特許第6292794号(P6292794)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6292794
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】ナースコールシステム
(51)【国際特許分類】
   A61G 12/00 20060101AFI20180305BHJP
【FI】
   A61G12/00 E
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-172537(P2013-172537)
(22)【出願日】2013年8月22日
(65)【公開番号】特開2015-39551(P2015-39551A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2016年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100908
【氏名又は名称】アイホン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】楠 浩和
【審査官】 井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−149773(JP,A)
【文献】 特開2005−294930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者が看護師を呼び出すための複数のナースコール子機と、前記ナースコール子機による呼び出しに看護師が応答するための複数のナースコール親機と、機器間の通信を制御する1台の制御機とを有するナースコールシステムであって、
制御機は、複数のナースコール子機と少なくとも1台のナースコール親機とで構成されるユニットを複数記憶すると共に、前記ナースコール子機毎に呼出先ナースコール親機を記憶する呼出先情報記憶部と、前記ナースコール子機からの呼び出しを制御する呼出制御部とを有し、
前記呼出先情報記憶部には、前記ナースコール子機毎に前記ナースコール子機から呼出操作を受けて最初に呼び出す主ナースコール親機と、その後所定時間の経過を待って遅延呼出を実施して呼出先を追加する副ナースコール親機とが、呼出元の前記ナースコール子機の属するユニットに関わらず登録されており、
前記呼出制御部が追加呼び出しをする遅延時間が、最初に呼び出す主ナースコール親機と同一ユニットの場合と異なるユニットの場合とで異なり、異なるユニットの場合は同一のユニットの場合より遅延時間を長くして呼び出しを実施することを特徴とするナースコールシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は患者が看護師を呼び出すためのナースコールシステムに関し、特に多数のナースコール親機を1台の制御機が制御するナースコールシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ナースコールシステムには、1台の制御機により多数のナースコール親機及びナースコール子機が制御されて、ナースコール子機による呼び出しを報音させて通話を制御するシステムがある。このようなシステムでは、通常ナースコール子機からの呼び出しを全てのナースコール親機で報音させるのではなく、ナースコール子機毎に予め指定されたナースコール親機のみで報音させるよう制御していた。
また、多数のナースコール親機を備えて、ナースコール子機からの呼び出しを特定のナースコール親機に転送する機能を備えたシステムが特許文献1に開示されている。この特許文献1では、A病棟のナースコールシステムとB病棟のナースコールシステムを1台の制御機が制御し、夜間等看護師の人数が少ない状況では、看護師の負担を軽減するためにナースコール親機間で(A病棟とB病棟の間で)呼出信号の転送制御を実施して、特定のナースコール親機に呼び出しを集約することで看護師の数が少ない夜間等の利便性を改善した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−107239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多数のナースコール親機を備えたシステムの場合、上述したようにナースコールが発生しても一部のナースコール親機のみで呼出音が報音され、この呼び出しに対して応答がないからといって、他のナースコール親機に呼出を転送或いは拡大することはなく、複数のナースコール子機が接続されていても効果的に利用されてはいなかった。
