特許第6292293号(P6292293)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6292293
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】ダンパ装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/129 20060101AFI20180305BHJP
   F16F 15/134 20060101ALI20180305BHJP
   F16D 13/64 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   F16F15/129 C
   F16F15/134 A
   F16D13/64 A
   F16D13/64 G
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-510376(P2016-510376)
(86)(22)【出願日】2015年3月24日
(86)【国際出願番号】JP2015058875
(87)【国際公開番号】WO2015146968
(87)【国際公開日】20151001
【審査請求日】2016年10月11日
(31)【優先権主張番号】特願2014-60833(P2014-60833)
(32)【優先日】2014年3月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】奈須 剛志
(72)【発明者】
【氏名】林 大介
【審査官】 村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−144861(JP,A)
【文献】 特開2007−218347(JP,A)
【文献】 特開2000−179572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/00−15/36
F16D 13/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転中心回りに回転可能な第一の部材と、
前記回転中心回りに回転可能な第二の部材と、
前記回転中心回りに、前記第一の部材と一体的に回転する第一の区間と、前記第二の部材と一体的に回転する第二の区間とで、回動可能に構成された第三の部材と、
前記第一の部材と前記第二の部材との前記回転中心回りの相対的な回動に伴って弾性的に伸縮する第一の弾性部材と、
前記第一の部材と前記第二の部材との相対的な回動に伴って摩擦トルクを生じる第一の摩擦面を有した第一の摩擦部材と、
前記第二の部材と前記第三の部材との相対的な回動に伴って摩擦トルクを生じる第二の摩擦面を有した第二の摩擦部材と、
を備え
前記第一の区間では、前記第一の部材および前記第三の部材のうち一方に設けられた引掛部と他方とが周方向に引っ掛かることにより、前記第一の部材と前記第三の部材とが一体的に回転し、
前記第二の区間では、前記引掛部と前記他方とが周方向に引っ掛からず、前記第二の部材と前記第三の部材との間の摩擦力により、前記第二の部材と前記第三の部材とが一体的に回転し、
前記第一の摩擦部材は、さらに、前記第一の摩擦面とは反対側を向き、前記第二の部材と前記第三の部材との相対的な回動に伴って摩擦トルクを生じる第三の摩擦面を有した、ダンパ装置。
【請求項2】
前記第二の部材と前記第三の部材とを前記第二の摩擦面で押し付ける第二の弾性部材を備えた、請求項に記載のダンパ装置。
【請求項3】
前記第二の弾性部材は、さらに、前記第二の部材と前記第三の部材とを前記第三の摩擦面で押し付ける、請求項に記載のダンパ装置。
【請求項4】
回転中心回りに回転可能な第一の部材と、
前記回転中心回りに回転可能な第二の部材と、
前記回転中心回りに、前記第一の部材と一体的に回転する第一の区間と、前記第二の部材と一体的に回転する第二の区間とで、回動可能に構成された第三の部材と、
前記回転中心回りに、前記第二の区間の前記第一の区間とは反対側の第三の区間で、一体的に回転する前記第一の部材、前記第二の部材、および前記第三の部材と相対的に回動可能に構成された、第四の部材と、
前記第一の部材と前記第二の部材との前記回転中心回りの相対的な回動に伴って弾性的に伸縮する第一の弾性部材と、
前記第二の部材と前記第四の部材との前記回転中心回りの相対的な回動に伴って弾性的に伸縮する第三の弾性部材と、
前記第一の部材と前記第二の部材との相対的な回動に伴って摩擦トルクを生じる第一の摩擦面を有した第一の摩擦部材と、
前記第二の部材と前記第三の部材との相対的な回動に伴って摩擦トルクを生じる第二の摩擦面を有した第二の摩擦部材と、
前記第一の部材と前記第四の部材との相対的な回動に伴って摩擦トルクを生じる第四の摩擦面を有した第三の摩擦部材と、
を備え
前記第一の区間では、前記第一の部材および前記第三の部材のうち一方に設けられた引掛部と他方とが周方向に引っ掛かることにより、前記第一の部材と前記第三の部材とが一体的に回転し、
前記第二の区間では、前記引掛部と前記他方とが周方向に引っ掛からず、前記第二の部材と前記第三の部材との間の摩擦力により、前記第二の部材と前記第三の部材とが一体的に回転し、
前記第一の摩擦部材は、さらに、前記第一の摩擦面とは反対側を向き、前記第二の部材と前記第三の部材との相対的な回動に伴って摩擦トルクを生じる第三の摩擦面を有した、ダンパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ダンパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転中心回りに回転する第一の部材に相当するドライブプレートと、第二の部材に相当するドリブンプレートとの間に、弾性部材と摩擦部材とが設けられたダンパ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第19616479号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のダンパ装置では、ドライブプレートとドリブンプレートとが相対的に回転する捩れ角の大きさにより摩擦トルクの小さい区間と大きい区間とが設けられる場合がある。