(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6292711
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】撮像レンズ
(51)【国際特許分類】
G02B 13/00 20060101AFI20180305BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
G02B13/00
G02B13/18
【請求項の数】5
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2014-82421(P2014-82421)
(22)【出願日】2014年4月14日
(65)【公開番号】特開2015-203739(P2015-203739A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2017年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】391014055
【氏名又は名称】カンタツ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木久則
【審査官】
堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−233221(JP,A)
【文献】
特開2007−086485(JP,A)
【文献】
特開2007−127953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00−17/08
G02B 21/02−21/04
G02B 25/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子用の撮像レンズであって、物体側から像側に向かって順に、物体側に凸面を向けた正の屈折力を有する第1レンズと、開口絞りと、物体側に凹面を向けたメニスカス形状で負の屈折力を有する両面が非球面の第2レンズと、像側に凹面を向けたメニスカス形状で正の屈折力を有する両面が非球面の第3レンズとから成り、前記第2レンズの物体側の面には回折光学面が形成されており、前記第3レンズの物体側の面および像側の非球面には光軸上以外の位置に変極点が形成されており、以下の条件式(1)から(4)を満足することを特徴とする撮像レンズ。
(1)8.0<fdoe/f<26.0
(2)20<νd1−νd2<40
(3)20<νd3−νd2<40
(4)0.8<ih/f<0.95
ただし、
fdoe:回折光学面の焦点距離
f :撮像レンズ全系の焦点距離
νd1:第1レンズのd線に対するアッベ数
νd2:第2レンズのd線に対するアッベ数
νd3:第3レンズのd線に対するアッベ数
ih :最大像高
【請求項2】
前記回折光学面は有効径内における輪帯数が10以下であり、光軸上に結像する光線が通過する領域における輪帯数が5以下であることを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
【請求項3】
以下の条件式(5)を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の撮像レンズ。
(5)0.2<t3/|r3|<0.6
ただし、
t3:開口絞りから第2レンズの物体側の面までの光軸上の距離
r3:第2レンズの物体側の面の曲率半径
【請求項4】
以下の条件式(6)、(7)を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の撮像レンズ。
(6)−1.2<(r1+r2)/(r1−r2)<−0.6
(7)−7.0<(r3+r4)/(r3−r4)<−1.2
ただし、
r1:第1レンズの物体側の面の曲率半径
r2:第1レンズの像側の面の曲率半径
r3:第2レンズの物体側の面の曲率半径
r4:第2レンズの像側の面の曲率半径
【請求項5】
以下の条件式(8)から(10)を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の撮像レンズ。
(8)1.0<f1/f<1.5
(9)−6.0<f2/f<−1.0
(10)0.7<f3/f<2.4
ただし、
f1:第1レンズの焦点距離
f2:第2レンズの回折光学面を含む焦点距離
f3:第3レンズの焦点距離
f :撮像レンズ全系の焦点距離
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型の撮像装置に使用されるCCDセンサやC-MOSセンサの固体撮像素子上に被写体の像を結像させる撮像レンズに関し、特に、小型化、薄型化が進むスマートフォンや携帯電話機およびPDA(Personal Digital Assistant)やゲーム機、PCなどの情報端末機器、更にはカメラ機能が付加された家電製品等に搭載される撮像装置に内蔵する撮像レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンを始めとする携帯端末機器や家電製品等にカメラ機能が搭載されることが一般的になっている。最近ではデジタルスティルカメラの画像と遜色ない高解像度のカメラ機能を搭載した高級機が登場する一方で、ある程度の性能を備えた低価格帯の普及機のニーズも依然として高い。