(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ビア電極の各々は、その形成深さが、前記低抵抗方向領域から前記中抵抗方向領域又は前記高抵抗方向領域に近づくに従って、また、前記中抵抗方向領域から前記高抵抗方向領域に近づくに従って大きくなるように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の発光素子。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、n電極とp電極との間の半導体構造層内の電流路に対し、半導体構造層の面内方向(半導体構造層に平行な平面内の方向)において相対的に高い電気抵抗を有する高抵抗方向と低い電気抵抗を有する低抵抗方向とが存在することに着目してなされたものである。
【0012】
図9(a)を用いて、高抵抗方向、低抵抗方向、高抵抗方向領域及び低抵抗方向領域について簡単に説明する。
図9(a)は、例示的な発光素子の構造として、上面視において正方形の半導体構造層110を有し、半導体構造層110の一方の主面(以下、電極形成面と称する場合がある)にp電極120及びn電極130の両方が形成された発光素子100の上面を示す図である。発光素子110においては、n電極130は半導体構造層110の1つの端部領域に形成され、p電極120はn電極130の形成領域を除く半導体構造層110の電極形成面のほぼ全面に形成されている。
【0013】
まず、半導体構造層110に平行な方向におけるn電極130とp電極120上のn電極130からの最遠点との間の異なる2方向の直線を決定する。そして、当該2つの直線のうち、その直線距離が大きい方の方向を高抵抗方向HD、小さい方の方向を低抵抗方向LDと区別する。
【0014】
具体的には、発光素子110のような電極構成の場合、電極間における半導体構造層110の面内方向における直線距離は、辺方向が最も短く、対角方向が最も長い。すなわち、辺方向から対角方向に向かって電極間の電流路における電気抵抗が高くなる。従って、半導体構造層110の面内方向において、辺方向が低抵抗方向LD、対角方向が高抵抗方向HDと区別することができる。また、
図9(b)に示すように、半導体構造層110は、相対的に低い電気抵抗を有する電流路の領域である低抵抗方向領域110Lと、相対的に低い電気抵抗を有する電流路の領域である高抵抗方向領域110Hとに区画することができる。
【0015】
以下、図を参照しつつ本発明の実施例に係る発光素子について具体的に説明する。
【実施例1】
【0016】
図1(a)は、本発明の実施例1に係る発光素子10の斜視図である。発光素子10は、半導体構造層11の同一主面側にp電極(第1の電極)14及びn電極(第2の電極)15の両方が形成された横型電極構成を有している。以下においては、p電極14及びn電極15が形成されている側の半導体構造層11の主面を電極形成面(第1の主面)12、電極形成面12の反対側の半導体構造層11の主面を対向面(第2の主面)13と称する。
【0017】
発光素子10は、電極形成面12のp電極14とn電極15との間の領域(以下、電極間領域と称する)から対向面13に向かって形成されたトレンチ16を有している。トレンチ16は、例えば、フォトリソグラフィによって電極形成面12上にパターニングが施されたマスクを成膜し、反応性イオンエッチングなどの既知の加工方法によって凹部を形成した後、マスクを除去することによって形成される。
【0018】
図1(b)は、
図1(a)において、発光素子10を面OPQRに沿って切断したときの断面図を示している。
図1(c)は、
図1(a)において、発光素子10を面STUVに沿って切断したときの断面図を示している。なお、面OPQRは、半導体構造層11の辺方向に沿った平面であり、面STUVは、半導体構造層11の対角方向に沿った平面である。面OPQR及び面STUVは、それぞれ
図1(a)の一点鎖線によって囲まれた平面である。
【0019】
図1(b)を用いて、半導体構造層11、p電極14及びn電極15について説明する。半導体構造層11は、例えば、Al