そのような構成では、摩擦トルクの小さい区間と、摩擦トルクの大きい区間との間で遷移する場合に、摩擦トルクが急変すると、不都合な事象が生じ易くなる。例えば、この様なダンパ装置が車両に搭載されると、摩擦トルクが急変することによる車両に振動や騒音等が発生するので好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のダンパ装置は、例えば、第一の部材と、第二の部材と、第三の部材と、第一の弾性部材と、第一の摩擦部材と、第二の摩擦部材と、を備える。第一の部材は、回転中心回りに回転可能である。第二の部材は、回転中心回りに回転可能である。第三の部材は、回転中心回りに、第一の部材と一体的に回転する第一の区間と、第二の部材と一体的に回転する第二の区間とで、回動可能に構成される。第一の弾性部材は、第一の部材と第二の部材との回転中心回りの相対的な回動に伴って弾性的に伸縮する。第一の摩擦部材は、第一の部材と第二の部材との相対的な回動に伴って摩擦トルクを生じる第一の摩擦面を有する。第二の摩擦部材は、第二の部材と第三の部材との相対的な回動に伴って摩擦トルクを生じる第二の摩擦面を有する。上記第一の区間では、上記第一の部材および上記第三の部材のうち一方に設けられた引掛部と他方とが周方向に引っ掛かることにより、上記第一の部材と上記第三の部材とが一体的に回転し、上記第二の区間では、上記引掛部と上記他方とが周方向に引っ掛からず、上記第二の部材と上記第三の部材との間の摩擦力により、上記第二の部材と上記第三の部材とが一体的に回転し、上記第一の摩擦部材は、さらに、上記第一の摩擦面とは反対側を向き、上記第二の部材と上記第三の部材との相対的な回動に伴って摩擦トルクを生じる第三の摩擦面を有する。よって、実施形態のダンパ装置によれば、例えば、従来の摩擦トルクの大きい区間を、第一の摩擦面で生じる摩擦トルクの大きさと第二の摩擦面で生じる摩擦トルクの大きさの設定等によって、摩擦トルクの大きさが異なる第一の区間と第二の区間とに分けることができる。これにより、摩擦トルクの小さい区間から摩擦トルクの大きい区間へと遷移する場合にトルクの急変が生じたとしても変化は緩やかとなり、不都合な事象が抑制される。例えば、この様なダンパ装置を車両に適用すると、摩擦トルクが急変することによる車両に発生する振動や騒音等の発生を抑制し得る。また、引掛部と他方との引っ掛かりの有無を利用することにより、第一の区間と第二の区間とが、引掛部を第一の部材か第三の部材の一方に設けるという構成で、より簡素な構成で得られやすい。また、第一の摩擦部材に設けられた第三の摩擦面によって摺動抵抗が得られ、摺動抵抗で第二の部材と第三の部材とを相対回動させる。
【0007】
また、上記ダンパ装置では、例えば、上記第二の部材と上記第三の部材とを上記第二の摩擦面で押し付ける第二の弾性部材を備える。よって、実施形態のダンパ装置によれば、第二の摩擦面の摩擦力を第二の弾性部材により得られる。よって、実施形態のダンパ装置によれば、例えば、第二の弾性部材によって第二の摩擦面での摺動抵抗により、第二の部材と上記第三の部材とを摺動させる若しくは一体的に回転させやすい。
【0009】
また、上記ダンパ装置では、例えば、上記第二の部材と上記第三の部材とを上記第二の摩擦面で押し付ける第二の弾性部材を備え、上記第二の弾性部材は、さらに、上記第二の部材と上記第三の部材とを上記第三の摩擦面で押し付ける。よって、実施形態のダンパ装置によれば、例えば、第三の摩擦面の摩擦力が高まりやすい。よって、実施形態のダンパ装置によれば、例えば、第二の弾性部材によって、より効果的に摺動抵抗が得られやすい。
【0010】
また、実施形態のダンパ装置は、例えば、回転中心回りに回転可能な第一の部材と、上記回転中心回りに回転可能な第二の部材と、上記回転中心回りに、上記第一の部材と一体的に回転する第一の区間と、上記第二の部材と一体的に回転する第二の区間とで、回動可能に構成された第三の部材と、上記回転中心回りに、上記第二の区間の上記第一の区間とは反対側の第三の区間で、一体的に回転する上記第一の部材、上記第二の部材、および上記第三の部材と相対的に回動可能に構成された、第四の部材と、上記第一の部材と上記第二の部材との上記回転中心回りの相対的な回動に伴って弾性的に伸縮する第一の弾性部材と、上記第二の部材と上記第四の部材との上記回転中心回りの相対的な回動に伴って弾性的に伸縮する第三の弾性部材と、上記第一の部材と上記第二の部材との相対的な回動に伴って摩擦トルクを生じる第一の摩擦面を有した第一の摩擦部材と、上記第二の部材と上記第三の部材との相対的な回動に伴って摩擦トルクを生じる第二の摩擦面を有した第二の摩擦部材と、上記第一の部材と上記第四の部材との相対的な回動に伴って摩擦トルクを生じる第四の摩擦面を有した第三の摩擦部材と、を備える。上記第一の区間では、上記第一の部材および上記第三の部材のうち一方に設けられた引掛部と他方とが周方向に引っ掛かることにより、上記第一の部材と上記第三の部材とが一体的に回転し、上記第二の区間では、上記引掛部と上記他方とが周方向に引っ掛からず、上記第二の部材と上記第三の部材との間の摩擦力により、上記第二の部材と上記第三の部材とが一体的に回転し、上記第一の摩擦部材は、さらに、上記第一の摩擦面とは反対側を向き、上記第二の部材と上記第三の部材との相対的な回動に伴って摩擦トルクを生じる第三の摩擦面を有する。よって、実施形態のダンパ装置によれば、例えば、第一の摩擦面で生じる摩擦トルクの大きさ、第二の摩擦面で生じる摩擦トルクの大きさ、および第四の摩擦面で生じる摩擦トルクの大きさの設定等によって、小さい摩擦トルクが生じる第三の区間と、大きい摩擦トルクが生じる第一の区間との間に、これら二つの摩擦トルクの間の摩擦トルクが生じる第二の区間を設けることができる。よって、例えば、摩擦トルクの小さい第一の区間から摩擦トルクの大きい第三の区間へと遷移する場合に、摩擦トルクの急変が抑制される。また、引掛部と他方との引っ掛かりの有無を利用することにより、第一の区間と第二の区間とが、引掛部を第一の部材か第三の部材の一方に設けるという構成で、より簡素な構成で得られやすい。また、第一の摩擦部材に設けられた第三の摩擦面によって摺動抵抗が得られ、摺動抵抗で第二の部材と第三の部材とを相対回動させる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態のダンパ装置の軸方向から見た正面図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿った断面図である。
