(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ワークに対しレーザ光を照射する加工ヘッドと、前記加工ヘッドを前記ワークに沿って移動させる移動部と、前記加工ヘッドに前記レーザ光を供給するレーザ発振器と、前記移動部及び前記レーザ発振器の動作を制御して前記加工ヘッドを所定の経路で移動させながら前記レーザ光の照射をオン/オフさせる制御部と、を備えたレーザ加工装置を用いて前記ワークに所定形状の複数の孔を形成するレーザ加工方法であって、
前記所定形状の内側に第1の加工開始点を設定すると共に、前記第1の加工開始点と前記所定形状上の一点とをつなぐスリットを、前記レーザ光の照射のオン/オフで前記所定形状の複数の孔に対し形成する前加工ステップと、
前記スリットを形成した前記所定形状の複数の孔に対し、前記一点を第2の加工開始点として前記所定形状の少なくとも一部を前記レーザ光の照射のオン/オフで切断する孔加工ステップと、
を含むことを特徴とするレーザ加工方法。
ワークに対しレーザ光を照射する加工ヘッドと、前記加工ヘッドを前記ワークに沿って移動させる移動部と、前記加工ヘッドに前記レーザ光を供給するレーザ発振器と、前記移動部及び前記レーザ発振器の動作を制御して前記加工ヘッドを所定の経路で移動させながら前記レーザ光の照射をオン/オフさせる制御部と、を備えたレーザ加工装置を用いて前記ワークに所定形状の孔を形成するレーザ加工方法であって、
前記所定形状の内側に第1の加工開始点を設定すると共に、前記第1の加工開始点と前記所定形状上の一点とをつなぐスリットを前記レーザ光の照射のオン/オフで形成する前加工ステップと、
前記一点を第2の加工開始点として前記所定形状の少なくとも一部を前記レーザ光の照射のオン/オフで切断する孔加工ステップと、
を含み、
前記所定形状は、平行に対向する第1の辺と第2の辺との辺組を複数有する多角形であり、
前記前加工ステップにおいて、
前記スリットとして、複数の前記辺組それぞれにおいて、前記第1の辺の端点を前記一点とした第1のスリットと、前記第2の辺の端点を前記一点とした第2のスリットと、を形成し、
前記孔加工ステップにおいて、
一つの前記辺組の前記第1の辺及び前記第2の辺を加工した後に、他の辺組の前記第1の辺及び前記第2の辺を加工することを特徴とするレーザ加工方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態に係るレーザ加工装置及びレーザ加工方法を、実施例のレーザ加工装置51とそれを用いた加工方法とにより
図1〜
図20を参照して説明する。
【0010】
まず、実施例のレーザ加工装置51の全体構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、レーザ加工装置51の全体斜視図である。
レーザ加工装置51は、ファイバレーザ加工装置であって、被加工材であるワークWにレーザ光を照射して、ワークWに対し開孔等の加工を施すものである。
レーザ加工装置51は、レーザ光源であるファイバレーザ発振器10と、ファイバレーザ発振器10から出力されたレーザ光をワークWに照射してワークWに加工を施す本体部20と、制御部30a及び記憶部30bを有してレーザ加工装置51の全体の動作を制御する制御装置30と、本体部20が備える加工ヘッド24に対し、アシストガスを制御しつつ供給するアシストガス供給装置41と、エアー(空気)を制御しつつ供給するエア供給装置42と、加工ヘッド24のノズル25からミストFMとして噴射させる液体(例えば水、或いはオイルなど)を制御しつつ供給する液体供給装置43と、を含んで構成されている。
アシストガス供給装置41,エア供給装置42,及び液体供給装置43の動作は、制御部30aにより制御される。
【0011】
制御装置30には外部のデータサーバ等から加工プログラムを含む加工情報が供給される。加工情報には、加工プログラムの他に、加工するワークWの材質、加工寸法等の加工に必要な情報が含まれる。供給された加工情報は記憶部30bに記憶され、制御部30aにより参照される。
【0012】
ファイバレーザ発振器10は、制御部30aの指示により、レーザ光を発振する。ファイバレーザ発振器10と後述する加工ヘッド24との間は、プロセスファイバ8で繋がれている。ファイバレーザ発振器10で生成されたレーザ光は、プロセスファイバ8を介して加工ヘッド24に供給される。
【0013】
本体部20は、ワークWを載置する載置面21aを有する加工テーブル21と、加工テーブル21に設けられ、その載置面21aに沿う一方向(X軸方向)に移動するX軸キャリッジ22と、を有している。
X軸キャリッジ22には、載置面21aに沿い、かつX軸方向と直交するY軸方向に移動するY軸キャリッジ23が設けられている。X軸キャリッジ22及びY軸キャリッジ23を移動部とも称する。
Y軸キャリッジ23には、加工ヘッド24がZ軸方向(X軸及びY軸に直交する方向)に移動可能に取り付けられている。
X軸キャリッジ22,Y軸キャリッジ23,及び加工ヘッド24は、それぞれ制御部30aの制御下にある駆動部(図示せず)の駆動により互いに独立して移動するようになっている。
【0014】
加工ヘッド24には、上述のように、プロセスファイバ8が接続され、ファイバレーザ発振器10から出力されたレーザ光が供給される。
