(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
圧縮機本体から冷却油と共に吐出された圧縮気体を導入する導入口を内部に開口するレシーバタンクと,前記レシーバタンクの上部開口を被蓋すると共に,圧縮気体を排出するための排気口が形成された蓋板と,レシーバタンクの内側において前記蓋板に形成された排気口を覆うと共に,底板によって底部が塞がれた筒状のセパレータを備えた油冷式圧縮機の油分離器において,
前記セパレータに設けられた導電性部品と電気的に接続されると共に,前記セパレータの上端縁より外周方向に突出する導電性の係止用フランジを設け,
前記係止用フランジがシール材を介して前記レシーバタンクの上部開口の周縁上に係止されるよう,前記セパレータを前記レシーバタンクの上部開口内に挿入し,前記係止用フランジ上にシール材を介して前記蓋板を載置して,該蓋板を前記レシーバタンクの上端面に固定して前記レシーバタンクの上部開口を被蓋すると共に,
前記係止用フランジのうち,前記蓋板の外周縁よりも外周方向に突出した部分を接続部分とし,該接続部分を,前記係止用フランジと一体的に形成すると共に,圧縮機を構成する部品のうち前記セパレータ以外の導電性部品と電気的に接続したことを特徴とする油冷式圧縮機の油分離器。
前記係止用フランジの外周縁に,前記蓋板の外周縁よりも外周方向に突出する導電性の突設片を設け,該突設片を前記接続部分として前記セパレータ以外の導電性部品と電気的に接続したことを特徴とする請求項1記載の油冷式圧縮機の油分離器。
前記接続部分に一端が接続された導電性の帯電防止ケーブルを設け,該帯電防止ケーブルの他端を前記セパレータ以外の導電性部品と電気的に接続したことを特徴とする請求項1又は2記載の油冷式圧縮機の油分離器。
前記レシーバタンクに対して前記セパレータ及び蓋板を取り付けた際,前記突設片の少なくとも先端部が前記レシーバタンクの上端面に圧接されるように前記突設片を下向きに折り曲げることにより,前記突設片を前記セパレータ以外の導電性部品である前記レシーバタンクに電気的に接続したことを特徴とする請求項2記載の油冷式圧縮機の油分離器。
前記レシーバタンクの上端面との接触位置において,前記突設片の先端部に貫通孔又は切欠を形成すると共に,該貫通孔又は切欠を介して前記レシーバタンクの上端面に形成されたボルト孔に螺合したボルトにて,前記突設片をレシーバタンクの上端面に圧接したことを特徴とする請求項4記載の油冷式圧縮機の油分離器。
前記接続部分が前記セパレータ以外の導電性部品と電気的に接続した状態が解除されたことを表示する警報手段を,前記帯電防止ケーブルに接続して設けたことを特徴とする請求項3記載の油冷式圧縮機の油分離器。
【背景技術】
【0002】
油冷式圧縮機では,圧縮機本体に吸入された空気やガスなどの気体に冷却・潤滑・密封を目的として油(本明細書において「冷却油」という。)の噴射を行いながら圧縮作用を行うことから,圧縮機本体が吐出する圧縮気体には冷却油が多量に含まれている。
【0003】
そのため,油冷式圧縮機では圧縮機本体より吐出された圧縮気体をそのまま消費側に供給することができず,消費側に供給する前に圧縮機本体が吐出した圧縮気体から冷却油を除去する作業が必要となる。
【0004】
そこで,油冷式圧縮機では圧縮機本体の吐出口より冷却油との気液混合流体として吐出された圧縮気体を,一旦,油分離器に導入することにより,この油分離器において圧縮気体と冷却油との分離を行い,油分が分離された圧縮気体を消費側に供給する構成を採用する。
【0005】
このように圧縮気体から冷却油を分離する油分離器100は,一例として
図8に示すように圧力容器であるレシーバタンク120と,このレシーバタンク120内に収容されたセパレータ130を備えており,レシーバタンク120に圧縮機本体の吐出口より冷却油との気液混合流体として吐出された圧縮気体を導入するための導入口111,油分を分離した後の圧縮気体を油分離器外に排出するための排気口141,レシーバタンク120内に回収された冷却油を再度圧縮機本体の給油口に導入するための排油口112を設けると共に,レシーバタンク120の内側において,排気口141を低部が底板135で塞がれた筒状のセパレータ130で覆っている。
【0006】
