【実施例】
【0035】
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は下記の実施例のみに限定されるものではない。
【0036】
なお、以下の実施例において、実験材料及び操作は下記のとおり行った。
(S)−2−[3−[(R)−1−カルボキシ−2−メルカプトエチル]ウレイド−ペンタン二酸(化合物
1)、(2S)−2−アミノ−6−(2,5−ジヒドロ−2,5−ジオキソ−1H−ピロール)−1‐へキサン酸・塩酸塩(化合物
5a)及びN−(5−アミノペンチル)マレイミド・塩酸塩(化合物
5b)は、既報(非特許文文献3)の記載に従って調製した化合物を使用した。N−スクシンイミジル 4−フルオロベンゾエート(化合物
6)及びN−(4−フルオロベンゾイル)−グリシン(化合物
9a)は既報(J Labelled Compd RAD, 53(4), 186-191; 2010)の記載に従って調製した化合物を使用した。 中圧分取液体クロマトグラフにはW−Prep 2XY(YAMAZEN社製)を使用した。
分取薄層クロマトグラフィー(PTLC)には、PLC Silica gel 60 F
254,0.5mm(メルク社製)を使用した。
実施例中使用した水は、MQ Integra15(日本ミリポア社製)で調製した。
逆相高速液体クロマトグラフィー(逆相HPLC)は、LC−20AD(島津製作所社製)、SPD−20A UV検出器(波長220nm及び254nm)(島津製作所社製)、放射線検出器(NDW−351(日立アロカメディカル社製)、カラムとしてYMC Pack−ODS AQ(20×250mm)を使用し、移動相はメタノールと水(共に0.1体積%トリフルオロ酢酸を含有)を用い、流速5mL/min、メタノール濃度のグラディエントは30体積%‐80体積%(60分)とした。
1H−NMRスペクトルは、LNM−AL500(JEOL社製)を用いて測定した。溶媒としては、重クロロホルム(CDCl
3)、ジメチルスルホキシド−d6(DMSO−d6),重メタノール(CD
3OD),重水(D
2O)を用い、テトラメチルシラン(Euriso−top社製)を内部標準とした。
マススペクトルは、LCMS−2010 EV(島津製作所社製),GCMS−QP2010 Plus(島津製作所社製),又はJMS−SX 102A QQ(JEOL社製)を使用した。
ヒト前立腺がん細胞:LNCaP(PSMA陽性)、及び、PC−3は、DSファーマバイオメディカル社から購入し、10%ウシ胎児血清、グルタミン、抗体(ペニシリン/ストレプトマイシン)ロスウェルパーク記念研究所1640培地(RPMI培地)で、高湿度CO
2インキュベーター(37℃/5%二酸化炭素)内にて培養した。
C.B.−17/Icr +/+ Jclマウス、及び、C.B.−17/Icr scid/scid Jclマウス(いずれも雄性)は、日本クレア社から購入したものを使用した。
腫瘍移植マウスとしては、上記培養したヒト前立腺がん細胞を2.5g/Lトリプシン/1mmol/Lエチレンジアミンテトラ酢酸で処理し、リン酸バッファー生理食塩液で再懸濁したものと、BDマトリゲル
TM基底膜マトリックスとの混合物(1:1、100μL)を1〜5×10
6細胞/匹ずつ、5週齢のC.B.−17/Icr scid/scid Jclマウスに移植(右脚にPC−3、左脚にLNCaP)して、腫瘍の大きさが約5〜10mmになるまで飼育したものを使用した。
【0037】
実施例1:(2S)−2−(3−((1R)−1−カルボキシ−2−((1−((S))−5−カルボキシ−5−(4−フルオロベンズアミド)ペンチル−2,5−ジオキソピロリジン−3−イル)チオ)ウレイド)ペンタン二酸(8a)の調製
図1のスキームに従い、下記(1)〜(2)の手順で調製した。
【0038】
(1)(S)−6−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)−2−(4−フルオロベンズアミド)ヘキサン酸(7a)の調製
化合物
6(45mg)のアセトニトリル溶液(1mL)に化合物
5a(50mg)とN,N−ジイソプロピルエチルアミン(49mg)を加えて、室温(25℃)下6時間撹拌した。反応溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ込み、酢酸エチルで抽出した。硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下溶媒を留去した。PTLC(クロロホルム:メタノール=10:1(体積比))で粗精製を行い、その後に逆相HPLCで精製し、化合物