加工ヘッド24は、筐体24aと、筐体24aの内部に備えた焦点調節部である光学系24bと、筐体24aの先端に取り付けられたノズル25と、を有する。
光学系24bは、供給されたレーザ光に対し所定の光学的処理を施してノズル25からその軸線CL25上に加工テーブル21に向けレーザ光を照射させる。
加工ヘッド24は、光学系24bによる光学的処理において、少なくとも、照射するレーザ光(以下、レーザ光Lと称する)の焦点位置(合焦位置)をワークWの厚さ方向の所定位置に設定できるようになっている。すなわち、焦点位置をZ軸方向に調節できるようになっている。
この調節動作は、制御部30aによって制御される。
【0015】
また、レーザ加工に伴って生じたガスや溶融物を除去するための、ノズル25から吹き出されるアシストガスが、アシストガス供給装置41から供給される。
さらに、加工ヘッド24には、開孔加工において、ノズル25からワークWに噴射するミストFMとなる液体及びその液体をミスト化するためのエア(空気)が、それぞれ液体供給装置43及びエア供給装置42とから供給される。
【0016】
加工ヘッド24は、X軸キャリッジ22とY軸キャリッジ23との協働動作により、ワークWに対向する範囲において、少なくともワークWに沿う2次元的移動が可能とされている。また、ワークWの所望の加工点Wpに対してレーザ光Lを所定の焦点位置をもって照射し、加工を施すことができる。
【0017】
図2は、加工ヘッド24を説明するための模式図である。
加工ヘッド24には、ワークWにおけるレーザ光Lの照射位置の周囲に、冷媒としてミストFMを噴射するためのミストノズル1が備えられている。
また、加工ヘッド24には、照射するレーザ光Lの径方向外側近傍に、ミストノズル1と同様に冷媒としてミストFMを噴射するためのミストノズル2が備えられている。
ミストノズル1及びミストノズル2には、液体供給装置43からそれぞれ開閉弁V1及びV2を経て冷媒として液体が供給される。
開閉弁V1及び開閉弁V2は、制御部30aにより開閉及び流量が制御される。
従って、ミストノズル1及びミストノズル2からのミストFMの噴射を、両方有り、両方無し、及びいずれか一方のみ有り、の選択肢から選択的に実行できる。また、噴射有りとした場合の噴射量を調整することができる。
【0018】
ミストノズル2は、ミストノズル1によるミストFMの噴射範囲外の位置にミストを噴射するものであり、水平面に回動自在とされたリングギヤ3に一体的に装着されている。
リングギヤ3は、モータ4の出力軸に取り付けられたピニオン4aに噛合し、モータ4の駆動により回動するようになっている。モータ4の駆動は、制御部30aにより制御される。
従って、モータ4の駆動を制御することで、リングギヤ3に一体化されたミストノズル2の、レーザ光Lに対する周方向位置を制御することができる。
【0019】
レーザ光Lに対するミストノズル2の周方向位置を、例えば加工ヘッド24によるレーザ切断加工位置の進行方向前方側に位置させることで、ミストノズル1による冷却範囲外の前側位置を予め冷却することができる。
これにより、ワークWにレーザ光Lを照射して切断加工をする際に、熱伝導によって蓄熱する傾向にあるレーザ加工の進行方向の前方位置を、予め冷却することができる。
【0020】
アシストガスは、ノズル25から、レーザ光Lと共にワークWに向け噴射される。
【0021】
次に、上述の加工ヘッド24を備えたレーザ加工装置51によって、ワークに対し孔を形成する方法例を、加工例1〜8により説明する。
【0022】
図3は、この例におけるワークW1の加工後の状態、すなわち、複数の角孔W1aが格子状に配列されている状態を示した平面図である。この例では、ワークW1を、3行3列の9個の角孔W1aが形成されたものとしている。各角孔W1aは、同じ形状であり、縦辺(列の辺)の長さD1、横辺(行の辺)の長さD2として形成される。
すなわち、角孔W1aは、平行に対向する第1の辺と第2の辺との辺の組(辺組)を複数有する多角形形状とされている。ワークW1には、この多角形形状の角孔W1aが、格子状に辺組の向きを揃えて複数形成される。
【0023】
(加工例1:角孔の格子状配列の場合−スリット前加工実施)
加工例1は、レーザ加工を、最終的に孔として抜く部分にスリットSLを形成する前加工と、本加工と、に分けて行う方法である。
以下、加工例1について、
図4〜
図7を参照して説明する。
図4〜
図7において、ワークW1に対するレーザ光Lのオンとしての移動軌跡が、太実線で示されている。また、レーザ光Lをオフとしての移動であるが、仮にオンとして移動した場合の軌跡(軸線CL25の位置の軌跡と同じ)が破線で示されている。また、矢印の示す方向がレーザ光L(加工ヘッド24)の移動方向となる。
【0024】
制御部30aは、レーザ光Lがこの軌跡で矢印の方向に移動するように、X軸キャリッジ22及びY軸キャリッジ23の動作を制御する。
実線は、制御部30aによりレーザ光Lの照射がオンとされレーザ光LがワークW1に対して照射されている状態であり、破線は、オフとされレーザ光LがワークW1に対して照射されていない状態である。この実線と破線の区別は、以下の加工例2〜9においても同様である。
説明のため、各角孔における行に対応する辺をアルファベット順で規定し、列に対応する辺をイロハ順で規定している。
