(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回転軸線(RA)周りに回転し少なくとも1つのインサート取付座(16)が形成された工具ボデー(14)を備え、前記インサート取付座(16)に切削インサート(1)が着脱自在に装着される、刃先交換式回転切削工具(13)であって、
前記切削インサート(1)は、
略多角形形状の第1端面(2)と、
前記第1端面(2)と対向する第2端面(3)と、
前記第1端面(2)と前記第2端面(3)とを接続する周側面(4)と、
前記第1端面(2)と前記周側面(4)との間の交差稜線部に形成された少なくとも1つの切れ刃(8)と、を有し、
前記切れ刃(8)は、前記第1端面(2)の互いに隣り合う第1コーナ(6a)と第2コーナ(6b)との間に延在する切れ刃部分(9)を有し、
前記切れ刃部分(9)は、
前記第1コーナ(6a)側の第1切れ刃部(9a)と、
前記第2コーナ(6b)側の第2切れ刃部(9b)であって、前記第1切れ刃部(9a)につながる第2切れ刃部(9b)と、を有し、
前記第1端面(2)と前記第2端面(3)とを貫通する中心軸線(O)と、前記第1端面(2)と前記第2端面(3)との間に位置すると共に前記中心軸線(O)に対して直角に交差する中間面(M)と、を定義するとき、
前記第1切れ刃部(9a)は、前記第2コーナ(6b)に向けて前記第1コーナ(6a)から離間するにつれて前記中間面(M)に近接するように形付けられている部分(9ap)を有し、
前記第2切れ刃部(9b)は、前記切削インサート(1)の側面視にて、前記切れ刃(8)のなかで、前記中間面(M)からの距離が最も長い部分(9c)を有し、
前記切削インサート(1)は、前記第1切れ刃部(9a)及び第2切れ刃部(9b)が切削に関与し、前記第1切れ刃部(9a)においてラジアルレーキが正となると共に、前記第2切れ刃部(9b)が前記第1切れ刃部(9a)よりも前記回転軸線(RA)に近い位置に配置されるように、前記インサート取付座(16)に装着される、
刃先交換式回転切削工具(13)。
前記切削インサート(1)を前記第1端面(2)に対向する側からみたとき、前記第2切れ刃部(9b)は該切削インサート(1)の外方に凸状に湾曲し、前記第1切れ刃部(9a)は該第2切れ刃部(9b)に滑らかにつながりつつ直線状に該第2切れ刃部(9b)と前記第1コーナ(6a)との間に延在する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の刃先交換式回転切削工具(13)。
前記切削インサート(1)を前記第1端面(2)に対向する側からみたとき、前記第2切れ刃部(9b)は前記第1切れ刃部(9a)と165°以上180°未満の内角(θ1)をなす、請求項1から6のいずれか一項に記載の刃先交換式回転切削工具(13)。
作用切れ刃(8u)に関して、前記切れ刃部分の前記第2切れ刃部(9b)が最も工具先端側に位置し、前記第1切れ刃部(9a)の隣りの前記第1コーナ(6a)が最も工具外周側に位置するように、前記切削インサートは前記インサート取付座(16)に装着され、
前記第2切れ刃部(9b)での切込み角(EH2)は、前記第1切れ刃部(9a)での切込み角(EH1)よりも小さい、
請求項1から9のいずれか一項に記載の刃先交換式回転切削工具(13)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
本実施形態の切削インサート1は、
図1から
図4に示されているように、略四角形板状である。切削インサート1は、略四角形形状を有する第1端面2と、第1端面2に対向するように配置された第2端面3と、第1端面2と第2端面3とを接続する周側面4と、から基本的に構成されている。第2端面3は、第1端面2よりも小さいが、第1端面2と同様に略四角形形状を有する。全体的にみて、第1端面2と周側面4とはそれらの間の内角が鋭角となるように接続し、第2端面3と周側面4とはそれらの間の内角が鈍角となるように接続している。したがって、本実施形態の切削インサート1は、所謂、ポジティブタイプである。よって、第1端面2を上面と称し、第2端面3を下面と称してもよい。しかし、本発明はこれに限定されることはなく、第1端面2及び第2端面3がそれぞれ周側面4と略直角に交差するネガティブタイプであっても構わない。また、第1端面2の略中央部と第2端面3の略中央部とを貫通するように、中心軸線Oが定められる取付穴5が切削インサート1に設けられている。基本的に、切削インサート1は、中心軸線Oの周りに、90°回転対称(4回回転対称)に構成されている。
