特許第6292608号(P6292608)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 芦森工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6292608-消防用ホース 図000002
  • 特許6292608-消防用ホース 図000003
  • 特許6292608-消防用ホース 図000004
  • 特許6292608-消防用ホース 図000005
  • 特許6292608-消防用ホース 図000006
  • 特許6292608-消防用ホース 図000007
  • 特許6292608-消防用ホース 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6292608
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】消防用ホース
(51)【国際特許分類】
   A62C 33/00 20060101AFI20180305BHJP
   F16L 11/02 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   A62C33/00 C
   F16L11/02
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-6312(P2014-6312)
(22)【出願日】2014年1月17日
(65)【公開番号】特開2015-134043(P2015-134043A)
(43)【公開日】2015年7月27日
【審査請求日】2016年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082027
【弁理士】
【氏名又は名称】竹安 英雄
(72)【発明者】
【氏名】柴田 健一
(72)【発明者】
【氏名】本間 毅
【審査官】 首藤 崇聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−140145(JP,A)
【文献】 特開2003−074756(JP,A)
【文献】 実開昭53−004405(JP,U)
【文献】 特開2001−141127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 33/00
F16L 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
たて糸(4)とよこ糸(5)とを、2/1綾織り組織にて筒状に織成してなるジャケット(3)の内面に、柔軟なゴム又はプラスチックよりなる均一厚みのライニング(6)を形成してなる消防用ホース(1)において、当該消防用ホース(1)を扁平に折り畳んだ状態における両腹部(8)におけるジャケット(3)の厚さが、耳部(7)及びその近傍におけるジャケット(3)の厚さより厚く、消防用ホース(1)の腹部の厚さが耳部7及びその近傍の厚さより2〜10%厚いことを特徴とする、消防用ホース
【請求項2】
前記腹部(8)のジャケット(3)を構成するたて糸(4b)が、前記耳部(7)及びその近傍のジャケット(3)を構成するたて糸(4a)よりも、見かけの太さが5〜20%太いことを特徴とする、請求項1に記載の消防用ホース
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はたて糸とよこ糸とを筒状に織成してなるジャケットの内面にゴム又はプラスチックのライニングを施してなる消防用ホースに関するものであって、特に前記ジャケットが2/1綾織りにより織成された消防用ホースにおいて、コイル状に巻回したときに美しい巻き姿を形成することができ、巻き崩れが生じにくい消防用ホースを提供することを目的とするものである。
【背景技術】
【0002】
一般に消防用ホース1は両端に接続金具2が取り付けられており、不使用時には図7に示すようにコイル状に巻回した状態で収納され、且つ消防自動車に搭載される。そしてそのコイル状の消防用ホースを火災現場において転がすことにより展張して伸ばし、接続金具2を結合して通水するのである。
【0003】
このとき消防用ホース1が美しい巻き姿で巻かれていないと、コイルの中心が側方に抜けて巻き崩れが生じたり、またこの消防用ホースを展張する際にスムーズに転がらず、曲がってしまうことがある。
【0004】
特に消防用ホース1において、ジャケットが綾織り組織で織成されている場合には、前述のように美しい巻き姿を形成することが難しく、巻き崩れが生じることが多かったのである。
【0005】
従来は一般的に消防用ホース1のジャケット3は、図6に示されるように、たて糸4とよこ糸5とを平織り組織で織成されることが多く、ジャケット3の内外面共にたて糸4で覆われており、そのジャケット3の内面にゴム又はプラスチックのライニング6が施されている。
【0006】
かかる構造においては、ライニング6はたて糸4のみに接着しており、よこ糸5には接着されることはない。そのため図6に示すように消防用ホース1を扁平に折り畳んだときに、消防用ホース1の耳部7において強く折り畳まれても、ジャケット3を構成するたて糸4とよこ糸5とが互いに融通し合い、腹部8の厚さのままで耳部7まできちんと折り畳まれるのである。
【0007】
しかしながら近年、特に柔軟なホースが求められ、さらに特に外傷や摩耗に対する耐久性を向上させるため、外面に内面よりもたて糸4が多く配置された、2/1綾織り組織のジャケット3が使用されるようになってきた。
【0008】
ところが2/1綾織り組織は、外面においてたて糸4がよこ糸5の表面に二本浮き、一本沈むことを繰り返す組織であるため、図4に示すようにジャケット3の内面においてよこ糸5が露出し、ライニング6がたて糸4のみならずよこ糸5にも接着することとなるのである。
【0009】
かかる状態で消防用ホース1を扁平に折り畳もうとすると、よこ糸5に接着していたライニング6がその両側からたて糸4で挟圧されることになるため、平織り組織のジャケット3の場合において述べたように、たて糸4とよこ糸5とが融通し合うことができず、耳部において扁平に折り畳むことが困難となるのである。
【0010】
そのためこの消防用ホース1を無理に扁平に折り畳もうとすると、耳部7において急角度で折り畳まれることができず、図4に示すように耳部が膨らんで、その膨らみ9を解消することができない。
【0011】