【0025】
まず、前加工について説明する。前加工では、角孔W1aの各辺を加工する前に、角孔W1aの対角線に相当する直線上のスリットSLを形成する。
【0026】
前加工方法の例として、以下のスリット形成方法(イ),(ロ)を説明する。
<スリット形成方法(イ)>
図4に示されるように、まず、角孔W1aとされる一点鎖線で囲まれた範囲における中央のピアス位置P1に、レーザ光Lによるピアス加工で孔を開ける。そして、加工ヘッド24を、レーザ光Lをオンとしたままピアス位置P1から角孔W1aのA行イ列に該当する角部P2に向けて対角線上に移動し、角部P2に達したらレーザ光Lの照射をオフとしてピアス位置P1に戻す(戻し経路は不図示)。
加工ヘッド24がピアス位置P1に戻ったら、レーザ光Lの照射をオンとして、今度は角孔W1aのB行ロ列に該当する角部P3に向けて対角線上に移動し、角部P3に達したらレーザ光Lの照射をオフとする。
これにより、角部P2と角部P3とを繋ぐスリットSLが形成される。
同様に、他のすべての角孔に、スリットSLを形成する。従って、ピアス位置P1は、スリットSLのピアス加工開始点となる。
【0027】
このスリットSLを形成するためのレーザ光Lの移動経路は、限定されるものではない。
上述のように、スリット形成方法(イ)は、角孔W1a毎にスリットSLを形成する方法である。
【0028】
次に、スリット形成方法(ロ)について
図5及び
図6を参照して説明する。この方法は、スリットSLの半分を、全ての角孔W1aに対応する経路で形成し、その後、スリットSLの残りの半分を、再度全部の角孔W1aに対応する経路で形成する方法である。
【0029】
スリット形成方法(ロ)では、レーザ光L(加工ヘッド24)を、まず
図5に示される経路K1Aで移動させ、その後、
図6に示される経路K1Bで移動させる。
経路K1Aでは、STARTで示された位置から右下方に向け、加工ヘッド24を、レーザ光Lをオフとして、隅(この例では図の右上)に開ける角孔W1acの中心位置に移動させる。
この中心位置をピアス位置P1としてレーザ光Lをオンとし、図の右下方へ、角孔W1acの対角線の半分に相当する距離移動させたら、そこを加工終了点PEとしてレーザ光Lをオフとする。これにより、角孔W1acの対角線の半分に相当するスリットSLhaが形成される。
【0030】
次いで、レーザ光Lをオフとしたまま加工ヘッド24を右下方から左上方に向かうように折り返し、
図5の上から2段目の右端位置に開ける角孔W1afの中心位置に移動させる。
この中心位置をピアス位置P1としてレーザ光をオンとし、図の左上方へ角孔W1afの対角線の半分に相当する距離移動させたら、そこを加工終了点PEとしてレーザ光Lをオフとする。これにより、角孔W1afの対角線の半分に相当するスリットSLhaが形成される。
【0031】
以下、同様に、経路K1Aに沿い、各角孔に対応した対角線の半分に相当するスリットSLhaを形成する。
経路K1Aにおける最後の角孔W1agに対応するスリットSLhaを形成し、加工ヘッド24がENDの位置に達したら、次に、加工ヘッド24を、
図6に示される経路K1Bで移動させる。
【0032】
経路K1Bでは、加工ヘッド24を経路K1AのEND位置から左上方に向け折り返し、レーザ光Lが照射される位置が、角孔W1agに対応して形成したスリットSLhaのピアス位置P1(
図5参照)に達したら、レーザ光Lをオンとすて加工を開始する。
この加工開始点は、既にスリットSLhaが形成されてピアス加工にはならないので、単に加工開始位置PSと称する。
レーザ光Lを角孔W1agの対角線の半分(残りの分)に相当する距離移動させたら、そこを加工終了点PEとしてレーザ光Lをオフとする。これにより、角孔W1agの対角線の半分に相当するスリットSLhbが形成される。
従って、経路K1Aと経路K1Bとにより、角孔W1aの対角線に相当し中央部位がピアス加工されたスリットSLが形成される。
【0033】
以下、経路K1Bに沿って、各角孔に対応するスリットSLhbを形成し、経路K1Bにおける最後の角孔W1acに対応するスリットSLhbを形成して、前加工を終了する。
この前加工において、ピアス加工されるピアス位置P1の周囲には、スパッタspが付着するが、最終的にスクラップとなる部分なので、ワークW1の品質に実質的に影響はない。
【0034】
前加工により、すべての角孔W1aに対応するスリットSLを形成したら、加工ヘッド24を
図7に示される経路K2で移動させつつ、レーザ光Lの照射のオン/オフを制御して、角孔W1aの開孔加工をする。
尚、辺ヘ1から辺A3へは、ループ状の経路K2Rを経ずに移動してもよい。
【0035】
加工例1によれば、例えば、辺イ1の加工開始点イ1aがピアス加工となるところを、予めスリットSLを形成することにより、角部P2としてピアス加工ではない加工開始点となる。また、辺ロ1の加工開始点ロ1aは、スリットSLにより角部P3としてピアス加工ではない加工開始点となる。
以下、すべての加工開始点が、予め形成されたスリットSLの端点に合致してピアス加工ではない加工開始点となる。
従って、角孔W1aが設けられたワークW1は、スパッタspの付着がない高品質のものとなる。
【0036】
