特許第6292632号(P6292632)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6292632ポリカチオン性トリブロックコポリマーとポリアニオン性ポリマーと生理活性ペプチドを含む組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6292632
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】ポリカチオン性トリブロックコポリマーとポリアニオン性ポリマーと生理活性ペプチドを含む組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/00 20060101AFI20180305BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20180305BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20180305BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20180305BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20180305BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20180305BHJP
   C08F 8/32 20060101ALI20180305BHJP
   C08F 112/14 20060101ALI20180305BHJP
   C08F 293/00 20060101ALI20180305BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20180305BHJP
   C08G 65/326 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   A61K38/00
   A61K47/34
   A61K47/32
   A61K47/36
   A61K47/42
   A61K9/107
   C08F8/32
   C08F112/14
   C08F293/00
   C08L53/00
   C08G65/326
【請求項の数】12
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-522786(P2015-522786)
(86)(22)【出願日】2014年6月10日
(86)【国際出願番号】JP2014065344
(87)【国際公開番号】WO2014199982
(87)【国際公開日】20141218
【審査請求日】2017年5月23日
(31)【優先権主張番号】特願2013-123001(P2013-123001)
(32)【優先日】2013年6月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長崎 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】金子 純也
(72)【発明者】
【氏名】吉冨 徹
(72)【発明者】
【氏名】石井 志郎
【審査官】 伊藤 清子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/133647(WO,A1)
【文献】 特開2012−111700(JP,A)
【文献】 特開2012−67025(JP,A)
【文献】 特開2011−184429(JP,A)
【文献】 特開2007−520260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00
A61K 9/107
A61K 47/32
A61K 47/34
A61K 47/36
A61K 47/42
C08F 8/32
C08F 112/14
C08F 293/00
C08G 65/326
C08L 53/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表されるトリブロックコポリマーとポリアニオン性ポリマーと生理活性ペプチドを含んでなる組成物:
CNR−PEG−CNR (I)
式中、
CNRは、独立して、少なくとも1つのアミノ基(−NH−)を含有する連結基を介してポリマー主鎖に結合する環状ニトロキシドラジカルをペンダント基の一部として含む反復単位を含むポリマーセグメントであり、該CNRの未結合末端は独立して、水素原子、アリールチオカルボニルチオ、アルキルチオカルボニルチオ、アルコキシチオカルボニルチオおよびスルファニル基からなる群より選ばれる原子または基を末端基とすることができ、
PEGはポリ(エチレングリコール)を含むセグメントである。
【請求項2】
環状ニトロキシドラジカルが、o−またはp−フェニレン−(C1−6アルキレン−NH)−(C1−6アルキレン)−で表される連結基であって、pは1〜3の整数であり、qは0または1の整数である連結基を介してポリマー主鎖に結合しており、かつ、環状ニトロキシドラジカルが、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル−3−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリン−1−オキシル−3−イル及び2,4,4−トリメチル−1,3−オキサゾリジン−3−オキシル−2−イル、2,4,4−トリメチル−1,3−チアゾリジン−3−オキシル−2−イル及び2,4,4−トリメチル−イミダゾリンジン−3−オキシル−2−イルからなる群より選ばれ、
ここで、ポリマー主鎖が重合性不飽和二重結合に由来し、当該主鎖にフェニレンの未結合末端が結合している、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
式(II)で表されるトリブロックコポリマーとポリアニオン性ポリマーと生理活性ペプチドを含んでなる組成物:
【化1】
式中、
各Lは、同一または異なる連結基を表し、
各Lは、独立して、−C1−6アルキレン−NH−(C1−6アルキレン)−であり、ここでqは0または1の整数であり、そして
各Rは、独立して、Rの総数nの少なくとも50%が2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル−3−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリン−1−オキシル−3−イル及び2,4,4−トリメチル−1,3−オキサゾリジン−3−オキシル−2−イル、2,4,4−トリメチル−1,3−チアゾリジン−3−オキシル−2−イル及び2,4,4−トリメチル−イミダゾリンジン−3−オキシル−2−イルからなる群より選ばれる環状ニトロキシドラジカル化合物の残基を表し、存在する場合には、残りのRが水素原子、ハロゲン原子またはヒドロキシ基であり、
各末端のHは場合によって、独立してアリールチオカルボニルチオ、アルキルチオカルボニルチオ、アルコキシチオカルボニルチオおよびスルファニル基から選ばれる基によって置換されていてもよく、
mは、20〜5,000の整数であり、そして
各nは、独立して、3〜1,000の整数である。
