特許第6292804号(P6292804)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6292804
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】車両用操舵ハンドル
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/06 20060101AFI20180305BHJP
   B62J 6/00 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   B62D1/06
   B62J6/00 K
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-187800(P2013-187800)
(22)【出願日】2013年9月11日
(65)【公開番号】特開2015-54564(P2015-54564A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081433
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】岡村 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】多々良 直樹
【審査官】 粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/041002(WO,A1)
【文献】 特開2013−154866(JP,A)
【文献】 特表2006−521954(JP,A)
【文献】 実開昭51−011526(JP,U)
【文献】 実開昭60−182244(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0163863(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00−28
B62J 6/00
B60Q 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二輪車の操舵ハンドルの左右両端近傍部位にそれぞれ配設された照明手段と、前記操舵ハンドルの左右のグリップ部に配設されて運転者がグリップを握っている状態を検出するグリップセンサーと、前記グリップセンサーの検出出力に基づいて前記照明手段の点灯状態を制御する制御手段を備え、前記制御手段は前記グリップセンサーの検出出力に基づいて前記照明手段の点灯制御を行い、前記照明手段は点灯したときに前記操舵ハンドルの前方から運転者側までの広い領域を照明するように構成されていることを特徴とする車両用操舵ハンドル。
【請求項2】
前記二輪車の運転状態を検出する検出手段をさらに備えており、前記制御手段は当該検出手段の検出出力に基づいて前記照明手段の点灯、消灯、ないしは点滅を制御する請求項1に記載の車両用操舵ハンドル。
【請求項3】
前記操舵ハンドルには、前記照明手段の点消灯と関連して駆動されて当該操舵ハンドルを振動させる振動手段を備える請求項1に記載の車両用操舵ハンドル。
【請求項4】
前記二輪車の運転状態を検出する検出手段をさらに備えており、前記制御手段は当該検出手段の検出出力に基づいて前記照明手段の点灯、消灯、ないしは点滅と、前記振動手段の駆動制御を行う請求項3に記載の車両用操舵ハンドル。
【請求項5】
前記運転状態は、前記二輪車の車両情報及び道路情報等の各種情報、車線逸脱状態、前後車両との車間距離、車両の速度と加速度、交差点および曲路を含む道路状況の各状態を含む請求項2又は4に記載の車両用操舵ハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の操舵ハンドルに関し、特に車両乗員に対する注意喚起機能を備えた照明装置を備えた車両用操舵ハンドルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の安全運転の補助のために、操舵ハンドル(ステアリングホイール)の一部に表示装置を配設した技術が提案されている。特許文献1では、ステアリングホイールの円環状をしたリム部の円周一部に表示部を組み込み、車両の速度やエンジン回転数等の運転情報を表示する技術が提案されている。特許文献2では、ステアリングコラムに配置した照射光表示手段によってステアリングホイールの上部に車両情報を表示するようにした技術が提案されている。この車両情報として、車線維持装置、車線逸脱警報装置、駐車支援装置、ナビゲーション装置、計器盤上の情報が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−241275号公報