図3図3は、図2の一部が拡大して示された要所部分断面図である。
図4図4は、図1に示された第二の部材の正面図である。
図5図5は、図1に示された第三の部材の正面図である。
図6図6は、図1に示された第四の部材の正面図である。
図7図7は、ダンパ装置の入力側と出力側との捩れ角(角度差)とトルク差との関係を示す特性図である。
図8図8は、図7に示されたO状態でのダンパ部の正面図である。
図9図9は、図7に示されたA状態でのダンパ部の正面図である。
図10図10は、図7に示されたB状態でのダンパ部の正面図である。
図11図11は、図7に示されたC状態でのダンパ部の正面図である。
図12図12は、図7に示されたE状態でのダンパ部の正面図である。
図13図13は、図7に示されたF状態でのダンパ部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用、結果、および効果は、あくまで一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0013】
本実施形態のダンパ装置100は、例えば、不図示の動力装置としてのエンジンと、不図示の変速装置としてのトランスミッションとの間に位置される。ダンパ装置100は、駆動力としてのトルクや回転等の変動を緩和することができる。なお、ダンパ装置100は、エンジンとトランスミッションとの間には限らず、他の二つの回転要素間、例えば、エンジンとモータジェネレータとの間に設けることが可能であるし、ハイブリッド自動車等の種々の車両や、回転要素を有した機械等に設けることが可能である。なお、以下の説明では、特に言及しない限り、軸方向は回転中心Axの軸方向、径方向は回転中心Axの径方向、周方向は回転中心Axの周方向を示すものとする。回転中心Axは、回転軸や軸心等とも称されうる。また、本実施形態では、便宜上、図2の右側からの視線を正面視とし、図2の左側からの視線を背面視とする。
【0014】
ダンパ装置100は、回転中心Ax回りに回転して駆動力の変動を抑制する。ダンパ装置100は、車両等に用いることができる。図1,2に示されるように、ダンパ装置100は、全体としては、回転中心Axの軸方向に薄い扁平な円盤状に構成されている。
【0015】
ダンパ装置100は、円盤状のディスク部101と、ディスク部101の中にダンパ部102と、を有する。ディスク部101は、径方向に延在する壁部101aと、径方向に延在する先に覆部101bと、を有する。覆部101bは、フェイシングやパッド等とも称されうる。壁部101aは、円環状かつ板状に構成されている。覆部101bは、円環状かつ板状に構成され、壁部101aに対して回転中心Axの軸方向の一方側および他方側のそれぞれに、設けられている。二つの覆部101b,101bは、いずれも壁部101aの径方向外側の端部に位置されている。壁部101aと二つの覆部101b,101bとは、貫通するリベット等の結合具101cによって互いに結合されている。
【0016】
ダンパ部102は、ディスク部101の径方向の内側、すなわち回転中心Ax側に位置されている。ダンパ部102は、図3に示されるように、第一の部材1、第二の部材2、第三の部材3、ならびに第四の部材4と、第一の弾性部材5、第二の弾性部材6、第三の弾性部材7、ならびに第四の弾性部材14と、第一の摩擦部材8、第二の摩擦部材9、第三の摩擦部材15、第四の摩擦部材10、ならびに第五の摩擦部材16と、を有している。第一の部材1および第二の部材2は、回転中心Ax回りに回転可能に構成されている。本実施形態では、例えば、第一の部材1が入力側となるエンジンに接続され、第二の部材2が出力側となるトランスミッションに接続されている。ダンパ部102では、第一の弾性部材5あるいは第三の弾性部材7が、弾性的に伸縮することにより、トルク変動が緩和される。
【0017】
図2,3に示されるように、第一の部材1は、軸方向で一対となった二つの壁部11,12を有する。第一の部材1は、外側部材等とも称され、壁部11,12は、ドライブプレートや、アウタプレート、サイドプレート等とも称されうる。二つの壁部11,12は、軸方向に互いに離間している。本実施形態では、例えば、壁部11は、壁部12の軸方向の一方側、すなわち図2,3では左側に位置され、壁部12は、壁部11の軸方向の他方側、すなわち図2,3では右側に位置されている。壁部11,12は、それぞれ、回転中心Axと略直交する円環状かつ板状に構成されている。壁部11,12には、それぞれ、回転中心Axの周方向に間隔をあけて複数の開口部11a,11b,12aが設けられている。壁部11および壁部12は、図2の下側に示されるリベット等の結合具13によって互いに結合され、回転中心Ax回りに一体的に回転する。また、壁部11および壁部12は、結合具13によって、壁部101aに結合されている。すなわち、第一の部材1は、ディスク部101と回転中心Ax回りに一体的に回転する。壁部11の径方向の外側の領域と壁部12の径方向の外側の領域とが互いに結合され、壁部11の少なくとも径方向の内側の領域と壁部12の少なくとも径方向の内側の領域とが軸方向に互いに離間されている。第一の部材1は、例えば、金属材料で構成される。
【0018】