【請求項4】
各Lが独立して、単結合、−S−(CH−、−S−(CHCO−、−(CHS−、−CO(CHS−、m−またはp−フェニレン、m−またはp−キシリレン、アルキレンからなる群より選ばれ、ここでcは1ないし5の整数であり、これらの連結基が方向によって等価でない場合、記載されている方向の逆向きであることができ、
Rが、次式
【化2】
式中、R’はメチル基である、
で表される基から選ばれ、Rの総数nの少なくとも80%を前記式で表される基が占める、
請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
ポリアニオン性ポリマーがポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスルホン酸、ポリアニオン性多糖類、アニオン性タンパク質からなる群より選ばれる1種またはそれ以上である、請求項1または3に記載の組成物。
【請求項6】
生理活性ペプチドが酵素タンパク質、抗原タンパク質、抗体、サイトカイン、ペプチドホルモンおよび抗菌ペプチドからなる群より選ばれる、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
トリブロックコポリマーとポリアニオン性ポリマーと生理活性ペプチドからのカチオン性総電荷対アニオン性総電荷の比が水性溶液中で10:1〜1:10となる、請求項1または3に記載の組成物。
【請求項8】
水性溶液中で動的光散乱(DLS)法により測定すると平均粒径が10nm〜300nmの範囲内にあるポリイオンコンプレックスミセルとして存在する、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
水性溶液中のイオン強度および/または温度変化に応じてゲルを形成する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の組成物から形成されたポリイオンコンプレックスと生理学的に許容され得る希釈剤または賦形剤を含むゲル形成性医療用組成物。
【請求項11】
式(II)
【化3】
式中、
各Lは、同一または異なる連結基を表し、
各Lは、独立して、−C1−6アルキレン−NH−(C1−6アルキレン)−であり、ここでqは0または1の整数であり、そして
各Rは、独立して、Rの総数nの少なくとも50%が2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル−3−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリン−1−オキシル−3−イル及び2,4,4−トリメチル−1,3−オキサゾリジン−3−オキシル−2−イル、2,4,4−トリメチル−1,3−チアゾリジン−3−オキシル−2−イル及び2,4,4−トリメチル−イミダゾリンジン−3−オキシル−2−イルからなる群より選ばれる環状ニトロキシドラジカル化合物の残基を表し、存在する場合には、残りのRが水素原子、ハロゲン原子またはヒドロキシ基であり、
各末端のHは、アリールチオカルボニルチオ、アルキルチオカルボニルチオ、アルコキシチオカルボニルチオおよびスルファニル基から選ばれる基によって置換されており、
mは、20〜5,000の整数であり、そして
各nは、独立して、3〜1,000の整数である、
で表されるトリブロックコポリマー。
【請求項12】
各Lがm−もしくはp−フェニレン、m−もしくはp−キシリレンまたはアルキレンである、請求項11に記載のトリブロックコポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカチオン性トリブロックコポリマーとポリアニオン性ポリマーと生理活性ペプチドを含む組成物に関する。より具体的には、トリブロックコポリマーがアミノ基を介して結合した環状ニトロキシドラジカルをペンダント基の一部として有する2つのポリマーブロックと該ブロックを両端に共有結合したポリ(エチレングリコール)のブロックから構成されていることにより、本発明の組成物は生理活性ペプチド等のローディングされたポリイオンコンプレックスとして提供できる。
【背景技術】
【0002】
本発明者等は、活性酸素種等のラジカルスカベンジャーとして機能する4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル等を包含する環状ニトロキシドラジカル化合物を、その機能に悪影響を及ぼすことなく、ジブロックポリマー化することに成功し、該ジブロックポリマーそれ自体およびそれの一定の技術分野での使用に向けた発明について特許出願した(特許文献1参照)。さらに、本発明者等はポリエチレングリコール(PEG)鎖(B)の両端にカチオン荷電性の環状ニトロキシドラジカルをペンダント基として有するブロック(A)2つが共有結合した、所謂、A−B−A型のトリブロックコポリマーを作製した。当該トリブロックコポリマーは水性媒体中でポリアニオン性ポリマーとのイオンコンプレックス形成を駆動力とする、所謂、フラワーミセルを形成し、また、こうして形成されたミセルは生体内環境に応答してゲル化し、こうして形成されたゲルは局所部位への高い滞留性を有し、それ自体炎症モデルに対して高い炎症抑制効果を示すことが確認できたので報告した(それらの講演予稿である、例えば、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、等を参照)。
【0003】
他方、例えば、酵素、タンパク質等を包含するペプチド又はポリペプチドはその特異的反応性または特定の機能もしくは活性を利用した薬物、特に医療用薬物として利用されてきた。しかしながら、生体中ではプロテアーゼなどの酵素による分解をうけ、バイオアベイラビリティーが極めて低いだけでなく、抗原性や毒性を示すこと等から様々な問題があった。近年、このような物質のポリエチレングリコール化によりこれらの問題を解決しつつあるものの、活性の低下や反応の煩雑性など問題が多い。酵素のチャージを利用し、反対荷電の高分子によるコンプレックス化などによる安定化も試みられているものの(非特許文献5、非特許文献6)、生体中の高いイオン強度によりコンプレックスが容易に崩壊するため実用化が妨げられてきた。さらにはマトリックス自体に高分子等を利用するため,そのマトリックス自身が炎症を起こす原因となり、問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO 2009/133647
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】2012.3.2 PB−13 Min Ley Pua,Pennapa Chonpathompiunlert,Toru Yoshitomi,Yukio Nagasaki,Novel redox flower micelle for chronic inflammation treatements,MANA International Symposium 2012,Tsukuba,Japan
【非特許文献2】2012.6.7 プア ミン リー、ションパントンピクンラット ペナパー、吉冨徹、長崎幸夫、 慢性炎症治療を目指した新規ニトロキシドラジカル含有インジェクタブルハイドロゲルの開発、第65回 日本酸化ストレス学会、徳島、p39
