(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の方法はレジストを形成するために、組成物に対するマスクの配置、露光、及び現像の各工程が必須であり、作業が複雑であり高コストとなっている。更に、特許文献1の方法により硬化したレジストをガラス基板から除去する場合には、剥離液として、水酸化ナトリウム水溶液に、例えば60℃で15分程度の浸漬が必要とされ、作業性に改善の余地がある。
【0009】
また、近年では、ホウケイ酸ガラスや強化ガラスなどの特殊なガラスのエッチング用途が増えてきた。これらのガラスはエッチングレートが遅いため、長時間にわたりエッチング液に浸漬したり、高濃度のフッ化水素酸によるエッチング液を使用したりするため、エッチングレジストの膜厚はさらに厚くなることが要求され、解像性の維持も困難になった上に、剥離もさらに高温で長時間になった。そして、剥離工程によりエッチング後のガラスが影響を受ける場合も想定される。エッチング後のガラスへの影響を防ぐためには、剥離液として塩素系溶剤などの環境に負荷が大きい溶剤が必要であり、この面でも改善の余地がある。
【0010】
本発明は、上述の従来技術の問題を解消するためになされたものであり、その目的は、露光、及び現像の各工程が不要であり、かつレジストをガラス基板から容易に除去することが可能であり、更に強酸または強塩基等を含むエッチング液に対するレジストの耐性が向上したエッチングレジスト組成物を提供することにある。
【0011】
更に、本発明の他の目的は、露光、及び現像の各工程が不要であり、かつレジストをガラス基板から容易に除去することが可能であり、更に強酸または強塩基等を含むエッチング液に対してもレジストが優れた耐性を有する、基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は鋭意研究の結果、本発明の上記目的が、
アスファルトと、シリカ粉末と、有機溶剤とを含有することを特徴とするエッチングレジスト組成物により達成されることを見出した。
【0013】
本発明のエッチングレジスト組成物は、炭化水素系ワックスを含有することが好ましい。
【0014】
本発明のエッチングレジスト組成物は、ガラスのエッチングに用いられることが好ましい。
【0015】
更に、本発明の目的は、エッチングレジスト組成物を、エッチング対象の基板上にパターン状に施与し、
前記基板上に施与されたパターン状のエッチングレジスト組成物を加熱乾燥してレジストとし、次いで
前記基板をエッチング液によりエッチング処理することを特徴とする、基板の製造方法により達成される。
【0016】
本発明の製造方法では、前記基板上に施与されたパターン状のエッチングレジスト組成物の膜厚が3〜70μmの範囲にあることが好ましい。
【0017】
さらに、エッチング液が、フッ化水素酸を含むことが好ましい。
【0018】
また、基板がガラスであることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のエッチングレジスト組成物は、アスファルトにシリカ粉末を含有させることにより、フッ化水素酸等の強酸を含むエッチング液に対して優れた耐性を示すものである。更に、本発明のエッチングレジスト組成物は、スクリーン印刷等の印刷適性を有するために、薄い膜厚でエッチング対象の基板上に施与可能であり、かつその薄い膜厚にもかかわらず基板を良好に保護する。
【0020】
また、本発明の製造方法によると、エッチングレジスト組成物により所望のパターン状の印刷が行われ、これを熱乾燥させることにより、マスキング、露光および現像工程といった複雑な処理を行うことなく直接的にレジストが形成され、経済性及び作業性が飛躍的に向上する。また、本発明の製造方法ではレジストの基板に対する密着性が高いために、レジストの剥離が生じにくく、基板上に、レジストのパターンに忠実な、高い精度のエッチング加工が行われる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、詳細に説明する。
【0022】
本発明のエッチングレジスト組成物(以下、レジスト組成物ともいう)は、アスファルトと、シリカ粉末と、有機溶剤と含有し、熱により乾燥して(熱乾燥型)レジストを構成する。
【0023】
