(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1陸部第2領域と前記第2陸部第2領域には、一端が前記周方向主溝または前記第1周方向細溝または前記第2周方向細溝に接続され、他端が前記第1陸部第2領域内または前記第2陸部第2領域内で終端する横方向サイプが形成され、
前記横方向サイプと前記横溝とは、タイヤ周方向において交互に配置される請求項1〜9のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
複数の前記陸部のうち、車両装着方向において最も内側に位置する前記陸部を第1ショルダー陸部とし、車両装着方向において最も外側に位置する前記陸部を第2ショルダー陸部としたときに、
前記第1ショルダー陸部と前記第2ショルダー陸部とには、それぞれタイヤ幅方向に延びるショルダー横溝とショルダー横方向サイプとが形成され、
前記ショルダー横溝と前記ショルダー横方向サイプとは、タイヤ周方向において交互に配置される請求項1〜11のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年では、ドライ操縦安定性とウェット操縦安定性とがより高いレベルで求められており、これらをバランスよく向上させるのは、大変困難なものとなっていた。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ウェット操縦安定性とドライ操縦安定性とをバランスよく向上させることのできる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る空気入りタイヤは、トレッド面に形成され、タイヤ周方向に延びる3本以上の周方向主溝と、前記周方向主溝に区画される複数の陸部と、を備え、前記周方向主溝のうち、タイヤ赤道線に対してタイヤ幅方向における位置が最も近い前記周方向主溝をセンター周方向主溝とし、前記センター周方向主溝のタイヤ幅方向における両側に位置して前記センター周方向主溝によって区画された2つの前記陸部のうち、タイヤ幅方向における前記タイヤ赤道線との距離が近い方の前記陸部を第1陸部とし、他方の前記陸部を第2陸部とし、前記第1陸部は、タイヤ周方向に延びる第1周方向細溝を有し、前記第2陸部は、タイヤ周方向に延びる第2周方向細溝を有し、前記第1陸部において前記第1周方向細溝によって区画されて前記第1周方向細溝のタイヤ幅方向両側に位置する領域のうち、前記センター周方向主溝に隣接する側の領域を第1陸部第1領域とし、他方の領域を第1陸部第2領域とし、前記第2陸部において前記第2周方向細溝によって区画されて前記第2周方向細溝のタイヤ幅方向両側に位置する領域のうち、前記センター周方向主溝に隣接する側の領域を第2陸部第1領域とし、他方の領域を第2陸部第2領域としたときに、前記第1陸部第1領域と前記第2陸部第1領域とは、全周に亘って溝が形成されていない領域であるプレーン領域を有し、前記第1陸部第2領域と前記第2陸部第2領域とには、タイヤ幅方向に延びる横溝が形成されることを特徴とする。
【0009】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記第1陸部第1領域は、前記タイヤ赤道線を含む位置に配置されることが好ましい。
【0010】
また、上記空気入りタイヤにおいて、タイヤ幅方向における前記第1陸部の幅W1と、前記センター周方向主溝の前記第1陸部側の端部から前記第1周方向細溝の溝幅中心までのタイヤ幅方向における距離Wt1と、の関係が、0.5≦(Wt1/W1)≦0.7の範囲内であることが好ましい。
【0011】
また、上記空気入りタイヤにおいて、タイヤ幅方向における前記第2陸部の幅W2と、前記センター周方向主溝の前記第2陸部側の端部から前記第2周方向細溝の溝幅中心までのタイヤ幅方向における距離Wt2と、の関係が、0.3≦(Wt2/W2)≦0.5の範囲内であることが好ましい。
【0012】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記タイヤ赤道線から前記センター周方向主溝の前記第1陸部側の端部までのタイヤ幅方向における距離Wcと、前記第1陸部第1領域のタイヤ幅方向における幅Wa1と、の関係が、0.4≦(Wc/Wa1)≦0.6の範囲内であることが好ましい。
【0013】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記第1陸部第1領域のタイヤ幅方向における幅Wa1と、前記第2陸部第1領域のタイヤ幅方向における幅Wa2と、の関係が、Wa1>Wa2を満たすことが好ましい。
【0014】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記第1陸部第2領域のタイヤ幅方向における幅Wb1と、前記第2陸部第2領域のタイヤ幅方向における幅Wb2と、の関係が、Wb1<Wb2を満たすことが好ましい。
【0015】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記第1陸部第2領域内における溝面積比Gb1は、3.0%≦Gb1≦15.0%の範囲内であり、前記第2陸部第2領域内における溝面積比Gb2は、3.0%≦Gb2≦15.0%の範囲内であり、且つ、前記溝面積比Gb1と前記溝面積比Gb2との関係が、Gb2<Gb1を満たすことが好ましい。
【0016】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記第1陸部第2領域と前記第2陸部第2領域とに形成された前記横溝は、前記横溝の延在長さの30%以上の領域に面取りが形成されることが好ましい。
【0017】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記第1陸部第2領域と前記第2陸部第2領域とに形成された前記横溝は、開口部における一方の縁のみに面取りが形成されることが好ましい。
【0018】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記第1陸部第2領域と前記第2陸部第2領域には、一端が前記周方向主溝または前記第1周方向細溝または前記第2周方向細溝に接続され、他端が前記第1陸部第2領域内または前記第2陸部第2領域内で終端する横方向サイプが形成され、前記横方向サイプと前記横溝とは、タイヤ周方向において交互に配置されることが好ましい。