【特許文献2】特開2008−150029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2はいずれも車両情報を表示する表示手段をステアリングホイールやその近傍に配置する技術であり、運転者が表示手段を視認することを前提としたものである。そのため、運転者が運転中に集中力を欠いているような場合、例えば眠気を感じている状態のように表示手段に注意が向けられていない状況のときには、表示手段での表示機能が発揮されず、安全運転が確保できない場合がある。また、特許文献1,2の表示手段はいずれも車両情報を表示するためのものであり、本来は計器盤での表示で十分であると考えたときには、表示手段を配設することによるステアリングホイールのコストアップは受け入れ難いものとなる。
【0005】
本発明の目的は、車両のステアリングホイール等の操舵ハンドルに照明手段を配設し、この照明手段を利用して運転者に対する警告を行うことにより安全運転を確保する操舵ハンドルを提供するものである。また、本発明は費用対効果に優れた低コストの操舵ハンドルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、二輪車の操舵ハンドルの左右両端近傍部位にそれぞれ配設された照明手段と、操舵ハンドルの左右のグリップ部に配設されて運転者がグリップを握っている状態を検出するグリップセンサーと、グリップセンサーの検出出力に基づいて照明手段の点灯状態を制御する制御手段を備え、制御手段はグリップセンサーの検出出力に基づいて照明手段の点灯制御を行い、照明手段は点灯したときに操舵ハンドルの前方から運転者側までの広い領域を照明するように構成される。また、本発明においては、操舵ハンドルには、照明手段の点灯と関連して駆動されて操舵ハンドルを振動させる振動手段を備えるようにしてもよい。
【0007】
本発明は、二輪車の運転状態を検出する検出手段を備えており、制御手段は当該検出手段の検出出力に基づいて照明ユニットの点灯、消灯、ないしは点滅を制御することが可能な構成とすることが好ましい。
【0008】
本発明は、二輪車の運転状態を検出する検出手段を備えており、制御手段は当該検出手段の検出出力に基づいて照明手段の点灯制御と振動手段の駆動制御を行う構成とすることが好ましい。例えば、検出手段が検出する運転状態として、車線逸脱状態、前後車両との車間距離、車両の速度と加速度、交差点および曲路を含む道路状況の各状態を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、運転者が操舵ハンドルから手を離したような安全運転に好ましくない状態となったときに、これをグリップセンサーが検出し、制御手段において照明手段を点灯ないし点滅させることにより、運転者に警告を行い、安全運転状態に修正させることが可能になる。また、これとともに振動手段を駆動して操舵ハンドルを振動させることで、その振動を運転者が感知し、あるいは振動に伴って操舵ハンドルから発生する音声を運転者が感知することで警告を行い、安全運転状態を確実に確保することが可能になる。
【0010】
また、本発明によれば、検出手段が自車両の安全運転状態が低下されるような状況を検出したときに、制御手段が照明手段での点消灯や点滅を行い、ないしは振動手段での振動を発生させることで、運転者に当該状態が生じたことの警告を行い、運転者による迅速な安全運転状態の確保が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1のステアリングホイールとこれに接続される車両ECUを含む概念構成図。
図2】実施形態1のステアリングホイールの一部の分解斜視図。
図3】実施形態1の変形例のステアリングホイールの正面図。
図4】実施形態1の異なる変形例のステアリングホイールの正面図とその一部の断面図。
図5】実施形態2のステアリングホイールの正面図とその一部の破断拡大図。
図6】実施形態3の操舵ハンドルの概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明を自動車の操舵ハンドル、すなわちステアリングホイール1に適用した実施形態1の概念構成図である。知られているように、自動車の運転席に設けられたステアリングホイール1は円環状をしたリム部11を備えており、運転者はこのリム部11に手を置いて操舵を行う。リム部11には、円周方向の2箇所、ここでは時計の2時と10時の位置にそれぞれ本発明の照明手段としての照明ユニット2が埋設されており、後述するタイミングで点灯・消灯されるようになっている。また、前記リム部11には、同図に破線で示す本発明の検出手段としてのグリップセンサー(接触センサー)3が配設されており、運転者が手でリム部11を握った状態を検出することが可能とされている。そして、前記照明ユニット2とグリップセンサー3は本発明の制御手段としての車両ECU(電子制御ユニット)100に接続されている。この車両ECU100には、イグニッションスイッチ4が接続されている。また、実施形態1の車両ECU100には、本発明における他の検出手段として、運転者が運転席51に着座したことを検出する着座センサー5と、車両が車線を逸脱したときの信号を出力する車線逸脱監視装置6が接続されている。この車線逸脱監視装置6は公知の技術であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0013】