【0005】
一方で、総合病院等の多くの診療科を有する病院では、空きベッドの有効利用を図るために、患者が本来入院すべき病棟に空きベッドが無い場合、その患者を空きベッドのある他病棟(診療科目の異なる病棟)に入院させる場合がある。
この場合、他病棟に入院した患者からの呼び出しは、担当看護師のいる病棟に呼出信号を送信して看護師を呼び出すのが好ましいが、従来は病棟毎にナースコールシステムは独立していたため、そのような制御は難しく入院した病棟のナースステーションに呼出信号が送信され、応答した看護師が必要に応じて担当看護師に連絡していた。
【0006】
そのため、患者が他病棟に入院した場合は、上記特許文献1の如く呼び出しを他病棟であっても送信できるシステムが好ましいが、特許文献1の技術では転送設定したら転送設定されたナースコール親機に関連する全てのナースコール子機の呼び出しが転送されてしまうため、好ましいものではなかった。
【0007】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、最初は特定のナースコール親機を呼び出す制御を実施し、途中から呼出先を追加する制御を実施するナースコールシステム、特に他病棟の患者を受け入れた場合に、その患者がナースコール子機を呼出操作したら、担当看護師の所属する他病棟のナースコール親機の呼び出しを実施し、必要に応じて他のナースコール親機の呼び出しも実施するナースコールシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、患者が看護師を呼び出すための複数のナースコール子機と、ナースコール子機による呼び出しに看護師が応答するための複数のナースコール親機と、機器間の通信を制御する1台の制御機とを有するナースコールシステムであって、制御機は、複数のナースコール子機と少なくとも1台のナースコール親機とで構成されるユニットを複数記憶すると共に、ナースコール子機毎に呼出先ナースコール親機を記憶する呼出先情報記憶部と、ナースコール子機からの呼び出しを制御する呼出制御部とを有し、呼出先情報記憶部には、ナースコール子機毎にナースコール子機から呼出操作を受けて最初に呼び出す主ナースコール親機と、その後所定時間の経過を待って遅延呼出を実施して呼出先を追加する副ナースコール親機とが、呼出元のナースコール子機の属するユニットに関わらず登録されており、呼出制御部が追加呼び出しをする遅延時間が、最初に呼び出す主ナースコール親機と同一ユニットの場合と異なるユニットの場合とで異なり、異なるユニットの場合は同一のユニットの場合より遅延時間を長くして呼び出しを実施することを特徴とする。
この構成によれば、例えばユニットを病棟に対応させれば、ナースコール子機の呼出信号を他のユニット、即ち他の病棟のナースコール親機に送信することができ、患者を病棟を跨いで入院させた場合でも、担当看護師が居る病棟のナースコール親機に呼出信号を送信することができスムーズに対応することが可能となる。
また、複数病棟に設置されたナースコールシステムを1台の制御機で制御するため安価に構成することが可能となる。
【0009】
また、2段階の呼び出しを実施するため、最初に担当看護師が居るナースステーションのナースコール親機の呼び出しを実施し、応答がない場合に他のナースコール親機も追加して呼び出すことができる。よって、呼び出しに対して応答の無い事態を削減できるし、最初から多数のナースコール親機において呼び出しを報音するような頻繁な呼出動作を削減することができ、看護師はスムーズに業務をこなすことができる。
【0010】
更に、ユニットを病棟に対応させれば、同一病棟内で遅延呼び出しする場合に比べて病棟を跨いで呼び出しする場合の遅延時間を長くしたことで、最初に呼び出しした病棟内でまず呼び出しを拡大するため、できるだけ処理させるよう制御する。よって、他病棟まで呼び出しを拡大する事態を少なくでき、看護師の負担を軽減できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ユニットを病棟に対応させれば、ナースコール子機の呼出信号を他のユニット、即ち他の病棟のナースコール親機に送信することができ、患者を病棟を跨いで入院させた場合でも、担当看護師が居る病棟のナースコール親機に呼出信号を送信することができスムーズに対応することが可能となる。