第二の部材2は、径方向に延在する壁部21を有する。第二の部材2は、内側部材等とも称され、壁部21は、ドリブンプレートや、インナプレート、センタプレート等とも称されうる。壁部21は、回転中心Axと略直交する円環状かつ板状に構成されている。壁部21は、壁部11と壁部12との間に位置され、壁部11および壁部12から軸方向に離間されている。また、図4に示されるように、壁部21は、内周部21aと、外周部21bと、を有する。壁部21や内周部21aには、回転中心Axの周方向に所定の間隔をあけて複数の開口部22,23,24,25,26が設けられている。開口部22および開口部23は、例えば、軸方向に沿って壁部21を貫通した貫通孔として構成されている。また、開口部24は、例えば、壁部21の開口部22の周縁部を切り欠いた切欠部として構成されている。すなわち、開口部24は、開口部22と連通している。また、開口部25および開口部26は、例えば、径方向の内側に向けて開口された凹部として構成されている。開口部26は、周方向に隣接する二つの開口部25,25の間に位置され、開口部25よりも周方向の幅が広くなっている。また、内周部21aは、開口部25および開口部26を構成する複数の面25a,25b,25cおよび面26a,26b,26cを有する。面25a,26aは、開口部25,26の周方向の一方側、すなわち図4では時計回り方向側の面であり、面25b,26bは、開口部25,26の周方向の他方側、すなわち図4では反時計回り方向側の面であり、面25c,26cは、面25a,26aと面25b,26bとに亘った面である。開口部26内には、第三の弾性部材7が配置され、面26a〜26cによって第三の弾性部材7が支持される。第二の部材2は、例えば、金属材料で構成される。
【0019】
第一の弾性部材5は、第一の部材1と第二の部材2との間に位置され、第一の部材1と第二の部材2との回転中心Ax回りの相対的な回動に伴って弾性的に伸縮し、トルク変動を吸収し緩和する。第一の弾性部材5は、例えば、金属材料で構成され、周方向に略沿って伸縮するコイルスプリングである。図1,2に示されるように、第一の弾性部材5は、互いに軸方向に重なり合った開口部11a,12a,22内に収容されている。このような構成で、第一の部材1の開口部11a,12aの周方向の一方側の縁部と第二の部材2の開口部22の周方向の他方側の縁部とが互いに近付く方向に相対的に回動すると、それら縁部によって第一の弾性部材5が弾性的に縮む。逆に、開口部11a,12a,22内で弾性的に縮んだ状態で、第一の部材1の開口部11a,12aの周方向の一方側の縁部と第二の部材2の開口部22の周方向の他方側の縁部とが互いに遠ざかる方向に相対的に回動すると、第一の弾性部材5は弾性的に伸びる。第一の弾性部材5は、弾性的に縮むことによりトルクを圧縮力として蓄え、弾性的に伸びることにより圧縮力をトルクとして放出する。ダンパ部102は、このようにして、第一の弾性部材5によってトルク変動を緩和することができる。
【0020】
次に、図2〜6が参照されながら、第三の部材3、第四の部材4、第二の弾性部材6、第三の弾性部材7、第四の弾性部材14、第一の摩擦部材8、第二の摩擦部材9、第三の摩擦部材15、第四の摩擦部材10、ならびに第五の摩擦部材16が説明される。第三の部材3は、図5に示されるように、円環状の壁部31と、壁部31から径方向の外側に延在する突出部32と、突出部32の周方向の側面に設けられる引掛部33と、を有する。第三の部材3は、中間部材等とも称されうる。また、壁部31は、ミドルプレートや基部等とも称され、突出部32は、アーム部等とも称され、引掛部33は、爪部やラッチ部等とも称されうる。壁部31は、回転中心Axを中心とするリング状に構成されている。図3に示されるように、壁部31は、第一の部材1の壁部12と第二の部材2の壁部21との間に位置され、それら壁部12,21から軸方向に離間されている。図5に示されるように、突出部32は、壁部31から径方向の外側に向けて突出した部分である。本実施形態では、複数の突出部32が、回転中心Axの周方向に互いに間隔をあけて設けられている。具体的には、二つの突出部32,32が周方向に互いに等間隔で、例えば、180°間隔で、径方向に相反する側に設けられている。引掛部33は、例えば、突出部32から軸方向の他方側、すなわち図3の右側に向けて突出した部分である。引掛部33は、突出部32のそれぞれに設けられている。図8に示されるように、引掛部33は、突出部32から壁部12の開口部12a内に突出している。すなわち、引掛部33は、壁部12の開口部12aの周縁部と軸方向で重なった部分を有している。第三の部材3は、例えば、金属材料で構成される。
【0021】
第四の部材4は、図3,6に示されるように、筒状部41と、筒状部41から径方向へと延在する壁部42と、壁部42の先に突出部43と、を有する。第四の部材4は、中心部材等とも称されうる。また、筒状部41は、基部やハブ等とも称され、壁部42は、張出部等とも称されうる。筒状部41は、回転中心Axを中心とする円筒状に構成されている。壁部42は、筒状部41から径方向の外側に向けて突出し、回転中心Axと略直交する略円環状かつ板状に構成されている。図6に示されるように、壁部42には、回転中心Axの周方向に間隔をあけて複数の開口部42aが設けられている。具体的には、本実施形態では、二つの開口部42a,42aが設けられており、これら二つの開口部42a,42aは、径方向の外側に向けて開口された凹部として構成されている。壁部42は、開口部42aを構成する複数の面42b,42c,42dを有する。面42bは、開口部42aの周方向の一方側、すなわち図6では時計回り方向側の面であり、面42cは、開口部42aの周方向の他方側、すなわち図6では反時計回り方向側の面であり、面42dは、面42bと面42cとに亘った面である。面42cは、図4,8に示される第二の部材2の面26bの近傍に位置され、開口部26から径方向の内側に出た第三の弾性部材7の端部と対向する。突出部43は、壁部42から径方向の外側に向けて突出した部分である。本実施形態では、複数の突出部43が、回転中心Axの周方向に間隔をあけて設けられている。突出部43は、複数の面43a,43b,43cを有する。面43aは、周方向の一方側、すなわち図6では時計回り方向側の面であり、面43bは、周方向の他方側、すなわち図6では反時計回り方向側の面であり、面43cは、面43aと面43bとに亘った面である。突出部43は、図4,8に示される第二の部材2の開口部25内に配置され、面43aと面25aとが互いに対向し、面43bと面25bとが互いに対向し、面43cと面25cとが互いに対向する。第四の部材4は、例えば、金属材料で構成される。
【0022】
