(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の構成には次のような問題がある。
第1に、CUK型及びZETA型に基づく回路において、一次側と二次側の整流接続構成を形成するダイオードにおける電流負荷及びそれに起因する損失が大きいという問題がある。詳細を後述するように、このダイオードには当初及び追加の結合コンデンサの充電電流とLED電流が同時に加算的に流れるため、その合計が定格LED電流を超え、ダイオードが過負荷となる可能性がある。
【0005】
第2に、CUK型及びZETA型に基づく回路において、無効電力が大きく、力率が低くなる可能性があるという問題がある。これも詳細を後述するように、同回路においては、当初及び追加の結合コンデンサを充電する電流はLED電流に直接寄与しない。従って、この充電電流が無効電力となるため、力率が改善されにくい。
【0006】
第3に、CUK型コンバータの回路トポロジーに特有の問題として、入力側回路(直流電源及びスイッチング素子)の極性と出力側回路(LED)の極性とが逆転する。そのため、例えば、LED電流、LED電圧等といった負荷側の出力状態を検出してスイッチング素子を制御する場合の制御構成が複雑となるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、各種昇降圧コンバータを用いる電源装置において、結合用コンデンサによって地絡対策を施しつつも、一次側と二次側との整流接続構成の損失を低減し、無効電力を減少させて力率を改善し、かつ入力側と出力側の極性が同方向となる構成を提供することを課題とする。本発明はまた、このような電源装置を用いた低損失、高力率かつ簡素な制御構成のLED照明装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電源装置は、直流電源に並列接続される、第1のインダクタとスイッチング素子の直列回路からなる一次回路と、第1のインダクタの両端又はスイッチング素子の両端に各々接続された第1及び第2のコンデンサからなる結合回路と、負荷に直列接続される第2のインダクタを有する二次回路と、結合回路から二次回路に向かう電
流を全波整流可能な整流接続回路を備える。
【0009】
本発明の電源装置の第1の形態では、整流接続回路がダイオードブリッジからなり、第1のコンデンサがスイッチング素子の入力端子とダイオードブリッジの一方の入力端子との間に接続され、第2のコンデンサがスイッチング素子の出力端子とダイオードブリッジの他方の入力端子との間に接続され、二次回路がダイオードブリッジの出力端子間に接続される。
【0010】
上記電源装置によると、CUK型昇降圧コンバータに基づく回路において、一次側と二次側の整流接続構成としてダイオードブリッジを備える。この構成によると、負荷の電流が定格値を超えないという前提の下、ダイオードブリッジの各ダイオードに定格負荷電流を超える電流は流れない。したがって、整流接続構成における電流負荷及びそれに起因する損失が小さく、回路効率を向上することができる。また、第1及び第2のコンデンサの充電電流が負荷を通過するので、無効電力が減少し、力率が向上する。また更に、入力側(直流電源及びスイッチング素子)の極性と出力側(負荷)の極性が揃うので単一極性の制御回路を形成することができ、制御構成が簡素なものとなる。
【0011】
また、上記第1の形態の変形としての電源装置では、整流接続回路が第1乃至第4のダイオードからなり、第1のダイオードのアノードと第3のダイオードのカソードが接続され、第2のダイオードのアノードと第4のダイオードのカソードが接続され、第1のコンデンサがスイッチング素子の入力端子と第1のダイオードのアノード及び第3のダイオードのカソードの接続点との間に接続され、第2のコンデンサがスイッチング素子の出力端子と第2のダイオードのアノード及び第4のダイオードのカソードの接続点との間に接続され、第2のダイオードのカソードと第4のダイオードのアノードが第2のインダクタ及び負荷を介して接続され、第1のダイオードのカソードと第3のダイオードのアノードが第2のインダクタをバイパスして負荷を介して接続される。この構成によると、上記第1の形態の電源装置において、更に、第1及び第2のコンデンサの充電電流において第2のインダクタがバイパスされるので効率的に第1及び第2のコンデンサが充電され得る。
【0012】
本発明の電源装置の第2の形態では、整流接続回路がダイオードブリッジからなり、第1のコンデンサが第1のインダクタの一方の端子とダイオードブリッジの一方の入力端子との間に接続され、第2のコンデンサが第1のインダクタの他方の端子とダイオードブリッジの他方の入力端子との間に接続され、二次回路がダイオードブリッジの出力端子間に接続される。
