特許第6292808号(P6292808)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6292808
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】接着剤、及び発光装置
(51)【国際特許分類】
   C09J 163/00 20060101AFI20180305BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20180305BHJP
   C09J 133/08 20060101ALI20180305BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20180305BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20180305BHJP
   H01L 33/48 20100101ALI20180305BHJP
【FI】
   C09J163/00
   C09J11/06
   C09J133/08
   C09J9/02
   H01B1/22 D
   H01L33/48
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-190129(P2013-190129)
(22)【出願日】2013年9月13日
(65)【公開番号】特開2015-54942(P2015-54942A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(72)【発明者】
【氏名】青木 正治
(72)【発明者】
【氏名】蟹澤 士行
(72)【発明者】
【氏名】波木 秀次
(72)【発明者】
【氏名】小山 太一
(72)【発明者】
【氏名】石神 明
【審査官】 澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−000520(JP,A)
【文献】 特開2005−146038(JP,A)
【文献】 特開2008−214449(JP,A)
【文献】 特開平09−291267(JP,A)
【文献】 特開平11−140388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
H01B 1/20− 1/24
H01L 33/00− 33/64
H01R 11/01
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂環式エポキシ化合物、水素添加ビスフェノールA型エポキシ化合物、又は水素添加ビスフェノールF型エポキシ化合物と、カチオン触媒と、重量平均分子量が50000〜900000のアクリル樹脂とを含有し、
前記アクリル樹脂が、0.5〜10wt%のアクリル酸と、0.5〜10wt%のヒドロキシル基を有するアクリル酸エステルとの重合物であり、
前記アクリル樹脂の含有量が、前記エポキシ樹脂100質量部に対して1〜10質量部である接着剤。
【請求項2】
前記ヒドロキシル基を有するアクリル酸エステルが、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピルからなる群から選択される1種以上である請求項記載の接着剤。
【請求項3】
前記アクリル樹脂が、アクリル酸ブチルと、アクリル酸エチルと、アクリル酸ニトリルとから選択される1種以上のアクリル酸エステルとの重合物である請求項1又は2記載の接着剤。
【請求項4】
前記カチオン触媒が、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤である請求項1乃至のいずれか1項に記載の接着剤。
【請求項5】
導電性粒子を含有する請求項1乃至のいずれか1項に記載の接着剤。
【請求項6】
アルミニウムからなる配線パターンを有する基板と、
前記配線パターンの電極上に形成された異方性導電膜と、
前記異方性導電膜上に実装された発光素子とを備え、
前記異方性導電膜が、脂環式エポキシ化合物、水素添加ビスフェノールA型エポキシ化合物、又は水素添加ビスフェノールF型エポキシ化合物と、カチオン触媒と、重量平均分子量が50000〜900000のアクリル樹脂と、導電性粒子とを含有し、前記アクリル樹脂が、0.5〜10wt%のアクリル酸と、0.5〜10wt%のヒドロキシル基を有するアクリル酸エステルとの重合物であり、前記アクリル樹脂の含有量が、前記エポキシ樹脂100質量部に対して1〜10質量部である異方性導電接着剤の硬化物である発光装置。
【請求項7】
透明導電膜からなる配線パターンを有する透明基板と、
前記配線パターンの電極上に形成された異方性導電膜と、
前記異方性導電膜上に実装された発光素子とを備え、