上記構成より,導入口111を介してレシーバタンク120内に冷却油との気液混合流体として吐出された圧縮気体を導入すると,冷却油はレシーバタンク120の底部に落下して分離・回収する一次分離が行われ,一次分離では除去できなかった圧縮気体中にミストの状態で含まれる冷却油は,排気口141を介して油分離器外に排出される前にセパレータ130を通過して二次分離される。このようにして冷却油の分離が行われた後の圧縮気体が消費側に供給されると共に,レシーバタンク120内に回収された冷却油は,レシーバタンク120内の圧力を利用する等して排油口112に連通された給油配管(図示せず)を介して圧縮機本体の給油口に供給される。
【0007】
このように,油冷式圧縮機では圧縮機本体内において気体と共に冷却油の攪拌・圧縮が行われるが,冷却油は絶縁体であることから,これを攪拌・圧縮する際の摩擦によって静電気が発生する。
【0008】
そのため,発生した静電気によって圧縮気体中にミストの状態で含まれる冷却油が帯電し,帯電した冷却油のミストをセパレータが捕集するに従い,セパレータに静電気が蓄積される。
【0009】
また,セパレータに設けられているセパレータエレメント(濾材)は一般に絶縁性であるために,高圧の圧縮気体がセパレータエレメントを高速で通過する際の摩擦によって,絶縁体であるセパレータエレメントが帯電する。
【0010】
このようにしてセパレータに静電気が蓄えられて帯電電位が高くなり、セパレータとセパレータの近傍に配置されている導電性部品であるレシーバタンクとの電位差が所定の値を超えると,スパーク(火花放電)が生じ易くなる。
【0011】
仮に火花放電が発生すると,セパレータを構成するセパレータエレメントやセパレータエレメントを支持するために設けられた筒状の金網やパンチングメタル等支持体が焼損してセパレータの寿命を縮めるだけでなく,火花放電により圧縮気体中にミストの状態で含まれる冷却油に引火すれば,火災や爆発が発生する危険性もある。
【0012】
また,火災や爆発が発生しない程度の小規模の火花放電の発生はミスト状の冷却油を酸化させ,酸化した冷却油が他の冷却油と混ざることで,冷却油全体の寿命をも縮めることとなる。
【0013】
このような静電気の発生に伴う弊害のうち,特に圧縮気体中にミストの状態で含まれる冷却油に引火することを防止するために,後掲の特許文献1では,冷却油を静電気消散性のコンパウンド(添加剤)で処理することにより,冷却油に静電気が溜まり難くすることを提案しており,具体的には,油冷式圧縮機の冷却油に直接添加剤を添加し,あるいは製造段階で予め添加剤を添加した冷却油を使用すること,又は,添加剤をセパレータエレメントにコーティング又は含浸することにより,セパレータエレメントに捕集された冷却油に添加剤を浸出させることで,冷却油に静電気消散性を付与することを提案している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
以上で説明した特許文献1に記載の方法によれば,冷却油に静電気消散性を付与することで,帯電による火花放電の発生を解消することができる。
【0016】
しかし,特許文献1に記載の方法で火花放電の発生を防止しようとした場合,依然として以下のような問題が残る。
【0017】
(1)経時に伴う性能低下
特許文献1に記載の方法では,冷却油に添加した添加剤は,圧縮機の運転と共に消費されることから,時間の経過と共に静電気消散機能が低下する。
【0018】
すなわち,添加剤の添加によって冷却油の静電気を消散(帯電防止)するためには,冷却油を所定の導電率(特許文献1の請求項2,3,4参照)と成す量の添加剤が添加されている必要があるが,油冷式圧縮機では,油分離器による前記一次分離及び二次分離を経ても圧縮気体中の油分を完全には除去することができず,添加剤を含んだ冷却油が僅かながら圧縮気体と共に機外に持ち出されることから,装置内の冷却油は徐々に減少する。
【0019】
そのため,圧縮機の運転によって減少した分の冷却油を補う必要があるが,この際,添加剤の添加されていない冷却油を補充する場合,あるいは,冷却油を補充するのみで添加剤を添加しない場合には,冷却油中の添加剤濃度が低くなり,所定の静電気消散性能が発揮できなくなる。そして、セパレータに静電気が蓄えられて帯電電位が高くなり、セパレータとセパレータの近傍に配置される導電性部品であるレシーバタンクとの電位差が所定の値を超えると火花放電が発生する危険度が高まる。