【0013】
上記電源装置によると、ZETA型昇降圧コンバータに基づく回路において、一次側と二次側の整流接続構成としてダイオードブリッジを備える。この構成によると、負荷の電流が定格値を超えないという前提の下、ダイオードブリッジの各ダイオードに定格負荷電流を超える電流は流れない。したがって、整流接続構成おける電流負荷及びそれに起因する損失が低減され、回路効率を向上することができる。また、第1及び第2のコンデンサの充電電流が負荷を通過するので、無効電力が減少し、力率が向上する。また、ZETA型コンバータの本来的な構成上、入力側と出力側の極性が揃うので単一極性の制御回路を形成することができ、制御構成が簡素なものとなる。
【0014】
また、上記第2の形態の変形としての電源装置では、整流接続回路が第1乃至第4のダイオードからなり、第1のダイオードのアノードと第3のダイオードのカソードが接続され、第2のダイオードのアノードと第4のダイオードのカソードが接続され、第1のコンデンサが第1のインダクタの一方の端子と第1のダイオードのアノード及び第3のダイオードのカソードの接続点との間に接続され、第2のコンデンサが第1のインダクタの他方の端子と第2のダイオードのアノード及び第4のダイオードのカソードの接続点との間に接続され、第1のダイオードのカソードと第3のダイオードのアノードが第2のインダクタ及び負荷を介して接続され、第2のダイオードのカソードと第4のダイオードのアノードが第2のインダクタをバイパスして負荷を介して接続される。この構成によると、上記第2の形態の電源装置において、更に、第1及び第2のコンデンサの充電電流において第2のインダクタがバイパスされるので効率的に第1及び第2のコンデンサが充電され得る。
【0015】
上記各電源装置において、負荷に並列接続される第3のコンデンサが更に設けられる。これにより、上記各電源装置からの出力電流及び出力電圧のリップルが低減される。
【0016】
本発明のLED照明装置は、上記いずれかの電源装置と、負荷としてのLEDを備える。これにより、上記電源装置を用いた低損失、高力率かつ簡素な制御構成のLED照明装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態1>
図1に本発明の第1の実施形態による電源装置1及びそれを用いたLED照明装置6の回路構成図を示す。LED照明装置6は電源装置1及びLED5(負荷L)を含む。バッテリ等の接地された直流電源Eからの直流電圧が電源装置1に入力され、電源装置1からの直流出力がLED5に供給される。
【0019】
電源装置1は、インダクタ11、スイッチング素子12、コンデンサ13及び14、ダイオードブリッジ15、インダクタ16、コンデンサ17並びに制御回路18を含み、CUK型コンバータに基づく非絶縁型の昇降圧コンバータを構成する。ここで、インダクタ11及びスイッチング素子12が一次回路Pを構成し、結合用のコンデンサ13及び14が結合回路Cを構成し、ダイオードブリッジ15が整流接続回路Rを構成し、インダクタ16及びコンデンサ17が二次回路Sを構成する。なお、以降の説明において、LED5に流れる電流は定格LED電流を超えることがないように適宜設定及び制御されるものとする。
【0020】
一次回路Pにおいて、インダクタ11が直流電源Eの正極に接続される。スイッチング素子12はMOSFET等のトランジスタからなるものであればよく、インダクタ11を介して直流電源Eに並列接続される。なお、以降の説明において、各スイッチング素子の高電位側端子(MOSFETの場合はドレイン端子、バイポーラトランジスタの場合はコレクタ端子)を入力端子といい、低電位側端子(MOSFETの場合はソース端子、バイポーラトランジスタの場合はエミッタ端子)を出力端子というものとする。すなわち、
図1においては、スイッチング素子12の入力端子がインダクタ11に接続され、出力端子が直流電源Eの負極に接続される。スイッチング素子12は制御回路18によってPWM駆動される。なお、
図1においては、インダクタ11は直流電源Eの正極に接続されるが、負極に接続されていてもよい。この場合、スイッチング素子12の入力端子が直流電源Eの正極に接続され、出力端子がインダクタ11に接続される。
【0021】