【非特許文献3】2012.11.22 Pua Min Ley,Toru Yoshitomi,Pennapa Chonpathompiunlert,Aki Hirayama,and Yukio Nagasaki,“Redox Injectable Gel(RIG)for Treatments of Local Inflammation−Cattageenan−induced Arthritis−”International Workshop on Soft interface Science for Young Scientists(SIS YS 2012).Tskuba,Japan
【非特許文献4】2013.3.19−22 Pua Min Ley,Toru Yoshitomi,Pennapa Chonpathompiunlert,Aki Hirayama,and Yukio Nagasaki,Redox−active Injectable Gel(RIG)for Treatments of Carrageenan−Induced Arthritis,2nd International Conference on Biomaterials Science in Tsukuba(ICBS2013),Tsukuba,Japan,P155
【非特許文献5】Atsushi Harada and Kazunori Kataoka(1998)“Novel Polyion Complex Micelles Entrapping Enzyme Molecules in the Core:Preparation of Narrowly−Distributed Micelles from Lysozyme and Poly(ethylene glycol)−Poly(aspartic acid)Block Copolymer in Aqueous Medium,”Macromolecules 1998,31,288−294
【非特許文献6】Shin−ichi Sawada,Kazunari Akiyoshi(2010)“Nano−Encapsulation of Lipase by Self−Assembled Nanogels:Induction of High Enzyme Activity and Thermal Stabilization,”Macromolecular Bioscience 2010,10,353−358
【発明の概要】
【0006】
今ここに、一般的に、両性電解質であるタンパク質をはじめとする生理活性ペプチドが、水性媒体中で上記のトリブロックコポリマーとポリアニオン性ポリマーに由来するポリイオンコンプレックスのチャージバランス保持しながら、当該ポリイオンコンプレックスの形成するミセル中にローディングでき、また、かようなミセルは水性媒体中でゲル化し得ることも見出した。さらに、こうして形成されるゲルは、ローディングされた生理活性ペプチドを生体内環境下で安定に保持し、一方で、必要に応じてゲルから該ペプチドを生体内環境に放出することもできる。
【0007】
したがって、本発明は、式(I)で表されるトリブロックコポリマーとポリアニオン性ポリマーと生理活性ペプチド等を含んでなる組成物を提供する。
CNR−PEG−CNR (I)
式中、
各CNRは、独立して、少なくとも1つのアミノ基(−NH−)を含有する連結基を介してポリマー主鎖に結合する環状ニトロキシドラジカルをペンダント基の一部として含有する反復単位を含むポリマーセグメントであり、該CNRの未結合末端は、水素原子、アリールチオカルボニルチオ、アルキルチオカルボニルチオ、アルコキシチオカルボニルチオ、スルファニル基などを末端基とすることができ、
PEGはポリ(エチレングリコール)を含むセグメントである。
前記トリブロックコポリマーの好ましい態様は、次式(II)で表されるものである。
【0008】
【化1】

式中、
各Lは、同一または異なる連結基を表し、
各Lは、独立して、−C1−6アルキレン−NH−(C1−6アルキレン)−であり、ここでqは0または1であり、そして
各Rは、独立して、Rの総数nの少なくとも50%が2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル−3−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリン−1−オキシル−3−イル及び2,4,4−トリメチル−1,3−オキサゾリジン−3−オキシル−2−イル、2,4,4−トリメチル−1,3−チアゾリジン−3−オキシル−2−イル及び2,4,4−トリメチル−イミダゾリンジン−3−オキシル−2−イルからなる群より選ばれる環状ニトロキシドラジカル化合物の残基を表し、存在する場合には、残りのRが水素原子、ハロゲン原子またはヒドロキシ基であり、
各末端のHは独立して、場合によっては、アリールチオカルボニルチオ、アルキルチオカルボニルチオ、アルコキシチオカルボニルチオ、スルファニル基などで置換されていてもよく、
mは、20〜5,000の整数であり、そして
各nは、独立して、3〜1,000の整数である。
【0009】
当該組成物は、トリブロックコポリマーとポリアニオン性ポリマーと生理活性ペプチドからのカチオン性総電荷対アニオン性総電荷の比が水性溶液中で1:10〜10:1、好ましくは1:5〜5:1、より好ましくは1:1.2〜1.2〜1、特に好ましくは1:1となるように配合量が選ばれる。
【0010】
こうして、当該組成物は水性媒体中で流動性のあるポリイオンコンプレックスミセルとして存在することができ、また、当該ミセルは、イオン強度および/または温度の変化に応じて生理活性ペプチドのローディングされた、例えば生体内環境下で安定なゲルを形成することもできる。当該ゲルは、生体内の所望の局所におかれたとき、長期にわたり安定性を示す一方で、上記の両総電荷のバランスを適度にとることにより、その場でローディングされた生理活性ペプチドを制御された様式で放出できる。したがって、本発明の組成物は、例えば、医療分野で、ローディングされたペプチドの生理活性に応じて、該活性を利用して予防または治療することのできる疾患を処置するために使用できる。
【0011】
<発明の記述>
本願発明にいう、トリブロックコポリマーにおける、ペンダント基は、当該技術分野で一般に認識されているとおりの、ある官能基を持った側鎖を意味する。具体的には、ペンダント基は、o−もしくはp−フェニレン−(C1−6アルキレン−NH)−(C1−6アルキレン)−(ここで、は1〜3の整数であり、は0または1の整数である)の連結基に、その記載されている右末端において環状ニトロキシドラジカル残基が共有結合している基である。より具体的には、上記一般式(II)の−フェニレン−(C1−6アルキレン−NH)−(C1−6アルキレン)−Rで表される側鎖を参照すれば、本発明にいうペンダント基をより明瞭に理解できるであろう。このようなペンダント基が結合する主鎖としては、本発明の目的に沿うものであれば限定されるものではない。本発明において、残基とは、それぞれ対応する化合物から水素原子またはその他の化合物の分子を構成する原子が1個除去された状態にある基を意味し、例えば、典型的な環状ニトロキシドラジカルにあっては、一般式(II)のRについて定義する基を参照できる。
【0012】