前記異方性導電膜が、脂環式エポキシ化合物、水素添加ビスフェノールA型エポキシ化合物、又は水素添加ビスフェノールF型エポキシ化合物と、カチオン触媒と、重量平均分子量が50000〜900000のアクリル樹脂と、導電性粒子とを含有し、前記アクリル樹脂が、0.5〜10wt%のアクリル酸と、0.5〜10wt%のヒドロキシル基を有するアクリル酸エステルとの重合物であり、前記アクリル樹脂の含有量が、前記エポキシ樹脂100質量部に対して1〜10質量部である異方性導電接着剤の硬化物である発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品同士を電気的に接続する接着剤に関し、特にLED(Light Emitting Diode)等の発光素子と配線基板とを接続する接着剤、及び発光素子と配線基板とが接続された発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LED等のチップ部品を回路基板に実装する手法として、エポキシ系接着剤に導電性粒子を分散させ、フィルム状に成形した異方性導電フィルム(ACF:Anisortropic Conductive Film)を使用し、フリップチップ実装する方法が広く採用されている(例えば、特許文献1、2参照。)。この方法によれば、チップ部品と回路基板との間の電気的接続が、異方性導電フィルムの導電性粒子で達成されるため、接続プロセスを短くすることができ、生産効率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−24301号公報
【特許文献2】特開2012−186322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年のLED製品の中には、低コスト化のため、回路基板の配線の金属をAu、AgからAl、Cuに変更したものや、PET(Polyethylene terephthalate)基材上にITO(Indium Tin Oxide)配線が形成された透明基板を用いたものがある。
【0005】
しかしながら、Al、Cu等の金属配線やITO配線の表面には、不導態、酸化被膜などの酸化膜が形成されているため、従来のエポキシ系接着剤では、接着が困難であった。
【0006】
本発明は、上述した従来技術における課題を解決するものであり、酸化膜に対して優れた接着性を有する接着剤、及びこれを用いた発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明に係る接着剤は、脂環式エポキシ化合物、水素添加ビスフェノールA型エポキシ化合物、又は水素添加ビスフェノールF型エポキシ化合物と、カチオン触媒と、重量平均分子量が50000〜900000のアクリル樹脂とを含有し、前記アクリル樹脂が、0.5〜10wt%のアクリル酸と、0.5〜10wt%のヒドロキシル基を有するアクリル酸エステルとの重合物であり、前記アクリル樹脂の含有量が、前記エポキシ樹脂100質量部に対して1〜10質量部であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る発光装置は、アルミニウムからなる配線パターンを有する基板と、前記配線パターンの電極上に形成された異方性導電膜と、前記異方性導電膜上に実装された発光素子とを備え、前記異方性導電膜が、脂環式エポキシ化合物、水素添加ビスフェノールA型エポキシ化合物、又は水素添加ビスフェノールF型エポキシ化合物と、カチオン触媒と、重量平均分子量が50000〜900000のアクリル樹脂と、導電性粒子とを含有し、前記アクリル樹脂が、0.5〜10wt%のアクリル酸と、0.5〜10wt%のヒドロキシル基を有するアクリル酸エステルとの重合物であり、前記アクリル樹脂の含有量が、前記エポキシ樹脂100質量部に対して1〜10質量部である異方性導電接着剤の硬化物であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る発光装置は、透明導電膜からなる配線パターンを有する透明基板と、前記配線パターンの電極上に形成された異方性導電膜と、前記異方性導電膜上に実装された発光素子とを備え、前記異方性導電膜が、脂環式エポキシ化合物、水素添加ビスフェノールA型エポキシ化合物、又は水素添加ビスフェノールF型エポキシ化合物と、カチオン触媒と、重量平均分子量が50000〜900000のアクリル樹脂と、導電性粒子とを含有し、前記アクリル樹脂が、0.5〜10wt%のアクリル酸と、0.5〜10wt%のヒドロキシル基を有するアクリル酸エステルとの重合物であり、前記アクリル樹脂の含有量が、前記エポキシ樹脂100質量部に対して1〜10質量部である異方性導電接着剤の硬化物であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アクリル酸と、ヒドロキシル基を有するアクリル酸エステルとを含むアクリル樹脂を配合することにより、酸化膜に対して硬化物全体で接着することができ、優れた接着力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】エポキシ化合物を海、及びアクリル樹脂を島としたときの海島モデルを示す断面図である。
図2】発光装置の一例を示す断面図である。
図3】90度剥離強度試験の概要を示す断面図である。
図4】LED実装サンプルの作製工程を説明するための図である。
図5】ダイシェア強度試験の概要を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態(以下、本実施の形態と称する。)について、図面を参照しながら下記順序にて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
1.接着剤
2.発光装置
3.実施例