結合回路Cに関して、コンデンサ13はスイッチング素子12の入力端子に接続され、コンデンサ14はスイッチング素子12の出力端子に接続される。コンデンサ13及び14は、その直流カット機能によって出力側、すなわちLED5等の地絡対策回路を構成する。例えば、電源装置1からLED5への配線が偶発的に地絡(すなわち、直流電源Eの負極側の接地点と同電位)となってしまった場合でも、地絡箇所と直流電源Eまでコンデンサ13及び14が介在することにより、電源装置1内での急峻な電圧又は電流の変動が抑制される。このように、コンデンサ13及び14が直流電源EからLED5までの経路に挿入されることにより、地絡対策が施され、電源装置1及びLED照明装置6の信頼性が向上する。
【0022】
整流接続回路Rであるダイオードブリッジ15の入力端子にコンデンサ13及び14がそれぞれ接続され、出力端子間にインダクタ16とLED5の直列回路が接続される。より具体的には、ダイオードブリッジ15はダイオード15a、15b、15c及び15dからなる。ダイオード15aのアノード及びダイオード15cのカソードがコンデンサ13に接続され、ダイオード15bのアノード及びダイオード15dのカソードがコンデンサ14に接続される。ダイオード15a及び15bのカソードがインダクタ16に接続され、ダイオード15c及び15dのアノードがLED5のカソード端に接続される。
【0023】
二次回路Sにおいて、インダクタ16がダイオードブリッジ15の出力端間にLED5を介して接続される。なお、
図1においては、インダクタ16は、ダイオードブリッジ15の高電位出力端とLED5のアノード端の間に接続されているが、ダイオードブリッジ15の低電位出力端とLED5のカソード端の間に接続されていてもよい。コンデンサ17はLED5に並列接続され、LED5への出力電圧及び出力電流におけるリップルを低減する。
【0024】
このように、整流接続回路Rは、結合回路Cから二次回路Sに向かう電
流を全波整流する(及び二次回路Sから結合回路Cに向かう電流を所定方向
に整流す
る)ことが可能な態様で構成される。
【0025】
ここで、比較のために、
図9A及び
図9Bを用いて従来のCUK型コンバータに基づく電源装置3を説明する。
図9A及び
図9Bに示すように、電源装置3は、インダクタ31、スイッチング素子32、コンデンサ33及び34、ダイオード35、インダクタ36、コンデンサ37並びに制御回路38を有する。
図1に示す本実施形態の電源装置1と従来の電源装置3との相違は、一次側(一次回路及び結合回路)と二次側(二次回路)との接続構成において、電源装置1ではダイオードブリッジ15が用いられるのに対して電源装置3ではダイオード35が用いられる点にある。
図9Aはスイッチング素子32がオンされたスイッチングオン期間の電流を示し、
図9Bはスイッチング素子32がオフされたスイッチングオフ期間の電流を示す。
【0026】
図9Aに示すように、スイッチングオン期間では、直流電源Eからの電流i11が、直流電源E→インダクタ31→スイッチング素子32→直流電源Eに流れ、インダクタ31にエネルギーが蓄えられる。また、コンデンサ33及び34の電荷(前回のスイッチングオフ期間に充電されていた電荷)を電源として、コンデンサ33→スイッチング素子32コンデンサ34→LED5→インダクタ36→コンデンサ33に電流i12が流れる。電流i12によってコンデンサ33及び34が放電される。
【0027】
図9Bに示すように、スイッチングオフ期間においては、直流電源Eの電力及びインダクタ31に蓄えられたエネルギーを電源として、電流i13がインダクタ31→コンデンサ33→ダイオード35→コンデンサ34→直流電源Eに流れる。電流i13によってコンデンサ33及び34が充電される。また、スイッチングオン期間においてインダクタ36に蓄えられたエネルギーを電源として、インダクタ36→ダイオード35→LED5→インダクタ36に電流i14が流れる。
【0028】
ここで、電源装置3の構成には、前述したいくつかの問題点がある。まず、スイッチングオフ期間において、ダイオード35には、コンデンサ33及び34の充電電流i13及びLED5の電流i14が同時に加算的に流れる。したがって、ダイオード35に定格LED電流を超える電流が流れることにより電流負荷が大きくなり、損失も大きくなる。また、スイッチングオフ期間において、コンデンサ33及び34の充電電流i13は、直流電源Eとコンデンサ33及び34との間の電力の伝送のみに関与し、LED5の点灯には寄与しない。したがって、充電電流i13は無効電力を発生させ、電源装置3の力率を低下させてしまう。また更に、回路のトポロジー上、入力側(直流電源E及びスイッチング素子32)の極性と出力側(LED5)の極性が逆転する。これにより、例えば、制御回路38がLED電流、LED電圧等の出力検出に基づいてスイッチング素子32を駆動する場合の制御構成が複雑になってしまう。
【0029】
図2A〜