xIn
yGa
zN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)の組成を有するp型半導体層(第1の半導体層)17、発光層18及びn型半導体層(第2の半導体層)19が順次積層された構造を有している。n型半導体層19は、p型半導体層17とは反対の導電型を有している。本実施例においては、半導体構造層11の電極形成面12がp型半導体層17の表面であり、対向面13がn型半導体層19の表面である。
【0020】
p電極14は、p型半導体層17上に形成されている。p電極14は、例えば、p型半導体層17上にフォトリソグラフィを用いてマスク材料のパターニングを行い、スパッタ法などにより電極材料を形成した後、マスクを除去することによって形成される。p電極15は、既知の電極材料、例えば、Al、Pt、Ag、Rh、Auなどを用いて形成される。
【0021】
n電極15は、p型半導体層17側からp型半導体層17及び発光層18を貫通してn型半導体層19に至り、n型半導体層19に接続されている。n電極15は、例えば、半導体構造層11のp型半導体層19上にp電極14が形成されない領域を設け、当該領域において、p型半導体層17の表面からp型半導体層17及び発光層18を貫通してn型半導体層19に至る開口部を形成した後、当該開口部に電極材料を形成することによって形成される。n電極15は、例えばp電極14と同様の材料を用いて形成される。
【0022】
次にトレンチ16について説明する。トレンチ16は、p型半導体層17の表面(電極形成面12)におけるp電極14及びn電極15間の領域(電極間領域)からp型半導体層17及び発光層18を貫通してn型半導体層19内に至る深さを有し、n電極15を囲むように形成されている。トレンチ16は、p型半導体層17の表面におけるn電極15の形成領域を囲むように形成されている。半導体構造層11内のp電極14及びn電極15間の電流路は、トレンチ16によって狭窄される。
【0023】
具体的には、両電極間の電流は、トレンチ16と対向面13との間の開口APを介して(迂回して)流れる。すなわち、トレンチ16は、p電極14からn電極15に向かう電流路のうち、比較的短い電流路の一部を遮断する機能を有している。従って、比較的短い電流路上の発光層18の領域、すなわちn電極15に近いp電極14の領域上の発光層18の領域から大きな強度の光が放出されることを防止する。従って、同一方向内での輝度ムラを抑制することが可能となる。
【0024】
なお、トレンチ16によって形成される電流路の開口APの大きさによって、半導体構造層11内の電流路の電気抵抗値が変化する。例えば、開口APが大きくなる(開口が広くなる)のに従って、その電流路における電気抵抗は低くなる。なお、本実施例においては、トレンチ16は一定の深さを有している。
【0025】
次に、
図1(b)及び
図1(c)を用いて、発光素子10におけるn電極15の構成について説明する。
図1(b)は、発光素子10の低抵抗方向LDにおける断面図を示している。
図1(c)は、発光素子10の高抵抗方向HDにおける断面図を示している。
図1(b)及び
図1(c)に示すように、n電極15は、そのトレンチ16までの距離が、低抵抗方向LDと高抵抗方向HDとの間で異なる。具体的には、低抵抗方向LDにおけるn電極15とトレンチ16との間の距離L1は、高抵抗方向HDにおけるn電極15とトレンチ16との間の距離L2よりも大きい。
【0026】
図2(a)は、半導体構造層11の構成を模式的に示す発光素子10の上面図である。
図2(a)においては、p電極14及びn電極15の形成領域を破線で示している。
図2(a)に示すように、半導体構造層11は、相対的に低い電気抵抗を有する電流路の領域である低抵抗方向領域11Lと、相対的に高い電気抵抗を有する電流路の領域である高抵抗方向領域11Hと、からなる。具体的には、低抵抗方向領域11Lは低抵抗方向LD上の半導体構造層11の領域であり、高抵抗方向領域11Hは高抵抗方向HD上の半導体構造層11の領域である。
【0027】
