(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6292910
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】液供給式圧縮機及び気液分離器
(51)【国際特許分類】
F04C 29/02 20060101AFI20180305BHJP
F04C 18/16 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
F04C29/02 351Z
F04C18/16 A
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-20676(P2014-20676)
(22)【出願日】2014年2月5日
(65)【公開番号】特開2015-148172(P2015-148172A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2016年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長阪 晃洋
(72)【発明者】
【氏名】高野 正彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 健太郎
【審査官】
松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−083272(JP,A)
【文献】
実開昭57−127883(JP,U)
【文献】
特開2013−036397(JP,A)
【文献】
特開2003−042082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 29/02
F04C 18/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮室に液体を注入して作動ガスを圧縮する液供給式圧縮機であって、
圧縮ロータを収容するとともに、前記圧縮室を形成するメインケーシングを有する圧縮機本体と、
中心軸が略鉛直方向で且つ二重円筒状となるように配置された内壁部及び該内壁部より長い外壁部と、
前記内壁部と前記外壁部間の上方壁部に形成され、前記圧縮機本体から吐き出された圧縮ガスを旋回させて、該圧縮ガスに含まれる液体を分離する旋回流路と、
前記外壁部の下側に、前記旋回流路で分離した液体を溜める液体貯留部とを有し、
前記旋回流路の入口直後の上面が、前記圧縮ガスの流れ方向に沿って高さが上昇して下降する凹部形状を有し、
前記旋回流路の入口直後の上面よりも旋回気流下流の上面が、前記圧縮ガスの流れ方向に沿って高さが上昇して下降する凹部形状を更に少なくとも1つ有し、
前記旋回気流下流の上面に形成された少なくとも1つの凹部形状の頭頂部が、前記入口直後の上面に形成された凹部形状の頭頂部よりも、前記液体貯留部からの高さが低いものである液供給式圧縮機。
【請求項2】
請求項1に記載の液供給式圧縮機であって、
前記旋回流路の凹部形状が、旋回気流の流れ方向に曲面形状となるものである液供給式圧縮機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液供給式圧縮機であって、
前記ロータが、雄ロータ及び雌ロータが平行且つ水平に配置されるスクリューロータであり、
前記メインケーシングの底面が、該雌雄スクリューロータの形状に沿ったボア外面と、前記内壁部及び外壁部の上端部とそれぞれ接続する基部とから形成されて前記内壁部、外壁部と一体に構成され、
前記旋回流路が、前記内壁部及び外壁部間の上方壁部と、前記基部と、前記メインケーシングの底面とで形成されるものである液供給式圧縮機。
【請求項4】
液供給式の圧縮機本体から吐き出された気液混合の圧縮ガスから液体を分離する気液分離器であって、
中心軸が略鉛直方向で且つ二重円筒状に配置された内壁部及び該内壁部よりも鉛直方向に長い外壁部と、
前記内壁部及び前記外壁部の上端部それぞれと接続された天板部と、
前記内壁部と前記外壁部間の上方壁部及び前記天板部によって側面及び上面が形成され、前記圧縮ガスを旋回させて、該圧縮ガスに含まれる液体を分離する旋回流路と、
前記旋回流路と連通し、圧縮ガスを該旋回流路に導く入口部と、
前記内壁部内側と連通して、前記旋回流路を通過後の圧縮ガスを吐き出す吐出口と、
前記外壁部の下側に設けられ、分離された液体の貯留部が形成される基板部とを有し、
前記入口部直後の前記旋回流路の上面が、前記圧縮ガスの流れ方向に沿って高さが上昇して下降する凹部形状を有し、
前記旋回流路の入口部直後の上面よりも旋回気流下流の上面が、前記圧縮ガスの流れ方向に沿って高さが上昇して下降する凹部形状を更に少なくとも1つ有し、
