特許第6292606号(P6292606)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6292606
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】常温接合装置及び常温接合方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20180305BHJP
【FI】
   H01L21/02 B
【請求項の数】7
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-224204(P2013-224204)
(22)【出願日】2013年10月29日
(65)【公開番号】特開2015-85343(P2015-85343A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】315017775
【氏名又は名称】三菱重工工作機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102864
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 実
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭策
(74)【代理人】
【識別番号】100196003
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】津野 武志
(72)【発明者】
【氏名】後藤 崇之
(72)【発明者】
【氏名】木ノ内 雅人
(72)【発明者】
【氏名】井手 健介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 毅典
【審査官】 堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−283086(JP,A)
【文献】 特開2013−165253(JP,A)
【文献】 特開2007−281203(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/105474(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板を保持する第1保持機構と、
前記第1基板と対向するように第2基板を保持する第2保持機構と、
互いに異なる方向から前記第1基板と前記第2基板との間の方向へイオンビームを照射する複数のイオンビーム源と、
前記イオンビームの照射後の前記第1基板と前記第2基板とを重ね合わせて接合する圧接機構と
を具備し、
前記複数のイオンビーム源のそれぞれにおいて
照射孔の中心から前記照射孔が形成された面の法線の方向に伸びる仮想の照射軸が、前記第1基板及び前記第2基板とは交差せず、前記第1基板と前記第2基板との間を通り、
前記複数のイオンビーム源は、
第1イオンビーム源と、
前記第1イオンビーム源と対向するように配置された第2イオンビーム源と
を備え、
前記第1イオンビーム源の前記仮想の照射軸と、前記第2イオンビーム源の前記仮想の照射軸とは一致する
常温接合装置。
【請求項2】
請求項1に記載の常温接合装置において、
前記複数のイオンビーム源の各々は、
前記イオンビームを照射するイオンビーム源本体と、
前記照射軸の方向、前記照射軸に直交する略水平な方向、前記照射軸に直交する略鉛直な方向、旋回角方向、及び、仰角方向の少なくとも一つの方向に対して、前記イオンビーム源本体を移動可能とする位置調整機構と
を備える
常温接合装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の常温接合装置において、
前記第1保持機構及び前記第2保持機構の少なくとも一方と、前記複数のイオンビーム源との間に設けられ、前記複数のイオンビーム源からのイオンビームでスパッタされる複数のターゲットを更に具備する
常温接合装置。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の常温接合装置において、
前記複数のイオンビーム源の各々は、照射時間が互いに重ならないようにイオンビームを照射する
常温接合装置。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の常温接合装置において、
前記複数のイオンビーム源の各々は、前記照射孔が形成された面を覆うことが可能なシャッター機構を備え、
前記シャッター機構は、前記第1基板及び前記第2基板の少なくとも一方と同じ材料、イオンビームに対してスパッタされ難い材料及び前記第1基板と前記第2基板との接合強度を高める材料の少なくとも一つで形成されている
常温接合装置。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の常温接合装置において、
前記複数のイオンビーム源の各々は、前記照射孔が設けられたイオンビーム源の筐体正面部分が、前記第1基板及び前記第2基板の少なくとも一方と同じ材料、イオンビームに対してスパッタされ難い材料及び前記第1基板と前記第2基板との接合強度を高める材料の少なくとも一つで形成されている
常温接合装置。
【請求項7】
常温接合装置を用いた常温接合方法であって、
ここで、前記常温接合装置は、
第1基板を保持する第1保持機構と、
前記第1基板と対向するように第2基板を保持する第2保持機構と、
互いに異なる方向から前記第1基板と前記第2基板との間の方向へイオンビームを照射する複数のイオンビーム源と、
前記イオンビームの照射後の前記第1基板と前記第2基板とを重ね合わせて接合する圧接機構と
を具備し、
前記複数のイオンビーム源のそれぞれにおいて
照射孔の中心から前記照射孔が形成された面の法線の方向に伸びる仮想の照射軸が、前記第1基板及び前記第2基板とは交差せず、前記第1基板と前記第2基板との間を通り、
前記複数のイオンビーム源は、
第1イオンビーム源と、
前記第1イオンビーム源と対向するように配置された第2イオンビーム源と
を備え、
前記第1イオンビーム源の前記仮想の照射軸と、前記第2イオンビーム源の前記仮想の照射軸とは一致し、
前記常温接合方法は、
前記第1保持機構で第1基板を保持するステップと、
前記第2保持機構で第2基板を前記第1基板と対向するように保持するステップと、
前記複数のイオンビーム源で前記第1基板と前記第2基板との間の方向へイオンビームを照射するステップと、
前記圧接機構で前記イオンビームの照射後の前記第1基板と前記第2基板とを重ね合わせて接合するステップと
を具備する
常温接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温接合装置及び常温接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真空雰囲気で活性化された2枚のウェハの面同士を接触させ、それらウェハを接合する常温接合が知られている。常温接合装置では、イオンビームを用いてウェハ表面を活性化する方法と、中性原子ビームを用いてウェハ表面を活性化する方法とがある。イオンビームを用いてウェハ表面を活性化する方法では、接合される面同士が向き合うように、2枚のウェハを互いに平行に配置する。そして、その2枚のウェハが配置された空間へ、1台のイオンガンを用いて、1方向からビームを照射する。それにより、その2枚のウェハにおける接合される面が活性化される。
【0003】
そのようなウェハ表面を活性化する方法を用いた常温接合装置/方法として、例えば、特開2003−318219号公報(特許文献1)に、実装方法および装置が開示されている。この実装方法は、対向する両被接合物間に形成される間隙内に、一つの照射手段によりエネルギー波もしくはエネルギー粒子を照射して両被接合物の接合面を実質的に同時洗浄する。それとともに、洗浄中に少なくとも一方の被接合物を回転させ、洗浄された被接合物間の相対位置をアライメント後、被接合物同士を接合する。
【0004】
また、特許第3970304号公報(特許文献2)には、常温接合装置が開示されている。この常温接合装置は、接合チャンバと、上側ステージと、キャリッジと、弾性案内と、位置決めステージと、第1機構と、第2機構と、キャリッジ支持台とを具備している。接合チャンバは、上側基板と下側基板とを常温接合するための真空雰囲気を生成する。上側ステージは、前記接合チャンバの内部に設置され、前記上側基板を前記真空雰囲気に支持する。キャリッジは、前記接合チャンバの内部に設置され、前記下側基板を前記真空雰囲気に支持する。弾性案内は、前記キャリッジに同体に接合される。位置決めステージは、前記接合チャンバの内部に設置され、水平方向に移動可能に前記弾性案内を支持する。第1機構は、前記弾性案内を駆動して前記水平方向に前記キャリッジを移動する。第2機構とは、前記水平方向に垂直である上下方向に前記上側ステージを移動する。キャリッジ支持台は、前記接合チャンバの内部に設置され、前記下側基板と前記上側基板とが圧接されるときに、前記上側ステージが移動する方向に前記キャリッジを支持する。前記弾性案内は、前記下側基板と前記上側基板とが接触しないときに前記キャリッジが前記キャリッジ支持台に接触しないように前記キャリッジを支持し、前記下側基板と前記上側基板とが圧接されるときに前記キャリッジが前記キャリッジ支持台に接触するように弾性変形する。
【0005】