第三の弾性部材7は、図2,3に示されるように、第二の部材2と第四の部材4との間に位置され、第二の部材2と第四の部材4との回転中心Ax回りの相対的な回動に伴って弾性的に伸縮する。第三の弾性部材7は、例えば、金属材料で構成され、周方向に略沿って伸縮するコイルスプリングである。図4,6,8に示されるように、第三の弾性部材7は、互いに径方向に対向した開口部26,42a内に収容されている。このような構成で、例えば、開口部26の周方向の一方側の面26aと開口部42aの周方向の他方側の面42cとが互いに近付く方向に相対的に回動すると、それら面26a,42cによって第三の弾性部材7が弾性的に縮む。逆に、開口部26,42a内で弾性的に縮んだ状態で、開口部26の周方向の一方側の面26aと開口部42aの周方向の他方側の面42cとが互いに遠ざかる方向に相対的に回動すると、第三の弾性部材7は弾性的に伸びる。第三の弾性部材7は、弾性的に縮むことによりトルクを圧縮力として蓄え、弾性的に伸びることにより圧縮力をトルクとして放出する。ダンパ部102は、このようにして、第三の弾性部材7によってもトルク変動を緩和することができる。
【0023】
第一の摩擦部材8は、図3に示されるように、第一の部分81と、第二の部分82と、を有する。第一の部分81は、基部等とも称され、第二の部分82は、突出部等とも称されうる。第一の部分81は、回転中心Axと略直交する円環状かつ板状に構成されている。第一の部分81は、第一の部材1の壁部12と第三の部材3の壁部31との間に挟まれている。また、第一の部分81は、摩擦面としての第一の摩擦面81aと、摩擦面としての第三の摩擦面81bと、を有する。第一の摩擦面81aは、壁部12と対向する面であり、壁部12と接触する面であり、壁部12と擦れる面である。また、第三の摩擦面81bは、壁部31と対向する面であり、壁部31と接触する面であり、壁部31と擦れる面である。第二の部分82は、第一の部分81の径方向の外側の端部に位置され、当該端部から軸方向の一方側、すなわち図3では左側へ向けて突出している。本実施形態では、図4に示される第二の部材2の開口部23に対応して、複数の第二の部分82が回転中心Axの周方向に間隔をあけて設けられうる。第二の部分82は、それぞれ、開口部23に径方向に若干の隙間を設けて挿入され、図3に示される第二の弾性部材6によって、軸方向に移動可能となり、壁部12側に付勢されている。これにより、第一の摩擦部材8が第二の部材2と少なくとも周方向に一体化されている。すなわち、第一の摩擦部材8は、第二の部材2と回転中心Ax回りに一体的に回転する。第一の摩擦部材8は、例えば、合成樹脂材料で構成される。
【0024】
第二の摩擦部材9は、第一の部分91と、第二の部分92と、を有する。第一の部分91は、基部等とも称され、第二の部分92は、突出部等とも称されうる。第一の部分91は、回転中心Axと略直交する円環状かつ板状に構成されている。第一の部分91は、第二の弾性部材6を介して、第二の部材2の壁部21と第三の部材3の壁部31との間に挟まれている。また、第一の部分91は、摩擦面としての第二の摩擦面91aを有する。第二の摩擦面91aは、壁部31と対向する面であり、壁部31と接触する面であり、壁部31と擦れる面である。第二の部分92は、第一の部分91の径方向の外側の端部に位置され、当該端部から軸方向の一方側、すなわち図3では左側へ向けて突出している。本実施形態では、図4に示される第二の部材2の開口部24に対応して、複数の第二の部分92が回転中心Axの周方向に間隔をあけて設けられうる。第二の部分92は、それぞれ、図3に示される第二の弾性部材6の壁部12側への付勢力により軸方向の移動ができるよう開口部24に挿入される。これにより、第二の摩擦部材9が第二の部材2と少なくとも周方向に一体化されている。すなわち、第二の摩擦部材9は、第二の部材2と回転中心Ax回りに一体的に回転する。なお、第二の摩擦部材9は、第二の部材2の開口部22内に配置される第一の弾性部材5によって、第二の部分92の径方向の外側への移動が抑制されうる。第二の摩擦部材9は、例えば、合成樹脂材料で構成される。
【0025】
第四の摩擦部材10は、第一の部分10aと、第二の部分10bと、を有する。第一の部分10aは、基部等とも称され、第二の部分10bは、突出部等とも称されうる。第一の部分10aは、回転中心Axと略直交する円環状かつ板状に構成されている。第一の部分10aは、第一の部材1の壁部11と第二の部材2の壁部21との間に挟まれている。また、第一の部分10aは、摩擦面としての第五の摩擦面10cを有する。第五の摩擦面10cは、壁部21と対向する面であり、壁部21と接触する面であり、壁部21と摺れる面である。第二の部分10bは、第一の部分10aの径方向の外側の端部に位置され、当該端部から軸方向の一方側、すなわち図3では左側へ向けて突出している。本実施形態では、壁部11の開口部11bに対応して、複数の第二の部分10bが回転中心Axの周方向に間隔をあけて設けられうる。第二の部分10bは、それぞれ、開口部11bに第五の摩擦面10cの摩耗に伴い、軸方向への移動が可能となるように挿入される。これにより、第四の摩擦部材10が壁部11と少なくとも周方向に一体化されている。すなわち、第四の摩擦部材10は、第一の部材1と回転中心Ax回りに一体的に回転する。第四の摩擦部材10は、例えば、合成樹脂材料で構成される。
【0026】
第二の弾性部材6は、第二の部材2の壁部21と第二の摩擦部材9の第一の部分91との間に位置され、これら壁部21および第一の部分91に、互いに離間する方向の弾性力を与えている。また、第二の弾性部材6は、第一の摩擦面81a、第三の摩擦面81b、第二の摩擦面91a、および第五の摩擦面10cと、軸方向に重なっている。すなわち、第二の弾性部材6は、第三の部材3と第一の摩擦部材8とを間に挟んだ状態で第二の摩擦部材9を第一の部材1の壁部12に押し付けるとともに、第四の摩擦部材10を間に挟んだ状態で第二の部材2を第一の部材1の壁部11に押し付けている。このように、第二の弾性部材6は、第一の摩擦面81a、第三の摩擦面81b、第二の摩擦面91a、および第五の摩擦面10cのそれぞれに、摺動抵抗を与えることができる。第二の弾性部材6は、例えば、金属材料で構成された円環状のコーンスプリングである。