前記旋回気流下流の上面に形成された少なくとも1つの凹部形状の頭頂部が、前記入口部直後の上面に形成された凹部形状の頭頂部よりも、前記基板部からの高さが低いものである気液分離器。
【請求項5】
請求項4に記載の気液分離器であって、
前記凹部形状が、曲面形状である気液分離器。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の気液分離器であって、
前記天板部は、前記圧縮機本体のケーシング底面である気液分離器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動ガス中に油又は水等の液体を注入して作動ガスを圧縮する液供給式圧縮機及び気液混合圧縮ガスから液成分を分離する気液分離器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液供給式圧縮機の一つである給油式のスクリュー圧縮機では、作動ガスの圧縮熱の冷却、圧縮作動室のシール性向上、スクリューロータ等の潤滑などを目的として、圧縮機本体内の作動ガス(例えば空気)中に油を注入して作動ガスを圧縮する。そして、圧縮機本体で圧縮された作動ガスに含まれる油を分離機構で分離する。特許文献1は、圧縮機本体、遠心分離機構及び濾過分離機構を一体構造とし、小型化を図った給油式スクリュー圧縮機を開示する。
【0003】
特許文献1の給油式スクリュー圧縮機は、圧縮機本体を構成するものとして、回転軸が略水平で互いに略平行となるように配置された雄ロータ及び雌ロータと、これら雄ロータ及び雌ロータを収容するとともに圧縮室を形成するメインケーシング(ロータケーシング)と、このメインケーシングに接続されて吐出室が形成された吐出側ケーシング(Dケーシング)とを有する。先ず、雄ロータ及び雌ロータの回転に伴い、圧縮室の容積が増加して、吸込み口から圧縮室に作動ガスを吸込む(吸込み過程)。その後、圧縮室の容積が減少して、圧縮室内の作動ガスを圧縮する(圧縮過程)。圧縮室で圧縮された作動ガスは、吐出室に吐き出されるようになっている。
【0004】
特許文献1の給油式スクリュー圧縮機は、遠心分離機構を構成するものとして、メインケーシングの下部に設けられ、中心軸が略鉛直方向となるように配置された二重円筒状の内壁部及び外壁部と、内壁部と外壁部の間に形成された旋回流路と、メインケーシングの下部に設けられ、吐出室から旋回流路に作動ガスを導く流入通路(吐出通路)と、メインケーシングの下部に設けられ、内壁部の内側から外壁部の外側に作動ガスを導く流出通路と、外壁部の下側に接続された下側ケーシングとを有する。流入通路から流入した作動ガスは、旋回流路で旋回され、作動ガスと油の比重差によって、作動ガスに含まれる油が分離される(一次分離)。分離された油は、外壁部に沿って流れながら落下して、下側ケーシングの下部に溜められ、その一部が圧縮機本体の圧縮室に供給されるようになっている。一方、分離された作動ガスは、内壁部の内側に流れ込み、流出通路を介して濾過分離機構に流出するようになっている。
【0005】
そして、特許文献1の油冷式スクリュー圧縮機は、濾過分離機構を構成するものとして、遠心分離機構の流出通路に接続されたマニホールドと、このマニホールドの上側に取付けられた油分離エレメント容器と、この油分離エレメント容器内に収納された油分離エレメント(詳細には、略円筒状のフィルタ)とを有する。油分離エレメントで、作動ガスに残余する油が分離される(二次分離)。分離された油は、圧縮機本体の吸込み口に供給されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−42082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した給油式スクリュー圧縮機には、次のような改善の余地がある。特許文献1の
図2で示されているように、メインケーシングにおける旋回流路の上面は、流入通路の出口近傍の領域で、流路幅の大部分が平坦かつ流入通路の上面とほぼ同じ高さである。そして、流入通路の出口直後の作動ガスは、流入通路の断面より旋回流路の断面が大きいので拡がろうとするものの、旋回流路の上面で跳ね返されて、下向きの速度成分が増加する。そのため、作動ガスの旋回距離が短くなり、気液分離性能が低減するという事態が生ずる。このような現象は、圧縮された作動ガスに含まれる油や水等を旋回分離する気液分離機構を有する液供給式の圧縮機に共通していえることである。
【0008】