また、特許第4172806号公報(特許文献3)には、常温接合方法及び常温接合装置が開示されている。この常温接合方法は、複数の基板を中間材を介して常温で接合する方法である。この方法は、複数のターゲットを物理スパッタリングすることによって、前記基板の被接合面上に前記中間材を形成する工程と、前記基板の被接合面を物理スパッタリングにより活性化する工程と、を含む。
【0006】
一方、微細な電気部品や機械部品を集積化したMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)が知られている。そのMEMSを作製するには、常温接合が好適である。MEMS業界では、生産性の増大や低価格化などを目的として、MEMS製造時に使用されるウェハ(基板)の直径が大きくなってきている。また、LSI(Large Scale Integration)を三次元的に積層することにより作製される半導体デバイスが知られている。その半導体デバイスを作製するには、常温接合が好適である。半導体デバイス業界でも、同様の理由から、半導体デバイス製造時に使用されるウェハ(基板)の直径が大きくなってきている。すなわち、MEMS業界や半導体デバイス業界では、今後は、ウェハ(基板)の直径の増大が見込まれ、例えば12インチ以上のウェハは必須となると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−318219号公報
【特許文献2】特許第3970304号公報
【特許文献3】特許第4172806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
MEMSや半導体デバイスの製造時に使用されるウェハの直径の増大に伴い、常温接合装置でも、直径の大きいウェハに対応する必要がある。このために必要となる技術の一つとして、ウェハ全面を均一に活性化する技術が挙げられる。
【0009】
これまで、常温接合装置は、比較的小さい直径のウェハの表面活性化には、上記のイオンガン配置を採用してきた。すなわち、常温接合装置では、2枚のウェハが配置された空間へ、1方向からビームを照射するように、1台のイオンガンを配置していた。しかし、ウェハの直径が増大するにつれて、前述のイオンガン配置では均一かつ十分な活性表面の形成(エッチング)が難しくなると考えられる。
【0010】
なお、特許文献1(特開2003−318219号公報)の実装方法/装置では、均一な洗浄効果を得る目的で、上下に位置する被接合物(ウェハ)を回転させる。しかし、接合を行うチャンバ内でウェハを回転させる機構を具体化しようとするとデメリットも多いと考えられる。例えば、接合させる2枚のウェハを回転させるとき、接合の失敗(基板の割れ、接合ずれ)を回避すべく、それら2枚のウェハの接合される面の平行を正確に維持しつつ回転させる必要がある。そのため、極めて高精度な回転機構が必要となると考えられる。また、回転機構による回転により、回転機構や周辺部材から微細な塵などの汚れが発生すると考えられる。そのため、接合させる面に汚れが付着することを防止する方策が別途必要となる。さらに、回転機構による回転により、ウェハをチャックする機構も回転することになる。そのため、チャック機構に対する給電が困難になると考えられる。
【0011】
本発明の目的は、ウェハ(基板)の直径が大きい場合であっても、ウェハ(基板)全面を均一かつ適正に活性化して、良好な常温接合を行うことが可能な常温接合装置及び常温接合方法を提供することにある。
【0012】
この発明のこれらの目的とそれ以外の目的と利益とは以下の説明と添付図面とによって容易に確認することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下に、発明を実施するための形態で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態との対応関係の一例を示すために、参考として、括弧付きで付加されたものである。
【0014】
本発明の常温接合装置は、第1保持機構(11)と、第2保持機構(14)と、複数のイオンビーム源(17)と、圧接機構(15)とを具備している。第1保持機構(11)は、第1基板を保持する。第2保持機構(14)は、記第1基板と対向するように第2基板を保持する。複数のイオンビーム源(17)は、互いに異なる方向から第1基板と第2基板との間の方向へイオンビーム(B)を照射する。圧接機構(15)は、イオンビーム(B)の照射後の第1基板と第2基板とを重ね合わせて接合する。複数のイオンビーム源(17)は、照射孔(21)の中心から照射孔(21)が形成された面の法線の方向に伸びる仮想の照射軸(C)が、第1基板及び第2基板とは交差せず、第1基板と第2基板との間を通る。
このような常温接合装置は、複数のイオンビーム源(17)を用いて複数の方向から第1基板及び第2基板にイオンビーム(B)を照射することができる。すなわち、第1基板及び第2基板の表面をより均一にエッチングすることができる。それにより、第1基板及び第2基板が大口径であっても、第1基板及び第2基板の表面をより均一に活性化でき、接合ウェハでの接合品質を向上することができる。
【0015】
上記の常温接合装置において、複数のイオンビーム源(17)は、第1イオンビーム源(17−1)と、第1イオンビーム源(17−1)と対向するように配置された第2イオンビーム源(17−2)とを備えていてもよい。
このような常温接合装置は、2台のイオンビーム源(17)を対向するように配置して、対向する2方向からイオンビーム(B)を第1基板及び第2基板へ照射することにより、イオンビーム源(17)の数が少なくても、第1基板及び第2基板の表面をより均一に活性化することができる。
【0016】
上記の常温接合装置において、複数のイオンビーム源(17)の各々は、イオンビーム源本体(20)と、位置調整機構(22)とを備えていてもよい。イオンビーム源本体(20)は、イオンビーム(B)を照射する。位置調整機構(22)は、照射軸の方向、照射軸に直交する略水平な方向、照射軸に直交する略鉛直な方向、旋回角方向、及び、仰角方向の少なくとも一つの方向に対して、イオンビーム源本体(20)を移動可能とする。
このような常温接合装置は、イオンビーム源本体(20)の位置を微調整できるので、イオンビーム(B)の照射位置や照射方向を微調整でき、第1基板及び第2基板の表面をより均一に活性化することができる。
【0017】
上記の常温接合装置は、第1保持機構(11)及び第2保持機構(14)の少なくとも一方と、複数のイオンビーム源(17)との間に設けられ、複数のイオンビーム源(17)からのイオンビームでスパッタされる複数のターゲット(19)を更に具備していてもよい。
このような常温接合装置は、複数のイオンビーム源(17)を用いて複数の方向から第1基板及び第2基板にイオンビーム(B)を照射しつつ、スパッタ材料を供給することができる。すなわち、第1基板及び第2基板の表面をより均一にエッチングしつつ、第1基板及び第2基板の表面に中間材料をより均一に成膜することができる。それにより、第1基板及び第2基板が大口径であり、かつ、接合し難い基板であっても、第1基板と第2基板の表面の均一な中間材層により、接合が可能となり、接合強度が向上し、接合ウェハでの接合品質を向上することができる。
【0018】
上記の常温接合装置において、複数のイオンビーム源(17)の各々は、照射時間が互いに重ならないようにイオンビームを照射してもよい。
このような常温接合装置は、複数のイオンビーム源(17)が同時にイオンビーム(B)を照射しないので、照射時間中において、真空チャンバ(3)から排気すべきイオンビーム(B)の粒子を少なく抑えることができる。それにより、真空排気装置(10)の負担を軽減することができ、排気能力の小さい真空排気装置(10)を用いることもできる。
【0019】
上記の常温接合装置において、複数のイオンビーム源(17)の各々は、照射孔(21)が形成された面を覆うことが可能なシャッター機構(23)を備えていてもよい。シャッター機構(23)は、第1基板及び第2基板の少なくとも一方と同じ材料、イオンビームに対してスパッタされ難い材料及び第1基板と前記第2基板との接合強度を高める材料の少なくとも一つで形成されている。
このような常温接合装置は、イオンビーム源(17)が、他のイオンビーム源(17)のイオンビーム(B)を照射されても、所定材料で構成されたシャッター機構(23)でそのイオンビーム(B)を遮断できる。それにより、イオンビーム源(17)を構成する元素が第1基板や第2基板の表面に付着することを抑制することができる。
【0020】
上記の常温接合装置において、複数のイオンビーム源(17)の各々は、照射孔(21)が設けられたイオンビーム源の筐体正面部分(28)が、第1基板及び第2基板の少なくとも一方と同じ材料、イオンビームに対してスパッタされ難い材料及び第1基板と第2基板との接合強度を高める材料の少なくとも一つで形成されていてもよい。
このような常温接合装置は、イオンビーム源(17)が、他のイオンビーム源(17)のイオンビーム(B)を照射されても、所定材料で構成された面でそのイオンビーム(B)を遮断できる。それにより、イオンビーム源(17)を構成する元素が第1基板や第2基板の表面に付着することを抑制することができる。
【0021】
本発明の常温接合方法は常温接合装置を用いた常温接合方法である。ここで、前記常温接合装置は、第1保持機構(11)と、第2保持機構(14)と、複数のイオンビーム源(17)と、圧接機構(15)とを具備している。第1保持機構(11)は、第1基板を保持する。第2保持機構(14)は、第1基板と対向するように第2基板を保持する。複数のイオンビーム源(17)は、互いに異なる方向から第1基板と第2基板との間の方向へイオンビーム(B)を照射する。圧接機構(15)は、イオンビーム(B)の照射後の第1基板と前記第2基板とを重ね合わせて接合する。複数のイオンビーム源(17)は、照射孔(21)の中心から照射孔(21)が形成された面の法線の方向に伸びる仮想の照射軸(C)が、第1基板及び第2基板とは交差せず、第1基板と第2基板との間を通る。