【0019】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記第2陸部は、前記タイヤ赤道線よりも車両装着方向における外側に配置されることが好ましい。
【0020】
また、上記空気入りタイヤにおいて、複数の前記陸部のうち、車両装着方向において最も内側に位置する前記陸部を第1ショルダー陸部とし、車両装着方向において最も外側に位置する前記陸部を第2ショルダー陸部としたときに、前記第1ショルダー陸部と前記第2ショルダー陸部とには、それぞれタイヤ幅方向に延びるショルダー横溝とショルダー横方向サイプとが形成され、前記ショルダー横溝と前記ショルダー横方向サイプとは、タイヤ周方向において交互に配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る空気入りタイヤは、ウェット操縦安定性とドライ操縦安定性とをバランスよく向上させることのできる、という効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0024】
以下の説明において、タイヤ幅方向とは、空気入りタイヤの回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面に向かう方向、タイヤ幅方向外側とは、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面に向かう方向の反対方向をいう。また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸と直交する方向をいい、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心として回転する方向をいう。
【0025】
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド面を示す平面図である。ここで、
図1に示す空気入りタイヤ1は、車両に対する装着方向、つまり車両装着時の方向が規定されている。即ち、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、車両装着時に車両の内側に向く側が車両装着方向内側となり、車両装着時に車両の外側に向く側が車両装着方向外側となる。なお、車両装着方向内側及び車両装着方向外側の指定は、車両に装着した場合に限らない。例えば、リム組みした場合に、タイヤ幅方向において、車両の内側及び外側に対するリムの向きが決まっているため、空気入りタイヤ1は、リム組みした場合、タイヤ幅方向において、車両装着方向内側及び車両装着方向外側に対する向きが指定される。また、空気入りタイヤ1は、車両に対する装着方向を示す装着方向表示部(図示省略)を有する。装着方向表示部は、例えば、タイヤのサイドウォール部に付されたマークや凹凸によって構成される。例えば、ECER30(欧州経済委員会規則第30条)が、車両装着状態にて車両装着方向外側となるサイドウォール部に装着方向表示部を設けることを義務付けている。また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、主に乗用車に用いられる空気入りタイヤ1になっている。
【0026】
本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、タイヤ径方向の最も外側となる部分にトレッド部2が配設されており、トレッド部2の表面、即ち、当該空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)の走行時に路面と接触する部分は、トレッド面3として形成されている。トレッド面3には、タイヤ周方向に延びる周方向主溝40が複数形成されており、複数の周方向主溝40によって複数の陸部10が区画されている。
【0027】
周方向主溝40としては4本が設けられており、4本の周方向主溝40のうち、タイヤ赤道線CLに対してタイヤ幅方向における位置が最も近い周方向主溝40はセンター周方向主溝41になっている。また、4本の周方向主溝40のうち、タイヤ赤道線CLに対してタイヤ幅方向における位置が2番目に近い周方向主溝40はセカンド周方向主溝42になっている。セカンド周方向主溝42は、タイヤ赤道線CLに対するタイヤ幅方向における位置が、センター周方向主溝41の反対側に位置している。また、4本の周方向主溝40のうち、タイヤ幅方向における両側でタイヤ幅方向における位置が最も外側に位置する2本の周方向主溝40は、最外周方向主溝43になっている。
【0028】
また、センター周方向主溝41とセカンド周方向主溝42は、セカンド周方向主溝42よりもセンター周方向主溝41の方が、車両装着方向外側に位置している。即ち、センター周方向主溝41は、タイヤ赤道線CLよりも車両装着方向外側に位置し、セカンド周方向主溝42は、タイヤ赤道線CLよりも車両装着方向内側に位置している。これらの周方向主溝40は、溝幅が5mm以上18mm以下の範囲内になっており、溝深さが6mm以上10mm以下の範囲内になっている。
【0029】
周方向主溝40によって区画される複数の陸部10のうち、センター周方向主溝41のタイヤ幅方向における両側に位置してセンター周方向主溝41によって区画される2つの陸部10はセンター陸部11になっている。この2つのセンター陸部11のうち、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道線CLとの距離が近い方のセンター陸部11は第1陸部12になっており、他方のセンター陸部11は第2陸部13になっている。この場合、2つのセンター陸部11のうち、いずれか一方のセンター陸部11がタイヤ赤道線CLを含んでいる場合には、そのセンター陸部11を第1陸部12とする。本実施形態では、2つのセンター陸部11のうち、第1陸部12はセンター周方向主溝41とセカンド周方向主溝42との間に形成され、第2陸部13は、センター周方向主溝41に対して隣り合う最外周方向主溝43とセンター周方向主溝41との間に形成されている。
【0030】
また、センター周方向主溝41とセカンド周方向主溝42との間に形成される第1陸部12は、タイヤ赤道線CLを含む位置に配置されている。また、タイヤ赤道線CLよりも車両装着方向外側に位置するセンター周方向主溝41から見て、タイヤ幅方向における位置が、タイヤ赤道線CLが位置する側の反対側に位置する第2陸部13は、タイヤ赤道線CLよりも車両装着方向における外側に配置されている。
【0031】