7a(7.5mg,収率11%)を得た。HPLC保持時間:52分。
1H−NMR(CD
3OD,500MHz)δ:1.39−1.46(m,2H),1.47−1.69(m,2H),1.81−2.03(m,2H),3.51(t,J=6.87Hz,2H),4.54(m,2H),6.77(s,2H),7.19(m,2H),7.90(m,2H)。
ESI−MS m/z:349[M+H]
+。
【0039】
(2)化合物(8a)の調製
化合物
7a(7.5mg)のアセトニトリル溶液(0.1mL)に化合物
1(6.3mg)の水溶液(0.7mL)を加え、2mol/L水酸化ナトリウム水溶液でpH7にした。室温(25℃)下2時間撹拌した後、逆相HPLCで精製し、化合物
8a(7.3mg,収率52%)を得た。HPLC保持時間:43分。
1H−NMR(D
2O,500MHz)δ:1.20−1.34(m,2H),1.45−1.56(m,2H),1.70−2.08(m,4H),2.37(dt,J=4.01,7.45Hz,2H),2.46(m,1H),2.77−3.17(m,3H),3.40(t,J=6.30Hz,2H),3.86(m,1H),4.15(m,1H),4.35−4.43(m,2H),7.12(t,J=8.59Hz,2H),7.71(dd,J=8.59,5.73Hz,2H)。
FAB−MS m/z:643[M+H
+]。
HRFAB
+−MS:calcd for C
26H
32N
4O
12FS,643.1725[M+H
+];found 643.1721。
【0040】
実施例2: (2S)−2−(3−((1R)−1−カルボキシ−2−((1−(5−(4−フルオロベンズアミド)ペンチル)−2,5−ジオキソピロリジン−3−イル)チオ)エチル)ウレイド)ペンタン二酸(8b)の調製
図1のスキームに従い、下記(1)〜(2)の手順で調製した。
【0041】
(1)N−(5−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)ペンチル−4−フルオロベンズアミド(7b)の調製
化合物
6(54mg)のアセトニトリル溶液(1.5mL)に化合物
5b(50mg)とN,N−ジイソプロピルエチルアミン(30mg)を加えて、室温(25℃)下4時間撹拌した。反応溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ込み、酢酸エチルで抽出した。硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下溶媒を留去した。中圧分取液体クロマトグラフ(ヘキサン:酢酸エチル=1:1(体積比))で精製し、化合物
7b(54mg,収率77%)を得た。
1H−NMR(CDCl
3,500MHz)δ:1.37(m,2H),1.66(m,4H),3.44(dt,J=6.30,5.73Hz,2H),3.55(t,J=6.87Hz,2H),6.09(broad s,1H),6.67(s,2H),7.11(m,2H),7.78(m,2H)。
EI−MS m/z:304[M]
+,123(100),95(25)。
【0042】
(2)化合物(8b)の調製
化合物
7b(6.2mg)のアセトニトリル溶液(0.15mL)に化合物
1(6.0mg)の水溶液(0.75mL)を加え、2mol/L水酸化ナトリウム水溶液でpH7にした。室温(25℃)下4時間撹拌した後、逆相HPLCで精製し、化合物
8b(5.5mg,収率45%)を得た。HPLC保持時間:48分。
1H−NMR(D
2O,500MHz)δ:1.19(tt,J=8.02,7.45Hz,2H),1.49(m,4H),1.847(m,1H),2.04(m,1H),2.38(m,2H),2.48(m,1H),2.80−3.16(m,3H),3.24(t,J=6.59Hz,2H),3.40(t,J=6.59Hz,2H),3.87(m,1H),4.15(m,1H),4.36(dd,J=6.87,5.16Hz,1H),7.11(t,J=8.59Hz,2H),7.65(dd,J=8.59,5.16Hz,2H)。
FAB−MS m/z:599[M+H
+]。
HRFAB
+−MS:calcd for C
25H
32N
4O
10FS,599.1828[M+H
+];found 599.1823。
【0043】
実施例3:(2S)−2−(3−(1R)−1−カルボキシ−2−((1−(S)−5−カルボキシ−5−(2−(4−フルオロベンズアミド)アセタミド)ペンチル−2,5−ジオキソピロリジン−3−イル)チオ)エチル)ウレイド)ペンタン二酸(12a)の調製
