(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6292312
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】回転機及び回転機の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 19/10 20060101AFI20180305BHJP
H02K 3/28 20060101ALI20180305BHJP
H02K 15/085 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
H02K19/10 A
H02K3/28 M
H02K15/085
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-555405(P2016-555405)
(86)(22)【出願日】2015年10月23日
(86)【国際出願番号】JP2015079976
(87)【国際公開番号】WO2016063976
(87)【国際公開日】20160428
【審査請求日】2017年3月9日
(31)【優先権主張番号】特願2014-217020(P2014-217020)
(32)【優先日】2014年10月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】遠嶋 成文
(72)【発明者】
【氏名】軸丸 武弘
【審査官】
遠藤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−220093(JP,A)
【文献】
特開2000−324739(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/141830(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 19/10
H02K 3/28
H02K 15/085
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状のヨーク部と、径方向内側に突出しかつ周方向に配列される複数の突極と、前記突極に設けられるコイルとを有する環状のステータを備え、前記突極の周面が前記突極の先端に向けて窄むテーパ面である回転機であって、
前記コイルは、
前記突極のテーパ面に沿って傾斜する内周面及び前記ステータの径方向内側に向けて傾斜する外周面を有する第1コイルと、
前記第1コイルが設けられる前記突極に隣り合う前記突極に設けられ、前記突極のテーパ面に沿って傾斜する内周面及び前記ステータの径方向外側に向けて傾斜された外周面を有する第2コイルと
を備える回転機。
【請求項2】
隣り合う前記第1コイルの前記外周面と前記第2コイルの前記外周面とが前記ステータの径方向の全域で当接されている請求項1記載の回転機。
【請求項3】
前記第1コイルの巻線の巻き方向と直交する断面の形状と、前記第2コイルの巻線の巻き方向と直交する断面での形状とが、それぞれ台形である請求項1または2記載の回転機。
【請求項4】
前記第1コイルの巻線の巻き方向と直交する断面における断面積と、前記第2コイルの巻線の巻き方向と直交する断面における断面積とが、同一である請求項1〜3いずれか一項に記載の回転機。
【請求項5】
前記巻線は、前記突極の前記テーパ面に沿ってターン毎の前記巻線が互いに密接するように、且つ、前記突極が形成されていない前記ヨーク部の内周面に沿ってターン毎の前記巻線が互いに密接するように、整列巻きされている請求項1記載の回転機。
【請求項6】
円環状のヨーク部と、径方向内側に突出しかつ周方向に配列される複数の突極と、前記突極に設けられるコイルとを有する環状のステータを備え、前記突極の周面が前記突極の先端に向けて窄むテーパ面である回転機であって、前記コイルは、前記突極のテーパ面に沿って傾斜する内周面及び前記ステータの径方向内側に向けて傾斜された外周面を有する第1コイルと、前記第1コイルが設けられる前記突極に隣り合う前記突極に設けられ、前記突極のテーパ面に沿って傾斜する内周面及び前記ステータの径方向外側に向けて傾斜された外周面を有する第2コイルと、を備える回転機の製造方法であって、
巻線を複数回に渡り巻回することにより、前記第1コイルと、前記第2コイルとを成型する巻線工程と、