また、複数の陸部10のうち、セカンド周方向主溝42に対して隣り合う最外周方向主溝43とセカンド周方向主溝42との間に形成される陸部10は、セカンド陸部15になっている。また、複数の陸部10のうち、セカンド周方向主溝42に対して隣り合う最外周方向主溝43のタイヤ幅方向外側に位置する陸部10は、第1ショルダー陸部16になっており、センター周方向主溝41に対して隣り合う最外周方向主溝43のタイヤ幅方向外側に位置する陸部10は、第2ショルダー陸部17になっている。つまり、第1ショルダー陸部16は、複数の陸部10のうち車両装着方向において最も内側に位置する陸部10になっており、第2ショルダー陸部17は、複数の陸部10のうち車両装着方向において最も外側に位置する陸部10になっている。
【0032】
2つのセンター陸部11には、それぞれタイヤ周方向に延びる周方向細溝50が形成されている。詳しくは、第1陸部12は、タイヤ周方向に延びる周方向細溝50である第1周方向細溝51を有しており、第2陸部13は、タイヤ周方向に延びる周方向細溝50である第2周方向細溝52を有している。この周方向細溝50は、溝幅が1mm以上3.5mm以下の範囲内になっており、溝深さが4mm以上8mm以下の範囲内になっている。
【0033】
また、第1陸部12において第1周方向細溝51によって区画されて第1周方向細溝51のタイヤ幅方向両側に位置する領域のうち、センター周方向主溝41に隣接する側の領域を第1陸部第1領域21とし、他方の領域を第1陸部第2領域22とする場合に、第1陸部第1領域21は、全周に亘って溝が形成されていない領域であるプレーン領域30を有している。タイヤ赤道線CLを含む位置に配置されている第1陸部12は、第1陸部第1領域21が、タイヤ赤道線CLを含む位置に配置されている。同様に、第2陸部13において第2周方向細溝52によって区画されて第2周方向細溝52のタイヤ幅方向両側に位置する領域のうち、センター周方向主溝41に隣接する側の領域を第2陸部第1領域26とし、他方の領域を第2陸部第2領域27とする場合に、第2陸部第1領域26は、全周に亘って溝が形成されていない領域であるプレーン領域30を有している。
【0034】
一方、第1陸部12の第1陸部第2領域22と第2陸部13の第2陸部第2領域27とには、タイヤ幅方向に延びる横溝60であるセンター横溝61が形成されている。また、第1陸部第2領域22と第2陸部第2領域27とには、一端が周方向主溝40または第1周方向細溝51または第2周方向細溝52に接続され、他端が第1陸部第2領域22内または第2陸部第2領域27内で終端する横方向サイプ80であるセンター横方向サイプ81が形成されている。センター横方向サイプ81とセンター横溝61とは、タイヤ周方向において交互に配置されている。
【0035】
ここでいうサイプは、トレッド面3に細溝状に形成されるものであり、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みし、正規内圧の内圧条件で、無負荷時には細溝を構成する壁面同士が接触しないが、平板上で垂直方向に負荷させたときの平板上に形成される接地面の部分に細溝が位置する際、または細溝が形成される陸部の倒れ込み時には、当該細溝を構成する壁面同士、或いは壁面に設けられる部位の少なくとも一部が、陸部の変形によって互いに接触するものをいう。正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、或いは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、或いはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。
【0036】
第1陸部第2領域22には、第1陸部第2領域22に形成されるセンター横溝61である第1センター横溝62と、第1陸部第2領域22に形成されるセンター横方向サイプ81である第1センター横方向サイプ82とが形成されている。このうち、第1センター横溝62は、タイヤ幅方向に延びつつ、タイヤ周方向に対してタイヤ周方向に向かって傾斜しており、一端がセカンド周方向主溝42に接続され、他端が第1周方向細溝51に接続されている。また、第1センター横方向サイプ82は、タイヤ幅方向に延びつつ、タイヤ周方向に対して第1センター横溝62の傾斜方向と同じ方向にタイヤ周方向に向かって傾斜しており、一端がセカンド周方向主溝42に接続され、他端が第1陸部第2領域22内で終端している。第1陸部第2領域22では、これらの第1センター横溝62と第1センター横方向サイプ82とが、タイヤ周方向において交互に配置されている。
【0037】
また、第2陸部第2領域27には、第2陸部第2領域27に形成されるセンター横溝61である第2センター横溝63と、第2陸部第2領域27に形成されるセンター横方向サイプ81である第2センター横方向サイプ83とが形成されている。このうち、第2センター横溝63は、タイヤ幅方向に延びつつ、タイヤ周方向に対してタイヤ周方向に向かって傾斜しており、一端が、第2陸部13を介してセンター周方向主溝41と隣り合う側の最外周方向主溝43に接続され、他端が第2陸部第2領域27内で終端している。タイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への第2センター横溝63の傾斜方向は、第1センター横溝62の傾斜方向と同じ方向になっている。また、第2センター横方向サイプ83は、タイヤ幅方向に延びつつ、タイヤ周方向に対して第2センター横溝63の傾斜方向と同じ方向にタイヤ周方向に向かって傾斜しており、一端が第2周方向細溝52に接続され、他端が第2陸部第2領域27内で終端している。第2陸部第2領域27では、これらの第2センター横溝63と第2センター横方向サイプ83とが、タイヤ周方向において交互に配置されている。
【0038】
また、セカンド陸部15には、セカンド陸部15に形成される横溝60であるセカンド横溝65と、セカンド陸部15に形成される横方向サイプ80であるセカンド横方向サイプ85が形成されている。これらのセカンド横溝65とセカンド横方向サイプ85とは、共に一端が、セカンド陸部15を介してセカンド周方向主溝42と隣り合う側の最外周方向主溝43に接続され、他端がセカンド周方向主溝42に接続されている。また、セカンド横溝65とセカンド横方向サイプ85とは、共にタイヤ幅方向に延びつつ、タイヤ周方向に対して第1センター横溝62や第1センター横方向サイプ82の傾斜方向と同じ方向にタイヤ周方向に向かって傾斜しており、タイヤ周方向において交互に配置されている。さらに、セカンド横溝65は、第1陸部12に形成される第1センター横溝62の延長線上に近い位置に配置されており、セカンド横方向サイプ85は、第1陸部12に形成される第1センター横方向サイプ82の延長線上に近い位置に配置されている。