常温接合方法は、第1保持機構(11)で第1基板を保持するステップと、第2保持機構(14)で第2基板を前記第1基板と対向するように保持するステップとを具備している。さらに、複数のイオンビーム源(17)で第1基板と第2基板との間の方向へイオンビーム(B)を照射するステップと、圧接機構(15)でイオンビーム(B)の照射後の第1基板と前記第2基板とを重ね合わせて接合するステップとを具備している。
このような常温接合方法は、複数のイオンビーム源(17)を用いて複数の方向から第1基板及び第2基板にイオンビーム(B)を照射することができる。すなわち、第1基板及び第2基板の表面をより均一にエッチングすることができる。それにより、第1基板及び第2基板が大口径であっても、第1基板及び第2基板の表面をより均一に活性化でき、接合ウェハでの接合品質を向上することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、ウェハ(基板)の直径が大きい場合であっても、ウェハ(基板)全面を均一かつ適正に活性化して、良好な常温接合を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、第1の実施の形態に係る常温接合装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、第1の実施の形態に係る常温接合装置本体1を模式的に示す断面図である。
図3図3は、第1の実施の形態に係る接合チャンバを模式的に示す断面図である。
図4図4は、第1の実施の形態に係るガス種切替機構の一例を示すブロック図である。
図5図5は、第1の実施の形態に係るイオンビーム源を模式的に示す斜視図である。
図6図6は、第1の実施の形態に係る複数のイオンビーム源によるウェハへのイオンビームの照射状況を模式的に示す斜視図である。
図7図7は、第1の実施の形態に係る常温接合装置制御装置を示すブロック図である。
図8図8は、第1の実施の形態に係る常温接合方法を示すフローチャートである。
図9A図9Aは、第2の実施の形態に係る常温接合方法におけるウェハの活性化表面の様子を模式的に示すグラフである。
図9B図9Bは、第2の実施の形態に係る常温接合方法におけるウェハの活性化表面の様子を模式的に示すグラフである。
図10図10は、第2の実施の形態に係る複数のイオンビーム源によるウェハへのイオンビームの照射状況を模式的に示す斜視図である。
図11図11は、第2の実施の形態に係る複数のターゲットを配置したターゲット基板の一例を示す模式図である。
図12図12は、第2の実施の形態に係る活性化方法(ステップS4)を示すフローチャートである。
図13図13は、第3の実施の形態に係る活性化方法(ステップS4)を示すタイミングチャートの一例である。
図14A図14Aは、第4の実施の形態に係るイオンビーム源を模式的に示す斜視図である。
図14B図14Bは、第4の実施の形態に係るイオンビーム源を模式的に示す斜視図である。
図15図15は、第4の実施の形態に係る他のイオンビーム源を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明に係る常温接合装置および常温接合方法の実施の形態について説明する。
【0025】
(第1の実施の形態)
本実施の形態に係る常温接合装置の構成について説明する。
図1は、本実施の形態に係る常温接合装置の構成を示すブロック図である。常温接合装置100は、常温接合を実施する常温接合装置本体1と、常温接合装置本体1を制御する常温接合装置制御装置71とを具備している。
【0026】
図2は、本実施の形態に係る常温接合装置本体1を模式的に示す断面図である。常温接合装置本体1は、ロードロックチャンバ2と接合チャンバ3とを具備している。ロードロックチャンバ2は、環境から内部を密閉する容器を備えている。接合チャンバ3は、環境から内部を密閉する容器を備えている。常温接合装置本体1は、さらに、ゲート5とゲートバルブ6とを備えている。ゲート5は、ロードロックチャンバ2と接合チャンバ3との間に介設され、接合チャンバ3の内部とロードロックチャンバ2の内部とを接続している。ゲートバルブ6は、常温接合装置制御装置71に制御されることにより、ゲート5を閉鎖し、または、ゲート5を開放する。
【0027】
ロードロックチャンバ2は、蓋と真空排気装置(図示されず)とを備えている。その蓋は、ユーザに操作されることにより、環境とロードロックチャンバ2の内部とを接続する開口部(図示されず)を閉鎖し、または、その開口部を開放する。その真空排気装置は、その開口部とゲート5とが閉鎖されているときに、その常温接合装置制御装置71に制御されることにより、ロードロックチャンバ2の内部から気体を排気する。
【0028】
ロードロックチャンバ2は、さらに、複数の棚7と搬送ロボット8とを内部に備えている。棚7には、カートリッジが載せられる。そのカートリッジは、概ね円盤状に形成されている。そのカートリッジは、そのカートリッジの上にウェハが載せられて利用される。搬送ロボット8は、ゲート5が開放されているときに、常温接合装置制御装置71に制御されることにより、棚7に配置されたカートリッジを接合チャンバ3の内部に搬送し、または、接合チャンバ3の内部に配置されたカートリッジを棚7に搬送する。
【0029】
接合チャンバ3は、真空排気装置10を備えている。真空排気装置10は、ゲート5が閉鎖されているときに、その常温接合装置制御装置71に制御されることにより、接合チャンバ3の内部から気体を排気する。
【0030】
図3は、本実施の形態に係る接合チャンバ3を模式的に示す断面図である。接合チャンバ3は、さらに、位置決めステージキャリッジ11と位置合わせ機構12とを備えている。位置決めステージキャリッジ11は、略円板状に形成されている。位置決めステージキャリッジ11は、接合チャンバ3の内部に配置され、水平方向に平行移動可能に、かつ、鉛直方向に平行な回転軸を中心に回転移動可能に位置合わせ機構12に支持されている。位置決めステージキャリッジ11は、ウェハ(または基板)42が載せられたカートリッジを保持することにより、そのウェハ42を保持する。位置合わせ機構12は、常温接合装置制御装置71に制御されることにより、位置決めステージキャリッジ11が水平方向に平行な方向に平行移動するように、または、位置決めステージキャリッジ11が鉛直方向に平行な回転軸を中心に回転移動するように、位置決めステージキャリッジ11を移動させる。
【0031】
接合チャンバ3は、さらに、静電チャック14と圧接機構15とを備えている。静電チャック14は、接合チャンバ3の内部に配置され、位置決めステージキャリッジ11の鉛直上方に配置されている。静電チャック14は、鉛直方向に平行移動可能に接合チャンバ3に支持されている。静電チャック14は、誘電層から形成され、その誘電体の下端に、鉛直方向に概ね垂直な平坦な面を有している。静電チャック14は、さらに、その誘電層の内部に配置される内部電極を備えている。静電チャック14は、常温接合装置制御装置71に制御されることにより、その内部電極に所定の印加電圧を印加して、その誘電層の平坦な面の近傍に配置されるウェハ(または基板)52を静電力によって保持する。
【0032】
圧接機構15は、静電チャック14の鉛直上方に配置されている。圧接機構15は、常温接合装置制御装置71に制御されることにより、接合チャンバ3に対して鉛直方向に静電チャック14を平行移動させる。例えば、圧接機構15は、常温接合装置制御装置71に制御されることにより、複数の位置のうちの1つの位置に静電チャック14を配置する。その複数の位置は、アライメント位置とホーム位置と活性化位置とを含んでいる。そのアライメント位置は、下側のウェハ42が位置決めステージキャリッジ11に保持され、上側のウェハ52が静電チャック14に保持されているときに、その下側のウェハ42と上側のウェハ52とが所定の位置合わせ距離(例えば、1mm)だけ離れるように、設計される。そのホーム位置は、そのアライメント位置よりさらに鉛直上方である。その活性化位置は、そのホーム位置よりさらに鉛直上方である。
【0033】
圧接機構15は、さらに、常温接合装置制御装置71に制御されることにより、静電チャック14が配置される位置を測定し、その位置を常温接合装置制御装置71に出力する。圧接機構15は、さらに、常温接合装置制御装置71に制御されることにより、静電チャック14により保持されたウェハ52に印加される荷重を測定し、その荷重をその常温接合装置制御装置に出力する。
【0034】
接合チャンバ3は、さらに、活性化装置16を備えている。活性化装置16は、イオンビームを出射する複数のイオンビーム源17を備えている。この図の例では、二つのイオンビーム源17−1〜17−2を備えている。複数のイオンビーム源17は、それぞれ接合チャンバ3の内部に位置調整機構(図示されず;後述)を用いて配置されている。複数のイオンビーム源17は、位置決めステージキャリッジ11上のウェハの表面を活性化し、かつ、静電チャック14上のウェハの表面を活性化するのに用いられる。なお、複数のイオンビーム源17の数は2個に限定されるものではなく、さらに多くても良い。
【0035】