前記巻線工程において成型された前記第1コイル及び前記第2コイルを圧縮成型するプレス工程と、
前記プレス工程において圧縮成型された前記第1コイル及び前記第2コイルを前記突極に取り付ける組立工程と
を有する回転機の製造方法。
【請求項7】
前記巻線工程では、前記突極の前記テーパ面を想定し、前記テーパ面に沿ってターン毎の前記巻線が互いに密接するように、且つ、前記突極が形成されていない前記ヨーク部の内周面を想定し、前記内周面に沿って前記ターン毎の前記巻線が互いに密接するように、巻線を整列巻きする請求項6記載の回転機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転機及び回転機の製造方法に関するものである。本願は、2014年10月24日に日本に出願された特願2014−217020号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に示すように、モータ等の回転機においては、先端に向けて窄むように周面がテーパ面とされた突極が採用される場合がある。このような形状の突極を用いることにより、磁気飽和を抑止し、高出力時であってもモータ効率が低下することを抑止することができる。また、特許文献2は、モータの固定子において、コイルは、素線から成型された矩形断面の平角導体をエッジワイズ曲げして螺旋状に巻回することにより形成されており、この平角導体は、巻回された際にターン毎に矩形断面の長辺と短辺の長さが異なるように予め段付き形状に成型されていることを開示している。このような形状により、スロットに対する第1のコイルと第2のコイルの占積率を高くすることができる。また、特許文献3〜4にも、背景技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2012/137302号
【特許文献2】日本国特開2008−167593号
【特許文献3】日本国特開平11−032457号
【特許文献4】日本国特開2000−041365号
【特許文献5】日本国特開平09−308142号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1つのステータには、複数のコイルが設けられる。通常、これらのコイルは、同一形状を有している。占積率を最大にするようにコイルを使用すると、一般的には、このような同一形状のコイルは、隣のコイルに当接するように設けられる。
【0005】
しかしながら、ステータの径方向内側に向けて突出しかつ周面がテーパ面である突極に、同一形状のコイルを設ける場合には、突極と突極との間に巻線の存在しないデッドスペースが生じる。より詳説すると、ステータの組立て時において、周方向に設けられた複数の突極に順次成型されたコイルを取り付けるときに、コイルはステータの径方向に向かう突極の中心軸に沿って突極に差し込まれる。このとき、先に取り付けられたコイルの外周面のステータ内側に近い端部に、後から取り付けられるコイルの外周面のステータ外側に近い端部が干渉することを防止するためには、コイルのステータ外側に近い端部の径を縮小する必要がある。この結果、隣り合うコイル同士の間にデッドスペースが生じる。
【0006】
本開示は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、径方向内側に向けて突出する突極を有するステータを備える回転機において、コイルの占積率を向上させて性能の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の第1の態様は、円環状のヨーク部と、径方向内側に突出しかつ周方向に配列される複数の突極と、突極に設けられるコイルとを有する環状のステータを備え、突極の周面が突極の先端に向けて窄むテーパ面である回転機である。コイルは、突極のテーパ面に沿って傾斜する内周面及びステータの径方向内側に向けて傾斜する外周面を有する第1コイルと、第1コイルが設けられる突極に隣り合う突極に設けられ、突極のテーパ面に沿って傾斜する内周面及びステータの径方向外側に向けて傾斜された外周面を有する第2コイルと、を備える。
【0008】