【0020】
また,セパレータエレメントに塗布乃至は含浸させておいた添加剤を捕集した冷却油に浸出させる構成においても,セパレータエレメントに塗布乃至は含浸した添加剤が抜けきってしまえば静電気消散性能が失われ,その後も圧縮機の運転を継続すればセパレータに静電気が蓄えられて帯電電位が高くなり、セパレータとセパレータの近傍に配置される導電性部品であるレシーバタンクとの電位差が所定の値を超えると火花放電が発生する危険度が高まることとなる。
【0021】
(2)消散効果が得られる状態にあることの把握困難性
以上のように,添加剤の含有量が減少して冷却油の静電気消散性が失われていたとしても,引用文献1に記載の構成にあってはこれを目視等により外部より簡単に確認することができず,冷却油に直接添加剤を添加する構成では,冷却油中に含まれる添加剤の含有量が適量であるか否かを,冷却油の導電率を測定する等の煩雑な作業によって確認しなければならない。
【0022】
また,セパレータエレメントに添加剤を塗布し,あるいは含浸した構成でも,セパレータエレメントを目視で確認しただけでは添加剤の残量を確認することができないことから,一定の運転時間毎に定期的にセパレータの交換を行う等,添加剤が抜けきる前にある程度の余裕を以てセパレータの交換を行う必要があり,実際には未だ使用可能なセパレータであっても交換や廃棄が必要となるためにランニングコストがかかる。
【0023】
そこで本発明は,上記従来技術における欠点を解消するために成されたものであり,セパレータの帯電防止効果を永続的に得ることができると共に,冷却油の導電率を測定する等の煩雑な作業を行うことなしに,外部よりセパレータの帯電防止効果が得られる状態にあるか否かを簡単に確認することができる,油冷式圧縮機の油分離器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本願発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0025】
上記目的を達成するために,本発明の油冷式圧縮機1の油分離器10は,
圧縮機本体2から冷却油と共に吐出された圧縮気体を導入する導入口11を内部に開口するレシーバタンク20と,前記レシーバタンク20の上部開口23を被蓋すると共に,圧縮気体を排出するための排気口41が形成された蓋板40と,レシーバタンク20の内側において前記蓋板40に形成された排気口41を覆うと共に,底板35によって底部が塞がれた筒状のセパレータ30を備えた油冷式圧縮機1の油分離器10において,
前記セパレータ30に設けられた導電性部品〔支持体31(内筒31a,外筒31b),底板35〕と電気的に接続されると共に,前記セパレータ30の上端縁より外周方向に突出する導電性の係止用フランジ36を設け,
前記係止用フランジ36がガスケット61等のシール材を介して前記レシーバタンク20の上部開口23の周縁上に係止されるよう,前記セパレータ30を前記レシーバタンク20の上部開口23内に挿入し,前記係止用フランジ36上にガスケット62等のシール材を介して前記蓋板40を載置して,該蓋板40を前記レシーバタンク20の上端面に固定して前記レシーバタンク20の上部開口23を被蓋すると共に,
前記係止用フランジ36のうち,前記蓋板40の外周縁よりも外周方向に突出した部分を接続部分とし,該接続部分を,
前記係止用フランジ36と一体的に形成すると共に,圧縮機を構成する部品のうち前記セパレータ30以外の導電性部品と電気的に接続したことを特徴とする(請求項1)。
【0026】
前記係止用フランジ36の外周縁に,前記蓋板40の外周縁よりも外周方向に突出する導電性の突設片38を設け,該突設片38を前記接続部分としてセパレータ30以外の導電性部品と電気的に接続したことを特徴とする(請求項2)。
【0027】
前記セパレータ30以外の導電性部品との電気的接続は,前記接続部分である例えば突設片38に一端が接続された導電性の帯電防止ケーブル71を設け,該帯電防止ケーブル71の他端を,例えばレシーバタンク20,その他の導電性部品に接続する,又は,バッテリーのマイナス端子に接続する,又は,ワイヤハーネスのアース線に接続する等して行うものとしても良い(請求項3)。