常温接合装置本体1は、さらに、イオンビーム源17ごとに、ガス種切替機構を備えている。ガス種切替機構は、常温接合装置制御装置71に制御されることにより、所定のガスをイオンビーム源17に供給する。図4は、本実施の形態に係るガス種切替機構の一例を示すブロック図である。ガス種切替機構61は、複数のガス供給装置62−1〜62−4と複数のバルブ63−1〜63−4と管路64とを備えている。複数のガス供給装置62−1〜62−4は、例えば、複数のボンベから形成され、互いに異なる複数種の気体(例示:Ar、Ne、Kr、Xe)を放出する。複数のバルブ63−1〜63−4のうちの任意のバルブ63−k(k=1,2,3,4)は、常温接合装置制御装置71に制御されることにより、複数のガス供給装置62−kから放出される気体を管路64に供給し、または、その気体が管路64に供給されることを停止する。管路64は、複数のバルブ63−1〜63−4から管路64に供給される気体をイオンビーム源17に供給されるように、複数のバルブ63−1〜63−4とイオンビーム源17とを接続している。このとき、イオンビーム源17は、常温接合装置制御装置71に制御されることにより、ガス種切替機構61から供給される気体を用いて生成されるイオンビームを出射する。
【0036】
図5は、本実施の形態に係るイオンビーム源17を模式的に示す斜視図である。イオンビーム源17は、イオンビーム源本体20を備えている。イオンビーム源本体20は、照射孔21からイオンビームBを照射(出射)する。イオンビームBは、照射孔21の中心から照射孔21が形成された面の法線の方向に伸びる仮想の照射軸Cの方向へ照射(出射)される。そのとき、イオンビームBは、イオンビームBを構成するイオン同士が電気的に互いに反発し合うことにより、照射孔21から離れるに連れて、徐々に広がって行く(ビーム径が徐々に大きくなって行く)。このときの広がり方の目安を広がり角度αとすると、広がり角度αは例えば60度程度である。イオンの濃度分布は、概ね、照射軸Cを中心とするガウス分布になる。このように、イオンビームは、中性原子ビームと比較して指向性が低いという特徴がある。そのため、ウェハを活性化するためにウェハ表面を直接狙う、という必要はない。
【0037】
イオンビーム源17は、さらに、位置調整機構22を備えていることが好ましい。
位置調整機構22は、照射軸Cの方向、照射軸Cに直交する略水平な方向、照射軸Cに直交する略鉛直な方向、旋回角方向、及び、仰角方向の少なくとも一つの方向に対して、イオンビーム源本体20を移動可能に、接合チャンバ3の内部に支持している。言い換えると、位置調整機構22は、図におけるx軸方向、y軸方向、z軸方向、θ角方向、及び、φ角方向の少なくとも一つの方向に対して、イオンビーム源本体20を移動可能に、接合チャンバ3の内部に支持している。それにより、イオンビームBの照射位置や照射横行の調整を行うことができ、ウェハでの活性化をより均一に行うことができる。
【0038】
図6は、本実施の形態に係る複数のイオンビーム源によるウェハへのイオンビームの照射状況を模式的に示す斜視図である。この図では、位置調整機構22を含む接合チャンバ3の他の構成は省略されている。複数のイオンビーム源17−1〜17−2は、常温接合装置制御装置71に制御されることにより、ガス種切替機構61から供給されるガスから形成されるイオンビームB1、B2を生成し、照射軸Cに沿ってそのイオンビームB1、B2を出射する。照射軸Cは、イオンビーム源17の照射孔21の概ね中心を通り、イオンビーム源17の照射孔21のある面に概ね垂直である。言い換えると、複数のイオンビーム源17−1〜17−2は、位置決めステージキャリッジ11に保持されたウェハ(基板)42と、静電チャック14に保持されたウェハ(基板)52との間の方向へイオンビームB1、B2を照射する。このとき、照射孔21の中心から照射孔21が形成された面の法線の方向に伸びる仮想の照射軸Cが、ウェハ42及びウェハ52とは交差せず、ウェハ42及びウェハ52との間を通る。
【0039】
この場合、複数のイオンビーム源17−1〜17−2は、いずれも直接的にウェハ42やウェハ52を狙ってイオンビームB1、B2を照射している訳ではない。しかし、上述したように、イオンビームB1、B2は、いずれもイオンビームBを構成するイオン同士が電気的に互いに反発し合うことにより、照射孔21から離れるに連れて、徐々に広がって行く(ビーム径が徐々に大きくなって行く)。そのため、複数のイオンビーム源17−1〜17−2がウェハ42、52を直接狙わなくても、ウェハ表面にイオンビームBを照射することが可能である。この場合、イオンビーム源17−1は、図の左側(−x側)から下側のウェハ42および上側のウェハ52の両方に同時にイオンビームB1を照射することができる。一方、イオンビーム源17−2は、図の右側(+x側)から下側のウェハ42および上側のウェハ52の両方に同時にイオンビームB2を照射することができる。それにより、イオンビームBのエネルギー粒子の衝突による物理スパッタ効果によってウェハ42、52の表面をエッチングすることができる。すなわち、イオンビームBによりウェハ42、52の表面を清浄化し、活性化することが可能となる。そして、このような複数のイオンビーム源17−1〜17−2による複数の方向からの活性化により、ウェハ42およびウェハ52の両方をより均一に活性化することが可能となる。
【0040】
なお、複数のイオンビーム源17−1〜17−2は、ウェハ42やウェハ52の活性化の均一性が高まるのであれば、イオンビームB1とイオンビームB2とが互いに異なっていても良い。イオンビームB1とイオンビームB2とが互いに異なるとは、イオンビームBの密度、速さ、元素の種類、エネルギー、が互いに異なることを意味している。さらに、イオンビームBの照射時間、照射開始タイミング、照射終了タイミングなどが異なっていても良い。また、複数のイオンビーム源17の数は、図の例のような2台に限定されるものではなく、3台以上であってもよい。その場合、ウェハ円の中心を基準として、等距離かつ等中心角となるように配置されることが好ましい。例えば、イオンビーム源17を3台にする場合、ウェハ円の中心から各イオンビーム源17まで等距離、かつ、ウェハ円の中心と隣り合うイオンビーム源同士とで形成される中心角が120度となるように設けられることが好ましい。
【0041】
位置決めステージキャリッジ11は、下側のウェハ42が載せられているカートリッジを保持することにより、下側のウェハ42の活性化表面が鉛直上方を向くように、接合チャンバ3の内部に下側のウェハ42を保持する。下側のウェハ42としては、金属材料、半導体材料、絶縁体材料など、製造するデバイスに応じて最適な材料の基板が選択される。例えば、下側のウェハ42は、シリコンやサファイアの単結晶などに例示され、円板状に形成されている。下側のウェハ42は、例えば、活性化表面に複数のパターンが形成されている。イオンビーム源17は、下側のウェハ42が位置決めステージキャリッジ11に保持されているときに、照射軸Cがウェハ42及びウェハ52とは交差せず、ウェハ42及びウェハ52との間を通るように、接合チャンバ3に固定されている。
【0042】
静電チャック14は、上側のウェハ52の活性化表面が鉛直下方を向くように、接合チャンバ3の内部に上側のウェハ52を保持する。上側のウェハ52としては、金属材料、半導体材料、絶縁体材料など、製造するデバイスに応じて最適な材料の基板が選択される。例えば、上側のウェハ52は、シリコンやサファイアの単結晶などに例示され、円板状に形成されている。上側のウェハ52は、例えば、活性化表面に複数のパターンが形成されている。イオンビーム源17は、上側のウェハ52が静電チャック14に保持されているときに、静電チャック14がその活性化位置に配置されているときに、照射軸Cがウェハ42及びウェハ52とは交差せず、ウェハ42及びウェハ52との間を通るように、接合チャンバ3に固定されている。
【0043】
イオンビーム源17−1〜17−2は、位置決めステージキャリッジ11の中心点と静電チャック14の中心点とを結ぶ仮想的な中心軸D(z方向に平行)に対して、概ね等しい距離となるように配置される。言い換えると、イオンビーム源17−1〜17−2は、それぞれの照射孔21の位置が、中心軸D(z方向に平行)に対して、概ね等しい距離となるように配置される。また、イオンビーム源17−1〜17−2は、照射軸Cと中心軸Dとが交差する交差点から位置決めステージキャリッジ11の中心点までの距離と、その交差点から静電チャック14の中心点までの距離とが概ね等しい距離となるように配置される。
【0044】
活性化装置16は、複数のイオンビーム源17−1〜17−2をこのように配置しているので、複数のイオンビーム源をこのように配置しない他の活性化装置と比較して、ウェハ42やウェハ52の活性化対象の表面にイオンビームB1、B2をより均一に照射することができる。そのため、活性化装置16は、それら活性化対象の表面をより均一にエッチングすることができる。
【0045】
また、常温接合装置本体1は、複数のイオンビーム源17−1〜17−2を備えているので、1つのイオンビーム源を備える他の常温接合装置と比較して、より広い領域をより均一にイオンビームBで照射することができる。このため、常温接合装置本体1は、より大型のウェハ(基板)の表面の全体を活性化することができ、その大型のウェハ(基板)をより適切に接合することができる。
【0046】