本開示の第2の態様は、円環状のヨーク部と、径方向内側に突出しかつ周方向に配列される複数の突極と、突極に設けられるコイルとを有する環状のステータを備え、突極の周面が突極の先端に向けて窄むテーパ面である回転機であって、コイルは、突極のテーパ面に沿って傾斜する内周面及びステータの径方向内側に向けて傾斜された外周面を有する第1コイルと、第1コイルが設けられる突極に隣り合う突極に設けられ、突極のテーパ面に沿って傾斜する内周面及びステータの径方向外側に向けて傾斜された外周面を有する第2コイルと、を備える、回転機の製造方法である。この回転機の製造方法は、巻線を複数回に渡り巻回することにより、第1コイルと、第2コイルと、を成型する巻線工程と、巻線工程において成型されたコイルを圧縮成型するプレス工程と、プレス工程において圧縮成型された上記コイルを突極に取り付ける組立工程と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の回転機によれば、コイルは、突極のテーパ面に沿って傾斜する内周面及びステータの径方向内側に向けて傾斜する外周面を有する第1コイルと、突極のテーパ面に沿って傾斜する内周面及びステータの径方向外側に向けて傾斜された外周面を有する第2コイルと、を備えている。また、第1コイルと第2コイルとが、ステータの周方向において、複数の突極に交互に設けられている。このような回転機によれば、先に第1コイルを突極に取り付けると、第1コイルの外周面がステータの径方向外側に向けて傾斜されているため、第1コイルの外周面のステータの内側に近い端部が突極に寄せて配置される。これにより、第1コイルの外周面におけるステータの内側に近い端部が第2コイルの取り付けの邪魔になることを防止することができる。さらに、第2コイルがステータの径方向外側に向くように傾斜されている外周面を有していることから、外周面のステータの内側に近い端部が突極から遠ざかるように張り出している。これにより、第2コイルの外周面を第1コイルの外周面に近接あるいは当接させることができることから、コイルの占積率の向上が図れる。このように、本開示によれば、形状の異なる2つのコイルを交互に突極に設けることにより、全てのコイルを突極に取り付けることを可能にするとともに、コイル占積率の向上を実現している。このような本開示によれば、径方向内側に向けて突出する突極を有するステータを備える回転機において、コイルの占積率を向上させることにより性能の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一実施形態に係るスイッチトリラクタンスモータの断面図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係るスイッチトリラクタンスモータの部分拡大断面図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係るスイッチトリラクタンスモータの製造方法を示すフローチャートである。
【
図4】本開示の一実施形態に係るスイッチトリラクタンスモータの製造工程を説明する断面図である。
【
図5】本開示の一実施形態に係るスイッチトリラクタンスモータの製造工程を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本開示に係る回転機の一実施形態について説明する。なお、以下の実施形態においては、本開示の回転機をスイッチトリラクタンスモータに適用した例について説明する。
【0012】
図1は、本実施形態のスイッチトリラクタンスモータ1の断面図である。この
図1に示すように、本実施形態のスイッチトリラクタンスモータ1は、ロータ2と、ステータ3と、を備えている。なお、
図1に示されていないが、本実施形態のスイッチトリラクタンスモータ1は、ケーシング、シャフト、制御回路等の必要な構成要素を備えている。
【0013】
ロータ2は、ロータ軸Lを中心とする環状形状とされており、不図示の軸受等によってロータ軸Lを中心として回転可能に支持されている。このロータ2は、円環状のヨーク部2aと、ヨーク部2aからロータ2の外側に向けて突出する突極2bと、を備えている。これらのヨーク部2a及び突極2bは、ロータ軸Lに沿う方向に積層された複数の電磁鋼板が、圧入、焼嵌め、又はボルト(不図示)のいずれかにより締結されること等によって形成されている。突極2bは、ヨーク部2aの外周面からステータ3に向けて突出されており、複数の突極2bが、ロータ2の周方向に等間隔で設けられている。なお、本実施形態においては、
図1に示すように、60°間隔にて6個の突極2bが設けられている。
【0014】