本実施例においては、半導体構造層11に垂直な方向から見たとき(上面視において)、半導体構造層11が正方形の形状を有している。また、n電極15が半導体構造層11の端部領域に設けられ、p電極14はn電極15の形成領域をトレンチ16によって隔てたp型半導体層17の表面(電極形成面12)のほぼ全面に設けられている。従って、本実施例においては、n電極15の形成領域を含む半導体構造層11の辺方向に沿った領域が低抵抗方向領域11Lであり、対角方向に沿った領域が高抵抗方向領域11Hである。半導体構造層11の各領域(各方向)は、n電極15の形成領域から放射状に形成される。
【0028】
図2(b)は、発光素子10の電極形成面12を電極形成面12に垂直な方向から見たとき、すなわち電極形成面12の上面視における平面図を示している。
図2(b)に示すように、トレンチ16は、電極形成面12(p型半導体層17の表面)におけるn電極15の形成領域を囲むように形成されている。また、低抵抗方向領域11Lにおけるn電極15とトレンチ16との間の距離(第1の距離)L1は、高抵抗方向領域11Hにおけるn電極15とトレンチ16との間の距離(第2の距離)L2よりも大きい。すなわち、n電極15は、高抵抗方向領域11Hよりも低抵抗方向領域11Lにおいてトレンチ16までの距離が大きい。
【0029】
図3(a)は、低抵抗方向LDにおける半導体構造層11内の電流路を示す図である。
図3(b)は、高抵抗方向HDにおける半導体構造層11内の電流路を示す図である。なお、
図3(a)及び
図3(b)は、
図1(b)及び
図1(c)と同様の断面図であるが、電流路の説明のためにハッチングを省略してある。また、電流路の一例を破線で示している。
【0030】
図3(a)及び
図3(b)に示すように、低抵抗方向LD(低抵抗方向領域11L)においては、トレンチ16からn電極15までの距離が長い。一方、高抵抗方向HD(高抵抗方向領域11H)においてはトレンチ16からn電極15までの距離が短い。従って、トレンチ16とn電極15との間の電流路における電気抵抗値は、高抵抗方向領域11Hよりも低抵抗方向領域11Lの方が大きい(高い)。
【0031】
従って、トレンチ16までの距離が同程度のp電極14の部分から流れる電流の電流路C1(低抵抗方向LDの電流路)及びC3(高抵抗方向HDの電流路)を比べると、電極間の電気抵抗値は電流路C1(低抵抗方向領域11L)の方が大きい。同様に、電流路C2及びC4では、電流路C2の方がその電気抵抗値が大きい。このため、高抵抗方向HDには低抵抗方向LDに比べて大きな電流が流れやすい。従って、低抵抗方向11L及び高抵抗方向11H間での輝度ムラが抑制される。
【0032】
さらに、n電極15及びトレンチ16間の距離を調整することによって、例えば、高抵抗方向領域11Hにおけるトレンチ16までの距離が大きなp電極14の部分から流れる電流の電流路C5における電気抵抗値が低抵抗方向領域11Lにおける電流路C2の電気抵抗値と同程度になるように構成することが可能となる。
【0033】
上記したように、発光素子10のn電極15は、低抵抗方向領域11Lと高抵抗方向領域11Hとの間でトレンチ16までの距離が異なるように形成されている。従って、発光層18の全体に均一に電流を分配することができ、面内方向において均一な発光強度を有する光を発光層18から放出させることができる。
【実施例2】
【0034】
図4(a)は、本発明の実施例2に係る発光素子20の斜視図である。発光素子20は、n電極の構造を除いては実施例1の発光素子10と同様の構造を有している。本実施例の発光素子20は、低抵抗方向LDと高抵抗方向HDとの間で形成深さが異なるn電極25を有している。
【0035】
図4(b)及び
図4(c)は、それぞれ低抵抗方向LD及び高抵抗方向HDにおける発光素子20の断面を示す図である。
図4(b)及び
図4(c)に示すように、n電極25は、低抵抗方向LD(低抵抗方向領域11L)よりも高抵抗方向HD(高抵抗方向領域11H)の方が浅く形成されている。具体的には、高抵抗方向領域11Hにおけるn電極25の形成深さD1は、低抵抗方向領域11Lにおけるn電極25の形成深さD2よりも小さい。
