(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6292993
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】抽出装置、抽出方法及び抽出プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 17/30 20060101AFI20180305BHJP
【FI】
G06F17/30 170C
G06F17/30 419B
G06F17/30 340B
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-125448(P2014-125448)
(22)【出願日】2014年6月18日
(65)【公開番号】特開2016-4480(P2016-4480A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2017年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】清本 晋作
(72)【発明者】
【氏名】三宅 優
【審査官】
吉田 誠
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−118649(JP,A)
【文献】
伊藤 昌毅,ユーザの行動を反映した位置履歴表示システムの構築,マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO)シンポジウム論文集 ,日本,社団法人情報処理学会,2003年 6月 4日,第2003巻,477−480ページ
【文献】
宮村(中村) 浩子,重要ノード発見のための大規模ネットワークの可視化,電子情報通信学会技術研究報告,日本,社団法人電子情報通信学会,2009年 9月 3日,Vol.109 No.188,85−90ページ
【文献】
斎藤 隆,センサネットワークの遠隔保守における重要度に基く故障指摘手法,電子情報通信学会2008年総合大会講演論文集 通信2,2008年 3月 5日,573ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地点の移動順序を示す軌跡データを収集する収集部と、
複数の前記軌跡データを統合することにより、地点をノードとして、同一地点を含む軌跡データの数を当該ノードの得点として付与し、地点間の移動をエッジとしたグラフを生成する生成部と、
前記ノードの得点に基づいて、第1の重要地点を抽出すると共に、前記第1の重要地点から所定のホップ数以内で連結するノードを第2の重要地点として抽出する抽出部と、を備える抽出装置。
【請求項2】
地点の移動順序を示す軌跡データを収集する収集部と、
複数の前記軌跡データを統合することにより、地点をノードとして、同一地点を含む軌跡データの数を当該ノードの得点として付与し、地点間の移動をエッジとし、同一地点間の移動を含む軌跡データの数を当該エッジの得点として付与したグラフを生成する生成部と、
前記ノードの得点に基づいて、第1の重要地点を抽出すると共に、前記エッジの得点に基づいて、第2の重要地点を抽出する抽出部と、を備える抽出装置。
【請求項3】
前記抽出部は、前記第1の重要地点から所定のホップ数以内で連結するノードであり、かつ、前記第1の重要地点から当該ノードに至る全てのエッジの得点が第2の閾値以上であるノードを、前記第2の重要地点として抽出する請求項2に記載の抽出装置。
【請求項4】
前記抽出部は、前記ノードの得点が第1の閾値以上の場合、当該ノードを前記第1の重要地点として抽出する請求項1から請求項3のいずれかに記載の抽出装置。
【請求項5】
前記抽出部は、前記ノードの得点が上位所定数のノードを、前記第1の重要地点として抽出する請求項1から請求項4のいずれかに記載の抽出装置。
【請求項6】
コンピュータの制御部が、
記憶部から地点の移動順序を示す軌跡データを収集する収集ステップと、
複数の前記軌跡データを統合することにより、地点をノードとして、同一地点を含む軌跡データの数を当該ノードの得点として付与し、地点間の移動をエッジとしたグラフを生成する生成ステップと、
前記ノードの得点に基づいて、第1の重要地点を抽出すると共に、前記第1の重要地点から所定のホップ数以内で連結するノードを第2の重要地点として抽出する抽出ステップと、を実行する抽出方法。
【請求項7】
コンピュータの制御部が、
記憶部から地点の移動順序を示す軌跡データを収集する収集ステップと、
複数の前記軌跡データを統合することにより、地点をノードとして、同一地点を含む軌跡データの数を当該ノードの得点として付与し、地点間の移動をエッジとし、同一地点間の移動を含む軌跡データの数を当該エッジの得点として付与したグラフを生成する生成ステップと、
前記ノードの得点に基づいて、第1の重要地点を抽出すると共に、前記エッジの得点に基づいて、第2の重要地点を抽出する抽出ステップと、を実行する抽出方法。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の抽出方法の各ステップを前記コンピュータに実行させるための抽出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌跡データに含まれる重要地点を抽出する装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザが徒歩や乗り物で移動した軌跡を、位置情報が連結された軌跡データとして表現し、検索等に利用することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−118290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ユーザから提供される軌跡データは、個人の行動履歴を表しているため、プライバシの観点から、例えば自宅、又は通勤・通学経路等のユーザにとっての重要地点を削除することが望まれている。