【0013】
<1.接着剤>
本発明が適用された接着剤は、脂環式エポキシ化合物又は水素添加エポキシ化合物と、カチオン触媒と、重量平均分子量が50000〜900000のアクリル樹脂とを含有し、アクリル樹脂が、0.5〜10wt%のアクリル酸と、0.5〜10wt%のヒドロキシル基を有するアクリル酸エステルとを含むものである。
【0014】
図1は、接着剤と酸化膜との界面において、エポキシ化合物を海、アクリル樹脂を島としたときの海島モデルを示す断面図である。この海島モデルは、エポキシ化合物の海12に分散したアクリル樹脂の島13が、配線11の酸化膜11a上に接した状態を示す硬化物モデルである。
【0015】
この硬化物モデルにおいて、アクリル樹脂中のアクリル酸は、エポキシ化合物と反応し、アクリル樹脂の島13とエポキシ化合物の海12との繋がりを生じさせるとともに、酸化膜11aの表面を荒らしてエポキシ化合物の海12とのアンカー効果を強める。また、アクリル樹脂中のヒドロキシル基を有するアクリル酸エステルは、ヒドロキシル基の極性により配線11に対して静電気的な接着力を得る。このように酸化膜11aに対してアクリル樹脂の島13及びエポキシ化合物の海12の硬化物全体で接着することにより、優れた接着力を得ることができる。
【0016】
脂環式エポキシ化合物としては、分子内に2つ以上のエポキシ基を有するものが好ましく挙げられる。これらは液状であっても、固体状であってもよい。具体的には、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、グリシジルヘキサヒドロビスフェノールA等を挙げることができる。これらの中でも、硬化物にLED素子の実装等に適した光透過性を確保でき、速硬化性にも優れている点から、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートが好ましく使用される。
【0017】
水素添加エポキシ化合物としては、先述の脂環式エポキシ化合物の水素添加物や、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型等の公知の水素添加エポキシ化合物を使用することができる。
【0018】
脂環式エポキシ化合物や水素添加エポキシ化合物は、単独で使用してもよいが、2種以上を併用することができる。また、これらのエポキシ化合物に加えて本発明の効果を損なわない限り、他のエポキシ化合物を併用してもよい。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、ジアリールビスフェノールA、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、クレゾール、テトラブロモビスフェノールA、トリヒドロキシビフェニル、ベンゾフェノン、ビスレゾルシノール、ビスフェノールヘキサフルオロアセトン、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン、ビキシレノール、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどの多価フェノールとエピクロルヒドリンとを反応させて得られるグリシジルエーテル; グリセリン、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、チレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの脂肪族多価アルコールとエピクロルヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエーテル; p−オキシ安息香酸、β−オキシナフトエ酸のようなヒドロキシカルボン酸とエピクロルヒドリンとを反応させて得られるグリシジルエーテルエステル; フタル酸、メチルフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラハイドロフタル酸、エンドメチレンテトラハイドロフタル酸、エンドメチレンヘキサハイドロフタル酸、トリメリット酸、重合脂肪酸のようなポリカルボン酸から得られるポリグリシジルエステル; アミノフェノール、アミノアルキルフェノールから得られるグリシジルアミノグリシジルエーテル; アミノ安息香酸から得られるグリシジルアミノグリシジルエステル; アニリン、トルイジン、トリブロムアニリン、キシリレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、 ビスアミノメチルシクロヘキサン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルスルホンなどから得られるグリシジルアミン; エポキシ化ポリオレフィン等の公知のエポキシ樹脂類が挙げられる。
【0019】
カチオン触媒としては、例えば、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤、イミダゾール系潜在性硬化剤、スルホニウム系潜在性硬化剤などの潜在性カチオン硬化剤を挙げることができる。これらの中でも、速硬化性に優れるアルミニウムキレート系潜在性硬化剤が好ましく使用される。
【0020】