図7は、本実施の形態に係る常温接合装置制御装置を示すブロック図である。常温接合装置制御装置71は、コンピュータに例示される情報処理装置であり、図示されていないCPU(Central Processing Unit)と、記憶装置と、入力装置と、出力装置と、インターフェースとを備えている。CPU、記憶装置(HDD、RAMを含む)、入力装置、出力装置、及びインターフェースは、互いに通信が可能に接続されている。CPUは、例えば記憶媒体からインターフェースを介してHDDにインストールされたコンピュータプログラムをRAMに展開する。そして、展開されたコンピュータプログラムを実行して、必要に応じて記憶装置や入力装置や出力装置のようなハードウェアを制御しながら、当該コンピュータプログラムの情報処理を実現する。記憶装置は、コンピュータプログラムを記録し、CPUが利用する情報や生成する情報を記録する。入力装置は、ユーザに操作されることにより生成される情報をCPUや記憶装置に出力する。出力装置は、CPUにより生成された情報や記憶装置の情報をユーザに認識可能に出力する。
【0047】
そのインターフェースは、さらに、常温接合装置本体1を常温接合装置制御装置71に接続している。具体的には、そのインターフェースは、ゲートバルブ6、と搬送ロボット8と、ロードロックチャンバ2から排気する真空排気装置と、真空排気装置10と、位置合わせ機構12と、静電チャック14と、圧接機構15と、複数のイオンビーム源17−1〜17−2と、複数のバルブ63−1〜63−4と、を常温接合装置制御装置71に接続している。
【0048】
常温接合装置制御装置71にインストールされるコンピュータプログラムは、常温接合装置制御装置71に複数の機能をそれぞれ実現させるための複数のコンピュータプログラムから形成されている。その複数の機能は、搬送部72と、活性化部73(第1活性化部73−1と第2活性化部73−2とを含む)と、接合部74と、を含んでいる。
【0049】
搬送部72は、ウェハの搬送、設置および取り出しに関して常温接合装置本体1を制御する。具体的には、ロードロックチャンバ2の真空排気装置の制御、ゲートバルブ6の開閉の制御、搬送ロボット8によるカートリッジの搬送の制御、圧接機構15の制御、および静電チャック14の制御を主に行う。
【0050】
活性化部73は、ウェハの活性化に関して常温接合装置本体1を制御する。具体的には、接合チャンバ3の真空排気装置10の制御、ガス種切替機構61の制御、圧接機構15の制御、複数のイオンビーム源17−1〜17−2の制御を主に行う。特に、第1活性化部73−1はイオンビーム源17−1を用いる場合に制御を行い、第2活性化部73−2はイオンビーム源17−2を用いる場合に制御を行う。複数のイオンビーム源17−1〜17−2を同時に用いる場合には、第1活性化部73−1と第2活性化部73−2とが協調して制御を行うか、いずれか一方が全体を制御する。
【0051】
接合部74は、ウェハの接合に関して常温接合装置本体1を制御する。具体的には、圧接機構15の制御、静電チャック14の制御、および位置合わせ機構12の制御を主に行う。
【0052】
次に、本実施の形態に係る常温接合方法(常温接合装置の動作)について説明する。
図8は、本実施の形態に係る常温接合方法を示すフローチャートである。この常温接合方法は、上述された常温接合装置100を用いて実行される。
【0053】
常温接合装置制御装置71の搬送部72は、まず、ゲートバルブ6を制御して、ゲート5を閉鎖する。次に、搬送部72は、ロードロックチャンバ2の真空排気装置を制御して、ロードロックチャンバ2内に大気圧雰囲気を生成する。一方、搬送部72は、真空排気装置10を制御して、接合チャンバ3内に接合雰囲気を生成する。ユーザは、事前に、下側のウェハ42を保持した下側カートリッジと、上側のウェハ52を保持した上側カートリッジとを準備している。次に、ユーザは、ロードロックチャンバ2の蓋を開けて、下側カートリッジ及び上側カートリッジを棚7に配置する。棚7は複数個あるので、下側カートリッジ及び上側カートリッジをそれぞれ複数個配置できる。下側カートリッジには、下側のウェハ42の活性化対象の表面の裏がその下側カートリッジに対向するように、下側のウェハ42が載せられている。上側カートリッジには、上側のウェハ52の活性化対象の表面がその上側カートリッジに対向するように、上側のウェハ52が載せられている。続いて、ユーザは、ロードロックチャンバ2の蓋を閉鎖する。その後、搬送部72は、ロードロックチャンバ2の真空排気装置を制御して、ロードロックチャンバ2内に予備雰囲気を生成する(ステップS1)。
【0054】
その後、搬送部72は、ゲートバルブ6を制御して、ゲート5を開放する。次に、搬送部72は、搬送ロボット8を制御して、上側のウェハ52が接合チャンバ3の位置決めステージキャリッジ11に保持されるように、上側カートリッジを棚7から位置決めステージキャリッジ11に搬送する。続いて、搬送部72は、圧接機構15を制御して、静電チャック14を下降させ、上側カートリッジに載っている上側のウェハ52が静電チャック14に接触するタイミングで静電チャック14の下降を停止させる。その後、搬送部72は、静電チャック14を制御して、静電チャック14に上側のウェハ52を保持させる。次に、搬送部72は、圧接機構15を制御して、静電チャック14がホーム位置に配置されるまで静電チャック14を上昇させる。続いて、搬送部72は、搬送ロボット8を制御して、上側カートリッジを位置決めステージキャリッジ11から棚7に搬送する。その後、搬送部72は、搬送ロボット8を制御して、下側のウェハ42が接合チャンバ3の位置決めステージキャリッジ11に保持されるように、その下側カートリッジを棚7から位置決めステージキャリッジ11に搬送する。続いて、搬送部72は、ゲートバルブ6を制御して、ゲート5を閉鎖する(ステップS2)。
【0055】
次に、常温接合装置制御装置71の第1活性化部73−1および第2活性化部73−2は、圧接機構15を制御して、静電チャック14がその活性化位置に配置されるまで静電チャック14を上昇させ、真空排気装置10を制御して、接合チャンバ3の内部にその活性化雰囲気を生成する(ステップS3)。具体的には、接合チャンバ3の内部の真空度を10−5〜10−6Pa程度とする。続いて、第1活性化部73−1と第2活性化部73−2は、活性化装置16を制御して、上側のウェハ52の活性化対象の表面と下側のウェハ42の活性化対象の表面とを活性化させる(ステップS4)。具体的には、複数のイオンビーム源17−1〜17−2からイオンビームB1、B2を照射して、上側のウェハ52の活性化対象の表面と下側のウェハ42の活性化対象の表面とをエッチングする。イオンビームB1、B2の照射中、接合チャンバ3の内部の真空度は、10−2〜10−3Pa程度となる。
【0056】
その後、常温接合装置制御装置71の接合部74は、圧接機構15を制御して、静電チャック14を下降させ、静電チャック14をそのアライメント位置に配置する。このとき、上側のウェハ52と下側のウェハ42とは、所定の位置合わせ距離だけ離れている。次に、接合部74は、位置合わせ機構12を制御することにより、下側のウェハ42を上側のウェハ52に対して所定の位置合わせ位置に配置する(ステップS5)。
【0057】
続いて、接合部74は、圧接機構15を制御して、静電チャック14を下降させ、静電チャック14に印加される荷重が所定の接合荷重に到達するタイミングで静電チャック14の下降を停止させる。すなわち、接合部74は、上側のウェハ52と下側のウェハ42とにその接合荷重を印加する(ステップS6)。下側のウェハ42と上側のウェハ52とは、その接合荷重が印加されることにより、接合され、1枚の接合ウェハに形成される。
【0058】
次に、接合部74は、その接合ウェハにその接合荷重が所定の接合時間印加された後に、静電チャック14を制御して、その接合ウェハを静電チャック14から離脱させ、圧接機構15を制御して、静電チャック14を上昇させる。続いて、搬送部72は、ゲートバルブ6を制御して、ゲート5を開放し、搬送ロボット8を制御して、その接合ウェハがロードロックチャンバ2に搬送されるように、その下側カートリッジを位置決めステージキャリッジ11から棚7に搬送する(ステップS7)。
【0059】
搬送部72は、他の下側のウェハが載せられている他の下側カートリッジと他の上側のウェハが載せられている他の上側カートリッジとが複数の棚7に配置されているときに(ステップS8、YES)、ステップS2〜ステップS7の動作を再度繰り返して実行する。
【0060】
搬送部72は、接合することが予定されている下側のウェハと上側のウェハとが複数の棚7に配置されていないときに(ステップS8、NO)、ゲートバルブ6を制御して、ゲート5を閉鎖する。次に、搬送部72は、ロードロックチャンバ2の真空排気装置を制御して、ロードロックチャンバ2の内部に大気圧雰囲気を生成する(ステップS9)。その後、ユーザは、ロードロックチャンバ2の蓋を開けて、その複数の下側カートリッジとその複数の上側カートリッジとを複数の棚7から取り出す。それにより、複数の接合ウェハがロードロックチャンバ2から取り出される。
【0061】
以上のようにして、本実施の形態に係る常温接合方法が実施される。
なお、ユーザは、さらに他の複数の下側のウェハと他の複数の上側のウェハとをさらに常温接合したい場合には、その複数の下側のウェハに対応する複数の下側カートリッジとその複数の上側のウェハに対応する複数の上側カートリッジとを準備し、このような常温接合方法を再度実行することができる。
【0062】