図2Dを用いて、本実施形態の電源装置1の動作を説明する。
図2A及び
図2Bはスイッチング素子12がオンされたスイッチングオン期間の電流を示し、
図2C及び
図2Dはスイッチング素子12がオフされたスイッチングオフ期間の電流を示す。
【0030】
図2Aに示すように、スイッチングオン期間において、一次側では、直流電源Eからの電流i1が、直流電源E→インダクタ11→スイッチング素子12→直流電源Eに流れ、インダクタ11にエネルギーが蓄えられる。また、二次側では、コンデンサ13及び14の電荷(前回のスイッチングオフ期間に充電されていた電荷)を電源として、コンデンサ13→スイッチング素子12→コンデンサ14→ダイオード15b→インダクタ16→LED5→ダイオード15c→コンデンサ13に電流i2が流れる。電流i2によってコンデンサ13及び14が放電される。
【0031】
図2Bに示すように、スイッチングオン期間においてコンデンサ13及び14の電荷が尽きると、二次側では、インダクタ16に蓄えられたエネルギーを電源として、インダクタ16→LED5→ダイオード15c及び15d→ダイオード15a及び15b→インダクタ16に電流i3が流れる。一次側の電流i1は維持される。なお、コンデンサ13及び14の容量が比較的大きい場合、又はスイッチングオン期間が比較的短い場合には、
図2Bに示す状態は存在しない。この場合には、
図2Aに示す状態の直後に
図2Cに示す状態が続くことになる。
【0032】
図2Cに示すように、スイッチングオフ期間において、直流電源Eの電力及びインダクタ11に蓄えられたエネルギーを電源として、電流i4が、直流電源E→インダクタ11→コンデンサ13→ダイオード15a→インダクタ16→LED5→ダイオード15d→コンデンサ14→直流電源Eに流れる。電流i4によってコンデンサ13及び14が充電される。
【0033】
図2Dに示すように、スイッチングオフ期間においてコンデンサ13及び14の充電が終了すると、二次側において、インダクタ16に蓄えられたエネルギーを電源として、インダクタ16→LED5→ダイオード15c及び15d→ダイオード15a及び15b→インダクタ16に電流i3が流れる。この際
、電流i3に起因してダイオード15a、15b、15c及び15dが等しく導通(オン)した場合、ダイオード15cのカソードとダイオード15dのカソードが同電位となる。そのため、一次側にコンデンサ13及び14に充電経路が形成され、インダクタ11に蓄えられていたエネルギーによって、インダクタ11→コンデンサ13→ダイオード15c→ダイオード15d→コンデンサ14→直流電源E→インダクタ11
、あるいは、インダクタ11→コンデンサ13→ダイオード15a→ダイオード15b→コンデンサ14→直流電源E→インダクタ11のように流れ得る。その後、動作は
図2Aに示す状態に続く。なお、コンデンサ13及び14の容量が比較的大きい場合、又はスイッチングオフ期間が比較的短い場合には、
図2Dに示す状態は存在しない。この場合には、
図2Cに示す状態の直後に
図2Aに示す状態が続くことになる。なお、インダクタ11及び16並びにコンデンサ13及び14の定数によっては、
図2Bの次に
図2Dの状態を経て
図2Cの状態が起こり、その後
図2Aの状態に戻る場合もある。
【0034】
以上のように、本実施形態の電源装置1は、一次側(一次回路P及び結合回路C)と二次側(二次回路S)の整流接続構成として
、一次側から二次側に向かう電流を全波整流可能なダイオードブリッジ15(整流接続回路R)を備える。これにより、以下の有利な効果を得ることができる。
【0035】
(1)低損失化
上記構成においては、LED電流とコンデンサ13及び14の充電電流が1つのダイオードに同時に加算的に流れることがない。言い換えると、ダイオードブリッジ15の各ダイオードには定格LED電流を超える電流は流れない。したがって、電源装置1においては、従来の電源装置3と比べて、一次側と二次側の間の整流接続構成における電流負荷及びそれに起因する損失が小さく、回路効率を向上することができる。
【0036】
(2)力率向上
また、電源装置1では、コンデンサ13及び14の充電電流i4がLED5を通過してその点灯に寄与する(
図2C参照)。言い換えると、電源装置1においては、LED5の点灯に寄与しない電流はスイッチングオン期間におけるインダクタ11及びスイッチング素子12に流れる電流i1のみとなるので、従来の電源装置3に比べて無効電力が減少し、力率が向上する。
【0037】
(3)制御構成の簡素化