【0039】
また、第1ショルダー陸部16と第2ショルダー陸部17とには、横溝60であるショルダー横溝66と、横方向サイプ80であるショルダー横方向サイプ86とが形成されており、ショルダー横溝66とショルダー横方向サイプ86とは、それぞれタイヤ幅方向に延びて形成されている。これらのショルダー横溝66とショルダー横方向サイプ86とは、第1ショルダー陸部16と第2ショルダー陸部17とで、それぞれタイヤ周方向において交互に配置されている。
【0040】
詳しくは、第1ショルダー陸部16に形成されるショルダー横溝66とショルダー横方向サイプ86とは、共にタイヤ幅方向における内側の端部が最外周方向主溝43に接続され、最外周方向主溝43からタイヤ幅方向外側に延びている。また、第1ショルダー陸部16に形成されるショルダー横溝66とショルダー横方向サイプ86とは、共にタイヤ幅方向に延びつつ、タイヤ周方向に湾曲している。さらに、第1ショルダー陸部16のショルダー横溝66は、セカンド陸部15に形成されるセカンド横溝65の延長線上に近い位置に配置されており、第1ショルダー陸部16のショルダー横方向サイプ86は、セカンド陸部15に形成されるセカンド横方向サイプ85の延長線上に近い位置に配置されている。
【0041】
また、第2ショルダー陸部17に形成されるショルダー横溝66は、タイヤ幅方向における内側の端部が最外周方向主溝43に接続され、最外周方向主溝43からタイヤ幅方向外側に延びている。また、第2ショルダー陸部17に形成されるショルダー横方向サイプ86は、タイヤ幅方向における内側の端部が第2ショルダー陸部17内で終端している。また、第2ショルダー陸部17に形成されるショルダー横溝66とショルダー横方向サイプ86とは、共にタイヤ幅方向に延びつつ、タイヤ周方向に湾曲している。さらに、第2ショルダー陸部17のショルダー横溝66は、第2陸部13に形成される第2センター横溝63の延長線上に近い位置に配置されており、第2ショルダー陸部17のショルダー横方向サイプ86は、第2陸部13に形成される第2センター横方向サイプ83の延長線上に近い位置に配置されている。
【0042】
なお、これらのように形成される横溝60は、溝幅が1mm以上4mm以下の範囲内になっており、溝深さが2mm以上8mm以下の範囲内になっている。また、横方向サイプ80は、溝幅が0.5mm以上1mm未満の範囲内になっており、溝深さが2mm以上7mm以下の範囲内になっている。
【0043】
図2は、
図1のA部詳細図である。
図3は、
図2のF−F断面図である。
図4は、
図1のB部詳細図である。第1陸部第2領域22と第2陸部第2領域27とに形成されるセンター横溝61は、それぞれセンター横溝61の延在長さの30%以上の領域に面取り73が形成されている。なお、この場合におけるセンター横溝61の延在長さは、各センター横溝61における溝幅中心の位置での延在方向における長さになっている。センター横溝61の面取り73は、各センター横溝61の開口部71における一方の縁72のみに形成されている。
【0044】
つまり、第1センター横溝62には、第1センター横溝62の延在長さL1の30%以上の領域に、第1センター横溝62の開口部71における一方の縁72のみに面取り73が形成されている。第1センター横溝62に形成される面取り73は、第1センター横溝62におけるセカンド周方向主溝42に接続される側の端部から、第1センター横溝62の延在長さL1の30%以上の領域に形成されている。第1センター横溝62に形成される面取り73は、第1センター横溝62の深さ方向における深さDcが、第1センター横溝62の溝深さDgの10%以上50%以下の範囲内で形成されるのが好ましい。また、第1陸部第2領域22に形成される複数の第1センター横溝62のそれぞれの面取り73は、各第1センター横溝62の開口部71の縁72のうち、それぞれの第1センター横溝62においてタイヤ周方向における位置が同じ側に位置する側の縁72に形成されている。
【0045】
また、第2センター横溝63には、第2センター横溝63の延在長さL2の30%以上の領域に、第2センター横溝63の開口部71における一方の縁72のみに面取り73が形成されている。第2センター横溝63に形成される面取り73は、第2センター横溝63における最外周方向主溝43に接続される側の端部から、第2センター横溝63の延在長さL2の30%以上の領域に形成されている。第2センター横溝63に形成される面取り73は、第1センター横溝62に形成される面取り73と同様に、第2センター横溝63の深さ方向における深さDcが、第2センター横溝63の溝深さDgの10%以上50%以下の範囲内で形成されるのが好ましい。
【0046】
また、第2陸部第2領域27に形成される複数の第2センター横溝63のそれぞれの面取り73は、各第2センター横溝63の開口部71の縁72のうち、それぞれの第2センター横溝63においてタイヤ周方向における位置が同じ側に位置する側の縁72に形成されている。また、第2センター横溝63に形成される面取り73は、第2センター横溝63に対するタイヤ周方向における位置が、第1センター横溝62の面取り73がタイヤ周方向において第1センター横溝62に対して形成される側の反対側の位置に形成されている。
【0047】
図5は、
図1のC部詳細図である。面取り73は、セカンド陸部15に形成されるセカンド横溝65にも形成されている。セカンド横溝65に形成される面取り73は、センター横溝61に形成される面取り73と同様に、開口部71における一方の縁72のみに形成されている。このセカンド横溝65の面取り73は、セカンド横溝65の延在方向における中央部付近で、開口部71において形成される側の縁72が変化している。つまり、セカンド横溝65の面取り73は、セカンド横溝65の延在方向における中央部付近から一方の端部までの領域では、開口部71の一方の縁72に形成されており、セカンド横溝65の延在方向における中央部付近から他方の端部までの領域では、開口部71の縁72において、他方の領域で開口部71が形成されていない側の縁72に形成されていない側の縁72に形成されている。
【0048】
図6は、
図1のD部詳細図である。
図7は、