【0028】
又は,前記接続部分として突設片38を設けた構成では,前記レシーバタンク20に対して前記セパレータ30及び蓋板40を取り付けた際,前記突設片38の少なくとも先端部が前記レシーバタンク20の上端面に圧接されるように前記突設片38を下向きに折り曲げることにより,前記突設片38を,前記セパレータ30以外の導電性部品である前記レシーバタンク20に電気的に接続するものとしても良い(請求項4)。
【0029】
この場合,前記レシーバタンク20の上端面との接触位置において,前記突設片38の先端部に貫通孔38a又は切欠38bを形成すると共に,該貫通孔38a又は切欠38bを介して前記レシーバタンク20の上端面に形成されたボルト孔25に螺合したボルト52にて,前記突設片38をレシーバタンク20上端面に圧接するものとしても良い(請求項5)。
【0030】
更に,前述した接続部分である例えば突設片38と,前記セパレータ30以外の導電性部品との電気的接続を前述した帯電防止ケーブル71を介して行う構成にあっては,前記突設片38が前記セパレータ30以外の導電性部品と電気的に接続した状態が解除されたことを表示する警報手段80を,前記帯電防止ケーブル71に接続して設けることもできる(請求項6)。
【発明の効果】
【0031】
以上で説明した本発明の構成により,本発明の油冷式圧縮機1の油分離器10では,以下の顕著な効果を得ることができた。
【0032】
セパレータ30の導電性部品と電気的に接続される係止用フランジ36を,蓋板40の外周縁よりも外周方向に突出した部分である接続部分,例えば突設片38を介して圧縮機を構成する部品の内,前記セパレータ30以外の導電性部品と電気的に接続したことにより,セパレータ30に蓄えられた静電気を係止用フランジ36を介して前記導電性部品に逃がすことができ,セパレータ30と前記導電性部品との電位差をなくす又は火花放電が生じない程度に電位差を低くすることができた。そして、係止用フランジ36の前記接続部分がセパレータ30とは別の前記導電性部品と電気的に接続された状態にある間,セパレータ30における帯電電位の上昇を防止することができ,冷却油に添加剤を添加し,あるいは,セパレータエレメントに添加剤を塗布あるいは含浸させることで帯電電位の上昇を防止する場合とは異なり,経時によっても帯電電位の上昇を防止する効果が失われない油分離器を得ることができた。
【0033】
その結果,冷却油の補充や交換時における添加剤の添加,定期的なセパレータの交換等が行われなかった場合であっても,セパレータ30における帯電電位の上昇を好適に防止することができた。
【0034】
しかも,前述したセパレータ30と前記セパレータ30以外の導電性部品との電気的な接続を,蓋板40に対し外周方向に突出した部分である接続部分,例えば突設片38を介して行ったことで,セパレータ30において帯電電位の上昇を防止可能な状態にあるか否かを,油分離器10の外側より,突設片38等の接続部分がセパレータ30とは別の前記導電性部品に接続されているか否かを目視又は手で触れて点検するだけで容易に確認することができた。
【0035】
特に,帯電防止ケーブル71を介して突設片38等の接続部分を前記セパレータ30以外の導電性部品に接続した構成にあっては帯電防止ケーブル71の接続状態を目視又は手で触れて点検するだけで確認することができ,また,前記接続部分を突設片38とし,この突設片38の先端を直接レシーバタンク20の上端面に圧接させた構成にあっては,突設片38とレシーバタンク20上端面間の接触状態を点検するだけで,前述した確認作業を容易に行うことができた。
【0036】
しかも,突設片38等の接続部分と前記セパレータ30以外の導電性部品との電気的な接続状態が解除されたことを警告音の出力や警告灯の点灯により表示する警報手段80を設けた構成にあっては,セパレータ30に静電気が蓄えられて、セパレータ30と前記セパレータ30以外の導電性部品との電位差が高くなり火花放電が生じる危険性がある場合,これを確実に把握することができ,工場設備等において圧縮機を別室等に設置し,別の離れた運転室または運転操作盤等により運転を制御する場合においても,運転室や制御盤に警告灯等を設けておくことで,セパレータの帯電防止機能の消失を,油分離器10が収容された圧縮機の防音箱に設けられた点検用の扉を開くことなく,離れた位置からも把握することができた。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下に,添付図面を参照しながら本発明の油冷式圧縮機の油分離器について説明する。
