(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6292607
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】キャリアテープ、その製造方法およびその製造装置
(51)【国際特許分類】
B65B 47/04 20060101AFI20180305BHJP
B65D 73/02 20060101ALI20180305BHJP
B65D 85/86 20060101ALI20180305BHJP
B65B 15/04 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
B65B47/04
B65D73/02 M
B65D85/38 N
B65B15/04 P
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-270052(P2013-270052)
(22)【出願日】2013年12月26日
(65)【公開番号】特開2015-123994(P2015-123994A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】591009705
【氏名又は名称】株式会社 東京ウエルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】岡 村 松 男
(72)【発明者】
【氏名】深 野 真 司
【審査官】
田口 傑
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−055268(JP,A)
【文献】
特開2013−132864(JP,A)
【文献】
特開平11−091711(JP,A)
【文献】
特開平10−338208(JP,A)
【文献】
特開平07−076390(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/096257(WO,A1)
【文献】
特開平09−010860(JP,A)
【文献】
国際公開第2004/028782(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 47/04
B65B 15/04
B65D 73/02
B65D 85/00
B65D 85/38
B21D 28/24
B21D 24/06
B30B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性樹脂層と、導電性樹脂層に積層された支持樹脂層とを有する基材に対して凹部を成形するキャリアテープ製造装置において、
基材を受ける受台と、
受台に対向して設けられ、開孔を有し、前記受台上に弾性部材を介して弾性保持されるとともに、前記基材を押圧する押え板と、
押え板の開孔内に挿入され、基材に凹部を成形するパンチとを備え、
パンチにより基材に凹部を成形する際、基材の凹部底面が受台側へ突出し、前記基材の凹部以外の部分が前記弾性保持された押え板を押し上げて基材の他の底面を受台から引離すことを特徴とするキャリアテープ製造装置。
【請求項2】
導電性樹脂層と、導電性樹脂層に積層された支持樹脂層とを有する基材に対して凹部を成形するキャリアテープ製造装置において、
基材を受ける受台と、
受台に対向して設けられ、開孔を有し、前記受台上に弾性部材を介して弾性保持されるとともに、前記基材を押圧する押え板と、
押え板の開孔内に挿入され、基材に凹部を成形するパンチとを備え、
パンチはパンチプレートにより保持されるとともに、
押え板はパンチプレートに弾性保持され、
パンチにより基材に凹部を成形する際、基材の凹部底面が受台側へ突出し、前記基材の凹部以外の部分が前記弾性保持された押え板を押し上げて基材の他の底面を受台から引離すことを特徴とするキャリアテープ製造装置。
【請求項3】
基材は一対の導電性樹脂層と、一対の導電性樹脂層間に挟持された支持樹脂層とを有することを特徴とする請求項1または2記載のキャリアテープテープ製造装置。
【請求項4】
導電性樹脂層と、導電性樹脂層に積層された支持樹脂層とを有する基材に対して凹部を成形するキャリアテープ製造方法において、
基材を受台上に載置する工程と、
前記基材を前記受台と、前記受台上に弾性部材を介して弾性保持された押え板との間で挟む工程と、
押え板側から基材に対してパンチを進入させ、パンチにより基材に凹部を成形する工程とを備え、
パンチにより基材に凹部を成形する際、基材の凹部底面が受台側へ突出し、前記基材の凹部以外の部分が前記弾性保持された押え板を押し上げてこれにより基材の他の底面が受台から引離されることを特徴とするキャリアテープの製造方法。