また更に、電源装置1では、入力側(直流電源E及びスイッチング素子12)の極性と出力側(LED5)の極性を揃えることができる。したがって、(コンデンサ14があるために入力側と出力側とは同じ基準電位とはならないものの)電源装置1において単一極性の制御回路を形成することができ、制御構成が簡素なものとなる。
【0038】
(4)電源装置の小型化
また更に、インダクタ16及びコンデンサ17の負担軽減により電源装置の小型化が可能となる。電源装置1では、
図2Cに示すように直流電源E及びインダクタ11を介してLED5に直接給電するモードがあるため、LED電流の給電においてインダクタ16及びコンデンサ17によるエネルギーの授受に依存する度合いは、従来の電源装置3に比べて小さい。これにより、インダクタ16のインダクタンスはインダクタ36のインダクタンスよりも小さくて済む。また、コンデンサ17におけるリップル電流はコンデンサ37におけるリップル電流よりも小さくなるので、コンデンサ17はコンデンサ37よりも小型なもので済む。したがって、電源装置の小型化及び損失低減が可能となる。
【0039】
このように、本実施形態によると、CUK型昇降圧コンバータに基づく電源装置1において、結合用コンデンサによって地絡対策を施しつつも、一次側と二次側の整流接続構成の損失を低減し、無効電力を減少させて力率を改善し、かつ簡素な制御構成を提供することが可能となる。また、このような電源装置1を用いた低損失、高力率、簡素な制御構成かつ小型化可能なLED照明装置6が実現される。
【0040】
<実施形態1の変形例>
上記の電源装置1では、コンデンサ13及び14の充電電流の経路がインダクタ16を経由する構成を示したが、変形例として、コンデンサ13及び14の充電電流の経路がインダクタ16をバイパスする構成を示す。なお、以降において、上記実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0041】
図3に本変形例の電源装置1´の回路構成を示す。電源装置1´は、インダクタ11、スイッチング素子12、コンデンサ13及び14、ダイオード15a〜15d、インダクタ16、コンデンサ17並びに制御回路18を含む。なお、ダイオード15a〜15dが整流接続部Rを構成する。本変形例の電源装置1´と上記実施形態の電源装置1とは、ダイオード15a、ダイオード15d、インダクタ16及びLED5の接続のみが異なる。具体的には、本変形例のダイオード15aのカソードとダイオード15dのアノードは、インダクタ16をバイパスしてLED5を介して接続される。
【0042】
図3に示すように、ダイオード15aのカソードがLED5のアノード端に接続され、ダイオード15bのカソードがインダクタ16を介してLED5のアノード端に接続され、ダイオード15c及び15dのアノードがLED5のカソード端に接続される。なお、インダクタ16がLED5のカソード端とダイオード15cのアノードの間に接続される構成としてもよい。この場合、ダイオード15dのアノードがLED5のカソード端に接続され、ダイオード15a及び15bのカソードがLED5のアノード端に接続される。
【0043】
図4A及び
図4Bを用いて、本変形例の電源装置1´の動作を説明する。
図4Aはスイッチング素子12がオンされたスイッチングオン期間の電流を示し、
図4Bはスイッチング素子12がオフされたスイッチングオフ期間の電流を示す。なお、本変形例においては、
図2B及び
図2Dに対応する期間はないものとして(すなわち、そのような回路定数及びPWM制御の設定であるものとして)説明する。
【0044】
図4Aに示すように、スイッチングオン期間において、一次側では、直流電源Eからの電流i1が、直流電源E→インダクタ11→スイッチング素子12→直流電源Eに流れ、インダクタ11にエネルギーが蓄えられる。また、二次側では、コンデンサ13及び14の電荷(前回のスイッチングオフ期間に充電されていた電荷)を電源として、コンデンサ13→スイッチング素子12→コンデンサ14→ダイオード15b→インダクタ16→LED5→ダイオード15c→コンデンサ13に電流i2が流れる。電流i2によってコンデンサ13及び14が放電される。
【0045】
図4Bに示すように、スイッチングオフ期間において、直流電源Eの電力及びインダクタ11に蓄えられたエネルギーを電源として、直流電源E→インダクタ11→コンデンサ13→ダイオード15a→LED5→ダイオード15d→コンデンサ14→直流電源Eに電流i4が流れる。電流i4によってコンデンサ13及び14が充電される。また、スイッチングオン期間にインダクタ16に蓄えられたエネルギーを電源として、インダクタ16→LED5→ダイオード15d→ダイオード15b→インダクタ16に電流i3が流れる。なお、ダイオード15dにおいて、電流i3及びi4が合流するが、この合計電流がLED電流となるので、LED電流が定格値以下に制御されることにより、ダイオード15dには定格LED電流を超える電流は流れない。