図2のスキームに従い、下記(1)〜(3)の手順で調製した。
【0044】
(1)N−[2−[(2,5−ジオキソ−1−ピロリジニル)オキシ]−2−オキソエチル]−4−フルオロベンズアミド(10a)の調製
化合物
9a(200mg)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液(3mL)にN−ヒドロキシスクシンイミド(117mg)と水溶性カルボジイミド塩酸塩(194mg)を加えて室温(25℃)下1時間撹拌した。反応溶液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ込み、酢酸エチルで抽出した。硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下溶媒を留去した。生じた沈殿を濾取し、クロロホルムで洗浄した。(127mg, 収率43%)
1H−NMR(DMSO−d6,500MHz)δ:2.81(s,4H),4.43(d,J=5.73Hz,2H),7.34(t,J=8.59Hz,2H),7.95(m,2H),9.20(t,J=5.73Hz,1H)。
【0045】
(2)(S)−6−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)−2−(2−(4−フルオロベンズアミド)アセタミド)ヘキサン酸(11a)の調製
化合物
10a(74mg)のアセトニトリル溶液(2.5mL)に化合物
5a(66 mg)とN,N−ジイソプロピルエチルアミン(65mg)を加えて室温(25℃)下6時間撹拌した。反応溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ込み、酢酸エチルで抽出した。硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下溶媒を留去した。PTLC(クロロホルム:メタノール=10:1(体積比))で粗精製を行い、その後に逆相HPLCで精製し、化合物11a(33mg,収率33%)を得た。
HPLC保持時間:48分。
1H−NMR(DMSO−d6,500MHz)δ:1.26(m,2H),1.48(m,2H),1.59(m,1H),1.72(m,1H),3.38(t,J=6.87Hz,2H),3.87(d,J=5.73Hz,2H),3.93(m,2H),4.17(m,1H),6.99(s,2H),7.31(t,J=8.59Hz,2H),7.94(m,2H),8.14(d,J=8.02Hz,1H),8.70(t,J=5.73Hz,1H)。
ESI−MS m/z:406[M+H]
+。
【0046】
(3)化合物(12a)の調製
化合物
11a(13.8mg)のアセトニトリル溶液(0.3mL)に化合物
1(10mg)の水溶液(0.75mL)を加え、2mol/L水酸化ナトリウム水溶液でpH7にした。室温(25℃)下3時間撹拌し、逆相HPLCで精製して、化合物
12a(9.0mg,収率39%)を得た。HPLC保持時間:41分。
1H−NMR(D
2O,500MHz)δ:1.23(m,2H),1.49(m,2H),1.66(m,1H),1.84(m,2H),2.06(m,1H),2.39(m,2H),2.56(m,1H),2.95−3.26(m,3H),3.42(t,J=6.82Hz,2H),3.94(m,1H),4.03(m,2H),4.17(m,1H),4.30(m,1H),4.44(m,1H),7.16(t,J=8.59Hz,2H),7.77(m,2H)。
FAB−MS m/z:700[M+H
+]。
HRFAB
+−MS:calcd for C
28H
35N
5O
13FS,700.1942[M+H
+];found 700.1936。
【0047】
実施例4:(2S)−2−(3−(1R)−1−カルボキシ−2−((1−(5−(2−(4−フルオロベンズアミド)アセタミド)ペンチル−2,5−ジオキソピロリジン−3−イル)チオ)エチル)ウレイド)ペンタン二酸(12b)の調製
図2のスキームに従い、下記(1)〜(2)の手順で調製した。
【0048】
(1)N−(2−((5−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)ペンチル)アミノ−2−オキソエチル)−4−フルオロベンズアミド(11b)の調製
実施例3(1)と同じ方法で合成した化合物
10a(50mg)のアセトニトリル溶液(2mL)に化合物