ステータ3は、ロータ2の外側に配置されており、ロータ2を径方向外側から囲うようにロータ軸Lを中心とする環状形状とされている。このようなステータ3は、円環状のヨーク部3aと、ヨーク部3aからステータ3の内側に向けて突出する突極3bとを備えている。これらのヨーク部3a及び突極3bは、磁性体によって一体的に形成されている。さらに、ステータ3は、突極3bに巻回されて設けられる第1コイル3cと第2コイル3dとを備えている。
【0015】
突極3bは、ヨーク部3aの内周面からロータ2に向けて突出されており、先端に向けて窄む周面を有している。つまり、突極3bは、先端に向けて窄むテーパ面3b1を有している。また、複数の突極3bが、ステータ3の周方向に等間隔で設けられている。なお、本実施形態においては、
図1に示すように45°間隔にて8個の突極3bが設けられている。
【0016】
図2は、ステータ3の部分拡大図である。この
図2に示すように、第1コイル3cは、突極3bのテーパ面3b1に沿って傾斜する内周面3c1と、ステータ3の径方向外側を向けて傾斜された外周面3c2と、を有している。なお、第1コイル3cは、複数回に渡り密に巻回された巻線(素線)で構成されている。この第1コイル3cを構成する巻線は、突極3bのテーパ面3b1に沿ってターン毎の巻線が互いに密接するように、且つ、突極3bが形成されていないヨーク部3aの内周面に沿ってターン毎の巻線が互いに密接するように、整列巻きされている。ただし、巻線を巻回すことで第1コイル3cに近い形状に成型されたものを更に圧縮することにより第1コイル3cを成型することから、「突極3bのテーパ面3b1に沿ってターン毎の巻線が互いに密接するように」とは、テーパ面3b1に沿う方向から多少ずれてターン毎の巻線が互いに密接していることも含み、「突極3bが形成されていないヨーク部3aの内周面に沿ってターン毎の巻線が互いに密接するように」とは、突極3bが形成されていないヨーク部3aの内周面に沿う方向から多少ずれてターン毎の巻線が互いに密接することも含む。ここで、内周面3c1と外周面3c2とは、巻線が第1コイル3cの形状に最終的に成型されることで得られる成型体の内周面と外周面とを意味している。このような内周面3c1及び外周面3c2は、予め設計段階で規定されており、設計に沿って形成されている。
【0017】
このような第1コイル3cは、内周面3c1が突極3bのテーパ面3b1に当接する内径を有している。ここで、上述のように内周面3c1が突極3bのテーパ面3b1に沿って傾斜されている。このため、
図2に示すように、第1コイル3cの内周面3c1は、突極3bのテーパ面3b1と面接触されている。
【0018】
また、第1コイル3cは、外周面3c2を通るステータ3の径方向を基準としたときに、外周面3c2がステータ3の径方向外側に向くように傾斜されている。このため、外周面3c2のステータ3の内側に近い端部(
図2における第1コイル3cの上側の端部)が、外周面をステータ3の径方向に沿って形成した場合や突極3bの中心軸と平行に形成した場合と比較して、第1コイル3cが設けられる突極3bに近接するように配置されている。
【0019】
第2コイル3dは、第1コイル3cが設けられた突極3bと隣り合う突極3bに設けられており、突極3bのテーパ面3b1に沿って傾斜する内周面3d1及びステータ3の径方向内側に向けて傾斜された外周面3d2を有している。なお、第1コイル3cと同様に、第2コイル3dも、複数回に渡り密に巻回された巻線(素線)で構成されている。この第2コイル3dを構成する巻線は、突極3bのテーパ面3b1に沿ってターン毎の巻線が互いに密接するように、且つ、突極3bが形成されていないヨーク部3aの内周面に沿ってターン毎の巻線が互いに密接するように、整列巻きされている。ただし、巻線を巻回すことで第2コイル3dに近い形状に成型されたものを更に圧縮することにより第2コイル3dを成型することから、「突極3bのテーパ面3b1に沿ってターン毎の巻線が互いに密接するように」とは、テーパ面3b1に沿う方向から多少ずれてターン毎の巻線が互いに密接していることも含み、「突極3bが形成されていないヨーク部3aの内周面に沿ってターン毎の巻線が互いに密接するように」とは、突極3bが形成されていないヨーク部3aの内周面に沿う方向から多少ずれてターン毎の巻線が互いに密接することも含む。ここで、内周面3d1と外周面3d2とは、巻線が第2コイル3dの形状に最終的に成型されることで得られる成型体の内周面と外周面とを意味している。このような内周面3d1及び外周面3d2は、予め設計段階で規定されており、設計に沿って形成されている。