3枚構成の撮像レンズは、ある程度の解像性能を備え、機器の薄型化に対応が可能で、更に低コストでの提供が望めるため、低価格帯の普及機に搭載する撮像レンズとして適している。しかし、近年では、撮像素子の小型化、高画素化に伴って、益々画素サイズは微細化され、高密度化されてきている。最近では画素ピッチが1.2ミクロンを下回るような撮像素子も提案されている。このような撮像素子に対応する撮像レンズには、収差が小さいというだけでは不十分になりつつあり、従来一般的であったF2.8よりも、さらに明るい光学系が要求されるようになっている。また、特に携帯端末機器に関しては、製品の薄型化に適用が可能な、十分に低背化された撮像レンズが望まれている。さらに、上述した高性能化や低背化の要求に加えて、多種多様なカメラ機能を備えた製品に柔軟に適用するために、被写体の像を広範囲に取り込むことができる撮像レンズが望まれている。
【0003】
従来、3枚で構成される撮像レンズとして、例えば特許文献1に記載の撮像レンズは、物体側より順に、開口絞りと、正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、第3レンズとにより構成されており、第3レンズは、両面が、光軸近傍では物体側に凸面を向けた形状となりレンズ外周部近傍では物体側に凹面を向けた形状となるように、光軸からの距離に従って屈折力を変化させた非球面で構成し、第1レンズの光軸上の厚さと第1レンズと第2レンズとの光軸上の空気間隔、および第3レンズの焦点距離、さらに第1レンズの物体側と像側の曲率半径の関係を規定することで、広角化を実現している。
【0004】
また、特許文献2に記載の撮像レンズには、回折光学面を利用して色収差を補正する光学系が開示されている。特許文献2に記載の撮像レンズは、少なくとも3枚のレンズを備え、これらレンズが有するレンズ面のうち、少なくとも一つのレンズ面に回折面が形成された撮像光学系であって、最も像側に位置するレンズが備えるレンズ面のうちの少なくとも一方のレンズ面が、その中心では負の光学的パワーを持ち、周辺部に向かうに従い光学的パワーが正の方向に変化するレンズ面で構成することによって、小型化とテレセントリック性を高めた光学系が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−113306号公報
【特許文献2】特開2007−127953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1によれば、全画角で76°から78°の広い被写体を撮影可能で、比較的良好な収差補正がなされている。しかし、F値は2.8であり、上述したような小型化、高密度化された撮像素子に適用するには課題がある。また、特許文献1では、光学全長が4.6mmから5.5mmであり、撮像素子の有効撮像面の対角線の長さとの比(光学全長÷撮像素子の有効撮像面の対角線の長さ、以降対角比という)は1.0程度に低背化されているものの、さらなる低背化とともに、F2.8以下の明るさを確保するには収差補正の観点から限界がある。
【0007】
特許文献2によれば、全画角が最大で72°の被写体を撮影可能で、比較的良好な収差補正がなされている。しかし、屈折力の配列は物体側から正、正、負であり、第1レンズと第2レンズとの組み合わせで色収差を補正する構成ではなく、回折光学面によって色収差を補正する構成になっている。回折光学面による色収差補正の依存度が高いと、レンズ面に形成する輪帯数が増える傾向となり、フレアの問題が発生しやすい。回折光学面を2面形成することでこの問題を対策する場合は、相互の回折光学面の芯ずれが起きない様、高精度なレンズ成型と高精度な組み立てが要求されるため、製造上の難易度が高くなる。また、低背化については、最も像側に位置する第3レンズの屈折力が負であり、バックフォーカスを長くとる構造になっているため、その分低背化が困難である。特許文献2において、3枚で構成される撮像レンズの光学全長は6.8mm程度と長く、対角比は1.1を上回っている。バックフォーカスを小さくして低背化を狙う場合、第3レンズへの入射角を大きくする必要が生じるため、その結果第2レンズの有効径が大きくなりやすい。レンズが大径化すれば、それに伴って、球面収差、コマ収差も増大するため、性能を維持して更なる低背化を実現することには限界がある。また、特許文献2に開示されている撮像レンズのF値は3.3であり、近年の高密度化された撮像素子に適用するには課題がある。
【0008】
本発明は上述した従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、近年の携帯端末機器等の薄型化や高密度化された撮像素子に十分適応可能な低背、小型で、明るく、広画角でありながら、諸収差が良好に補正された高性能な3枚構成の撮像レンズを低コストで提供することにある。
【0009】
なお、ここでいう低背とは、光学全長が撮像素子の有効撮像面の対角線の長さよりも短いレベル、すなわち対角比が1.0以下のレベルを指しており、広角とは全画角で80°以上のレベルを指している。また、撮像素子の有効撮像面の対角線の長さとは、撮像レンズに入射した最大画角からの光線が撮像面に入射する位置の光軸から垂直な高さ、すなわち最大像高を半径とする有効像円の直径と同一の距離として扱っている。