すなわち、本発明のエッチングレジスト組成物は、所定の基板(処理対象)を強酸、弱酸、強アルカリ、弱アルカリ、または腐食性物質等を含むエッチング液から保護する目的で、エッチングに先立って、所定のパターン状に基板上に施与され、所定時間加熱される。これにより、エッチングレジスト組成物は熱乾燥して、エッチング処理の際の基板の保護膜(レジスト)となる。
【0024】
従来よりフッ化水素酸には、アスファルトが耐性を有することが知られているが、本発明では、アスファルトに対し、シリカ粉末を含有させることにより、フッ化水素酸を含むエッチング液に対して優れた耐性を有するエッチングレジスト組成物が得られた。
【0025】
一般に、ガラスはフッ化水素酸により腐食されることが公知であることから、ガラスの成分であるシリカがフッ化水素酸に対する組成物の耐性を低下させるという懸念が生じがちである。このような予想に反し、本発明ではシリカ粉末をエッチングレジスト組成物の必須成分として適用することにより、意外にも、フッ化水素酸を主成分とするエッチングレジストに対する優れた耐性が得られることとされた。
【0026】
この他、本発明のエッチングレジスト組成物は、スクリーン印刷等の印刷適性を有し、薄い膜厚でエッチング対象の基板上に施与され、更に、かつその薄い膜厚にもかかわらず基板の非エッチング対象部分をエッチング液から良好に保護する。
【0027】
また、本発明のエッチングレジスト組成物は、更に炭化水素系ワックスを含有することが好ましい。炭化水素系ワックスを含有させることにより、エッチングレジストの剥離液の寿命が更に向上する。
【0028】
さらに、エッチングレジスト組成物は、加熱乾燥後にエッチング処理に付された後に、溶剤等の剥離液を用いた処理により、基板から剥離する必要がある。本発明のレジスト組成物が炭化水素性ワックスを含有することにより、剥離性が向上する。具体的には、所定の剥離液により多量のレジストが剥離処理されても、剥離液の劣化が最低限に抑制されるため、剥離液の寿命を格段に向上させ、剥離液の繰り返し使用を可能とする。
【0029】
以下、本発明のエッチングレジスト組成物の成分を説明する。
【0030】
[(A)アスファルト]
本発明に用いられるアスファルトとしては、スレートアスファルトまたはブローンアスファルト等の石油アスファルト、およびレイクアスファルト、ロックアスファルト、オイルサンドアスファルト等の天然アスファルト、すなわち公知のアスファルトのいずれも使用可能である。
【0031】
上記のうち、石油アスファルトを改質したブローンアスファルトおよびスレートアスファルトが好ましく、ブローンアスファルトが特に好ましく用いられる。
【0032】
本発明で使用するアスファルトは、針入度(JIS K2207(1996)に準ずる)が20以下、さらに10以下であるものが好ましく、軟化点(JIS K2207(1996)に準ずる)が55℃以上、さらには95℃以上、特に110℃以上のものが好ましく使用される。
【0033】
アスファルト(A)の針入度が20以下であることにより、これを含むレジスト組成物から得られるレジストの塗膜が柔らかくなりすぎることはなく、所定の硬度を有するレジストとして形成され、レジストに傷等の欠陥が生ずることや、レジストの傷を通して不必要な箇所がエッチングされるような不良が回避される。
【0034】
また、軟化点が55℃以上とすることにより、エッチング液によるレジストの軟化、損傷が回避され、高温でのエッチングに耐性を有するレジストの形成が行われる。
【0035】
ブローンアスファルトは、針入度および軟化点のバランスに優れ、本発明のアスファルト(A)として特に好ましく使用される。
【0036】
本発明では、アスファルトを単独又は複数種類の組み合わせとして使用することができ、2種類以上のアスファルトの組み合わせ使用により、針入度および軟化点の調整のとれた混合物として、本発明のアスファルト(A)とすることもできる。
【0037】
本発明の組成物の必須成分であるアスファルトは固体であるため、有機溶剤に溶解させて用いることが好ましい。これにより、レジスト組成物の製造、被加工基材に対する施与、及びレジスト除去(剥離)が、それぞれ円滑に行うことが可能となる。
【0038】
本発明のアスファルトの溶解に用いられる有機溶剤の例は、後述の有機溶媒(C)の例と同様であり、2種類以上の混合溶媒とすることもできる。
【0039】
