特許第6292677号(P6292677)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6292677
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】電池モジュール及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/10 20060101AFI20180305BHJP
【FI】
   H01M2/10 Y
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-505321(P2015-505321)
(86)(22)【出願日】2014年2月5日
(86)【国際出願番号】JP2014052661
(87)【国際公開番号】WO2014141779
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2017年1月12日
(31)【優先権主張番号】特願2013-53388(P2013-53388)
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】310010081
【氏名又は名称】NECエナジーデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】白石 章一郎
【審査官】 ▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−119232(JP,A)
【文献】 特開2004−356027(JP,A)
【文献】 特開2001−256938(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/089813(WO,A1)
【文献】 特開2004−103368(JP,A)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セルと、該電池セルを内部に収容するモジュールケースと、を備える電池モジュールであって、
前記電池セルは、正極電極と負極電極とがセパレータを介して積層または捲回された電池要素と、電解質とが外装体に収容されて扁平状に形成され、
前記モジュールケースは、前記扁平状の電池セルの主面に対向する位置に、前記電池セルの前記主面側に膨出した変形部を有し、
前記変形部は、前記電池セルが膨張したときに前記モジュールケースの外側に向かって膨出可能に形成されており、
前記モジュールケースは、前記電池セルを収容するケース部と、該ケース部内に配されて前記電池セルが固定されるボード部と、前記ケース部に取り付けられて前記ボード部の表裏をそれぞれ覆って配置される一組のカバー部と、を有し、
前記電池セルは、前記ボード部の表裏にそれぞれ配置され、
前記変形部は、前記一組のカバー部にそれぞれ形成されている、電池モジュール。
【請求項2】
前記モジュールケースには、複数の前記電池セルが収容されている、請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記複数の前記電池セルは、前記モジュールケース内に、同一面上に並べて配置されている、請求項2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
電池セルと、該電池セルを内部に収容するモジュールケースと、を備え、前記電池セルが、正極電極と負極電極とがセパレータを介して積層または捲回された電池要素と、電解質とが外装体に収容されて扁平状に形成された電池モジュールの製造方法であって、
前記モジュールケースの、前記扁平状の電池セルの主面に対向する位置に、前記電池セルが膨張したときに前記モジュールケースの外側に向かって膨出可能な変形部を、前記電池セルの前記主面側に膨出させて形成する工程を有し、
前記モジュールケースは、前記電池セルを収容するケース部と、該ケース部内に配されて前記電池セルが固定されるボード部と、前記ケース部に取り付けられて前記ボード部の表裏をそれぞれ覆って配置される一組のカバー部と、を有し、前記変形部は、前記一組のカバー部にそれぞれ形成されており、
前記電池セルは、前記ボード部の表裏にそれぞれ配置される、電池モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池セルがモジュールケースに収容された電池モジュール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
正極電極と負極電極がセパレータを介して重ねられて構成された電池セルが知られている。この種の電池セルを備える電池モジュールとしては、電池セルを保護するためのモジュールケースに電池セルが収容された電池モジュールが知られている。
【0003】