【0010】
また、レンズの面形状について、凸面、凹面とは近軸(光軸近傍)における形状を指すものであり、非球面に形成される変極点とは、接平面が光軸と垂直に交わる非球面上の点を意味するものとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の撮像レンズは、撮像素子用の撮像レンズであって、物体側から像側に向かって順に、物体側に凸面を向けた正の屈折力を有する第1レンズと、開口絞りと、物体側に凹面を向けたメニスカス形状で負の屈折力を有する両面が非球面の第2レンズと、像側に凹面を向けたメニスカス形状で正の屈折力を有する両面が非球面の第3レンズとから成り、第2レンズの物体側の面には回折光学面が形成されており、第3レンズの物体側の面および像側の非球面には光軸上以外の位置に変極点が形成されており、以下の条件式(1)から(4)を満足するよう構成している。
(1)8.0<fdoe/f<26.0
(2)20<νd1−νd2<40
(3)20<νd3−νd2<40
(4)0.80<ih/f<0.95
ただし、
fdoe:回折光学面の焦点距離
f:撮像レンズ全系の焦点距離
νd1:第1レンズのd線に対するアッベ数
νd2:第2レンズのd線に対するアッベ数
νd3:第3レンズのd線に対するアッベ数
ih:最大像高
f :撮像レンズ全系の焦点距離
【0012】
上記構成の撮像レンズは、物体側から順に正、負、正のパワー配列としてテレフォト性を高めながら低背化を容易にし、各レンズへの最適なパワー配分、および非球面を多用することで性能の向上を図っている。高性能な撮像レンズの条件の一つとして、色収差がどこまで補正出来ているかが重要な問題になるが、上記構成の撮像レンズは、使用するレンズ材料を適切に組み合わせることで、正の第1レンズで発生する色収差を両面が非球面の負の第2レンズで補正し、さらに負の第2レンズの物体側の凹面に適切な回折光学面を形成することによって、色収差の問題の解決を図っている。また、最も像側に位置する第3レンズの両面を、光軸上以外の位置に変極点が形成された非球面形状に形成することで、撮像素子への光線入射角を制御するとともに、像面湾曲と歪曲収差をバランスよく補正する。また、第3レンズの屈折力を正にすることで、第3レンズへの光線入射角を小さく抑えている。従って、第2レンズの有効径の増大を防止し、球面収差、コマ収差の発生を抑えることを容易にする。このような構成にすることで低F値、かつ広画角であっても収差が良好に補正された撮像レンズを実現する。
【0013】
上記構成の撮像レンズは、回折光学面を適切な位置に形成することで色収差を良好に補正し、従来の3枚構成の撮像レンズに比較して高性能化を図るものである。周知のように、回折光学面は光路差関数で定義される光路差を発生させるレリーフによって構成されるものである。通常、レンズ材料のe線におけるアッベ数は25から80なのに対して、回折光学面のe線のアッベ数は約−3.3と逆符号でおよそ一桁大きな分散を示す性質がある。上記構成の撮像レンズにおいては、色収差の補正のために少なくとも2種類の分散の異なる材料を組み合わせた従来の色収差補正の手法に加えて、第2レンズの物体側の面に回折光学面を形成することで、より効果的な色収差補正を実現する。
【0014】
ここで、回折光学面を配置する適切な位置とは、回折効率を高めるために、入射する光線束の面積(Footprint)が大きな面、すなわち開口絞りに近い面が最も望ましく、本発明では開口絞りに近い第2レンズの物体側の面に設定している。また、この位置は、回折光学面によるフレアの発生を抑制できる位置でもある。すなわち、正の第1レンズから出射した光線は、収束方向に向かうため、第2レンズの物体側に形成された回折光学面の輪帯の段差部における断面部への入射角度は小さなものとなる。従って、当該断面部で発生する乱反射が最小に抑えられ、フレアの発生を抑制することが可能になる。このように、第2レンズの物体側の面に回折光学面を形成することで、高い回折効率を得て色収差を好適に補正するとともに、フレアの発生を好適に抑制する。なお、第3レンズに回折光学面を形成する場合は、開口絞りから遠いため、第3レンズに入射する光線束の面積は小さなものとなり、回折効率を高めるには輪帯の数を増やす必要が生じるが、その場合、輪帯部で乱反射する光線が増えてフレアが増加傾向になり、鮮明な画像を得ることが困難になる。さらに、タンジェンシャル像面に対する色収差補正が十分機能しないことになる。一方、第1レンズの物体側、又は像側の面に回折光学面を形成する場合、輪帯部への入射角が大きくなることでフレアの問題が生じるとともに、外観上も望ましくない。
【0015】
条件式(1)は、撮像レンズ全系の焦点距離に対する回折光学面の焦点距離を規定するものであり、良好に色収差を補正するための条件である。条件式(1)の上限値を上回る場合、回折光学面の屈折力が弱くなり過ぎるため、色収差の補正が十分に機能しない。条件式(1)の下限値を下回る場合、回折光学面の屈折力が強くなり過ぎるため、この場合も良好な色収差の補正ができなくなる。
【0016】