アスファルトの溶解用の溶媒と、有機溶媒(C)とを同一にしても、またはレジスト組成物に悪影響を与えない限り、異なる溶媒とすることもできる。
【0040】
[(B)シリカ粉末]
本発明で使用されるシリカ粉末(B)としては、天然シリカおよび合成シリカの双方を使用可能であるが、一般には、品質の安定した合成シリカが用いられる。
【0041】
本発明で使用するシリカ粉末(B)としては、合成または天然の結晶性シリカの粉砕品、溶融シリカの粉砕品、または溶融シリカの球形加工品、または合成球形シリカ、合成微粉シリカなどが使用できる。
【0042】
合成シリカ、すなわち含水非晶質二酸化ケイ素(SiO2・nH2O)は、反応槽で珪酸ナトリウム溶液(水ガラス)と硫酸とを反応させることにより製造され、反応条件に応じて形状や粒径を管理し、合成球形シリカ、または合成微粉シリカとすることができる。
【0043】
本発明で好ましく使用されるシリカ粉末(B)としては、例えばAerosil 90、Aerosil 130、Aerosil 150、Aerosil 200、Aerosil 225、Aerosil 300、Aerosil 380、Aerosil OX50、Aerosil TT600、Aerosil R104、Aerosil R106、Aerosil R202、Aerosil R711、Aerosil R805、Aerosil R812、Aerosil R816、Aerosil R972、Aerosil R974、Aerosil R7200、Aerosil R8200、Aerosil R9200(日本アエロジル株式会社製)
、ACEMATT 82、ACEMATT HK125、ACEMATT HK400、ACEMATT HK460、ACEMATT TS100、ACEMATT 82(EVONIK DEGUSSA社製) E-200A、E-220A、K-500、E-1009、E-1011、E-1030、E-150J、E-170、E-200、E-220、E-743、E-75、HD、HD-2、L-250、L-300、G-300、SS-10、SS-50、SS-30P、SS-30V、SS-30X、SS-50、SS-70(東ソー・シリカ株式会社製)等の合成微粉シリカ、FUSELEX RD-8、FUSELEX RD-8AL、FUSELEX RD-120、FUSELEX MCF-200C、FUSELEX GP-200TC、FUSELEX TZ-20、FUSELEX ZA-30C、FUSELEX E-1、FUSELEX E-2、FUSELEX AS-1、FUSELEX X(株式会社龍森製)、FS-3DC、FS-5DC(電気化学工業株式会社製)等の溶融粉砕シリカ、FB-5D、FB-12D、FB-20D、FB-105、FB-940、FB-9454、FB-950、FB-105FC、FB-870FC、FB-875FC、FB-9454FC、FB-950FC、FB-300FC、FB-105FD、FB-970FD、FB-975FD、FB-950FD、FB-300FD、FB-400FD、FB-7SDC、FB-5SDC、FB-3SDC、FB-74X、FB-25SX、FB-35X、FB-302X、FB-105X、FB-940X、FB-950X、FB-105XFC、FB-950XFC、FB-100XFD、FB-950XFD、FB-7SDX、FB-5SDX、FB-3SDX(電気化学工業株式会社製)、MSR-2212、MSR-25、MSR-3512、MSR-2212M4、MSV-2212N、MSV-2212NH、MSV-2507NH、MSV-3512N、MSV-3512NH、MSS-7、MSS-6、EXR-4、EXR-3、AC-5VLD、B-21、A-21、MP-15EF、AC-5V、MP-8FS(株式会社龍森製)等の溶融球状シリカ、SO-E1、SO-E2、SO-E3、SO-E5、SO-E6、SO-C1、SO-C2、SO-C3、SO-C5、SO-C6(株式会社アドマテックス)等の合成球状シリカ、CRYSTALITE 3K、CRYSTALITE 3K-S、CRYSTALITE C、CRYSTALITE TNC-1、CRYSTALITE NX-7、CRYSTALITE SMT-10、CRYSTALITE CMC-12S、CRYSTALITE XJ-7、CRYSTALITE C-BASE-1、CRYSTALITE A-1、CRYSTALITE A-A、CRYSTALITE VX-S2((株式会社龍森製)等の結晶性破砕シリカが挙げられる。