【0020】
第1端面2は、第1端面2に対向する方向から見て(つまり
図2において)、4つの湾曲したコーナ部6と、それらコーナ部6の間に形成された4つの辺部7と、から構成された略四角形形状をなしている。全ての辺部7の長さは等しい。また、全てのコーナ部6は同一の形状を有しており、全ての辺部7も同一の形状を有している。したがって、本実施形態の切削インサート1は、
図2において、中心軸線Oに関して90°回転対称の略四角形状をなしているのであるが、本発明はこれに限定されることはなく、三角形状や五角形状など他の形状であっても構わない。すなわち、本発明に係る切削インサートでは、第1端面2はn個(ただし、nは3以上の整数)のコーナを有し、中心軸線O周りにn回対称な形状を実質的に有する。また、コーナ部6や辺部7の形状、長さ及び数も本実施形態に限定されることはなく、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において適宜変更することが可能である。第1端面2が4つのコーナ部6と4つの辺部7とを有するので、周側面4は、4つの主側面4aと、主側面間に延在する4つのコーナ側面4bとを有する。対応する辺部7に関係する主側面4aと、対応するコーナ部6に関係するコーナ側面4bとは交互に周方向において連続する。主側面4aもコーナ側面4bもそれぞれ第1端面2から第2端面3まで延在する。
【0021】
第1端面2と周側面4との交差稜線部には、複数の(ここでは4つの)切れ刃8が形成されている。各切れ刃8は、主切れ刃(切れ刃部分)9を備えている。切削インサート1では、主切れ刃9に加えて、切れ刃8は、コーナ切れ刃10を有しているが、コーナ切れ刃10を有さなくてもよい。主切れ刃9は、上記辺部7に相当する、第1端面2と周側面4の主側面4aとの交差稜線部に形成されている。主切れ刃9は、互いに対して隣り合う2つのコーナ6の間に延在している。特に、切削インサート1では、主切れ刃9は、2つのコーナ6の間の全体に亘って延在する。コーナ切れ刃10は、コーナ部6に相当する、第1端面2とコーナ側面4bとの交差稜線部に形成されている。
【0022】
ここで、4つの切れ刃8は取付穴5の中心軸線Oの周りに90°回転対称な形状を有して形成されているので、以下では、4つの切れ刃8のうちの1つの切れ刃である、
図2において下側に位置する辺部7に沿って延在する主切れ刃9を有する切れ刃8aに特に着目して説明する。したがって、切れ刃8aについての以下の説明は、他の切れ刃においても同様に成立する。なお、切削インサート1は割り出し可能であり、使用した切れ刃又は未使用の切れ刃を判別するために、第1端面2には識別マーク2a〜2dが付されている。
【0023】
切れ刃8aに関して、
図2において主切れ刃9の右隣のコーナ6を第1コーナ6aとし、
図2において同主切れ刃9の左隣のコーナ6を第2コーナ6bとする。切れ刃8aにおけるコーナ切れ刃10は、第1コーナ6aに延在する。主切れ刃9は、第1コーナ6a側の第1切れ刃部9aと、第2コーナ6b側の第2切れ刃部9bとを有する。第1切れ刃部9aは第2切れ刃部9bに直接的に滑らかにつながる。しかし、第1切れ刃部9aは第2切れ刃部9bに直接的につながることに限定されず、それらは間接的に、つまり更なる接続切れ部を介してつながってもよい。第1切れ刃部9aは第1コーナ6aに直接的につながり、第2切れ刃部9bは第2コーナ6bに直接的につながる。
【0024】
第1切れ刃部9aは、第2切れ刃部9bよりも長い。第1切れ刃部9aは、好ましくは第2切れ刃部9bの長さの2倍以上の長さを、さらに好ましくは3倍以上の長さを有するとよく、本実施形態の切削インサート1では、第1切れ刃部9aは第2切れ刃部9bの長さの約3.5倍の長さを有する。これは、第2切れ刃部は、主切れ刃の一部であるが、後述する
図11及び
図12の加工態様から理解できるように、さらい刃的な作用をもたらす部分だからである。
【0025】
第1切れ刃部9aは、切削インサート1を第1端面2に対向する側からみたとき、つまり
図2において、直線状である。第2切れ刃部9bは、
図2において、湾曲形状であり、特に、切削インサート1の外方に向かって緩やかに突出する形状を有する。
【0026】
ここで、
図2に相当する
