(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6292945
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】車両用変速操作装置
(51)【国際特許分類】
B60K 20/02 20060101AFI20180305BHJP
【FI】
B60K20/02 A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-71256(P2014-71256)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-193285(P2015-193285A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2017年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】391064005
【氏名又は名称】株式会社アツミテック
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】小田 繁朗
(72)【発明者】
【氏名】石津 陽通
【審査官】
塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−341377(JP,A)
【文献】
米国特許第02191543(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 20/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者が回動操作可能なシフトレバーと、
該シフトレバーを回動自在に保持するブラケットと、
前記シフトレバーと車両に搭載された変速機とを連結する操作ワイヤと、
該操作ワイヤの外周を覆うアウタチューブと、
該アウタチューブを所定部位に固定させる固定部と、
を具備し、前記シフトレバーの回動操作に伴って前記操作ワイヤを動作させ前記変速機を操作し得る車両用変速操作装置において、
前記ブラケットにおける前記シフトレバーの前記操作ワイヤとの接続部と前記固定部との間に配設されるとともに、前記操作ワイヤの延設方向を任意方向に変換可能な変換手段を備えたことを特徴とする車両用変速操作装置。
【請求項2】
前記変換手段は、前記シフトレバーの軸線を挟んで前記接続部とは反対側に配設されたことを特徴とする請求項1記載の車両用変速操作装置。
【請求項3】
前記変換手段は、前記操作ワイヤを支持しつつ前記シフトレバーの回動操作に伴う動作に応じて回転可能な滑車部を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用変速操作装置。
【請求項4】
前記変換手段は、前記固定部に向かって延設される操作ワイヤの延設方向を任意に変更することで当該操作ワイヤの延設方向を任意方向に変換可能とされたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の車両用変速操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シフトレバーの回動操作に伴って操作ワイヤを動作させることにより車両が搭載する変速機を操作し得る車両用変速操作装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される変速機(特に、オートマチックトランスミッション)と変速操作装置のシフトレバーとを連結し、当該シフトレバーの操作を変速機に伝達して変速のための任意動作を行わせる操作ワイヤは、通常、アウタチューブ内に挿通されており、シフトレバーの回動操作に伴って動作(押し引き動作)されるようになっている。また、通常の変速操作装置は、例えば特許文献1にて開示されているように、シフトレバーを回動自在に支持するブラケットを有しており、当該ブラケットの所定部位にアウタチューブを固定させる固定部(ソケット)が固定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−307967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術においては、以下の如き問題があった。
車両における変速操作装置及び変速機は、その配設位置が車種によって種々異なる場合が多く、当該変速操作装置と変速機とを連結する操作ワイヤの延設方向も車種に応じて種々異なってしまうことがある。例えば、変速機が車両の同等の位置に配設されていても、変速操作装置がシート横のフロアに設置されるものとインパネに配設されるものとでは、操作ワイヤの延設方向が著しく相違してしまう。