【0044】
本発明では、シリカ粉末(B)として、分散性の観点で合成微粉シリカが好ましく使用されるが、合成微粉シリカと、溶融粉砕シリカとの混合物を用いてもよい。
【0045】
シリカの添加量は、アスファルト100質量部(固形分)に対して、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは2〜10質量部である。この範囲がエッチング液に対する耐性向上に効果がある。
【0046】
[(C)有機溶剤]
本発明で使用する有機溶剤(C)としては、アスファルトやその他の添加物を溶解させることができるものであればよい。例えば、メチルエチルケトンやシクロヘキサノン等のケトン類、トルエンやキシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブやメチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチルや酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類、エタノールやプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、オクタンやデカン等の脂肪族炭化水素類、石油エーテルや石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤類、リモネン等のテルペン類などが挙げられる。
【0047】
特にソルベントナフサ等の石油系溶剤類が好適に使用でき、これを用いることにより、アスファルトに対しての良好な溶解性が得られる。
【0048】
この他、本発明では、アスファルトを良く溶解する芳香族炭化水素、また、環境に影響の少ないナフタレンフリーの芳香族炭化水素、例えばカクタスファインSF−02(ジャパンエナジー社製、又はこれらの混合物を使用すると好ましい。
【0049】
これらの有機溶剤は、単独で又は2種類以上の混合物として使用することができる。また、有機溶剤の配合量は、目的の粘度に応じた任意の量とすることができるが、上述したアスファルトの溶解に用いられる有機溶剤を含めた有機溶剤総量として、本発明のレジスト組成物における20〜80質量%とされることが好ましい。
【0050】
[炭化水素系ワックス]
本発明で使用する炭化水素系ワックスは、石油留分としてのパラフィンワックス、合成パラフィンワックス、およびその混合物が使用できる。特に炭素原子数20〜30の石油抽出物または合成のパラフィンワックス、およびその混合物が好ましく使用される。
【0051】
炭化水素系ワックスの軟化点は、65℃以上、更に80℃以上、特に95℃以上であることが好ましい。軟化点が65℃以上である場合には、高温のエッチングにおいてもエッチング液に対する優れた耐性を有し、エッチングレジストの耐性の劣化の抑制に寄与する。
【0052】
フィッシャー・トロプシュ法にて製造された炭化水素系ワックス、特にパラフィンワックスは軟化点が高い傾向にあるために、特に好ましく使用される。
【0053】
炭化水素系ワックスの添加量はアスファルト100質量部に対して、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは2〜10質量部である。この範囲の割合で炭化水素系ワックスを用いることにより、剥離液により多量のレジストが剥離処理されても、剥離液の劣化が最低限に抑制されることとなる。これにより、剥離液の寿命を格段に向上させ、剥離液の繰り返し使用を可能となる。
【0054】
固体または粘度の高いワックスをレジスト組成物に添加する際には、上述の有機溶剤(C)の一部または全部でワックスを溶解してから添加すると、レジスト組成物の混合、分離がしやすくなる。
【0055】
[その他の添加剤]
この他、本発明のレジスト組成物には、必要に応じて、表面張力調整剤、界面活性剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラックなどの公知慣用の着色剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤およびレベリング剤の少なくとも1種を、添加剤として配合することができる。添加剤は、各成分(A)〜(C)の性能を損なわず、添加剤の所望の効果が得られる範囲で、適宜使用量を調節して使用される。