本発明は、上記事柄に鑑みてなされたものであり、液供給式圧縮機において、気液分離性能を向上することを課題の一つとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するために、特許請求の範囲に記載の発明を適用する。即ち圧縮室に液体を注入して作動ガスを圧縮する液供給式圧縮機であって、圧縮ロータを収容するとともに、前記圧縮室を形成するメインケーシングを有する圧縮機本体と、中心軸が略鉛直方向で且つ二重円筒状となるように配置された内壁部及び該内壁部より長い外壁部と、前記内壁部と前記外壁部間の上方壁部に形成され、前記圧縮機本体から吐き出された圧縮ガスを旋回させて、該圧縮ガスに含まれる液体を分離する旋回流路と、前記外壁部の下側に、前記旋回流路で分離した液体を溜める液体貯留部とを有
し、前記旋回流路の入口直後の上面が、前記圧縮ガスの流れ方向に沿っ
て高さが上昇して下降する凹部形状を有
し、前記旋回流路の入口直後の上面よりも旋回気流下流の上面が、前記圧縮ガスの流れ方向に沿って高さが上昇して下降する凹部形状を更に少なくとも1つ有し、前記旋回気流下流の上面に形成された少なくとも1つの凹部形状の頭頂部が、前記入口直後の上面に形成された凹部形状の頭頂部よりも、前記液体貯留部からの高さが低いものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一側面によれば、旋回流路での旋回気流の下向きの速度成分が抑制され、作動ガスの旋回距離を十分に確保することができ、気液分離性能を向上できる。
なお、本発明の他の課題及び効果は、以下の記載から更に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態における給油式スクリュー圧縮機の構造を表す断面図である。
【
図2】
図1中断面II−IIによる圧縮機の断面図である。
【
図3】
図1中断面III−IIIによる圧縮機の断面図であり、メインケーシングにおける旋回流路の上面等を示す。
【
図4】
図3中断面T1による流入通路の断面図、及び
図3中断面T2〜T10による旋回流路の断面図である。
【
図5】
図3及び
図4で示された旋回流路の上面の外縁の位置変化を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を適用した実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1は、本実施形態における給油式スクリュー圧縮機の構造を表す断面図であり、
図2は、
図1中断面II−IIによる断面図である。
【0014】
これら
図1及び
図2で示すように、給油式スクリュー圧縮機は、圧縮機本体1、遠心分離機構2及び濾過分離機構3を一体構造としたものである。
【0015】
圧縮機本体1は、雄ロータ4及び雌ロータ5と、これら雄ロータ4及び雌ロータ5を収容するメインケーシング6と、このメインケーシング6の吐出側(
図1中右側)に接続された吐出側ケーシング7とを備えている。
【0016】
雄ロータ4及び雌ロータ5は、それらの回転軸L1,L2(後述の
図3で示す)が略水平で互いに略平行となるように配置されており、略水平方向に並んで配置されている。雄ロータ4は、軸受8,9,10で回転可能に支持され、雌ロータ5も、図示しない軸受で回転可能に支持されている。吐出し側の軸受9,10等は、吐出側ケーシング7によって支持されている。また、吐出側ケーシング7の下方には、後述する圧縮室から吐き出された空気を遠心分離機構2に案内する吐出室14が設けられている。
なお、雄ロータ4の一方側(
図1中左側)の端部は、図示しない電動機に直接又は間接的に接続される。電動機の駆動によって雄ロータ4が回転し、この雄ロータ4と噛み合わされた雌ロータ5も回転するようになっている。
【0017】
メインケーシング6は、雄ロータ4の歯部を収容する略円筒状のボア11と、雌ロータ5の歯部を収容する略円筒状のボア12とを有しており、雄ロータ4の歯部、雌ロータ5の歯部及びボア11,12で圧縮室を形成するようになっている。また、これに伴いメインケーシング6の底面は、ボア11や12の形状に沿ってボア外側面が形成される形状となっている。また、メインケーシング6の底面には、後述する内壁部15と外壁部16のそれぞれの上端部と接続される基部が、底面から延伸して設けられる。
【0018】
先ず、雄ロータ4及び雌ロータ5の回転に伴い、圧縮室の容積が増加し、圧縮機本体1は、吸込み口13から圧縮室に空気(作動ガス)を吸込む(吸込み過程)。その後、回転の進行に伴い圧縮
室の容積が減少し、圧縮機本体1は圧縮室内の空気を圧縮する(圧縮過程)。なお、圧縮過程において圧縮熱が発生するため、圧縮機本体1では、圧縮室や吸込み口13に後述する油を噴射して空気を冷却するようになっている。また、ロータ4,5及びメインケーシング6等を冷却してそれらの熱変形を抑制する効果や、ロータ4,5の潤滑作用、ロータ4,5とメインケーシング6の間の隙間のシール作用も得られるようになっている。