それ故その消防用ホース1を図7のように巻回すると、前述のように耳部7が膨らんでいるため、その膨らみ9同士が互いにぶつかり合い、その状態で隣接する消防用ホース1同士が押し合うことになる。
【0012】
そのためその膨らみ9が側方にずれ合うことにより落ち着き、図5に示すように耳部が激しい凹凸を形成し、消防用ホース1の巻き上がりが極めて見苦しいものとなると共に、隣接する消防用ホース1同士の接触面が少ないため、側方にずれて巻き崩れを生じ易くなるのである。
【0013】
なお、本発明と類似の構造を有する消防用ホースとして、特開2001‐141127号公報に示されたものがあるが、このものは公報中に明記はされていないが、ジャケットは従来の平織り組織で織成されたものであると思われ、効果として展張性の向上が歌われているだけであって、前述のような巻き上がりの美しさや巻き崩れを防止する効果については全く記載されておらず、平織り組織のジャケットでは、このような問題は生じないものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2001‐141127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明はかかる事情に鑑みなされたものであって、たて糸とよこ糸とを2/1綾織り組織にて織成したジャケットの内面に、柔軟なゴム又はプラスチックのライニングを形成してなる柔軟な消防用ホースにおいて、これをコイル状に巻回したときに耳部がきちんと揃って巻かれ、且つ巻き崩れが生じることのない消防用ホースを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
而して本発明は、たて糸とよこ糸とを、2/1綾織り組織にて筒状に織成してなるジャケットの内面に、柔軟なゴム又はプラスチックよりなる均一厚みのライニングを形成してなる消防用ホースにおいて、当該消防用ホースを扁平に折り畳んだ状態における両腹部におけるジャケットの厚さが、耳部及びその近傍におけるジャケットの厚さより厚く、消防用ホース(1)の腹部の厚さが耳部7及びその近傍の厚さより2〜10%厚いことを特徴とするものである。
【0017】
本発明においては、前記腹部のジャケットを構成するたて糸が、前記耳部及びその近傍のジャケットを構成するたて糸よりも、見かけの太さが5〜20%太いものとすることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、消防用ホース1の腹部8が耳部7及びその近傍よりも厚さが大きいので、その消防用ホース1を図7に示すように巻回したとき、耳部7の膨らみ9を無理に解消することなく、腹部8同士が当接することにより巻回することができ、側方にずれることなく巻回することができ、美しい巻き姿を形成することができると共に、巻き崩れが生じることもない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の消防用ホースの横断面図
図2】本発明の消防用ホースを扁平に折り畳んだ状態の横断面図
図3】本発明の消防用ホースを巻回した状態の、図7におけるIII−III断面図
図4】従来の綾織り組織の消防用ホースを扁平に折り畳んだ状態の横断面図
図5】従来の綾織り組織の消防用ホースを巻回した状態の、図7におけるIII−III断面図
図6】従来の平織り組織の消防用ホースを扁平に折り畳んだ状態の横断面図
図7】消防用ホースを巻回した状態の側面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明を図面に従って説明する。図1は本発明の消防用ホース1の横断面図であって、たて糸4とよこ糸5とを筒状に織成したジャケット3の内面に、ライニング6を形成したものである。
【0021】
そしてこの消防用ホース1のジャケット3は、2/1綾織り組織により織成されている。すなわちたて糸4が表面によこ糸5二本分浮いたのち、よこ糸5一本分沈むことを繰り返している。逆によこ糸5の浮沈で言えば、よこ糸5がたて糸4一本分表面に浮いたのち、たて糸4二本分沈むことを繰り返している。
【0022】
そして本発明においては、前記たて糸4として、消防用ホース1の両腹部8を形成するたて糸4bが、耳部7及びその近傍を形成するたて糸4aよりも見かけの太さが太い糸を使用することにより、消防用ホース1の腹部8の厚みが耳部7及びその近傍よりも厚くなるように構成されている。
【0023】
腹部8を形成するたて糸4bは、耳部7を形成するたて糸4aよりも、見かけの太さが5〜20%太いものとすることが好ましい。このようにすることにより、消防用ホース1の腹部8の厚みが、耳部7及びその近傍に比べて、2〜10%厚くなるように構成するのが適当である。
【0024】
腹部8のたて糸4bの見かけ太さを太くする手段としては、耳部7のたて糸4aよりも繊維量を増すこともできるが、例えばたて糸4aをフィラメント糸で形成し、たて糸4bをスパン糸又は嵩高加工糸で形成することにより、繊維量をほとんど変えることなく、見かけ太さを太くすることも可能である。
【0025】
以上のようにすることにより、消防用ホース1の腹部8が耳部7及びその近傍に比べて厚くなる。そのため図2に示すように、消防用ホース1を扁平に折り畳んだときその耳部7に多少の膨らみ9があったとしても、それを無理に解消することなく、腹部8の厚みtの範囲内に納まるのである。
【0026】
それ故この消防用ホース1をコイル状に巻回したときも、図3に示すように厚い腹部8において隣接する消防用ホース1が互いに当接し合い、且つ膨らみ9が互いに当接し合ってもそれが邪魔になることがなく、前記図5に見られるような巻き姿の乱れがなく、きちんとした巻き姿が得られる。
【0027】
また腹部8において隣接する消防用ホース1が互いに当接し合っており、それが巻回力によって互いに押し合っているので、隣接する消防用ホース1が互いにずれることがなく、巻き崩れが生じることがない。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上の説明においては高性能の消防用ホース1として説明しているが、2/1綾織り組織で織成されたジャケット3の内面にライニング6を施したものである限り、消防用に限らず排水用ホースなどにおいても、本願発明を利用することが可能であり、これらも消防用ホース1に含むものである。
【符号の説明】
【0029】
1 消防用ホース
3 ジャケット
4 たて糸
5 よこ糸
6 ライニング
7 耳部
8 腹部
9 膨らみ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7