【0039】
〔油冷式圧縮機〕
本発明の油分離器10が設けられる油冷式圧縮機1は,
図1に示すように,被圧縮気体を冷却油と共に圧縮する圧縮機本体2と,この圧縮機本体2より冷却油と共に吐出された圧縮気体を導入し,導入された圧縮気体中から冷却油を分離する油分離器10を備えると共に,油分離器10で分離されて回収された冷却油を,圧縮機本体の給油口2aに再度導入する給油流路3が形成されており,この給油流路3に設けられたオイルクーラ4とオイルフィルタ5によって,回収された冷却油を冷却すると共に濾過した後,前記圧縮機本体2に供給することができるように構成されている。
【0040】
そして,油分離器10で冷却油が除去された後の圧縮気体は,圧縮気体の消費側に設けられた空気作業機等に導入されて,これらの機器の動作に使用される。
【0041】
〔油分離器〕
(1)油分離器の全体構成
以上のように,圧縮機本体2より吐出された圧縮気体中より冷却油を分離して回収する前述の油分離器10は,
図2(A),(B)に示すように,圧力容器であるレシーバタンク20と,このレシーバタンク20の上部開口23を被蓋する蓋板40と,レシーバタンク20の内側において前記蓋板40に形成された排気口41を覆うと共に,底板35によって底面が覆われた筒状のセパレータ30によって構成されている。
【0042】
(2)レシーバタンク
このうちのレシーバタンク20は,導入された圧縮気体と冷却油の貯留空間を内部に形成する圧力容器であり,
図2(B)に示す実施形態にあっては,軸線方向を上下方向とし,上向きに開口した有底円筒状に形成されている。
【0043】
このレシーバタンク20の側壁の上部寄りの位置には,圧縮機本体2より吐出された圧縮気体を導入するための導入口11(
図1参照)が形成されている。
【0044】
好ましくは,この導入口11を,導入された圧縮気体がレシーバタンク20の側壁内面に沿って旋回させることができる位置に開口する。
【0045】
これにより,圧縮気体と共にレシーバタンク20内に導入された冷却油は,重力により直接レシーバタンク20の底部に落下して回収されるだけでなく,圧縮気体がレシーバタンク20内を旋回する際に遠心力によって圧縮気体中の冷却油をレシーバタンク20の内壁に衝突させて,内壁を伝って落下させることで,より効果的に分離(一次分離)を行うことができる。
【0046】
図示の実施形態にあっては,レシーバタンク20内に導入された圧縮気体に,レシーバタンク20の内壁に沿った旋回流を生じさせ易くするために,レシーバタンク20内の上部において内壁と平行に誘導板21を一周未満の範囲,例えば180°〜270°の範囲で設け,レシーバタンク20の内壁と誘導板21間に,導入された圧縮気体の流れを誘導する誘導流路22を形成している。
【0047】
このように構成されたレシーバタンク20の上端には,後述する蓋板40を取り付けるための上端面が設けられており,この上端面の中心に,後述するセパレータ30が挿入される,上部開口23が設けられている。
【0048】
そして,上部開口23の外周位置において前述の上端面には,後述する蓋板40を取り付けるためのボルト孔24が形成されている。
【0049】
(3)セパレータ
以上のように構成されたレシーバタンク20内には,レシーバタンクの上部開口23を介してセパレータ30が挿入される。
【0050】
このセパレータ30は,
図6(A),(B)に示すように,金網やパンチングメタルによって形成された内筒31aと外筒31bを同心状に配置して形成された支持体31と,前記支持体31の内筒31a,外筒31b間に収容されて支持された羊毛,その他の繊維,濾紙等によって構成されたセパレータエレメント32,及び,前記支持体31の底面を被蓋する底板35を備え,前記底板35によって底部が塞がれた有底の筒状に形成されている。
【0051】