カチオン触媒の含有量は、少なすぎると反応性が無くなり、多すぎると接着剤の製品ライフが低下する傾向があるため、エポキシ化合物100重量部に対し、好ましくは0.1〜30質量部、より好ましくは0.5〜20質量部である。
【0021】
アクリル樹脂は、重量平均分子量が50000〜900000である。図1に示す硬化物モデルにおいて、アクリル樹脂の重量平均分子量は、アクリル樹脂の島13の大きさに相関を示し、アクリル樹脂の重量平均分子量が50000〜900000であることにより、適度な大きさのアクリル樹脂の島13を酸化膜11aに接触させることが可能となる。アクリル樹脂の重量平均分子量が50000未満の場合、アクリル樹脂の島13と酸化膜11aの接触面積が小さくなり、接着力向上の効果が得られない。また、アクリル樹脂の重量平均分子量が900000超の場合、アクリル樹脂の島13が大きくなり、酸化膜11aに対してアクリル樹脂の島13及びエポキシ化合物の海12の硬化物全体で接着している状態とはいえず、接着力が低下する。
【0022】
また、アクリル樹脂は、アクリル酸を0.5〜10wt%含み、より好ましくは1〜5wt%含む。アクリル樹脂中にアクリル酸が0.5〜10wt%含まれることにより、エポキシ化合物との反応によりアクリル樹脂の島13とエポキシ化合物の海12との繋がりが生じるとともに、酸化膜11aの表面が荒れてエポキシ化合物の海12とのアンカー効果が強まる。
【0023】
また、アクリル樹脂は、ヒドロキシル基を有するアクリル酸エステルを0.5〜10wt%含み、より好ましくは1〜5wt%含む。アクリル樹脂中にヒドロキシル基を有するアクリル酸エステルが0.5〜10wt%含まれることにより、ヒドロキシル基の極性により配線11に対して静電気的な接着力が得られる。
【0024】
ヒドロキシル基を有するアクリル酸エステルとしては、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等を挙げることができる。これらの中でも、酸化膜に対する接着性に優れるメタクリル酸2−ヒドロキシエチルが好ましく使用される。
【0025】
また、アクリル樹脂は、アクリル酸及びヒドロキシル基を有するアクリル酸エステル以外に、ヒドロキシ基を有さないアクリル酸エステルを含む。ヒドロキシ基を有さないアクリル酸エステルとしては、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ニトリル等を挙げることができる。
【0026】
また、アクリル樹脂の含有量は、エポキシ化合物100質量部に対して1〜10質量部であることが好ましく、1〜5質量部であることがより好ましい。アクリル樹脂の含有量がエポキシ化合物100質量部に対して1〜10質量部であることにより、アクリル樹脂12の島が、エポキシ樹脂13の海に良好な密度で分散した硬化物を得ることが可能となる。
【0027】
また、本発明が適用された接着剤は、他の成分として、無機材料との界面における接着性を向上させるため、シランカップリング剤をさらに含有してもよい。シランカップリング剤としては、エポキシ系、メタクリロキシ系、アミノ系、ビニル系、メルカプト・スルフィド系、ウレイド系等が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、本実施の形態では、エポキシ系シランカップリング剤が好ましく用いられる。
【0028】
また、接着剤は、流動性を制御し、粒子捕捉率を向上させるため、無機フィラーを含有してもよい。無機フィラーとしては、特に限定されないが、シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム等を用いることができる。このような無機フィラーは、接着剤によって接続される接続構造体の応力を緩和させる目的によって適宜用いることができる。また、熱可塑性樹脂、ゴム成分等の柔軟剤等を配合してもよい。
【0029】
このような接着剤によれば、アルミニウム等の難接着金属に対し、高い接着力を得ることができる。
【0030】
また、接着剤は、導電性粒子を含有する異方性導電接着剤であってもよい。導電性粒子としては、公知の導電性粒子を用いることができる。例えば、ニッケル、鉄、銅、アルミニウム、錫、鉛、クロム、コバルト、銀、金等の各種金属や金属合金の粒子、金属酸化物、カーボン、グラファイト、ガラス、セラミック、プラスチック等の粒子の表面に金属をコートしたもの、これらの粒子の表面に更に絶縁薄膜をコートしたもの等が挙げられる。樹脂粒子の表面に金属をコートしたものである場合、樹脂粒子としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ジビニルベンゼン系樹脂、スチレン系樹脂等の粒子を用いることができる。
【0031】
導電性粒子の平均粒径としては、通常1〜10μm、より好ましくは2〜6μmである。また、接着剤成分中の導電性粒子の平均粒子密度は、接続信頼性及び絶縁信頼性の観点から、好ましくは1000〜100000個/mm、より好ましくは30000〜80000個/mmである。
【0032】
このような異方性導電接着剤によれば、酸化膜を有するアルミニウム配線やITO配線に対し、優れた接続信頼性を得ることができる。
【0033】
<2.発光装置>
