(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6292612
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】河川水の清澄化方法
(51)【国際特許分類】
B01D 21/08 20060101AFI20180305BHJP
B01D 21/01 20060101ALI20180305BHJP
B01D 21/02 20060101ALI20180305BHJP
B01D 21/24 20060101ALI20180305BHJP
B01D 21/00 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
B01D21/08 C
B01D21/01 B
B01D21/01 D
B01D21/02 F
B01D21/24 G
B01D21/24 Q
B01D21/00 C
B01D21/24 W
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-44640(P2014-44640)
(22)【出願日】2014年3月7日
(65)【公開番号】特開2015-167911(P2015-167911A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2017年2月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229162
【氏名又は名称】日本ソリッド株式会社
(72)【発明者】
【氏名】波多野 倫
【審査官】
富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−085998(JP,A)
【文献】
特開2013−132621(JP,A)
【文献】
特開2010−201381(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0175804(US,A1)
【文献】
特開2003−154209(JP,A)
【文献】
特開2007−260515(JP,A)
【文献】
特開昭47−044449(JP,A)
【文献】
米国特許第04082671(US,A)
【文献】
特開平04−118007(JP,A)
【文献】
実開昭55−115400(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/00−21/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川水を薬品沈澱池で凝集剤を添加した後、フロック形成池に導入して汚濁物質をフロック化させ、次いで傾斜板沈澱池内に、フロートの下部に可撓性または剛性の垂下板を有する水流傾斜板によって、ます形に区画したスラッジ・ブランケット部を設け、その下流側に傾斜板を設けてなる傾斜板沈澱池に導入し、傾斜板沈澱池に沈降した汚泥を該傾斜板沈澱池の底部から排砂管によって排泥池に導入し、この汚泥水を、前記水流傾斜板で円形状に多重展張された濃縮槽に導入して汚泥の濃縮を行った後天日乾燥床または脱水機へ、一方傾斜板沈澱池の上澄水は濾過槽を有する急速濾過池に導入し、該濾過槽を通過した上水を浄水池に導入することを特徴とする河川水の清澄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川水を用いて上水を得るための清澄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、河川水およびダム・湖沼水から上水を得るために種々の上水道システムの提案がなされている。例えば、ダムから放流された水を取水し、沈砂池に導入し、ここで流れてきた砂や粗大ゴミを除去した後、導水トンネルを通して着水井に導入する。この着水井は、原水(河川水)の水量や水位を調節すると共に、消毒などのために塩素剤(次亜塩素酸ソーダ)等を加え、またpH調整のために苛性ソーダを注入する。このように調整された原水は、次に薬品混和池に導入され、ここで原水中の汚濁物質を凝集するために例えばポリ塩化アルミニウム等の凝集剤を添加して撹拌を行う。凝集剤を添加された原水は、次にフロック形成池に導入され、ここで原水を上下にゆるやかに流して撹拌をさせ、汚濁物質を凝集させフロック化を行う。
【0003】
フロック形成池で処理された原水は傾斜板沈澱池に導入され、ここでフロックを沈殿させ、上澄みの水を次の急速濾過池に送る。急速濾過池には砂と砂利の濾過層が設けられており、この濾過層を通すことによって傾斜板沈澱池で除去されなかった汚れ等を除去する。急速濾過池で処理され、清澄化された水(上水)は必要により、塩素剤等が注入され、浄水池に導入される。浄水池の上水は送水管を通して市や町の配水池に送水される。
【0004】
一方傾斜板沈澱池で沈降した汚泥は、排泥池に送られ、ここから濃縮槽に送られ、ここで汚泥を濃縮する。濃縮された汚泥は天日乾燥床または脱水機に送られ乾燥させ、水分は河川に放流される。
【0005】
また前記上水道システムにおいて、傾斜板沈澱池の改良として、池内水と流入する原水との間に水温差が生じ、対流現象を起こす恐れのある沈降分離装置において、原水流入部近傍にシート状膜を原水の水流方向に対して直角に横断するように直列させ、前記直列させたシート状膜の後方に間隔を設けて、水面下に多条区画展張することを特徴とする沈降分離装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
特許文献1 特開2013−85998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら傾斜板沈澱池の場合、傾斜板は低濁度の場合には良いが、原水が降雨や崖崩れ等で高濁度になると、固液分離の沈降は困難であった。
