特許第6292979号(P6292979)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6292979-ロードセンシング制御回路 図000002
  • 特許6292979-ロードセンシング制御回路 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6292979
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】ロードセンシング制御回路
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/05 20060101AFI20180305BHJP
   F15B 11/00 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   F15B11/05 Z
   F15B11/00 M
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-108124(P2014-108124)
(22)【出願日】2014年5月26日
(65)【公開番号】特開2015-224657(P2015-224657A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2017年3月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076163
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋 宣之
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 剛
(72)【発明者】
【氏名】中村 雅之
【審査官】 正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平5−172107(JP,A)
【文献】 特開平4−136506(JP,A)
【文献】 特開平10−205502(JP,A)
【文献】 実開昭63−119907(JP,U)
【文献】 米国特許第5609089(US,A)
【文献】 特開平6−159309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00−11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアクチュエータと、
これらアクチュエータに圧力流体を供給する可変容量型ポンプと、
上記可変容量型ポンプ及び上記アクチュエータを接続する接続過程にそれぞれ設けた切換弁と、
この切換弁及び上記アクチュエータを接続する接続過程にそれぞれ設け、一方の圧力室と他方の圧力室とを有するコンペンセータバルブと、
複数の上記アクチュエータにおける最高負荷圧を選択する選択手段と
を備え、
上記コンペンセータバルブの一方の圧力室には、当該コンペンセータバブルが接続されたアクチュエータの負荷圧を導き、上記選択手段で選択された最高負荷圧をコンペンセータバルブの他方の圧力室に導き、これら両圧力室の圧力作用で当該コンペンセータバルブの開度を制御して、複数の切換弁の切り換え量に応じてポンプ吐出量を分流するロードセンシング制御回路において、
少なくとも一つの上記コンペンセータバルブの上記一方の圧力室をタンクに接続するドレン通路を設けるとともに、このドレン通路に、上記一方の圧力室の圧力を制御する圧力制御手段を設けてなるロードセンシング制御回路。
【請求項2】
上記圧力制御手段は分流比変更バルブからなるとともに、上記分流比変更バルブは、絞り位置と閉位置とに切り換え可能にした請求項1に記載されたロードセンシング制御回路。
【請求項3】
上記分流比変更バルブは、絞り位置における絞り部の開度を可変にした請求項2に記載されたロードセンシング制御回路。
【請求項4】
上記圧力制御手段は、上記切換弁及びコンペンセータバルブ間と上記分流比変更バルブとを接続する通路過程に設けた絞り手段とからなり、上記分流比変更バルブの絞り位置における絞り部と絞り手段との少なくとも一方を可変絞りにした請求項2に記載されたロードセンシング制御回路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のアクチュエータの負荷圧変動にかかわりなく、各切換弁の開度に応じて分流するロードセンシング制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のロードセンシング制御回路として、特許文献1に記載されたものが従来から知られているが、この特許文献1における回路図を示したのが図2である。