【0005】
すなわち、シフトレバーの操作力を操作ワイヤの動作に効率よく変換するためには、例えばシフトレバーがNレンジにあるとき、シフトレバーの回動中心と操作ワイヤの接続部とを結ぶ直線と、操作ワイヤと変速機とを結ぶ直線との間の角度を90°に近づける必要があることから、変速操作装置と変速機との相対位置が異なる車種毎にシフトレバーにおける操作ワイヤとの接続部の位置とブラケットにおける固定部を固定させる位置(シフトレバー及びブラケットの両方の形状)を変更する必要があった。
【0006】
しかして、操作ワイヤの延設方向が相違する場合、シフトレバーの操作力を操作ワイヤの動作(押し引き動作)に効率よく変換して変速機に伝達するためには、変速操作装置と変速機との相対位置が異なる車種毎にシフトレバー及びブラケットの両方の形状を大幅に変更せざるを得ないことがあり、車種毎に別々の型等を必要として製造コストが嵩んでしまうという不具合があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、変速操作装置と変速機との相対位置が異なる車種においても、固定部が固定される部品以外の部品を共通化させつつシフトレバーの操作力を操作ワイヤの動作に効率よく変換させることができる車両用変速操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、運転者が回動操作可能なシフトレバーと、該シフトレバーを回動自在に保持するブラケットと、前記シフトレバーと車両に搭載された変速機とを連結する操作ワイヤと、該操作ワイヤの外周を覆うアウタチューブと、該アウタチューブを所定部位に固定させる固定部とを具備し、前記シフトレバーの回動操作に伴って前記操作ワイヤを動作させ前記変速機を操作し得る車両用変速操作装置において、
前記ブラケットにおける前記シフトレバーの前記操作ワイヤとの接続部と前記固定部との間に配設されるとともに、前記操作ワイヤの延設方向を任意方向に変換可能な変換手段を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の車両用変速操作装置において、前記変換手段は、前記シフトレバーの軸線を挟んで前記接続部とは反対側に配設されたことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の車両用変速操作装置において、前記変換手段は、前記操作ワイヤを支持しつつ前記シフトレバーの回動操作に伴う動作に応じて回転可能な滑車部を有することを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れか1つに記載の車両用変速操作装置において、前記変換手段は、前記固定部に向かって延設される操作ワイヤの延設方向を任意に変更することで当該操作ワイヤの延設方向を任意方向に変換可能とされたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、
ブラケットにおけるシフトレバーの操作ワイヤとの接続部と固定部との間に配設されるとともに、操作ワイヤの延設方向を任意方向に変換可能な変換手段を備えたので、車両用変速操作装置と変速機との相対位置が異なる車種においても、固定部が固定される部品以外の部品を共通化させつつシフトレバーの操作力を操作ワイヤの動作に効率よく変換させることができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、変換手段は、シフトレバーの軸線を挟んで接続部とは反対側に配設されたので、車両用変速操作装置の前後方向の寸法を小さくして小型化を図ることができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、変換手段は、操作ワイヤを支持しつつシフトレバーの回動操作に伴う動作に応じて回転可能な滑車部を有するので、シフトレバーの回動操作に伴う操作ワイヤの動作を確実且つ円滑に変速機に伝達させることができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、変換手段は、固定部に向かって延設される操作ワイヤの延設方向を任意に変更することで当該操作ワイヤの延設方向を任意方向に変換可能とされたので、変換手段による操作ワイヤの延設方向の変換をより容易且つ確実に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用変速操作装置を示す正面図
【
図2】同車両用変速操作装置における変換手段(操作ワイヤがa方向に延設した状態)を示す斜視図
【