こうして、ペンダント基の好ましい態様のものとしては、前記環状ニトロキシドラジカルが、o−もしくはp−フェニレン−C1−6アルキレン−NH−(C1−6アルキレン)−(ここで、qは0または1である)の連結基を介してポリマー主鎖に結合しており、かつ、環状ニトロキシドラジカルが、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル−3−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリン−1−オキシル−3−イル及び2,4,4−トリメチル−1,3−オキサゾリジン−3−オキシル−2−イル、2,4,4−トリメチル−1,3−チアゾリジン−3−オキシル−2−イル及び2,4,4−トリメチル−イミダゾリンジン−3−オキシル−2−イルからなる群より選ばれる。
【0013】
当該主鎖にフェニレンの未結合末端(アミノ基(−NH−)を介して環状ニトロキシドラジカルを担持する末端の逆の末端)が結合していることを特徴とするトリブロックコポリマーまたはそのポリカチオンにおいて、「フェニレンの未結合末端」とは、o−もしくはp−フェニレンのC1−6アルキレンが結合している位置と反対側の末端を意味する。また、本願明細書において、結合という場合、他に特記しない限り、共有結合を意味する。
【0014】
上述のとおり、ポリマー主鎖は本発明の目的に沿う限り限定されないが、好ましくは、重合性不飽和二重結合を有する、例えば、置換エチレンのような不飽和二重結合を有する重合性モノマーのラジカル重合により形成される主鎖を意味する。このような主鎖の具体的なものとしては、上記特許文献1に記載のものを挙げることができる。
さらに好ましいトリブロックコポリマーは、上記に好ましい態様ものとして挙げた、式(II)で表されるものである。
【0015】
式(II)において、各Lについて定義する連結基は、好ましくは、それぞれ独立して、単結合、−S−(CH−、−S−(CHCO−、−(CHS−、−CO(CHS−、m−またはp−フェニレン、m−またはp−キシリレン、アルキレンなどからなる群より選ばれ、ここでは1ないし5の整数であることができ、これらの連結基が方向によって等価でない場合、記載されている方向の逆向きであることができ、
各Rは、独立して、Rの総数nの少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは約100%が2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル−3−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリン−1−オキシル−3−イル及び2,4,4−トリメチル−1,3−オキサゾリジン−3−オキシル−2−イル、2,4,4−トリメチル−1,3−チアゾリジン−3−オキシル−2−イル及び2,4,4−トリメチル−イミダゾリンジン−3−オキシル−2−イルからなる群より選ばれる環状ニトロキシドラジカル化合物の残基を表し、存在する場合には、残りのRが水素原子、ハロゲン原子またはヒドロキシ基であり、
mは、20〜5,000、好ましくは、20〜1000、より好ましくは50〜200の整数であり、そして
各nは、独立して、3〜1,000、好ましくは、3〜100、より好ましくは3〜50の整数である、
で表される。
【0016】
1−6アルキレンは、限定されるものではないが、具体的には、メチレン、1,2−プロパンジイル、1,3−プロパンジイル、1,4−ブタンジイル、等の対応するアルキルのジイル基を挙げることができる。
R基の環状ニトロキシドラジカルは、好ましくは、次式
【化2】

上式中、R’はメチル基である、
で表される基を挙げることができる。上記の各基の中、最初の式で表される残基が、以下で、TEMPOと略称されることのある基である。
【0017】
このようなトリブロックコポリマーは、主鎖または主鎖とペンダント基の一部を有するトリブロックコポリマーの前駆体を準備し、次いで、当該前駆体に環状二トロキシドラジカル残基を導入することにより都合よく製造することができる。また、別法では、各ブロックをそれぞれ独立に準備し、次いで、それらを目的のトリブロックコポリマーを形成するように共有結合させてもよい。典型的な製造方法は、後述する実施例に示すが、両末端を反応可能に修飾したポリ(エチレングリコール)の末端にCNRの前駆体となり得るポリマーセグメントを結合させ、または当該両末端から成長させた後、少なくとも1つアミノ基を有する連結基を介して結合されている環状ニトロキドラジカルを導入することにより実施できる。特定の例は上記の非特許文献2や4に記載を参照できるが、より具体的には、本発明者等の国際特許出願PCT/JP2013/051395に記載の方法を参照できる。この出願の内容は、ここに引用することにより、本明細書の内容となる。
【0018】
本発明で用いる、ポリアニオン性ポリマーは、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスルホン酸、ポリアニオン性多糖類(例、カルボキシメチルデキストラン、カラギーナン、キサンタンガム、またはこれらの短鎖分解断片等)、アニオン性タンパク質(例、アルブミン、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸)等を挙げることができ、これらの分子量は、ポリマーの種類によって最適値が異なり、限定されるものでないが、例えば、ポリアクリル酸の場合、Mnが、1000〜1000000、好ましくは、1000〜100000、より好ましくは、1000〜10000である。これらは市販のものをそのまま、また必要に応じて精製して使用すればよい。
【0019】
本発明にいう、生理活性ペプチド等は、本発明の組成物から形成されるポリイオンコンプレックス(PIC)ミセル、または該組成物または該ミセルから形成されるゲルにローディング乃至内包でき、またはそうすることに技術的に意義のある、例えば、水性媒体、水性溶液、または水性環境下で安定化できるものであればいかなる化合物または物質であってもよい。本発明にいう「ペプチド」または「ペプチド等」の語は、低分子ペプチド、オリゴペプチド及びポリペプチドを包含する概念として用いており、ポリペプチドには各種タンパク質も包含される。かようなタンパク質には、糖または脂質により修飾された糖タンパク質またはリポタンパク質を包含することができる。したがって、該生理活性ペプチドには、限定されるものでないが、オキシダーゼ(例、アミノ酸酸化酵素)、リパーゼ、ウロキナーゼ、リゾチーム、トリプシン等の酵素タンパク質、MAGE−A4等の医療用ワクチンの原料として使用される抗原タンパク質、4型葉酸受容体等の抗癌活性を有する抗体(抗体フラグメントおよび一本鎖抗体(scFv)を含む)、HER2標的IgG1κ、EGFR標的IgG2κ等の抗体、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターロイキン、TNF−α、TNF−β、骨形成タンパク質(BMP−11等)、増殖分化因子(GDF−11等)等のサイトカインまたは増殖因子、インスリン、カルシトニン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(例、サイロリベリン)、黄体化ホルモン放出ホルモン(例、ソマトスタチン)、副腎皮質刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出因子、性腺刺激ホルモン、性腺刺激ホルモン放出ホルモン、アンギオテンシン、ガストリン、メラニン細胞刺激ホルモン、β−エンドルフィン、エリスロポイエチン、ウロガストリン、成長ホルモン分泌抑制ホルモン、心房性ナトリウム利尿ペプチド等のペプチドホルモン、ラクトフェリシン、バクテリオシン、ナイシン等の抗菌ペプチドを挙げることができる。これらのペプチドは天然由来のものであっても、遺伝子組換え技術を用いて生産されたものであっても、また、かようなペプチド合成技術を用いて作製されるペプチド(またはポリペプチド)の翻訳後修飾などによりグリコシル化を伴うものであってもよい。
