充電電流値が所定の電流閾値より大きければ、第2制御部220は正常状態にあると判定し、充電電流値が、電流閾値より大きくなければ、第2制御部220は異常状態にあると判定する。電流閾値としては、例えば、第2制御部220が正常状態の場合に流れることが想定される充電電流値であり、実験的に得られた電流値が採用できる。第2制御部220が異常状態になる原因としては、第2制御部220を構成するCPUや通信モジュールの異常や、インバータ回路224を構成する回路素子(例えば、コイル、抵抗、キャパシタ、トランジスタなど)の破損などが挙げられる。
【0043】
旋回制御部214は、操作量検出部111が検出した操作量に応じた目標速度と、実旋回速度とが一致するように旋回電動機106を旋回させるトルク指令値を算出する。具体的には、旋回制御部214は、目標速度と実旋回速度との偏差に所定の係数を乗じた値を零に近づける比例制御を行う。算出されたトルク指令値は、通信部211により通信線C1を介して第2制御部220に送信される。また、目標速度は、操作量が正の方向に増大するにつれて、正の方向に、例えばリニアに増大され、操作量が負の方向に増大するにつれて、負の方向に、例えばリニアに増大される。
【0044】
また、旋回制御部214は、実旋回速度が、実質的に0であることを示す所定の基準速度以下になると、メカニカルブレーキ107を作動させるブレーキ指令値を、信号線C3を介して、メカニカルブレーキに107に出力する。また、旋回制御部214は、実旋回速度が基準速度を超えると、メカニカルブレーキを非作動させるブレーキ指令値を、信号線C3を介して、メカニカルブレーキ107に出力する。更に、旋回制御部214は、ブレーキ圧センサ108が検出したブレーキ圧を信号線C4を介して、モニタすることで、メカニカルブレーキ107が実際に作動しているか否かを判定する。
【0045】
通信線C1は、例えば、CANの通信規格に準拠する通信ケーブルで構成されている。なお、本実施の形態では、第1、第2制御部210、220はCANで通信するとして説明したが、これは一例であり、CAN以外の車載ネットワークが採用されてもよい。この場合、車載ネットワークの規格に応じた通信モジュールで通信部211、221は構成されればよい。
【0046】
このように、速度検出部105で検出された実旋回速度は、第2制御部220及び通信線C1を介して第1制御部210に送信されるので、通信異常が発生すると、第1制御部210は実旋回速度を受信することができなくなる。その結果、第1制御部210は旋回電動機106を制御できなくなるので、通信異常が発生した場合、安全面から旋回電動機106を停止させる必要がある。
【0047】
信号線C2は、例えば、速度検出部105及び第2制御部220間に接続され、速度検出部105が検出した実旋回速度を第2制御部220に出力する。これにより、通信異常が発生しても、第2制御部220は、信号線C2を介して実旋回速度を取得でき、零速度制御を実行できる。
【0048】
信号線C3は、第1制御部210及びメカニカルブレーキ107に接続され、ブレーキ指令値をメカニカルブレーキ107に出力する。
【0049】
信号線C4は、第1制御部210及びブレーキ圧センサ108間に接続され、ブレーキ圧センサが検出したブレーキ圧を第1制御部210に出力する。
【0050】
第2制御部220は、例えば、1チップの集積回路で構成され、通信部221、通信異常検出部222、インバータ制御部223、及びインバータ回路224を備える。通信異常検出部222及びインバータ制御部223は、例えば、CPUが制御プログラムを実行することで実現されてもよいし、専用のハードウェア回路で構成されてもよい。
【0051】
通信部221は、通信部211と同じ通信モジュールで構成されている。通信異常検出部222は、通信線C1を介して行われる通信の異常の有無を検出する。なお、通信部221において通信異常を検出する処理の詳細は、通信部211と同じであるので、詳細な説明は省く。本実施の形態では、通信部221は、特に、速度検出部105が検出した実旋回速度を通信線C1を介して第2制御部220に送信する。
【0052】
インバータ制御部223は、通信部221が受信したトルク指令値が示すトルクで旋回電動機106を作動させるPWM信号を生成し、インバータ回路224に出力する。ここで、インバータ制御部223は、旋回電動機106の回生時には、旋回電動機106で生成された回生電力がバッテリ109に供給されるようにインバータ回路224を制御し、旋回電動機106の力行時には、バッテリ109からの電力が旋回電動機106に供給されるようにインバータ回路224を制御する。