【0036】
なお、n電極25は、トレンチ16よりも浅く形成されていることが好ましい。例えばn電極25がその一部においてトレンチ16よりも深く形成されると、各方向(各方向領域)間で電流路の電気抵抗値が所望の値とならない場合があるからである。すなわち、n電極25は、その全ての側面がトレンチ16に対向している(面している)ことが好ましい。
【0037】
本実施例においては、発光素子20は低抵抗方向LDの方が高抵抗方向HDよりも浅く形成されたn電極25を有している。すなわち、n電極25の形成深さを調節することによって、トレンチ16とn電極25との間の電流路の長さを調節している。本実施例においても、トレンチ16からn電極25までの電流路の長さは、高抵抗方向HDよりも低抵抗方向LDの方が大きい。従って、低抵抗方向LDよりも高抵抗方向HDにおいて電流が流れやすくなる。従って、高抵抗方向領域11Hに低抵抗方向領域11Lよりも多くの電流を分配することが可能となる。従って、方向間での輝度ムラが抑制される。
【実施例3】
【0038】
図5(a)は、実施例3に係る発光素子30の斜視図である。発光素子30は、n電極の構造を除いては実施例1の発光素子10又は実施例2の発光素子20と同様の構造を有している。本実施例の発光素子30は、形成深さ及びトレンチ16までの距離の両方が低抵抗方向LDと高抵抗方向HDとの間で異なるように形成されたn電極35を有している。発光素子30のn電極35は、n電極15(実施例1)及びn電極25(実施例2)の特徴を組み合わせた構成を有している。
【0039】
図5(b)及び
図5(c)は、それぞれ低抵抗方向LD及び高抵抗方向HDにおける発光素子30の断面を示す図である。
図5(b)及び
図5(c)に示すように、n電極35は、低抵抗方向LD(低抵抗方向領域11L)よりも高抵抗方向HD(高抵抗方向領域11H)の方が浅く形成されている。具体的には、高抵抗方向領域11Hにおけるn電極25の形成深さD1は、低抵抗方向領域11Lにおけるn電極25の形成深さD2よりも小さい。
【0040】
また、n電極35は、高抵抗方向領域11Hよりも低抵抗方向領域11Lにおいてトレンチ16までの距離が大きくなるように形成されている。具体的には、低抵抗方向領域11Lにおけるn電極35とトレンチ16との間の距離L1は、高抵抗方向領域11Hにおけるn電極35とトレンチ16との間の距離L2よりも大きい。
【0041】
本実施例においては、n電極35の形成深さ及びトレンチ16までの距離の両方を調節することによって、トレンチ16とn電極35との間の電流路の長さを調節している。本実施例においては、トレンチ16及びn電極35間の電流路の長さを高い自由度で調節することが可能となる。方向間での輝度ムラが大幅に抑制される。
【0042】
なお、上記においては、半導体構造層が低抵抗方向領域及び高抵抗方向領域の2つの領域からなる場合について説明したが、半導体構造層はこの2つの領域からなることに限定されるものではない。例えば半導体構造層を低抵抗方向領域、中抵抗方向領域及び高抵抗方向領域の3つの領域に区画し、3段階でn電極の深さ及びトレンチまでの距離を調節してもよい。すなわち、半導体構造層は低抵抗方向領域及び高抵抗方向領域の少なくとも2つの領域からなっていればよい。半導体構造層をより多くの領域に区画することで、当該領域間における電流路の調整をより厳密に行うことが可能となる。
【0043】
次に、
図6乃至
図9を用いて、実施例1乃至3の変形例に係る発光素子の構造について説明する。
図6(a)は、実施例1の変形例に係る発光素子10Aの上面図である。
図6(b)は、発光素子10Aにおけるn電極15Aの斜視図である。発光素子10Aは、半導体構造層、n電極及びトレンチの構造を除いては発光素子10と同様の構造を有している。本変形例においては、半導体構造層11Aは上面視において長方形の形状を有している。また、n電極15Aが複数のビア電極VEからなり、トレンチ16Aは複数のトレンチ部TRからなる。
【0044】