【0020】
本発明の組成物は、上述したとおり、トリブロックコポリマーとポリアニオン性ポリマーと生理活性ペプチド等からのカチオン性総電荷対アニオン性総電荷の比が水性溶液中で1:10〜10:1、好ましくは1:5〜5:1、より好ましくは1:1.2〜1.2〜1、特に好ましくは1:1となるように配合量が選ばれる。かような配合量を決定する際に、両性電解質であるタンパク質をはじめとする生理活性ペプチドの配合量は、それらの等電点pIの値を参照して、トリブロックコポリマーまたはポリアニオン性ポリマーいずれかの配合量を調節することにより、一定のpH下で組成物全体のチャージバランスがとれるように決定する。本発明にいう、水性媒体、水性溶液、水性環境下は、水、脱イオン水、滅菌水、それら自体であってもよいが、無毒性の緩衝剤を含むものであってもよく、さらには、温血動物、好ましくはヒトの体液、体液を含む器官、組織であることができる。
【0021】
本発明の組成物は、上記3成分を単に混合したものを含むが、上述したように組成物全体のチャージバランスがとれるように配合されたものが好ましい。そうすることにより、組成物は、それらの分子が水性溶液中で会合してミセルを形成することにより、あたかも溶解したかのごとく透明なPICミセルとして存在し得る。かようなPICミセルは、動的光散乱(DLS)法により測定される平均粒子径が数十nm〜数百nm、好ましくは10nm〜300nm、より好ましくは20nm〜200nm、最も好ましくは30nm〜150nmの範囲内にある。したがって、例えば、医薬として用いる場合には、例えば、注射投与が容易に可能であり、かつゲルの生成した際の物理的炎症をトリブロックコポリマーに結合したニトロキシラジカルにより抑え、更にはゲルが分解した後にはニトロキシラジカルが結合したトリブロックコポリマーは細胞に取り込まれないため、細胞内の電子伝達系を阻害することなく副作用を抑えることができる点で有利に使用できる。
【0022】
このようなミセル溶液は、水性溶液中のイオン強度および/または温度変化に応じて安定なゲルを形成する。通常、イオン強度は、水性溶液中でイオン化可能な物質により調整できる。室温においてミセル溶液に添加するイオン化可能物質のミセル溶液中での最終イオン濃度を0(ゼロ)〜50(好ましくは、0mM)mMからイオン濃度150mM以上までに変化することにより、ミセル溶液をゲル化させることができる。温度に関して、本発明の組成物は、通常室温の水性溶液中で前記ミセルが形成されるが、該温度を37℃程度以上に上昇させることにより前記ミセル溶液はゲル化を生じる。かようなゲル化はイオン濃度および温度を同時に変化させることによっても生じさせることができる。イオン化可能な物質は、無機塩、限定されるものでないが、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、硫酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムである。
【0023】
また、本発明の組成物から形成されたPICは、生理学的に許容され得る希釈剤または賦形剤を含むゲル形成用組成物として提供することもできる。かような希釈剤は、滅菌水、鉱酸を含む酸性水溶液、生理食塩水、生理的に許容される緩衝剤を含む弱酸性または弱アルカリ性の溶液等であることができる。賦形剤は、例えば、ソルビトール、デキストリン、ブドウ糖、マンニトール、アミノ酸(例えば、グリシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、グルタミン酸等)等であることができる。
【0024】
さらに、生理活性ペプチド等の使用を必要とし、さらに炎症を抑制することが望まれる患者に当該組成物を投与(ミセル溶液の場合、静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、等の経路による)し、また、病巣に直接注入し、ゲル化を起こすことにより、注入局所に長期滞留させるとともに、必要に応じ、生理活性ペプチド等を徐放させることにより、該生理活性ペプチドで処置することを必要とする疾患または障害を処置することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】製造例1で得られたPCMS−b−PEG−b−PCMSトリブロックコポリマーのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)測定とH NMRスペクトル測定の結果を表す図である。
図2】製造例2で得られたPMNT−b−PEG−b−PMNTトリブロックコポリマーのSEC測定H NMRスペクトルの測定結果を表す図である。
図3】製造例4で調製したポリイオンコンプレックスミセルのゲル化様子を表す図に代わる写真である。
図4】試験1の結果を示す、Dアミノ酸酸化酵素内包ポリイオンコンプレックスの過酸化水素産出能を示す図である。
図5】製造例5〜7で得られるタンパク質内包PICミセルおよび参考例1で得られるPICミセルの粒子径の測定結果を示す図である。図中、◇はFITC-Insulin内包PICミセルに関し、□はFITC-BSA内包PICミセルに関し、▲はFITC−GOD内包PICミセルに関する測定データをプロットしたものである。●はタンパク質不含PICミセルに関するものである。
図6】タンパク質濃度を同一濃度にした場合のFITC-Insulin内包PICミセル溶液およびFITC-Insulin溶液中のFITC-Insulin水溶液の蛍光強度の測定結果を表す。
図7】タンパク質濃度を同一濃度にした場合のFITC-BSA内包PICミセル溶液およびFITC-BSA溶液中のFITC-BSA水溶液の蛍光強度の測定結果を表す。
図8】タンパク質濃度を同一濃度にした場合のFITC−GOD内包PICミセル溶液およびFITC−GOD溶液中のFITC−GOD水溶液の蛍光強度の測定結果を表す。
図9】試験例2によるRIGからのタンパク質リリースの測定結果を表す。●はFITC−Insulin内包RIG、■はFITC−BSA内包RIGおよび△はFITC−GOD内包RIGからのリリースの結果を表す。
図10】試験例3によるRIGからのタンパク質のin vivoリリース評価試験の結果を表す写真である。
図11】試験例3によるRIGのin vivo滞留性評価試験の結果を表す写真である。
図12】試験例4によるタンパク質のin vivo滞留性評価試験の結果を表す写真である。
図13】試験例5によるPICミセル(DAO含有)溶液の温度およびイオン強度の変化に基づくゲル化挙動を表す。
図14】試験例5によるPICミセル(DAO不含)溶液の温度およびイオン強度の変化に基づくゲル化挙動を表す。
図15】製造例14で得られたBr−PEG−BrのSEC測定H NMRスペクトルの測定結果を表す図である。