【0019】
圧縮室で圧縮されて油を含んだ空気は、吐出側ケーシング7に形成された吐出室14に吐き出されるようになっている。なお、吸込み口13には吸込みフィルタ(図示せず)が接続されている。
【0020】
遠心分離機構2は、メインケーシング6の下部に設けられた基部(天板部)と接続される二重円筒状の内壁部15及び外壁部16と、内壁部15と外壁部16の間に形成された旋回流路17と、メインケーシング6の下部に設けられ、吐出室14から入口を介して旋回流路17に圧縮空気を導く流入通路18と、メインケーシング6の下部に設けられ、内壁部15の内側から吐出口を介して濾過分離機構3に向かって圧縮空気を導く流出通路19と、外壁部16の下側に接続された下側ケーシング20(基板部)とを有している。なお、内壁部15と外壁部16は、それらの中心軸が略鉛直方向となるように配置されており、それらの中心軸が同軸であることが好ましい。下側ケーシング20は、その上部が外壁部の一部を構成し、その下部が液体貯留部を構成している。
【0021】
そして、流入通路18からの圧縮空気を旋回流路17で旋回させ、圧縮空気と油の比重差によって、圧縮空気に含まれる油を分離する(一次分離)。分離された油は、外壁部16に沿って流れながら落下して、下側ケーシング20の下部に溜められ、その一部が図示しない油系統(例えば、油を冷却するオイルクーラや配管等で構成された系統。)を介し圧縮機本体1の圧縮室に供給されるようになっている。一方、油と一次分離された圧縮空気は、内壁部15の内側に入り込み、流出通路19を介して濾過分離機構3に流出するようになっている。
【0022】
濾過分離機構3を構成するものとして、遠心分離機構2の流出通路19に接続されたマニホールド21と、マニホールド21の上側に取付けられた油分離エレメント容器22と、油分離エレメント容器22内に収納された油分離エレメント(図示せず)と備える。
【0023】
濾過分離機構3は、圧縮空気に残余する油を油分離エレメントで分離する(二次分離)。分離された油は、図示しない油系統を介し圧縮機本体1の吸込み口13に供給されるようになっている。一方、二次分離された圧縮空気は、図示しない圧縮空気系統(例えば、圧縮空気を冷却するエアクーラや配管等で構成された系統。)を介し圧縮空気の使用先に供給するようになっている。
【0024】
次に、本実施形態の特徴の一つである旋回流路17の上面の形状について説明する。
【0025】
図3は、
図1中断面III−IIIによる断面図(言い換えれば、メインケーシング6の下面図)であり、メインケーシング6における旋回流路17の上面等を示す。
図4は、
図3中断面T1による流入通路18の断面図及び
図3中断面T2〜断面T10による旋回流路17の断面図である。
図5は、
図3及び
図4で示された旋回流路17の上面の外縁23(外壁部16側の縁部)及び同上面の内縁24(内壁部15側の縁部)の位置変化を表す図である。なお、
図4及び
図5において、H
0は、例えば給油式スクリュー圧縮機の設置面(以下、「基準面」という。)からメインケーシング6のフランジ底面までの高さ、H
1は、基準面から流入通路18の上面の外縁までの高さ又H
2は、基準面から流入通路18の下面の外縁までの高さを示す。
【0026】
流入通路18の上面の一部(詳細には、
図3で示す断面T10近傍から断面T1までの範囲)は、雌ロータ5を収容するボア12に沿った形状で形成されている。また、メインケーシング6における旋回流路17の上面の一部(詳細には、
図3で示す断面T1から断面T5近傍までの範囲であって、圧縮空気が1/3周程度旋回する範囲)も、雌ロータ5を収容するボア12に沿った形状で形成されている。
これにより、旋回流路17の上面は、流入通路18の出口直後の領域で圧縮空気が1/6周程度旋回する範囲で(詳細には、
図3で示す断面T1から断面T3近傍までの範囲で)、その高さが圧縮空気の流れ方向に沿って凹部形状(好ましくは、滑らかな凹部曲面)となるように形成されている。表面の摩擦ロスや乱流の発生等を軽減する為である。
【0027】
図5を用いて、旋回流路17の上面の外縁の位置変化に着目して説明する。
図5で示すように、旋回流路17の上面の外縁23は、断面T1から断面T2へ移るときに曲線的に上昇し、断面T2から断面T3へ移るときに曲線的に下降して、断面T1と同じ位置まで戻る。断面T3から断面T4へ移るときにさらに曲線的に下降し、断面T4から断面T5へ移るときに曲線的に上昇する。断面T5から断面T6へ、さらに断面T7へ移るときに直線的に下降し、断面T7と断面T8の間では高さが変化しない。断面T8から断面T9へ移るときに直線的に下降し、断面T9と断面
T10の間では高さが変化しない。なお、変化の大きさが違うものの、旋回流路17の上面の内縁24の位置変化も概略同様である。
