【実施例】
【0041】
<試験例1>三元複合粒子の作製
複合粒子の作製には、以下の成分を用いた。
ヒアルロナン(HA、発酵法由来、MRCポリサッカライド社):480kDa、ヒアルロナン濃度34.3μg/mL(混合前の調製時濃度は103μg/mL、保存用の溶液の作製濃度は1mg/mL)
キトサン(焼津水産工業):34.3kDa、キトサン濃度16.7μg/mL(調製時濃度は50μg/mL、保存用の溶液の作製濃度は1mg/mL)
コンドロイチン硫酸(CS,硫酸化度:1.21%、生化学工業):22kDa、2.0μg/mL(調製時濃度は6.0μg/mL、保存用の溶液の作製濃度は1mg/mL)
クエン酸緩衝液(pH6.5):クエン酸濃度1mM
【0042】
上に示す割合で、ヒアルロナンとキトサンとの二元複合粒子と、ヒアルロナン、キトサン、コンドロイチン硫酸の三元複合粒子を作製した。
二元複合粒子については、クエン酸緩衝液を溶媒としてヒアルロン酸ナトリウム溶液とキトサン溶液を調製し、キトサン溶液を撹拌しながら、キトサン溶液にヒアルロン酸ナトリウム溶液を滴下することにより複合粒子を作製した。
また、三元複合粒子については、クエン酸緩衝液を溶媒としてヒアルロン酸ナトリウム溶液、キトサン溶液、コンドロイチン硫酸溶液を調製し、コンドロイチン硫酸溶液をヒアルロン酸ナトリウム溶液に加え、混合した後に、混合液にキトサン溶液を滴下して撹拌し、作製した。
すなわち、1mg/mL HAクエン酸溶液、1mg/mLキトサンクエン酸溶液、1mg/mL CSクエン酸溶液にクエン酸緩衝液(pH6.5)を所定量加え希釈し、室温で15分間静置した。希釈したHA溶液とCS溶液を十分混合した後、希釈したキトサン溶液を加えて室温で15分間静置することで、HA/キトサン/CS三元複合体ナノ粒子を作製した。混合比は、キトサンのアミノ基(N)、HAのカルボキシル基(C)、コンドロイチン硫酸のカルボキシル基と硫酸基の和(−)の電荷比N:C:(−)が1:0.5:0.5となるように調整されたものである。
二元複合粒子、三元複合粒子を、製造に用いたクエン酸緩衝液中、低温条件(4℃)で保存した。
表1に、複合粒子の粒子径、複合粒子の表面電荷(ゼータ電位)及び多分散指数を示す。
複合粒子の平均粒子径及び多分散指数は、Zetasizer Nano−Z ZEN3600、 Malvern社(動的光散乱法)を用いて測定した。
複合粒子の表面電荷は、Zetasizer Nano−ZS ZEN3600、 Malvern社(レーザードップラー法)を用いて測定した。
【表1】
【0043】
ゼータ電位においてヒアルロナン単体は約−63mV、キトサン単体は約3mVである。表1に示すように、本実施例で作製した粒子の表面電荷は、比較例1の二元複合粒子では−31.4mV、実施例1の三元複合粒子では−34.5mVであることから、単体との違いが見られた。すなわち、本試験例の処方によって二元複合粒子及び三元複合粒子が形成されていることが確認できた。
二元複合粒子と三元複合粒子を比較すると、平均粒子径はいずれも100nm程度であったが、多分散指数が二元複合粒子は0.255であるのに対して、三元複合粒子は0.166であった。つまり三元複合粒子の方が二元複合粒子に比して均一な粒子径を持つ集合として得られることがわかった。
【0044】
<試験例2>キトサンの分子量の検討
試験例1においては分子量34.3kDaのキトサンを用いてヒアルロナンとコンドロイチン硫酸との三元複合粒子が形成できることを示した。次に、キトサンの分子量を変更した場合にも三元複合粒子が形成されるのか否かについて検討を行った。
本試験例においては分子量110kDaのキトサン(脱アセチル化度:64.7%、焼津工業)と、試験例1で使用した分子量480kDaのヒアルロナン及び分子量22kDaのコンドロイチン硫酸を用いて三元複合粒子の作製を行った(実施例2)。なお、本実施例における三元複合粒子の作製は、試験例1と同じ方法により行った。また、各成分の作製濃度は以下に記載する通りである。
ヒアルロナン:17.2μg/mL(混合前の調製時濃度は103μg/mL、保存用の溶液の作製濃度は1mg/mL)
キトサン:24.7μg/mL(調製時濃度は50μg/mL、保存用の溶液の作製濃度は1mg/mL)