【0020】
このような第2コイル3dは、内周面3d1が突極3bのテーパ面3b1に当接する内径を有している。ここで、上述のように内周面3c1が、突極3bのテーパ面3b1に沿って傾斜されている。このため、
図2に示すように、第2コイル3dの内周面3d1は、突極3bのテーパ面3b1と面接触されている。
【0021】
また、第2コイル3dは、外周面3d2を通るステータ3の径方向を基準としたときに、外周面3d2がステータ3の径方向内側に向くように傾斜されている。このため、外周面3d2のステータ3の内側に近い端部(
図2における第2コイル3dの上側の端部)が、外周面をステータ3の径方向に沿って形成した場合や突極3bの中心軸と平行に形成した場合と比較して、第2コイル3dが設けられる突極3bから遠ざかるように張り出されている。
【0022】
また、本実施形態においては、ステータ3の径方向に沿う基準線と、ステータ3の内側に向くように傾斜している第1コイル3cの外周面3c2とが成す傾斜角度と、ステータ3の径方向(基準線)と、ステータ3の外側に向くように傾斜している第2コイル3dの外周面3d2とが成す傾斜角度とが、同一に設定されている。さらに、第1コイル3cの外径と第2コイル3dの外径とは、互いの外周面3c2及び外周面3d2とが面接触するように設定されている。このため、第1コイル3cの外周面3c2と第2コイル3dの外周面3d2とは、互いが接触する位置において、ステータ3の径方向の全域で面接触されている。
【0023】
また、第1コイル3cの径と第2コイル3dの径とは、第1コイル3cの巻線の巻き方向と直交する断面(
図2に示す断面)における断面積と、第2コイル3dの巻線の巻き方向と直交する断面(
図2に示す断面)における断面積とが同一となるように、設定されている。また、第1コイル3cと第2コイル3dにおけるステータ3の内側及び外側の面が平面であると仮定したときに、第1コイル3cと第2コイル3dの上記断面の形状は、
図2に示すように、台形である。
【0024】
次に、このような本実施形態のスイッチトリラクタンスモータ1の製造方法について
図3〜
図5を参照して説明する。
図3は、本実施形態のスイッチトリラクタンスモータ1の製造工程の概略を示すフローチャートである。なお、以下の説明では、ロータ2と、ステータ3のヨーク部3a及び突極3bとの一体成型体とが既に形成されているものとする。
【0025】
まず、
図3に示すように、巻線工程(ステップS1)を行う。ここでは、巻線を複数回に渡り巻回することにより、第1コイル3cと、第2コイル3dとを成型する。詳しくは、突極3bのテーパ面3b1を想定し、そのテーパ面に沿ってターン毎の巻線が互いに密接するように、且つ、突極3bが形成されていないヨーク部3aの内周面を想定し、その内周面に沿ってターン毎の巻線が互いに密接するように、巻線を整列巻きすることにより、第1コイル3cと、第2コイル3dとを成型する。ここでは、第1コイル3c及び第2コイル3dのサイズが、最終的なサイズよりも大きくなるように成型する。なお、スイッチトリラクタンスモータ1で扱う電流が大きい場合には、巻線の胴体部の断面積を大きくしてスイッチトリラクタンスモータ1の抵抗値を下げることにより銅損を小さくすることが望ましい。このため、巻線工程S1において、巻線を単線で巻回するのではなく、2本以上の巻線を束ねた(並列した)状態でそれらを巻回しても良い。続いて、
図3に示すように、プレス工程(ステップS2)を行う。ここでは、巻線工程S1で成型された第1コイル3cと第2コイル3dを、型を用いてプレス加工することにより圧縮成型する。これによって、第1コイル3cと第2コイル3dの巻線密度が高まるとともに、第1コイル3cと第2コイル3dを最終的な形状及びサイズに成型される。
【0026】
続いて、
図3に示すように組立工程(ステップS3)を行う。ここでは、プレス工程S2によって圧縮成型された第1コイル3c及び第2コイル3dをステータ3の突極3bに取り付ける。まず、
図4に示すように、第1コイル3cをステータ3の周方向に配列された複数の突極3bに1つ置きに取り付け、その後、
図5に示すように、第2コイル3dを第1コイル3cが設けられていない突極3bに取り付ける。この後、ロータ2等が、組み付けられる。
【0027】