【0028】
このように断面T2やT5の凹部形状を旋回気流方向にそった曲面とし、それより下流の断面T7−T8間を水平とするのは、旋回流路17の夫々の位置に対する気流密度を考慮しての工夫といえる。断面T2のように、旋回気流の流入直後の場合、圧縮空気の密度も高く、上下左右方向に広がろうとする成分も強いが、所定距離旋回したT7付近では、下方への拡散もあり、T2付近よりは比較的密度が低下する。拡散成分の強い部分では、摩擦ロスや乱流発生をより抑制する理由から曲面形状とし、拡散成分の比較的弱まった部分では、平面構造として加工性の良さを優先するようになっている。
なお、全ての凹部形状を曲面にしても、三角や台形形状にしても効果を得ることができる。
【0029】
このように、給油式スクリュー圧縮機は、旋回流路17の上面における流入通路18の出口直後の領域に凹部が形成されるので、流入通路18の出口直後の圧縮空気が下方向だけでなく上方向にも拡がることができ、下向きの速度成分を抑制することができる。特に、旋回流路17では、遠心力の作用によって旋回中の圧縮空気は、外壁部16側の密度が高くなるので、流入通路18の出口直後の領域における旋回流路17の上面の外縁23を凹部形状とすることで、旋回流の下向きの速度成分の増加を効果的に抑制することが可能となる。したがって、圧縮空気の旋回距離の減少を抑えることができ、気液分離性能を向上できる。
【0030】
図4及び
図5で示すように、旋回流路17の上面は、全体としては断面T1からT10に向かうにつれて、下方に傾斜する傾向に構成しつつ、途中部分部分で上方向への凹部を複数有する形状となっている。このように概略波状の形状とすることで、更に、旋回中に作用する下向き成分を抑制する効果を期待することができる。即ち
図5の断面T2〜T5において、T2の凹部上面を通過した旋回気流に対して、T3に進むに従って下向き成分が徐々に増加し、T4で最大となる。しかしながら、T4を通過して下向きの付勢力がついた旋回気流に対して、T5上面凹部側の空気密度が低くなり、T5上面側への引張力が働き再度、旋回気流に対する下向き成分が抑制されるためである。
【0031】
なお、本実施形態においては、メインケーシング6における旋回流路17の上面は、雌ロータ5を収容するボア12に沿った形状で形成されることにより、流入通路18の出口直後の領域で、流路幅全体が圧縮空気の流れ方向に沿って凹となるように形成された場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば旋回流路17における圧縮空気の流れが反対回りとなるように流入通路18が配置されているか、若しくは雄ロータ4と雌ロータ5の配置が反対であれば、メインケーシング6における旋回流路17の上面は、雄ロータ4を収容するボア11に沿った形状で形成されてもよい。また、メインケーシング6における旋回流路17の上面は、流入通路18の出口直後の領域で、流路幅全体が圧縮空気の流れ方向に沿って凹となるように形成されるのであれば、ボア11又は12に沿った形状で形成されなくともよい。
【0032】
また、本実施形態においては、メインケーシング6における旋回流路17の上面は、流入通路18の出口直後の領域で圧縮空気が1/6周程度旋回する範囲で、流路幅全体が圧縮空気の流れ方向に沿って凹となるように形成された場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、流入通路18の出口直後の領域で圧縮空気が1/3周旋回する範囲内で、流路幅全体が圧縮空気の流れ方向に沿って凹となるように形成されればよく、この場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0033】
また、本実施形態においては、雄ロータ4及び雌ロータ5は、水平方向に並べて配置した場合を例にとって説明したが、これに限られず、上下方向に並べて配置してもよい。同様に、本実施形態では、給油式スクリュー圧縮機を例としたが、本発明は、遠心分離機構を利用する液供給式圧縮機に適用することができるものである。特に、本実施形態では、メインケーシング6の底面がボア形状等である場合との関係で好適な例を説明したが、本発明は、メインケーシング6底面が平面構成である場合であって、それに対して凹部形状を設けることも、圧縮機本体1と遠心分離機構2が一体構成でなく別体構成である場合であっても適用できるものである。
【符号の説明】
【0034】
1…圧縮機本体、2…
遠心分離機構(気液分離機構
)、3…濾過分離機構、4…雄ロータ、5…雌ロータ、6…メインケーシング、7…吐出側ケーシング、11,12…ボア、14…吐出室、15…内壁部、16…外壁部、17…旋回流路、18…流入通路、23…外縁、24…内縁