コンドロイチン硫酸:2.1μg/mL(調製時濃度は6.0μg/mL、保存用の溶液の作製濃度は1mg/1mL)
クエン酸緩衝液(pH6.5):クエン酸濃度1mM
各成分の混合比は、キトサンのアミノ基(N)、HAのカルボキシル基(C)、コンドロイチン硫酸のカルボキシル基と硫酸基の和(−)の電荷比N:C:(−)が1:0.5:0.5となるように調整されたものである。
【0045】
作製した複合粒子の平均粒子径、多分散指数及び表面電荷は、試験例1と同様の機器を用いて測定した。
表2に本試験例で作製した実施例2に係る三元複合粒子と、試験例1で作製した実施例1に係る三元複合粒子の平均粒子径、個数分布における100nm以下の粒子の割合、多分散指数(Pdi)、そして表面電位(ゼータ電位)を示す。
【0046】
【表2】
【0047】
表2より、ヒアルロナン/キトサン/コンドロイチン硫酸三元複合粒子の作製にあっては、低分子量(34.3kDa)のキトサンよりも、高分子量(110kDa)のキトサンを用いた方が、より小さい粒子径を持つ複合粒子を得られることが分かった。
【0048】
<試験例3>ヒアルロナンの分子量の検討
試験例1及び2においては分子量480kDaのヒアルロナンを用いた場合に、ヒアルロナン/キトサン/コンドロイチン硫酸三元複合粒子を作製することができることを示した。次に、分子量480kDa以外のヒアルロナンを用いた場合においても同様に三元複合粒子を作製することができるか否か検討を行った。
本試験例では、分子量910及び1300kDaのヒアルロナンを用いて三元複合粒子の作製を行った。本試験例における複合粒子の作製方法、各成分の作製濃度及び測定方法等は試験例2と同様である。なお、本試験例で使用した910kDaと1300kDaのヒアルロナンも発酵法由来、MRCポリサッカライド社製のものである。
表3に各分子量のヒアルロナンを用いた場合における三元複合粒子の平均粒子径、個数分布における100nm以下の粒子の割合、多分散指数(Pdi)、そして表面電位(ゼータ電位)を示す。
【0049】
【表3】
【0050】
表3に示す通り、分子量480、910及び1300kDaのヒアルロナンのいずれを用いた場合であっても、40nm前後の小さな複合粒子を形成できることが分かった。また、低分子量のヒアルロナンを用いた場合には、複合粒子の粒子径は小さくなるという傾向があることがわかった。
【0051】
<試験例4>コンドロイチン硫酸の分子量の検討
試験例1〜3においては分子量22kDaのコンドロイチン硫酸を用いた場合に、ヒアルロナン/キトサン/コンドロイチン硫酸三元複合粒子を作製することができることを示した。次に、分子量22kDa以外のコンドロイチン硫酸を用いた場合においても同様に三元複合粒子を作製することができるか否か検討を行った。
本試験例では、分子量10、14、15及び40kDaのコンドロイチン硫酸と、分子量1300kDaのヒアルロナンと、分子量110kDaのキトサンとの三元複合粒子の作製を行った。本試験例における複合粒子の作製方法、各成分の作製濃度及び測定方法等は試験例2と同様である。なお、本試験例で使用したコンドロイチン硫酸の硫酸化度は、分子量10kDaのものが1.02%、分子量14kDaのものが0.96%、分子量15kDaのものが1.06%、分子量40kDaのものが1.08%であり、いずれも生化学工業より購入したものである。
表4に各分子量のコンドロイチン硫酸を用いた場合における三元複合粒子の平均粒子径、個数分布における100nm以下の粒子の割合、多分散指数(Pdi)、そして表面電位(ゼータ電位)を示す。
【0052】
【表4】
【0053】
表4に示す通り、いずれの分子量のコンドロイチン硫酸を用いた場合であっても、比較例2の二元複合粒子よりも小さな粒子径の三元複合粒子が形成されることが分かった。この結果から、コンドロイチン硫酸はいずれの分子量であっても、ヒアルロナン/キトサン二元複合粒子よりも小さな粒子径を持つ、ヒアルロナン/キトサン/コンドロイチン硫酸三元複合粒子を形成することができることが分かった。
【0054】
<試験例5>コンドロイチン硫酸以外のアニオン性ポリマーの検討