スリットSLhaのピアス位置P1及びその近傍には、スリット加工でレーザ光Lをオンする前に、予めミストノズル1又はミストノズル2からのミスト噴射により液体の膜を形成しておいてもよい。
この膜の形成により、ピアス位置P1近傍へのスパッタspの付着が抑制される。
例えば角孔W1aが極端な細長形状の場合(長さD1が極めて小さい場合など)には、スパッタspが加工の経路K3,K4の外側にまで飛散してワークW1の外観品質が低下する虞もある。これに対して、ピアス位置P1近傍へのミスト噴射は、この品質低下をほぼ完全に防止することができる。
【0037】
加工例1は、ピアス位置P1のピアス加工でスパッタが発生するので、ノズルへ25のスパッタ付着の可能性がある。そこで、ピアス位置P1を加工する際のノズル25の位置を、他の加工のときよりもワークW1から離隔させた位置(上方の位置)にするとよい。これにより、ノズル25へのスパッタ付着を抑制することができる。
また、スリットSLを形成する加工において、ノズル25の位置を他の加工(辺の加工)よりも高くしてもよい。
【0038】
次に、角孔を千鳥状に形成する場合の加工方法を二例、加工例2及び加工例3として
図8〜
図11を参照して説明する。
まず、加工例2について
図6,
図8,及び
図9を参照して説明する。
【0039】
(加工例2:角孔の千鳥状配列の場合<その1>−スリット前加工実施)
この千鳥状配列においても、ワークW2に形成される角孔W2aは、平行に対向する第1の辺と第2の辺との辺の組(辺組)を複数有する多角形形状とされている。ワークW2には、この多角形形状の角孔W2aが、千鳥状に辺組の向きを揃えて複数形成される。
ワークW2の角孔W2aを形成する際には、前加工として、それぞれの角孔W2aにおける対角線に相当するスリットSLを形成しておく。
図6に示される千鳥状配列の場合、孔としてみると、行数が五であり、列数は、奇数行の列数が四、偶数行の列数が三である。
辺としてみると、各横辺に対応するA〜Jの十行となる。また、縦辺としての列は、奇数行の縦辺に対応する十列と、偶数行の縦辺に対応する四列と、を合わせたイ〜カの十四列となる。
【0040】
スリットSLは、上述のスリット形成方法(イ)又はスリット形成方法(ロ)により、各角孔W2aの中心をピアス位置P1として形成する。
スリットSLは、列方向の左右両端の角孔を除き、すべて同じ傾斜方向で直状に形成されている。
図8においては、左下がり方向の傾斜である。この部分は、スリット形成方法(ロ)により効率的に形成できる。
左右両端部の角孔W2aにおいて、ピアス位置P1から最外側の角部P5へ繋ぐスリットSLを、左下がり(右上がり)の対角線となる角部P5ではない方の角部P6に繋ぐように形成する。すなわち、スリットSLを一直線状ではなく、ピアス位置P1を頂点とするヘ字状に形成する。この部分は、スリット形成方法(イ)により形成する。
【0041】
図8における右上の角孔W2aに対応するスリットSLaで説明すると、スリットSLaは、ピアス位置P1から左側は、左下がりで形成され、右側が右下がりで角部P6に繋げられている。
これは、配列が千鳥状であることから、後述する辺の加工において、両端部分での折り返しが一回少なくなることに起因している。
【0042】
前加工により、各角孔W2aに対応するスリットSLが形成されたら、本加工として、角孔W2aの各辺を加工する。
まず、
図9(a)に示されるように、縦辺を加工する。すなわち、STARTからレーザ光Lをオフとし、加工ヘッド24を、左上の角孔W2aにおける辺イ1の左上の角部である加工開始点イ1aに移動し、そこからレーザ光Lをオンとして辺イ1の加工を行う。
このときの加工開始点イ1aは、前加工で設けられたスリットSLの端点であるので、ピアス加工にはならず、スパッタは発生しない。
以下、イ列を
図9(a)における上方から下方に向けレーザ光Lのオン/オフを繰り返して加工し、次にロ列を下方から上方に向けレーザ光のオン/オフを繰り返して加工する。
このようにジグザグ状の経路K3で加工し、最後の縦辺となるカ列を下方から上方に加工して加工終了点カ1bに達したら、レーザ光Lをオフにしてループ状の経路K3Rを移動し、横辺の加工を行う。
【0043】
縦辺の加工において、各辺の加工開始点は、すべて、前加工で形成されたスリットの端点に対応している。そのため、ピアス加工とはならず、ワークW2表面へのスパッタが付着が抑えられる。また、ノズル25へのスパッタの付着が抑えられる。
【0044】
図9(b)は、
図9(a)に続けて実行される横辺の加工の経路を説明するための図である。
ループ状の経路K3Rから、右上の角孔W2aにおける辺A4の右上の角部A4aである加工開始点カ1aに移動し、レーザ光LをオンとしてA行の加工を行う。角部A4aは、縦辺の加工ですでに形成された辺カ1の加工終了点カ1bに合致しているので、ピアス加工にはならない。
A行の加工が終了したら、左端で折り返し、B行の加工を行う。以下、ジグザグ状の経路K4に沿ってC行〜J行の加工を行い、終了する。
すべての横辺を加工するための加工開始点は、すでに加工済みの縦辺の端点に合致しているので、ピアス加工にならず、ワークW2表面へのスパッタspの付着が抑えられる。また、ノズル25へのスパッタspの付着が抑えられる。
【0045】
次に、加工例3について
図10及び