図2は前記照明ユニット2およびグリップセンサー3の概略構成を示す図であり、前記ステアリングホイール1の一部の部分分解斜視図である。ステアリングホイール1のリム部11には、図1に示したように円周方向の2箇所に照明ユニット2が配設されているが、この照明ユニット2が配設されている箇所おいてリム部11には運転者側に向けて凹部12が形成されており、この凹部12内に前記照明ユニット2が内装されている。この照明ユニット2は、周面一部を開口した筒型のケーシング21を備えており、このケーシング21内に光源としてのLED(発光ダイオード)22が回路基板23に搭載された状態で内装されている。前記ケーシング21の内面は特に表面処理されていなくてもよいが、ここではアルミニウム塗装等の表面処理が施されて光反射面として構成されている。また、前記ケーシング21の開口には透明樹脂からなる断面円弧状のレンズ24が取着されており、このレンズ24は前記リム部11の周面の一部として構成されている。この照明ユニット2は、LED22が発光されたときには、LED22から出射された光は直接、あるいはケーシング21の反射面で反射された上でレンズ24を透過して所定の方向に向けて出射される。ここでは、照明ユニット2は点灯されたときには、ステアリングホイール1に面した運転席ないしその近傍領域に向けて光を出射して当該領域を照明するように構成されている。
【0014】
また、図2に一部のみを示すように、前記グリップセンサー3は薄いリボン状をした所要の長さの感圧センサーで構成されており、前記リム部11の円周方向のほぼ全周にわたって配設されている。この実施形態1では、グリップセンサー3はリム部11の外被を構成しているラバー、レザー、布等の外被材13と一体的に形成されている。このグリップセンサー3は運転者が手でリム部11を握ったときに、その握持力を感知してオンされ、グリップ検出信号を出力する。
【0015】
前記着座センサーは、図1に概念構成を示したように、運転者席51の座部に配設したシート状(薄板状)感圧センサーで構成されており、運転者が運転席に着座したときにこれを感知してオンされ、着座検出信号を出力する。
【0016】
前記車両ECU100は、前記イグニッションスイッチ4がオン・オフされたときのスイッチ信号と、前記グリップセンサー3および着座センサー5からのグリップ検出信号および着座検出信号に基づいて照明ユニット2のLED22の発光を制御して照明ユニット2を点灯・消灯する機能を有している。すなわち、イグニッションスイッチ4がオンされたときには照明ユニット2を点灯可能な状態とし、その上で着座センサー5がオンされたときの着座検出信号に基づいて照明ユニット2を点灯し、グリップセンサー3がオンされたときのグリップ検出信号に基づいて照明ユニット2を消灯する。また、前記車線逸脱監視装置6から車線を逸脱した信号が入力されたときには、前記2つの照明ユニット2の一方のみを強制的に点灯あるいは点滅する機能も有している。
【0017】
実施形態1によれば、運転者が自動車に乗り込んで運転席に着座すると着座センサー5がオンされる。その後にイグニッションスイッチ4をオンにすると、車両ECU100は照明ユニット2のLED22を発光し、照明ユニット2が点灯して照明が行われる。この照明により運転席およびその近傍が照明される。特に、照明ユニット2から出射された光の一部は運転者の足元から運転者の顔に至るまでの領域を照明する。この照明により、運転者がシートベルトを装着する操作や、IDカード等を機器に装着する操作、さらに身の回りの確認等が容易になる。その一方で、照明ユニット2の点灯によって運転者は眩しさを感じることになるが、運転者が運転を開始すべくステアリングホイール1のリム部11を握るとグリップセンサー3がオンされ、照明ユニット2は消灯される。これにより、運転者が眩しさを感じることはなくなり、通常の運転が可能になる。したがって、運転者が運転を開始するまでに前記した一連の操作を行うために、別途ルームランプ、特に読書灯等を手操作で点灯し、その後に消灯させる作業が不要になる。
【0018】