また、複数病棟に設置されたナースコールシステムを1台の制御機で制御できるため安価に構成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るナースコールシステムの一例を示す構成図である。
図2】制御機の回路ブロック図である。
図3】制御機が記憶する呼出先情報の一例を示し、最初にユニットを跨いで呼出信号を送信する場合を示している。
図4】制御機が記憶する呼出先情報の一例を示し、最初に自ユニットに呼出信号を送信する場合を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係るナースコールシステムの一例を示す構成図であり、1は患者が看護師を呼び出すために個々のベッドに設置されたナースコール子機(以下、単に「子機」と称する。)、2は呼出発生を病室の出入口で表示する廊下灯、3はナースコール子機からの呼び出しに看護師が応答するためにナースステーションに設置されたナースコール親機(以下、単に「親機」と称する。)、4は機器間の通信を制御する制御機である。
【0014】
廊下灯2、親機3、制御機4の間はHUB5を介してLAN接続され、子機1は伝送線L1により病室毎に廊下灯2に接続されている。また、Uはユニットを示し、ここでは1ユニットが1病棟に対応しているとする。図1では、1ユニットあたり子機1が複数接続され、親機3が3台設置され、3ユニット(第1ユニットU1〜第3ユニットU3)Uが1台の制御機4により制御される構成を示している。
尚、ユニットUの数、ユニットUを構成する子機1の数及び親機3の数は、設置対象の病棟数や規模により任意に変更されるものである。
【0015】
子機1は、呼出握りボタン1aと、呼出握りボタン1aが接続されると共に通話するためのマイク及びスピーカを備えたプレート子機1bとで構成され、呼出握りボタン1aが押下されると呼出信号が廊下灯2に伝送される。
【0016】
廊下灯2は、呼出発生を発光通知する通知灯2aと、患者情報を表示する患者情報表示部2bとを備え、廊下灯2に接続されている子機1から呼出信号を受信したら、子機1のID及び自身のID(病室のID)を呼出信号に加えて制御機4に送信する。
【0017】
親機3は、呼び出しに応答するためのハンドセット3a、呼出元を表示する表示部3b、患者一覧を表示する患者情報表示部3c等を備え、子機1から制御機4を介して呼出信号が送信されたら、呼び出しを報音し、患者情報表示部3cの対応する部位を点滅等させる。また表示部3bに患者情報を表示する。
【0018】
図2は制御機4の回路ブロックの概略を示している。図2に示すように、制御機4は個々の子機1の呼出信号送信先を記憶する情報記憶部41、機器間の通信を制御すると共に制御機4を制御する制御機CPU42、HUB5に接続するための通信IF43等を備えている。
情報記憶部41には、個々の子機1及び親機3の所属ユニット、各子機1が最初に呼出信号を送信する親機(主親機)3、及びその後遅延呼び出しを実施する親機(副親機)3が登録された呼出先テーブル、同一ユニット内において呼出先を追加する際の遅延時間、ユニットを跨いで呼出先を追加する際の遅延時間等の登録情報が記憶されている。
【0019】
尚、主親機3には、患者を担当する看護師の所属するナースステーションに設置された親機3が通常設定される。従って、主親機3は、呼出元の子機1と同一ユニットUが基本であるが、他病棟から患者を受け入れた場合は他ユニットUの親機3となる。そして、これらの登録情報は、子機1が所属するユニットUの親機3、或いは患者の担当看護師が所属するユニットUの親機3で設定される。
【0020】
このように構成されたナースコールシステムの動作は以下のようである。先ず、患者が自身の診療科目に関連する病棟と異なる他病棟に入院した場合、即ち病棟を跨いで入院した場合を説明する。例えば、この患者の本来入院すべき病棟が第2病棟(第2ユニットU2内)であるが、第1病棟(第1ユニットU1内)の101号室の1番のベッドに入院したとする。
以下、この患者が操作する子機IDを「101−1」、入院しているユニット(病棟)IDを「1」、本来入院すべきユニット(病棟)IDを「2」、担当看護師の所属する親機(ナースステーション)IDを「2−1」として説明する。
【0021】