【0046】
以上のように、本変形例の電源装置1´は、一次側と二次側の整流接続構成として
、一次側から二次側に向かう電流を全波整流可能なダイオード15a乃至15dを備え、結合用コンデンサ13及び14の充電経路にインダクタ16が介在しない。これにより、本変形例の電源装置1´においても、上記実施形態と同様に(1)低損失化、(2)力率向上(3)制御構成の簡素化、及び(4)小型化の有利な効果を得ることができるとともに、より効率的にコンデンサ13及び14を充電することが可能となる。
【0047】
<実施形態2>
上記第1の実施形態ではCUK型昇降圧コンバータに基づいて構成された電源装置を示したが、本実施形態ではZETA型昇降圧コンバータに基づいて構成された電源装置を示す。
図5に本実施形態の電源装置2及びそれを用いたLED照明装置6の回路構成図を示す。LED照明装置6は電源装置2及びLED5を含む。
【0048】
電源装置2は、インダクタ21、スイッチング素子22、コンデンサ23及び24、ダイオードブリッジ25、インダクタ26、コンデンサ27並びに制御回路28を含み、ZETA型コンバータに基づく非絶縁型の昇降圧コンバータを構成する。なお、インダクタ21及びスイッチング素子22が一次回路Pを構成し、結合用のコンデンサ23及び24が結合回路Cを構成し、ダイオードブリッジ25が整流接続回路Rを構成し、インダクタ26及びコンデンサ27が二次回路Sを構成する。
【0049】
一次回路Pにおいて、インダクタ21は、直流電源Eにスイッチング素子22を介して並列接続される。スイッチング素子22はMOSFET等のトランジスタからなるものであればよく、その入力端子が直流電源Eの正極に接続され、出力端子がインダクタ21に接続され、制御回路28によって駆動される。なお、
図5においては、スイッチング素子22が直流電源Eの正極側に接続される構成を示すが、負極側に接続される構成としてもよい。この場合、スイッチング素子22の出力端子が直流電源Eの負極に接続され、入力端子がインダクタ21に接続される。
【0050】
結合回路Cに関して、コンデンサ23はインダクタ21の一方の端子に接続され、コンデンサ24はインダクタ21の他方の端子に接続される。第1の実施形態のコンデンサ13及び14と同様に、コンデンサ23及び24は、その直流カット機能によって出力側、すなわちLED5等の地絡対策回路を構成する。
【0051】
ダイオードブリッジ25以降の二次側の構成は第1の実施形態の構成と同様である。すなわち、整流接続回路R及び二次回路Sにおいて、ダイオードブリッジ25の入力端子がコンデンサ23及び24にそれぞれ接続されるとともに出力端子間にインダクタ26とLED5の直列回路が接続され、コンデンサ17がLED5に並列接続される。
【0052】
ここで、比較のために、
図10A及び
図10Bを用いて従来のZETA型コンバータに基づく電源装置4を説明する。
図10A及び
図10Bに示すように、電源装置4は、インダクタ41、スイッチング素子42、コンデンサ43及び44、ダイオード45、インダクタ46、コンデンサ47並びに制御回路48を有する。
図5に示す本実施形態の電源装置2と従来の電源装置4との相違は、一次側と二次側の接続構成において、電源装置2ではダイオードブリッジ25が用いられるのに対して電源装置3ではダイオード45が用いられる点にある。
図10Aはスイッチング素子42がオンされたスイッチングオン期間の電流を示し、
図10Bはスイッチング素子42がオフされたスイッチングオフ期間の電流を示す。
【0053】
図10Aに示すように、スイッチングオン期間では、直流電源Eからの電流i15が、直流電源E→スイッチング素子42→インダクタ41→直流電源Eに流れ、インダクタ41にエネルギーが蓄えられる。また、電流i16が、直流電源E→スイッチング素子42→コンデンサ43→インダクタ46→LED5→コンデンサ44→直流電源Eに流れる。電流i16によってコンデンサ43及び44が放電される。
【0054】
図10Bに示すように、スイッチングオフ期間においては、インダクタ41に蓄えられたエネルギーを電源として、電流i17がインダクタ41→コンデンサ44→ダイオード45→コンデンサ43→インダクタ41に流れる。電流i17によってコンデンサ43及び44が充電される。また、スイッチングオン期間にインダクタ46に蓄えられたエネルギーを電源として、電流i18がインダクタ46→LED5→ダイオード45→インダクタ46に流れる。
【0055】