試験例1〜4においては、ヒアルロナン/キトサン/コンドロイチン硫酸からなる三元複合粒子が形成されることについて示した。
本試験例では、コンドロイチン硫酸以外のアニオン性ポリマーであっても、三元複合粒子を形成することができるのか否かについて検討を行った。
本試験例では、コンドロイチン硫酸以外のアニオン性ポリマーとして、ヘパリン(分子量5〜20kDa、nakalai tesque)、ペクチン(分子量50〜350kDa、和光純薬工業)、アルギン酸(64kDa及び110kDa、和光純薬工業)、κ−カラギナン(1400kDa、MRCポリサッカライド)及びι−カラギナン(1600kDa、MRCポリサッカライド)を用いて検討を行った。
本試験例における複合粒子の作製方法及び測定方法等は試験例2と同様である。作製濃度は、ヒアルロナン(1300kDa)及びキトサン(110kDa)については試験例2と同様であり、コンドロイチン硫酸以外のアニオン性ポリマーについては以下に示す通りである。
ヘパリン:6.8μg/mL
ペクチン:8.0μg/mL
アルギン酸(64kDa及び110kDa):1.6μg/mL
κ−カラギナン:3.6μg/mL
ι−カラギナン:2.1μg/mL
上の混合比は、これまでの試験例と同様にキトサンのアミノ基(N)、HAのカルボキシル基(c)、コンドロイチン硫酸以外のアニオン性ポリマーのカルボキシル基と硫酸基の和(−)の電荷比N:C:(−)が1:0.5:0.5となるように調整されたものである。
表5に本試験例において作製した複合粒子の平均粒子径、個数分布における100nm以下の粒子の割合、多分散指数(Pdi)、そして表面電位(ゼータ電位)を示す。
【0055】
【表5】
【0056】
表5に示す通り、コンドロイチン硫酸以外のアニオン性ポリマーとしていずれの分子種を用いた場合であっても、100nm以下の三元複合粒子を形成できることがわかる。
【0057】
<試験例6>混合比の検討
これまでの試験例においてはキトサンのアミノ基(N)、ヒアルロナンのカルボキシル基(C)、ヒアルロナン以外のアニオン性ポリマーのカルボキシル基と硫酸基の和(−)の電荷比N:C:(−)が1:0.5:0.5となるように、各成分の濃度を調整し、三元複合粒子が形成されることを確認した。
本試験例では、N:C:(−)=1:0.5:0.5以外の混合比であっても三元複合粒子の形成ができるか否かについて検討を行った。
本試験例においてはN:C比は1:0.5で固定し、ヒアルロナン以外のアニオン性ポリマーの比率(−)を変更して試験を行った。本試験例における複合粒子の作製方法及び測定方法等は試験例2と同様である。作製濃度は、ヒアルロナン及びキトサンについては試験例2と同様であり、コンドロイチン硫酸以外のアニオン性ポリマーについては、試験例2〜5における濃度を基に、表6〜17に示す各実施例におけるヒアルロナン以外のアニオン性ポリマーの比率(−)に対応するように増減した。
表6〜17に、三元複合粒子の成分、混合比(N:C:(−)比)、作製した複合粒子の平均粒子径、個数分布における100nm以下の粒子の割合、多分散指数(Pdi)、そして表面電位(ゼータ電位)を示す。また、
図1〜12に、作製した複合粒子の粒子径の個数分布を表すグラフを示す。
【0058】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【0059】
表6〜11及び
図1〜6に示すように、種々の分子量のコンドロイチン硫酸を用いた場合には、N:C:(−)=1:0.5:0.1、1:0.5:0.5、1:0.5:1のすべての場合において、すべての分子量のコンドロイチン硫酸において50nm前後の三元複合粒子を得ることができることがわかった。また、N:C:(−)=1:0.5:0.1、1:0.5:0.5のときには多分散指数も低く、溶液中に存在する複合粒子の粒子径の均一性も高いことが分かった。
【0060】
表12〜15及び
図7〜10より、ヒアルロナン以外のアニオン性ポリマーとしてヘパリン、ペクチン、κ−カラギナン、ι−カラギナンを用いたときには、すべての混合比において100nm程度の粒子が形成されることがわかる。