【0027】
第三の摩擦部材15は、筒状部15aと、突出部15bと、摩擦面としての第四の摩擦面15cと、を有する。筒状部15aは、回転中心Axを中心とする円筒状に構成されている。突出部15bは、筒状部15aから径方向の外側に向けて突出し、回転中心Axと略直交する円環状かつ板状に構成されている。第四の摩擦面15cは、第四の部材4の壁部42と対向している。そして、第四の摩擦面15cが壁部42と接触した状態で、突出部15bが第四の弾性部材14を介して壁部12と壁部42との間に挟まれている。筒状部15aは、壁部12と筒状部41との間の開口部30から露出されている。第三の摩擦部材15は、例えば、合成樹脂材料で構成される。
【0028】
第五の摩擦部材16は、筒状部16aと、突出部16bと、摩擦面としての第六の摩擦面16cと、を有する。筒状部16aは、回転中心Axを中心とする円筒状に構成されている。突出部16bは、筒状部16aから径方向の外側に向けて突出し、回転中心Axと略直交する円環状かつ板状に構成されている。第六の摩擦面16cは、第四の部材4の壁部42と対向している。そして、第六の摩擦面16cが壁部42と接触した状態で、突出部16bが壁部11と壁部42との間に挟まれている。筒状部16aは、壁部11と筒状部41との間の開口部40から露出されている。第五の摩擦部材16は、例えば、合成樹脂材料で構成される。
【0029】
第四の弾性部材14は、壁部12と第三の摩擦部材15との間に位置され、壁部12および第三の摩擦部材15に、互いに離間する方向の弾性力を与えている。また、第四の弾性部材14は、第四の摩擦面15c、および第六の摩擦面16cと、軸方向に重なっている。すなわち、第四の弾性部材14は、壁部42と第五の摩擦部材16とを間に挟んだ状態で第三の摩擦部材15を壁部11に押し付けている。このように、第四の弾性部材14は、第四の摩擦面15c、および第六の摩擦面16cのそれぞれに、摺動抵抗を与えることができる。第四の弾性部材14は、例えば、金属材料で構成された円環状のコーンスプリングである。
【0030】
次に、図7〜13が参照されながら、第一の部材1、第二の部材2、第三の部材3、ならびに第四の部材4の相対的な回動状態とともに、それに伴う摩擦トルクの変化が説明される。摩擦トルクは、摺動トルクや抵抗トルク等とも称されうる。図7には、入力側と出力側との捩れ角とトルク差との関係の一例が示されている。図7に示す特性図の横軸は捩れ角、縦軸はトルク差である。図7の横軸は、第一の部材1に対する第四の部材4の相対的な回動角度、すなわち捩れ角である。図7では、横軸の右側へ向かうほど第一の部材1に対する第四の部材4の時計回り方向の回動角度が大きい。図7の縦軸は、第一の部材1に対する第四の部材4の相対的なトルク差である。図7では、縦軸の上側へ向かうほど時計回り方向のトルク差が大きい。
【0031】
図8には、第一の部材1と第四の部材4との間にトルク差が生じていない状態が示されている。なお、図8の状態は、図7のO状態に相当する。O状態は、初期状態や、自由状態等とも称されうる。このO状態では、図8に示されるように、第二の部材2の開口部25と第四の部材4の突出部43とは接触していない。具体的には、開口部25の面25aと突出部43の面43aとの間、ならびに開口部25の面25bと突出部43の面43bとの間のそれぞれに、隙間が形成されている。また、第四の部材4は、開口部42aの面42b,42cによって、初期状態としての自由長の第三の弾性部材7と接触している。
【0032】
図9には、図8の状態から、第四の部材4が、第一の部材1に対して時計回り方向に所定角度回動した状態が示されている。なお、図9の状態は、図7のA状態に相当する。O状態とA状態との間、すなわち図7の第三の区間S3では、開口部42aの面42cと開口部26の面26aとの間で第三の弾性部材7が弾性的に縮む。ここで、図7のグラフの傾きは、弾性部材のバネ定数に対応する。第三の弾性部材7のバネ定数は、例えば、第一の弾性部材5等の他の弾性部材のバネ定数よりも小さい。よって、第三の区間S3では、比較的小さいトルク差の変化に対応して、第一の部材1と第四の部材4とは、比較的大きく捩れる。また、第三の区間S3では、図3に示される第四の弾性部材14や第二の弾性部材6等の押圧力によって生じる摩擦力によって、第一の部材1と第二の部材2と第三の部材3とは一体的に回転する。よって、第三の区間S3では、第四の部材4の、第一の部材1、第二の部材2、第三の部材3、第一の摩擦部材8、第二の摩擦部材9、第三の摩擦部材15、第四の摩擦部材10、および第五の摩擦部材16に対する回動によって、図3に示される壁部42と第四の摩擦面15cとが摺動し、壁部42と第六の摩擦面16cとが摺動する。このように、二つの摩擦面としての第四の摩擦面15cおよび第六の摩擦面16cが摺動することによって、図7に示される比較的小さい第一の摩擦トルクT1が生じる。なお、図8,9に示されるように、第三の区間S3では、第三の部材3の引掛部33と、壁部12の開口部12aの縁部12bとの間に、隙間δ(δ>0)が設けられている。
【0033】
図10には、図9の状態から、第四の部材4が、第一の部材1に対して時計回り方向に所定角度回動した状態が示されている。なお、図10の状態は、図7のB状態に相当する。A状態では、図9に示されるように、開口部25の面25aと突出部43の面43aとが接触する。面25aと面43aとの接触により、第四の部材4の第二の部材2に対する時計回り方向への相対移動が制限される。すなわち、第四の部材4がA状態からさらに時計回り方向へ回動した状態では、第二の部材2と第四の部材4とは一体的に回転する。また、A状態とB状態との間、すなわち図7の第二の区間S2では、図3に示される第二の弾性部材6の押圧力によって生じる第二の摩擦部材9と壁部12との間の摩擦力ならびに第二の部材2と壁部11との間の摩擦力によって、第二の部材2と第三の部材3とは一体的に回転する。よって、第二の区間S2では、第四の部材4、第二の部材2、第三の部材3、第一の摩擦部材8、および第二の摩擦部材9の、第一の部材1、第三の摩擦部材15、第四の摩擦部材10、および第五の摩擦部材16に対する一体的な回動によって、第一の摩擦面81aと壁部12とが摺動し、第五の摩擦面10cと壁部21とが摺動し、壁部42と第四の摩擦面15cとが摺動し、壁部42と第六の摩擦面16cとが摺動する。このように、四つの摩擦面としての第一の摩擦面81a、第五の摩擦面10c、第四の摩擦面15c、ならびに第六の摩擦面16cが摺動することによって、図7に示される第一の摩擦トルクT1よりも大きな第二の摩擦トルクT2が生じる。なお、第二の区間S2では、第二の部材2と第四の部材4とが一体的に回動するため、第三の弾性部材7は、図9で縮んだ状態が維持され、さらには縮まない。また、図9,10に示されるように、B状態に近付くほど、隙間δは0に近付く。