5b(37mg)とN,N−ジイソプロピルエチルアミン(44mg)を加えて室温(25℃)下3時間撹拌した。反応溶液を飽和塩化アンモニウム溶液に注ぎ込み、酢酸エチルで抽出した。飽和食塩水で有機相を洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧下溶媒を留去し、中圧分取液体クロマトグラフ(クロロホルム:メタノール=10:1(体積比))で精製し、化合物
11b(37mg,収率60%)を得た。
1H−NMR(CDCl
3,500MHz)δ:1.31(m,2H),1.59(m,4H),3.30(m,2H),3.52(t,J=7.16Hz,2H),4.10(d,J=5.16Hz,2H),6.10(broad s,1H),6.69(s,2H),6.98(broad s,1H),7.13(t,J=8.59Hz,2H),7.85(m,2H)。
ESI−MS m/z:362[M+H]
+。
【0049】
(2)化合物(12b)の調製
化合物
11b(8.6mg)のアセトニトリル溶液(0.15mL)に化合物
1(7.0mg)の水溶液(0.75mL)を加え、2mol/L水酸化ナトリウム水溶液でpH7にした。室温(25℃)下2時間撹拌した。逆相HPLCで精製し、化合物
12b(6.0mg,収率38%)を得た。HPLC保持時間:44分。
1H−NMR(D
2O,500MHz)δ:1.15(m,2H),1.43(m,4H),1.85(m,1H),2.06(m,1H),2.39(m,2H),2.58(m,1H),2.95−3.24(m,6H),3.39(t,J=7.16Hz,2H),3.94(s,2H),4.16(dd,J=5.16,9.16Hz,1H),4.42(m,1H),7.16(t,J=8.59Hz,2H),7.77(m,2H)。
FAB−MS m/z:656[M+H
+]。
HRFAB
+−MS:calcd for C
27H
34N
5O
11FS,656.2040[M+H
+];found 656.2038。
【0050】
実施例5: (2S)−2−(3−((1R)−1−カルボキシ−2−((1−((S)−5−カルボキシ−5−(5−(4−フルオロベンズアミド)ペンタミド)ペンチル)−2,5−ジオキサピロリジン−3−イル)チオ)エチル)ウレイド)ペンタン二酸(12c)の調製
図2のスキームに従い、下記(1)〜(4)の手順で調製した。
【0051】
(1)5−[(4−フルオロベンゾイル)アミノ]ペンタン酸(9b)の調製
化合物
6(460mg)のアセトニトリル溶液(5mL)に5−アミノ吉草酸(250mg)とN,N−ジイソプロピルエチルアミン(275mg)を加えて室温(25℃)下4時間撹拌した。反応溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ込み、酢酸エチルで抽出した。硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下溶媒を留去した。生じた沈殿を濾取してクロロホルムで洗浄した。(298mg,収率64%)
1H−NMR(CD
3OD,500MHz)δ:1.67(m,4H),2.35(t,J=6.87Hz,2H),3.39(m,2H),7.17(t,J=8.59Hz,2H), 7.86(m,2H),8.46(s,1H).
EI−MS m/z:238[M]
+,180(13),166(4),152(8),123(100),95(28)。
【0052】
(2)N−[5−[(2,5−ジオキソ−1−ピロリジニル)オキシ]−5−オキソペンチル]−4−フルオロベンズアミド(10b)の調製
化合物
9b(297mg)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液(7mL)にN−ヒドロキシスクシンイミド(143mg)とN,N´−ジイソプロピルカルボジイミド(157mg)を加えて室温(25℃)下一晩撹拌した。反応溶液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ込み、酢酸エチルで抽出した。硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製して化合物10bを得た(211mg,収率50%)。
1H−NMR(CDCl
3,500MHz)δ:1.76(m,2H),1.87(m,2H),2.69(t,J=6.87Hz,2H),2.85(s,4H),3.50(dd,J=6.87,12.6Hz),7.10(m,2H),7.79(m,2H).
EI−MS m/z:336[M]
+,333(4),180(9),123(100),95(19).