ところで、電池モジュールは、電池セルに内部短絡が生じた場合に、電池セル内にガスが生じて、電池セルの内部圧力が上昇する。内部圧力が上昇したときに電池セルは、正極電極、負極電極がセパレータを介して積層された方向である、電池セルが厚み方向に対して膨張する。モジュールケース内に収容された電池セルは、上述のような電池セルの膨張が妨げられた場合、電池セルの内部電流が徐々に増え、内部電流の上昇に伴って電池セルが発熱し、電池セルが破壊されてしまう。
【0004】
このような電池セルの膨張を許容するための対策として、複数の電池セルが収容されたモジュールケース内に、電池セルの膨張を許容するための変形部材が配置された構成が、特許文献1に開示されている。
【0005】
特許文献1に記載の電池モジュールが備えるモジュールケースは、複数の電池セルと共に変形部材が収容されている。このモジュールケースは、所定の圧力以下で加圧されたときに弾性変形し、所定の圧力を超えたときにそれ以上は変形しなくなる変形部材によって、膨張する電池セルを押さえながら膨張を許容するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−173030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の構成は、モジュールケース内に変形部材を配置する構造が複雑であると共に、製造コストが増えるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記関連する技術の課題を解決することができる電池モジュール及びその製造方法を提供することを目的とする。本発明の目的の一例は、簡素な構成によって、電池セルに内部短絡が生じたときに電池セルの膨張を妨げることなく変形可能とし、安全性を向上することができる電池モジュール及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するため、本発明に係る電池モジュールは、電池セルと、電池セルを内部に収容するモジュールケースと、を備える。電池セルは、正極電極と負極電極とがセパレータを介して積層または捲回された電池要素と、電解質とが外装体に収容されて扁平状に形成されている。そして、モジュールケースは、扁平状の電池セルの主面に対向する位置に、電池セルの主面側に膨出した変形部を有し、変形部は、電池セルが膨張したときにモジュールケースの外側に向かって膨出可能に形成されている。モジュールケースは、電池セルを収容するケース部と、ケース部内に配されて電池セルが固定されるボード部と、ケース部に取り付けられてボード部の表裏をそれぞれ覆って配置される一組のカバー部と、を有している。電池セルは、ボード部の表裏にそれぞれ配置されている。変形部は、一組のカバー部にそれぞれ形成されている。
【0010】
また、本発明に係る電池モジュールの製造方法は、電池セルと、電池セルを内部に収容するモジュールケースと、を備え、電池セルが、正極電極と負極電極とがセパレータを介して積層または捲回された電池要素と、電解質とが外装体に収容されて扁平状に形成された電池モジュールの製造方法であって、モジュールケースの、扁平状の電池セルの主面に対向する位置に、電池セルが膨張したときにモジュールケースの外側に向かって膨出可能な変形部を、電池セルの主面側に膨出させて形成する工程を有する。モジュールケースは、電池セルを収容するケース部と、ケース部内に配されて電池セルが固定されるボード部と、ケース部に取り付けられてボード部の表裏をそれぞれ覆って配置される一組のカバー部と、を有し、変形部は、一組のカバー部にそれぞれ形成されている。電池セルは、ボード部の表裏にそれぞれ配置される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電池セルに内部短絡が生じたときにモジュールケースの変形部が電池セルの膨張を妨げることなく変形することによって、簡素な構成で、電池セルの内部電流が増えることを防ぎ、安全性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】第1の実施形態の電池モジュールを示す斜視図である。
図1B】第1の実施形態の電池モジュールを示す断面図である。
図1C】第1の実施形態の電池モジュールが変形した状態を示す断面図である。
図2A】第1の実施形態の電池モジュールにおける電池セルを説明するための模式図である。
図2B】第1の実施形態の電池モジュールにおける電池セルを説明するための模式図である。
図3A】第1の実施形態の電池モジュールにおける電池セルの外装体を説明するための模式図である。
図3B】第1の実施形態の電池モジュールにおける電池セルの外装体を説明するための模式図である。
図3C】第1の実施形態の電池モジュールにおける電池セルの外装体を説明するための模式図である。
図4】第1の実施形態におけるモジュールケースのケース部を示す平面図である。
図5】第1の実施形態におけるモジュールケースのカバー部を示す平面図である。
図6】モジュールケースのケース部の他の構成例を示す平面図である。
図7】モジュールケースのカバー部の他の構成例を示す平面図である。