【0003】
可変容量型ポンプ1には切換弁V1,V2を接続している。この切換弁V1,V2には、図示しないスプールが摺動自在に組み込まれている。なお、切換弁V1,V2は、上記スプールのストロークに応じてその開度を可変にするものなので、図2においては、切換弁V1,V2を可変オリフィスの記号で示している。
【0004】
上記切換弁V1,V2の下流には、コンペンセータバルブC1,C2を接続するとともに、このコンペンセータバルブC1,C2の下流にアクチュエータA1,A2を接続している。つまり、コンペンセータバルブC1,C2は、切換弁V1,V2及びアクチュエータA1,A2とを接続する接続過程に設けられている。そして、これら両アクチュエータA1,A2のヘッド側室2,3のそれぞれは最高負荷圧を選択する選択手段4に接続され、この選択手段4によって、上記ヘッド側室2,3のうちのどちらか高いほうの負荷圧P2が選択される。
【0005】
上記選択手段4で選択された最高負荷圧P2は、上記可変容量型ポンプ1に設けたレギュレータ5に導かれ、その最高負荷圧P2に応じて、可変容量型ポンプ1の傾転角が制御され、当該可変容量型ポンプ1が上記最高負荷圧P2に対応した吐出圧P1と吐出量を保つようにしている。
なお、図中符号Tはタンク、6はレギュレータ5とタンクTとの間の圧力を保つためのオリフィスである。
【0006】
コンペンセータバルブC1,C2は、一方の圧力室9,10と他方の圧力室11,12とを設け、これら一方の圧力室9,10と他方の圧力室11,12との圧力作用で開度が制御される。
さらに詳しくは、コンペンセータバルブC1,C2には、図示しないスプール(以下「コンペスプール」という)を摺動自在に設けるとともに、このコンペスプールの一端を上記一方の圧力室9,10に臨ませ、他端を上記他方の圧力室11,12に臨ませている。そして、このコンペスプールは、一方の圧力室9,10と他方の圧力室11,12との圧力作用で、移動位置が制御されるとともに、その移動位置に応じて、切換弁V1,V2からアクチュエータA1,A2にいたる過程の開度が制御される。
【0007】
さらに、上記一方の圧力室9,10には、当該コンペンセータバルブC1,C2と切換弁V1,V2との間の圧力P3,P4が導かれ、他方の圧力室11,12には、選択手段4で選択された最高負荷圧P2が導かれる。ただし、上記圧力P3,P4は、切換弁V1,V2の開度に応じた圧力損失分だけ、可変容量型ポンプ1の吐出圧P1よりも低くなるのは当然である。
【0008】
また、上記圧力P3,P4は、アクチュエータA1,A2の負荷圧に比例して変化する。例えば、アクチュエータA1,A2の負荷圧が高くなれば、それにともなって圧力P3,P4も高くなるし、負荷圧が低くなれば圧力P3,P4も低くなる。
したがって、コンペンセータバルブC1,C2の一方の圧力室9,10には、アクチュエータA1,A2の負荷圧に応じて変化する圧力P3,P4が導かれることになる。
【0009】
そして、コンペンセータバルブC1,C2は、上記最高負荷圧P2と上記圧力P3,P4とがバランスする位置を保持するとともに、そのバランス位置において当該コンペンセータバルブC1,C2の開度を維持する。
例えば、他方の圧力室11,12に導かれる最高負荷圧P2に対して、反対側の一方の圧力室9,10に導かれる圧力P3,P4の圧力が低ければ低いほどコンペンセータバルブC1,C2の開度が小さくなり、最高負荷圧P2と圧力P3,P4との相対差が小さくなればなるほど、コンペンセータバルブC1,C2の開度は大きくなる。
【0010】
一方、両切換弁V1,V2が中立位置から切り換えられると、当該切換弁V1,V2は、その切り換え量に応じた開度を維持するが、これら両切換弁V1,V2の開度の比が、各アクチュエータA1,A2に対する可変容量型ポンプ1の吐出量の分流比になる。
【0011】
しかし、切換弁V1,V2の開度で定めた分流比が一定だとしても、アクチュエータA1,A2の負荷圧が変化してしまえば、切換弁V1,V2の開度によって定めた上記分流比が保たれなくなる。例えば、アクチュエータA1,A2の負荷圧が変化して、一方のアクチュエータの負荷圧が、他方のアクチュエータの負荷圧よりも低くなったとする。このときには、たとえ切換弁V1,V2の開度に変化がなくても、可変容量型ポンプ1の吐出流体は、負荷の軽い一方のアクチュエータの方に多く流れてしまい、切換弁V1,V2の開度で定めた分流比を保つことができなくなる。