【0053】
インバータ回路224は、例えば、3相インバータで構成される。ここで、インバータ回路224は、旋回電動機106の回生時には、インバータ制御部223から出力されたPWM信号にしたがって、旋回電動機106で生成された回生電力を直流電力に変換し、バッテリ109に供給する。また、インバータ回路224は、旋回電動機106の力行時には、インバータ制御部223ら出力されたPWM信号にしたがって、バッテリ109から供給される直流電力を3相交流電力に変換し、旋回電動機106に供給する。
【0054】
以上が本実施の形態における旋回制御装置の基本構成である。そして、本実施の形態の旋回制御装置は、以下の(1)又は(2)の制御を行うことを特徴とする。
【0055】
(1)通信異常検出部212により通信異常が検出された場合、インバータ制御部223は、操作量に拘わらず、実旋回速度が零を保持するように旋回電動機106を制御する零速度制御を実行する。このとき、状態検出部213により第2制御部220が正常状態にあることが検出されていれば、旋回制御部214は、メカニカルブレーキ107を非作動にするブレーキ指令値を出力する。
【0056】
(2)通信異常検出部212により通信異常が検出された場合、状態検出部213により第2制御部220が異常状態にあることが検出されていれば、旋回制御部214は、メカニカルブレーキ107を作動させるブレーキ指令値を出力する。
【0057】
通信異常が検出された場合、第2制御部220が正常状態であれば、第2制御部220は零速度制御を実行できるので、メカニカルブレーキ107を作動させると、零速度制御の制動トルクとメカニカルブレーキ107の制動トルクとが上部旋回体3に付与されてしまう。そこで、本実施の形態は、(1)の制御を実行することで、メカニカルブレーキ107を非作動にし、上部旋回体3に過大な制動トルクが付与されることを防止している。
【0058】
一方、通信異常が検出された場合、第2制御部220が異常状態であれば、第2制御部220は、零速度制御を実行できないので、上部旋回体3に制動トルクを付与することができない。そこで、本実施の形態は、(2)の制御を実行し、メカニカルブレーキ107を作動させる。これにより、上部旋回体3は、メカニカルブレーキ107の制動トルクによって停止される。
【0059】
図3は、本発明の実施の形態1における第1制御部210の処理を示すフローチャートである。なお、
図3のフローチャートは、建設機械1のエンジン101がONされている間、繰り返し実行される。
【0060】
まず、第1制御部210の通信異常検出部212が、通信異常の発生を検出すると(S301でYES)、状態検出部213は、電流センサ109aにバッテリ109を流れる電流値を検出させ、検出された電流値を取得する(S302)。次に、状態検出部213は、取得した電流値から充電電流値を決定し、決定した充電電流値が電流閾値よりも大きいか否かを判定する。
【0061】
ここで、状態検出部213は、例えば、電流センサ109aに一定時間内に測定された複数の充電電流値の平均値を算出し、算出した平均値を電流閾値と比較すればよい。また、状態検出部213は、電流の流れる方向から充電電流であるか否かを判定すればよい。例えば、電流センサ109aが充電電流をプラスの電流値で検出し、放電電流をマイナスの電流値で検出するのであれば、状態検出部213は、プラスの電流値を充電電流値と判定すればよい。
【0062】
充電電流値が電流閾値よりも大きければ(S303でYES)、状態検出部213は、第2制御部220は正常状態にあると判定する。次に、旋回制御部214は、メカニカルブレーキ107に非作動のブレーキ指令値を出力し(S305)、処理をS301に戻す。
【0063】
一方、充電電流値が電流閾値よりも大きくなければ(S303でNO)、状態検出部213は、第2制御部220は異常と判定する。次に、旋回制御部214は、メカニカルブレーキに作動のブレーキ指令値を出力する(S304)。
【0064】
通信異常が発生していないと判定されると(S301でNO)、操作量検出部111は操作部110の操作量を検出する。次に、旋回制御部214は、実旋回速度を第2制御部220から取得することで、実旋回速度を検出する(S307)。
【0065】
次に、旋回制御部214は、実旋回速度と操作量に応じた目標速度との偏差が零になるようにトルク指令値を算出する(S308)。例えば、操作量が中立範囲を示すのであれば、旋回制御部214は、目標速度を零に設定し、零速度制御を実現するためのトルク指令値を算出する。
【0066】