図11を参照して説明する。
(加工例3:角孔の千鳥状配列の場合<その2>−スリット前加工実施)
加工例3は、前加工において、スリットSLを、すべての角孔W2において右下がり及び左下がりのいずれかに統一して形成する。
図10には、この前加工が終了した状態が示されている。各スリットSLの形成方法は、上述のスリット形成方法(ロ)を適用できる。
【0046】
本加工では、まず、
図11(a)に示されるように、縦辺を加工する。すなわち、START位置からレーザ光Lをオフとし、照射位置を、左下の角孔W2pにおける辺イ5の左下の角部である加工開始点イ5aに移動する。そして、そこからレーザ光Lをオンとして辺イ5の加工を行う。
このときの加工開始点イ5aは、前加工で設けられたスリットSLの端点であるので、ピアス加工にはならず、スパッタの付着は生じない。
以下、イ列の辺加工を、
図9(a)における一方向に(下方から上方に向け)レーザ光Lをオン/オフして行い、次にロ列をとばしてハ列の辺加工を、一方向とは反対方向に(上方から下方に向け)レーザ光Lをオン/オフして行う。
次いでロ列に戻り、ロ列の辺加工を、下方から上方に向け同様に行い、ニ列をとばしてホ列の辺加工を、上方から下方に向け同様に行う。
このように、未加工列を一列とばして進み、一列戻る、という経路K2Aで辺加工し、最後の縦辺となるカ列の辺加工を上方から下方に向けて行い加工終了点カ5bに達したら、レーザ光Lをオフにしてループ状の経路K2Rを移動し、次の横辺の加工を行う。
【0047】
図11(b)は、
図11(a)に続けて実行される横辺の加工の経路K2Bを説明するための図である。
レーザ光Lの照射位置を、ループ状の経路K2Rから、右下の角孔W2sにおける辺I7の右上の角部I7aである加工開始点カ5aに移動し、レーザ光Lのオン/オフを繰り返してI行の辺加工を行う。角部I7aは、縦辺の加工ですでに形成された辺カ5の加工開始点に合致しているので、ピアス加工にはならない。
I行の辺加工が終了したら、左端で折り返し、J行の辺加工を、右方に向けレーザ光のオン/オフを繰り返して行う。次に、未加工のH行はとばしてG行の辺加工を同様に行い、次いでH行の辺加工を同様に行う。
このように、未加工の行を一つとばして進み、一行戻る、という経路K2Bで加工し、最後の横辺となるB行の辺加工を行い、終了する。
【0048】
縦辺及び横辺を加工するためのすべての加工開始点は、すでに加工済みのスリットSL又は縦辺の端点に合致している。そのため、ピアス加工にはならず、ワークW2表面へのスパッタspの付着が抑えられる。また、ノズル25へのスパッタspの付着が抑えられる。
【0049】
以上説明した、前加工と、縦辺加工及び横辺加工を含む本加工と、を含む加工方法により、千鳥状配列の角孔を、ワークW2の表面やノズル25へのスパッタspの付着を抑制しつつ形成することができる。
【0050】
次に、丸孔を格子状に形成する場合の加工方法を説明する。この加工方法については、二つの加工例を加工例4及び加工例5として、それぞれ
図12及び
図13を参照して説明する。
加工例4は、前加工で形成するスリットSLの形成方向(形成時の加工ヘッド24の移動方向)を同一とし、加工例5は非同一としている。
【0051】
(加工例4:丸孔の格子状配列の場合<その1>−スリット前加工実施)
ここでは、ワークW3に、三行三列の格子状に丸孔W3aを形成する例を説明する。
加工例4も、レーザ加工を、最終的に孔として抜く部分にスリットSLを形成する前加工と、本加工と、に分けて行う方法である。スリットSLを形成することで、ミスト噴射を必ずしも行わなくてよいものとしている。
【0052】
まず、前加工を行う。前加工は、
図12(a)に示されるように、図の上方から下方に向け、加工ヘッド24を、レーザ光Lをオフとして隅(この例ではA行イ列)の丸孔W3aの中心位置に移動させる。
この中心位置をピアス位置P1としてレーザ光Lをオンとし、図の下方に半径に相当する距離移動させたら、そこを加工終了点PEとしてレーザ光をオフとする。これにより半径に相当するスリットSLが形成される。
【0053】
次いで、加工ヘッド24を更に図の下方に移動させて、イ列の残りの二つ(B行及びC行)の丸孔W3aにおけるスリットSLを同様に形成する。
イ列の加工が終了したら、加工ヘッド24を、経路K5で示されるようにロ列の上方に移動させて、ロ列について、A行からC行の順にスリットSLを加工する。ロ列の加工が終了したら、次にハ列について、同様に、A行からC行の順にスリットSLを加工する。
【0054】
すなわち、この加工例4では、前加工においてすべてのスリットSLを、加工ヘッド24の移動方向を同一方向として形成する。
従って、スリットSLは、列毎に、ピアス位置P1から同じ向き(
図12の例では下方)に形成される。
【0055】
前加工で、すべての丸孔W3aに対応するスリットSLを形成したら、次に、
図12(b)に示される本加工を行う。
本加工では、まず、A行イ列に該当するスリットSLの加工終了点PEに、図の左方側からオフ状態で加工ヘッド24を移動させる。加工終了点PEに達したら、レーザ光Lをオンにして丸孔W3aの周形状に沿って一周する経路K6aで切断加工をする。
経路K6aでの切断加工が終了すると、スリットSLが形成された丸孔W3aの内側の部分が、ワークW3からスクラップとして分離する。