条件式(2)は第1レンズと第2レンズのアッベ数の差を、条件式(3)は第3レンズと第2レンズのアッベ数の差を、それぞれ適切な範囲に規定するものであり、ともに色収差補正の効果を高めるための条件である。第2レンズに高分散な材料を用い、第1レンズおよび第3レンズに低分散な材料を用い、条件式(2)及び条件式(3)の範囲にすることで、回折光学面による色収差補正機能と併せて良好な色収差補正が可能になる。さらに、条件式(2)および条件式(3)の範囲は、安価なプラスチック材料での製造が可能であり、本発明の目的の一つである撮像レンズの低コスト化を可能にする。
【0017】
条件式(4)は画角の範囲を規定するものである。周知のように、画角をω、最大像高をih、撮像レンズ全系の焦点距離をfとしたとき、収差の影響を考慮しない条件の下で、画角はω=tan
−1(ih/f)で得られる。つまり、条件式(4)の範囲における全画角2ωは77°から87°の広い範囲の被写体の像を取り込めることを意味する。条件式(4)の上限値を上回る場合は、画角が広くなり過ぎて良好な収差補正の範囲を超えてしまう。すなわち、コマ収差が増大することで非点収差が悪化し、収差の補正が困難な領域になる。条件式(4)の下限値を下回る場合、コマ収差を抑制し性能を向上させるには有利になるが、近年要求される広い画角への対応が出来ない。
【0018】
また、上記構成の撮像レンズおいて、第2レンズの物体側に形成する回折光学面は、レンズ面の有効径内における輪帯数が10以下であり、光軸上に結像する光線が通過する領域における輪帯数が5以下であることが望ましい。
【0019】
回折光学面の輪帯の数については、輪帯を形成する段差部における断面部での乱反射に起因するフレアの発生を抑制するため適切な数に設定する必要がある。また、光軸に平行に入射する光線と、軸外から入射する光線の両方に対してフレアの影響を抑える必要がある。本発明の撮像レンズでは、レンズ有効径内における輪帯数は10以下であり、かつ光軸上に結像する光線が通過する領域における輪帯数を5以下にすることで、フレアの発生を抑制する。
【0020】
なお、回折光学面の輪帯数に関し、レンズ有効径内における輪帯数を8以下とし、かつ光軸上に結像する光線が通過する領域における輪帯数を3以下にすることがより好ましい条件である。
【0021】
また、本発明の撮像レンズは以下の条件式(5)を満足することが望ましい。
(5)0.2<t3/|r3|<0.6
ただし、
t3:開口絞りから第2レンズの物体側の面までの光軸上の距離
r3:第2レンズの物体側の面の曲率半径
【0022】
条件式(5)は開口絞りと回折光学面との位置関係を、開口絞りから回折光学面までの光軸上の距離と回折光学面の近軸曲率半径を用いて規定するものであり、複次回折光によるフレアの発生を抑制するための条件である。回折光学面を採用する際、いかに回折光学面への光線入射角を小さく抑え、複次光によるフレアの発生を抑制できるかが、鮮明な画像を得る上で重要になる。条件式(5)の上限値を上回る場合、開口絞りと回折光学面との距離が遠ざかり、軸外から回折光学面へ入射する光線の入射角が小さくなるため、フレアの発生を抑制するには有利になる。しかし、その場合第1レンズと第2レンズとの間隔を広げざるを得ず、その結果低背化が困難になってしまう。条件式(5)の下限値を下回る場合、開口絞りと回折光学面との距離が近づき過ぎ、低背化には有利になるが、軸外から回折光学面へ入射する光線の入射角が大きくなり、フレアの発生が増大するため好ましくない。
【0023】
また、本発明の撮像レンズは以下の条件式(6)、(7)を満足することが望ましい。
(6)−1.2<(r1+r2)/(r1−r2)<−0.6
(7)−7.0<(r3+r4)/(r3−r4)<−1.2
ただし、
r1:第1レンズの物体側の面の曲率半径
r2:第1レンズの像側の面の曲率半径
r3:第2レンズの物体側の面の曲率半径
r4:第2レンズの像側の面の曲率半径
【0024】
条件式(6)は、第1レンズの近軸における形状を規定し、広角化に対応しながら幾何光学収差、特にコマ収差を抑制するための条件である。条件式(6)の範囲は、第1レンズが物体側に凸面を向けたメニスカス形状から両凸形状になることを示すものである。条件式(6)の上限値を上回る両凸形状になると、第1レンズの正の屈折力の増加にバランスさせるため、第2レンズの負の屈折力を増加させる必要があるが、その場合、球面収差、軸外におけるコマ収差、非点収差、さらに倍率色収差も増大するため、広角化に伴う諸収差の補正が困難になる。一方、条件式(6)の下限値を下回るメニスカス形状になると、第1レンズの物体側の曲率半径が小さくなるため、広い画角からの光線を取り込みやすくなるものの、製造誤差感度が上昇するとともに、球面収差、コマ収差、および非点収差が悪化するため好ましくない。
【0025】
また、条件式(7)は第2レンズの近軸における形状を規定し、良好な色収差補正を行うための条件である。条件式(7)の値が上限値を上回る場合、第2レンズの負の屈折力が強くなるため、色収差の補正には有利になるが、焦点距離や光学全長が長くなるため、広角化、および低背化が困難になる。さらに、負の屈折力を相殺するために第1レンズの正の屈折力を強くせざるを得ず、球面収差、コマ収差、非点収差が悪化する。条件式(7)の下限値を下回る場合、第2レンズの負の屈折力が弱くなるため、焦点距離や光学全長を短くし、広角化および低背化には有利になるが、回折光学面による色収差補正の依存度が高くなるため、当該面の屈折力を強くせざるを得なくなる。従って、輪帯数が増えることで、フレアが発生しやすくなるため好ましくない。