しかしながら、従来技術では、ユーザからの情報提供、又は契約情報等の関連する情報により、重要度の高い地点を抽出する他なかった。
【0005】
本発明は、軌跡データに含まれる重要地点を容易に抽出できる抽出装置、抽出方法及び抽出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る抽出装置は、地点の移動順序を示す軌跡データを収集する収集部と、複数の前記軌跡データを統合することにより、地点をノードとして、同一地点を含む軌跡データの数を当該ノードの得点として付与し、地点間の移動をエッジとしたグラフを生成する生成部と、前記ノードの得点に基づいて、第1の重要地点を抽出する抽出部と、を備える。
【0007】
前記抽出部は、前記ノードの得点が第1の閾値以上の場合、当該ノードを前記第1の重要地点として抽出してもよい。
【0008】
前記抽出部は、前記ノードの得点が上位所定数のノードを、前記第1の重要地点として抽出してもよい。
【0009】
前記抽出部は、前記第1の重要地点から所定のホップ数以内で連結するノードを第2の重要地点として抽出してもよい。
【0010】
前記生成部は、同一地点間の移動を含む軌跡データの数を前記エッジの得点として付与し、前記抽出部は、前記ノードの得点及び前記エッジの得点に基づいて、第2の重要地点を抽出してもよい。
【0011】
前記抽出部は、前記第1の重要地点から所定のホップ数以内で連結するノードであり、かつ、前記第1の重要地点から当該ノードに至る全てのエッジの得点が第2の閾値以上であるノードを、前記第2の重要地点として抽出してもよい。
【0012】
本発明に係る抽出方法は、コンピュータの制御部が、記憶部から地点の移動順序を示す軌跡データを収集する収集ステップと、複数の前記軌跡データを統合することにより、地点をノードとして、同一地点を含む軌跡データの数を当該ノードの得点として付与し、地点間の移動をエッジとしたグラフを生成する生成ステップと、前記ノードの得点に基づいて、第1の重要地点を抽出する抽出ステップと、を実行する。
【0013】
本発明に係る抽出プログラムは、前記抽出方法の各ステップをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、軌跡データに含まれる重要地点が容易に抽出される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係る抽出装置の機能構成を示す図である。
【
図2】実施形態に係る軌跡データの一例を示す図である。
【
図3】実施形態に係る有向グラフの一例を示す図である。
【
図4】実施形態に係る重要地点の抽出の第1のパターンを示す図である。
【
図5】実施形態に係る重要地点の抽出の第2のパターンを示す図である。
【
図6】実施形態に係る重要地点の抽出の第3のパターンを示す図である。
【
図7】実施形態に係る重要地点の抽出の第3のパターンの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。
図1は、本実施形態に係る抽出装置1の機能構成を示す図である。
抽出装置1は、サーバ装置又はパーソナルコンピュータ等の情報処理装置(コンピュータ)であり、記憶部10及び制御部20の他、各種データの入出力デバイス等を備える。
【0017】
記憶部10は、ハードウェア群を抽出装置1として機能させるための各種プログラム、及び各種データ等の記憶領域であり、ROM、RAM、フラッシュメモリ又はハードディスク(HDD)等であってよい。具体的には、記憶部10は、本実施形態の各機能を制御部20に実行させるプログラムを記憶する。
【0018】
また、記憶部10は、ユーザから提供される軌跡データを蓄積する。軌跡データは、例えば、GPSから得られる緯度経度情報、住所の一部、あるいは、駅、停留所又はサービスエリア等のランドマーク情報等からなる地点が連結された、地点間の移動順序を示すデータである。この軌跡データがユーザ毎に複数蓄積される。
【0019】
制御部20は、抽出装置1の全体を制御する部分であり、記憶部10に記憶された各種プログラムを適宜読み出して実行することにより、本実施形態における各種機能を実現している。制御部20は、CPUであってよい。
また、制御部20は、収集部21と、生成部22と、抽出部23とを備える。
【0020】
収集部21は、記憶部10から、あるいは入力デバイスを介して外部から、あるユーザについての所定期間の軌跡データを収集する。
【0021】
図2は、本実施形態に係る軌跡データの一例を示す図である。
軌跡データ1は、ユーザが地点A、B、C、Dの順に移動したことを示している。同様に、軌跡データ2は、地点A、C、D、Eの順に、軌跡データ3は、地点G、C、B、Fの順に移動したことを示している。
【0022】
生成部22は、収集された複数の軌跡データを統合することにより、地点をノードとし、地点間の移動をエッジ(リンク)とした有向グラフを生成する。このとき、生成部22は、同一地点を含む軌跡データの数をノードの得点として付与し、同一地点間の移動を含む軌跡データの数をエッジの得点として付与する。
