(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6292445
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
G01P 1/08 20060101AFI20180305BHJP
G01D 13/12 20060101ALI20180305BHJP
G01R 5/16 20060101ALI20180305BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
G01P1/08 B
G01D13/12
G01R5/16 E
B60K35/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-99289(P2014-99289)
(22)【出願日】2014年5月13日
(65)【公開番号】特開2015-215283(P2015-215283A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2017年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小黒 真
(72)【発明者】
【氏名】桜井 政江
【審査官】
森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−308563(JP,A)
【文献】
実開昭61−163982(JP,U)
【文献】
特許第4237432(JP,B2)
【文献】
特公平7−117547(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P1/
B60K35/
G01D13/
G01R5/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両情報を入力する入力手段と、
少なくとも2つの異なる分解能の目盛間隔で構成した指標と、
前記指標を指示する指針と、
前記入力手段から入力した車両情報に遅延を持たせて指示値を決定し、前記指示値に対応する前記指標の位置を前記指針で指示させる指針駆動手段と、
を備えた車両用表示装置であって、
前記指針駆動手段は、現在の指示値と前記入力した車両情報との差分を前記遅延の度合を示す遅延補正値で除算したものに前記現在の指示値に加えた遅延処理後車両情報を求め、前記遅延処理後車両情報の過去複数回分の平均値を新たな指示値として決定し、前記新たな指示値に対応する前記指標の位置を前記指針で指示させ、
前記指針駆動手段は、前記入力した車両情報に対応する前記指標の目盛間隔に応じて前記遅延補正値を前記指標の前記目盛間隔が大きいほど小さく設定する
ことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記指針駆動手段は、前記分解能の異なる指標の境界における前記遅延補正値の設定にヒステリシスを持たせる
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる目盛間隔が混在した同一の指標部を指針で回動指示する車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の走行速度(車速)を指示する指針式計器において、車速センサから定期的にサンプリングした値に平均処理や遅延処理を施して、指針の指示回動を滑らかにして視認性を向上させる車両用表示装置が特許文献1に開示されている。
【0003】
また、例えば車速が10km/h以下の極低速域における指針の不安定な挙動を防止するために、車速が0から所定値未満の場合は、検出された車速よりも指示が小さい第1線形駆動とし、車速が所定値以上の場合は、検出された車速と略一致するような第2線形駆動に切り替える車両用表示装置が特許文献2に開示されている。
【0004】
また、車両用表示装置の視認性の向上を目的として、指針の指示値の下限値から上限値における指標部の目盛間隔のうち、読み取り精度を高く設定したい帯域の目盛間隔を、その他の帯域に比べて広くとって読み取り精度を向上させるものが特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−327664号公報
【特許文献2】特開2003−139578号公報
【特許文献3】特開平1−096559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、異なる目盛間隔が混在した同一の指標部を指針で回動指示する場合においては、指示値の変化量に対応する回動すべき角度(分解能)の違いから、すべての指示領域で同一の遅延処理を施すと、異なる目盛間隔の指標部の境界部分で指針の回動が微細に揺れて商品性を損なうという課題があり、前述した特許文献1乃至3の何れに開示される技術を用いても解消されない。
【0007】
本発明は、上述した課題を鑑みてなされたものであり、異なる目盛間隔が混在した同一の指標部を指針で回動指示するにあたって、商品性を損なうことなく滑らかに回動指示させる車両用表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車両用表示装置は、
車両情報を入力する入力手段と、
少なくとも2つの異なる分解能の目盛間隔で構成した指標と、
前記指標を指示する指針と、
前記入力手段から入力した車両情報に遅延を持たせて指示値を決定し、前記指示値に対応する前記指標の位置を前記指針で指示させる指針駆動手段と、
を備えた車両用表示装置であって、