【0053】
(3)(S)−6−(2,5−ジオキソ−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)−2−(5−(4−フルオロベンズアミド)ペンタミド)ヘキサン酸(11c)の調製
化合物
10b(80mg)のアセトニトリル溶液(2mL)に化合物
5a(62mg)とN,N−ジイソプロピルエチルアミン(61mg)を加えて室温(25℃)下4時間撹拌した。反応溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ込み、酢酸エチルで抽出した。硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下溶媒を留去した。PTLC(クロロホルム:メタノール=10:1(体積比))で粗精製を行い、その後に逆相HPLCで精製し、化合物
11c(40mg,収率37%)を得た。HPLC保持時間:53分。
1H−NMR(CD
3OD,500MHz)δ:1.37(m,2H),1.53−1.89(m,8H),2.29(t,J=7.16Hz,2H),3.38(m,2H),3.47(t,J=6.87Hz,2H),4.33(dt,J=4.58,9.16Hz,1H),6.77(s,2H),7.16(t,J=8.59Hz,2H),7.86(m,2H)。
ESI−MS m/z:448[M+H]
+。
【0054】
(4)化合物(12c)の調製
化合物
11c(10mg)のアセトニトリル溶液(0.2mL)に化合物
1(6.6mg)の水溶液(0.8mL)を加え、2mol/L水酸化ナトリウム水溶液でpH7にした。室温(25℃)下2時間撹拌した。逆相HPLCで精製し、化合物
12c(9.0mg,収率55%)を得た。HPLC保持時間:46分。
1H−NMR(D
2O,500MHz)δ:1.20(m,2H),1.43(m,2H),1.52−1.65(m,5H),1.74−1.90(m,2H),2.07(m,1H),2.25(t,J=6.87Hz,2H),2.39(m,2H),2.41−2.53(m,3H),2.94−3.18(m,3H),3.92(m,1H),4.20(m,2H),4.45(m,1H),7.12(t,J=8.59Hz,2H),7.68(m,2H)。
FAB−MS m/z:742[M+H
+]。
HRFAB
+−MS:calcd for C
31H
41N
5O
13FS,742.2413[M+H
+];found 742.2406。
【0055】
実施例6:(2S)−2−(3−((1R)−1−カルボキシ−2−((1−(5−(5−(4−フルオロベンズアミド)ペンタミド)ペンチル)−2,5−ジオキソピロリジン−3−イル)チオ)エチル)ウレイド)ペンタン二酸(12d)の調製
図2のスキームに従い、下記(1)〜(2)の手順で調製した。
【0056】
(1)N−(5−((5−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)ペンチル)アミノ)−5−オキソペンチル)−4−フルオロベンズアミド(11d)の調製
実施例5(1)〜(2)の方法で合成した化合物
10b(50mg)のアセトニトリル溶液(1.3mL)に化合物
5b(33mg)、及び、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(38mg)を加えて室温(25℃)下3時間撹拌した。反応溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ込み、酢酸エチルで抽出した。飽和食塩水で有機相を洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧下溶媒を留去し、中圧分取液体クロマトグラフ(クロロホルム:メタノール=10:1(体積比))で精製し、化合物
11d(56mg,収率93%)。
1H−NMR(CDCl
3,500MHz)δ:1.30(m,2H),1.50−1.69(m,6H),1.75(m,2H),2.25(t,J=6.87Hz,2H),3.25(m,2H),3.46(m,2H),3.51(t,J=7.16Hz,2H),5.62(broad s,1H),6.68(s,2H),6.74(broad s,1H),7.10(t,J=8.59Hz,2H),7.84(m,2H)。
ESI−MS m/z:404[M+H]
+。
【0057】
(2)化合物(12d)の調製
化合物
11d(8.3mg)のアセトニトリル溶液(0.15mL)に化合物
1(6.0mg)の水溶液(1.0mL)を加え、2mol/L水酸化ナトリウム水溶液でpH7にした。室温(25℃)下2時間撹拌した。逆相HPLCで精製し、化合物
12d(5.7mg,収率40%)を得た。HPLC保持時間:49分。
1H−NMR(D