すなわち、降雨等により河川水の濁度が高くなると傾斜板内の沈降が傾斜板壁面の圧力によって下層部に行くしたがって濁質濃度が高くなり、沈降速度が遅くなる現象が生じる。これは本来固液分離するべき沈降状況が変化して、求める沈降面積および沈降速度が得られないことによるものである。更に傾斜板上段部から沈降してくる粒子群によって干渉沈降状態が続くと停滞し、連接する傾斜板の間隙部が閉塞してしまい、後段の濾過機の洗浄頻度が増し、上水道システムを休止せざるを得なくなり、ひいては上水の供給が不可能になってしまうことになった。この問題点を解決するために特許文献1の技術が開発され、高濃度濁度の河川水においても傾斜板の閉塞を防止することができたが、一方傾斜板沈澱池の汚泥量が増大し、濃縮層の処理が対応できず結果的に上水道システムを休止せざるを得なかった。
そこで本発明者は既設の上水道システムを用いて濁度の高い河川水の場合においても連続して上水道システムを運用し得る方法について種々研究を重ねた結果本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、河川水を薬品混和池で凝集剤を添加した後、フロック形成池に導入して汚濁物質をフロック化させ、次いで傾斜板沈澱池内に水流傾斜板によって、ます形に区画し、高濃度化した接触・濾過機能を有するスラッジ・ブランケット部を設け、その下流側に傾斜板を設けた傾斜板沈澱池に導入し、傾斜板沈澱池に沈降した汚泥を該傾斜板沈澱池の底部から排砂管によって排泥池に導入し、この汚泥水を、水流傾斜板で円形状に多重展張された濃縮槽に導入して汚泥の濃縮を行った後、天日乾燥床または脱水機へ、一方傾斜板沈澱池の上澄水は濾過層を有する急速濾過池に導入し、該濾過層を通過した上水を浄水池に導入する、河川水の清澄化方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明方法によれば、傾斜板沈澱池に水流傾斜板によるスラッジ・ブランケット部を設けることにより、水流傾斜板を設けた沈澱池前段で高濃度になる為、沈降する汚泥は沈澱池の前段に集中させることができ、それによって水面積増加、水域秩序・整流、初期沈降濃度の向上、多粒子群の形成、短絡流の防止、薬注量の削減、濾過機の洗浄頻度の削減を行うことができる。
また濃縮槽に水流傾斜板を設けることによって初期沈降を促進して固液分離を計ることができるので多量の汚泥を処理することができる。
【0010】
このように本発明は、傾斜板沈澱池及び濃縮槽における問題点を同時に解決することによって河川水の濁度の変化によっても上水道システムを休止することなく、常に運行ができるもので上水道の供給の休止と云う実体を解消することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず本発明方法の装置に使用する水流傾斜板について説明する。
図1は、水流傾斜板1を直列に展張した正面図である。水流傾斜板1は、フロート2の下部に可撓性または剛性の垂下板3を有し、垂下板3の下端部に必要によりウエイト4を設ける。そして垂下板3の幅は、フロート2の幅より狭く、フロート2を直列に連接することにより、水面部は、隣接するフロート2間に間隙がなく、水の流れを止めると共に、寄り戻す力が働き、逆の流れが発生する。水中部は隣接する垂下板3間に間隙を有するので原水が容易に通過することができる。
また水流傾斜板1は、前記したフロート2の代わりに展張する装置の水面部近傍にH型鋼等の鋼材を用いて、垂下板3を吊下する支持枠を固定し、この支持枠に隣接する垂下板3間に間隙を有するようにして所望の形状に吊下する。
本発明に使用する可撓性の垂下板3としては、キャンバスシート、PVAターポリンシート、EVAターポリンシート、ゴムターポリンシート、ネット膜等が揚げられる。また剛性の垂下板3としては、塩ビ製板、ポリエチレン製板等の樹脂製の板、或いはステンレス製板、チタン製板等の金属製の板が揚げられる。
【0013】
図2は、傾斜板沈澱池の平面図を示すものである。傾斜板沈澱池のフロック形成池側の既設の傾斜板を取り外し、そこに水流傾斜板1をます形に展張したものである。
図2においては、河川水の流れ方向に6個のます形を構成するように設置した場合を示したが、このます形の数は、河川水の濁度等を考慮して適宜選択することができる。
図3は
図2の断面図を示したものである。
【0014】
次に本発明方法に用いる濃縮槽について説明する。
図4は汚泥掻き寄せ機5付の濃縮槽の平面図を示したものである。図に示すように水流傾斜板1を六角形状に多重展張した場合を示したものである。そして水流傾斜板1を何条展張するかについては汚泥の濃度等のよって適宜選択すればよい。
図5は
図4の概略図である。
【0015】
次に本発明の河川水の清澄化方法について
図6を参照しながら説明する。
取水堰6から河川水を沈砂池7に導入して河川水と共に流れてきた砂や大きなゴミを除去する。その後導水管8によって着水井9に導入し、ここで消毒などのために塩素剤を添加し、またpH調整のため苛性ソーダを添加する。着水井9で処理された河川水は導管10を通って薬品混和池11に導入される。薬品混和池11では攪拌機12によって撹拌されながら、ポリ塩化アルミニウム等の凝集剤が添加され、導管13を通ってフロック形成池14に導入される。フロック形成池14は河川水が上下流するように上下から一部隔壁15が設けられている。ここで汚濁物質はフロック化し、沈降しやすい塊となる。次に河川水は傾斜板沈澱池16に導入され、はじめに水流傾斜板1が設けられたスラッジ・ブランケット部17を通り、次いで傾斜板18を通過しながらフロックを傾斜板沈澱池16の底部に集める。傾斜板沈澱池16に溜まった汚泥は排泥管19を通して排泥池20に導入される。排泥池20に入った汚泥は攪拌機21によって撹拌され分散された状態で導管22を介して濃縮槽23に導入される。濃縮槽23には水面から水流傾斜板1が六角形に多重展張されていることから、初期沈降が促進され好適な固液分離を計ることができる。濃縮槽23で処理された汚泥水は導管24を介して天日乾燥床25に導入され、上澄水は河川に放流し、濃縮された汚泥は自然乾燥または脱水する。
【0016】
一方傾斜板沈澱池16で処理された上澄水は導管26を介して急速濾過池27に導入され、砂と砂利からなる濾過層28で濾過された後導管29を介して浄水池30に送水する。浄水池30の処理された上水は、送水管によって増圧ポンプ場、量水所を介して市町村の配水池に送水される。そして該配水池から各家庭に上水が供給される。
【符号の説明】
【0017】
1・・・・・水流傾斜板
2・・・・・フロート
3・・・・・可撓性または剛性の垂下板
16・・・・・傾斜板沈澱池
22・・・・・濃縮槽