具体的には、n電極15Aは、ビア形状(柱形状)を有する複数のビア電極VEからなる電極群として構成されている。本変形例においては、n電極15Aは、上面視において半導体構造層11Aの辺方向に沿って2行2列でマトリクス状に配置された4つのビア電極VEからなる。また、トレンチ16Aは、ビア電極VEの各々を囲むように形成された複数のトレンチ部TRからなるトレンチ群として形成されている。トレンチ部TRの各々は、p型半導体層17の表面(電極形成面12)におけるビア電極VEの各々の形成領域を囲むように形成されている。
【0045】
本変形例においては、n電極15Aのビア電極VEの各々及びトレンチ16Aのトレンチ部TRの各々は、その形成領域が完全にp電極14に囲まれるように形成されている。また、トレンチ部TRの各々は、一定の深さを有している。
【0046】
また、半導体構造層11Aは、隣接するビア電極VEの中心間を結ぶ線分の垂直二等分線によって複数の発光セグメントESに区画される。本変形例においては、半導体構造層11Aは、各々がビア電極VEの各々を中心とする発光セグメントESを有する。また、発光セグメントESは、半導体構造層11Aと相似形状を有する(上面視において長方形の形状を有する)。半導体構造層11Aは、その発光セグメントESの各々内において低抵抗方向LD及び高抵抗方向HDなどに区別されることができる。
【0047】
本変形例においては、発光セグメントESは、半導体構造層11Aの短辺側の辺方向に沿った方向である低抵抗方向LD、長辺側の辺方向に沿った方向である中抵抗方向MD及び対角方向に沿った方向である高抵抗方向HDに区別されることができる。n電極15Aのビア電極VEの各々は、そのトレンチ16Aのトレンチ部TRまでの距離が、低抵抗方向LD、中抵抗方向MD及び高抵抗方向HDの各々で異なるように形成されている。
【0048】
図7(a)は、発光セグメントESの部分を拡大した半導体構造層11Aの上面図である。
図7(a)を用いて、発光セグメントESの構成について説明する。発光セグメントESは、その各々が、相対的に低い電気抵抗を有する電流路の領域である低抵抗方向領域ESLと、相対的に高い電気抵抗を有する電流路の領域である高抵抗方向領域ESHと、その中間の電気抵抗を有する電流路の領域である中抵抗方向領域ESMとの3つの領域からなる。発光セグメントESの各領域は、ビア電極VEの形成領域から放射状に形成される。
【0049】
図7(b)は、n電極15Aのビア電極VEの部分を拡大した半導体構造層11Aの上面図である。
図7(b)を用いてビア電極VEの構成について説明する。本変形例においては、ビア電極VEは、そのトレンチ部TRまでの距離が、低抵抗方向領域ESLから中抵抗方向領域ESM又は高抵抗方向領域ESHに近づくに従って、また、中抵抗方向領域ESMから高抵抗方向領域ESHに近づくに従って小さくなるように構成されている。
【0050】
具体的には、低抵抗方向領域ESLにおけるビア電極VE及びトレンチ部TR間の距離(第1の距離)L1Aは、中抵抗方向領域ESMにおけるビア電極VE及びトレンチ部TR間の距離(第3の距離)L2Aよりも大きい。また、中抵抗方向領域ESMにおけるビア電極VE及びトレンチ部TR間の距離L2Aは、高抵抗方向領域ESHMにおけるビア電極VE及びトレンチ部TR間の距離(第2の距離)L3Aよりも大きい。
【0051】
図8(a)は、実施例2の変形例に係る発光素子20Aのn電極25Aの構造を示す斜視図である。発光素子20Aは、n電極の構成を除いては発光素子10Aと同様の構造を有している。n電極25Aは、複数のビア電極VEからなる電極群として構成されている。n電極25Aのビア電極VEの各々は、その形成深さが、低抵抗方向LD(低抵抗方向領域ESL)から中抵抗方向MD(中抵抗方向領域ESM)又は高抵抗方向HD(高抵抗方向領域ESH)に近づくに従って、また、中抵抗方向MD(中抵抗方向領域ESM)から高抵抗方向HD(高抵抗方向領域ESH)に近づくに従って大きく(深く)なるように構成されている。
【0052】