2O,500MHz)δ:1.12(m,2H),1.37(m,4H),1.53(m,4H),1.86(m,1H),2.05(m,1H),2.16(t,J=6.87Hz,2H),2.39(dd,J=4.58,6.87Hz,2H),2.52(m,1H),2.93−3.17(m,5H),3.29(m,4H),3.91(m,1H),4.16(dd,J=5.16,8.59Hz,1H),4.43(broad s,1H),7.12(t,J=8.59Hz,2H),7.67(m,2H)。
FAB−MS m/z: 698[M+H
+]。
HRFAB
+−MS:calcd for C
30H
41N
5O
11FS,698.2504[M+H
+];found 698.2507。
【0058】
実施例7:(S)−5−((1−カルボキシ−5−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)ペンチル)アミノ−5−オキソペンタン−1−アミニウム塩化物(15a)の調製
図4のスキームに従い、下記(1)〜(3)の手順で調製した。
【0059】
(1)2,5−ジオキソピロリジン−1−イル 5−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)ペンタノエート(13)の調製
5−アミノ吉草酸の1,4−ジオキサン溶液(333mg,3mL)に、二炭酸ジ−tert−ブチル(0.75g)と2mol/L水酸化ナトリウム水溶液(0.23g,3mL)を0℃で加えた。室温(25℃)で16時間撹拌し、1mol/L塩酸と酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。減圧下溶媒を留去し、得られた無色の油状物質をジメチルホルムアミド(6mL)に溶解させた。N,N′−ジイソプロピルカルボジイミド(0.35g)とN−ヒドロキシスクシンイミド(0.32g)を加えて室温下16時間撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と酢酸エチルで抽出し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧下溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=1/1(体積比))で精製し、化合物
13(0.48g,収率54%)を得た。
1H−NMR(DMSO−d6,500MHz)δ:6.82(t,J=5.16Hz,1H),2.93(m,2H),2.81(s,4H),2.66(t,J=7.45Hz,2H),1.59(tt,J=7.45Hz,7.45Hz,2H),1.46(tt,J=7.45Hz,7.45Hz,2H)。
【0060】
(2)(S)−2−(5−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)ペンタナミド)−6−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)ヘキサン酸(14a)の調製
化合物
13のアセトニトリル溶液(126mg/4mL)に化合物
5a(105mg)とN,N−ジイソプロピルエチルアミン(103mg)を加えて室温(25℃)で6時間撹拌した。飽和塩化ナトリウム水溶液と酢酸エチルで抽出し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧下溶媒を留去し、PTLC(クロロホルム/メタノール=9/1(体積比))で精製し、化合物
14a(35mg,収率21%)を得た。
1H−NMR(CD
3OD,500MHz)δ:6.79(s,2H),4.13(s,1H),3.49(t,J=6.87Hz,2H),3.05(t,J=7.45Hz,2H),2.25(t,J=7.45Hz,2H),1.86(m,1H),1.64(m,5H),1.49(m,2H),1.42(s,9H),1.36(t,J=6.87Hz,2H)。
ESI−MS m/z:426[M+H
+]。
【0061】
(3)化合物(15a)の調製
化合物
14a(35mg)に4mol/L塩酸の酢酸エチル溶液(4mL)を加えて、室温(25℃)下で容器を振とうさせた。生じた白色沈殿を濾取して酢酸エチルで洗浄した後、逆相HPLCで精製し、化合物15a(22mg,収率74%)を得た。HPLC保持時間:25分。
1H−NMR(D
2O,500MHz)δ:6.71(s,2H),4.18(m,1H),3.36(m,2H),2.89(m,2H),2.23(m,2H),1.76(m,2H),1.44−1.55(m,6H),1.23(m,2H)。
ESI−MS m/z:326[M+H
+]。
【0062】
実施例8:5−((5−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)ペンチル)アミノ)−5−オキソペンタン−1−アミニウム塩化物(15b)の調製