【0056】
次いで、加工ヘッド24を経路K6bに従って直線状に移動させ、A行ロ列、A行ハ列の順で、スリットSLの加工終了点PEを起点とする同様の経路K6aでの加工を施し、A行の丸孔W3aの加工を行う。
次に、移動方向を弧状の経路K6cで反転し、B行ハ列、B行ロ列、B行イ列、のスリットSLに対して経路K6a及び経路K6bによる同様の加工を行い、その後、C行ハ列、C行ロ列、C行ハ列、のスリットSLに対して同様の加工を行う。この順の加工で、すべての丸孔W3aの加工が完了する。
【0057】
この加工例4では、前加工となるスリットSLの形成の経路K5において、加工ヘッド24を(孔の列数−1/2)回だけ往復移動させる。また、本加工では、同一行における加工は、丸孔W3aの周に相当する経路K6a及び弧状の経路K6c以外の経路K6bは、加工ヘッド24は直線状の移動となる。
【0058】
(加工例5:丸孔の格子状配列の場合<その2>−スリット前加工実施)
図13(a)に示されるように、加工例7では、前加工において、イ列のスリットSLを加工例4と同様に形成する。
次に、ロ列を、加工例4ではA行から加工したが、加工例5では、経路K7で示されるように、C行からA行に向けて加工する。
その後、更に、ハ列を、再びA行からC行に向けて加工する。
すなわち、加工例5では、加工ヘッド24の移動方向が、加工する列毎に逆となる。
従って、加工例5では、スリットSLは、列毎に、ピアス位置P1から逆向きに形成される。
図13の例では、イ列及びハ列がピアス位置P1から下方に向けて、ロ列が上方に向けて形成される。
【0059】
前加工の経路K7に沿って、すべての丸孔W3aに対応するスリットSLを形成したら、次に、
図13(b)に示される本加工を行う。
本加工では、まず、加工例4と同様に、A行イ列の丸孔W3aの周形状に沿って一周する経路K8aで切断加工をする。
次に、加工ヘッド24を、A行ロ列に対応するスリットSLの加工終了点PEへ経路K8bで移動させる。この加工終了点PEは、スリットSLの向きが逆転していることから、丸孔W3aにおけるピアス位置P1を挟んで図の上方側にある。すなわち、加工ヘッド24を、丸孔W3aの直径分、図の上方向に移動させる。A行ロ列の加工後、A行ハ列へ向かう際にも、経路K8bにおいて、丸孔W3aの直径分、図の下方向に移動させる。
以下、
図13(b)の例では、弧状の経路K8cを経由してロ列へ向かう移動及びロ列から次への移動に、丸孔W3aの直径分移動させる経路で加工ヘッド24を移動させる。
【0060】
この加工例5では、前加工となるスリットSLの形成で加工ヘッド24を(列数/2)回だけ往復移動させる。また、本加工では、丸孔W3aの周に相当する経路K8aの移動及び弧状の経路K8cの移動と、経路K8bの列間移動における丸孔W3aの直径分の移動と、を行う。
【0061】
加工例4及び加工例5で示したように、両例は加工の際の経路長が異なる。そのため、経路は、加工する丸孔の配列や数に応じて、全体の加工時間が短くなるように設定するとよい。例えば、丸孔W3aの直径が比較的大きい場合は、本加工での移動経路が短かくて済む加工例6で加工するのが好ましい。
【0062】
上述の加工例4及び加工例5によれば、すべての丸孔W3aについて、その周を加工するための加工開始点は、スリットSLの加工終了点PEに合致している。これにより、加工はピアス加工にならない。そのため、ワークW3の表面やノズル25へのスパッタの付着が抑えられる。
【0063】
次に、丸孔を千鳥状に形成する場合の加工方法を説明する。この加工方法については、二つの加工例を加工例6及び加工例7として、それぞれ
図14及び
図15を参照して説明する。
加工例8は、前加工で形成するスリットSLの形成方向(形成時の加工ヘッド24の移動方向)を同一とし、加工例8は非同一とした例である。
【0064】
(加工例6:丸孔の千鳥状配列の場合<その1>−スリット前加工実施)
ここでは、ワークW4に、五行三列の45°角千鳥状に丸孔W4aを形成する例を説明する。
加工例6も、レーザ加工を、最終的に孔として抜く部分にスリットSLを形成する前加工と、本加工と、に分けて行う方法である。スリットSLを形成することで、ミスト噴射を必ずしも行わなくてよいものとしている。
【0065】
まず、前加工を行う。前加工は、
図14(a)に示されるように、図の上方から下方に向け、加工ヘッド24を、レーザ光Lをオフとして隅(この例ではA行イ列)の丸孔W4aの中心位置に移動させる。
この中心位置をピアス位置P1としてレーザ光Lをオンとし、図の下方に半径に相当する距離移動させたら、そこを加工終了点PEとしてレーザ光をオフとする。これにより半径に相当するスリットSLが形成される。
【0066】
次いで、加工ヘッド24を更に図の下方に移動させて、イ列の残りの二つ(C行及びE行)の丸孔W4aにおけるスリットSLを同様に形成する。
イ列の加工が終了したら、加工ヘッド24を、経路K9で示されるようにロ列の上方に移動させて、ロ列について、B行、D行の順にスリットSLを加工する。ロ列の加工が終了したら、次にハ列について、同様に、A行,C行,E行の順にスリットSLを加工する。
【0067】
すなわち、この加工例6では、前加工においてすべてのスリットSLを、加工ヘッド24の移動方向を同一方向として形成する。