また、N:C:(−)=1:0.5:0.1、1:0.5:0.5のときには多分散指数も低く、溶液中に存在する複合粒子の粒子径の均一性も高いことが分かった。
また、表14及び
図9に示すようにκ−カラギナンを用いた場合には、混合比N:C:(−)=1:0.5:0.5、1:0.5:1のいずれにおいても、形成される三元複合粒子はι−カラギナンを用いた場合に比べ粒子径は大きく、且つ分散指数は高くなることがわかった。つまり、三元複合粒子の作製においてアニオン性ポリマーとしては、κ−カラギナンよりも硫酸化度が高いι−カラギナンの方がより好ましいということができる。
【0061】
表16及び
図9より、ヒアルロナン以外のアニオン性ポリマーとして分子量64kDaのアルギン酸を用いる場合には、その混合比率が低い方が、多分散性の低い複合粒子を得ることができることがわかる。より多分散性の低い複合粒子を得ることができる混合比率はN:C:(−)=1:0.5:0.05及び1:0.5:0.1であった。
一方、表17及び
図12より、分子量110kDaのアルギン酸を用いる場合にも同様に、その混合比率が低い方が多分散指数の低い複合粒子が得られることが分かった。より多分散性の低い複合粒子を得ることができる混合比率はN:C:(−)=1:0.5:0.01及び1:0.5:0.05であった。
【0062】
<試験例7>作製濃度の検討
本試験例においては、これまでの試験例における複合粒子の作製濃度を濃くした場合であっても、凝集することなく三元複合粒子を得ることができるのか否かについて検討を行った。
これまでの試験例で作製した実施例2〜5、7〜11及び13の三元複合粒子の作製時の各成分の濃度を5倍及び15倍にした時の平均粒子径等を測定した。本試験例における複合粒子の作製方法及び測定方法は、作製時の各成分の濃度以外は、これまでの比較例と同様である。
また、比較例として二元複合粒子の作製濃度を変更した場合に形成される複合粒子の平均粒子径等も測定した。
表18〜30に、本試験例で作製した複合粒子の平均粒子径、個数分布における100nm以下の粒子の割合、多分散指数(Pdi)、そして表面電位(ゼータ電位)を示す。なお、表中(×1)、(×5)及び(×15)とは、作製濃度が1倍(これまでの試験例と同じ)、5倍、15倍であることを示す。また、
図13〜25に本試験例で作製した複合粒子の粒子径の個数分布を表すグラフを示す。
【0063】
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
【表24】
【表25】
【表26】
【表27】
【表28】
【表29】
【表30】
【0064】
表18〜23及び
図13〜18に示すように、ヒアルロナンの分子量を種々のものに変更した場合では、ヒアルロナン/キトサン二元複合粒子においては作製濃度が高くなるに比例して粒子径が大きくなることがわかる。また。15倍の濃度で複合粒子を作製した場合には、その多分散指数は非常に大きくなってしまう。
一方、ヒアルロナン/キトサン/コンドロイチン硫酸(22kDa)三元複合粒子においては、いずれの分子量のヒアルロナンを用いた場合であっても、形成される三元複合粒子の平均粒子径は、作製濃度5倍までは100nm以下となることがわかった。また、15倍の濃度で作製した場合であっても、かかる三元複合粒子の多分散指数は、二元複合粒子と比較して低くなることがわかる。
これらの結果より、ヒアルロナン/キトサンを含む複合粒子を作製するにあたり、コンドロイチン硫酸(22kDa)を加えると、作製濃度を濃くしても小さい粒子径であり、且つ多分散性の低い(安定性の高い)複合粒子を得ることができることがわかる。
【0065】
表24〜30及び
図19〜25から分かるように、コンドロイチン硫酸(22kDa)以外のアニオン性ポリマーであっても、コンドロイチン硫酸(22kDa)を用いた場合と同様に、二元複合粒子と比較して、高濃度で作製したときの粒子径及び多分散指数が低くなることがわかる。
以上の結果より、ヒアルロナン及びキトサンを含む複合粒子の作製において、ヒアルロナン以外のアニオン性ポリマーを加えると、作製濃度が高濃度であっても小さく安定性の高い複合粒子を得ることができることがわかった。
【0066】
<試験例8>保存安定性の検討(1)
