【実施例】
【0021】
図1(a)に示すように、一次成形品10は、粗成形部11、11から突出する軸部12を備えると共に粗成形部11、11の近傍に上凹部13を備え、軸部12の下端に下凹部14を備えている。
【0022】
このような一次成形品10は、素材を熱間鍛造することで、容易に量産される。すなわち、高温で軟らかい状態で塑性加工を行うため、生産が容易となり、生産コストを下げることができる。ただし、塑性加工時の温度は高温で加工後の温度は常温であるため、温度変化の読みが難しく、粗成形部11、11の寸法精度は低下する。
【0023】
そこで、一次成形品10にサイジングを施して、
図1(b)に示す二次成形品20を得る。この二次成形品20は、仕上げ加工が施された寸法精度のよい仕上げ成形部21、21を有すると共に軸部12に大きな中空穴22を有している。
【0024】
二次成形品20は、例えば、ギヤであり、仕上げ成形部21、21はギヤの歯である。
さらには、ギヤは、ベベルギヤ(かさ歯車)であり、ギヤの歯は、かさ歯である。
このような形態の二次成形品20を形成するサイジング装置30について以下に説明する。
【0025】
図2に示すように、サイジング装置30は、下型31と上型32とを備えている。
下型31は、ベース34と、このベース34の下面に取付けられている付勢機構35と、この付勢機構35からベース34を貫通して上へ延びるピストンロッド36、36で支持される下ダイ37と、ベース34に設けられ下ダイ37の上限位置を規定するストッパ部38、38を有する下ダイホルダ39、39と、下ダイ37に設けられ上下に貫通している貫通穴41に収納される形態でベース34から上へ延びているパンチ42と、このパンチ42を囲うようにパンチ42に昇降自在に取付けられるノックアウトリング43と、ベース34の下方に昇降可能に設けられる第2ピストン44と、この第2ピストン44からベースを貫通して上に延びノックアウトリング43を支えるノックアウトピン45、45とを備えている。
【0026】
パンチ42の外径は、貫通穴41の穴径より小さくて中空穴(
図1(b)、符号22)の穴径に相当する。結果、パンチ42の外周面と貫通穴41の内周面の間に隙間dが確保される。この隙間dの部位が余剰肉を流動させる流動通路46となる。
【0027】
付勢機構35は、例えば、ドーナツ板形状を呈しピストンロッド36、36を支える第1ピストン47と、この第1ピストン47を上下動可能に収納しベース34に固定されるシリンダケース48と、第1ピストン47の下方空間である第1圧力室51へ所定の圧力の媒体を供給する第1圧力源52とを備える。第1圧力源52は油圧が好適である。
【0028】
第2ピストン44は、シリンダケース48の中央に一体形成される第2シリンダ部53に収納されている。第2ピストン44の下方空間である第2圧力室54へ所定の圧力の媒体を供給する第2圧力源55とを備える。
【0029】
上型32は、サイジング部57を有する上ダイ58と、この上ダイ58を昇降する昇降機構59と、上ダイ58の中央に設けられるセンタピン61とを備えている。
【0030】
このような構成のサイジング装置30の作用を次に説明する。
貫通穴41に軸部12が嵌るようにして下ダイ37へ一次成形品10をセットする。下凹部14にパンチ42の上端を嵌める。下ダイ37は第1圧力室51に所定の圧力の媒体が満たされているため、上方へ付勢され、下ダイホルダ39で上限位置が規定されている。
この状態で昇降機構59により、上ダイ58及びセンタピン61を圧下する。すると、サイジング部57により粗成形部11の仕上げが開始される。
【0031】
センタピン61が上凹部13に嵌り、この嵌合により、一次成形品10が水平方向へ移動することを規制する。よって、サイジングは良好に開始される。
この仕上げの際に、下ダイ37に上ダイ58が当たり、上ダイ58の押し下げ力が付勢機構35による付勢力を超えた時点から下ダイ37が下がり始める。
【0032】
図3に示すように、下ダイ37と上ダイ58で形成された成形空間で粗成形部11に対するサイジングが行われるが、この際に発生する余剰肉は、行き場を求めて隙間dの流動通路46へ流出(流動)する。併せて、下ダイ37は下降するがパンチ42が静止しているため、パンチ42により軸部12に大きな中空穴22が形成される。
【0033】
図3において、下ダイ37が所定位置まで下がったら、上ダイ58を止める。これでサイジング及び余剰肉の流出は終了する。そこで、上ダイ58を上げる。すると、下ダイ37が付勢機構35の付勢作用で、上昇する。次に、第2ピストン44でノックアウトピン45、45及びノックアウトリング43を上げ、このノックアウトリング43で二次成形品20を下ダイ37から突き上げる。以降、ロボットなどで二次成形品20を取り出す(払い出す)。
【0034】
流動通路46の作用を、詳しく説明する。
図4(a)に示すように、粗成形部11がサイジング部57で圧縮成形される。余肉は行き場を求めて貫通穴41に流入する。さらに、パンチ42は静止した状態で、一次成形品10、下ダイ37、上ダイ58及びセンタピン61が一緒に下がる。
【0035】
すると、サイジング部57に代表される金型内面へ向かう肉の流れ(矢印(1))と流動通路へ向かう肉の流れ(矢印(2))とが発生する。この分流により、肉の流動が促され、材料が金型内面に向かって、より積極的に盛り上がり、密閉空間で単に圧縮するよりは、格段に面粗度が向上した。
【0036】
結果、
図4(b)に示すように、余肉は流動通路46に流出し、軸部12に大きな中空穴22が形成される。従来は、サイジングと中空穴形成とを別工程で行い、これらの工程間にボンデ処理などの中間工程を必要としていたが、本発明により1工程でサイジングと中空穴形成が行える。
また、流動通路46へ流出する余肉によって軸部12の伸長が促進され、長軸の二次成形品20を得ることができる。
【0037】
以上に説明したサイジング方法は、次のようにまとめることができる。
図2に示すように、粗成形部11にサイジングを施すサイジング部57を有する上型32と、余剰肉を流動させる流動通路46を有する下型31とを準備する(金型準備工程)。そして、上型32と下型31を閉塞することにより形成される成形空間に一次成形品10をセットする(一次成形品セット工程)。
図3に示すように、上型32と下型31との間の成形空間を保持しつつパンチ42を押し込むことで、サイジング部57で粗成形部11にサイジングを施しつつ、狭まった成形空間から溢れた余剰肉を流動通路46へ流出させることで二次成形品20を得る(サイジング・肉流出工程)。
【0038】
尚、本発明は、中空の軸部を有するベベルギヤに好適であるが、一般のギヤに適用することや、さらには粗成形部を有する機械部品に適用することができる。
【0039】
また、一次成形品は熱間鍛造品としたが、温間鍛造品又は冷間鍛造品であっても良い。さらにまた、二次成形品は冷間鍛造品又は温間鍛造品が適当である。
ただし、生産性向上の観点から一次成形品は熱間鍛造品が推奨され、寸法精度の観点から二次成形品は冷間鍛造品が推奨される。
【0040】
さらには、中空穴22は、パンチ42で形成する他、センタピン61で形成することもできる。また、中空穴22を、パンチ42とセンタピン61とで共同して形成するようにしてもよい。これらの場合は、センタピン61は、上ダイ58とは独立して昇降させる。