次に、本発明を適用した発光装置について説明する。図2は、発光装置の一例を示す断面図である。発光装置は、配線パターン22を有する基板21と、配線パターン22の電極上に形成された異方性導電膜30と、異方性導電膜30上に実装された発光素子23とを備え、異方性導電膜30が、前述した異方性導電接着剤の硬化物からなる。この発光装置は、基板21上の配線パターン22と、発光素子23としてLED素子のn電極24とp電極25とのそれぞれに形成された接続用のバンプ26との間に、前述の異方性導電接着剤を塗布し、基板21と発光素子23とをフリップチップ実装することにより得られる。
【0034】
本実施の形態では、前述した異方性導電接着剤を用いることにより、アルミニウムからなる配線パターンを有する基板を好適に用いることができる。これにより、LED製品の低コスト化を図ることができる。
【0035】
また、ITO等の透明導電膜からなる配線パターンを有する透明基板を好適に用いることができる。これにより、例えばPET(Polyethylene terephthalate)基材上にITO(Indium Tin Oxide)配線が形成された透明基板にLEDを実装することができる。
【0036】
なお、必要に応じて、LED素子23の全体を覆うように透明モールド樹脂で封止してもよい。また、LED素子23に光反射層を設けてもよい。また、発光素子としては、LED素子の他、本発明の効果を損なわない範囲で公知の発光素子を使用することができる。
<3.実施例>
【実施例】
【0037】
以下、本発明の実施例について説明する。本実施例では、各種の異方性導電接着剤を作製し、色、全反射率、及びピール強度について評価した。また、異方性導電接着剤を用いて基板上にLEDチップを搭載させてLED実装サンプルを作製し、ダイシェア強度、及び導通抵抗について評価した。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
[色の評価]
異方性導電接着剤をセラミックからなる白色板上に厚さ100μmとなるように塗布し、180℃−30sec加熱して硬化させた。得られた硬化物について、色度計を用いて白色度(JIS P 8148)を測定した。白色度が70%以上のものを「白色」と評価し、白色度が70%未満の場合、目視により色を評価した。
【0039】
[全反射率の測定]
異方性導電接着剤をセラミックからなる白色板上に厚さ100μmとなるように塗布し、180℃−30sec加熱して硬化させた。得られた硬化物について、分光光度計((株)島津製作所製 UV3100)を用いて硫酸バリウムを標準とした波長460nmの光に対する全反射率(鏡面反射及び拡散反射)を測定した。また、100℃、1000hの条件の耐熱試験後の硬化物についても、波長460nmの光に対する全反射率を測定した。なお、光反射率は、実用上、30%超であることが望ましい。
【0040】
[ピール強度の測定]
異方性導電接着剤をセラミックからなる白色板上に厚さ100μmとなるように塗布し、1.5mm×10mmのアルミ片を180℃−1.5N−30secの条件で熱圧着し、接合体を作製した。
【0041】
図3に示すように、テンシロンを用いて、接合体のアルミ片を引っ張り速度50mm/secで90°Y軸方向に引き剥がし、その引き剥がしに要したピール強度の最大値を測定した。
【0042】
[LED実装サンプルの作製]
図4に示すように、LED実装サンプルを作製した。50μmピッチの配線基板(50μmAl配線−25μmPI(ポリイミド)層−50μmAl土台)51をステージ上に複数配列し、各配線基板51上に異方性導電接着剤50を約10μg塗布した。異方性導電接着剤50上に、Cree社製LEDチップ(商品名:DA3547、最大定格:150mA、サイズ:0.35mm×0.46mm)52を搭載し、熱加圧ツール53を用いてフリップチップ実装し、LED実装サンプルを得た。
【0043】
また、実施例5では、配線基板として、50μmピッチのITO配線が形成された配線基板(50μmITO配線−25μmPI(ポリイミド)層−50μmAl土台)を用いた。
【0044】
[ダイシェア強度の測定]
図5に示すように、ダイシェアテスターを用いて、ツール54のせん断速度20μm/sec、25℃の条件で各LED実装サンプルの接合強度を測定した。
【0045】
[導通抵抗の評価]
各LED実装サンプルの初期、冷熱サイクル試験(TCT)後、100℃−1000時間の環境試験後、及び60℃−90%RH−500時間の環境試験後の導通抵抗を測定した。冷熱サイクル試験は、LED実装サンプルを、−40℃及び100℃の雰囲気に各30分間曝し、これを1サイクルとする冷熱サイクルを100、500、1000サイクル行い、それぞれについて導通抵抗を測定した。導通抵抗の評価は、If=50mA時のVf値を測定し、試験成績表のVf値からのVf値の上昇分が5%未満である場合を「○」とし、5%以上である場合を「×」とした。
【0046】
[総合評価]
異方性導電接着剤の色が白色、初期及び100℃−1000hの環境試験後の全反射率が70%以上、初期及び60℃−90%RH−500時間の環境試験後のピール強度が2.0N以上、初期及び60℃−90%RH−500時間の環境試験後のダイシェア強度が5.0N以上、及び導通性評価がすべて「○」であるものを「○」と評価し、それ以外を「×」と評価した。
【0047】
[実施例1]