図16】製造例15で得られたCTA-PEG−CTAのSEC測定H NMRスペクトルの測定結果を表す図である。
図17】製造例16で得られたPCMS−b−PEG−b−PCMSトリブロックコポリマーのSEC測定H NMRスペクトルの測定結果を表す図である。
図18】製造例17で得られたPMNT−b−PEG−b−PMNTトリブロックコポリマーのSEC測定H NMRスペクトルの測定結果を表す図である。
図19】製造例18で得られるポリイオンコンプレックスミセルの粒子径の測定結果を示す図である。
【実施例】
【0026】
以下に、具体例を挙げ、さらに本発明を具体的に説明するが、これらの具体例に本発明を限定することを意図するものではない。
【0027】
<製造例1> ポリクロロメチルスチレン−b−ポリエチレングリコール−b−ポリクロロメチルスチレン(PCMS−b−PEG−b−PCMS)トリブロックコポリマーの合成
PCMS−b−PEG−b−PCMSは、次の合成スキーム1に従い合成した:
【化3】
【0028】
両末端にチオール基を有しているポリエチレングリコール(HS−PEG−SH)(Mn:10000;0.164mmol,1.64グラム)を反応容器に加えた。次に、反応容器中を真空にした後、窒素ガスを吹き込む操作を3回繰り返すことにより、反応容器内を窒素雰囲気にした。反応容器にアゾビスイソブチロニトリル/トルエン(0.164mmol/16ml)溶液とクロロメチルスチレン(12.3mmol,1.74mL)を加え、60℃まで加熱し、24時間攪拌した。反応混合物をポリクロロエチルスチレンホモポリマーに対しての良溶媒であるジエチルエーテルを用いて3回洗浄操作を行った後、ベンゼン凍結乾燥を行い、白い粉体を得た。収量は、2.07mgであり、収率は96.5%であった。得られたPCMS−b−PEG−b−PCMSトリブロック共重合体のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)測定とH NMRスペクトルの結果を図1に示す。
【0029】
<製造例2> 2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル(TEMPO)を有するトリブロックポリマー(PMNT−b−PEG−b−PMNT)の合成
反応容器に、PCMS−b−PEG−b−PCMS(Mn:13052;1.8g,0.138mmol)を加えた。次に、4−アミノ−TEMPO(2.36g,13.8mmol)を20mLのジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、反応容器に加え、室温で24時間攪拌を行った。反応終了後、反応溶液を透析膜(Spectra/Por molecular weight cut−off size 3,500 Spectrum Medical Industries Inc.,Houston TX)中に加え、2Lのメタノールに対して透析を行った。メタノールは2時間ごとに8回交換し、エバポレーションを行い、ベンゼン凍結乾燥を行った。収率は、65.6%であった。
【0030】
H NMR測定の結果より、クロロメチル基が100%反応し、TEMPOが導入されていることが認められた(図2参照)。
【0031】
<製造例3> ポリイオンコンプレックスミセルの設計
PMNT−b−PEG−b−PMNTトリブロックポリマーの粉末を0.1M HCl水溶液に溶解し、PMNT鎖のアミノ基を完全にプロトン化させ、水系の凍結乾燥を行い回収した。次に、PMNT−b−PEG−b−PMNTトリブロックポリマーとポリアクリル酸(PAA;Mn:5000)をそれぞれリン酸緩衝溶液(0.1M,pH6.28)に溶解し、濃度を5mg/mlにしたポリカチオンPMNT−b−PEG−b−PMNT水溶液とアニオンPAA水溶液を調製した。また、Dアミノ酸酸化酵素をリン酸緩衝溶液(0.1M,pH6.28)に溶解し、濃度を0.2mg/mlに調製した。PAA水溶液にDアミノ酸酸化酵素を撹拌しながら加えた。さらに、PMNT−b−PEG−b−PMNTトリブロックポリマー水溶液をPAA、Dアミノ酸化酵素の混合溶液に撹拌しながら滴下し、PICミセルを調製した。ここで、PMNT−b−PEG−b−PMNTとPAAのモル比r=1:1となるように、PICミセルを調製し、DAOの量を0ml、0.2ml、0.4ml、0.6mlと条件を変えて調整した。(モル比r=[PAAの活性化されたカルボキシル基のモル数]/[PMNT−b−PEG−b−PMNTの活性化されたアミノ基のモル数])。得られたPICミセルのゼータ電位を測定した。結果を下記表1に示す。得られたPICミセルの平均粒径を動的光散乱(DLS)測定により行ったところ、平均粒径が59〜67nmの単峰性の粒子であることが確認された。
【0032】
【表1】
【0033】
<製造例4> インジェクタブルゲルの設計
製造例3で調製した各PICミセル溶液5mg/mlを遠心エバポレーションにより濃縮し、イオン強度を150mMに調整し、温度37℃の水浴中でゲル化実験を試験管反転法により検討した。実験の結果(ゲル化の様子)を示す図面に代わる写真を図3に示す。この図から、イオン強度150mMかつ温度37℃の環境下で不可逆的ゲルが形成したことが確認される。
【0034】
<試験例1> Dアミノ酸酸化酵素による過酸化水素産出能評価
Dアミノ酸酸化酵素を0.4ml(0.2mg/ml)加えたPICミセル(表1、図3の(3))をペルオキシダーゼ(peroxidase)/o−ジアニシディン(o−dianisidine)評価法により過酸化水素産出能を評価した。Dアミノ酸酸化酵素濃度を5μg/mlになるまで遠心エバポレーターにより濃縮し、遊離のDAOとDアミノ酸酸化酵素が0mlのコントロールPICミセルと比較し評価を行った。結果を図4に示す。
【0035】
遊離のDアミノ酸酸化酵素とDアミノ酸酸化酵素内包PICミセルは異なる挙動の過酸化水素産出能を示す。このことから、Dアミノ酸酸化酵素がPICミセルに静電相互作用により組み込まれていると考えることができる。また、Dアミノ酸酸化酵素内包またはローディングしたPICミセルは過酸化水素徐放能を示したため、薬物の初期バーストを防ぐことができる材料であることが理解できる。
【0036】
<製造例5〜7> フルオレセインイソチオシアネート(FITC)ラベル化タンパク質内包PICミセルの調製
PMNT-b-PEG-b-PMNTトリブロックポリマーの粉末を0.1M HCl水溶液に溶解し、PMNT鎖のアミノ基を完全にプロトン化させ、水系の凍結乾燥を行い回収した。
次に、プロトン化したPMNT-b-PEG-b-PMNTトリブロックポリマーとポリアクリル酸(PAA; Mn:5000)をそれぞれリン酸緩衝液(50mM, pH6.2)に溶解し、濃度を5mg/mlにしたポリカチオンPMNT-b-PEG-b-PMNT水溶液とポリアニオンPAA水溶液を調製した。
上記で調製したPAA水溶液1.621mLに、それぞれ
i)リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解させた1492μg/mLのフルオレセインイソチオシアネートラベル化インスリン(FITC-Insulin)水溶液70μL、
ii)リン酸緩衝液(50mM,pH6.2)に溶解させた2030μg/mLのFITCラベル化ウシ血清アルブミン(FITC-BSA)水溶液51μL,および