本発明の油分離器10に使用するセパレータ30にあっては,これをレシーバタンク20の上部開口23内に吊り下げ状態で収容できるようにするために,セパレータ30の上端縁より外周方向に突出する係止用フランジ36を取り付けて,底板35で塞がれた底部側よりセパレータ30をレシーバタンク20の上部開口23内に挿入すると,係止用フランジ36がレシーバタンク20の上部開口23の周縁上に載置されて,セパレータ30をレシーバタンク20の側壁内周と同心状に配置できるように構成されている。
【0052】
前述の係止用フランジ36は導電性の材料によって形成されており,金網やパンチングメタルによって構成された,導電性の支持体31に対し,電気的に接続された状態に取り付けられている。
【0053】
このような電気的な接続を可能とする取り付け方法の一例として,
図6(B)中に拡大図で示すように,周方向に所定の間隔で溶接37aを行うことで,支持体31の内筒31a及び外筒31bの上端縁に係止用フランジ36を直接溶着して電気的な接続を確保するものとしても良く,図示は省略するが,支持体31の内筒31a及び外筒31bの下端縁に対して導電性の底板35を同様にして溶着することで,セパレータ30に設けられた導電性の部品間を,電気的に接続された状態とすることができる。
【0054】
また,支持体31に対する係止用フランジ36の取り付けは,
図6(B)中の拡大図で別例として示すように,支持体31の上端部と係止用フランジ36間に,導電性の金属シート37bを挟持して電気的な接続を確保すると共に,金属シート37bを支持体31および係止用フランジ36と接触させた状態で支持体31の上端と係止用フランジ36間を接着剤37cにて接着するものとしても良く,支持体31の下端縁と底板35間についても同様の方法で接着を行うものとしても良い。
【0055】
なお,前述したように,支持体31に対する係止用フランジ36や底板35の接着を接着剤によって行う場合であっても,接着剤自体に導電性が付与されている場合には,前述した金属シート37bの介在を省略しても良い。
【0056】
また,セパレータ30を構成する導電性の部品間の接合は,各部品間の電気的な接続を可能とするものであれば,前述した方法に限定されず,その他の如何なる方法で接合あるいは接着するものであっても良い。
【0057】
以上のようにして支持体31の上端に取り付けられる係止用フランジ36は,外径をレシーバタンク20の上部開口23に対し大径で,且つ,後述する蓋板40の外径よりも小径に形成している。
【0058】
そして,係止用フランジ36には,その外周縁より更に外周方向に突設された導電性の突設片38を,前記係止用フランジ36と一体的に
形成しこの突設片38を,圧縮機を構成する部品のうち前記セパレータ30とは別の導電性部品と電気的に接続するための接続部分として設けている。
【0059】
この突設片38は,後述する蓋板40でレシーバタンク20の上部開口23を被蓋した際に,蓋板40の外周縁より更に外周方向に突出する長さに形成する。
【0060】
なお図示の実施形態にあっては,係止用フランジ36の外径を蓋板40の外径よりも小径とし,係止用フランジ36の外周縁が蓋板40の外周縁の内側に配置されるように構成すると共に,係止用フランジ36の外周縁より外向きに突設した突設片38を設け,この突設片38によって,蓋板40の外周方向に突出させた前述の「接続部分」を形成しているが,この「接続部分」の構成は,係止用フランジ36のうち,蓋板40の外周縁よりも外周方向に突出した部分として形成されるものであれば如何なる構造としても良く,例えば,前記係止用フランジ36の外径を蓋板40の外径よりも大径に形成して蓋板40よりも外周方向に突出させ,この突出部分を,前記セパレータ30以外の導電性部品と電気的に接続する前述の接続部分としても良く,この場合,前記突設片38を別途設けなくてもよい。
【0061】
(4)蓋板
前述したレシーバタンク20の上部開口23は,セパレータ30の取り付けを行った後,蓋板40によって被蓋される。
【0062】
この蓋板40は,
図2(A)に示すようにセパレータ30に取り付けた係止用フランジ36よりも大径に形成されており,その中央部分に,レシーバタンク20内の圧縮気体を排出するための排気口41が形成されていると共に,周方向に所定の間隔でボルト留め用の開孔42が形成されており,この開孔42を介して挿入されたボルト51の先端を,レシーバタンク20の上端面に形成されたボルト孔24に螺合することで,蓋板40をレシーバタンク20の上端面に取り付けることができるように構成されている。