図5Aに基づいて、切れ刃8aの主切れ刃9に関してさらに説明する。切れ刃8aの主切れ刃9の第1切れ刃部9aに沿って延びる直線La、及び、第2切れ刃部9bの両端を通るように延びる直線Lbを、
図5Aに示す。ただし、切れ刃8aの第2切れ刃部9bの一端9b´は、
図5Aにおいて直線状である(切れ刃8aの)第1切れ刃部9aとの境界部に位置し、第2切れ刃部の他端9b´´は、
図5Aにおいて略単一の曲率を有する(隣の切れ刃8の)コーナ切れ刃10との境界部に位置する。直線La及び直線Lbとの関係から理解できるように、
図5Aにおいて、第2切れ刃部9bは、全体的にみて、第1切れ刃部9aと、180°よりもわずかに小さな内角θ1をなし、具体的にはその内角は約170°である。本発明では、θ1は鈍角であるとよく、好ましくは160°以上180°未満の範囲に、さらに好ましくは165°以上180°未満の範囲に、さらにいっそう好ましくは165°以上175°以下の範囲に設定されるとよい。なお、
図5Aにおいて、第2切れ刃部9bは、直線Laの外方に張り出さないように延在する。
【0027】
さらに、
図5Aに、切れ刃8aの第2切れ刃部9bの上記他端9b´´近傍における切れ刃8aの接線Lcを示す。この線Lcは、線Laと内角θ2をなす。内角θ2は、内角θ1よりも小さく、ここでは約164°である。つまり、
図5Aにおいて、切れ刃8aの主切れ刃9は、隣りの切れ刃のコーナ切れ刃10に、約164°の内角を有するようにつながる。
【0028】
ここで、切れ刃8aの主切れ刃9につらなる主側面4aに対向する側から切削インサート1をみた側面視である
図3を参照する。
図3において、主切れ刃9における第1切れ刃部9aも第2切れ刃部9bも、それぞれ、湾曲形状を有している。
図3に示されているように、第1端面2と第2端面3との間において周側面4を貫通すると共に中心軸線Oに対して直角に交差する面を定め、その面を中間面Mと定義する。切削インサート1の周側面4の主側面4a側からの
図3において、第1端面2と周側面4との交差稜線部は、その交差稜線部に沿って移動するに伴い中間面Mとの距離が変化するように湾曲している。具体的には、第1切れ刃部9aは第1端面2側から第2端面3側を向く方向に内方に突出するように(凹むように)湾曲している。第2切れ刃部9bは、第2端面3側から第1端面2側を向く方向に外方に突出するように湾曲している。
図2で下側に位置する切れ刃8aのうちの第1コーナ6aに沿って延在するコーナ切れ刃10は、同切れ刃8aにおける第1切れ刃部9aと、隣りの切れ刃8の第2切れ刃部9bとの間に延在し、ここではそれらを直接的につなぐ。切れ刃8aのコーナ切れ刃10は、側面視において、隣りの切れ刃8の第2切れ刃部9b側から、同じ切れ刃8aにおける第1切れ刃部9aに向けて、傾くように形付けられている。特に、単一切れ刃8aにおいて、コーナ切れ刃10は、主切れ刃9に近づくにしたがい、中間面Mに近づくように、
図3において傾斜している。そして、コーナ切れ刃10は、隣りの切れ刃8の第2切れ刃部9bと、同一切れ刃8aにおける第1切れ刃部9aとを互いに滑らかにつなぐように延在する。したがって、切れ刃8aは、
図3において、主切れ刃9からコーナ切れ刃10にかけての全領域に関して、略S字状、より正確には略逆S字状に湾曲する。よって、(中心軸線Oに平行な方向である)インサート厚さ方向にて、切れ刃8aにおいて最も中間面Mから離れた部分(最突出部分)9cは第2切れ刃部9bにあり、切れ刃8aにおいて最も中間面Mに近い部分(最近接部分)9dは第1切れ刃部9aにある。
図3から明らかなように、最近接部分9dは、主切れ刃9の第1切れ刃部9aを第1コーナ部6a側の領域と第2コーナ部6b側の領域に略等分するとき、第1コーナ部6a側の領域に位置する。
【0029】
図3において、最突出部分9cと最近接部分9dとの高低差Hつまり中心軸線O方向の中間面Mからのそれらの間の距離差は、約0.5mmである。なお、本実施形態の切削インサート1は、
図2で第1端面2において定められる内接円(不図示)が約16mmの直径を有し、かつ、切削インサートの最大厚さが約7mmであるように、設計されている。高低差Hは、0.2mm以上であるとよく、0.4mm以上であるとなおよい。高低差Hは、1.5mm以下であるとよく、0.8mm以下であるとなおよい。ただし、高低差Hは、切削インサートの全体的な寸法に応じて定められるとよく、特に主切れ刃の全長に応じて定められるとよい。
【0030】