【0012】
コンペンセータバルブC1,C2は、アクチュエータA1,A2の負荷圧が変化した場合にも、切換弁V1,V2の開度で定めた分流比を一定に保つ機能を果たすが、次に、その原理を説明する。
ただし、以下の説明において、一方のアクチュエータA1が最高負荷圧P2を維持し、他方のアクチュエータA2の負荷圧が上記最高負荷圧P2よりも低い場合であって、一度設定された切換弁V1,V2の開度は変化しないことを前提にする。
【0013】
上記の場合に、可変容量型ポンプ1の吐出圧P1が最も高いのは当然である。そして、圧力P3は、コンペンセータバルブC1を流れる流体の圧力損失分だけ、アクチュエータA1の負荷圧すなわち最高負荷圧P2よりも高い圧力を維持する。したがって、各圧力は、P1>P3>P2の関係を保つ。
【0014】
上記の関係を維持している中で、一方のコンペンセータバルブC1のコンペスプールは、一方の圧力室9における圧力P3の作用力と他方の圧力室11における最高負荷圧P2の作用力とがバランスする位置を保つとともに、コンペンセータバルブC1は、コンペスプールの上記位置における開度を維持する。
【0015】
そして、アクチュエータA1の負荷圧すなわち最高負荷圧P2が変化すれば、それに応じてコンペンセータバルブC1の開度も変化するとともに、その変化に応じて上記圧力P3も変化する。つまり、コンペンセータバルブC1の開度が大きくなれば、その分、このコンペンセータバルブC1を通過する流体の圧力損失が小さくなる。また、コンペンセータバルブC1の開度が小さくなれば、逆に、上記圧力損失が大きくなる。
【0016】
また、アクチュエータA2側における圧力P4は、上記他方のコンペンセータバルブC2を通過する流体の圧力損失分だけ、当該アクチュエータA2の負荷圧よりも高い圧力を維持している。ただし、その圧力P4と上記最高負荷圧P2との相対差は上記アクチュエータA2の負荷圧に応じて異なることになる。
そして、他方のコンペンセータバルブC2は、一方の圧力室10における圧力P4の作用力と他方の圧力室12における最高負荷圧P2の作用力とがバランスする位置を保つとともに、コンペンセータバルブC2は、コンペスプールの上記位置における開度を維持する。
【0017】
アクチュエータA2の負荷圧の変化に応じて圧力P4が変化すれば、それに応じてコンペンセータバルブC2の開度も変化する。コンペンセータバルブC2の開度が大きくなれば、その分、圧力損失が小さくなる。また、コンペンセータバルブC2の開度が小さくなれば、逆に圧力損失が大きくなる。
【0018】
今、一方のアクチュエータA1の最高負荷圧が一定で、他方のアクチュエータA2の負荷圧が、低くなる方向に変化したとすれば、それにともなって圧力P4も低くなる。しかし、このときには、コンペンセータバルブC2の開度が小さくなるので、そこを通過する流体の圧力損失が大きくなる。このように圧力損失が大きくなれば、アクチュエータA2の負荷圧が低くなったとしても、圧力P4は一定に保たれる。
【0019】
したがって、アクチュエータA2の負荷圧の変化にかかわりなく、コンペンセータバルブC2の上流側の圧力P4が一定に保たれることになる。このようにアクチュエータA2の負荷圧の変化にかかわりなく圧力P4が一定に保たれるので、切換弁V2前後の差圧も一定に保たれる。切換弁V2前後の差圧が一定に保たれれば、アクチュエータA2の負荷圧の変化にかかわりなく、切換弁V2を通過する流量も一定に保たれる。言い換えると、切換弁V1,V2の開度で定められた分流比は、負荷圧の変化にかかわりなく一定に保たれることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2004−239378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
複数のアクチュエータの負荷圧変動にかかわりなく、各切換弁の開度に応じた分流比を一定に保つロードセンシング制御回路において、切換弁の切り換え量に応じて分流比があらかじめ設定されていたとしても、場合によっては、特定のアクチュエータに対する分流比だけを変更したいという要望がある。
【0022】