図1のE部詳細図である。第1ショルダー陸部16に形成されるショルダー横溝66と第2ショルダー陸部17に形成されるショルダー横溝66にも、開口部71における一方の縁72のみに面取り73が形成されている。ショルダー横溝66の面取り73は、ショルダー横溝66の延在方向における所定の位置よりもタイヤ幅方向外側の領域に形成されている。また、ショルダー横溝66に形成される面取り73は、第1ショルダー陸部16と第2ショルダー陸部17とのそれぞれのショルダー横溝66において、開口部71のタイヤ周方向両側の縁72のうち、ショルダー横溝66の湾曲が凸となる側の縁72に形成されている。このため、第1ショルダー陸部16に形成されるショルダー横溝66と第2ショルダー陸部17に形成されるショルダー横溝66とでは、タイヤ周方向における位置が互いに異なる位置に、面取り73が形成されている。
【0049】
図8は、
図1に記載されているセンター陸部の詳細図である。第1陸部12は、タイヤ幅方向における第1陸部12の幅W1と、センター周方向主溝41の第1陸部12側の端部から第1周方向細溝51の溝幅中心55までのタイヤ幅方向における距離Wt1と、の関係が、0.5≦(Wt1/W1)≦0.7の範囲内になっている。換言すると、第1陸部12は、センター周方向主溝41の第1陸部12側の端部から第1周方向細溝51の溝幅中心55までのタイヤ幅方向における距離Wt1が、タイヤ幅方向における第1陸部12の幅W1に対して50%以上70%以下となる位置に第1周方向細溝51が配置され、この第1周方向細溝51によって第1陸部第1領域21と第1陸部第2領域22とに区画されている。
【0050】
また、第2陸部13は、タイヤ幅方向における第2陸部13の幅W2と、センター周方向主溝41の第2陸部13側の端部から第2周方向細溝52の溝幅中心55までのタイヤ幅方向における距離Wt2と、の関係が、0.3≦(Wt2/W2)≦0.5の範囲内になっている。換言すると、第2陸部13は、センター周方向主溝41の第2陸部13側の端部から第2周方向細溝52の溝幅中心55までのタイヤ幅方向における距離Wt2が、タイヤ幅方向における第2陸部13の幅W2に対して30%以上50%以下となる位置に第2周方向細溝52が配置され、この第2周方向細溝52によって第2陸部第1領域26と第2陸部第2領域27とに区画されている。
【0051】
また、タイヤ赤道線CLを含む位置に配置される第1陸部12は、タイヤ赤道線CLからセンター周方向主溝41の第1陸部12側の端部までのタイヤ幅方向における距離Wcと、第1陸部第1領域21のタイヤ幅方向における幅Wa1と、の関係が、0.4≦(Wc/Wa1)≦0.6の範囲内になっている。つまり、第1陸部12は、タイヤ赤道線CLからセンター周方向主溝41の第1陸部12側の端部までのタイヤ幅方向における距離Wcが、第1陸部第1領域21のタイヤ幅方向における幅Wa1に対して40%以上60%以下の範囲内になっている。
【0052】
また、第1陸部12と第2陸部13とは、第1陸部第1領域21のタイヤ幅方向における幅Wa1と、第2陸部第1領域26のタイヤ幅方向における幅Wa2と、の関係が、Wa1>Wa2を満たしており、第2陸部第1領域26の幅Wa2よりも、第1陸部第1領域21の幅Wa1の方が大きくなっている。また、第1陸部12と第2陸部13とは、第1陸部第2領域22のタイヤ幅方向における幅Wb1と、第2陸部第2領域27のタイヤ幅方向における幅Wb2と、の関係が、Wb1<Wb2を満たしており、第1陸部第2領域22の幅Wb1よりも、第2陸部第2領域27の幅Wb2の方が大きくなっている。
【0053】
また、第1センター横溝62と第1センター横方向サイプ82とが形成される第1陸部第2領域22は、第1陸部第2領域22内における溝面積比Gb1が、3.0%≦Gb1≦15.0%の範囲内になっている。同様に、第2センター横溝63と第2センター横方向サイプ83とが形成される第2陸部第2領域27は、第2陸部第2領域27内における溝面積比Gb2が、3.0%≦Gb2≦15.0%の範囲内になっている。さらに、第1陸部第2領域22と第2陸部第2領域27とは、第1陸部第2領域22内における溝面積比Gb1と第2陸部第2領域27内における溝面積比Gb2との関係が、Gb2<Gb1を満たしている。
【0054】
ここでいう溝面積比は、溝面積/(溝面積+接地面積)の百分率により定義される。溝面積は、接地面(接地領域)における全ての溝の開口面積の合計とする。また、溝面積及び接地面積は、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みし、且つ、正規内圧を充填すると共に正規荷重の70%をかけたときに測定するものとする。正規荷重とは、JATMAで規定する「最大負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、或いはETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」である。
【0055】
これらのように構成される空気入りタイヤ1を車両に装着して走行すると、トレッド面3のうち下方に位置するトレッド面3が路面に接触しながら当該空気入りタイヤ1は回転する。空気入りタイヤ1を装着した車両で乾燥した路面を走行する場合には、主にトレッド面3と路面との間の摩擦力により、駆動力や制動力を路面に伝達したり、旋回力を発生させたりすることにより走行する。また、濡れた路面を走行する際には、トレッド面3と路面との間の水が周方向主溝40や横溝60等に入り込み、これらの溝でトレッド面3と路面との間の水を排水しながら走行する。これにより、トレッド面3は路面に接地し易くなり、トレッド面3と路面との間の摩擦力により、車両は走行することが可能になる。
【0056】
ここで、トレッド面3が路面に接地する際には、車両の走行状態に関わらず、トレッド面3のタイヤ幅方向における中心付近、即ち、トレッド面3におけるタイヤ赤道線CL付近の位置の接地荷重が高くなり易くなり、車両の走行状態に関わらずタイヤ赤道線CL付近の接地領域が大きくなり易くなる。本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、このタイヤ赤道線CLの近傍に位置するセンター周方向主溝41のタイヤ幅方向両側に配置される第1陸部12と第2陸部13とのそれぞれに、タイヤ周方向に延びる周方向細溝50を形成している。さらに、第1陸部12と第2陸部13とには、周方向細溝50によって区画される第1陸部第2領域22と第2陸部第2領域27とのそれぞれに、タイヤ幅方向に延びるセンター横溝61を形成している。第1陸部12と第2陸部13とには、このように周方向細溝50とセンター横溝61とを設けるため、タイヤ赤道線CL付近における排水性を向上させることができ、ウェット路面での操縦安定性を向上させることができる。
【0057】