図3】同車両用変速操作装置における変換手段(操作ワイヤがa方向に延設した状態)を示す正面図
【
図4】同車両用変速操作装置における変換手段(操作ワイヤがb方向に延設した状態)を示す斜視図
【
図5】同車両用変速操作装置における変換手段(操作ワイヤがb方向に延設した状態)を示す正面図
【
図6】同車両用変速操作装置における変換手段を示す分解斜視図
【
図7】他の形態のブラケットに変換手段(操作ワイヤがb方向に延設した状態)を取り付けた状態の車両用変速操作装置を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る車両用変速操作装置1は、
図1に示すように、シフトレバー2と、ブラケット3と、操作ワイヤWaと、アウタチューブWb1、Wb2と、固定部4と、変換手段5とを有し、シフトレバー2の回動操作に伴って操作ワイヤWaを動作させることにより車両が搭載する変速機K(オートマチックトランスミッション)を操作し得るものである。
【0018】
シフトレバー2は、先端に操作ノブ2bが取り付けられ、当該操作ノブ2bを運転者が把持しつつブラケット3に対して回動操作可能なもので、その基端部には操作ワイヤWaの端部を接続するための接続部2aが形成されている。しかして、シフトレバー2を任意の位置(例えば、Pレンジ、Dレンジ、Rレンジ等の位置)まで回動操作(
図1中矢印方向の回動操作)すると、その位置に応じた変速機Kの操作が可能とされているのである。なお、図中符号Lは、シフトレバー2の長手方向における軸線を示している。
【0019】
ブラケット3は、所望材料の成形品から成り、シフトレバー2を回動自在に保持するためのもので、車両の所定位置(車両のフロアやインパネ等)に固定されるよう構成されている。なお、かかるブラケット3は、車両との固定用のボルトを挿通させるための複数のボルト孔やシフトロック機構を構成するソレノイド等を配設するためのリブ等所望機能を果たす形状が造り込まれて形成されている。
【0020】
操作ワイヤWaは、シフトレバー2と車両に搭載された変速機Kとを連結するためのもので、
図1、2に示すように、基端(シフトレバー2側の端部)に接続金具Aが固定されている。かかる接続金具Aは、シフトレバー2の所定位置に形成された接続部2aにボルトB(
図1参照)にて締結固定されるようになっている。また、操作ワイヤWaは、その外周がアウタチューブ(Wb1、Wb2、Wb3)にて覆われており、当該アウタチューブ(Wb1、Wb2、Wb3)内において長手方向に移動可能とされている。
【0021】
固定部4は、アウタチューブ(Wb1、Wb2、Wb3)を所定部位に固定させるための所謂「ソケット」と称されるもので、本実施形態においては、アウタチューブWb2をブラケット3の被固定部位3aに固定可能とされている。しかして、操作ワイヤWaは、先端が変速機Kに、基端がシフトレバー2の接続部2aにそれぞれ接続されるとともに、固定部4が位置する部位において、アウタチューブWb2を介してブラケット3に支持されているのである。
【0022】
ここで、本実施形態に係る変換手段5は、ブラケット3の所定部位におけるシフトレバー2の操作ワイヤWaとの接続部2aと固定部4との間に固定されて配設されるとともに、操作ワイヤWaの延設方向を任意方向に変換可能なもので、
図2〜6に示すように、円筒状の第1ケース部6と、該第1ケース部6と組み合わせ可能な第2ケース部7と、第1ケース部6及び第2ケース部7の内部に収容可能な円板状の滑車部8とを有して構成されている。
【0023】
第1ケース部6及び第2ケース部7は、各中心部にボス部La、Lbが一体形成されているとともに、滑車部8の中心には中心孔8aが形成されている。また、第1ケース部6にはアウタチューブWb1が延設されるとともに、第2ケース部7にはアウタチューブWb2が延設されており、これらアウタチューブWb1、Wb2に操作ワイヤWaが挿通し得るようになっている。
【0024】
具体的には、アウタチューブWb1は、第1ケース部6の所定部位からシフトレバー2の接続部2aに向かって所定寸法形成されたもので、アウタチューブWb2は、第2ケース部7の所定部位から固定部4まで形成されたものである。なお、アウタチューブWb3は、固定部4から変速機Kまで形成されたものである。これにより、操作ワイヤWaは、シフトレバー2の接続部2aからアウタチューブWb1に至り、そのアウタチューブWb1から第1ケース部6及び第2ケース部7の内部に至った後、アウタチューブWb2から固定部4の位置まで延設され、変速機Kに接続されることとなる。
【0025】