例えば、パワーショベルの場合であれば、ブームシリンダだけを通常のものよりも大きくして、大きな負荷に対応させる場合がある。この場合には、ブームシリンダの負荷圧が非常に高くなるが、この高くなった負荷圧を、可変容量型ポンプのレギュレータに導くと、当該可変容量型ポンプの吐出量が必要以上に少なくなってしまう。
【0023】
可変容量型ポンプの吐出量が必要以上に少なくなった状態を放置しておけば、ブームシリンダに対する供給流量も少なくなり、当該ブームシリンダの作動速度が遅くなってしまう。したがって、このような場合には、ブームシリンダの分流比を、他のアクチュエータの分流比よりも大きくすることが望まれる。
【0024】
また、アクチュエータは全て従来と同じであっても、作業の種類によっては、特定のアクチュエータに対する分流比を大きくしたいという要望もあった。
しかしながら、上記のようにした従来のロードセンシング制御回路では、切換弁の切り換え量が決まれば、それに応じた分流比は常に一定であり、上記のような分流比の変更という要望には応えられなかった。
【0025】
この発明の目的は、切換弁の切り換え量で決まる分流比を変更できるロードセンシング制御回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
第1の発明は、複数の切換弁の切り換え量に応じてポンプ吐出量を分流するロードセンシング制御回路に関し、少なくとも一つのコンペンセータバルブの上記一方の圧力室をタンクに接続するドレン通路を設けるとともに、このドレン通路に、上記一方の圧力室の圧力を制御する圧力制御手段を設けた点に特徴を有する。
【0027】
第2の発明は、上記圧力制御手段は分流比変更バルブからなるとともに、上記分流比変更バルブは、絞り位置と閉位置とに切り換え可能にした点に特徴を有する。
【0028】
第3の発明は、上記分流比変更バルブは、絞り位置における開度を可変にした点に特徴を有する。
【0029】
第4の発明は、上記圧力制御手段が、上記切換弁及びコンペンセータバルブ間と上記分流比変更バルブとを接続する通路過程に設けた絞り手段とからなり、上記分流比変更バルブの絞り位置における絞り部と絞り手段との少なくとも一方を可変絞りにした点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0030】
第1の発明のロードセンシング制御回路によれば、少なくとも一つのコンペンセータバルブにおける一方の圧力室をタンクに導くドレン通路に圧力制御手段を設けたので、この圧力制御手段によって上記一方の圧力室の圧力を制御できる。 したがって、例えば、分流比を大きくしたいアクチュエータに対して、相対的に分流比を小さくしたいアクチュエータに接続したコンペンセータバルブにおける上記一方の圧力室の圧力を低く保つようにすれば、このコンペンセータバルブの開度を小さく保つことができる。
【0031】
このように特定のコンペンセータバルブの開度を小さくできれば、それに接続したアクチュエータに対する供給流量を少なくできるので、相対的には目的とするアクチュエータへの供給流量を多くできる。
したがって、特殊なブームシリンダなどを組み込んだ建設機械等においても、その出荷段階において、当該ロードセンシング制御回路の圧力制御手段をチューニングするだけで対応できることになる。
また、作業状況に応じて特定のアクチュエータの分流比を変更する必要が発生した場合にも、その作業現場において圧力制御手段をチューニングするだけで対応することができる。
【0032】
第2の発明のロードセンシング制御回路によれば、上記制御手段を絞り位置と閉位置とからなる分流比変更バルブで構成したので、この分流比変更バルブを閉位置に保つことによって、あらかじめ決められた設計上の仕様通りのコンペンセータバルブとして使用することができる。
また、上記分流比変更バルブを絞り位置に保つことによって、当該コンペンセータバルブを接続した切換弁の分流比を、相対的に小さくすることができる。
【0033】
第3の発明のロードセンシング制御回路によれば、分流比変更バルブの絞り位置における絞り部の開度を可変にしたので、絞り部の可変制御が可能な範囲で、分流比を自由に設定できる。
【0034】
第4の発明のロードセンシング制御回路によれば、上記圧力制御手段を、上記分流比変更バルブと、絞り手段とで構成するとともに、分流比変更バルブの絞り位置における絞り部と絞り手段との少なくとも一方を可変絞りにしたので、分流比変更バルブと絞り手段とのいずれか一方をダンパーとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】この発明の実施形態を示す回路図である。