【0023】
図3は、本実施形態に係る有向グラフの一例を示す図である。
この例は、
図2の軌跡データ1〜3を重ね合わせて生成されたグラフである。
【0024】
地点Cは、軌跡データ1〜3のいずれにも含まれているため、ノードの得点は3となる。この地点Cへは、地点A、B及びGから移動した軌跡データが1つずつあるので、それぞれのエッジの得点は1となる。また、地点Cからは、地点Bへ移動した軌跡データが1つと、地点Dへ移動した軌跡データが2つあるので、地点Bへ向かうエッジの得点は1となり、地点Dへ向かうエッジの得点は2となる。
ここで、地点Bと地点Cとの間には、互いに逆向きのエッジがあるが、以下では、エッジの得点は合計で2と算出して以下で利用する。
【0025】
抽出部23は、付与されたノード及びエッジの得点に基づいて、グラフから重要地点を抽出する。抽出方法は、例えば以下の(1)〜(3)が採用される。
【0026】
(1)抽出部23は、ノードの得点が閾値(第1の閾値)以上のノード、あるいは得点が高い上位所定数のノードを重要地点(第1の重要地点)として抽出する。
【0027】
図4は、本実施形態に係る重要地点の抽出の第1のパターンを示す図である。
第1の閾値が3の場合、又は最も得点が高いノードを抽出する場合、ノードA〜Gのうち、ノードCが第1の重要地点として抽出される。
【0028】
(2)抽出部23は、(1)で抽出された第1の重要地点から所定のホップ数以内で連結するノードを重要地点(第2の重要地点)として抽出する。
【0029】
図5は、本実施形態に係る重要地点の抽出の第2のパターンを示す図である。
第1の重要地点としてノードCが抽出されたとき、所定のホップ数が1であれば、ノードCと直接リンクしているノードA、B、D、Gが第2の重要地点として抽出される。
【0030】
(3)抽出部23は、(1)で抽出された第1の重要地点から所定のホップ数以内で連結するノードであり、かつ、このノードに至る全てのエッジの得点が閾値(第2の閾値)以上であるノードを重要地点(第2の重要地点)として抽出する。
【0031】
図6は、本実施形態に係る重要地点の抽出の第3のパターンを示す図である。
第1の重要地点としてノードCが抽出されたとき、第2の閾値が2であれば、ノードCと得点2以上のエッジでリンクしているノードB及びDが第2の重要地点として抽出される。
なお、所定のホップ数が2以上であっても、ノードBからFに至るエッジ、及びノードDからEに至るエッジの得点は共に1のため、ノードE及びFは重要地点としては抽出されない。
【0032】
また、所定のホップ数が2のとき、
図7に示すように、仮にノードCからDに至るエッジの得点が1、ノードDからEに至るエッジの得点が2の場合、第1の重要地点であるノードCからノードEに至るまでに得点2未満のエッジ(CからD)が含まれるので、ノードEは重要地点としては抽出されない。
【0033】
本実施形態によれば、抽出装置1は、軌跡データの重ね合わせにより生成するグラフにおけるノードの得点に基づいて、軌跡データに含まれる重要地点を容易に抽出できる。
この結果、抽出装置1は、抽出されたユーザにとっての重要地点を軌跡データから削除することにより、軌跡データの匿名化を実現できるので、プライバシを保護した上で軌跡データを提供できる。
【0034】
抽出装置1は、まず、得点が第1の閾値以上、又は得点が上位所定数のノードを第1の重要地点として、軌跡データから容易に抽出できる。
また、抽出装置1は、第1の重要地点から所定のホップ数以内で連結するノードを第2の重要地点として抽出する。これにより、抽出装置1は、最も重要な第1の重要地点の近傍にある重要地点を適切に、かつ容易に抽出できる。
【0035】
さらに、抽出装置1は、エッジの得点に基づいて、第2の閾値以上の得点が付与されたエッジで連結されたノードを、第2の重要地点として抽出する。これにより、抽出装置1は、最も重要な第1の重要地点の近傍にある重要地点を適切に、かつ容易に抽出できる。
【0036】
以上のように抽出される重要地点は、その重要度合いがプライバシ漏洩のリスク度合いに関連している。したがって、抽出装置1は、ノード又はエッジの閾値に応じて、リスク度合いを定量的に設定できる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0038】
本実施形態では、グラフのノードは地点であるものとして説明したが、これには限られない。抽出装置1は、地点間の移動ベクトルをノードとしてグラフを生成してもよい。この場合、重要度が高い移動ベクトルが抽出されるので、抽出装置1は、軌跡データから重要度が高い経路を抽出できる。
【0039】
抽出装置1による抽出方法は、ソフトウェアにより実現される。ソフトウェアによって実現される場合には、このソフトウェアを構成するプログラムが、情報処理装置(抽出装置1)にインストールされる。また、これらのプログラムは、CD−ROMのようなリムーバブルメディアに記録されてユーザに配布されてもよいし、ネットワークを介してユーザのコンピュータにダウンロードされることにより配布されてもよい。さらに、これらのプログラムは、ダウンロードされることなくネットワークを介したWebサービスとしてユーザのコンピュータ(抽出装置1)に提供されてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 抽出装置
10 記憶部
20 制御部
21 収集部
22 生成部
23 抽出部