図8A】第2の実施形態の電池モジュールを示す斜視図である。
図8B】第2の実施形態の電池モジュールを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1Aに、第1の実施形態の電池モジュールの斜視図を示す。図1Bに、第1の実施形態の電池モジュールの断面図を示す。図1Cに、第1の実施形態の電池モジュールが変形した状態の断面図を示す。図2A及び図2Bに、第1の実施形態の電池モジュールにおける電池セルの模式図を示す。図3A図3Cに、第1の実施形態の電池モジュールにおける電池セルの外装体の模式図を示す。
【0015】
図1A及び図1Bに示すように、第1の実施形態の電池モジュール1は、複数の電池セル5と、複数の電池セル5を内部に収容するモジュールケース6と、を備えている。本実施形態では、2つの電池セル5を収容するモジュールケース6を示すが、電池セル5の代わり組電池が収容されてもよく、説明の便宜上、1つの電池セル又は組電池のみがモジュールケースに収容される構成については説明を省略する。
【0016】
電池セル5は、正極電極としての複数の正極集電体7と、負極電極としての複数の負極集電体8と、正極集電体7と負極集電体8との間に配されるセパレータ9と、を有し、正極集電体7と負極集電体8とがセパレータ9とを介して積層された電池要素としての積層集電体10を有している。電池セル5は、積層集電体10と、電解質としての電解液(不図示)と、が外装体11に収容されて扁平状に形成されている。なお、本発明では、正極集電体7と負極集電体8とがセパレータ9を介して重ねられた部分であって、後述する正極集電タブ12及び負極集電タブ13を除いた部分を、便宜上、電池要素と称する。
【0017】
正極集電体7は、アルミニウム製の帯状の集電体の両面に、正極合剤が塗布されて形成されている。負極集電体8は、銅製の帯状の集電体の両面に、負極合剤が塗布されて形成されている。
【0018】
また、正極集電体7には正極集電タブ12が一体に形成されており、負極集電体8には負極集電タブ13が一体に形成されている。正極集電タブ12は、一端が正極集電体7と電気的に接続されており、他端が外装体11の外部に引き出されている。同様に、負極集電タブ13は、一端が負極集電体8に電気的に接続されており、他端が外装体11の外部に引き出されている。
【0019】
正極集電体7を形成する工程では、図示しないが、巻き出し側ロールから供給された帯状の集電体を巻き取り側ロールに巻き取りながら、巻き出し側ロールから供給される集電体上に正極合剤を塗布する。このとき、帯状の集電体の長手方向に対して、正極合剤が塗布された塗布部と、正極合剤が塗布されない非塗布部とを交互に形成する。そして、塗布部と共に非塗布部の一部をプレス加工によって打ち抜くことによって、非塗布部の一部が正極集電タブとして形成される。また、負極集電体を形成する工程についても、正極集電体を形成する工程と同様であるので説明を省略する。
【0020】
正極集電タブ12及び負極集電タブ13は、外装体11の一端側からそれぞれ引き出される構成に限定されるものではなく、外装体11の対向する両端の一方から正極集電タブが引き出され、他方から負極集電タブが引き出されるように構成されてもよいことは勿論である。
【0021】
積層集電体10は、正極集電タブ12及び負極集電タブ13が引き出されていない側面が、図2Aに示すように、固定テープ14によって、各電極集電体7、8とセパレータ9が束ねられて固定されており、各電極集電体7、8やセパレータ9の相対位置にずれが生じることが防止されている。
【0022】
図2Bに示すように、積層集電体10の一端から引き出された複数の正極集電タブ12は、束ねられて正極端子17に接続されている。同様に、複数の負極集電タブ13は、束ねられて負極端子18に接続されている。また、各集電タブ12、13は、導電性を有する補充部材を介して各端子17、18と接続されてもよい。
【0023】
セパレータ9は、ポリオレフィン系の樹脂材によって形成されている。また、セパレータ9は、正極集電タブ12を除いた正極集電体7の部分が挿入されるような袋状に形成されてもよい。袋状のセパレータ9は、四角形状をなす2つのセパレータ9を重ねて、2つのセパレータ9の外周部の3辺を熱融着することによって形成される。また、袋状のセパレータ9に正極集電体7を挿入する構成の場合、負極集電体8の主面の外形寸法をセパレータ9の主面の外形寸法と等しく形成して、セパレータ9に負極集電体8を重ねることで、積層集電体10における、正極集電体7の主面の面内方向における、正極集電体7と負極集電体8との相対位置を安定させることができる。
【0024】
外装体11は、積層集電体10の変形を許容するように、変形しやすいアルミニウムシート等の可撓性を有する材料によって形成されることが好ましい。外装体11は、図3Aに示すように、積層集電体10が収容される収容部19を構成するように一組の外装部材11aが組み合わされて構成されている。また、図3Bに示すように、外装体11は、収納部19を有する外装部材11bの一端を折り返して収容部19の開口を閉じるように構成されてもよい。さらに、外装体11は、図3Cに示すように、収容部19を有する箱状に形成された、いわゆる角型の電池缶11cとして形成されてもよいことは勿論である。