【0034】
図11には、図10の状態から、第四の部材4が、第一の部材1に対して時計回り方向に所定角度回動した状態が示されている。なお、図11の状態は、図7のC状態に相当する。B状態では、図10に示されるように、第三の部材3の引掛部33が、壁部12の開口部12aの縁部12bに引っ掛かる(隙間δ=0)。引掛部33と縁部12bとの接触により、第三の部材3の第一の部材1に対する時計回り方向への相対移動が制限される。すなわち、第四の部材4がB状態からさらに時計回り方向へ回動した状態では、第三の部材3は第四の部材4には追従せず、第一の部材1と一体的に回転する。また、B状態とC状態との間、すなわち図7の第一の区間S1では、図11に示される第一の部材1の開口部12a,11aの縁部12bと第二の部材2の開口部22の縁部22aとの間で第一の弾性部材5が弾性的に縮む。すなわち、第一の区間S1では、第四の部材4、第二の部材2、第一の摩擦部材8、および第二の摩擦部材9の、第一の部材1、第三の部材3、第三の摩擦部材15、第四の摩擦部材10、および第五の摩擦部材16に対する一体的な回動によって、図3に示される第一の摩擦面81aと壁部12とが摺動し、第五の摩擦面10cと壁部21とが摺動し、第三の摩擦面81bと壁部31とが摺動し、第二の摩擦面91aと壁部31とが摺動し、壁部42と第四の摩擦面15cとが摺動し、壁部42と第六の摩擦面16cとが摺動する。このように、六つの摩擦面としての第一の摩擦面81a、第三の摩擦面81b、第二の摩擦面91a、第五の摩擦面10c、第四の摩擦面15c、および第六の摩擦面16cが摺動することによって、図7に示される第一の摩擦トルクT1および第二の摩擦トルクT2よりも大きな第三の摩擦トルクT3が生じる。なお、第一の区間S1でも、第三の弾性部材7は、図9で縮んだ状態が維持される。
【0035】
図12には、図8の状態から、第四の部材4が、第一の部材1および第二の部材2に対して反時計回り方向に所定角度回動した状態が示されている。なお、図12の状態は、図7のE状態に相当する。O状態とE状態との間では、図12に示される開口部42aの面42bと開口部26の面26bとの間で第三の弾性部材7が弾性的に縮む。また、O状態とE状態との間では、第四の部材4の、第一の部材1、第二の部材2、第三の部材3、第一の摩擦部材8、第二の摩擦部材9、第三の摩擦部材15、第四の摩擦部材10、および第五の摩擦部材16に対する回動によって、図3に示される壁部42と第四の摩擦面15cとが摺動し、壁部42と第六の摩擦面16cとが摺動する。このように、二つの摩擦面としての第四の摩擦面15cおよび第六の摩擦面16cが摺動することによって、図7に示される比較的小さい第四の摩擦トルクT4が生じる。
【0036】
図13には、図12の状態から、第四の部材4が、第一の部材1に対して反時計回り方向に所定角度回動した状態が示されている。なお、図13の状態は、図7のF状態に相当する。E状態では、図12に示されるように、開口部25の面25bと突出部43の面43bとが接触する。面25bと面43bとの接触により、第四の部材4の第二の部材2に対する反時計回り方向への相対移動が制限される。すなわち、第四の部材4がE状態からさらに反時計回り方向へ回動した状態では、第二の部材2と第四の部材4とは一体的に回転する。また、E状態とF状態との間では、図13に示される第一の部材1の開口部12a,11aの縁部12cと第二の部材2の開口部22の縁部22bとの間で第一の弾性部材5が弾性的に縮む。なお、縁部12cは、開口部12aの縁部12bとは周方向の反対側の縁部であり、縁部22bは、開口部22の縁部22aとは周方向の反対側の縁部である。また、E状態とF状態との間では、図3に示される第二の弾性部材6の押圧力によって生じる第二の摩擦部材9と壁部12との間の摩擦力ならびに第二の部材2と壁部11との間の摩擦力によって、第二の部材2と第三の部材3とは一体的に回転する。よって、E状態とF状態との間では、第四の部材4、第二の部材2、第三の部材3、第一の摩擦部材8、および第二の摩擦部材9の、第一の部材1、第三の摩擦部材15、第四の摩擦部材10、および第五の摩擦部材16に対する一体的な回動によって、第一の摩擦面81aと壁部12とが摺動し、第五の摩擦面10cと壁部21とが摺動し、壁部42と第四の摩擦面15cとが摺動し、壁部42と第六の摩擦面16cとが摺動する。このように、四つの摩擦面としての第一の摩擦面81a、第五の摩擦面10c、第四の摩擦面15c、および第六の摩擦面16cが摺動することによって、図7に示される第四の摩擦トルクT4よりも大きな第五の摩擦トルクT5が生じる。なお、E状態とF状態との間では、第二の部材2と第四の部材4とが一体的に回動するため、第三の弾性部材7は、図12で縮んだ状態が維持され、さらには縮まない。
【0037】