これまでの試験例において、種々の分子量、分子種を用いて、ヒアルロナン、キトサン及びヒアルロナン以外のアニオン性ポリマーを含む三元複合粒子の形成ができることを示した。本試験例においては、かかる三元複合粒子の保存安定性について検討した。
【0067】
まず、試験例1において作製した実施例1及び比較例1に係る複合粒子の保存安定性について検討を行った。保存温度を4℃としたときのこれら複合粒子の作製時、1日後、1週間後における平均粒子径等を試験例1と同様の測定方法により測定した。表31にその結果を示す。また、この時の粒子径分布を
図26及び27に示す。
【0068】
【表31】
【0069】
表31、
図26及び27から分かるように、二元複合粒子は、作製1日後に平均粒子径が大きくなり、作製1週間後には、2倍近くまでに平均粒子径が大きくなった。一方、三元複合粒子は、作製1日後には平均粒子径がほとんど変わらず、作製1週間後でも、20%程度の増大であった。
【0070】
次に、比較例1及び実施例1に係る二元複合粒子及び三元複合粒子を、調製時および保存時のキトサン濃度は変えずに、室温、又は37℃で保存した。
表32、33に、複合粒子の粒子径と、複合粒子の表面電荷を示す。
また、
図28〜31に、複合粒子の粒子径の変化を示す。
【0071】
【表32】
【0072】
【表33】
【0073】
表32、33及び
図28〜31から分かるように、二元複合粒子及び三元複合粒子のいずれにおいても、作製直後と作製1週間後で平均粒径はほとんど変化しなかった。
これらの結果より、三元複合粒子は、二元複合粒子に比べて、低温保存時の粒子の安定性に大きく優れていることが分かった。
【0074】
次に、試験例1で用いた二元複合粒子及び三元複合粒子を、調製時および保存時のキトサン濃度を251μg/mL、ヒアルロナン濃度を516μg/mL、コンドロイチン硫酸濃度を29.3μg/mLとして、4℃、室温、又は37℃で保存した。すなわち、試験例1における作製濃度の15倍の濃度で二元及び三元複合粒子を作製した。
表34〜36に、複合粒子の粒子径と、複合粒子の表面電荷を示す。
また、
図32〜37に、複合粒子の粒子径の変化を示す。
【0075】
【表34】
【0076】
【表35】
【0077】
【表36】
【0078】
表34〜36、
図32〜37から分かるように、二元複合粒子及び三元複合粒子のいずれにおいても、作製直後と作製1週間後で平均粒径はほとんど変化しなかった。
試験例1の結果と併せて、三元複合粒子は、二元複合粒子に比べて、低濃度、低温保存時の粒子の安定性に大きく優れていることが分かった。
【0079】
<試験例9>保存安定性の検討(2)
次に試験例3〜5で作製した実施例4、7、9に係る三元複合粒子の保存安定性について検討を行った。実施例4に係る三元複合粒子については4℃、室温(RT)及び37℃における、作製時、1日後、1週間後、1か月後の平均粒子径等を測定した(表40〜42及び
図41〜43参照)。なお、比較として、試験例4で作製した比較例2についても同様に平均粒子径等の継時的な変化を測定した(表37〜39及び
図38〜40参照)。
また実施例7及び9に係る三元複合粒子の保存安定性については、室温においてのみ検討を行った(表43、44及び
図44、45参照)。
【0080】
【表37】
【表38】
【表39】
【表40】
【表41】
【表42】
【表43】
【表44】
【0081】
表37〜39に示す通り、いずれの保存温度においても二元複合粒子は作製後、徐々に多分散性が上昇しているのがわかる。一方、表40〜42に示す通り、三元複合粒子は作製後一週間経過した後であっても多分散指数は0.1〜0.2程度を維持している。
また、表43及び44に示すように、分子量22kDaコンドロイチン硫酸に代えて分子量15kDaのコンドロイチン硫酸及びヘパリンを用いたときも、作製後1週間経過後であっても多分散指数は0.1〜0.2程度を維持できていることがわかる。
以上の結果より、ヒアルロナン及びキトサンを含む複合粒子の作製において、ヒアルロナン以外のアニオン性ポリマーを加えてできる三元複合粒子は、二元複合粒子と比較して保存安定性に優れていることがわかった。