次に、旋回制御部214は、実旋回速度と目標速度とに応じたブレーキ指令値を算出する(S309)。例えば、操作量が中立範囲を示すのであれば、旋回制御部214は、目標速度を零に設定し、実旋回速度が実質的に零を示す基準速度以下になるまで、非作動のブレーキ指令値を算出し、実旋回速度が基準速度以下になると作動のブレーキ指令値を算出する。
【0067】
次に、旋回制御部214は、通信部211を用いて、算出したトルク指令値を第2制御部220に出力する(S310)。これにより、第2制御部220により、トルク指令値に応じたトルクで旋回電動機106が作動されることになる。
【0068】
次に、旋回制御部214は、算出したブレーキ指令値を、信号線C3を介してメカニカルブレーキ107に出力し(S311)、処理をS301に戻す。これにより、作動のブレーキ指令値が送信されたのであれば、メカニカルブレーキ107が作動し、非作動のブレーキ指令値が送信されたのであれば、メカニカルブレーキ107は非作動になる。
【0069】
図4は、本発明の実施の形態1における第2制御部220の処理を示すフローチャートである。なお、
図4のフローチャートは建設機械1のエンジン101がONされている間、繰り返し実行される。
【0070】
まず、第2制御部220の通信異常検出部222が、通信異常の発生を検出すると(S401でYES)、インバータ制御部223は、実旋回速度を零に保持する零速度制御を実行し(S402)、処理をS401に戻す。
【0071】
一方、通信異常検出部222により通信異常の発生が検出されなければ(S401でNO)、インバータ制御部223は、通信部221を用いて、第1制御部210から送信されたトルク指令値を受信する(S403)。次に、インバータ制御部223は、受信したトルク指令値にしたがって旋回電動機106を作動させ(S404)、処理をS401に戻す。
【0072】
S402において、第2制御部220は、自身の通信異常検出部222により通信異常が検出されると、無条件に零速度制御を実行しているが、零速度制御が実行されるということは、第2制御部220が正常状態にあることを示している。
【0073】
そのため、第1制御部210は、自身の通信異常検出部212により通信異常が検出された場合(S301でYES)、第2制御部220は正常状態と判定し(S303でYES)、非作動のブレーキ指令値を出力する(S305)。そのため、メカニカルブレーキ107は非作動となり、第2制御部220による零速度制御のみが実行され、上部旋回体3には零速度制御による制動トルクのみが付与される。その結果、過大の制動トルクが上部旋回体3に付与されることを防止できる。
【0074】
一方、第1制御部210は、自身の通信異常検出部212が通信異常の発生を検出すると(S301でYES)、第2制御部220が異常状態であれば(S303でNO)、作動のブレーキ指令値を出力している(S304)。第2制御部220が異常状態であれば、第2制御部220は、
図4のフローチャートを実行できないので、零速度制御も実行できない。そのため、上部旋回体3には、メカニカルブレーキ107の制動トルクのみが付与され、過大な制動トルクが付与されることが防止されている。
【0075】
また、通信異常が発生した場合は、零速度制御による制動トルクとメカニカルブレーキ107による制動トルクとのいずれかの制動トルクが、必ず上部旋回体3に付与されるので、通信異常の発生時に上部旋回体3を確実に制動させることができる。
【0076】
(実施の形態2)
実施の形態2における旋回制御装置は、旋回加速度を用いて第2制御部220が正常状態であるか否かを検出することを特徴とする。なお、本実施の形態において、実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省く。
【0077】
図5は、本発明の実施の形態2における旋回制御装置が適用された建設機械1のシステム構成の一例を示すブロック図である。
図5において、
図2との相違点は、第1制御部210に加速度算出部215及び加速度閾値記憶部216が設けられている点、速度検出部105及び第1制御部210間に信号線C5が更に設けられている点にある。信号線C5があるので、第1制御部210は、通信異常が発生しても、信号線C5を介して実旋回速度を取得し、旋回加速度を算出できる。
【0078】
加速度算出部215は、速度検出部105で検出された実旋回速度を信号線C5を介して取得し、取得した実旋回速度を微分することで、旋回加速度を算出する。
【0079】
状態検出部213は、通信異常が発生した場合、加速度算出部215で算出された旋回加速度(以下、「対象旋回加速度」と記述する。)が加速度閾値記憶部216に記憶された加速度閾値よりも小さければ、第2制御部220は正常状態にあると判定し、算出した対象旋回加速度が加速度閾値よりも小さくなければ、第2制御部220は異常状態にあると判定する。