前記指針駆動手段は、現在の指示値と前記入力した車両情報との差分を前記遅延の度合を示す遅延補正値で除算したものに前記現在の指示値に加えた遅延処理後車両情報を求め、前記遅延処理後車両情報の過去複数回分の平均値を新たな指示値として決定し、前記新たな指示値に対応する前記指標の位置を前記指針で指示させ、
前記指針駆動手段は、
前記入力した車両情報に対応する前記指標の目盛間隔に応じて
前記遅延補正値を前記指標の前記目盛間隔が大きいほど小さく設定する。
【0009】
また、好ましくは、本発明に係る車両用表示装置の前記指針駆動手段は、
前記分解能の異なる指標の境界における前記遅延補正値の設定にヒステリシスを持たせる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、異なる目盛間隔が混在した同一の指標部を指針で回動指示するにあたって、商品性を損なうことなく滑らかに回動指示させる車両用表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態である車両用表示装置の正面図。
【
図2】同実施形態である車両用表示装置の電気的構成図。
【
図3】同実施形態である車両用表示装置の制御フローチャート図。
【
図4】同実施形態である車両用表示装置における入力車速と指針の指示角度との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
【0013】
本発明に係る車両用表示装置1は、指針2と、指標3と、指針駆動手段4と、入力手段5と、を備えた指針式計器である。車両用表示装置1は、例えばCAN(Controller Area Network)からなる入力手段5から車速、エンジン回転数、残燃料量などの各種車両情報を入力し、指針駆動手段4が入力した車速に応じた指標3の位置を指針2で指示することで、車両用表示装置1が搭載された車両の運転者に車速を提示する。
【0014】
指標3は、例えば、文字板上に印字された目盛と指標数字であり、0km/hに対応する目盛を始端として、0〜100km/hの目盛を1km/h当たり1.135°の分解能で構成した第1指標3aと、第1指標3aの終端(100km/h)を始端として100〜220km/hの目盛を1km/h当たり0.75°の分解能で構成した第2指標3bとで構成する。
【0015】
指針駆動手段4は、例えば、所定プログラムや各種データの格納、演算時の記憶領域などに用いる記憶装置と、前記所定プログラムに従って演算処理するためのCPUなどで構成したマイクロコンピュータと、前記マイクロコンピュータに制御されて指針を所定角度に回動させるステッピングモータと、が実装された回路基板であり、入力手段5から入力される車両情報に応じて、前記マイクロコンピュータが前記ステッピングモータを制御することで指針を所定角度に回動させる。
【0016】
以下に、指針駆動手段4が入力手段5から入力される車速を指針2で指示する制御手順について説明する。
【0017】
まず、指針駆動手段4は、入力手段5から入力される車速を、数十ミリ秒の周期でサンプリングし、サンプリングした車速に基づいて、時刻tにおける目標車速D
tを決定する(
図3のS1)。
【0018】
次に指針駆動手段4は、目標車速D
tが第1指標3aと第2指標3bのどちらの範囲に属するかを判定し、目標車速D
tが第1指標3aに属する場合は、後述する遅延補正値Nを10に設定し、目標車速D
tが第2指標3bに属する場合は、後述する遅延補正値Nを15に設定する(
図3のS2)。
【0019】
次に指針駆動手段4は、現在の指示値X
t-1と目標車速D
tとの差分を遅延補正値Nで除算したものを、現在の指示値X
t-1に加えて時刻tにおける遅延処理後車速D’
tを求める(
図3のS3)。
ここで、遅延補正値Nが小さいほど、目標車速D
tへ到達する時間が短くなり応答性が良くなる一方で、サンプリングした車速に過敏に応答するあまり指針の跳ね上がりが発生する虞がある。
【0021】
次に指針駆動手段4は、
図3のS4で求められた遅延処理後車速D’
tと、同様に求められた過去M−1回分の遅延処理後車速D’の平均値D’
avgを次式(数2)で求め、これを時刻tにおける指針の指示値X
tとする(
図3のS4)。Mはサンプリング周期に応じて適切に設定し、例えば、サンプリング周期が数十ミリ秒の場合は、5回程度が好ましい。
【0023】
次に指針駆動手段4は、
図4に示す指示車速X
tに対応する車速に応じた0km/hに対応する目盛からの相対角度θを指針が指示するように、指針を回動制御する(
図3のS5)。
【0024】
上述した
図3のS1〜S5の制御手順を繰り返すことで、異なる目盛間隔の指標部の境界部分(第1指標3aと第2指標3bの境界部分)で指針の回動が微細に揺れることなく、指針駆動手段4が入力手段5から入力される車速に追従して滑らかに指針を回動指示させることができる。
【0025】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらに限らず、第1指標3aと第2指標3bでそれぞれ目標車速D
tに対する応答性を変更するものであれば良い。例えば、
図3のS4の平均処理における定数Mを変更することであっても良い。
【0026】
また、
図3のS2おける遅延補正値Nの設定は、第1指標3aと第2指標3bの境界部分にヒステリシスを持たせても良い。
【0027】
また、指標3は、文字板上に印字されたものに限らず、例えば液晶表示器に表示された画像で構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、例えば、自動車やオートバイ、あるいは農業機械や建築機械を備えた移動体に搭載される車両情報の表示装置として好適である。
【符号の説明】
【0029】
1 …車両用表示装置
2 …指針
3 …指標
3a …第1指標
3b …第2指標
4 …指針駆動手段
5 …入力手段