以上、説明したように、本実施形態では、例えば、小さい摩擦トルクとしての第一の摩擦トルクT1が生じる第三の区間S3と、大きい摩擦トルクとしての第三の摩擦トルクT3が生じる第一の区間S1との間に、これら二つの摩擦トルクの間の摩擦トルクとしての第二の摩擦トルクT2が生じる第二の区間S2が設けられている。よって、本実施形態によれば、例えば、第三の区間S3から第一の区間S1への遷移時の摩擦トルクの段差がより小さくなりやすい。よって、例えば、第一の区間S1と第三の区間S3との間での状態の遷移において、摩擦トルクの急変が抑制される。よって、例えば、角速度の急変、ひいては、振動や騒音が、抑制されやすい。なお、本実施形態では、小さい摩擦トルクが生じる第三の区間S3が設けられた場合が例示されたが、これに限定されず、例えば、第三の区間S3が設けられなくてもよいし、第三の区間S3の摩擦トルクが0であってもよい。また、本実施形態では、第一の摩擦面81a、第二の摩擦面91a、第三の摩擦面81b、第四の摩擦面15c、第五の摩擦面10c、および第六の摩擦面16cが摺動する数の設定によって、第一の摩擦トルクT1、第二の摩擦トルクT2、および第三の摩擦トルクT3の大きさを設定したが、これに限定されず、例えば、第一の摩擦部材8、第二の摩擦部材9、第三の摩擦部材15、第四の摩擦部材10、および第五の摩擦部材16の材質や、面荒度、接触面積の設定等によって、第一の摩擦トルクT1、第二の摩擦トルクT2、および第三の摩擦トルクT3の大きさを設定してもよい。また、本実施形態では、第一の摩擦トルクT1を生じさせる第四の摩擦面15cおよび第六の摩擦面16cが、回転中心Axの近くに位置された第三の摩擦部材15および第五の摩擦部材16に設けられているため、第四の摩擦面15cおよび第六の摩擦面16cのモーメントアームを短くでき、小さい摩擦トルクが比較的簡単に得られやすいという利点がある。
【0038】
また、本実施形態では、例えば、引掛部33と第一の部材1とが周方向に引っ掛かることによって第一の部材1と第三の部材3とが一体的に回転し、引掛部33と第一の部材1とが周方向に引っ掛からず、第二の部材2と第三の部材3との間の摩擦力によって第二の部材2と第三の部材3とが一体的に回転する。よって、本実施形態によれば、例えば、引掛部33と第一の部材1との引っ掛かりの有無を利用することにより、第一の区間S1と第二の区間S2とが、より簡素な構成で得られやすい。
【0039】
また、本実施形態では、例えば、第一の摩擦部材8は、第一の摩擦面81aに加えて、第二の部材2と第三の部材3との相対的な回動に伴って摺動する第三の摩擦面81bを有する。よって、本実施形態によれば、例えば、第一の摩擦部材8に設けられた第三の摩擦面81bによって摺動抵抗が得られ、ひいては、振動や騒音がより抑制されやすい。
【0040】
また、本実施形態では、例えば、第一の摩擦面81a、第二の摩擦面91a、ならびに第三の摩擦面81bを押し付ける第二の弾性部材6を備える。よって、本実施形態によれば、第二の弾性部材6によって、第一の摩擦面81a、第二の摩擦面91a、および第三の摩擦面81bでの摺動抵抗が、より効果的に得られやすい。
【0041】
また、本実施形態では、例えば、第二の弾性部材6と、第一の摩擦面81a、第二の摩擦面91a、ならびに第三の摩擦面81bとが軸方向に少なくとも部分的に重なっている。よって、第二の弾性部材6による第一の摩擦面81a、第二の摩擦面91a、および第三の摩擦面81bでの押圧力、ひいては摺動抵抗がより一層高まりやすい。
【0042】
上記した構成において、付記項を以下に示す。
【0043】
ダンパ装置は、回転中心で回転する一対の外側部材と、前記外側部材の内部に設けられ、前記外側部材に対して回転する内側部材と、前記外側部材と一体的に回転する第一の区間と、前記内側部材と一体的に回転する第二の区間で回動する中間部材と、前記外側部材と前記内側部材との間に設けられ、前記外側部材と前記内側部材との相対回動に伴い伸縮し、前記外側部材と前記内側部材との間でのトルク変動を抑える第一の弾性部材と、前記外側部材と前記中間部材との間に設けられ、前記外側部材と前記内側部材との相対回動に伴って、前記外側部材との間で摩擦トルクを生じる第一の摩擦面を有した第一の摩擦部材と、前記内側部材と前記中間部材との間に設けられ、前記外側部材と前記内側部材との相対回動に伴って、前記中間部材との間で摩擦トルクを生じる第二の摩擦面を有した第二の摩擦部材と、を備える。
【0044】
また、前記ダンパ装置では、前記内側部材の内部に設けられ、前記内側部材の回動によって回転する中心部材と、前記外側部材と前記内側部材との間に第四の摩擦部材と、を備える。
【0045】
また、前記ダンパ装置では、前記外側部材と前記中心部材との間に設けられた第三の摩擦部材と、前記第三の摩擦部材と前記外側部材との間に設けられ、第三の摩擦部材を前記中心部材へと付勢する第四の弾性部材を備える。
【0046】
また、前記ダンパ装置では、前記外側部材と前記中心部材とが回転中心で捩れた場合、前記中心部材と前記第三の摩擦部材との間の第四の摩擦面で摩擦トルクを生じ摺動する(図7に示すO−A領域)。
【0047】
また、前記ダンパ装置では、前記外側部材と前記中心部材とが回転中心で捩れ、前記中心部材と前記第三の摩擦部材が摺動する捩れ角以上になった場合、前記内側部材と前記第四の摩擦部材は摺動する(A−B領域)。
【0048】
また、前記ダンパ装置では、前記外側部材と前記第一の摩擦部材は摺動するよりも大きな捩れ角となった場合、前記中間部材と前記第一の摩擦部材は摺動する(B−C領域)。
【0049】
また、前記ダンパ装置では、前記外側部材と前記第一の摩擦部材は摺動するよりも大きな捩れ角となった場合、前記中間部材と前記第二の摩擦部材は摺動する(B−C領域)。
【0050】
上記した構成によれば、複数の第一から第四の摩擦部材を、外側部材、内側部材、中間部材および中心部材に対して、図3に示す構成の如く設けることで、摺動抵抗が得られ、ひいては、振動や騒音がより抑制されやすい。
【0051】
以上、本発明の実施形態を例示したが、上記実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0052】
1…第一の部材、2…第二の部材、3…第三の部材、4…第四の部材、5…第一の弾性部材、6…第二の弾性部材、7…第三の弾性部材、8…第一の摩擦部材、9…第二の摩擦部材、15…第三の摩擦部材、15c…第四の摩擦面、33…引掛部、81a…第一の摩擦面、81b…第三の摩擦面、91a…第二の摩擦面、S1…第一の区間、S2…第二の区間、S3…第三の区間、T1…摩擦トルク(第一の摩擦トルク)、T2…摩擦トルク(第二の摩擦トルク)、T3…摩擦トルク(第三の摩擦トルク)、100…ダンパ装置、Ax…回転中心、δ…隙間。
図1
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