【請求項5】
基材は一対の導電性樹脂と、一対の導電性樹脂層間に挟持された支持樹脂層とを有することを特徴とする請求項4記載のキャリアテープ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子部品を収納して搬送するキャリアテープ、その製造方法、およびその製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品を収納して搬送する樹脂製キャリアテープとして、樹脂製基材を受台とパンチを用いて加工して凹部を成形し、この凹部内に電子部品を収納するものが知られている。ところで、基材に導電性樹脂層を含む材料を用いて、上記加工で凹部を冷間塑性加工により成形する場合に、基材の凹部の近傍において基材の導電性樹脂層が破断することがある。
このため、破断が発生しないように、熱間塑性加工により樹脂製基材に凹部を成形し、この凹部内に電子部品を収納する技術が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−76390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように樹脂製基材を熱間塑性加工し、凹部を成形する技術が開発されている。しかしながら、樹脂製基材を熱間塑性加工して凹部を成形する場合、基材を加熱する必要があることから生産性の向上が難しく、また加熱装置も必要となる。基材を加熱して加工することにより、加工後基材が常温になることにより寸法収縮が発生し、寸法誤差の発生要因となる。
【0005】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、樹脂製基材を加熱しない冷間塑性加工で成形することができ、かつ高い生産性で精度良くキャリアテープを製造することができるキャリアテープ、その製造方法およびその製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、導電性樹脂層と、導電性樹脂層に積層された支持樹脂層とを有する基材に対して凹部を成形するキャリアテープ製造装置において、基材を受ける受台と、受台に対向して設けられ、開孔を有する押え板と、押え板の開孔内に挿入され、基材に凹部を成形するパンチとを備え、パンチにより基材に凹部を成形する際、基材の凹部底面が受台側へ突出し、基材の他の底面を受台から引離すことを特徴とするキャリアテープ製造装置である。
【0007】
本発明は、導電性樹脂層と、導電性樹脂層に積層された支持樹脂層とを有する基材に対して凹部を成形するキャリアテープ製造装置において、基材を受ける受台と、受台に対向して設けられ、開孔を有する押え板と、押え板の開孔内に挿入され、基材に凹部を成形するパンチとを備え、パンチはパンチプレートにより保持されるとともに、押え板はパンチプレートに弾性保持され、パンチにより基材に凹部を成形する際、基材の凹部底面が受台側へ突出し、基材の他の底面を受台から引離すことを特徴とするキャリアテープ製造装置である。
【0008】
本発明は、基材は一対の導電性樹脂層と、一対の導電性樹脂層間に挟持された支持樹脂層とを有することを特徴とするキャリアテープテープ製造装置である。
【0009】
本発明は、導電性樹脂層と、導電性樹脂層に積層された支持樹脂層とを有する基材に対して凹部を成形するキャリアテープ製造方法において、基材を受台上に載置する工程と、受台上の基材を押え板との間で挟む工程と、押え板側から基材に対してパンチを進入させ、パンチにより基材に凹部を成形する工程とを備え、パンチにより基材に凹部を成形する際、基材の凹部底面が受台側へ突出し、これにより基材の他の底面が受台から引離されることを特徴とするキャリアテープの製造方法である。
【0010】
本発明は、基材は一対の導電性樹脂と、一対の導電性樹脂層間に挟持された支持樹脂層とを有することを特徴とするキャリアテープ製造方法である。
【0011】
本発明は、導電性樹脂層と、導電性樹脂層に積層された支持樹脂層とを有する基材からなり、基材に凹部が成形されるとともに、基材の凹部底面が基材の他の底面から外方へ突出することを特徴とするキャリアテープである。
【0012】