【0063】
図2(A),(B)に示す実施形態にあっては蓋板40を,セパレータ30に取り付けた係止用フランジ36上に重ねて配置した際に,平面視においてボルト挿入用の開孔42が,係止用フランジ36の外周縁に対し外接する位置に設けられており,蓋板40をレシーバタンク20の上端面にボルト留めした際,係止用フランジ36が固定用のボルト51で囲まれた部分の内部に収まるように構成されている。
【0064】
(5)油分離器の組み立て
油分離器10を構成する前述のレシーバタンク20,セパレータ30,及び蓋板40の取り付けは,先ず,レシーバタンク20の上部開口23の周縁上に無端環状のガスケット61を取り付け,この状態でセパレータ30をその底部側よりをレシーバタンク20の上部開口23内に挿入して,係止用フランジ36を前述のガスケット61上に載置させる。
【0065】
その後,係止用フランジ36の上面にも同様に無端環状のガスケット62を載置し,このガスケット62上に蓋板40の底面が載置されるように,レシーバタンク20の上部開口23を被蓋する。
【0066】
ここで使用するガスケット61,62の内径は,係止用フランジ36の内径よりも僅かに大きく,外径は係止用フランジ36の外径と同一径であることが好ましいが,この部分をシールすることができる幅であれば,特に限定されず,各種の幅で形成することが可能である。
【0067】
なお,ガスケット61,62の外径を係止用フランジの外径よりも大きなものとする場合,前述した突設片38を係止用フランジ36と同一厚さ,又は係止用フランジ36よりも薄く形成する。
【0068】
このように,ガスケット61,62を介在させた状態で,レシーバタンク20の上端面と蓋板40の底面間で係止用フランジ36を挟持すると共に,蓋板40に設けた開孔42にボルト51を挿入し,このボルト51の先端をレシーバタンク20の上端面に形成したボルト孔24に螺合することにより,レシーバタンク20に対するセパレータ30と蓋板40の取り付けが行われる。
【0069】
(6)セパレータと他の導電性部品との電気的接続
このようにして,レシーバタンク20に対しセパレータ30及び蓋板40を取り付けると,セパレータ30に取り付けた係止用フランジ36より外周方向に突設した突設片38が,蓋板40の下部より更に外周方向に突出し,外部より目視によって確認できる状態に配置される。
【0070】
そして,本発明の油分離器10では,この突設片38をセパレータ30以外の導電性部品と電気的に接続し,従って,セパレータ30に設けた導電性の部品を他の導電性部品と電気的に接続することで,セパレータ30における帯電電位の上昇を防止している。
【0071】
この突設片38をセパレータ30以外の導電性部品と電気的に接続するために,
図2及び
図3に示す例では,突設片38に帯電防止ケーブル71の一端を,例えばはんだ付け,かしめ,ボルト留め等の方法で接続し,この帯電防止ケーブル71の他端を前記セパレータ30以外の導電性部品に接続することにより行っている。
【0072】
図2及び
図3に示す例では,帯電防止ケーブル71の他端にリングターミナルを取り付けておき,このリングターミナルの開孔に蓋板40を固定するためのボルト24を挿入して蓋板40と共締めすることにより,レシーバタンク20および蓋板40とセパレータ30が電気的に接続され、電位差がなくなる。
【0073】
もっとも,突設片38に一端を接続した前述の帯電防止ケーブル71の他端を,油冷式圧縮機に設けられたバッテリーのマイナス端子,ワイヤハーネスのアース線等に接続するものとしても良い。
【0074】
また,
図4及び
図5に示す例では,前述した帯電防止ケーブル71による前記セパレータ30以外の導電性部品に対する電気的な接続に代えて,突設片38をガスケット61,62よりも外側に突出した位置で下向きに折り曲げ,蓋板40の取り付けによりセパレータ30の係止用フランジ36をレシーバタンク20の上端面に向けて押圧すると,突設片38が板バネ状にその先端部をレシーバタンク20の上端面に押圧するようにし,これにより突設片38を導電性部品であるレシーバタンク20に対して電気的に接続するようにしても良い。
【0075】