図9A及び図9Bは、本実施の形態に係る常温接合方法におけるウェハの活性化表面の様子を模式的に示すグラフである。すなわち、上記常温接合方法のステップS4におけるウェハ表面のエッチングレートの変化を示すグラフである。ただし、図9Aは、イオンビーム源が1台で図の左側からイオンビームを照射する場合を示している。一方、図9Bはイオンビーム源が2台(図6)で図の左側及び右側からイオンビームを照射する場合を示している。また、活性化表面の様子は、上側のウェハと下側のウェハとで同じになるので、ここでは下側のウェハの様子を代表として示す。縦軸は、照射軸Cと直行する座標(図6では、y座標)を示している。横軸は、ウェハ中心からの距離を示し、照射軸Cと平行な座標(図6ではx座標)を示している。図の中央の円は、大口径ウェハの代表例として12インチウェハの大きさを示している。
【0063】
エッチングレートは、P1〜P18の18段階で示している。
領域P1は、エッチングレートが8.50〜9.00nm/min.の領域である。領域P2は、エッチングレートが8.00〜8.50nm/min.の領域である。領域P3は、エッチングレートが7.50〜8.00nm/min.の領域である。領域P4は、エッチングレートが7.00〜7.50nm/min.の領域である。領域P5は、エッチングレートが6.50〜7.00nm/min.の領域である。領域P6は、エッチングレートが6.00〜6.50nm/min.の領域である。領域P7は、エッチングレートが5.50〜6.00nm/min.の領域である。領域P8は、エッチングレートが5.00〜5.50nm/min.の領域である。領域P9は、エッチングレートが4.50〜5.00nm/min.の領域である。領域P10は、エッチングレートが4.00〜4.50nm/min.の領域である。領域P11は、エッチングレートが3.50〜4.00nm/min.の領域である。領域P12は、エッチングレートが3.00〜3.50nm/min.の領域である。領域P13は、エッチングレートが2.50〜3.00nm/min.の領域である。領域P14は、エッチングレートが2.00〜2.50nm/min.の領域である。領域P15は、エッチングレートが1.50〜2.00nm/min.の領域である。領域P16は、エッチングレートが1.00〜1.50nm/min.の領域である。領域P17は、エッチングレートが0.50〜1.00nm/min.の領域である。領域P18は、エッチングレートが0.00〜0.50nm/min.の領域である。エッチングレートは、イオンビーム源17の出射端の近傍(図9Aの左端中央(−200、0)、図9Bの左端中央(−200、0)及び右端中央(200、0))で高く、そこから離れるに連れて単調に減少する。
【0064】
図9Aを参照すると、イオンビーム源が1台の場合では、12インチウェハ面内でのエッチングレートの分布は、領域P7(5.50〜6.00nm/min.)〜領域P18(0.00〜0.50nm/min.)までの12段階となっている。イオンビーム源に対して近い側(図の左側)では、エッチングレートが高く、その変化が激しく、エッチングが過剰に進んでいる。一方、イオンビーム源に対して遠い側(図の右側)では、エッチグレートが低く、その変化が緩やで、エッチングがほとんど進んでいない。ここで、エッチングの均一性の指標となるエッチングレート比(無次元数)を、(エッチングレート最大値)/(エッチングレート最小値)で定義する。そうすると、この場合では、エッチングレート比=6.00/0.25=24、となる。すなわち、大口径ウェハを対象としたとき、イオンビーム源が1台の場合、エッチングレートが均一ではなく、ウェハ表面を均一に活性することは困難である。
【0065】
一方、図9Bを参照すると、イオンビーム源が2台の場合では、12インチウェハ面内でのエッチングレートの分布は、領域P6(6.00〜6.50nm/min.)〜領域P15(1.50〜2.00nm/min.)までの10段階となっている。イオンビーム源に対して近い側(図の両側)では、エッチングレートが高いがその変化は緩やかである。加えて、イオンビーム源に対して遠い側(図の中央側)では、2つのイオンビームが重なるのでエッチグレートが高くなるがその変化も緩やである。この場合では、エッチングレート比=6.50/1.50〜4.33、となる。すなわち、イオンビーム源が1台の場合と比較して、5倍以上のエッチグレート比の改善が可能となる。言い換えれば、大口径ウェハを対象としたとき、イオンビーム源が2台の場合、エッチングレートが非常に均一に改善され、ウェハ表面を極めて均一に活性することが可能となる。
【0066】
以上説明されたように、本実施の形態の常温接合装置100は、接合しようとするウェハ(基板)1組に対し、表面活性化を施すイオンビーム源17を複数(例示:2台)備えている。この常温接合装置100では、複数のイオンビーム源17は、イオンビームBの照射軸Cが概略平行に配置された2枚のウェハ(基板)42、52に交差することなく2枚のウェハ42、52の間を通る、ように配置されている。そのイオンビームBの照射により、2枚のウェハ42、52の表面をイオン粒子の衝突による物理スパッタ効果によって清浄化する。複数のイオンビーム源17を有しているので、ウェハ42、52をいずれもより均一に清浄化できる。なお、イオンビーム源17が2台の場合、イオンビーム源17は対向する位置に設けられる。ただし、照射軸Cとはイオンビーム源17の照射孔21の中心から、照射孔21が形成されている面の法線方向に伸びる軸である。
【0067】
このように、本実施の形態では、ウェハの表面活性化のためにイオンビーム源を複数(例示:2台)用いている。それにより、イオンビーム源が1台の場合では難しかった、大口径ウェハ(例示:12インチウェハ)に対するイオンビームによる偏りの少ないエッチングが可能となる。すなわち、大口径ウェハの表面をより均一な活性化状態とすることが可能となる。それにより、ウェハの表面粗さが均一になり、ウェハの表面の清浄度を均質にすることができる。その結果、接合ウェハ全面に亘って接合強度のバラツキを抑えることができ、接合ウェハでの接合品質を向上することができる。また、接合ウェハでの接合品質の向上により、接合ウェハに形成されるデバイスの歩留りを向上することができる。
【0068】
また、イオンビーム源17は、位置調整機構22を備えているので、x軸方向、y軸方向、z軸方向、θ角方向、及び、φ角方向に対して、イオンビームBの照射位置や照射方向をより細かく調整することができる。それにより、ウェハ表面でのエッチングレート分布をより細かく調整することができる。その結果、ウェハ表面の活性化をより均一に行うことができる。
【0069】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る常温接合装置について説明する。本実施の形態の常温接合装置は、ウェハ(基板)の接合面に中間材層を形成可能である点で、第1の実施の形態の常温接合装置と相違している。以下、その相違点について主に説明する。
【0070】
図10は、本実施の形態に係る複数のイオンビーム源によるウェハへのイオンビームの照射状況を模式的に示す斜視図である。本実施の形態に係る常温接合装置は、図6の場合と比較して、複数のイオンビーム源17−1〜17−2と下側のウェハ42及び上側のウェハ52との間にターゲット19が設けられている点で相違している。
【0071】
この図の例では、接合チャンバ3内部におけるイオンビーム源17−1と下側のウェハ42との間の位置に、ターゲット19−1aを含むターゲット基板18−1aが設けられている。ターゲット19−1aはターゲット基板18−1aの上側(+z側)に配置されている。また、接合チャンバ3内部におけるイオンビーム源17−1と上側のウェハ52との間の位置に、ターゲット19−1bを含むターゲット基板18−1bが設けられている。ターゲット19−1bはターゲット基板18−1bの下側(−z側)に配置されている。同様に、接合チャンバ3内部におけるイオンビーム源17−2と下側のウェハ42との間の位置に、ターゲット19−2aを含むターゲット基板18−2aが設けられている。ターゲット19−2aはターゲット基板18−2aの上側(+z側)に配置されている。また、接合チャンバ3内部におけるイオンビーム源17−2と上側のウェハ52との間の位置に、ターゲット19−2bを含むターゲット基板18−2bが設けられている。ターゲット19−2bはターゲット基板18−2bの下側(−z側)に配置されている。
【0072】
常温接合装置制御装置71に制御されることにより、ガス種切替機構61が複数のイオンビーム源17−1〜17−2へガスを供給する。複数のイオンビーム源17−1〜17−2は、そのガスによりイオンビームB1(B1、B1を含む)及びイオンビームB2(B2、B2を含む)を生成し、照射軸Cに沿ってそのイオンビームB1及びイオンビームB2を出射する。言い換えると、イオンビーム源17−1は、ウェハ42とウェハ52との間の方向かつターゲット19−1aとターゲット19−1bとの間の方向へイオンビームB1(B1、B1を含む)を照射する。また、イオンビーム源17−2は、ウェハ42とウェハ52との間の方向かつターゲット19−2aとターゲット19−2bとの間の方向へイオンビームB2(B2、B2を含む)を照射する。このとき、照射孔21の中心から照射孔21が形成された面の法線の方向に伸びる仮想の照射軸Cが、ウェハ42及びウェハ52とは交差せず、ウェハ42及びウェハ52との間を通り、かつ、ターゲット19−1a、19−1b及びターゲット19−2a、19−2bとは交差せず、ターゲット19−1a、19−1b及びターゲット19−2a、19−2bとの間を通る。
【0073】