本発明は、基材は一対の導電性樹脂層と、一対の導電性樹脂層間に挟持された支持樹脂層とを有することを特徴とするキャリアテープである。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明によれば、受台上に基材を載置した後、この基材に押え板側からパンチを進入させることにより、凹部を有するキャリアテープを容易、簡単に得ることができる。この場合、凹部の底面が受台側に突出し、基材の他の底面が受台側から引離されることにより、基板とパンチの接触面は相対的に上下から圧縮成形されたと同様の成形力が作用することにより、冷間塑性加工でも導電性樹脂層が破断することなく、また滑らかな面を有する凹部を精度良く成形することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1(a)〜(e)は本発明によるキャリアテープの製造装置を用いた製造方法を示す作用工程図。
【
図2】
図2(a)〜(d)は本発明によるキャリアテープの製造方法の詳細を示す図。
【
図4】
図4はキャリアテープ10を作製するための基材を示す側断面図。
【
図5】
図5は、比較例としてのキャリアテープの製造装置を示す図。
【
図6】
図6(a)(b)(c)は、比較例としてのキャリアテープの製造方法を示す図。
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至
図4は本発明の一実施の形態を示す図である。
【0016】
まず
図3および
図4によりキャリアテープ体全体について説明する。
図3に示すように、キャリアテープ体20は樹脂製の基材10aからなり凹部24が形成されたキャリアテープ10と、凹部24内に収納された電子部品25と、凹部24開口を覆う蓋材21とを備えている。
【0017】
このうちキャリアテープ10は、例えば厚さ0.3mmの樹脂製基材10aからなっている。また基材10aの凹部24の底面26は、他の底面27から外方へ(下方へ)突出しており、この突出高さは約0.1mmとなっている。
【0018】
このためキャリアテープ10の凹部24部分の高さは、0.4mmとなっている。さらに凹部24内の深さは0.25mmとなっており、凹部24の底面26は0.15mmの厚さを有している。
【0019】
ここで樹脂製の基材10aとしては、導電性材料が練り込まれたポリスチレン(PS)製の一対の導電性樹脂層1、2と、一対の導電性樹脂層1、2間に挟持されたアクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合合成樹脂(ABS)製の中間樹脂層(支持樹脂層)3とを有する基材を用いることができる(
図4参照)。なお基材10aとして、一対の導電性樹脂層1.2と、中間樹脂層3とを有する3層構造の積層体を用いることなく、導電性樹脂1と中間樹脂層(支持樹脂層)3を有する2層構造の積層体を用いてもよい。
【0020】
さらに蓋材21は電子部品25が収納された凹部24の開口を覆っており、この蓋材21としては例えばプラスチック製または紙製のものが用いられ、キャリアテープ10に熱圧着のような方法により貼着されている。
【0021】
なお、キャリアテープ10には凹部24以外の部分に、搬送用開口孔(図示せず)が設けられている。
【0022】
次にキャリアテープの製造装置について
図1により述べる。
【0023】
図1(a)(b)(c)(d)(e)に示すように、キャリアテープの製造装置は樹脂製基材10aを受ける受台11と、受台11に対向して設けられた開孔14を有する押え板12と、押え板12の開孔14内に挿入され基材10aに凹部24を成形する多角形のパンチ13とを備えている。
【0024】
またパンチ13はパンチプレート15により保持されており、このパンチプレート15は上下方向に移動する駆動ラム18に固定されている。さらに、押え板12は受台11上にスプリング12Aを介して弾性保持され、かつ押え板12は支持棒16により押圧可能となっている。なお、この支持棒16はパンチプレート15にスプリング17により弾性保持されている。
【0025】
次にキャリアテープの製造方法について
図1(a)〜(e)および
図2(a)〜(d)により説明する。まず樹脂製基材10aが受台11上に載置され、このとき樹脂製基材10aは受台11上と押え板12との間に配置される(
図1(a)および
図2(a)参照)。
図1(a)に示すように、受台11およびパンチプレート15に、ストロークストッパ28a、28bが各々設けられ、駆動ラム18は上死点にある。
【0026】
その後、支持棒16が駆動ラム18により下降して、押え板12が支持棒16により押付けられて、基材10aに当接する(
図1(b)および
図2(b)参照)。
【0027】
次に駆動ラム18がさらに降下し、パンチプレート15に保持されたパンチ14が基材10a上から基材10a内部に進入する。このとき基材10aに凹部24が成形されるとともに凹部24の底面26が受台11側へ突出し、これにより基材10aの他の底面27が浮き上がって受台11から引離される(