iii)リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解させた1650μg/mLのFITCラベル化グルコースオキシダーゼ(FITC−GOD)水溶液63μL
を撹拌しながら加えた。その後、氷冷下で、PAAと各FITC-タンパク質の混合溶液にPMNT-b-PEG-b-PMNTトリブロックポリマー水溶液10mLを撹拌しながら滴下し、それぞれ、リン酸緩衝液(50mM, pH6.2)309μL、328μLおよび316μLを添加し、FITC-Insulin、FITC-BSAおよびFITC−GOD内包PICミセルを調製した。
ここで、PMNT-b-PEG-b-PMNTとPAAのモル比r=1/1となるように、PICミセルを調製した(モル比r=[PAAの活性化されたカルボキシル基のモル数]/[PMNT-b-PEG-b-PMNTの活性化されたアミノ基のモル数])。
それぞれ、得られたFITC-タンパク質内包PICミセルの粒子径を動的光散乱(DLS)法により測定した結果を図5および表2に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
得られた各FITC-Insulin内包PICミセル溶液、FITC−BSA内包PICミセル溶液およびFITC−GOD内包PICミセル溶液の蛍光強度を測定した結果を図6、7および8に示す。また、各FITC-タンパク質内包PICミセル溶液中のFITC-タンパク質濃度と同濃度の各FITC-タンパク質水溶液の蛍光強度も、それぞれ図6、7および8に示す。各FITC-タンパク質内包PICミセル溶液では、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)による消光(クエンチ)が確認され、それぞれインスリン、ウシ血清アルブミンおよびグルコースオキシダーゼがPICミセルに内包されていることが示唆された。
【0039】
<参考例1> タンパク質を内包していないPICミセルの調製
PMNT−b−PEG−b−PMNTトリブロックポリマーの粉末を0.1M HCl水溶液に溶解し、PMNT鎖のアミノ基を完全にプロトン化させ、水系の凍結乾燥を行い回収した。
次に、プロトン化したPMNT−b−PEG−b−PMNTトリブロックポリマーとポリアクリル酸(PAA; Mn:5000)をそれぞれリン酸緩衝液(50mM, pH6.2)に溶解し、濃度を5mg/mlにしたポリカチオンPMNT−b−PEG−b−PMNT水溶液とポリアニオンPAA水溶液を調製した。
上記で調製したPAA水溶液1.621mLに、氷冷下で、PMNT−b−PEG−b−PMNTトリブロックポリマー水溶液10mLを撹拌しながら滴下し、PICミセルを調製した。ここで、PMNT−b−PEG−b−PMNTとPAAのモル比r=1/1となるようにPICミセルを調製した(モル比rは、上記定義のとおりである)。得られたPICミセルの粒子径を動的光散乱(DLS)法により測定した結果を図5及び表2に示す。
【0040】
<製造例8〜10> FITC-タンパク質内包レドックスインジェクタブルゲル(RIG)の調製
製造例5〜7で、それぞれ得られたFITC−タンパク質内包PICミセル溶液11mLを遠心エバポレーションにより1mLまで濃縮した。濃縮した溶液300μLを1.5mLマイクロチューブに入れ、37℃の恒温槽で加温することで、それぞれFITC−Insulin内包RIG、FITC−BSA内包RIGおよびFITC−GOD内包RIGを調製した。
【0041】
<試験例2> レドックスインジェクタブルゲル(RIG)からのタンパク質のリリース評価
製造例8〜10で得られたタンパク質内包RIGが入ったマイクロチューブにPBSを150μL添加し、振とう機を使用して37℃、100rpmの条件下でインキュベートした。サンプリングポイントで、100μLの上澄みを分取し、新しいPBSを100μL添加した。分取した上澄みの蛍光強度をプレートリーダーで測定し、その蛍光強度よりタンパク質のリリース量を算出した。その結果を図9に示す。
【0042】
<製造例11> インドシアニングリーン(ICG)ラベル化ウシ血清アルブミン(BSA)内包HiLyte Fluor 647ラベル化PICミセルの調製
PMNT−b−PEG−b−PMNTトリブロックポリマーの粉末を0.1M HCl水溶液に溶解し、PMNT鎖のアミノ基を完全にプロトン化させ、水系の凍結乾燥を行い回収した。
次に、プロトン化したPMNT−b−PEG−b−PMNTトリブロックポリマーとポリアクリル酸(PAA;Mn:5000)をそれぞれリン酸緩衝液(50mM,pH6.2)に溶解し、濃度を5mg/mlにしたポリカチオンPMNT−b−PEG−b−PMNT水溶液とポリアニオンPAA水溶液を調製した。
上記で調製したPAA水溶液2.76mLに、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解させた1000μg/mLのインドシアニングリーン(ICG)ラベル化ウシ血清アルブミン(ICG−BSA)水溶液205μLを撹拌しながら加えた。その後、氷冷下で、PAAとICG−BSAの混合溶液にPMNT−b−PEG−b−PMNTトリブロックポリマー水溶液10mLとリン酸緩衝液(50mM,pH6.2)に溶解されている1.67mg/mL HiLyte Fluor 647ラベル化PMNT−b−PEG−b−PMNTトリブロックポリマー水溶液0.3mLの混合溶液を撹拌しながら滴下し、リン酸緩衝液(50mM,pH6.2)を335μL添加し、ICG−BSA内包HiLyte Fluor 647−PICミセルを調製した。ここで、PMNT−b−PEG−b−PMNTとPAAのモル比r=1/1となるようにPICミセルを調製した(モル比rは、上記定義のとおりである)。
【0043】
<試験例3> レドックスインジェクタブルゲル(RIG)からのタンパク質のin vivoリリース評価及びRIGのin vivo滞留性評価
製造例11で得られたICG−BSA内包HiLyte Fluor 647−PICミセル溶液22mLを遠心エバポレーションにより2mLまで濃縮した。濃縮した溶液200μLをBALB/c−nuマウスに皮下注射した。RIGからのBSAのリリース挙動およびRIGの滞留性を、各々にラベル化した蛍光色素をIVIS Spectrumを用いてイメージングすることで評価した。ICG−BSAをイメージングする場合は、励起波長745nm、蛍光波長800nmの蛍光フィルターを用い、HiLyte Fluor 647−RIGをイメージングする場合は励起波長640nm、蛍光波長680nmの蛍光フィルターを用いた。結果を図10図11に示す。RIGに内包されたBSAは14日間に渡って投与部位に滞留し、徐放されることが確認された。またRIGは1ヵ月以上投与部位に滞留することが確認された。
【0044】
<試験例4> タンパク質のin vivo滞留性評価
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解させた100μg/mLのICG−BSA水溶液200μLをBALB/c−nuマウスに皮下注射した。BSAの滞留性をラベル化した蛍光色素(ICG)をIVIS Spectrumを用いてイメージングすることで評価した。励起波長745nm、蛍光波長800nmの蛍光フィルターを用いてイメージングを実施した。結果を図1312に示す。BSAを単独で投与した場合は1日後には投与部位から消失してしまっていることが確認された。