図8(b)は、実施例3の変形例1に係る発光素子30Aのn電極35Aの構造を示す斜視図である。発光素子30Aは、n電極の構成を除いては発光素子10A又は20Aと同様の構造を有している。n電極35Aのビア電極VEは、n電極15A及び25Aのビア電極VEの特徴を組み合わせた構成となっている。具体的には、n電極35Aのビア電極VEは、その形成深さ及びトレンチ部TRまでの距離の両方が各方向(各方向領域)で異なるように構成されている。
【0053】
上記変形例においては、n電極が複数のビア電極VEからなる電極群として構成され、トレンチは、ビア電極VEの各々を囲むように形成されたトレンチ部TRからなるトレンチ群として構成されている。また、ビア電極VEの各々は、その形成深さ及びトレンチ部までの距離のいずれかが、低抵抗方向領域と高抵抗方向領域との間で異なるように形成されている。
【0054】
また、上記の変形例は、大型の素子やアスペクト比の大きな形状の素子を作製する場合に有利な構成となっている。具体的には、例えば大型の素子を作製する場合、一定の電流分配を考慮してn電極を複数個設けることがある。本変形例においては、n電極としてビア電極を複数個設けることで電流分配の粗調整を行い、ビア電極の形状を調節してさらに電流分配量の微調整を行うことが可能となる。従って、様々な形状及びサイズの素子に対応して輝度ムラを低減することができる。
【0055】
なお、上記した変形例は他の実施例と組み合わせて実施することが可能である。また、上記変形例においては、ビア電極が1つのみ設けられていてもよい。
【0056】
なお、上記した半導体構造層各領域への区画方法や発光セグメントの区画方法、発光セグメント内における各領域へ区画方法は一例に過ぎない。具体的には、例えば半導体構造層や発光セグメントの形状又は素子への給電用のパッドの形状若しくは当該パッドからの距離などによって、様々な区画の手法を用いることができる。例えばパッドから遠いビア電極は他のビア電極に比べて電流の分配量が少ないため、そのビア電極を中心とする発光セグメントの範囲は小さくなる場合がある。また、発光セグメント内においてもビア電極毎に異なる領域の区画方法を用いることができる。
【0057】
図8(c)は、実施例3の変形例2に係る発光素子30Bのn電極35Bの構造を示す斜視図である。上記においては、n電極の形成深さやトレンチまでの距離が段階的に(不連続に)変化する場合について説明した。本変形例においては、連続的に形成深さが変化するn電極35B(ビア電極VE)を有する。本変形例のように、n電極の形成深さやトレンチまでの距離は連続的に調節されていてもよい。n電極35B(そのビア電極VE)は、例えば電極形成時のマスクの層厚を調節することでその形成深さを調節し、例えばマスクのパターンを調節することでそのトレンチまでの距離を調節することができる。なお、本変形例は、全ての実施例に適用することが可能である。
【0058】
なお、上記の実施例及びその変形例においては、正方形又は長方形の形状の主面を有する半導体構造層を有する場合について説明したが、半導体構造層の主面の形状はこれらに限定されるものではない。例えば、半導体構造層の主面は、多角形状又は円形状を有していてもよい。いずれの形状の半導体構造層を有する場合であっても、高抵抗方向と低抵抗方向との間で電流路の長さを調節するようにn電極を形成することによって、発光層に均一に電流を分配することができる。
【0059】
また、第1の導電型がp型の導電型であり、第2の導電型がp型とは反対の導電型のn型である場合について説明したが、第1の導電型がn型であり、第2の導電型がp型であっていてもよい。また、第1の導電型及び第2の導電型のいずれかが真性導電型であってもよい。すなわち、第1の半導体層及び第2の半導体層のいずれかが真性半導体層であってもよい。
【0060】
上記したように、半導体構造層は、相対的に低い電気抵抗を有する電流路の領域である低抵抗方向領域と、相対的に高い電気抵抗を有する電流路の領域である高抵抗方向領域との少なくとも2つの領域からなる。また、n電極は、その形成深さ及びトレンチまでの距離のいずれかが、低抵抗方向領域と高抵抗方向領域との間で異なるように形成されている。従って、半導体構造層の全体に均一に電流を分配することが可能となり、輝度ムラが大幅に抑制された高発光効率な発光素子を提供することが可能となる。