【0056】
本発明のレジスト組成物の25℃における粘度は、1から1500dPa・sの範囲、特に10から1000dPa・sの範囲にあると好ましい。エッチングレジスト組成物の粘度が1dPa・s以上であると、レジスト組成物が加熱乾燥により、エッチングレジストとして基板を良好に保護可能な膜厚で塗膜になる。一方、エッチングレジスト組成物の粘度が1500dPa・s以下であると、組成物が扱いやすく、スクリーン印刷等による印刷に好適であり、エッチング後のレジスト剥離処理も簡単かつ経済的に行われる。
【0057】
なお、本発明のエッチングレジスト組成物は、主に熱乾燥型に好適に用いられるが、必要に応じ、感光性材料、例えば、感光性(メタ)アクリレート化合物、光酸発生剤、光重合開始剤を含んでいてもよい。
【0058】
また、本発明の基板の製造方法においては、上述のエッチングレジスト組成物を均一な溶液又は分散液として調整後、ガラス基板等の基板に対してスクリーン印刷等により、3〜70μm、好ましくは10〜60μm、より好ましくは20〜50μmの膜厚で、所望のパターン状に印刷する。更に、パターン状のエッチングレジスト組成物は、例えば、50〜120℃、好ましくは70〜100℃における5〜50分、好ましくは20〜40分の乾燥炉等における加熱により有機溶剤を蒸発させて乾燥させ、乾燥塗膜であるレジストを形成することができる。
【0059】
ここで本発明のレジスト組成物は、スクリーン印刷法の他、グラビア法、グラビアオフセット法などの印刷方法においても適用可能である。また、レジスト組成物は複数回に分けて塗布することもできる。その際の塗布方式としては、従来より知られる2コート1ベークなどのウエットオンウエット塗装や、2コート2ベークなどのドライオンウエット塗装が可能である。
【0060】
その後、所望のパターンで乾燥したレジストで被覆された基板は、エッチング液によりエッチング処理に付される。エッチング処理により、レジストに被覆されていない基板部分がエッチングされる。これにより所定パターンのガラス成型品を得ることができる。
【0061】
エッチング液としては、フッ化水素酸等を含むエッチング液(例えば、フッ化水素酸と、鉱酸(硝酸、リン酸等)との混合物、場合により酢酸等の弱酸のいずれか1種以上を含む)があげられる。
【0062】
本発明のレジスト組成物から得られるレジストは、上述の熱乾燥後にはエッチング液に対して優れた耐性を有することから、エッチング処理中に基板からの剥離が生じずに、基板を高精度でエッチング処理することができる。
【0063】
本発明のエッチングレジスト組成物は加熱による熱乾燥を行えば、光硬化ないし熱硬化を行わなくとも、基板に良好に密着したレジストを構成し、基板をエッチング液から良好に保護する。更には高精度のエッチングを可能とし、エッチング完了後にはケトン類、エステル類、芳香族炭化水素類、石油系溶剤類等の溶剤を用いて短時間で容易に除去可能である。特に、溶解性の観点と経済性の観点より石油系溶剤を用いることが好ましい。
【0064】
上述のように、基板上にパターン状に施与される未硬化のエッチングレジスト組成物の膜厚は、エッチング液の性状に応じて、3〜70μm、特に20〜50μmの範囲で適宜されると好ましい。この範囲の膜厚を有するエッチングレジストは、エッチング液に対して十分な耐性を有するため、エッチング処理における基板の保護の観点から有効である。ただし、本発明のレジスト組成物は、乾燥温度および乾燥時間の要求を満たせば、70μmを超過する膜厚としてもよい。
【0065】
また、本発明のエッチングレジスト組成物によると、一般的な印刷条件により上記範囲の膜厚を有する塗膜が基板に印刷される。
【0066】
なお、本発明のエッチングレジスト組成物はフッ化水素酸系エッチング液だけではなく、強酸系、弱酸系、強アルカリ系、弱アルカリ系、腐食性物質系の各種エッチング液にも非常に優れた耐性がある。
【0067】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下において特に断りのない限り、「部」は質量部を意味するものとする。
【実施例】
【0068】
[実施例1〜13及び比較例1〜4]
I. エッチングレジスト組成物の作製