【0025】
図4に、第1の実施形態におけるモジュールケース6のケース部21の平面図を示す。図5に、第1の実施形態におけるモジュールケース6のカバー部22の平面図を示す。
【0026】
図1Aに示すように、本実施形態の要部であるモジュールケース6は、樹脂材料によって形成されており、電池セル5を収容するケース部21と、電池セル5の一方の主面を覆うカバー部22と、を有している。
【0027】
図1A及び図4に示すように、ケース部21は、開口を有する箱状に形成されており、開口にカバー部22が取り付けられて閉じられる。ケース部21の底面である同一面上には、2つの電池セル5が、底面に形成された仕切り壁26を間に挟んで、並んで配置されている。また、ケース部21には、電池セル5を固定するための締結ネジ27の受け部28が形成されている。
【0028】
また、ケース部21の底面には、図4に示すように、電池セル5同士を電気的に接続するためのバスバー25が設けられている。また、ケース部21には、電池セル5の各端子と接続されてモジュールケース6の外部まで引き出された配線(不図示)や、コネクタ29が設けられている。
【0029】
図1B及び図5に示すように、カバー部22は、電池セル5の主面に対向する位置に、電池セル5の主面に膨出した変形部23が設けられている。すなわち、変形部23は、扁平状の電池セル5に生じる膨張が相対的に大きな部分に対応する位置に形成されている。
【0030】
変形部23は、図1Cに示すように、電池セル5が膨張したときにモジュールケース6の外側に向かって膨出可能に形成されている。変形部23は、電池セル5の外形に対応する四角形の凹部状に形成されており、変形部23の外形寸法が電池セル5の外形寸法とほぼ等しく形成されている。
【0031】
なお、実施形態では、変形部23の内面と、電池セル5の主面との間に、所定の間隙が設けられているが、必要に応じて、変形部23の内面が電池セル5の主面に当接されてもよい。カバー部22の変形部23の内面を、電池セル5の外装体11に当接させることで、モジュールケース6によって電池セル5が更に安定的に支持される。
【0032】
図6に、モジュールケース6のケース部の他の構成例の平面図を示す。図7に、モジュールケース6のカバー部の他の構成例の平面図を示す。
【0033】
また、正極端子17と負極端子18が両端からそれぞれ引き出される電池セルを用いる構成の場合には、図6に示すようにモジュールケース6のケース部21内の、電池セル5の両端側に、バスバー25を配置するための空間が設けられている。この構成の場合も、モジュールケース6のカバー部22には、図7に示すように、ケース部21内に配置された電池セル5の主面の位置に対応して、変形部23が形成されている。
【0034】
また、本実施形態では、電池セル5がケース部21の底面上に固定されたが、この構成に限定されるものではなく、必要に応じて、電池セル5がカバー部22側に締結ネジを介して固定されてもよい。
【0035】
また、図示しないが、複数の電池セル5が積層されてまとめられて組電池が構成され、組電池がモジュールケース6内に収容されてもよい。この構成の場合、積層された電池セル5は、固定テープによって束ねられて固定される。
【0036】
以上のように構成された電池モジュール1について、電池セル5に内部短絡が生じたときの変形部23の動作を説明する。
【0037】
モジュールケース6内の電池セル5に内部短絡が生じた場合、図1Cに示すように、外装体11内に生じたガスによって外装体11が電池セル5の外側に向かって膨らむ。このように電池セル5の主面が膨らんだときに、電池セル5が変形部23を押し上げて、変形部23がモジュールケース6の外側に向かって膨出する。
【0038】
電池セル5の膨張に応じて変形部23が変形することで、モジュールケース6が電池セル5の膨張を妨げることなく、正極集電体7及び負極集電体8が変形することに伴って電極間の抵抗が増える。このため、電池セル5に内部短絡が生じたときに、内部電流が上昇することが抑えられる。
【0039】
上述したように、実施形態の電池モジュール1は、モジュールケース6が変形部23を有することによって、電池セル5に内部短絡が生じたときに、変形部23がモジュールケース6の外側に向かって変形するので、電極間の抵抗が増え、内部電流の増加を防ぐことができる。その結果、簡素な構成で、電池モジュール1の安全性を高めることができる。
【0040】
また、本実施形態は、特許文献1に記載の構成に比べて、モジュールケース6に変形部23を成形するという簡素な構成によって、各電池セル5の膨張を許容することができると共に、電池モジュール1の製造コストが増えることを抑えることができる。
【0041】