ここで、電源装置4の構成には、前述したいくつかの問題点がある。スイッチングオフ期間において、ダイオード45に、コンデンサ43及び44の充電電流i17及びLED5の電流i18が同時に加算的に流れる。したがって、ダイオード45に定格LED電流を超える電流が流れることにより電流負荷が大きくなり、損失も大きくなる。また、コンデンサ43及び44を充電するための電流(電流i15及びi17)は、LED5を経由することはないため、無効電力を発生させ、電源装置4の力率を低下させてしまう。
【0056】
図6A〜
図6Dを用いて、本実施形態の電源装置2の動作を説明する。
図6A及び
図6Bはスイッチング素子22がオンされたスイッチングオン期間の電流を示し、
図6C及び
図6Dはスイッチング素子22がオフされたスイッチングオフ期間の電流を示す。
【0057】
図6Aに示すように、スイッチングオン期間において、一次側では、直流電源Eからの電流i5が、直流電源E→スイッチング素子22→インダクタ21→直流電源Eに流れ、インダクタ21にエネルギーが蓄えられる。また、二次側に関して、直流電源E並びにコンデンサ23及び24の電荷(前回のスイッチングオフ期間に充電されていた電荷)を電源として、直流電源E→スイッチング素子22→コンデンサ23→ダイオード25a→インダクタ26→LED5→ダイオード25d→コンデンサ24→直流電源Eに電流i6が流れる。電流i6によってコンデンサ23及び24が放電される。
【0058】
図6Bに示すように、スイッチングオン期間においてコンデンサ23及び24の電荷が尽きると、二次側では、インダクタ26に蓄えられたエネルギーを電源として、インダクタ26→LED5→ダイオード25c及び25d→ダイオード25a及び25b→インダクタ26に電流i7が流れる。一次側の電流i5は維持される。なお、コンデンサ23及び24の容量が比較的大きい場合、又はスイッチングオン期間が比較的短い場合には、
図6Bに示す状態は存在しない。この場合には、
図6Aに示す状態の直後に
図6Cに示す状態が続くことになる。
【0059】
図6Cに示すように、スイッチングオフ期間において、インダクタ21(及び26)に蓄えられたエネルギーを電源として、インダクタ21→コンデンサ24→ダイオード25b→インダクタ26→LED5→ダイオード25c→コンデンサ23→インダクタ21に電流i8が流れる。電流i8によってコンデンサ23及び24が充電される。
【0060】
図6Dに示すように、スイッチングオフ期間においてコンデンサ23及び24の充電が終了すると、一次側に電流は流れず、二次側において、インダクタ26に蓄えられたエネルギーを電源として、インダクタ26→LED5→ダイオード25c及び25d→ダイオード25a及び25b→インダクタ26に電流i7が流れる
。この際、電流i7に起因してダイオード25a、25b、25c及び25dが等しく導通(オン)した場合、ダイオード25cのカソードとダイオード25dのカソードが同電位となる。そのため、一次側にコンデンサ23及び24に充電経路が形成され、インダクタ21に蓄えられていたエネルギーによって、インダクタ21→コンデンサ23→ダイオード25c→ダイオード25d→コンデンサ24→インダクタ21、あるいは、インダクタ21→コンデンサ23→ダイオード25a→ダイオード25b→コンデンサ24→インダクタ21のように流れ得る。その後、動作は
図6Aに示す状態に続く。なお、コンデンサ23及び24の容量が比較的大きい場合、又はスイッチングオフ期間が比較的短い場合には、
図6Dに示す状態は存在しない。この場合には、
図6Cに示す状態の直後に
図6Aに示す状態が続くことになる。
【0061】
以上のように、本実施形態の電源装置2は、一次側(一次回路P及び結合回路C)と二次側(二次回路S)の整流接続構成として
、一次側から二次側に向かう電流を全波整流可能なダイオードブリッジ25(整流接続回路R)を備える。これにより、第1の実施形態に関して説明した(1)低損失化の有利な効果が得られる。すなわち、1つのダイオードにLED電流及びコンデンサ23及び24の充電電流が同時に加算的に流れることがなく、ダイオードブリッジ25の各ダイオードには定格LED電流を超える電流は流れない。したがって、電源装置2においては、従来の電源装置4と比べて、一次側と二次側を接続する整流構成における電流負荷及びそれに起因する損失が小さく、回路効率を向上することができる。
【0062】
また、第1の実施形態に関して説明した(2)力率向上の有利な効果も得られる。すなわち、コンデンサ23及び24の充電電流i8がLED5を通過してその点灯に寄与する(