このように、切削インサート1の側面視において、主切れ刃9の第1切れ刃部9a及びコーナ切れ刃10は、全体として第1端面2側から第2端面3側を向く方向に突出するように湾曲した形状(
図3においては略凹弧状)を有している。一方、主切れ刃9の第2切れ刃部9bは、切削インサート1の側面視において、第2端面3側から第1端面2側を向く方向に突出するように湾曲した形状(
図3においては略凸弧状)を有している。したがって、第1切れ刃部9aは凹湾曲形状の切れ刃部分を構成し、最近接部分9dからコーナ切れ刃10に向けて中間面Mから離れるように傾く。つまり、第1切れ刃部9aは、最近接部分9dから第1コーナ部6a側において、第2コーナ6bに向けて第1コーナ6a側から離間するにつれて中間面Mに近接するように形付けられている部分9apを有する。また、第1切れ刃部9aは、最近接部分9dから第2コーナ部6a側において、第2コーナ6bに向けて第1コーナ6a側から離間するにつれて中間面Mから離れるように形付けられている部分9aqを有する。一方、第2切れ刃部9bは、
図2(平面視又は上面視)及び
図3(側面視)の両方において、切削インサート1の外方に向かって突出する凸湾曲形状の切れ刃部分を構成する。よって、切れ刃8は、第2切れ刃部9bから第1切れ刃部9aにかけての主切れ刃9の領域で略逆S字状であり、コーナ切れ刃10を含めた範囲まででなおさらに略逆S字状である。
【0031】
各切れ刃8は、第1端面2のすくい面相当部(つまりすくい面)11aと、周側面4の逃げ面相当部(つまり逃げ面)11bとの交差部に延在する。つまり、第1端面2の一部は、対応する切れ刃8に関してすくい面として機能する。周側面4の一部(例えば1つの主側面4a及び1つのコーナ側面4b)は対応する切れ刃8に関して逃げ面として機能する。また、第2端面3は、工具ボデー14に設けられたインサート取付座16の底壁面17と当接する着座面として機能するように構成されている。切削インサート1では、第2端面3は中心軸線Oに直交するように延在し、平坦である。しかし、第2端面3は他の形状、例えば凹凸を有してもよい。
【0032】
本実施形態の切削インサート1では、第1端面2と周側面4との交差稜線部のみに切れ刃8(切れ刃8aを含む)が形成されている。しかし、第2端面3と周側面4との交差稜線部にも同じく切れ刃を形成して、所謂、本発明の別の実施形態に係る切削インサートを両面使用の形態とすることも可能である。この場合、第1端面2は着座面としても機能するし、第2端面3はすくい面としても機能する。すなわち、第1端面2がすくい面として機能する場合には第2端面3は着座面として機能し、第2端面3がすくい面として機能する場合には第1端面2は着座面として機能する。また、本実施形態の切削インサート1でも、本発明の別の実施形態に係る切削インサートでも、周側面4は、逃げ面としても機能するし、工具ボデー14に設けられたインサート取付座16の側壁面18と当接する拘束面としても機能する。
【0033】
各切れ刃8は上記のごとく第1切れ刃部9a、第2切れ刃部9b、コーナ切れ刃10を備えるので、それに関連するすくい面11aは、第1すくい面部r1、第2すくい面部r2、コーナすくい面部r3とを備える。これらすくい面部の各々の2つは、互いに滑らかに接続する。すくい面11aは、切れ刃から第1端面2の内側へと離れるに従い、中間面Mに近づくように傾斜する。これは、正のすくい角の設定に寄与する。
【0034】
図5AのVB−VB線に沿った
図5Bの切削インサート1の断面図から特に理解されるように、周側面4は、切削インサートの厚さ方向において、第1端面2側の側面部分(切れ刃側部分)4cと、第2端面3側の側面部分(着座面側部分)4dとを有している。切れ刃側部分4cは逃げ面11bに相当し、その全体に亘って、略同じ傾き及び略同じ幅を有している。切れ刃側部分4cは正の逃げ角が付与されている。これに対して、着座面側部分4dは逃げ角が概ね0°とされ、さらに中心軸線Oに略平行な拘束面12が形成されている。つまり、切れ刃側部分4cは、切れ刃8を通るように中心軸線Oに平行な第1仮想面(不図示)を定めるとき、第1端面2側から第2端面3側に至るに従ってこの第1仮想面から内側に離れるように傾いて延在する。着座面側部分4dは中心軸線Oに平行な第2仮想面(不図示)を定めるときこの第2仮想面に沿って延在する。拘束面12は、インサート座16の側壁面18と当接する機能を有する。拘束部12は、切削インサート1の幅方向(周方向)にて周側面4の主側面4aの第2端面側3の領域のほぼ全体にわたって形成されており、上記のごとく切削インサート1の中心軸線Oと略平行の関係となるように伸長している。すなわち、拘束部12は、第2端面3に対して略直角に交差する位置関係にある面として形成されている。本実施形態においては周側面4が上記のような構成になっているのであるが、これに限定されることはなく、求められる性能等に応じ適宜形状を変更することが可能である。