表1に示す成分を、表1に示す割合(単位:部)にて配合し、3本ロールミルにて分散し、実施例1から25、および比較例1から4の各エッチングレジスト組成物を得た。
【0069】
なお、ワックスの添加に関しては、表1に記載した配合量の溶剤の一部または全部でワックスを溶解してから添加した。
【0070】
上記のようにして作製したレジスト組成物、及びその組成物より得られるレジストについて以下の性質を評価した。
【0071】
II. エッチングレジストの製造
実施例1から25、および比較例1から4により得られた各組成物を、300mm×400mmのガラス板に対し、100メッシュテトロンバイアス版を用いたスクリーン印刷法により、膜厚30μmにてベタ印刷を行い、80℃にて30分加熱して溶剤を蒸発、乾燥させてエッチングレジスト(試験片)とした。
【0072】
III. エッチング液耐性試験
実施例1から25、および比較例1から4により得られた各組成物から得られた試験片を各エッチング液1〜4に30℃にて60分間浸漬し、エッチング液1〜4から取り出した後の試験片を目視にて評価した。評価方法は以下の通りである。
【0073】
また、評価方法は以下の通りである。
【0074】
◎:試験後において全く剥がれが無い
○:ほとんど剥がれが無い
△:剥がれが見られる
×:全面剥離で塗膜が無い
【0075】
なお、使用したエッチング液は以下の通りである。
【0076】
エッチング液1:フッ化水素酸系エッチング液 フッ化水素濃度8%
エッチング液2:フッ化水素酸系エッチング液 フッ化水素濃度15%
エッチング液3:10%濃度塩酸
エッチング液4:10%濃度水酸化ナトリウム
【0077】
IV. 剥離液の疲労試験
1リットルの芳香族系炭化水素系溶剤を剥離液として、各試験片の組成物を1枚づつ剥離液に浸漬した。剥離液は交換せず順次浸漬により剥離を行った。剥離液の性能を評価した。
【0078】
評価方法は、以下の通りである。
【0079】
●...50枚以上剥離を行った剥離液にて、60秒以内に剥離可能
◎...30枚以上剥離を行った剥離液にて、60秒以内に剥離可能
○...20枚以上剥離を行った剥離液にて、60秒以内に剥離可能
×...20枚の剥離を行った剥離液にて、60秒以内に剥離不可能
【0080】
以下の表1に評価結果を示す。
【0081】
【表1】
【0082】
アスファルトワニス1:九重電気株式会社製、KB級アスファルト(ブローンアスファルト:針入度6 軟化点110℃)の芳香族系炭化水素溶剤とカルビトールアセテート(50:50)のワニス、固形分50%
アスファルトワニス2:九重電気株式会社製、K級アスファルト(ストレートアスファルト:針入度10 軟化点95℃)の芳香族系炭化水素溶剤とカルビトールアセテート(50:50)のワニス、固形分50%
フェノール樹脂ワニス:DIC株式会社製、KA-1160(クレゾールノボラックフェノール樹脂)の芳香族系炭化水素溶剤とカルビトールアセテート(50:50)のワニス、固形分60%
フェノキシ樹脂ワニス:三菱化学株式会社製、jER1256(フェノキシ樹脂)の芳香族系炭化水素溶剤とカルビトールアセテート(50:50)でのワニス、固形分50%
合成微粉シリカ:日本エアロジル株式会社製、AEROSIL200
溶融粉砕シリカ:株式会社龍森製、FUSELEX X
溶融球状シリカ:電気化学工業株式会社製、FB−3SDX
硫酸バリウム:堺化学工業株式会社製、#100
炭化水素系ワックス1:日本精蝋株式会社製、FT−100(合成炭化水素ワックス 軟化点100℃)
炭化水素系ワックス2:日本精蝋株式会社製、PARAFFINWAX−155(パラフィンワックス 軟化点68℃)
炭化水素系ワックス3:三菱化学株式会社製、ハイワックス100P(ポリエチレンワックス 軟化点 116℃)
溶剤:出光興産株式会社製、イプゾール150(芳香族炭化水素系溶剤)
【0083】
上記結果より、本発明のエッチングレジストレジスト組成物は、エッチング耐性に優れ、保存安定性及びレジスト除去性についても優れた効果を示すことがわかる。
【0084】
本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
【0085】
例えば、上記実施例では、主にガラス基板のエッチングについて記載したが、本発明のレジスト組成物は、金属基板や合成ゴム等を含むプラスチック基板のエッチング等にも使用することができる。