図2】従来のロードセンシング制御回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1に示した実施形態は、そのロードセンシング制御回路としての基本的な構成は従来と同様である。したがって、従来と同様の構成要素については同一の符号を付して説明するとともに、同一の構成要素については簡略化して説明する。
【0037】
可変容量型ポンプ1には切換弁V1,V2を接続している。この切換弁V1,V2には、図示しないスプールが摺動自在に組み込まれている。なお、切換弁V1,V2は、スプールのストロークに応じてその開度を可変にするものなので、図1においても、切換弁V1,V2を可変オリフィスの記号で示している。
また、この発明における切換弁V1,V2は、そのスプールのストロークに応じて開度を可変にするものであれば、どのようなタイプの切換弁であってもよい。
【0038】
上記のようにした切換弁V1,V2の下流には、コンペンセータバルブC1,C2を接続するとともに、このコンペンセータバルブC1,C2の下流にアクチュエータA1,A2を接続している。そして、これら両アクチュエータA1,A2のヘッド側室2,3のそれぞれは最高負荷圧を選択するシャトル弁からなる選択手段4に接続され、この選択手段4によって、上記ヘッド側室2,3のうちのどちらか高いほうの負荷圧P2が選択される。
【0039】
なお、上記選択手段4は必ずしもシャトル弁に限定されるものではなく、要するに最高負荷圧を選択できる機能さえ備えていれば、構造的に限定される必要はない。
また、この実施形態では、アクチュエータは2つしか示されていないが、アクチュエータが、システム的に当該ロードセンシング制御回路と一体になっていれば、アクチュエータの数は問わない。ただし、この場合に、各アクチュエータがコンペンセータバルブに対応付けられていることは必須である。
【0040】
上記選択手段4で選択された最高負荷圧P2は、上記可変容量型ポンプ1に設けたレギュレータ5に導かれ、その最高負荷圧P2に応じて、可変容量型ポンプ1の傾転角が制御され、当該可変容量型ポンプ1が上記最高負荷圧P2に対応した吐出圧P1と吐出量を保つようにしている。
なお、図中符号Tはタンク、6はレギュレータ5とタンクTとの間の圧力を保つためのオリフィスである。
【0041】
コンペンセータバルブC1,C2は、一方の圧力室9,10と他方の圧力室11,12とを設け、これら一方の圧力室9,10と他方の圧力室11,12との圧力作用で開度が制御される。
さらに詳しくは、コンペンセータバルブC1,C2には、図示しないスプール(以下「コンペスプール」という)を摺動自在に設けるとともに、このコンペスプールの一端を上記一方の圧力室9,10に臨ませ、他端を上記他方の圧力室11,12に臨ませている。そして、このコンペスプールは、一方の圧力室9,10と他方の圧力室11,12との圧力作用で、移動位置が制御されるとともに、その移動位置に応じて、切換弁V1,V2からアクチュエータA1,A2にいたる過程の開度が制御される。
【0042】
なお、上記コンペンセータバルブC1,C2は、そのコンペスプールの一端を一方の圧力室9,10に臨ませ、他端を他方の圧力室11,12に臨ませるとともに、これら両圧力室9,10と11,12とにおける圧力の作用力がバランスする位置において、当該コンペンセータバルブC1,C2の開度が保たれるものであれば、構造的に限定される必要はない。
【0043】
また、上記一方の圧力室9,10には、当該コンペンセータバルブC1,C2と切換弁V1,V2との間の圧力P3,P4が導かれ、他方の圧力室11,12には、選択手段4で選択された最高負荷圧P2が導かれる。ただし、上記圧力P3,P4は、切換弁V1,V2の開度に応じた圧力損失分だけ、可変容量型ポンプ1の吐出圧P1よりも低くなるのは当然である。
【0044】
さらに、上記圧力P3,P4は、アクチュエータA1,A2の負荷圧に比例して変化する。例えば、アクチュエータA1,A2の負荷圧が高くなれば、それにともなって圧力P3,P4も高くなるし、負荷圧が低くなれば圧力P3,P4も低くなる。
したがって、コンペンセータバルブC1,C2の一方の圧力室9,10には、アクチュエータA1,A2の負荷圧に応じて変化する圧力P3,P4が導かれることになる。
【0045】