脂環式エポキシ化合物(品名:セロキサイド2021P、ダイセル化学社製)100質量部、潜在性カチオン硬化剤(アルミニウムキレート系潜在性硬化剤)5質量部、アクリル樹脂(アクリル酸ブチル(BA):15%、アクリル酸エチル(EA):63%、アクリル酸ニトリル(AN):20%、アクリル酸(AA):1w%、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA):1wt%、重量平均分子量Mw:70万)3質量部で構成された接着剤中に、導電性粒子(品名:AUL704、積水化学工業社製)10質量部を分散させ、異方性導電接着剤を作製した。また、LED実装サンプルの作製における硬化条件は、180℃−1.5N−30secとした。
【0048】
表1に、実施例1の各評価結果を示す。異方性導電接着剤の色は白色、初期の全反射率は75%、100℃−1000hの環境試験後の全反射率は74%であった。また、初期のピール強度は4.0N、60℃−90%RH−500時間の環境試験後のピール強度は4.1Nであった。また、LED実装サンプルの初期のダイシェア強度は8.5N、60℃−90%RH−500時間の環境試験後のダイシェア強度は5.3Nであった。また、LED実装サンプルの初期の導通性評価は○、冷熱サイクル試験の100サイクル後の導通性評価は○、500サイクル後の導通性評価は○、1000サイクル後の導通性評価は○、100℃−1000時間の環境試験後の導通性評価は○、及び60℃−90%RH−500時間の環境試験後の導通性評価は○であった。よって、総合評価は○であった。
【0049】
[実施例2]
アクリル樹脂として重量平均分子量Mwが50万のものを用いた以外は、実施例1と同様にして、異方性導電接着剤を作製し、LED実装サンプルを得た。
【0050】
表1に、実施例2の各評価結果を示す。異方性導電接着剤の色は白色、初期の全反射率は73%、100℃−1000hの環境試験後の全反射率は73%であった。また、初期のピール強度は3.1N、60℃−90%RH−500時間の環境試験後のピール強度は2.9Nであった。また、LED実装サンプルの初期のダイシェア強度は7.8N、60℃−90%RH−500時間の環境試験後のダイシェア強度は7.6Nであった。また、LED実装サンプルの初期の導通性評価は○、冷熱サイクル試験の100サイクル後の導通性評価は○、500サイクル後の導通性評価は○、1000サイクル後の導通性評価は○、100℃−1000時間の環境試験後の導通性評価は○、及び60℃−90%RH−500時間の環境試験後の導通性評価は○であった。よって、総合評価は○であった。
【0051】
[実施例3]
アクリル樹脂として重量平均分子量Mwが20万のものを用いた以外は、実施例1と同様にして、異方性導電接着剤を作製し、LED実装サンプルを得た。
【0052】
表1に、実施例3の各評価結果を示す。異方性導電接着剤の色は白色、初期の全反射率は75%、100℃−1000hの環境試験後の全反射率は74%であった。また、初期のピール強度は3.5N、60℃−90%RH−500時間の環境試験後のピール強度は3.1Nであった。また、LED実装サンプルの初期のダイシェア強度は7.5N、60℃−90%RH−500時間の環境試験後のダイシェア強度は7.6Nであった。また、LED実装サンプルの初期の導通性評価は○、冷熱サイクル試験の100サイクル後の導通性評価は○、500サイクル後の導通性評価は○、1000サイクル後の導通性評価は○、100℃−1000時間の環境試験後の導通性評価は○、及び60℃−90%RH−500時間の環境試験後の導通性評価は○であった。よって、総合評価は○であった。
【0053】
[実施例4]
アクリル樹脂として重量平均分子量Mwが5万のものを用いた以外は、実施例1と同様にして、異方性導電接着剤を作製し、LED実装サンプルを得た。
【0054】
表1に、実施例4の各評価結果を示す。異方性導電接着剤の色は白色、初期の全反射率は71%、100℃−1000hの環境試験後の全反射率は71%であった。また、初期のピール強度は3.8N、60℃−90%RH−500時間の環境試験後のピール強度は3.3Nであった。また、LED実装サンプルの初期のダイシェア強度は6.9N、60℃−90%RH−500時間の環境試験後のダイシェア強度は7.1Nであった。また、LED実装サンプルの初期の導通性評価は○、冷熱サイクル試験の100サイクル後の導通性評価は○、500サイクル後の導通性評価は○、1000サイクル後の導通性評価は○、100℃−1000時間の環境試験後の導通性評価は○、及び60℃−90%RH−500時間の環境試験後の導通性評価は○であった。よって、総合評価は○であった。
【0055】
[実施例5]
配線基板として、50μmピッチのITO配線が形成された配線基板(50μmITO配線−25μmPI(ポリイミド)層−50μmAl土台)を用いた以外は、実施例1と同様にLED実装サンプルを作製した。
【0056】
表1に、実施例5の各評価結果を示す。異方性導電接着剤の色は白色、初期の全反射率は75%、100℃−1000hの環境試験後の全反射率は74%であった。また、LED実装サンプルのダイシェア強度の測定は、ITOと基板の界面で破壊が起こり、接着剤とITOの接着強度は良好であった。また、LED実装サンプルの初期の導通性評価は○、冷熱サイクル試験の100サイクル後の導通性評価は○、500サイクル後の導通性評価は○、1000サイクル後の導通性評価は○、及び60℃−90%RH−500時間の環境試験後の導通性評価は○であった。よって、総合評価は○であった。