図4のスキームに従い、下記(1)〜(2)の手順で調製した。
【0063】
(1)tert−ブチル(5−((5−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)ペンチル)アミノ)−5−オキソペンチル)カルバメート(14b)の調製
実施例7(1)で得られた化合物
13のアセトニトリル溶液(80mg/2.5mL)に化合物
5b(56mg)とN,N−ジイソプロピルエチルアミン(66mg)を加えて室温(25℃)で5時間撹拌した。飽和塩化ナトリウム水溶液と酢酸エチルで抽出し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧下溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=10/1(体積比))で精製し、化合物
14b(92mg,収率95%)を得た。
1H−NMR(CD
3OD,500MHz)δ:7.90(broad s,1H),6.80(s,2H),6.58(broad s,1H),3.49(t,J=6.87Hz,2H),3.14(m,2H),3.04(m,2H),2.17(t,J=7.45Hz,2H),1.45-1.63(m,6H),1.42(s,9H),1.29(m,2H)。
ESI−MS m/z:382[M+H
+]。
【0064】
(2)化合物(15b)の調製
化合物
14b(70mg)に4mol/L塩酸の酢酸エチル溶液(10mL)を加えて、室温(25℃)下で容器を振とうさせた。生じた白色沈殿を濾取して酢酸エチルで洗浄し、化合物
15b(22mg,収率38%)を得た。
1H−NMR(D
2O,500MHz)δ:6.74(s,2H),3.40(t,J=6.87Hz,2H),3.06(t,J=6.87Hz,2H),2.91(t,J=6.30Hz,2H),2.17(t,J=6.87Hz,2H),1.38−1.56(m,8H),1.18(m,2H)。
【0065】
実施例9:放射化学合成
前駆体として化合物
5a,化合物
5b,化合物
15a,化合物
15bを用い、
図3及び
図4のスキームに従い、下記の通り、それぞれに対応する[
18F]フッ素標識化合物;[
18F]
8a,[
18F]
8b,[
18F]
12c,[
18F]
12dを調製した。まず、N−スクシンイミジル 4−[
18F]フルオロベンゾエートを、既報(Nat Protoc. 2006;1:1655-1661)記載の方法を用いて合成した。各前駆体0.5mgにN−スクシンイミジル 4−[
18F]フルオロベンゾエートのアセトニトリル溶液(6−600MBq、50μL)とN,N−ジイソプロピルエチルアミン(10μL)を加えて室温(25℃)で5分反応させた。反応溶液に化合物
1(1.2mg)の水溶液(100μL)を加えて室温で5分反応させた。反応後に1mol/L塩酸を50μL加えて逆相HPLCで精製した。精製後はSep−Pak Light C18 Cartridgeに吸着させて水1mLで洗浄、メタノールで抽出した。窒素ガス気流下メタノールを除去し、生理食塩水に溶解させて各実験にて使用した。いずれの[
18F]フッ素標識化合物も放射化学的純度95%以上で得た。各[
18F]フッ素標識化合物の放射化学的収率(RCY,減衰補正)とHPLC保持時間(t
R)を以下の表1に示す。
なお、保持時間(t
R)は、下記条件の保持時間である。
カラム:COSMOCIL 5C18 AR−II 4.6×150mm(ナカライテスク社製)。
流速:1ml/min
移動相:水、メタノール(共に0.1%トリフルオロ酢酸を含む)。
グラディエント:メタノール30%−80%(60min)。
各[
18F]フッ素標識化合物は1−オクタノールと0.1mmol/Lリン酸バッファー(pH7.4)を用いて分配計数(log D)を算出した。結果は以下の表1に併せて表記した。
【0066】
【表1】
【0067】
実施例10:親和性評価
ヒト前立腺がん細胞(LNCaP)を用いた結合阻害実験にて、実施例1〜6で得られた6つのウレア誘導体化合物;
8a,
8b,
12a,
12b,
12c,
12dの親和性を評価した。ポジティブコントロールとして、2−(ホスホノメチル)ペンタン二酸(2−PMPA、Tocris Bioscience社製、以下同じ)の親和性を評価した。N−[N−[(S)−1,3−ジカルボキシプロピル]カルバモイル]−S−3−ヨード−L−チロシン([
125I]DCIT、非特許文献3と同じ方法で調製)を放射性リガンドとして用いた。12ウェルプレート(4×10
5細胞/ウェル)に播種したLNCaP細胞を5%二酸化炭素雰囲気下、37℃で48時間インキュベートした。培地を取り去り、それぞれのウェルを500μLアッセイ培地(0.5%ウシ血清アルブミンが付加されたRPMI1640培地)で2度洗浄した。[