そして、コンペンセータバルブC1,C2は、上記最高負荷圧P2と上記圧力P3,P4とがバランスする位置を保持するとともに、そのバランス位置において当該コンペンセータバルブC1,C2の開度を維持する。
例えば、他方の圧力室11,12に導かれる最高負荷圧P2に対して、反対側の一方の圧力室9,10に導かれる圧力P3,P4の圧力が低ければ低いほどコンペンセータバルブC1,C2の開度が小さくなり、最高負荷圧P2と圧力P3,P4との相対差が小さくなればなるほど、コンペンセータバルブC1,C2の開度は大きくなる。
【0046】
一方、両切換弁V1,V2が中立位置から切り換えられると、当該切換弁V1,V2は、その切り換え量に応じた開度を維持するが、これら両切換弁V1,V2の開度の比が、各アクチュエータA1,A2に対する可変容量型ポンプ1の吐出量の分流比になる。
【0047】
しかし、切換弁V1,V2の開度で定めた分流比が一定だとしても、アクチュエータA1,A2の負荷圧が変化してしまえば、切換弁V1,V2の開度によって定めた上記分流比が保たれなくなることは従来と同様である。また、アクチュエータA1,A2の負荷圧が変化しても、コンペンセータバルブC1,C2が切換弁V1,V2の開度で定めた分流比を一定に保つ機能を果たす点も従来と同様である。
【0048】
したがって、以下の説明において、一方のアクチュエータA1が最高負荷圧P2を維持し、他方のアクチュエータA2の負荷圧が上記最高負荷圧P2よりも低い場合であって、一度設定された切換弁V1,V2の開度は変化しないことを前提にする。
【0049】
上記の場合に、可変容量型ポンプ1の吐出圧P1が最も高いのは当然である。そして、圧力P3は、コンペンセータバルブC1を流れる流体の圧力損失分だけ、アクチュエータA1の負荷圧すなわち最高負荷圧P2よりも高い圧力を維持する。したがって、各圧力は、P1>P3>P2の関係を保つ。
【0050】
上記の関係を維持している中で、一方のコンペンセータバルブC1のコンペスプールは、一方の圧力室9における圧力P3の作用力と他方の圧力室11における最高負荷圧P2の作用力とがバランスする位置を保つとともに、コンペンセータバルブC1は、コンペスプールの上記位置における開度を維持する。
【0051】
そして、アクチュエータA1の負荷圧すなわち最高負荷圧P2が変化すれば、それに応じてコンペンセータバルブC1の開度も変化するとともに、その変化に応じて上記圧力P3も変化する。つまり、コンペンセータバルブC1の開度が大きくなれば、その分、このコンペンセータバルブC1を通過する流体の圧力損失が小さくなる。また、コンペンセータバルブC1の開度が小さくなれば、逆に、上記圧力損失が大きくなる。
【0052】
また、アクチュエータA2側における圧力P4は、上記他方のコンペンセータバルブC2を通過する流体の圧力損失分だけ、当該アクチュエータA2の負荷圧よりも高い圧力を維持している。ただし、その圧力P4と上記最高負荷圧P2との相対差は上記アクチュエータA2の負荷圧に応じて異なることになる。
そして、他方のコンペンセータバルブC2は、一方の圧力室10における圧力P4の作用力と他方の圧力室12における最高負荷圧P2の作用力とがバランスする位置を保つとともに、コンペンセータバルブC2は、コンペスプールの上記位置における開度を維持する。
【0053】
アクチュエータA2の負荷圧の変化に応じて圧力P4が変化すれば、それに応じてコンペンセータバルブC2の開度も変化する。コンペンセータバルブC2の開度が大きくなれば、その分、圧力損失が小さくなる。また、コンペンセータバルブC2の開度が小さくなれば、逆に圧力損失が大きくなる。
【0054】
今、一方のアクチュエータA1の最高負荷圧が一定で、他方のアクチュエータA2の負荷圧が、低くなる方向に変化したとすれば、それにともなって圧力P4も低くなる。しかし、このときには、コンペンセータバルブC2の開度が小さくなるので、そこを通過する流体の圧力損失が大きくなる。このように圧力損失が大きくなれば、アクチュエータA2の負荷圧が低くなったとしても、圧力P4は一定に保たれる。
【0055】
したがって、アクチュエータA2の負荷圧の変化にかかわりなく、コンペンセータバルブC2の上流側の圧力P4が一定に保たれることになる。このようにアクチュエータA2の負荷圧の変化にかかわりなく圧力P4が一定に保たれるので、切換弁V2前後の差圧も一定に保たれる。切換弁V2前後の差圧が一定に保たれれば、アクチュエータA2の負荷圧の変化にかかわりなく、切換弁V2を通過する流量も一定に保たれる。言い換えると、切換弁V1,V2の開度で定められた分流比は、負荷圧の変化にかかわりなく一定に保たれることになる。