図1(c)および
図2(c)参照)。
図1(c)において、受台11側のストロークストッパ28aが、パンチプレート15側のストロークストッパ28bに当接して、駆動ラム18は下死点に至る。
【0028】
凹部24の底面26が受台11側に突出する際、基材10aも全体が浮き上り、これにより基材10aは弾性保持された押え板12を押上げる。
【0029】
その後、駆動ラム18が上昇してパンチ13を基材10aから引抜き、その後押え板12がスプリング12Aにより上昇し、このことにより、基材10aに凹部24を成形してなるキャリアテープ10を得ることができる(
図1(d)および
図2(d)参照)。その後、駆動ラム18は上死点に至る(
図1(e)参照)。
【0030】
本実施の形態によれば、基材10aに凹部24を成形する時に凹部24の底面26を下方へ突出させることにより、パンチ13に大きな成形圧力を加えることなく凹部24を容易に成形することができる。また凹部24を成形する際、凹部24の底面26以外の基材の底面27を受台11から浮き上がらすことができるので、例えば受台11に凹部24が入り込む溝を設けて凹部24を成形する場合に比べ、凹部24成形後のキャリアテープ10を水平方向に容易に引抜き排出することができる。すなわち受台11上に凹部24が入り込む溝を設けた場合は、キャリアテープ10を水平方向に引抜き排出することは困難となる。
【0031】
次に基材10aに凹部24を形成する際の基材10aの挙動について説明する。樹脂製基材10aをパンチ13で加圧した場合、基材10a内に内圧S1が発生し、内圧S1の反力S2により加圧されていない基材10aの部分全体が押え板12を押上げる(
図2(c)参照)。このように加圧されていない基材10aの部分がS3方向に上昇することにより、基材10aは相対的に上下押し成形加工の効果が得られ、そのことにより上方の導電性樹脂層1,2を破断することなく、基材10aに凹部24を成形することができる。
ここで、
図5および
図6により、本発明の比較例について説明する。
図5および
図6に示す比較例において、受台11上に基材10aの凹部24が入り込む溝11aが設けられている。
図5および
図6に示すように、受台11上に溝11aを設けた場合、基材10aをパンチ13で加圧すると、基材10a内に内圧S1が発生する(
図6(a)参照)。このとき、内圧S1の反力S2により加圧されていない基材10aの部分が押え板12をS3方向に押し上げるが、受台11上の溝11aにより基材10a内の内圧S1および反力S2は、いずれも小さくなっている(
図6(b)参照)。このため基材10aから押え板12を押し上げる力も弱くなり、上下押し成形加工の効果が低下する。
このように基材10aをパンチ13で加工する際の内圧S1、反力S2のいずれもが低下すると、基材10aの破断面長さが長くなり、このため基材10aに成形された凹部24の断面形状は上辺より下辺が大きくなる台形状となる(
図6(c)参照)。
この場合は基材10aの凹部24において破断面長さが長くなるため、基材10aのうち、とりわけ一対の導電性樹脂層1,2が破断してしまう。また受台11上に設けられた溝11aにより、凹部24成形後のキャリアテープ10を水平方向に引抜くことはむずかしくなる。
これに対して本実施の形態によれば、受台11は溝をもたない平坦面を有するため、基材10aをパンチ13で加圧した場合、基材10a内に大きな内圧S1を生じさせ、かつ内圧S1の反力S2を十分大くすることができる。このため加圧されていない基材10aの部分を大きく上昇させて基材10aに対して相対的に大きな上下押し成形加工の効果を付与することができる。この場合は基材10aの凹部24において破断面長さが長くなることはなく、基材10aの一対の導電性樹脂1,2が破断することはない。また凹部24の断面形状は矩形状を維持し、凹部24を精度良く成形することができる。
【0032】
なお、上記実施の形態において、押え板12をスプリング17を用いてパンチプレート15により弾性保持し、基材10a上に押え板12を上下方向移動自在に載置してもよい。この場合は基材10aに凹部24を成形する際、凹部24の底面26が下方へ突出するにつれて基材10aが上昇するが、この基材10aの上昇分を押え板12の上方移動により吸収することができる。
【符号の説明】
【0033】
1、2 導電性樹脂層
3 中間樹脂層
10 キャリアテープ
10a 基材
11 受台
12 押え板
12A スプリング
13 パンチ
14 開孔
15 パンチプレート
17 スプリング
18 駆動ラム
20 キャリアテープ体
24 凹部
25 電子部品
26 底面
27 底面