【0035】
切削インサート1は、超硬合金、サーメット、セラミック、又はダイヤモンドあるいは立方晶窒化硼素を含有する超高圧焼結体といった硬質材料、又はそれら硬質材料にコーティングしたものから作製されることができる。
【0036】
次に、上記実施形態の切削インサート1を着脱自在に装着した刃先交換式回転切削工具13について、
図6から
図10Bを参照しながら説明する。
【0037】
本実施形態の刃先交換式回転切削工具13は、工具ボデー14を備える。工具ボデー14では、その先端側から後端側に延びる回転軸線RAが定められる。刃先交換式回転切削工具13は、回転軸線RA周りに、回転方向K前方側に、回転可能に構成されている。なお、刃先交換式回転切削工具13は回転軸線周りに被加工物に対して相対回転されて用いられればよく、必ずしも切削工具自体が回転しなくてもよい。
【0038】
工具ボデー14は、回転軸線RAに沿って延びる取付穴15を有し、中空の円筒状をした全体形状を有している。工具ボデー14の先端側の端部に位置する先端部には、複数のインサート取付座16が形成されている。本実施形態では、4つのインサート取付座16が形成されているが、インサート取付座16の数は1つであっても複数であってもよい。各インサート取付座16は、回転軸線RA周りの回転方向K前方に開くと共に、先端側及び外周側に開くように形成されている。4つのインサート取付座16は回転軸線RA周りの周方向に略等間隔で配置されているが、不等間隔で配置されてもよい。
【0039】
インサート取付座16は、切削インサート1の第2端面3と当接可能な底壁面17と、切削インサート1の周側面4と当接可能な側壁面18(18a、18b)とを備える。インサート取付座16の底壁面17は、基本的に切削インサート1の第2端面3と同様の形状を有していて、第2端面3に対応する大きさを有する。底壁面17は、回転方向Kの前方を向く。底壁面17の略中央には、切削インサート1を固定するための固定ねじ19を挿入して螺合させるためのねじ穴20が形成されている。インサート取付座16の側壁面18a、18bは、切削インサート1の周側面4の拘束部12に当接可能なように定められていて、底壁面17と一定の角度で交差するように形成されている。第1側壁面18aは主に工具ボデーの外周側を向き、第2側壁面18bは主に工具ボデーの先端側を向く。切削インサート1の形状に対応するように、第1側壁面18aは第2側壁面18bと略90°をなすように延在するが、これらの交差角度は切削インサートの形状に合わせて変更され得る。
【0040】
さらに、各々のインサート取付座16の工具回転方向K前方側には、切削によって生じた切りくずを排出するための切りくずポケット21が設けられている。
【0041】
このインサート取付座16に、固定ねじ19が取付穴5を通してねじ穴20にねじ込まれることで、切削インサート1は取り付けられる。なお、
図6の右下のインサート取付座16には、上記切れ刃8aと異なる切れ刃8が作用切れ刃となるように、切削インサート1は取り付けられている。
【0042】
ここで
図10Aを参照する。
図10Aにおいては、工具の回転軸線RAに平行な直線RBは紙面に平行であり、取り付けられた切削インサート1の第1端面2に略対向する側から見た切削工具13の部分拡大図(その一部は断面)が示されている。このとき、
図10Aに示されているように、切削に関与する作用切れ刃8uの主切れ刃9の第2切れ刃部9bが回転軸線RA(直線RB)に沿った方向において最も工具先端側に位置する。特に、上記最突出部9cを含む領域が最も工具先端側に位置する。また、切削に関与する作用切れ刃8uのコーナ切れ刃10は、そのうちの主切れ刃9よりも工具外周側に位置していて、作用切れ刃8uのうちで最も工具外周側に位置する。
【0043】
ただし、切削インサート1自体は、アキシャルレーキが5°で、ラジアルレーキが0°となるように、工具ボデー14に装着されている。しかし、これに限定されることはなく、アキシャルレーキ及びラジアルレーキの値は必要に応じて適宜変更することが可能である。なお、切削インサート1自体の装着角度とは、インサート取付座16の配置角度のことである。