自動車の走行時での運転状態において、運転者がステアリングホイール1を正しく握っていれば照明ユニット2が点灯されることはない。しかし、運転状態において運転者が居眠りを始め、あるいはその他の運転に集中できない状態になると、運転者によるリム部11のグリップ力が低下され、グリップセンサー3がオフになる。車両ECU100がこの状態を検知すると、照明ユニット2は点灯され、照明ユニット2から出射した光が運転者の顔に照射される状態となる。これにより、運転者は照明ユニット2の光で眩しさを感じ、すなわち運転者は注意喚起されて、ステアリングホイール1の正しい操舵操作が行われていない状態であることを認識し、直ちにステアリングホイール1を正しく握る等の適切な操作を行い安全運転状態を確保することになる。この照明ユニット2の点灯は、助手席の乗員や他の乗員も気がつき易く、これらの乗員によって運転者に注意を喚起させることも可能となる。このとき、照明ユニット2を点滅させることによって、運転者等に注意の緊急性を感じさせるようにしてもよい。
【0019】
また、運転中の照明ユニット2が消灯されている状態のときに運転者がステアリングホイール1を握ってはいるが居眠り状態となり、あるいは脇見運転状態となって車線を逸脱する状態になると、車両ECU100は車線逸脱監視装置6からの車線逸脱信号を受けて、照明ユニット2を強制的に点滅させる。この点滅により運転者は自車両が車線を逸脱する状況にあることを認識し、操舵を修正する。このとき、車両ECU100はリム部11に設けられている2つの照明ユニット2のうち、操舵を修正すべくステアリングホイール1を回動する方向側の照明ユニット2のみを点灯させるようにすれば、運転者は点灯された照明ユニット2を認識することによってその方向に操舵を行うことが示唆されることになり、確実に車線の逸脱を回避し、あるいは安全状態を確保することが可能になる。車両の進行方向が修正されて車線逸脱監視装置6からの監視信号が正常に戻ると車両ECU100は照明ユニット2を消灯する。
【0020】
このように、実施形態1によれば、運転者がステアリングホイール1から手を離したような安全運転に好ましくない状態となったときに、これをグリップセンサー3が検出し、車両ECU100によって照明ユニット2を点灯ないし点滅させて、運転者に警告を行い、安全運転状態を確保することが可能になる。すなわち、本発明においては、照明ユニット2は運転席ないしその近傍を照明する機能を備えることは勿論のこと、当該照明ユニット2を利用して安全運転に好ましくない状態であることを運転者に警告する機能をも備えることになり、照明ユニット2の多機能化を実現し、照明ユニット2ないしステアリングホイール1の費用対効果を高めることも可能になる。
【0021】
図3(a)は実施形態1の照明ユニットの変形例を示すステアリングホイールの正面図であり、図1と等価な部分には同一符号を付してある。なお、グリップセンサーの図示は省略している。この変形例では、車線逸脱を警告する際に照明ユニット2が点灯したときのステアリングホイール1の回転方向を運転者に示唆する方向を明確にするために、照明ユニット2Aの発光面、すなわち図2に示したレンズ24を矢印形状に形成している。点灯したときにレンズ24が矢印型に発光するため、ステアリングホイール1を当該矢印方向に回転操作することで車線の逸脱を回避することができる。このとき、照明ユニット2Aを点滅させるようにしてもよく、さらにステアリングホイール1の回転操作に必要とされる回転量に応じて照明ユニット2Aの点滅周期を変化させるようにしてもよい。例えば、必要とされる回転量が多いときには点滅周期を速くし、少ないときには点滅周期を遅くすればよい。
【0022】
あるいは、図3(b)のように、リム部11に配設する左右の照射ユニット2Bとして、小型の矢印形状の発光面を有する複数個、ここではそれぞれ3個の照射ユニット2Bをリム部11に沿って配列するようにしてもよい。点灯する際には3個の照射ユニット2Bを同時に点灯するが、車線逸脱の警告時には3個の照射ユニット2Bを順序的に点灯することにより、ステアリングホイール1の回転操作方向をより明確に示唆することができる。このとき、照明ユニット2Bの点灯個数を変化させるようにしてもよい。例えば、車線逸脱状態から復帰するのに必要とされるステアリングホイール1の回転量が多いときには点灯個数を多くし、少ないときには点灯個数を少なくすればよい。なお、図3の照明ユニット2A,2Bでのステアリングホイール1の回転の示唆方向は、図1の照明ユニット2の場合とは反対方向となっているが、これは任意の方向に設計することが可能である。
【0023】
図4はステアリングホイールのさらに異なる変形例の正面図とその一部の拡大断面図であり、実施形態1と等価な部分には同一符号を付してある。この変形例では、ステアリングホイール1の下部に1つの照明ユニット2Cを配置し、この照明ユニット2Cの左右にリム部11に沿ってそれぞれ円弧状の導光体25を配設している。照明ユニット2Cはケーシング21内にLED22が配設され、レンズ24が装着されている構成は実施形態1と同じであるが、LED22はレンズ24に向けられた主LED22とは別に左右方向に向けられた副LED22aが内装されており、これらのLED22,22aは車両ECU100によってそれぞれ選択的に発光するように構成されている。そして、前記各導光体25の対向する側の端部を照明ユニット2Cにまで延長配置し、前記副LED22aと光学的に連結した構成とされている。