しかるに、第1ケース部6及び第2ケース部7の間に滑車部8を介在させつつ当該第1ケース部6と第2ケース部7を組み合わせると、これら第1ケース部6及び第2ケース部7内に滑車部8を収容させつつ当該滑車部8の中心孔8aにボス部La、Lbが挿通し得るようになっている。しかして、滑車部8は、第1ケース部6及び第2ケース部7内において、ボス部La、Lbを中心として回転自在とされるとともに、その外周面8bに操作ワイヤWaを当接させて支持させ得るようになっている。これにより、滑車部8は、操作ワイヤWaを支持しつつシフトレバー2の回動操作に伴う動作に応じて回転可能とされているのである。
【0026】
さらに、第1ケース部6の側面には、範囲αに亘って開口した切欠き6aが形成されており、当該第1ケース部6及び第2ケース部7を組み合わせた際、当該切欠き6aの範囲α内にアウタチューブWb2を任意位置させることができる。すなわち、変換手段5から変速機Kまで操作ワイヤWaをa方向に延設させる場合(
図1参照)、
図2、3に示すように、第1ケース部6に対する第2ケース部7の回転方向の位置決めを任意に行うことで、a方向にアウタチューブWb2を指向させるとともに、変換手段5から変速機Kまで操作ワイヤWaをb方向に延設させる場合(
図7参照)、
図4、5に示すように、第1ケース部6に対する第2ケース部7の回転方向の位置決めを変更することで、b方向にアウタチューブWb2を指向させることができるのである。
【0027】
上記のように、本実施形態に係る変換手段5は、固定部4に向かって延設される操作ワイヤWaの延設方向を任意に変更することで当該操作ワイヤWaの延設方向を任意方向に変換可能とされている。したがって、本実施形態によれば、シフトレバー2の操作ワイヤWaとの接続部2aと固定部4との間に配設されるとともに、操作ワイヤWaの延設方向を任意方向に変換可能な変換手段5を備えたので、車両用変速操作装置1と変速機Kとの相対位置が異なる車種においても、固定部4が固定される部品以外の部品を共通化させつつシフトレバー2の操作力を操作ワイヤWaの動作に効率よく変換させることができる。
【0028】
また、本実施形態に係る変換手段5は、
図1(或いは
図7)に示すように、シフトレバー2の軸線Lを挟んで接続部2aとは反対側に配設されている。これにより、車両用変速操作装置1の前後方向(シフトレバー2の回動方向)の寸法を小さくして小型化を図ることができる。すなわち、本実施形態によれば、変換手段5によって操作ワイヤWaの延設方向を変換することにより車両用変速操作装置1と変速機Kとの相対位置が異なる車種に対応できることから、接続部2aを操作ワイヤWaの延設方向に影響されずに設定することができ、シフトレバー2の軸線Lに対して変換手段5とは反対側の位置に設定することができる。これにより、接続部2aがシフトレバー2の後方(固定部4が固定される反対側)に位置する分、車両用変速操作装置1の前後方向の寸法を小さくして小型化できるのである。
【0029】
さらに、本実施形態に係る変換手段5は、操作ワイヤWaを支持しつつシフトレバー2の回動操作に伴う動作に応じて回転可能な滑車部8を有するので、シフトレバー2の回動操作に伴う操作ワイヤWaの動作を確実且つ円滑に変速機Kに伝達させることができる。またさらに、本実施形態に係る変換手段5は、固定部4に向かって延設される操作ワイヤWaの延設方向を任意に変更することで当該操作ワイヤWaの延設方向を任意方向に変換可能とされたので、変換手段5による操作ワイヤWaの延設方向の変換をより容易且つ確実に行わせることができる。
【0030】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば固定部4がブラケット3以外の部位に固定されるもの、或いは変換手段5が接続部2aと同じ側に配設されたもの等であってもよい。また、本実施形態に係る変換手段5は、操作ワイヤWaを支持しつつシフトレバー2の回動操作に伴う動作に応じて回転可能な滑車部8を有しているが、シフトレバー2の操作ワイヤWaとの接続部2aと固定部4との間に配設されるとともに、操作ワイヤWaの延設方向を任意方向に変換可能なものであれば、滑車部8を有さない他の形態のものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
ブラケットにおけるシフトレバーの操作ワイヤとの接続部と固定部との間に配設されるとともに、操作ワイヤの延設方向を任意方向に変換可能な変換手段を備えた車両用変速操作装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 車両用変速操作装置
2 シフトレバー
3 ブラケット
4 固定部
5 変換手段
6 第1ケース部
7 第2ケース部
8 滑車部
Wa 操作ワイヤ
Wb1、Wb2、Wb3 アウタチューブ