【0044】
ここで、工具ボデー14の側面視である
図10Aにおいて、回転軸線RAに平行な直線RBに沿った方向に対して直角で、第2切れ刃部9bの最も工具最先端側にある部分を通るように引かれた直線を作用主切れ刃9uの接線(又は接平面)Ldと定義する。なお、この接線Ldは、作用切れ刃8uの主切れ刃9の第2切れ刃部9bのうち、この第2切れ刃部9bと隣りの非作用切れ刃8のコーナ切れ刃10との境界部(上記境界部9b´´に相当)近傍に概ね接する。また、
図10Aにおいて、第1端面2側からみたときに直線状の第1切れ刃部9aを実質的に延長した線を延長線N1と定義する。本実施形態の切削工具においては、回転軸線RAに略直角であり且つ切削インサート1を第1端面2に対向する方向から見たとき、第1切れ刃部9aは、この接線Ldと延長線N1とのなす内角αが約166°となるように配置される。つまり、上記装着角度で切削インサート1を装着することで、切削インサート1自体の境界部9´´近傍での内角θ2が約164°であったところ、内角αは約166°になる。このとき、詳細は後述するが、
図10Bに示すように、第2切れ刃部9bの切込み角EH2は、第1切れ刃部9aの切込み角EH1よりも小さい(EH2<EH1)。
【0045】
次に、本実施形態の、切削インサート1が装着された刃先交換式回転切削工具13の作用及び効果について説明する。
【0046】
図11は、被加工物を加工している状況における1つの切削インサート付近の拡大図である。
図11に模式的に示されるように、切削工具13は、軸線RAの周りに回転させられて、被加工物Wに一定の切込みで、送られる。高送り加工であるので、直角肩削りの場合などと比較して切込みは非常に小さい。
図11において、作用切れ刃8uにおいて最も工具先端側に位置するのは、
図2及び
図3で最も突出する部分(部分9c相当部分)を含む領域である。また、本加工形態においては、切込みが、第2切れ刃部9bから軸線RAに平行な方向で作用主切れ刃9uの第1切れ刃部9aの範囲内にある。しかしながら、加工形態はこれに限定されることはなく、
図12に示されているように、より切込みを多く取る場合には、作用切れ刃8uのコーナ切れ刃10uまで切削に使用される。
【0047】
本実施形態の切削インサート1は、第1端面2と周側面4とがなす交差稜線部に、主切れ刃9とコーナ切れ刃10とからなる切れ刃8が設けられた構成を有する、所謂、高送り用の切削インサートである。
【0048】
本実施形態の切削工具においては、切削インサート1を第1端面2に略対向する方向からみたとき、作用切れ刃8uの第1切れ刃部9aは、
図10Aに示した接線Ldと延長線N1とのなす内角αが約166°となるように配置される。線N1は第1切れ刃部9aの延長線であるので、工具ボデー14に切削インサート1が装着されたときの、第1切れ刃部9aにおける切込み角EH1は本実施形態では約14°(≒180°−α)である。したがって、本実施形態の刃先交換式回転切削工具13においては、小さい切り込み且つ大きな送り速度で切削加工を行う、所謂、高送り加工を実現することができる。切込み角EH1は、
図10Bに表され、第1切れ刃部9a(つまり線N1)と切削工具の軸線RAに直交する平面(つまり線Ldに平行な線Ld´)とのなす角である。内角αは、約166°であることに限定されず、高送り加工ができる範囲であれば適宜変更することが可能である。内角αは、160°以上が好ましい。すなわち、切込み角EH1は、20°以下が好ましい。内角αは、165°以上がさらに好ましい。そのような角度にされると、高送り加工における加工能率を特に高めることができる。
【0049】
そして、切削インサート1の側面視(
図3)にて、主切れ刃9の第1切れ刃部9aは、第2切れ刃部9bが接続している側とは反対側の(コーナ切れ刃10側の)領域において、中間面Mに向けて最も近接する部分9apを有している。さらに、切削インサート1では、第1切れ刃部9aに接続するコーナ切れ刃10は、最近接部分9dに向けて、傾斜するように形付けられる部分を有している。このような構成によって、次のような効果を得ることができる。
【0050】
本実施形態の切削インサート1は、主切れ刃9の第1切れ刃部9aに、側面視にて、第2切れ刃部9bが接続している端部とは反対の端部から(つまり第1コーナ6a側から)第2切れ刃部9b側に向けて離間するにつれて中間面Mに近接する部分9apが形成されている。そのため、