従って、スリットSLは、列毎に、ピアス位置P1から同じ向き(
図14の例では下方)に形成される。
【0068】
前加工で、すべての丸孔W4aに対応するスリットSLを形成したら、次に、
図14(b)に示される本加工を行う。
本加工では、まず、A行イ列に該当するスリットSLの加工終了点PEに、図の左方側からオフ状態で加工ヘッド24を移動させる。加工終了点PEに達したら、レーザ光Lをオンにして丸孔W4aの周形状に沿って一周する経路K10aで切断加工をする。
経路K10aの切断加工が終了すると、スリットSLが形成された丸孔W4aの内側の部分が、ワークW4からスクラップとして分離する。
【0069】
次いで、加工ヘッド24を経路K10bに従って直線状に移動させ、A行ハ列のスリットSLの加工終了点PEを起点とする同様の経路K10aでの加工を施し、A行の丸孔W4aの加工を行う。
次に、移動方向を弧状の経路K10cで反転し、B行ロ列のスリットSLに対して経路K10aによる同様の加工を行う。その後、再度移動方向を反転し、C行イ列及びC行ハ列のスリットSLに対して経路K10aによる同様の加工を行う。この順の加工で、すべての丸孔W3aの加工が完了する。
【0070】
この加工例6では、前加工となるスリットSLの形成の経路K9において、加工ヘッド24を(丸孔の列数−1/2)回だけ往復移動させる。また、本加工では、加工ヘッド24を(丸孔の行数/2)回だけ往復移動させる。すなわち、
図14(a),(b)について、往復回数は、それぞれ2.5回である。
【0071】
(加工例7:丸孔の千鳥状配列の場合<その2>−スリット前加工実施)
図15(a)に示されるように、加工例8では、前加工において、加工例8と同様にイ列のスリットSLを、A行,C行,E行の順に形成する。次に、ロ列を、加工例8ではB行,D行の順に加工したが、加工例7では、経路K11に示されるように、D行,B行の順に加工する。
その後、更に、ハ列を、再びA行,C行,E行の順に加工する。
すなわち、加工例7では、加工ヘッド24の移動方向が、加工する列毎に逆になっている。
従って、加工例7では、スリットSLは、列毎に、ピアス位置P1から逆向きに形成される。
図15の例では、イ列及びハ列がピアス位置P1から紙面下方に向けて、ロ列が紙面上方に向けて形成される。
【0072】
前加工の経路K11に沿って、すべての丸孔W4aに対応するスリットSLを形成したら、次に、
図15(b)に示される本加工を行う。
本加工では、まず、加工例8と同様に、A行イ列の丸孔W4aの周形状に沿って一周する経路K12aで切断加工をする。
経路K12aの切断加工が終了すると、スリットSLが形成された丸孔W4aの内側の部分が、ワークW4からスクラップとして分離する。
【0073】
次いで、加工ヘッド24を、経路K12bに沿ってB行ロ列のスリットSLの加工終了点PEに移動させ、経路K12aでの加工をしてB行ロ列の丸孔W4aを形成する。
次に、経路K12bに沿ってA行ハ列の加工終了点PEに移動し、経路K12aでの加工をする。
その後、移動方向を弧状の経路K12cで反転し、C行ハ列、D行ロ列、C行イ列の順で同様の加工を行う。再度、移動方向を弧状の経路K12cで反転し、最後はE行イ列,E行ハ列の加工を行う。この順の加工で、すべての丸孔W4aの加工が完了する。
【0074】
この加工例8では、前加工となるスリットSLの形成の経路K11において、加工ヘッドを(丸孔の列数/2)回だけ往復移動させる。また、本加工でも、加工ヘッド24を(丸孔の行数+1)/4回だけ往復移動させる。すなわち、
図15(a),(b)については、それぞれ往復回数は1.5回である。
【0075】
丸孔の千鳥状配列の場合は、加工ヘッド24の移動経路における往復移動回数が、加工例7の方が前加工と本加工とのいずれにおいても加工例6よりも少ないので、加工時間短縮の観点からは、加工例8のように加工することが望ましい。
【0076】
上述の加工例6及び加工例7によれば、全ての丸孔W4aの周を加工するための加工開始点は、スリットSLの加工終了点PEに合致しているのでピアス加工にならない。そのため、ワークW4の表面やノズル25へのスパッタの付着が抑えられる。
【0077】
次に、多角形の例として、六角形の孔(ここでは、正六角形とする)を千鳥状に形成する場合の加工方法を、加工例8として
図16〜
図20を参照して説明する。
【0078】
(加工例8:六角孔の千鳥状配列の場合−スリット前加工実施)
ここでは、ワークW5に、三行五列の60°千鳥状に六角孔W5aを形成する例を説明する。この例において、ワークW5に形成される角孔W5aは、平行に対向する第1の辺と第2の辺との辺の組(辺組)を複数(この例で三つ)有する多角形形状とされている。ワークW5には、この多角形形状の角孔W5aが、千鳥状に辺組の向きを揃えて複数形成される。
図16に示されるように、六角孔W5aの対角線を上下方向とする。
まず、前加工の手順1として、加工ヘッド24を、レーザ光Lをオフとして、隅(この例ではA行イ列)の六角孔W5aの中心位置に、図の上方から移動させる。この中心位置をピアス位置P1としてレーザ光Lをオンとし、図の下方の頂点に対応する位置を加工終了点PEとしてレーザ光Lをオフとする。これにより、対角線の半分に相当するスリットSL1が形成される。