好ましくは,このように構成された突設片38の先端部分に,
図4(A)に示すように貫通孔38aあるいは切欠38bを設け,この貫通孔38aあるいは切欠38bを介して,貫通孔38aあるいは切欠38bの下方位置でレシーバタンク20の上端面に設けたボルト孔25にボルト52を螺合することで,このボルト52の締め付けによって突設片38の先端部がレシーバタンク20の上端面に押圧された状態を確実に維持できるようにしても良い。
【0076】
なお,前述したように突設片38の前記セパレータ30以外の導電性部品に対する電気的な接続を帯電防止ケーブル71を介して行った例では,
図7に示すように帯電防止ケーブル71に,帯電防止ケーブル71の脱落,断線等によって突設片38とセパレータ30以外の前記導電性部品に対する電気的な接続状態が断たれたとき,警告音の発生,あるいは警告灯の点灯によりこれを知らせる警報手段80を設けるものとしても良い。
【0077】
(7)作用等
以上のように構成された油分離器10に対し,圧縮機本体2より吐出された冷却油と気液混合した圧縮気体を導入すると,圧縮気体と共にレシーバタンク20内に導入された冷却油は,重力によって直接レシーバタンク20の底部に落下して回収される他,圧縮気体がレシーバタンク20内で旋回流を生じるように構成した本実施形態にあっては,旋回流の発生によって生じた遠心力によってレシーバタンク20の内壁に衝突した冷却油は,レシーバタンク20の内壁を伝って落下してレシーバタンク20の底部に溜まることで回収され,このようにして冷却油の一次分離が完了する。
【0078】
冷却油の一次分離が行われた圧縮気体は,その後,セパレータ30の外筒31b,セパレータエレメント32,及び内筒31aを通過してセパレータ30内の空間に導入され,セパレータエレメント32を通過する際に圧縮気体中にミストの状態で存在していた冷却油が捕集されることで二次分離が完了し,このようにして冷却油の二次分離が完了した後の圧縮気体が,蓋板40の中央に形成された排気口41を介して油分離器10外に排出されて消費側に供給される。
【0079】
セパレータ30に設けたセパレータエレメント32に帯電した冷却油のミストを捕集することにより,あるいは,高圧の圧縮気体がセパレータエレメント32を高速で通過する際の摩擦により,セパレータ30は静電気を帯び得るが,セパレータ30に設けられた導電性部品である支持体31や底板35は,係止用フランジ36と電気的に接続されていると共に,係止用フランジ36に設けた突設片38を圧縮機を構成する部品のうち,セパレータ30以外の導電性部品と電気的に接続したことにより,これらの電荷は,セパレータ30に設けた支持体31,係止用フランジ36,突設片38を介して、セパレータ30以外の導電性部品に逃がすことができ,セパレータ30とセパレータ30の近傍に配置されている導電性部品であるレシーバタンク20および蓋板40との電位差がなくなる又は火花放電が発生する程の電位差が生じない。
【0080】
その結果,本発明の油分離器10を備えた油冷式圧縮機1では,火花放電の発生に伴う焼損によりセパレータ30の寿命低下が防止されているだけでなく,圧縮気体にミストの状態で含まれる冷却油に引火する危険性も低減することができるものとなっている。
【0081】
また,セパレータ30で火花放電が生じることを防止できたことで,火花放電に伴う冷却油の酸化を防止でき,冷却油の性能低下を防止して,冷却油の寿命を延ばすことができた。
【0082】
また、セパレータ30において帯電電位の上昇を防止可能な状態にあるか否かを,油分離器10の外側より,帯電防止ケーブル71を介して突設片38を前記導電性部品に接続した構成にあっては帯電防止ケーブル71の接続状態を目視又は手で触れて点検するだけで,また,突設片38の先端を直接レシーバタンク20の上端面に圧接させた構成にあっては,突設片38とレシーバタンク20上端面間の接触状態を点検するだけで,容易に行うことができた。
【0083】
警告音の出力や警告灯の点灯により表示する警報手段80を設けた構成にあっては,圧縮機を別室等に設置し,別の離れた運転室または運転操作盤等により運転を制御する場合においても,運転室や制御盤に警告灯等を設けておくことで,油分離器10が収容された圧縮機の防音箱に設けられた点検用の扉を開くことなく,離れた位置からも把握することができた。