図7に示されているように、切削インサート1自体がラジアルレーキが0°になるように装着されている場合でも、工具ボデー14の先端面視(
図7)においてラジアルレーキが正となる切れ刃部分CAが存在する。
図13に拡大して説明する。
【0051】
図13では、工具軸線RAから工具径方向に延びる線L1(すなわち、ラジアルレーキが0°の線)が表されている。つまり、線L1は、工具軸線RAと切削インサートの切れ刃の最外周相当部を通る。さらに、
図13では、作用主切れ刃9uのうちの第1切れ刃部9aの端部領域において、最近接部9dとコーナ切れ刃10の間にある一点を通るように、その一点における接線として引かれた線L2が示されている。線L1と線L2とは、互いに平行でなく、交差する。そして、
図13において、線L1と線L2との交差部から工具外周側で、線L2は、線L1に比べて、工具回転方向前方に延在する。線L2の線L1に対する角度βから、作用切れ刃8uのうち、最近接部9d付近の、特にその部分9dから外周側の切れ刃部分9apでラジアルレーキが正となることが理解されよう。このラジアルレーキが正となっている切れ刃部分から生成される切りくず部分は、工具内周方向に向かって流出しようとする。切りくず全体のうち、一部でもこのような工具内周方向に向かう部分が存在していれば、全体として、切りくずが工具外周方向へと排出されることを抑制することができる。特に、最も工具外周側となるコーナ切れ刃10の付近でラジアルレーキが正とされると、コーナ切れ刃10まで作用切れ刃とされる最も切りくずの排出性が問題となる状況でも、切りくずが工具外周方向へと排出されることを抑制することができる。これによって、切削インサート1の外側面と被加工物との間に切りくずが噛み込まれたり、切りくずが被加工物の加工面に衝突したりすることによる、工具寿命の低下や被加工物の加工面の精度悪化を抑制することが可能となる。
【0052】
上述のごとく、本実施形態では、主切れ刃9の第1切れ刃部9aにおける最近接部9dから外周側の部分9apは、コーナ切れ刃10と連続し、コーナ切れ刃10は上記形状を有する。つまり、コーナ切れ刃10は、部分9apと同じように、最近接部分9dに近づくにつれて、中間面Mに近づくように全体的に傾いている。このように構成することによって、切削インサート1を工具ボデー14に装着したとき、作用切れ刃8uの工具最外周側部分(すなわち、コーナ切れ刃10がある領域)において、正のラジアルレーキが一層付与されやすくなる。工具最外周側は最も切削速度が速いため、その地点にある切れ刃部分から生成された切りくず又はその部分は、工具内周側の切りくず又はその部分よりも相対的に大きな速度(運動エネルギー)を有し、切りくず全体の挙動に顕著な影響を与える。したがって、
図12に示したようにコーナ切れ刃10まで切り込まれる場合、工具最外周側に位置する正のラジアルレーキを有する切れ刃部分9ap、10によって生成されて工具内周方向を向いて流出しようとする切りくずによって、切りくず全体が工具外周方向に一層排出され難くなる。すなわち、切りくずは斜め上方に向かうように外周側に排出され、切削インサート1の外側面と被加工物との間に切りくずが噛み込まれたり、切りくずが被加工物の加工面に衝突したりすることを防ぐことができる。
【0053】
切削インサート1の側面視(つまり
図3)にて、第1切れ刃部9aは、全体として、中間面Mに近接する方向に窪んだ凹状の湾曲形状(略凹弧状)を有している。工具ボデー14に装着された状態で、第1切れ刃部9a全体が正のラジアルレーキとなるような切れ刃形状である場合、切りくずが工具内周側に行き過ぎてしまい、切りくずポケットの内側に切りくずが詰まってしまうことがある。しかし、本実施形態のように、第1切れ刃部9aが凹状であることで、工具内周側に位置する第1切れ刃部9aの内周側部分(第2切れ刃部9b側部分)9aqに工具外周側を向く反対の傾斜を設けることができ、よって外周側部分9apとの関係で切りくずの流出方向のバランスを取ることができる。
【0054】
切削インサート1の