【0057】
[比較例1]
重量平均分子量Mwが20万、及びアクリル酸(AA)の含有量が0wt%のアクリル樹脂(BA:15%、EA:64%、AN:20%、AA:0w%、HEMA:1wt%、Mw:20万)を用いた以外は、実施例1と同様にして、異方性導電接着剤を作製し、LED実装サンプルを得た。
【0058】
表1に、比較例1の各評価結果を示す。異方性導電接着剤の色は白色、初期の全反射率は73%、100℃−1000hの環境試験後の全反射率は72%であった。また、初期のピール強度は0.9N、60℃−90%RH−500時間の環境試験後のピール強度は1.1Nであった。また、LED実装サンプルの初期のダイシェア強度は6.1N、60℃−90%RH−500時間の環境試験後のダイシェア強度は5.3Nであった。また、LED実装サンプルの初期の導通性評価は○、冷熱サイクル試験の100サイクル後の導通性評価は○、500サイクル後の導通性評価は×、1000サイクル後の導通性評価は×、100℃−1000時間の環境試験後の導通性評価は○、及び60℃−90%RH−500時間の環境試験後の導通性評価は○であった。よって、総合評価は×であった。
【0059】
[比較例2]
重量平均分子量Mwが20万、アクリル酸(AA)の含有量が0wt%、及びメタクリル酸2‐ヒドロキシエチル(HEMA)の含有量が0wt%のアクリル樹脂(BA:15%、EA:65%、AN:20%、AA:0w%、HEMA:0wt%、Mw:20万)を用いた以外は、実施例1と同様にして、異方性導電接着剤を作製し、LED実装サンプルを得た。
【0060】
表1に、比較例2の各評価結果を示す。異方性導電接着剤の色は白色、初期の全反射率は74%、100℃−1000hの環境試験後の全反射率は74%であった。また、初期のピール強度は0.5N未満、60℃−90%RH−500時間の環境試験後のピール強度は0.5N未満であった。また、LED実装サンプルの初期のダイシェア強度は4.5N、60℃−90%RH−500時間の環境試験後のダイシェア強度は3.9Nであった。また、LED実装サンプルの初期の導通性評価は○、冷熱サイクル試験の100サイクル後の導通性評価は○、500サイクル後の導通性評価は×、1000サイクル後の導通性評価は×、100℃−1000時間の環境試験後の導通性評価は○、及び60℃−90%RH−500時間の環境試験後の導通性評価は○であった。よって、総合評価は×であった。
【0061】
[比較例3]
脂環式エポキシ化合物(品名:セロキサイド2021P、ダイセル化学社製)50質量部、酸無水物硬化剤(メチルヘキサヒドロフタル酸無水物)40質量部、アクリル樹脂(BA:15%、EA:63%、AN:20%、AA:1w%、HEMA:1wt%、Mw:70万)3質量部で構成された接着剤中に、導電性粒子(品名:AUL704、積水化学工業社製)10質量部を分散させ、異方性導電接着剤を作製した。また、LED実装サンプルの作製における硬化条件は、230℃−1.5N−30secとした。
【0062】
表1に、比較例3の各評価結果を示す。異方性導電接着剤の色は白色、初期の全反射率は75%、100℃−1000hの環境試験後の全反射率は75%であった。また、初期のピール強度は1.6N、60℃−90%RH−500時間の環境試験後のピール強度は1.3Nであった。また、LED実装サンプルの初期のダイシェア強度は7.2N、60℃−90%RH−500時間の環境試験後のダイシェア強度は6.3Nであった。また、LED実装サンプルの初期の導通性評価は○、冷熱サイクル試験の100サイクル後の導通性評価は×、500サイクル後の導通性評価は×、1000サイクル後の導通性評価は×、100℃−1000時間の環境試験後の導通性評価は○、及び60℃−90%RH−500時間の環境試験後の導通性評価は×であった。よって、総合評価は×であった。
【0063】
[比較例4]
重量平均分子量Mwが20万、アクリル酸(AA)の含有量が0wt%、及びメタクリル酸2‐ヒドロキシエチル(HEMA)の含有量が0wt%のアクリル樹脂(BA:15%、EA:65%、AN:20%、AA:0w%、HEMA:0wt%、Mw:20万)を用いた以外は、比較例3と同様にして、異方性導電接着剤を作製し、LED実装サンプルを作製した。
【0064】
表1に、比較例4の各評価結果を示す。異方性導電接着剤の色は白色、初期の全反射率は77%、100℃−1000hの環境試験後の全反射率は77%であった。また、初期のピール強度は0.5N未満、60℃−90%RH−500時間の環境試験後のピール強度は0.5N未満であった。また、LED実装サンプルの初期のダイシェア強度は3.8N、60℃−90%RH−500時間の環境試験後のダイシェア強度は3.2Nであった。また、LED実装サンプルの初期の導通性評価は○、冷熱サイクル試験の100サイクル後の導通性評価は×、500サイクル後の導通性評価は×、1000サイクル後の導通性評価は×、100℃−1000時間の環境試験後の導通性評価は○、及び60℃−90%RH−500時間の環境試験後の導通性評価は×であった。よって、総合評価は×であった。
【0065】
[比較例5]