【0045】
<製造例12> Dアミノ酸酸化酵素(DAO)内包PICミセルの調製
PMNT−b−PEG−b−PMNTトリブロックポリマーの粉末を0.1M HCl水溶液に溶解し、PMNT鎖のアミノ基を完全にプロトン化させ、水系の凍結乾燥を行い回収した。
次に、プロトン化したPMNT−b−PEG−b−PMNTトリブロックポリマーとポリアクリル酸(PAA;Mn:5000)をそれぞれリン酸緩衝液(100mM,、pH6.2)に溶解し、濃度を5mg/mlにしたポリカチオンPMNT−b−PEG−b−PMNT水溶液とポリアニオンPAA水溶液を調製した。
上記で調製したPAA水溶液2.76mLに、リン酸緩衝液(100mM,pH6.2)に溶解させた1mg/mLのDアミノ酸酸化酵素水溶液(DAO)を347μL撹拌しながら加えた。その後、氷冷下で、PAAとDアミノ酸酸化酵素水溶液(DAO)の混合溶液にPMNT−b−PEG−b−PMNTトリブロックポリマー水溶液20mLを撹拌しながら滴下し、Dアミノ酸酸化酵素(DAO)内包PICミセルを調製した。ここで、PMNT−b−PEG−b−PMNTとPAAのモル比r=1/1となるように、PICミセルを調製した(モル比r=[PAAの活性化されたカルボキシル基のモル数]/[PMNT−b−PEG−b−PMNTの活性化されたアミノ基のモル数])。
【0046】
<製造例13> Dアミノ酸酸化酵素(DAO)内包レドックスインジェクタブルゲル(RIG)の調製
製造例12で得られた内包PICミセル溶液10mLを遠心エバポレーションにより1.5mLまで濃縮した。濃縮した溶液300μlをそれぞれ濃度が異なるNaCl水溶液を加えて502.5μlに希釈し、NaCl濃度が0mM,150mM,300mM,500mM,1000mMであり、PIC濃度が20mg/mlのDAO(Dアミノ酸酸化酵素)内包PICミセル溶液を作製した。
【0047】
<試験例5> イオン強度変化によるゲル化挙動
製造例13で作られたDアミノ酸酸化酵素水溶液(DAO)内包RIGを300μlセルに入れ、UV−VIS装置を用いて600nmにおける透過率を測定し、徐々に昇温させることによりゲル化の確認をした。結果を図13に示す。イオン強度が増大するにつれてゲル化が促進されることが確認された。また、DAO不含のPICミセル溶液について、製造例12に記載のように調製したPICミセルおよび該調製例に準ずるが、Dアミノ酸酸化酵素(DAO)不含のPICミセル(製造例12のDアミノ酸酸化酵素を加えない系に相当する)を調製し、製造例13の方法に従い該ミセル溶液のイオン強度変化によるゲル化挙動を評価した。温度と塩濃度を変化させて透過率を測定した結果を図14に示す。
【0048】
<製造例14> Br−PEG(ポリエチレングリコール)−Brの合成
Br−PEG−Brは、次の合成スキーム2に従い合成した:
【化4】
両末端にヒドロキシル基を有しているポリエチレングリコール(OH−PEG−OH)(Mn:10000:50g)を110℃で12時間減圧乾燥し脱水した。次にTHF200ml加え、そこへブチルリチウム10ml(16mmol)とジブロモキシレン25gを加えて50℃、24時間反応させることにより両末端がブロモ化したBr−PEG−Brを得た。得られたポリマーは2-プロパノールに沈殿し、真空乾燥することで精製し。得られたBr−PEG−Brのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)測定とH―NMRスペクトルの結果を図15に示す。
【0049】
<製造例15> CTA(連鎖移動剤(Chain Transfer Agent))―PEG−CTA(Chain Transfer Agent)の合成(ジチオフェニルエステル両末端PEGの合成)
CTA−PEG−CTAは、次の合成スキーム3に従い合成した:
【化5】
THF50mlに二硫化炭素を2.4ml加える。次いで、ベンジルマグネシウムブロミドを6.7ml(20mmol)を氷冷化で徐々に加えて反応させ、マグネシウムベンゾチオブロマイドを得た。製造例14で合成したBr−PEG−Br 50gをTHF200mLに溶かし作製したマグネシウムベンゾチオブロマイドを全て加え、60℃、24時間反応させることで、目的物質であるCTA(Chain Transfer Agent)―PEG−CTA(Chain Transfer Agent)を得た。得られたCTA−PEG−CTAは2-プロパノールで沈殿し,真空乾燥で精製した。得られたポリマーのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)測定とH―NMRスペクトルの結果を図16に示す。
【0050】
<製造例16> ポリクロロメチルスチレン−b−ポリエチレングリコール−b−ポリクロロメチルスチレン(PCMS−b−PEG−b−PCMS)トリブロックコポリマーの合成
PCMS−b−PEG−b−PCMSは、次の合成スキーム4に従い合成した:
【化6】
製造例15で合成したCTA−PEG−CTA 10gとアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)60mgを窒素雰囲気下でトルエンを200mL加えて、クロロメチルスチレン(CMS)を15mL加え、60℃、24時間攪拌することで、目的物質であるPCMS−b−PEG−b−PCMSを得た。得られたポリマーは2―プロパノールで沈殿し、減圧乾燥にて精製した。得られたPCMS−b−PEG−b−PCMSのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)測定とH―NMRスペクトルの結果を図17に示す。
【0051】
<製造例17> 2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル(TEMPO)を有するトリブロックコポリマー(PMNT−b−PEG−b−PMNT)の合成
PMNT−b−PEG−b−PMNTは、次の合成スキーム5に従い合成した:
【化7】

製造例16で合成したPCMS−b−PEG−b−PCMS 5gと4-アミノ TEMPO 7.7gをDMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解し、50℃で撹拌し、反応させることで目的物質であるPMNT−b−PEG−PMNTb−PMNTを得た。得られたPMNT−b−PEG―b−PMNTは2―プロパノールに沈殿し、減圧乾燥にて精製した。ポリマーのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)測定とH―NMRスペクトルの結果を図18に示す。
【0052】
<製造例18> ポリイオンコンプレックスミセルの作製
製造例17で作製したPMNT−b−PEG−b−PMNTトリブロックコポリマー 100mgをメタノールに溶解し、そこへ水に溶解したPAAc(ポリアクリル酸)17.2mgを加えた。次いで、この溶液を水に対して透析することによって、ポリイオンコンプレックスミセルを作製した。得られたポリイオンコンプレックスミセルの平均粒径を動的光散乱(DLS)測定により行ったところ、平均粒径が31nmの単峰性の粒子であることが確認された。(図19参照)
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