この場合、イオンビーム源17−1は、いずれも直接的にターゲット19−1a、19−1bを狙ってイオンビームB1を照射している訳ではない。しかし、上述したように、イオンビームB1は、いずれもイオンビームB1を構成するイオン同士が電気的に互いに反発し合うことにより、照射孔21から離れるに連れて、徐々に広がって行く(ビーム径が徐々に大きくなって行く)。そのため、イオンビーム源17−1がターゲット19−1a、19−1bを直接狙わなくても、各ターゲット19−1の表面にイオンビームB1の一部であるイオンビームB1を照射することが可能である。この場合、イオンビーム源17−1は、ターゲット19−1a及びターゲット19−1bの両方に同時にイオンビームB1を照射することができる。このとき、イオンビームB1のエネルギー粒子の衝突による物理スパッタ効果によって、ターゲット19−1a、19−1bの表面がスパッタされる。その結果、スパッタされたターゲット19−1a、19−1bの粒子は、それぞれウェハ52及びウェハ42の表面に到達する。このようにして、ターゲット19−1a、19−1bの材料をウェハ42及びウェハ52の表面に中間材層として成膜することができる。
【0074】
同様に、イオンビーム源17−2は、いずれも直接的にターゲット19−2a、19−2bを狙ってイオンビームB2を照射している訳ではない。しかし、上述したように、イオンビームB2は、いずれもイオンビームB2を構成するイオン同士が電気的に互いに反発し合うことにより、照射孔21から離れるに連れて、徐々に広がって行く(ビーム径が徐々に大きくなって行く)。そのため、イオンビーム源17−2がターゲット19−2a、19−2bを直接狙わなくても、各ターゲット19−2の表面にイオンビームB2の一部であるイオンビームB2を照射することが可能である。この場合、イオンビーム源17−2は、ターゲット19−2a及びターゲット19−2bの両方に同時にイオンビームB1を照射することができる。このとき、イオンビームB2のエネルギー粒子の衝突による物理スパッタ効果によって、ターゲット19−2a、19−2bの表面がスパッタされる。その結果、スパッタされたターゲット19−2a、19−2bの粒子は、それぞれウェハ52及びウェハ42の表面に到達する。このようにして、ターゲット19−2a、19−2bの材料をウェハ42及びウェハ52の表面に中間材層として成膜することができる。
【0075】
このとき、ウェハ42に対して、主にターゲット19−1b、19−2bの材料がウェハ42の両側から飛来する。このとき、ターゲット19−1b、19−2bの材料を同じ材料とすることで、ウェハ42が大口径ウェハであっても、ウェハ42上に均一な中間材層を形成することができる。同様に、ウェハ52に対して、主にターゲット19−1a、19−2aの材料がウェハ52の両側から飛来する。このとき、ターゲット19−1a、19−2aの材料を同じ材料とすることで、ウェハ52が大口径ウェハであっても、ウェハ52上に均一な中間材層を形成することができる。
【0076】
また、このとき、第1の実施の形態において説明したように、複数のイオンビーム源17−1〜17−2は、ウェハ42、52の表面にイオンビームB1、B2を照射している。この場合、イオンビーム源17−1は、図の左側(−x側)から下側のウェハ42および上側のウェハ52の両方に同時にイオンビームB1の一部であるイオンビームB1を照射している。一方、イオンビーム源17−2は、図の右側(+x側)から下側のウェハ42および上側のウェハ52の両方に同時にイオンビームB2の一部であるイオンビームB2を照射している。それにより、複数のイオンビーム源17−1〜17−2は、ウェハ42、52の両方の表面を同時に均一にエッチング(清浄化、活性化)している。
【0077】
このように、複数のイオンビーム源17−1〜17−2は、ウェハ42、52の表面の清浄化、活性化と、ウェハ42、52の表面への中間材層の形成とを同時に行うことができる。すなわち、複数のイオンビーム源17−1〜17−2は、イオンビームB1、B2により、ウェハ42、52の表面を同時にエッチングして清浄化、活性化しながら、ターゲット19−1、19−2をスパッタしてウェハ42、52の表面に中間材層を形成することができる。このとき、複数のイオンビーム源17−1〜17−2による複数の方向からの活性化及び中間材層の形成により、ウェハ42およびウェハ52をより均一に活性化できるとともに、ウェハ42およびウェハ52上により均一に中間材層を成膜できる。そして、より均一に中間材層を形成しているので、接合時に加熱したり大きな圧力を印加したりすることなく、接合し難いウェハ(基板)同士の常温接合を行うことが可能となる。
【0078】
ターゲット19−1a、19−1b、19−2a、19−2bは板状であり、ターゲット材料としては各種の金属や合金や化合物を用いることができる。ターゲット材料は、Fe、Cr、Ni、Si、Au、Al、Pt、Mo、W、Ti、Ta、Ir、Pd、Ag、Cu、Co、Rh、Ru、Ge、La、C等から選択された少なくとも一つの金属を含む金属や、合金や、化合物に例示される。あるいは、ターゲット材料としては、他に、SiO、SiN、SiC、MgO、Ga、ZnO、RIG、ITO、ガラス、石英、サファイア、スピネル、YAG、LiTaO、LiNbO、InGaAs、GaN、GaAs、InP、AlNが例示される。
【0079】
これらのターゲット材料をターゲット基板18−1a、18−1b、18−2a、18−2bに固定する方法としては、ターゲット材料のバルク材をターゲット基板18にネジ止めする方法や、そのバルク材の周辺端部をフック等の治具に引っ掛けて固定する方法等を用いることができる。固定方法として、そのバルク材を接着剤やハンダによりターゲット基板18に固着してもよい。このとき、接合チャンバ3及びその内部の治具、ターゲット基板18や固定に用いるネジや治具等は、ウェハのエッチングや中間材層の形成を阻害しない材料で形成することが好ましい。そのような材料としては、ステンレスが例示される。
【0080】
1個のターゲット基板18上には、1個のターゲット19を配置してもよいし、複数のターゲット19を配置してもよい。図11は、本実施の形態に係る複数のターゲット19を配置したターゲット基板18の一例を示す模式図である。この図の例では、1個のターゲット基板18に、複数のターゲット19a〜19eが取り付けられている。複数のターゲット19a〜19eの各々は、例えば、単一の元素で構成されたターゲットとし、中間材層として形成される合金または化合物の組成やスパッタ率に応じた面積を有するようにしてもよい。あるいは、複数のターゲット19a〜19eの全部を用いる必要はなく、一部のターゲットを配置しなくてもよい。
【0081】
本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
また、本実施の形態では、複数の種類の材料で構成可能なターゲットを備え、イオンビーム源がウェハだけでなくそのターゲットを物理スパッタリングすることで、ウェハ表面の活性化とウェハ表面(被接合面)への中間材層の形成とを複数の方向から同時に実施することができる。それにより、ウェハが大口径であっても、被接合面へ中間材層をより均一に形成できる。その結果、ウェハが大口径であっても、接合時に加熱したり大きな圧力を印加したりすることなく、接合し難いウェハ(基板)同士の常温接合を行うことが可能となる。
【0082】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態に係る常温接合装置について説明する。本実施の形態の常温接合装置は、複数のイオンビーム源を同時に使用するのではなく、時間をずらして少しずつ使用する点で、第1の実施の形態の常温接合装置と相違している。以下、その相違点について主に説明する。
【0083】
本実施の形態では、常温接合方法において、常温接合装置制御装置71の制御により、複数のイオンビーム源17の各々間で、イオンビームBを照射するタイミングをずらす。それにより、ウェハ42、52の活性化の均一性を維持しつつ、接合チャンバ3内に導入されるソースガス(イオンビーム)の流入量を抑え、真空排気装置10への負担を軽減する。
【0084】
常温接合方法(図8)におけるウェハ表面の活性化方法(ステップS4)について説明する。
図12は、本実施の形態に係る活性化方法(ステップS4)を示すフローチャートである。下側のウェハ42の表面と上側のウェハ52の表面とを活性化させる方法は、一方のイオンビームでウェハ42、52の表面を活性化させるステップ(ステップS11)と、他方のイオンビームでウェハ42、52の表面を活性化させるステップ(ステップS12)とを備えている。ただし、「一方のイオンビーム」はイオンビームB1およびイオンビームB2のいずれか一方であり、「他方のイオンビーム」は他方である。各ステップは、排他的に実行される。すなわち、まずステップS11を実行し、その終了後にステップS12を実行する。そして、ステップS11と、ステップS12とは、ほぼ同じ活性化条件で行う。言い換えると、イオンビーム源17−1とイオンビーム源17−2とは、活性化条件、すなわち、イオンビームB1とイオンビームB2とに関する、照射時間、各イオンビーム源の電極に加える電圧値、電流値、ガス種、ガス流量、各イオンビームの密度、速さ、エネルギーなどがおおむね同じに設定される。
【0085】
図13は、本実施の形態に係る活性化方法(ステップS4)を示すタイミングチャートの一例である。以下では、説明のために、イオンビーム源17−1が「一方のイオンビーム」を出射するとし、イオンビーム源17−2が「他方のイオンビーム」を出射するとする。また、活性化方法(ステップS4)を実行するとき、下側のウェハ42は位置決めステージキャリッジ11に保持され、上側のウェハ52は活性化位置に配置された静電チャック14に保持されている。