【0026】
また、本発明の撮像レンズは以下の条件式(8)から(10)を満足することが望ましい。
(8)1.0<f1/f<1.5
(9)−6.0<f2/f<−1.0
(10)0.7<f3/f<2.4
f1:第1レンズの焦点距離
f2:第2レンズの回折光学面を含む焦点距離
f3:第3レンズの焦点距離
f :撮像レンズ全系の焦点距離
【0027】
条件式(8)は小型化を維持しながらコマ収差および倍率色収差を良好な範囲に補正するための条件である。条件式(8)の上限値を上回る場合、第1レンズの屈折力が弱くなり過ぎるため、低背化が困難になるとともに、非点収差が悪化する。条件式(8)の下限値を下回る場合、低背化には有利になるが、コマ収差が増大する傾向になり、そのため倍率色収差の補正が困難になる。
【0028】
条件式(9)は撮像レンズ全系の焦点距離に対する回折光学面を含む第2レンズの焦点距離を規定するものであり、低背化と色収差の補正を良好に行うための条件である。条件式(9)の上限値を上回る場合、第2レンズの負の屈折力が強くなり過ぎて、低背化が困難になる。条件式(9)の下限値を下回る場合、第2レンズの負の屈折力が弱くなり過ぎて、第2レンズによる色収差補正が十分に機能しない。
【0029】
条件式(10)は撮像素子への光線入射角度を適切なものとしながら、歪曲収差の良好な補正およびバックフォーカス確保のための条件である。条件式(10)の上限値を上回る場合、第3レンズの屈折力が弱まるためバックフォーカスの確保には有利になるが、光学全長の短縮が困難になるとともに倍率色収差も悪化する傾向になる。条件式(10)の下限値を下回る場合、バックフォーカスの確保が困難になるとともに撮像素子への光線入射角度の制御が困難になる。さらに、歪曲収差の補正も困難になる。
【0030】
また、第1レンズから第3レンズの焦点距離の関係については、以下の条件式(11)を満足することがより好ましい。
(11)−1.7<f2/(f1+f3)<−0.5
ただし、
f1:第1レンズの焦点距離
f2:第2レンズの回折光学面を含む焦点距離
f3:第3レンズの焦点距離
【0031】
条件式(11)は第1レンズ、および第3レンズの正の屈折力に対する第2レンズの負の屈折力を適切な範囲に規定するものであり、良好な色収差補正と低背化を維持するための条件である。条件式(11)の上限値を上回ると、第2レンズの負の屈折力が相対的に強くなるため、色収差の補正には有利になるが、低背化が困難になる。条件式(11)の下限値を下回ると、第2レンズの負の屈折力が相対的に弱くなるため、低背化には有利になるが色収差の補正が不十分になる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、近年の携帯端末機器等の薄型化に十分適応可能な低背、小型で、明るく、3枚構成でありながら諸収差、特に色収差を良好に補正した高性能な撮像レンズを低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】実施例1の撮像レンズの概略構成を示す図である。
【
図2】実施例1の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差、倍率色収差を示す図である。
【
図3】実施例2の撮像レンズの概略構成を示す図である。
【
図4】実施例2の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差、倍率色収差を示す図である。
【
図5】実施例3の撮像レンズの概略構成を示す図である。
【
図6】実施例3の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差、倍率色収差を示す図である。
【
図7】実施例4の撮像レンズの概略構成を示す図である。
【
図8】実施例4の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差、倍率色収差を示す図である。
【
図9】実施例5の撮像レンズの概略構成を示す図である。
【
図10】実施例5の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差、倍率色収差を示す図である。
【
図11】実施例6の撮像レンズの概略構成を示す図である。
【
図12】実施例6の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差、倍率色収差を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0035】
図1、
図3、
図5、
図7、
図9、
図11はそれぞれ、本発明の実施形態の実施例1から実施例6の撮像レンズの概略構成図を示したものである。いずれの実施例も基本的なレンズ構成は同様であるため、ここでは実施例1の概略構成図と回折光学面の形状を表わす模式図の
図13を参照しながら、本実施形態に係る撮像レンズの構成について説明する。
【0036】