また、第1陸部12と第2陸部13とは、周方向細溝50によって区画されて第1陸部第2領域22や第2陸部第2領域27のタイヤ幅方向内側に位置する第1陸部第1領域21及び第2陸部第1領域26に、全周に亘って溝が形成されていない領域であるプレーン領域30を有している。これにより、タイヤ赤道線CL付近における接地面積を大きくすることができ、乾燥した路面での操縦安定性を向上させることができる。これらの結果、ウェット操縦安定性とドライ操縦安定性とをバランスよく向上させることができる。
【0058】
また、第1陸部第1領域21は、タイヤ赤道線CLを含む位置に配置されているため、タイヤ赤道線CL付近の接地面積を、より確実に確保することができ、乾燥した路面での操縦安定性を、より確実に向上させることができる。また、第1陸部第1領域21を、タイヤ赤道線CLを含む位置に配置することにより、第1センター横溝62や第1センター横方向サイプ82を有する第1陸部第2領域22もタイヤ赤道線CLの近傍に配置することができ、タイヤ赤道線CL付近における排水性を、より確実に向上させることができる。この結果、ウェット操縦安定性とドライ操縦安定性とを、より確実にバランスよく向上させることができる。
【0059】
また、タイヤ幅方向における第1陸部12の幅W1と、センター周方向主溝41の第1陸部12側の端部から第1周方向細溝51の溝幅中心55までのタイヤ幅方向における距離Wt1と、の関係が、0.5≦(Wt1/W1)≦0.7の範囲内であるため、乾燥した路面での操縦安定性とタイヤ赤道線CL付近での排水性を、より確実に向上させることができる。つまり、第1陸部12が、(Wt1/W1)<0.5となって形成されている場合には、タイヤ幅方向における第1陸部第1領域21の幅、即ち、プレーン領域30の幅が狭すぎるため、乾燥した路面での操縦安定性を効果的に向上させ難くなる可能性がある。また、第1陸部12が、(Wt1/W1)>0.7となって形成されている場合には、タイヤ幅方向における第1陸部第2領域22の幅が狭すぎるため、第1センター横溝62や第1センター横方向サイプ82が形成される領域が小さくなり、タイヤ赤道線CL付近における排水性を効果的に向上させ難くなる可能性がある。これに対し、0.5≦(Wt1/W1)≦0.7の範囲内になるように第1陸部12を形成した場合は、第1陸部12におけるプレーン領域30の幅を確保することにより、乾燥した路面での操縦安定性を効果的に向上させつつ、第1センター横溝62や第1センター横方向サイプ82が形成される領域の幅を確保することにより、タイヤ赤道線CL付近における排水性をより確実に向上させることができる。この結果、ウェット操縦安定性とドライ操縦安定性とを、より確実にバランスよく向上させることができる。
【0060】
また、タイヤ幅方向における第2陸部13の幅W2と、センター周方向主溝41の第2陸部13側の端部から第2周方向細溝52の溝幅中心55までのタイヤ幅方向における距離Wt2と、の関係が、0.3≦(Wt2/W2)≦0.5の範囲内であるため、乾燥した路面での操縦安定性とタイヤ赤道線CL付近での排水性を、より確実に向上させることができる。つまり、第2陸部13が、(Wt2/W2)<0.3となって形成されている場合は、タイヤ幅方向における第2陸部第1領域26の幅、即ち、プレーン領域30の幅が狭すぎるため、タイヤ赤道線CLの近傍の位置での接地面積を効果的に向上させ難くなり、乾燥した路面での操縦安定性を効果的に向上させ難くなる可能性がある。また、第2陸部13が、(Wt2/W2)>0.5となって形成されている場合には、第2センター横溝63や第2センター横方向サイプ83が形成される第2陸部第2領域27がタイヤ赤道線CLから離れることになるため、タイヤ赤道線CL付近における排水性を効果的に向上させ難くなる可能性がある。これに対し、0.3≦(Wt2/W2)≦0.5の範囲内になるように第2陸部13を形成した場合は、第2陸部13におけるプレーン領域30の幅を確保することにより、乾燥した路面での操縦安定性を効果的に向上させつつ、第2陸部第2領域27をタイヤ赤道線CLに近付けることにより、タイヤ赤道線CL付近における排水性をより確実に向上させることができる。この結果、ウェット操縦安定性とドライ操縦安定性とを、より確実にバランスよく向上させることができる。
【0061】
また、タイヤ赤道線CLからセンター周方向主溝41の第1陸部12側の端部までのタイヤ幅方向における距離Wcと、第1陸部第1領域21のタイヤ幅方向における幅Wa1と、の関係が、0.4≦(Wc/Wa1)≦0.6の範囲内であるため、トレッド面3のタイヤ幅方向における中央領域の接地面積を、より確実に確保することができる。つまり、第1陸部第1領域21とタイヤ赤道線CLとの関係が、(Wc/Wa1)<0.4であったり、(Wc/Wa1)>0.6であったりする場合は、タイヤ赤道線CLが第1陸部第1領域21のタイヤ幅方向における中心から大きく外れるため、トレッド面3のタイヤ幅方向における中央領域の接地面積を効果的に向上させ難くなり、乾燥した路面での操縦安定性を効果的に向上させ難くなる可能性がある。これに対し、第1陸部第1領域21とタイヤ赤道線CLとの関係が、0.4≦(Wc/Wa1)≦0.6の範囲内である場合は、タイヤ赤道線CLが第1陸部第1領域21のタイヤ幅方向における中心付近に位置することになるため、トレッド面3のタイヤ幅方向における中央領域の接地面積を効果的に向上させることができる。この結果、ドライ操縦安定性を、より確実に向上させることができる。
【0062】
また、第1陸部第1領域21のタイヤ幅方向における幅Wa1と、第2陸部第1領域26のタイヤ幅方向における幅Wa2と、の関係が、Wa1>Wa2を満たすため、タイヤ赤道線CL付近の排水性と乾燥した路面での操縦安定性とを、バランスよく向上させることができる。つまり、第1陸部第1領域21と第2陸部第1領域26との関係がWa1≦Wa2である場合は、タイヤ幅方向における第2陸部第1領域26の幅に対して第1陸部第1領域21の幅が狭くなるため、トレッド面3のタイヤ幅方向における中央領域の接地面積を効果的に向上させ難くなる。これにより、第1陸部第2領域22によるタイヤ赤道線CL付近の排水性向上の効果に対して、第1陸部第1領域21によって乾燥した路面での操縦安定性を向上させる効果を、効果的に向上させるのが困難になる可能性がある。これに対し、第1陸部第1領域21と第2陸部第1領域26との関係がWa1>Wa2である場合は、トレッド面3のタイヤ幅方向における中央領域の接地面積を効果的に向上させることができ、タイヤ赤道線CL付近の排水性と乾燥した路面での操縦安定性とを、バランスよく向上させることができる。この結果、ウェット操縦安定性とドライ操縦安定性とを、より確実にバランスよく向上させることができる。