【0086】
(1)ステップS11
第1活性化部73−1は、ガス種切替機構61を制御することにより、所定のガス(例えば、アルゴンガス)をイオンビーム源17−1に供給する。第1活性化部73−1は、活性化装置16を制御することにより、イオンビーム源17−1にイオンビームB1を出射させる(時刻t0)。イオンビーム源17−1は、イオンビームB1を下側のウェハ42及び上側のウェハ52へ出射する。それにより、下側のウェハ42及び上側のウェハ52の表面がエッチングされて活性化される。第1活性化部73−1は、出射時間が照射時間T1になったとき、イオンビームB1の出射を停止させる(時刻t1)。
【0087】
(2)ステップS12
ステップS11後、第2活性化部73−2は、ガス種切替機構61を制御することにより、所定のガス(例えば、アルゴンガス)をイオンビーム源17−2に供給する。第2活性化部73−2は、活性化装置16を制御することにより、イオンビーム源17−2にイオンビームB2を出射させる(時刻t1)。イオンビーム源17−2は、イオンビームB2を下側のウェハ42及び上側のウェハ52へ出射する。それにより、下側のウェハ42及び上側のウェハ52の表面がエッチングされて活性化される。第2活性化部73−2は、出射時間が照射時間T2になったとき、イオンビームB2の出射を停止させる(時刻t2)。このとき、照射時間T1=照射時間T2である。
【0088】
以上により、下側のウェハ42及び上側のウェハ52の表面は、イオンビームB1、B2により両側からエッチングされるので、より均一に活性化される。
【0089】
イオンビーム源17は、イオンビームBを生成するとき、その筐体を介して接合チャンバ3内にイオンビームBのソースガスを導入する。そのため、複数のイオンビーム源17が全体として要求する排気速度を真空排気装置10が備えていない場合、複数のイオンビーム源17を同時に動作させると、接合チャンバ3内の真空度が悪化して、エッチングが上手く行かないおそれがある。加えて、高真空用の真空排気装置、例えばTMP(TurboMolecular Pump)では、吸気側の圧力が上昇するので、運転中大気突入状態(過負荷状態)となり、ポンプが損傷する可能性がある。
【0090】
しかし、本実施の形態では、常温接合装置制御装置71が、1台のイオンビーム源17を使用中(イオンビームBを照射中)のときは、他の1台のイオンビーム源17を使用しない(イオンビームBを照射しない)シーケンスを備えている。すなわち、複数のイオンビーム源17が同時にイオンビームを照射しないようにしている。このように、イオンビームBを交互に照射することにより、接合チャンバ3内に導入されるソースガスの流入量を、イオンビームBを同時に照射する場合の半分に抑えることができる。これにより、真空排気装置10のポンプの排気速度を、イオンビーム源が1台の場合と同程度の排気速度に抑えることができる。すなわち、真空排気装置10のサイズを大型化せず、コストを抑えたまま、大口径ウェハの接合が可能となる。
【0091】
本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
また、真空排気装置10のポンプの排気速度を、イオンビーム源が1台の場合と同程度の排気速度に抑えることができ、真空排気装置10のサイズを大型化せず、コストを抑えたまま、大口径ウェハの接合が可能となる。
【0092】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態に係る常温接合装置について説明する。本実施の形態の常温接合装置は、イオンビーム源の前にシャッターを設けている点で、第1の実施の形態の常温接合装置と相違している。以下、その相違点について主に説明する。
【0093】
図14A及び図14Bは、本実施の形態に係るイオンビーム源を模式的に示す斜視図である。イオンビーム源17は、照射孔21が形成された面を覆うことが可能なシャッター機構23を備えている。ここで、図9Aはシャッター機構23が閉じている状態を示し、図9Bはシャッター機構23が開いている状態を示している。
【0094】
例えば、第4の実施の形態のように、一方のイオンビーム源17−1を用いるとき、他方のイオンビーム源17−2を用いない場合、他方のイオンビーム源17−2の正面をシャッター機構23で覆うようにする。それにより、一方のイオンビーム源17−1のイオンビームB1で、他方のイオンビーム源17−2がスパッタされて、ウェハ42、52の接合面に意図しない材料が付着する、という事態を防止できる。その効果は、一方のイオンビーム源17−1と他方のイオンビーム源17−2とが向かい合って配している場合に特に大きくなる。
【0095】
シャッター機構23は、シャッター本体24と、支持部材25と、駆動部26とを備えている。シャッター本体24は、イオンビーム源17における照射孔21を有する面を覆うような形状を有する。それにより、シャッター本体24は、他のイオンビーム源17のイオンビームBからその面を保護することができる。支持部材25はシャッター本体24と駆動部26とを接続し、シャッター本体24を支持している。駆動部26は支持部材25を介して、シャッター本体24を開閉する。
【0096】
シャッター機構23(又は、少なくともシャッター本体24)は、ウェハ42及びウェハ52の少なくとも一方と同じ材料、イオンビームBに対してスパッタされ難い材料、及び、ウェハ42とウェハ52との接合強度を高める材料のうちの少なくとも一つで形成されていることが好ましい。これらの材料を用いることで、シャッター機構23が他のイオンビーム源17のイオンビームBでスパッタされたとしても、ウェハ42、52の接合面に悪影響を及ぼさないからである。
【0097】
常温接合装置制御装置71の第1活性化部73−1や第2活性化部73−2は、活性化方法(ステップS4)において、1台のイオンビーム源17を照射中には、他の1台のイオンビーム源17の前面に配されたシャッター本体24を閉じるようにする。例えば、第4の実施の形態において、ステップS11では、イオンビーム源17−1を照射中に、イオンビーム源17−2の前面に配されたシャッター本体24を閉じる。一方、ステップS12では、イオンビーム源17−2を照射中に、イオンビーム源17−1の前面に配されたシャッター本体24を閉じる。
【0098】
このように、本実施の形態では、シャッター機構23により、イオンビーム源17のイオンビームが、他のイオンビーム源17の筐体部材をスパッタすることを防止できる。例えば、イオンビーム源17−1とイオンビーム源17−2とが向かい合って配置されている場合、イオンビーム源17−2のシャッター機構23により、イオンビーム源17−1のイオンビームB1がイオンビーム源17−2の筐体部材をスパッタすることを防止できる。それにより、意図しない金属元素が接合対象のウェハ42やウェハ52に付着することを防止できる。
【0099】
意図しない金属元素が接合対象のウェハに付着することを防止できる他の技術としては、イオンビーム源17の筐体、特に照射孔21のある正面部分を、シャッター本体24と同様の材料で形成することが考えられる。図15は、本実施の形態に係る他のイオンビーム源を模式的に示す斜視図である。この図において、イオンビーム源本体20の照射孔21のある正面部分28を、ウェハ42及びウェハ52の少なくとも一方と同じ材料、イオンビームBに対してスパッタされ難い材料、及び、ウェハ42とウェハ52との接合強度を高める材料のうちの少なくとも一つで形成する。それにより、シャッター機構23を用いなくても、イオンビームBがイオンビーム源17の筐体をスパッタすることを防止できる。それにより、意図しない金属元素が接合対象のウェハ42やウェハ52に付着することを防止できる。
【0100】
本発明はいくつかの実施の形態と併せて上述されたが、これらの実施の形態は本発明を説明するために単に提供されたものであることは当業者にとって明らかであり、意義を限定するように添付のクレームを解釈するために頼ってはならない。また、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。例えば、各実施の形態に記載された技術は、矛盾の発生しない限り、他の実施の形態にも適用可能である。
【符号の説明】
【0101】
1 :常温接合装置本体
2 :ロードロックチャンバ
3 :接合チャンバ
5 :ゲート
6 :ゲートバルブ
7 :棚
8 :搬送ロボット
10 :真空排気装置
11 :位置決めステージキャリッジ
12 :位置合わせ機構
14 :静電チャック
15 :圧接機構
16 :活性化装置
17 :イオンビーム源
18 :ターゲット基板
19 :ターゲット
19a :ターゲット
20 :イオンビーム源本体
21 :照射孔
22 :位置調整機構
23 :シャッター機構
24 :シャッター本体
25 :支持部材
26 :駆動部
28 :正面部分
42 :ウェハ
52 :ウェハ
61 :ガス種切替機構
64 :管路
71 :常温接合装置制御装置
72 :搬送部
73 :活性化部
74 :接合部
100 :常温接合装置
B :イオンビーム
B1 :イオンビーム
B1 :イオンビーム
B1 :イオンビーム
B2 :イオンビーム
B2 :イオンビーム
B2 :イオンビーム
C :照射軸
D :中心軸
P1〜P18 :領域
T1 :照射時間
T2 :照射時間
α :広がり角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15