【0080】
加速度閾値としては、例えば、通信異常が発生していないときに、加速度算出部215が算出した旋回加速度の平均値が採用できる。或いは、加速度閾値としては、第2制御部220が正常状態にある場合において想定される予め定められた旋回加速度が採用できる。また、対象旋回加速度としては、通信異常の発生時から一定期間(数秒)内において算出された複数の旋回加速度の平均値が採用できる。
【0081】
図6は、本発明の実施の形態2における第1制御部210の処理を示すフローチャートである。なお、
図6のフローチャートにおいて、
図3と同一の処理には同一の符号を付し、説明を省く。
【0082】
S301に続くS601では、状態検出部213は、加速度算出部215において通信異常の発生後、一定期間に算出された複数の旋回加速度の平均値を、対象旋回加速度として算出する(S601)。
【0083】
S602では、状態検出部213は、対象旋回加速度が加速度閾値より小さいか否かを判定する。対象旋回加速度が加速度閾値よりも小さければ(S602でYES)、状態検出部213は、第2制御部220は正常状態にあると判定し、処理をS305に進める。一方、対象旋回加速度が加速度閾値よりも小さくなければ(S602でNO)、状態検出部213は、第2制御部220は異常状態にあると判定し、処理をS304に進める。以降、
図3と同じ処理が実行される。なお、実施の形態2において、第2制御部220の処理は
図4と同じである。
【0084】
第2制御部220が異常状態にある場合、第2制御部220は、旋回電動機106に適切な制動トルクを付与することが困難になるので、旋回加速度は、第2制御部220が正常状態にある場合に比べて、増大すると考えられる。
【0085】
本実施の形態では、対象旋回加速度が加速度閾値より大きい場合、第2制御部220が異常状態にあると判定されているので、第2制御部220が異常状態にあるか否かを正確に検出できる。
【0086】
(実施の形態3)
実施の形態1,2の旋回制御装置は、状態検出部213は、電流センサ109aが検出した充電電流を用いて、第2制御部220の異常の有無を判定した。実施の形態3の旋回制御装置では、状態検出部213は、第2制御部220から出力される状態信号を監視することで、第2制御部220の異常の有無を判定する。
【0087】
図7は、本発明の実施の形態3における旋回制御装置が適用された建設機械1のシステム構成の一例を示すブロック図である。
【0088】
図7において、
図2、
図5との相違点は、第2制御部220のインバータ制御部223と第1制御部210の状態検出部213との間が信号線C6で接続されている点にある。インバータ制御部223は、第2制御部220が正常状態にある場合、「正常状態」であることを示す所定の電圧レベルを持つ状態信号を例えば定期的に状態検出部213に出力する。
【0089】
図8は、状態信号の波形図を示し、縦軸は電圧、横軸は時間を示す。インバータ制御部223は、第2制御部220が正常状態であれば、「正常状態」の電圧レベルを持つ状態信号を定期的に出力できる。一方、インバータ制御部223は、第2制御部220に異常が発生すると、状態信号を出力できなくなる。この場合、状態検出部213には、電圧レベルが0の「異常状態」を示す状態信号が入力されることになる。
【0090】
したがって、状態検出部213は、「正常状態」の電圧レベルの状態信号を受信してから、状態信号の送信周期に一定のマージンを加えた所定の判定期間が経過しても「正常状態」の電圧レベルの状態信号を受信できなければ、第2制御部220は「異常状態」と判定する。一方、状態検出部213は、「正常状態」の電圧レベルの状態信号を受信してから、判定期間が経過するまでに「正常状態」の電圧レベルの状態信号を受信できれば、第2制御部220は「正常状態」と判定する。
【0091】
このように、実施の形態3の旋回制御装置によれば、第2制御部220の状態を直接監視することで、第2制御部220の異常の有無を判定できる。
【0092】
(変形例1)
なお、実施の形態1〜3では、通信異常検出部212、222は、第1、第2制御部210、220に設けられていたが、これは一例であり、第1、第2制御部210、220の外部に設けられていてもよい。この場合、通信異常検出部212、222は1つのブロックで構成されてもよい。
【0093】
(変形例2)
また、状態検出部213は、第1制御部210に設けられていたが、第1制御部210の外部に設けられていてもよい。