【0063】
また、第1陸部第2領域22のタイヤ幅方向における幅Wb1と、第2陸部第2領域27のタイヤ幅方向における幅Wb2と、の関係が、Wb1<Wb2を満たすため、乾燥した路面での操縦安定性とタイヤ赤道線CL付近の排水性とを、バランスよく向上させることができる。つまり、第1陸部第2領域22と第2陸部第2領域27との関係がWb1≧Wb2である場合は、タイヤ幅方向における第2陸部第2領域27の幅に対して第1陸部第2領域22の幅が大きくなるため、第1陸部第1領域21と第2陸部第1領域26とによる乾燥した路面での操縦安定性向上の効果に対して、第1陸部第2領域22によるタイヤ赤道線CL付近の排水性向上の効果が大きくなり過ぎる可能性がある。これに対し、第1陸部第2領域22と第2陸部第2領域27との関係がWb1<Wb2である場合は、タイヤ幅方向における第1陸部第2領域22の幅が大きくなり過ぎることを抑制でき、第1陸部第1領域21と第2陸部第1領域26とによる乾燥した路面での操縦安定性向上の効果と、第1陸部第2領域22によるタイヤ赤道線CL付近の排水性向上の効果とを、バランスよく向上させることができる。この結果、ウェット操縦安定性とドライ操縦安定性とを、より確実にバランスよく向上させることができる。
【0064】
また、第1陸部第2領域22内における溝面積比Gb1と第2陸部第2領域27内における溝面積比Gb2とは、共に3.0%≦Gb1≦15.0%、3.0%≦Gb2≦15.0%の範囲内であるため、タイヤ赤道線CL付近での陸部10の剛性と排水性とを、バランスよく確保することができる。つまり、溝面積比Gb1、Gb2が、Gb1<3.0%であったり、Gb2<3.0%であったりする場合は、第1陸部第2領域22内や第2陸部第2領域27内の溝面積比が小さ過ぎるため、タイヤ赤道線CL付近の排水性を効果的に向上させ難くなる可能性がある。また、溝面積比Gb1、Gb2が、Gb1>15.0%であったり、Gb2>15.0%であったりする場合は、第1陸部第2領域22内や第2陸部第2領域27内の溝面積比が大き過ぎるため、第1陸部12における第1陸部第2領域22の部分の剛性や、第2陸部13における第2陸部第2領域27の部分の剛性が低くなり過ぎ、乾燥した路面での操縦安定性を効果的に向上させ難くなる可能性がある。これに対し、溝面積比Gb1、Gb2を、3.0%≦Gb1≦15.0%、3.0%≦Gb2≦15.0%の範囲内にした場合は、第1陸部12や第2陸部13の剛性が低くなり過ぎることなく、タイヤ赤道線CL付近の排水性を確保することができる。この結果、ウェット操縦安定性とドライ操縦安定性とを、より確実にバランスよく向上させることができる。
【0065】
また、溝面積比Gb1と溝面積比Gb2との関係が、Gb2<Gb1を満たすため、タイヤ赤道線CL付近での陸部10の剛性と排水性とを、バランスよく向上させることができる。つまり、溝面積比Gb1、Gb2が、Gb2≧Gb1である場合は、第1陸部第2領域22の溝面積比が小さ過ぎるため、タイヤ赤道線CL付近の排水性を効果的に向上させるのが困難になる可能性があり、また、第2陸部13における第2陸部第2領域27の部分の剛性が低くなり過ぎる可能性がある。これに対し、溝面積比Gb1、Gb2が、Gb2<Gb1である場合は、タイヤ赤道線CL付近の排水性を効果的に向上させることができ、また、第2陸部13の剛性が低くなり過ぎることを抑制できるので、タイヤ赤道線CL付近の排水性と乾燥した路面での操縦安定性とを、バランスよく向上させることができる。この結果、ウェット操縦安定性とドライ操縦安定性とを、より確実にバランスよく向上させることができる。
【0066】
また、第1陸部第2領域22と第2陸部第2領域27とに形成されたセンター横溝61は、センター横溝61の延在長さの30%以上の領域に面取り73が形成されているため、第1陸部12や第2陸部13の剛性を確保しつつ、空気入りタイヤ1の新品時における第1陸部第2領域22及び第2陸部第2領域27の溝面積を確保することができる。この結果、ウェット操縦安定性とドライ操縦安定性とを、より確実にバランスよく向上させることができる。
【0067】
また、第1陸部第2領域22と第2陸部第2領域27とに形成されたセンター横溝61は、開口部71における一方の縁72のみに面取り73が形成されているため、トレッド面3の摩耗に伴って面取り73が摩耗した場合でも、溝面積の変化を少なくすることができる。この結果、ウェット操縦安定性とドライ操縦安定性とを、安定してバランスよく向上させることができる。
【0068】
また、第1陸部第2領域22と第2陸部第2領域27とには、センター横方向サイプ81とセンター横溝61とがタイヤ周方向において交互に配置されるため、第1陸部12や第2陸部13の剛性がタイヤ周方向における位置によって大きく変化することを抑制でき、第1陸部12や第2陸部13の剛性の適正化を図ることができる。この結果、ウェット操縦安定性とドライ操縦安定性とを、より確実に向上させることができる。
【0069】
また、第2陸部13は、タイヤ赤道線CLよりも車両装着方向における外側に配置されるため、プレーン領域30を有する第2陸部第1領域26を第1陸部12よりも車両装着方向における外側に配置することができる。これにより、車両の旋回時に接地領域が大きくなる、タイヤ赤道線CLよりも車両装着方向外側の領域の接地面積を大きくすることができ、車両の旋回時における操縦安定性を向上させることができる。この結果、より確実にドライ操縦安定性を向上させることができる。
【0070】
また、第1ショルダー陸部16と第2ショルダー陸部17とにはショルダー横溝66とショルダー横方向サイプ86とが形成されるため、接地領域におけるタイヤ幅方向外側付近の領域での排水性を確保することができる。また、第1ショルダー陸部16のショルダー横溝66とショルダー横方向サイプ86、及び第2ショルダー陸部17のショルダー横溝66とショルダー横方向サイプ86は、それぞれタイヤ周方向において交互に配置されるため、第1ショルダー陸部16と第2ショルダー陸部17の剛性がタイヤ周方向における位置によって大きく変化することを抑制できる。これにより、第1ショルダー陸部16と第2ショルダー陸部17の剛性の適正化を図ることができる。これらの結果、ウェット操縦安定性とドライ操縦安定性とを、より確実に向上させることができる。
【0071】