図3は、情報記憶部41に登録された情報の一部を示し、ID「101−1」の子機1に関連付けられている上記情報を示している。ID「101−1」の子機1が呼出操作されると呼出信号が制御機4に送信される。図3から、主親機IDが「2−1」であり、副親機IDが「1−1」、ユニット間呼出遅延時間が20秒であるため、呼出信号を受信した制御機4は、制御機CPU42の制御により、ユニットUを跨いで第2ユニットU2のID「2−1」の親機3に呼出信号が送信され、その後20秒間応答が無ければユニットUを跨がずに同一ユニットである第1ユニットU1のID「1−1」の親機3が呼出先に追加する制御が行われる。
【0022】
従って、ID「2−1」の親機3を20秒間呼び出して応答が無ければ、入院している第1病棟(第1ユニットU1)の親機3に対しても呼出信号が送信され、合計2台の親機3において呼び出しが実施される。
この呼び出しを受けて、何れかの親機3で応答操作されたら、制御機4は呼出元の子機1と応答操作した親機3との間の通話路を形成し、看護師と患者との間で通話が成される。但し、最初の呼び出しの段階で応答されたら、その時点で呼出制御は終了し、遅延呼出は実施されない。
【0023】
このように、ユニットUを病棟に対応させれば、子機1の呼出信号を他のユニットU、即ち他の病棟の親機3に送信することができ、患者を病棟を跨いで入院させた場合でも、担当看護師が居る病棟の親機3に呼出信号を送信することができスムーズに対応することが可能となる。
また、複数病棟に設置されたナースコールシステムを1台の制御機4で制御するため安価に構成することが可能となる。
更に、2段階の呼び出しを実施し、最初に担当看護師が居るナースステーションの親機3の呼び出しを実施した後、応答がない場合に他の親機3も追加して呼び出すため、呼び出しに対して応答の無い事態を削減できるし、最初から多数の親機3において呼び出しを報音するような頻繁な呼出動作を削減することができ、看護師はスムーズに業務をこなすことができる。
【0024】
尚、ここでは最初に患者の担当看護師が居る他病棟の親機(主親機)3へ呼出信号を送信し、その後実際に入院している自病棟において遅延呼び出しを実施しているが、遅延呼出を実施する副親機3も主親機3の属する他病棟の親機3としても良い。
【0025】
次に、患者が病棟を跨ぐこと無く自身が診療を受ける病棟に入院した場合に、他病棟の親機3も呼出可能に設定された場合を説明する。図4は情報記憶部に登録されたこの呼び出し形態の一例を示している。図4に示すように、ID「101−2」の子機1が呼出操作されると、主親機IDが「1−3」、副親機IDが「1−1」、「3−2」の2台であるため、制御機4はID「1−3」,「3−2」,「1−1」の3台の親機3に呼出信号を送信制御を行う。また、呼出遅延時間は、同一ユニットU内の場合10秒、ユニットUを跨ぐ呼び出しの場合20秒に設定されている。
【0026】
具体的に、まず主親機3である同一ユニットのID「1−3」の親機3に呼出信号が送信され、その後10秒が経過したら、同一ユニットUである第1ユニットU1のID「1−1」の親機3に対して呼出信号が送信され、追加呼び出しが実施される。
更に、20秒が経過しても応答が無ければユニットUを跨いで副親機3である第3ユニットU3のID「3−2」の親機3に呼出信号を送信して更に追加呼び出しが実施される。
【0027】
このように、ユニットUを病棟に対応させれば、患者が自身の診療科の病棟に入院した場合でも、遅延呼出を自病棟の親機3に加えて他病棟に対して実施しても良い。自病棟において応答が無い場合は、他病棟でも呼び出しを実施することで応答されない事態を削減できる。
そして、同一病棟内で遅延呼び出しする場合に比べて病棟を跨いで呼び出しする場合の遅延時間を長くしたことで、最初に呼び出しした病棟内でまず呼び出しを拡大するため、病棟内でできるだけ応答処理させるよう制御する。よって、他病棟まで呼び出しを拡大するよう制御しても、そのような事態を少なくでき看護師の負担を軽減できる。
【0028】
尚、上記呼び出しは、最初に呼び出す主親機3を1台、遅延呼び出しする副親機を2台としたが、どちらの呼び出しも台数は任意である。
また上記実施形態では、1病棟を1ユニットに対応させて説明したが、2ユニットを1病棟に配置しても良いし、逆に1ユニットを複数病棟に亘って配置しても良い。
【符号の説明】
【0029】
1・・ナースコール子機、3・・ナースコール親機、4・・制御機、41・・情報記憶部(呼出先情報記憶部)、42・・制御機CPU(呼出制御部)、U・・ユニット。
図1
図2
図3
図4