【0024】
この変形例では、主LED22を発光したときには、出射される光はレンズ24を透過されて出射され、運転者に対する照明を行うようにする。左右の副LED22aを発光したときには、出射される光はそれぞれ導光体25に入射され、各導光体25の側面から出射された光により照明を行う。この照明ユニット2Cでは、運転者ないし運転席の領域を照明する際には主LED22を発光させて照明ユニット2Cを点灯状態とする。また、運転者に対して警告を行う際には、照明ユニット22Cを点灯させ、運転者の顔に向けて光を照射する。また、これに加えて、特に車線逸脱の警告を行う際には、左右いずれかの副LED22aを発光させて、対応する側の導光体25から光を出射させることにより、運転者に対して車線逸脱を警告すると同時に、これを回避するためのステアリングホイール1の回転方向を示唆することになる。この場合においても、発光する側の導光体25を点滅させるようにしてもよい。
【0025】
(実施形態2)
図5は実施形態2のステアリングホイールの正面図とその一部の拡大破断面図である。実施形態1と等価な部分には同一符号を付してある。実施形態2ではステアリングホイール1の2箇所に配設した照明ユニット2Dは、それぞれのケーシング21内に、本発明の振動手段としての振動ユニット7を内蔵している。すなわち、ケーシング21内にはLED22と共に振動ユニット7が内装され、レンズ24によって封止されている。この振動ユニット7は、例えばコイル体に通電したときに発生する磁界変化に伴って振動子が往復動作される、いわゆるバイブレータとして構成されたものである。あるいは、電圧を印加することにより振動する圧電素子や磁歪素子を用いてもよい。この振動ユニット7が振動することにより、ケーシング21を介してリム部11ないしステアリングホイール1の全体が共振されるようになっている。この振動ユニット7は図1に鎖線で示すように前記車両ECU100に接続され、照明ユニット2DのLED22による発光と同時に、あるいは個別に通電されて振動するように構成されている。
【0026】
この実施形態2では、運転者による正しい運転状態のときには照明ユニット2Dは点灯せず、振動ユニット7の振動されることはない。運転者が居眠り等をしてステアリングホイール1から手が離れ、あるいは握っていない状態のときに、実施形態1と同様に、車両ECU100は照明ユニット2Dを点灯あるいは点滅する。また、これと同時に車両ECU100は振動ユニット7を駆動する。これにより、照明ユニット2Dによる注意喚起とともに、振動ユニット7の振動により発生するステアリングホイール1の振動により、さらにはステアリングホイール1が振動したときに発生する音声によっても運転者に注意を喚起することができる。車線を逸脱する警告の際には、必ず振動ユニット7を駆動することによりステアリングホイール1を握っている運転者の手に振動を伝え、運転者による操舵方向の確認を行わせることになる。このとき、操舵方向側の照明ユニット2Dの振動ユニット7のみを駆動することで、運転者が振動する側に操舵を行うようにするための操舵支援を行い、車線逸脱を確実に回避することが可能になる。
【0027】
実施形態2のように、ステアリングホイール1に振動ユニット7を配設する構成は、図3および図4に示した変形例のステアリングホイール1の各照明ユニット2B,2Cにも適用することが可能である。特に、図4に示したステアリングホイール1の場合には、下部に配設した照明ユニット2Cに1つの振動ユニットを配設するようにしてもよい。あるいは、このような振動ユニット7を備えるステアリングホイールの場合には、照明ユニット2はステアリングホイールの1箇所、例えば上部の一部にのみ配設してもよい。
【0028】
実施形態1,2では、本発明における運転情報として、運転者がステアリングホイールを握っていない運転情報、車線逸脱のおそれがある運転情報を適用し、これらの運転情報に基づいて運転者に対して注意喚起を行っているが、本発明の運転情報の検出手段の他の例として、車両ECU100に種々の監視装置を接続して、当該監視装置で検出する車両情報や道路情報等の運転情報に基づいて注意喚起を行うように構成してもよい。例えば、図1に破線で示すように、車両ECU100にナビゲーション装置8を接続し、当該ナビゲーション装置8から得られる交差点や曲がり角等の道路情報に対応する右左折等の運転情報に際しての注意喚起のために照明ユニット2を点灯しあるいは振動ユニット7を振動させてもよい。あるいは、図示は省略するが、自車両の車体の前後に超音波センサーを配設し、この超音波センサーを車間距離センサーとして前走車や後続車との車間距離を検出するようにし、この車間距離が短くなったときの注意喚起のために車両ECU100において照明ユニット2の点灯制御や振動ユニット7の振動制御を行うようにしてもよい。さらに、車載カメラで撮像した画像から得られる歩行者情報、特に路肩に存在する歩行者や道路を横断中の歩行者を検知したときにも同様に注意喚起のために照明ユニット2の点灯制御や振動ユニット7の振動制御を行うようにしてもよい。