125I]DCITのアッセイ培地溶液(29.6kBq/mL)を500μL/mLと、各ウレア誘導体化合物を加え、37℃で1時間インキュベートした。非特異的結合は、2−PMPAを0.5mmol/Lを加えることによって評価した。インキュベーションした後、各ウェルは500μLの上記アッセイ培地で二度洗浄し、細胞を0.2mol/L水酸化ナトリウム水溶液に溶解した。細胞に結合した放射能は、γカウンターで測定した。IC50値をGraphPad Prism5プログラム(GraphPad Software社製)で計算し、Ki値をCheng−Prusoff式を用いて計算した。6つのウレア誘導体化合物の親和性は以下の表2に示す通りとなった。
【0068】
【表2】
【0069】
実施例11:血漿中安定性
実施例9に示す方法で調製した[
18F]フッ素標識化合物;[
18F]
8a,[
18F]
8b,[
18F]
12c,[
18F]
12dのインビトロでの安定性を、マウス血漿を用いて評価した。マウス血漿は、C.B.−17/Icr +/+ Jcl雄性マウス(20〜22g)をイソフルランで麻酔し、心臓から血液を収集して遠心分離(1500×g)にかけ、上澄みを‐80℃で保存したものを使用した。[
18F]フッ素標識化合物(20μL、0.6−1.5MBq)をそれぞれマウス血漿100μLに加え、37℃で1時間インキュベートした。インキュベーション後、メタノール(150μL)を加え、遠心分離(5000×g)にかけた。上澄みを回収し、コスモナイスフィルター(S)(0.45μm、4mm)でろ過して、ろ液の分析を高速液体クロマトグラフィーで行った。このときの分析条件は、実施例9で示したものを用いた。その結果、各[
18F]フッ素標識化合物;[
18F]
8a,[
18F]
8b,[
18F]
12c,[
18F]
12dはいずれも、分解物を認めず95%以上が安定に存在した。
【0070】
実施例12:体内分布実験
実施例9に示す方法で調製した[
18F]フッ素標識化合物[
18F]
8a,[
18F]
8b,[
18F]
12c,[
18F]
12dの生体内分布を、ヒト前立腺がん細胞(LNCaP,PC−3)を前述の方法で移植した腫瘍移植マウス(22〜25g)を用いて評価した。生理食塩水に溶解させた各[
18F]フッ素標識化合物(100μL、37kBq)をマウス(n=4)に尾静脈投与して、投与後2,15,60分後の各組織における放射能量を組織摘出法にて評価した。各[
18F]フッ素標識化合物の生体内分布は以下の表3−1及び表3−2に示す通りとなった。表3−1及び表3−2の数値は平均±標準偏差として表記、単位は%ID/gとして示した(胃のみ%ID)。何れもLNCaPに集積し、中でも[
18F]
8aが最も高い集積を示した。PSMA非発現腫瘍(PC−3)への集積は認められなかった。
【0071】
【表3-1】
【0072】
【表3-2】
【0073】
実施例13: インビボブロッキング評価
最も高い腫瘍集積(LNCaP)を認めた化合物[
18F]
8a(100μL、37kBq)と2−PMPA(50mg/kg)を、腫瘍移植マウス(22−24g)に同時に尾静脈投与し、30分後に断頭して、実施例12の結果に対する腫瘍集積の変化を評価した。結果を
図5に示す。
図5から明らかなように、2−PMPAと同時投与を行った場合、LNCaPと血中放射能量の比は0.95となり、[
18F]
8a単独投与の場合の値16.9よりも有意に低下した。
【0074】
実施例14:PET撮像
放射性フッ素標識化合物[
18F]
8aと放射性フッ素標識化合物[
18F]
12cのPET/CT撮像を行った。PET/CT装置は、Gamma Medica-Ideas, Inc.製のものを用いた。腫瘍移植マウス(20〜25g)を2.5%イソフルラン/空気で麻酔し、温熱パッドに置いて体温を維持した。各放射性フッ素標識化合物(3.7−11.1MBq)を尾静脈投与した。競合実験は、[
18F]
8aと、2−PMPA(50mg/kg)とを含む生理食塩液(0.10mL)を尾静脈投与することにより行った。CTスキャンの後、PETスキャンを30〜64分収集した。
結果を
図6及び
図7に示す。
図6、7中、矢印で指す部位がLNCaPの移植部位であり、破線で囲んだ部分がPC−3の移植部位である。
図6及び
図7から明らかなように、いずれのプローブもLNCaPを明瞭に描出した。放射性化合物[
18F]
8aは肝臓から速やかに消失し、投与1時間後(60〜65分)には腎臓、膀胱、LNCaPに高い集積を認めた。一方、放射性化合物[
18F]
12cは投与1時間後においても肝臓に放射能の集積を認めた。
2−PMPAと放射性化合物[
18F]
8aを同時に投与した結果を
図8に示す。この場合、
図8から明らかなように、腎臓とLNCaPにおける集積が阻害され、投与1時間後にはほぼ全ての放射能が膀胱に移行した。