以上のような本実施形態のスイッチトリラクタンスモータ1によれば、突極3bのテーパ面3b1に沿って傾斜する内周面3c1とステータ3の径方向外側を向けて傾斜された外周面3c2とを有する第1コイル3cと、突極3bのテーパ面3b1に沿って傾斜する内周面3d1及びステータ3の径方向内側に向けて傾斜された外周面3d2を有する第2コイル3dと、を備えている。また、第1コイル3cと第2コイル3dとが、ステータ3の周方向に配列される複数の突極3bに、交互に設けられている。
【0028】
このようなスイッチトリラクタンスモータ1によれば、
図4に示すように、先に第1コイル3cを突極3bに取り付けると、第1コイル3cの外周面3c2がステータ3の径方向外側に向けて傾斜されているため、第1コイル3cの外周面3c2のステータ3の内側に近い端部が、突極3bに寄せて配置される。これにより、
図5に示すように、第1コイル3cの外周面3c2のステータ3の内側に近い端部が第2コイル3dの取り付けの邪魔になることを防止することができる。
【0029】
さらに、第2コイル3dが、ステータ3の径方向外側に向くように傾斜されている外周面3d2を有していることから、外周面3d2のステータ3の内側に近い端部が突極3bから遠ざかるように張り出している。これにより、第2コイル3dの外周面3d2を第1コイル3cの外周面3c2に当接させることができ、コイルの占積率の向上が図れる。
【0030】
このように、本実施形態のスイッチトリラクタンスモータ1によれば、形状の異なる2つのコイルを交互に突極に設けることにより、全てのコイルを突極2bに取り付けることを可能にするとともに、コイルの占積率の向上を実現している。このような本実施形態のスイッチトリラクタンスモータ1によれば、コイルの占積率を向上させることにより性能の向上を図ることが可能となる。
【0031】
また、本実施形態のスイッチトリラクタンスモータ1においては、第1コイル3cの外周面3c2と第2コイル3dの外周面3d2とが、互いが接触する位置において、ステータ3の径方向の全域で当接されている。このため、コイルの占積率を最大化することが可能となる。
【0032】
また、本実施形態のスイッチトリラクタンスモータ1においては、第1コイル3cの巻線の巻き方向と直交する断面(
図2に示す断面)における断面積と、第2コイル3dの巻線の巻き方向と直交する断面(
図2に示す断面)における断面積とが、同一に設定されている。このため、第1コイル3cにより形成される磁束密度と、第2コイル3dにより形成される磁束密度とを同一とすることができることから、トルクリップル等を効果的に低減させることが可能となる。
【0033】
また、本実施形態のスイッチトリラクタンスモータ1においては、第1コイル3cと第2コイル3dの上記断面における形状は、
図2に示すように、台形である。例えば、第1コイル3cと第2コイル3dの上記断面における形状を三角形とすることも可能であるが、このような場合には、三角形の頂部が鋭角に尖る。このため、第1コイル3cと第2コイル3dは、構造的に崩れやすくなる可能性がある。これに対して、上述のように第1コイル3cと第2コイル3dの上記断面における形状を台形とすることで、第1コイル3cと第2コイル3dは、構造的に崩れにくく、強度の高いものとなる。
【0034】
なお、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。上記実施形態においては、本開示をスイッチトリラクタンスモータ1に適用した例について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、PMモータに本開示を適用することも、可能である。また、本開示を、発電機等の他の回転機に適用することも、可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本開示によれば、内側に向けて突出する突極を有するステータを備える回転機において、コイルの占積率を向上させて性能の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0036】
1…スイッチトリラクタンスモータ
2…ロータ
2a…ヨーク部
2b…突極
3…ステータ
3a…ヨーク部
3b…突極
3b1…テーパ面
3c…第1コイル
3c1…内周面
3c2…外周面
3d…第2コイル
3d1…内周面
3d2…外周面
L…ロータ軸