加えて、本実施形態は、上述した特許文献1のように電池セルが膨出することを許容するための変形部材がモジュールケースの内部に設けられる構成や、電池セルの膨張を許容する空間がモジュールケースの内部に確保される構成と比べて、電池セル5が正常な状態において、モジュールケース6全体の薄型化を図ることができる。
【0042】
また、電池モジュール1は、電池セル5が大きく膨張した場合であっても、モジュールケース6の変形部23だけが変形するだけであり、モジュールケース6内に収容されている他の正常な電池セル5に悪影響を及ぼすことを防ぐことができる。
【0043】
また、電池モジュール1によれば、電池セル5のサイズや変形量に応じて、変形部23の大きさや、変形部23の変形量を適宜調整することで、使用する電池セル5に適する変形部23を容易に形成することができる利点も有する。
【0044】
(第2の実施形態)
図8Aに、第2の実施形態の電池モジュールの斜視図を示す。図8Cに、第2の実施形態の電池モジュールの断面図を示す。第2の実施形態における電池セルは、第1の実施形態における電池セル5と同一であるため、電池セル5についての説明を省略する。また、第2の実施形態において、上述した実施形態と同様な構成部材については簡単に説明する。
【0045】
第2の実施形態の電池モジュール2は、モジュールケースの両面側に電池セル5がそれぞれ配置されており、モジュールケースの両面に変形部が設けられている点が、第1の実施形態と異なっている。
【0046】
図8A及び図8Bに示すように、第2の実施形態の電池モジュール2が備えるモジュールケース26は、電池セル5を収容するためのケース部31と、複数の電池セル5が固定されるボード部32と、ボード部32に固定された電池セル5の主面を覆う一組のカバー部33と、を有する。
【0047】
ケース部31は、両側が開口する角筒状に形成されており、内部に、ボード部32が固定されている。
【0048】
ボード部32は、図8Bに示すように、平板状に形成されており、表面及び裏面に、複数の電池セル5が配置されている。ボード部32の表面である同一面上には、2つの電池セル5が仕切り壁36を間に挟んで、並んで配置されている。また、ボード部32の裏面にも、表面と同様に、2つの電池セル5が仕切り壁36を間に挟んで、並んで配置されている。
【0049】
また、ボード部32の外周部は、ケース部31の内面に固定されており、電池セル5を固定するための締結ネジ(不図示)の受け部38が形成されている。
【0050】
カバー部33の、ボード部32に固定された2つの電池セル5の各主面に対向する位置には、変形部34が形成されている。
【0051】
なお、モジュールケースの変形部の構造は、上述した実施形態に示した構造に限定されるものではない。モジュールケースの変形部は、複数の段差が同心円状に形成されてなる階段状や、変位量が相対的に大きくなる傾向にある電池セルの主面の中央の段差を大きく、電池セルの外周側に向かって段差が徐々に小さくなるように形成された形態や、ひだ状の折り返し部を含む蛇腹状の形態に形成されてもよく、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0052】
また、カバー部は、変形部のみを変形しやすくするために、変形部の周囲の部分よりも変形部の厚みが薄く形成されてもよい。また、変形部は、変形するときに折り曲がる折曲部が、変形部の他の部分よりも薄く形成されたり、変形部の厚みが段階的に変化するように形成されたりしてもよい。
【0053】
また、モジュールケースに収容する電池セルの形状や、膨張が生じる領域や、電池セルの変形量の大きさに応じて、電池セルの主面側に膨出する変形部の形状や厚みが適切に設定されてもよく、変形部の内面などに、変形を促すための溝が形成されてもよい。また、モジュールケースのカバー部は、1つの電池セルの主面に対応して、複数の変形部が所定の領域に分散して配置されてもよい。
【0054】
上述した実施形態では、カバー部に変形部が一体に形成されたが、必要に応じて、変形部が、カバー部の他の部分に比べて剛性が小さい材料で形成されてもよい。また、変形部は、所定の圧力以上が加わったときに、モジュールケースの外側に変形すると共にカバー部から変形部が破断するように構成されてもよい。
【0055】
なお、上述した実施形態の電池モジュールでは、積層構造の電池セルが用いられたが、電池セルの構造を限定するものではなく、正極集電体と負極集電体がセパレータを介して捲回されてなる捲回構造の電池セルが用いられてもよいことは勿論である。
【0056】
この出願は、2013年 3月15日に出願された日本出願特願2013−53388を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0057】
1 電池モジュール
5 電池セル
6 モジュールケース
7 正極集電体
8 負極集電体
9 セパレータ
10 積層集電体
11 外装体
23 変形部
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B