図1に示すように、本発明の撮像レンズは、物体側から像側に向かって順に、物体側に凸面を向けた正の屈折力を有する第1レンズL1と、開口絞りSTと、物体側に凹面を向けたメニスカス形状で負の屈折力を有する両面が非球面の第2レンズL2と、像側に凹面を向けたメニスカス形状で正の屈折力を有する両面が非球面の第3レンズL3とから構成されている。第2レンズL2の物体側の面には回折光学面DOEが形成されており、第3レンズL3の物体側の面および像側の非球面には光軸X上以外の位置に変極点が形成されている。また、第3レンズL3と撮像面IMGとの間には赤外線カットフィルタ等のフィルタIRが配置されている。なお、このフィルタIRは省略することも可能である。本実施形態に係る撮像レンズの光学全長やバックフォーカスの値はフィルタIRを空気換算した値として示してある。
【0037】
本実施形態の撮像レンズは、物体側から順に正、負、正のパワー配列としてテレフォト性を高めることで低背化を容易にし、各レンズへの最適なパワー配分、および非球面を多用することで性能の向上が図られている。本実施形態の撮像レンズは、良好な色収差補正のために、第1レンズL1に低分散な材料を、第2レンズL2は高分散な材料を適切に組み合わせることで、正の第1レンズL1で発生する色収差を両面が非球面の負の第2レンズL2で補正することに加え、負の第2レンズL2の物体側の凹面に適切な回折光学面DOEを形成することによって、従来困難だった色収差の問題の解決が図られている。また、最も像側に位置する第3レンズL3の両面は光軸X上以外の位置に変極点が形成された非球面形状になっており、撮像面IMGへの光線入射角を適切に制御するとともに、像面湾曲と歪曲収差をバランスよく補正している。さらに、第3レンズL3の屈折力を正にしているため、第3レンズL3への光線入射角は小さく抑えられ、その結果第2レンズL2の有効径が小さく抑えられている。従って、第2レンズL2で発生する球面収差、コマ収差が抑制される構成になっている。
【0038】
なお、実施例1において、第1レンズL1は両凸形状になっているが、物体側に凸面を向けた正の屈折力を有するメニスカス形状や、像側が平面の凸平形状であってもよい。
【0039】
第2レンズL2の物体側の面に形成された回折光学面DOEは、
図13に示すように開口絞りSTに近い位置にあるため、開口絞りSTから出射した光線束φが大きな面積で入射することで、回折効率を高めるのに有効な面である。ところで、輪帯の深さをd、設計波長をλ、レンズ材料の屈折率をnとすると、それぞれの関係はd=λ/(n−1)で表され、輪帯の深さは1μm程度の微小な深さとなる。ここで、通常の回折光学面の設計は、輪帯部は鋭いエッヂとして、また断面部cは光軸に平行な断面形状として設定されるが、実際には加工Rによってエッヂ形状には形成されないし、断面部cは金型からの離型性を良くする方向への傾斜面にすることが望ましい。その結果、輪帯部の実際の形状は先端にRが付いた傾斜面になっている。この傾斜の方向と回折光学面DOEに入射する光線のとの関係はフレアを抑制する上で非常に重要なものとなる。すなわち、レンズ系に平行に入射する1a、1b等の光線は、第1レンズL1から出射した後、光軸Xに近づく方向に向かう。一方、回折光学面DOEの輪帯の断面部cは、第2レンズL2の物体側に形成されていることで、物体側に向かって光軸Xから離れる方向に傾斜した面になっている。従って、1a、1b等の入射光線と断面部cとの角度は互いに平行に近づき、断面部cへの光線入射角θは小さく抑えられることになる。従って、輪帯の断面部cで発生する乱反射が最小なものとなり、フレアの発生が抑制できる。
【0040】
第2レンズL2の物体側の面の回折光学面DOEは、有効径内における輪帯の総数が10以下であり、像高ゼロの位置における光線束が通過する領域における輪帯数が5以下に設定されている。像高ゼロの位置における光線束、すなわち光学系に入射する最も光量が大きな光線束に対して、輪対の数を5以下に制限することは、前述した断面部cにおける乱反射の量をさらに抑制することになる。また、軸外からの光線は断面部cに大きな入射角度で入りやすくなるが、光量が小さい分、像高ゼロの位置における光線束よりも乱反射の影響は受けにくい。しかし、本実施形態では有効径内における輪帯の数を10以下に制限することで軸外光線に対するフレアの発生も抑制する。
【0041】
本実施形態の撮像レンズは以下の条件式(1)から(11)を満足することで、好ましい効果を奏するものである。
(1)8.0<fdoe/f<26.0
(2)20<νd1−νd2<40
(3)20<νd3−νd2<40
(4)0.8<ih/f<0.95
(5)0.2<t3/|r3|<0.6
(6)−1.2<(r1+r2)/(r1−r2)<−0.6
(7)−7.0<(r3+r4)/(r3−r4)<−1.2
(8)1.0<f1/f<1.5
(9)−6.0<f2/f<−1.0
(10)0.7<f3/f<2.4
(11)−1.7<f2/(f1+f3)<−0.5
ただし、
f :撮像レンズ全系の焦点距離
fdoe:回折光学面DOEの焦点距離
νd1:第1レンズL1のd線に対するアッベ数
νd2:第2レンズL2のd線に対するアッベ数
νd3:第3レンズL3のd線に対するアッベ数
ih:最大像高
f1:第1レンズL1の焦点距離
f2:第2レンズL2の回折光学面DOEを含む焦点距離
f3:第3レンズL3の焦点距離
t3:開口絞りSTから第2レンズL2の物体側の面までの光軸X上の距離
r1:第1レンズL1の物体側の面の曲率半径
r2:第1レンズL1の像側の面の曲率半径
r3:第2レンズL2の物体側の面の曲率半径
r4:第2レンズL2の像側の面の曲率半径
【0042】