図3の側面視にて、第2切れ刃部9bは、中間面Mから最も離れた部分9cを有する。このように構成することで、第1端面2のコーナ部6(コーナ切れ刃10に相当)において最も中間面Mからの距離が大きくなるように構成するよりも、コーナ部6及びその周辺領域におけるボス面からの平均的な高さ及び隣接するすくい面の平均的な厚みを大きく取ることが可能となる。コーナ部6及びその周辺は、被加工物の加工面の底面側及び側面側の両方から切削抵抗を受ける部分であるから強度が求められる。上記のように、切りくずの排出方向に影響を与えない第2切れ刃部9bに中間面Mからの距離が最も大きい部分9cを設けることによって、切りくず排出性を悪化させることなくコーナ部6及びその周辺(特には、被加工物の加工面の側面側と接触する領域)の強度を高めることができるのである。
【0055】
切削インサート1の側面視にて、第2切れ刃部9bは、中間面Mから離間する方向に突出する凸状の湾曲形状(つまり略凸弧状)を有している。第2切れ刃部9bに最も中間面Mから離間している部分9dがあるので、第2切れ刃部9bは、切削加工においては、最初に被加工物に食い付く箇所となりやすい。最初に食い付く箇所には最も大きな衝撃が加わるのであるが、凸状の湾曲形状とすることによって、第2切れ刃部9bは滑らかに被加工物に食い付くことができる。これによって、第2切れ刃部9bの損傷を抑制することが可能となる。
【0056】
第2切れ刃部は
図2の平面視で凸状に湾曲している。これにより、工具ボデーに切削インサート1が装着されたとき、第2切れ刃部9bでの切込み角EH2を、第1切れ刃部9aでの切込み角EH1よりも小さくすることができる。第2切れ刃部9bでの切込み角EH2は、
図10Bに示される。第2切れ刃部9bでの切込み角EH2は、第2切れ刃部の両端(上記境界部9b´、9b´´に相当)を結ぶように
図10Bで直線N2を定めたとき、この直線N2と
図13の接線Ldとのなす角として定められることができる。切削工具の最も先端側に位置する第2切れ刃部9bでの切込み角EH2を相対的に小さくすることで、第2切れ刃部9bでの切削による切りくずの切り取り厚みが相対的にさらに薄くなる。よって、第2切れ刃部9bに加わる切削抵抗を軽減することができ、よって第2切れ刃部9bの損傷をさらに抑制することができる。なお、第2切れ刃部9bでの切込み角EH2は、第1切れ刃部9aでの切込み角EH1よりも5°〜15°小さいとよい。
【0057】
また、本発明は、ラジアルレーキが0°以下になるように切削インサート1が装着されているときに、特に有効である。なぜなら、そのように装着しているときにこそ、主切れ刃9のラジアルレーキが負になりやすいからである。
【0058】
本発明に係る切削インサート及びそれが装着された回転切削工具は、好ましくは、切込み角が30°以下の高送り加工に用いられる。上記実施形態では、第1切れ刃部9aと第2切れ刃部9bとで切込み角が異なったが、相対的に大きく設定される第1切れ刃部9aの切込み角が、30°以下に設定されるとよい。その高送り加工では、送りは、刃当たり送りfzにて、0.2mm/刃以上に設定されるとよく、さらに好ましくは0.3mm/刃以上に設定される。なお、刃当たり送りfzは、式「fz=vf/(z・n)」で定義され、式中vf(mm/min)は1分間当たりのテーブル送り速度であり、zは刃数であり、n(min
−1)は主軸回転速度(1回転当りの送り)である。
【0059】
上記切削インサートにおいて、第1、第2及びコーナすくい面部r1、r2、r3の中間面Mに対する傾きを変化させてもよい。第1切れ刃部9aの第1すくい面部r1は、第2切れ刃部9bの第2すくい面部r2に近づくにつれ、傾きが大きくなってもよい。つまり、第2切れ刃部9bの第2すくい面部r2は、第1切れ刃部9aの第1すくい面部r1の第1コーナ6aのコーナすくい面部r3付近よりも中間面Mに対して大きく傾き得る。外周側と比較して内周側ですくい角が大きくなるように第1切れ刃部9aのすくい角を変化させることで、第1切れ刃部9aで生成される切りくずは、より内周側に向かって流出しやすくなる。このため、切削インサート1の外側面と被加工物との間に切りくずが噛み込まれたり、切りくずが被加工物の加工面に衝突したりすることがよりいっそう防止される。また、コーナ切れ刃10のコーナすくい面部r3は、第1すくい面部r1の第1コーナ6a付近と第2すくい面部r2との間の傾きを有し、それらと滑らかに接続するように傾きが変化するとよい。
【0060】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はその実施形態に限定されない。本発明は種々の変更が可能であり、本願の請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲から逸脱しない限り、種々の置換、変更が可能である。