脂環式エポキシ化合物の代わりに、シクロオレフィン100質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、異方性導電接着剤を作製し、LED実装サンプルを得た。また、LED実装サンプルの作製における硬化条件は、180℃−1.5N−240secとした。
【0066】
表1に、比較例5の各評価結果を示す。異方性導電接着剤の色は黄色、初期の全反射率は61%、100℃−1000hの環境試験後の全反射率は32%であった。また、初期のピール強度は1.2N、60℃−90%RH−500時間の環境試験後のピール強度は1.4Nであった。また、LED実装サンプルの初期のダイシェア強度は7.2N、60℃−90%RH−500時間の環境試験後のダイシェア強度は6.5Nであった。また、LED実装サンプルの初期の導通性評価は○、冷熱サイクル試験の100サイクル後の導通性評価は×、500サイクル後の導通性評価は×、1000サイクル後の導通性評価は×、100℃−1000時間の環境試験後の導通性評価は○、及び60℃−90%RH−500時間の環境試験後の導通性評価は○であった。よって、総合評価は×であった。
【0067】
[比較例6]
脂環式エポキシ化合物の代わりにビスフェノールF型エポキシ化合物を用い、潜在性カチオン硬化剤の代わりにアニオン硬化剤(アミン系硬化剤)を用い、アクリル樹脂を配合しなかった以外は、実施例1と同様にして、異方性導電接着剤を作製し、LED実装サンプルを得た。また、LED実装サンプルの作製における硬化条件は、150℃−1.5N−30secとした。
【0068】
表1に、比較例6の各評価結果を示す。異方性導電接着剤の色は黄色、初期の全反射率は58%、100℃−1000hの環境試験後の全反射率は15%であった。また、初期のピール強度は1.4N、60℃−90%RH−500時間の環境試験後のピール強度は0.1N未満であった。また、LED実装サンプルの初期のダイシェア強度は6.8N、60℃−90%RH−500時間の環境試験後のダイシェア強度は1.1Nであった。また、LED実装サンプルの初期の導通性評価は○、冷熱サイクル試験の100サイクル後の導通性評価は○、500サイクル後の導通性評価は×、1000サイクル後の導通性評価は×、100℃−1000時間の環境試験後の導通性評価は○、及び60℃−90%RH−500時間の環境試験後の導通性評価は×であった。よって、総合評価は×であった
【0069】
[比較例7]
アクリル樹脂(BA:15%、EA:63%、AN:20%、AA:1w%、HEMA:1wt%、Mw:70万)3質量部を配合した以外は、比較例6と同様にして、異方性導電接着剤を作製し、LED実装サンプルを作製した。
【0070】
表1に、比較例7の各評価結果を示す。異方性導電接着剤の色は黄色、初期の全反射率は53%、100℃−1000hの環境試験後の全反射率は11%であった。また、初期のピール強度は2.5N、60℃−90%RH−500時間の環境試験後のピール強度は0.1N未満であった。また、LED実装サンプルの初期のダイシェア強度は7.1N、60℃−90%RH−500時間の環境試験後のダイシェア強度は0.4Nであった。また、LED実装サンプルの初期の導通性評価は○、冷熱サイクル試験の100サイクル後の導通性評価は○、500サイクル後の導通性評価は○、1000サイクル後の導通性評価は×、100℃−1000時間の環境試験後の導通性評価は○、及び60℃−90%RH−500時間の環境試験後の導通性評価は×であった。よって、総合評価は×であった
【0071】
【表1】
【0072】
比較例1、2は、アクリル樹脂中にアクリル酸(AA)及びメタクリル酸2‐ヒドロキシエチル(HEMA)が含まれていないため、アルミニウムに対する接着力が低く、導通信頼性も低かった。
【0073】
また、比較例3、4では、硬化剤として酸無水物を用いているため、60℃−90%RH−500時間の環境試験後の導通信頼性が低かった。また、比較例3と比較例4との比較は、比較例1、2と実施例との比較と同様、AA、HEMAを有するアクリル樹脂を使用した方が良いことが分かった。
【0074】
また、比較例5では、主剤としてシクロオレフィンを用いているため、反応が遅く、硬化までに時間が掛かった。また、樹脂自体の色味や二重結合による変色から白色が保てなかった。さらに、導通信頼性も低かった。
【0075】
比較例6、7では、アミン系硬化剤の極性効果によりアルミニウムに接着力を有するものの、湿度に弱く、60℃−90%RH−500時間の環境試験後の導通信頼性が低かった。また、アミンの変色により、白色度が低かった。
【0076】
一方、実施例1〜5は、脂環式エポキシ化合物と、潜在性カチオン硬化剤と、アクリル酸(AA)とメタクリル酸2‐ヒドロキシエチル(HEMA)を有するアクリル樹脂とを配合しているため、光学用途の特性を有し、さらに、酸化膜を有するアルミニウムやITO配線に対し、高い接着力及び優れた導通信頼性を得ることができた。
【符号の説明】
【0077】
11 配線、12 エポキシ化合物の海、13 アクリル樹脂の島、21 基板、22 配線パターン、23 発光素子、24 n電極、25 p電極、26 バンプ、30 異方性導電膜、50 異方性導電接着剤、51 配線基板、52 LEDチップ、53 加熱ツール、54 ツール

図1
図2
図3
図4
図5