【0029】
(実施形態3)
本発明は二輪車、例えば自動二輪車(オートバイ)の操舵ハンドルに適用してもよい。図6に示すように、オートバイの操舵ハンドル1Aの両端近傍部位、すなわち左右のグリップ部13の内側端にそれぞれ照明ユニット2Eが配設されている。この照明ユニット2Eは全体として円環状に形成されており、その外周面にレンズ24が配設されて操舵ハンドル1Aに嵌装されている。この照明ユニット2Eは点灯されたときにはレンズ24の周面から光が出射されるので、操舵ハンドル1Aの前方から運転者側までの広い領域を照明することができるように構成されている。また、当該操舵ハンドル1Aのグリップ部13にはグリップセンサー3Aが配設されており、運転者がグリップ部13を握っているときにオンされるようになっている。前記照明ユニット2Eとグリップセンサー3Aは実施形態1で説明したような車両ECU100に接続されており、この車両ECU100の制御によって点灯状態が制御されるようになっている。
【0030】
オートバイの場合には運転者(乗員)が左右両方のグリップ部13を握らない運転状態になることは少ないため、実施形態3では、オートバイの走行時にグリップ部13が握られてグリップセンサー3Aがオンされたときには、照明ユニット2Eは車両ECU100によって点灯されており、オートバイの直近の前後および左右領域を照明している。また、この照明により照明ユニット2Eは自車両の左右端を示すクリアランスランプ(車幅灯)としても機能する。一方、何らかの事情で運転者がグリップ部13から手を離すと、離した側の照明ユニット2Eが消灯されて操作ハンドル1Aのグリップ部13が暗くなるので、運転者に不安感を生じさせ、運転者に対して正しくグリップ部13を握るように注意喚起することになる。また、運転者の脇見運転によって車線を逸脱するおそれが生じたような場合には、車両ECU100によって逸脱する方向の照明ユニット2Eを点滅させることで運転者に車線逸脱を防止する操作を行うための注意喚起をする。勿論、これ以外にも、自車両が前走車に接近したとき、あるいは後続車が接近してきたとき、さらには自車両を急加速あるいは急減速したようなときにも照明ユニット2Eを点滅して運転者に対する注意喚起を行うようにしてもよい。
【0031】
実施形態1,2,3に記載した運転者に対する注意喚起は一例であり、車両の運転中における種々の状況に応じて運転者に対する注意喚起する必要が生じたときには、照明ユニットの点灯、消灯、および点滅の制御、またこれらに加えて振動ユニットでの振動制御によって注意喚起するように構成すればよい。例えば、車載カメラで撮像した画像に基づいて運転者の脇見運転を検出したとき、自車両の前方に歩行者、自転車、道路設置物等の障害物を検出したとき等、安全走行の障害になるような場合に照明ユニットや振動ユニットを駆動するようにすればよい。さらに、車速センサーや加速度センサーに基づいて自車両の車速が所定以上となったとき、あるいは急加速や急減速時に照明ユニットを点滅させることで、運転者に安全を確保するための注意喚起を行うようにしてもよい。
【0032】
本発明における照明ユニットの構成は実施形態の構成に限られるものではなく、照明ユニットによって操舵ハンドルを含む領域の照明を行う一方で、点灯あるいは消灯したことを運転者が認識し、これらの点灯または消灯によって運転者が正常でない運転状態を認識することが可能となる構成であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は車両の操舵を行うための操舵ハンドルで、特に照明手段を備えた操舵ハンドルに適用することが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1,1A 操舵ハンドル(ステアリングホイール)
2,2A〜2E 照明ユニット(照明手段)
3,3A グリップセンサー(検出手段)
4 イグニッションスイッチ
5 着座センサー(検出手段)
6 車線逸脱監視装置(検出手段)
7 振動ユニット(振動手段)
8 ナビゲーション装置(検出手段)
11 リム部
21 ケーシング
22,22a LED
24 レンズ
100 車両ECU(制御手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6