加工ヘッド24を更に図の下方に移動させて、イ列の残りのC行の六角孔W5aにおけるスリットSL1を同様に形成する。
イ列の加工が終了したら、経路K13で示されるように、ロ列の六角孔W5aにおけるスリットSL1を、下方から上方に向けて加工する。
以下、同様に、経路K13に沿って折り返しを伴い、列毎に加工方向が逆となるようにスリットSL1を形成する。
【0079】
次に、前加工の手順2として、
図17に示されるように、手順1とは逆の経路K14で加工ヘッド24を移動し、ピアス位置P1から対角線の残りの部分にスリットSL2を形成する。スリットSL1とスリットSL2とにより六角形の一本の対角線となる。
図17において、スリットSL1は、形成されたスリットを示す実線で記されているが、この部分はレーザ光Lの照射をオフとして移動する。
【0080】
手順1及び手順2により前加工が終了したら、
図18〜
図20に示される本加工を、それぞれ手順3〜手順5として行う。
【0081】
手順3では、すべての六角孔W5aについて、六辺の内の平行に対向する一対の辺を加工する。
図18において、スリットSLの両端が、加工終了点PEとなるので、この点が加工開始点となるように、経路K15で、六角孔W5aの内の平行に対向する一対の辺LN2を加工する(実線矢印)。
経路K15は、六角孔の形状や、千鳥の角度等に応じて最短に設定するのが加工効率の観点から望ましい。
図18に示された例では、経路K15により、<1>から<16>までこの順で一対の辺LN2を加工する。
【0082】
次に、手順4として、
図19に示されるように、辺LN2の形成における加工終了点PEから加工が開始されるように、六角形の残りの辺の内の平行に対向する一対の辺LN3を経路K16に沿って加工する(実線矢印)。
経路K16も、六角孔の形状や、千鳥の角度等に応じて最短に設定するのが加工効率の観点から望ましい。
図19に示された例では、経路K16により、<1>から<16>までこの順で一対の辺LN3を加工する。
【0083】
最後に、手順5として、
図20に示されるように、六角形の残りの一対の辺LN4を経路K17に沿って加工する(実線矢印)。
一対の辺LN4は、一方の端点が、既に加工済みのスリットSL及び辺LN2の端点と合致し、他方の端点も、加工済みの辺LN3の端点と合致している。
従って、一対の辺LN4の加工はピアス加工とはならないので加工方向は限定されない。経路K17は、設定し得る複数の経路の内の一つの例であり、例えば
図20に示された<1>から<16>までの順で一対の辺LN3は加工される。
【0084】
上述の加工例8によれば、すべての六角孔W5aについて、その外形を加工するための加工開始点は、スリットSLの加工終了点PEに合致している。これにより、加工はピアス加工にならない。そのため、ワークW5の表面やノズル25へのスパッタの付着が抑えられる。
【0085】
レーザ加工装置51は、制御部30aが経路設定部を備え、加工プログラムに基づいて、連続開孔加工経路の設定及びその最短化設定を行えるようにしてもよい。
また、これらの設定を作業者側で行い、経路プログラムを記憶部30bに記憶させ、制御部30aがその経路プログラムを参照して連続開孔加工を実行してもよい。
【0086】
実施例のレーザ加工方法によれば、前加工によってスクラップとなる部分にピアス加工を伴うスリットを予め形成し、孔の形状を、加工済みスリットの端点を加工開始点として切断するようになっている。
これにより、製品となるワークの表面へのスパッタの付着がなく、外観品質が向上する。
【0087】
上述のレーザ加工方法によれば、制御部30aは、形成する孔が丸孔を含む所定形状の孔の場合、加工手順に、所定形状の内側に設定した加工開始点と所定形状上の一点とをつなぐスリットSLを、レーザ光Lの照射のオン/オフで形成する前加工ステップと、所定形状上の一点を加工開始点として所定形状をレーザ光の照射のオン/オフで切断する孔加工ステップと、を含むようにレーザ加工装置51を制御する。
【0088】
本発明の実施例は、上述した構成及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよい。
【0089】
スリットSLを形成する前加工は、一つのワークWに形成する複数の孔すべてを対象としなくてもよい。すなわち、複数の孔の内の一部について、前加工と後加工とを実行し、その後、複数の孔の内の残り又は残りの一部について、前加工と後加工とを実行してもよい。
換言するならば、ワークWに所定形状のN(Nは正の整数)個の孔を複数形成するときに、K(K≦Nなる正の整数)個の孔に対し前加工ステップを実行した後に、その前加工ステップを実行したK個の孔に対し孔加工ステップを実行するようにしてもよい。
開孔加工する孔の形状は、上述の角孔,丸孔,六角孔に限定されない。また、一つのワークに同じ形状の孔を複数有するものに限定されず、異なる形状の孔が混在していてもよい。
複数の孔の配列も、上述の格子状及び千鳥状に限定されない。不規則な配列であってもよい。
制御部30aは、レーザ加工装置51に対する外部に配置されていてもよい。
レーザの種類は、ファイバーレーザに限定されない。YAGレーザなどの他の固体レーザでもよく、また、炭酸ガス(CO
2)レーザなどのガスレーザであってもよい。