なお、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、周方向主溝40は4本形成されているが、周方向主溝40は4本以外でもよく、周方向主溝40は、例えば3本でもよい。周方向主溝40が3本で、中央の周方向主溝40にタイヤ赤道線CLが含まれる場合は、タイヤ赤道線CLが含まれている周方向主溝40をセンター周方向主溝41とし、当該センター周方向主溝41のタイヤ幅方向における両側に位置する陸部10を、第1陸部12と第2陸部13とする。また、周方向主溝40の本数が偶数本の場合でも、タイヤ赤道線CLを含んでいる周方向主溝40が存在する場合は、その周方向主溝40をセンター周方向主溝41とする。周方向主溝40は、これらのように3本以上形成されていればよい。
【0072】
また、複数の周方向主溝40のうち、タイヤ赤道線CLからの距離がほぼ同じ距離になる周方向主溝40が2本ある場合は、いずれか一方の周方向主溝40をセンター周方向主溝41とし、当該センター周方向主溝41のタイヤ幅方向における両側に位置する陸部10を、第1陸部12と第2陸部13とする。また、センター周方向主溝41のタイヤ幅方向における両側に位置する2つのセンター陸部11同士で、タイヤ赤道線CLとの距離がほぼ等しい場合は、車両装着方向における内側に位置するセンター陸部11を第1陸部12とし、車両装着方向における外側に位置するセンター陸部11を第2陸部13とするのが好ましい。
【0073】
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、第1センター横溝62の両端がセカンド周方向主溝42と第1周方向細溝51とに接続され、第2センター横溝63の一端が最外周方向主溝43に接続されて他端が第2陸部第2領域27内で終端しているが、センター横溝61は、これ以外の形態でもよい。センター横溝61は、例えば、第1センター横方向サイプ82の一端が第1陸部第2領域22内で終端していてもよい。また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、第1センター横方向サイプ82の一端がセカンド周方向主溝42に接続されて他端が第1陸部第2領域22内で終端し、第2センター横方向サイプ83の一端が第2周方向細溝52に接続されて他端が第2陸部第2領域27内で終端しているが、センター横方向サイプ81は、これ以外の形態でもよい。センター横方向サイプ81は、例えば、第1センター横方向サイプ82の一端が第1周方向細溝51に接続されていてもよい。これらのように、横溝60や横方向サイプ80は、上述した実施形態で示した形態とは異なる形態であってもよい。
【0074】
〔実施例〕
図9A〜
図9Dは、空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。以下、上記の空気入りタイヤ1について、従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する比較例の空気入りタイヤとについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、濡れた路面を走行した際における操縦安定性であるウェット操縦安定性と、乾いた路面を走行した際における操縦安定性であるドライ操縦安定性とについての試験を行った。
【0075】
性能評価試験は、JATMAで規定されるタイヤの呼びが215/55R17 94Wサイズの空気入りタイヤ1を17×7JJサイズのJATMA標準リムのリムホイールにリム組みして、空気圧を230kPaに調整し、排気量が1600ccで前輪駆動の試験車両に装着してテスト走行をすることにより行った。各試験項目の評価方法は、ウェット操縦安定性については、路面が濡れたテストコースを試験車両で走行し、テストドライバーによる操縦安定性能のフィーリング評価試験を実施して評価結果を指数化することによって評価した。ウェット操縦安定性は、後述する従来例の評価結果を100とする指数で表し、数値が大きいほどウェット操縦安定性が優れていることを示している。ドライ操縦安定性については、路面が乾いたテストコースを試験車両で走行し、テストドライバーによる操縦安定性能のフィーリング評価試験を実施して評価結果を指数化することによって評価した。ドライ操縦安定性は、後述する従来例の評価結果を100とする指数で表し、数値が大きいほどウェット操縦安定性が優れていることを示している。
【0076】
評価試験は、従来の空気入りタイヤ1の一例である従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1である実施例1〜17と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する空気入りタイヤである比較例1〜5の23種類の空気入りタイヤについて行った。これらの空気入りタイヤ1のうち、従来例の空気入りタイヤは、センター周方向主溝のタイヤ幅方向両側に位置する第1陸部と第2陸部とに周方向細溝が設けられていない。また、比較例1〜5の空気入りタイヤは、第1陸部と第2陸部とのいずれかに周方向細溝が設けられていない、または、第1陸部第1領域と第2陸部第1領域とがプレーン領域を有して第1陸部第2領域と第2陸部第2領域が横溝を有する構成になっていない。
【0077】
これに対し、本発明に係る空気入りタイヤ1の一例である実施例1〜17は、全て第1陸部12と第2陸部13とに周方向細溝50が形成されており、第1陸部第1領域21と第2陸部第1領域26とは共にプレーン領域30を有し、第1陸部第2領域22と第2陸部第2領域27とはセンター横溝61を有している。また、実施例1〜17に係る空気入りタイヤ1は、第1陸部12と第1陸部第1領域21、第2陸部13と第2陸部第1領域26、タイヤ赤道線CLと第1陸部第1領域21、タイヤ赤道線CLと第2陸部13のそれぞれの相対的な位置関係や、第1陸部第2領域22と第2陸部第2領域27の溝面積比の相対的な関係、センター横溝61の面取り73の有無や、センター横方向サイプ81の有無、ショルダー横溝66の有無、ショルダー横方向サイプ86の有無がそれぞれ異なっている。
【0078】
これらの空気入りタイヤ1を用いて評価試験を行った結果、
図9A〜
図9Dに示すように、実施例1〜17の空気入りタイヤ1は、従来例や比較例1〜5に対して、ウェット操縦安定性とドライ操縦安定性とについて一方の性能を低下させることなく、少なくともいずれか一方の性能を向上させることができる。つまり、実施例1〜17に係る空気入りタイヤ1は、ウェット操縦安定性とドライ操縦安定性とをバランスよく向上させることができる。