また、本実施形態の撮像レンズは以下の条件式(1a)から(11a)を満足することで、より好ましい効果を奏するものである。
(1a)9.0<fdoe/f<26.0
(2a)25<νd1−νd2<35
(3a)25<νd3−νd2<35
(4a)0.8<ih/f<0.95
(5a)0.2<t3/|r3|<0.6
(6a)−1.0<(r1+r2)/(r1−r2)<−0.8
(7a)−7.0<(r3+r4)/(r3−r4)<−1.5
(8a)1.0<f1/f<1.3
(9a)−5.5<f2/f<−1.2
(10a)0.9<f3/f<2.3
(11a)−1.6<f2/(f1+f3)<−0.55
ただし、各条件式の符号は前の段落での説明と同様である。
【0043】
また、本実施形態の撮像レンズは以下の条件式(1b)から(11b)を満足することで、特に好ましい効果を奏するものである。
(1b)9.01≦fdoe/f≦24.96
(2b)28<νd1−νd2<35
(3b)28<νd3−νd2<35
(4b)0.8<ih/f≦0.93
(5b)0.33≦t3/|r3|≦0.46
(6b)−1.0≦(r1+r2)/(r1−r2)≦−0.85
(7b)−6.58≦(r3+r4)/(r3−r4)≦−1.78
(8b)1.18≦f1/f≦1.26
(9b)−5.26≦f2/f≦−1.36
(10b)1.04≦f3/f≦2.16
(11b)−1.54≦f2/(f1+f3)≦−0.61
ただし、各条件式の符号は前の段落での説明と同様である。
【0044】
本実施形態の撮像レンズによれば、対角比が0.8以下と低背で、F値が2.4以下と明るく、全画角(2ω)で80°以上で広角に対応しながらも、高い解像能力を備えた撮像レンズを実現する。
【0045】
本実施形態では、すべてのレンズ面を非球面で形成している。これらのレンズ面に採用する非球面形状は光軸方向の軸をZ、光軸に直交する方向の高さをH、円錐係数をk、非球面係数をA4、A6、A8、A10、A12、A14、A16としたとき数式1により表わされる。
【0046】
【数1】
【0047】
また、本実施形態において、第2レンズL2の物体側に形成される回折光学面は、位相差をP、位相差関数係数をB
2i(i=1から8)としたとき数式2で表わされる。
【0048】
【数2】
【0049】
次に本実施形態に係る撮像レンズの実施例を示す。各実施例において、fは撮像レンズ全系の焦点距離を、FnoはFナンバーを、ωは半画角を、ihは最大像高を、TLA、及びbfはフィルタIRを空気換算した際の光学全長、バックフォーカスをそれぞれ示す。また、iは物体側から数えた面番号、rは曲率半径、dは光軸上のレンズ面間の距離(面間隔)、Ndはd線(基準波長)の屈折率、νdはd線に対するアッベ数をそれぞれ示す。なお、非球面に関しては、面番号iの後に*(アスタリスク)の符号を付加して示す。また、回折光学面に関しては面番号iの後ろにDOEの符号を付加して示す。
【実施例1】
【0050】
基本的なレンズデータを以下の表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
実施例1に係る撮像レンズの条件式(1)から(11)の値を表7に、回折光学面の輪帯数を表8に示す。表7に示すように実施例1の撮像レンズは条件式(1)から(11)の全てを満たしている。また、有効径内における輪帯数が8であり、光軸上に結像する光線が通過する領域における輪帯数が4になっており、フレアの発生を抑制する条件を満たしている。
【0053】
図2は、実施例1の撮像レンズについて球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)、および倍率色収差(μm)を示したものである。これらの収差図において、球面収差図にはF線(486nm)、e線(546nm)、d線(587nm)、C線(656nm)の各波長に対する収差量を示し、非点収差図にはd線におけるサジタル像面Sの収差量とタンジェンシャル像面Tの収差量を示し、倍率色収差図にはd線を基準波長とした際のF線(486nm)、e線(486nm)、C線(656nm)の収差量をそれぞれ示す(
図4、6、8、10、12において同じ)。
【0054】
図2に示されるように、実施例1に係る撮像レンズによれば、色収差が良好に補正され、その他の収差も好適に補正される。さらに、F値は2.4で明るく、対角比は0.75で十分低背化されているとともに、2ωで84°もの広い画角の撮影を可能にする。
【実施例2】
【0055】
基本的なレンズデータを以下の表2に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
実施例2に係る撮像レンズの条件式(1)から(11)の値を表7に、回折光学面の輪帯数を表8に示す。表7に示すように実施例2の撮像レンズは条件式(1)から(11)の全てを満たしている。また、有効径内における輪帯数が9であり、光軸上に結像する光線が通過する領域における輪帯数が4になっており、フレアの発生を抑制する条件を満たしている。
【0058】
図4は、本実施例2に係る撮像レンズについて球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)、および倍率色収差(μm)を示したものである。