【0056】
そして、この実施形態の最大の特徴は、アクチュエータA2側に設けたコンペンセータバルブC2の一方の圧力室10を、タンクTに接続するドレン通路13を設け、このドレン通路13に、上記一方の圧力室10の圧力を制御する圧力制御手段である分流比変更バルブCVを設けた点である。
この分流比変更バルブCVは、分流比を小さくしたいアクチュエータ側に設けるものである。この実施形態では、一方のアクチュエータA1側の供給流量を相対的に多く確保するために、他方のアクチュエータA2側の分流比を小さくすることを想定し、他方のアクチュエータA2側のコンペンセータバルブC2に上記分流比変更バルブCVを接続している。
【0057】
上記分流比変更バルブCVは、そのスプールの一端にスプリング14のばね力を作用させるとともに、このスプリング14とは反対側にパイロット室15を設けている。
このようにした分流比変更バルブCVは、絞り位置と閉位置とに切り換え可能であり、通常は、スプリング14のばね力の作用で図示のノーマル位置である閉位置を保持する。そして、パイロット室15の圧力作用が上記スプリング14のばね力に打ち勝つと、図面左側位置である絞り位置に切り換わる。
【0058】
分流比変更バルブCVが上記閉位置にあるときには、コンペンセータバルブC2の一方の圧力室10とタンクTとの連通が遮断されるので、コンペンセータバルブC2は従来と同様に動作する。
しかし、分流比変更バルブCVが上記絞り位置に切り換わると、コンペンセータバルブC2の一方の圧力室10が、絞りを介してタンクTに連通する。したがって、このときの一方の圧力室10の圧力は、分流比変更バルブCVが閉位置にあるときよりも低く設定される。
【0059】
そのために、一方の圧力室10の圧力と最高負荷圧P2との相対差が大きくなり、コンペンセータバルブC2は最小開度を維持することになる。
コンペンセータバルブC2が最小開度に維持されれば、アクチュエータA2側に供給される流量が少なくなるので、その少なくなった分だけ、一方のアクチュエータA1への供給流量が相対的に多く確保されることになる。
【0060】
上記のようにした分流比変更バルブCVは、パイロット室15に導入されるパイロット圧を制御することによって、上記絞り位置における絞り部の開度を可変にすることができる。絞り部の開度を可変にするために、分流比変更バルブCVの切り換えに応じてその開度を段階的に変化させてもよいし、無段階的に変化させてもよい。
いずれにしても、上記絞り部の開度を自由に調整できれば、相対的に多くの供給流量を確保したいアクチュエータ側の状況に応じてコンペンセータバルブC2の一方の圧力室10の圧力を自由に設定できる。
【0061】
なお、上記分流比変更バルブCVは、それを手動で切り換えるようにしてもよいし、例えば、多くの流量を確保したい特定のアクチュエータを動作させるときのパイロット圧を、上記パイロット室15に導くようにしてもよい。
また、分流比変更バルブCVは、複数のアクチュエータに対応させて設けてもよいし、すべてのアクチュエータに対応させて設けてもよい。ただし、少なくとも分流比を小さくしたいアクチュエータ側に設ければよい。
【0062】
さらに、上記切換弁V2及びコンペンセータバルブC2の間と、上記分流比変更バルブCVとを接続する通路過程には、この発明の絞り手段を構成するオリフィス16を設けているが、このオリフィス16は開度を固定的に定めたものである。
このオリフィス16は、コンペンセータバルブC2に対してダンパーオリフィスとして機能するものである。
【0063】
ただし、上記オリフィス16を可変オリフィスにする一方、分流比変更バルブCVの絞り部を固定絞りにしてもよいし、それら両者を可変絞りにしてもよい。
そして、この発明の目的を達成するためには、上記絞り部あるいはオリフィスの少なくともいずれか一方は、可変にしておかなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
パワーショベル等の建設機械に最適である。
【符号の説明】
【0065】
1 可変容量型ポンプ
V1,V2 切換弁
A1,A2 アクチュエータ
C1,C2 コンペンセータバルブ
9〜12 圧力室
13 ドレン通路
CV 分流比変更バルブ
16 オリフィス
図1
図2