図6C参照)。言い換えると、電源装置2においては、LED5の点灯に寄与しない電流はスイッチングオン期間におけるスイッチング素子22及びインダクタ21に流れる電流i5のみとなるので、従来の電源装置3に比べて無効電力が減少し、力率が向上する。なお、上記(3)制御構成の簡素化の効果はZETA型コンバータの本来的な構成から得られる。
【0063】
このように、本実施形態によると、ZETA型昇降圧コンバータに基づく電源装置2において、結合用コンデンサによって地絡対策を施しつつも、一次側と二次側の整流接続構成の損失を低減するとともに無効電力を減少させて力率を改善することが可能となる。また、このような電源装置2を用いた低損失、高力率かつ簡素な制御構成のLED照明装置6が実現される。
【0064】
<実施形態2の変形例>
上記の電源装置2では、コンデンサ23及び24の充電電流の経路がインダクタ26を経由する構成を示したが、変形例として、コンデンサ23及び24の充電電流の経路がインダクタ26をバイパスする構成を示す。なお、以降において、上記実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0065】
図7に本変形例の電源装置2´の回路構成を示す。電源装置2´は、インダクタ21、スイッチング素子22、コンデンサ23及び24、ダイオード25a〜25d、インダクタ26、コンデンサ27並びに制御回路28を含む。なお、ダイオード25a〜25dが整流接続回路Rを構成する。本変形例の電源装置2´と上記実施形態の電源装置2とは、ダイオード25b、ダイオード25c、インダクタ26及びLED5の接続のみが異なる。具体的には、本変形例のダイオード25bのカソードとダイオード25cのアノードは、インダクタ26をバイパスしてLED5を介して接続される。
【0066】
図7に示すように、ダイオード25aのカソードがインダクタ26を介してLED5のアノード端の間に接続され、ダイオード25bのカソードがLED5のアノード端に接続され、ダイオード25c及び25dのアノードがLED5のカソード端に接続される。なお、インダクタ26がLED5のカソード端とダイオード25dのアノードの間に接続される構成としてもよい。この場合、ダイオード25cのアノードがLED5のカソード端に接続され、ダイオード25a及び25bのカソードがLED5のアノード端に接続される。
【0067】
図8A及び
図8Bを用いて、本変形例の電源装置2´の動作を説明する。
図8Aはスイッチング素子22がオンされたスイッチングオン期間の電流を示し、
図8Bはスイッチング素子22がオフされたスイッチングオフ期間の電流を示す。なお、本変形例においては、
図6B及び
図6Dに対応する期間はないものとして(すなわち、そのような回路定数及びPWM制御の設定であるものとして)説明する。
【0068】
図8Aに示すように、スイッチングオン期間において、一次側では、直流電源Eからの電流i5が、直流電源E→スイッチング素子22→インダクタ21→直流電源Eに流れ、インダクタ21にエネルギーが蓄えられる。また、二次側に関して、直流電源E並びにコンデンサ23及び24の電荷(前回のスイッチングオフ期間に充電されていた電荷)を電源として、直流電源E→スイッチング素子22→コンデンサ23→ダイオード25a→インダクタ26→LED5→ダイオード25d→コンデンサ24→直流電源Eに電流i6が流れる。電流i6によってコンデンサ23及び24が放電される。
【0069】
図8Bに示すように、スイッチングオフ期間において、スイッチングオフ期間において、インダクタ21に蓄えられたエネルギーを電源として、インダクタ21→コンデンサ24→ダイオード25b→LED5→ダイオード25c→コンデンサ23→インダクタ21に電流i8が流れる。電流i8によってコンデンサ23及び24が充電される。
【0070】
以上のように、本変形例の電源装置2´は、一次側と二次側の整流接続構成として
、一次側から二次側に向かう電流を全波整流可能なダイオード25a乃至25dを備え、結合用コンデンサ23及び24の充電経路にインダクタ26が介在しない。これにより、上記実施形態と同様に(1)低損失化、(2)力率向上及び(3)制御構成の簡素化の有利な効果を得ることができるとともに、より効率的にコンデンサ23及び24を充電することが可能となる。
【0071】
以上に本発明の好適な実施形態を示したが、本発明は、種々の態様に変形可能である。例えば、上記各実施形態及び変形例においては、電源装置1及び2の負荷LとしてLED5を示したが、負荷LはLED以外のインピーダンス素子又は回路であってもよい。例えば、負荷Lは抵抗負荷であってもよいし、電源装置1又は2からの直流出力を利用して負荷を駆動する別途の回路であってもよい。