図4に示されるように、本実施例2に係る撮像レンズによっても、色収差が良好に補正され、その他の収差も好適に補正される。さらに、F値は2.4で明るく、対角比は0.75で十分低背化されているとともに、2ωで83°もの広い画角の撮影を可能にする。
【実施例3】
【0059】
基本的なレンズデータを以下の表3に示す。
【0060】
【表3】
【0061】
実施例3に係る撮像レンズの条件式(1)から(11)の値を表7に、回折光学面の輪帯数を表8に示す。表7に示すように実施例3の撮像レンズは条件式(1)から(11)の全てを満たしている。また、有効径内における輪帯数が10であり、光軸上に結像する光線が通過する領域における輪帯数が4になっており、フレアの発生を抑制する条件を満たしている。
【0062】
図6は、本実施例3に係る撮像レンズについて球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)、および倍率色収差(μm)を示したものである。
図6に示されるように、実施例3に係る撮像レンズによっても、色収差が良好に補正され、その他の収差も好適に補正される。さらに、F値は2.4で明るく、対角比は0.75で十分低背化されているとともに、2ωで83°もの広い画角の撮影を可能にする。
【実施例4】
【0063】
基本的なレンズデータを以下の表4に示す。
【0064】
【表4】
【0065】
実施例4に係る撮像レンズの条件式(1)から(11)の値を表7に、回折光学面の輪帯数を表8に示す。表7に示すように実施例4の撮像レンズは条件式(1)から(11)の全てを満たしている。また、有効径内における輪帯数が8であり、光軸上に結像する光線が通過する領域における輪帯数が3になっており、フレアの発生を抑制する条件を満たしている。
【0066】
図8は、本実施例4に係る撮像レンズについて球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)、および倍率色収差(μm)を示したものである。
図8に示されるように、実施例4に係る撮像レンズによっても、色収差が良好に補正され、その他の収差も好適に補正される。さらに、F値は2.3で明るく、対角比は0.75で十分低背化されているとともに、2ωで83°もの広い画角の撮影を可能にする。
【実施例5】
【0067】
基本的なレンズデータを以下の表5に示す。
【0068】
【表5】
【0069】
実施例5に係る撮像レンズの条件式(1)から(11)の値を表7に、回折光学面の輪帯数を表8に示す。表7に示すように実施例5の撮像レンズは条件式(1)から(11)の全てを満たしている。また、有効径内における輪帯数が7であり、光軸上に結像する光線が通過する領域における輪帯数が3になっており、フレアの発生を抑制する条件を満たしている。
【0070】
図10は、本実施例5に係る撮像レンズについて球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)、および倍率色収差(μm)を示したものである。
図10に示されるように、実施例5に係る撮像レンズによっても、色収差が良好に補正され、その他の収差も好適に補正される。さらに、F値は2.3で明るく、対角比は0.75で十分低背化されているとともに、2ωで83°もの広い画角の撮影を可能にする。
【実施例6】
【0071】
基本的なレンズデータを以下の表6に示す。
【0072】
【表6】
【0073】
実施例6に係る撮像レンズの条件式(1)から(11)の値を表7に、回折光学面の輪帯数を表8に示す。表7に示すように実施例6の撮像レンズは条件式(1)から(11)の全てを満たしている。また、有効径内における輪帯数が5であり、光軸上に結像する光線が通過する領域における輪帯数が2になっており、フレアの発生を抑制する条件を満たしている。
【0074】
図12は、本実施例6に係る撮像レンズについて球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)、および倍率色収差(μm)を示したものである。
図12に示されるように、実施例6に係る撮像レンズによっても、色収差が良好に補正され、その他の収差も好適に補正される。さらに、F値は2.3で明るく、対角比は0.75で十分低背化されているとともに、2ωで83°もの広い画角の撮影を可能にする。
【0075】
【表7】
【0076】
【表8】
【0077】
以上、説明したように、本発明の実施の形態に係る撮像レンズは、近年の携帯端末機器等の薄型化や高密度化された撮像素子に十分適応可能な低背、小型で、明るく、広画角でありながら、諸収差が良好に補正された高性能な3枚構成の撮像レンズを低コストで提供することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の各実施の形態に係る3枚構成の撮像レンズは、小型化、薄型化が進むスマートフォンや携帯電話機およびPDA(Personal Digital Assistant)やゲーム機、PCなどの情報端末機器、更にはカメラ機能が付加された家電製品等に搭載される撮像装置に適用した場合、当該装置の薄型化への寄与とともにカメラ機能の高性能化を図ることができる。
【符号の説明】
【0079】
ST:開口絞り
L1:第1レンズ
L2:第2レンズ
L3:第3レンズ
DOE:回折光学面が形成された面
IR:フィルタ
X :光軸
IMG:撮像面