(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記滞在地上高推定手段によって推定された地上高から、階高(フロア高)を推定する階高推定手段と、滞在階数(フロアレベル)を推定する滞在階数推定手段とを更に有し、
前記階高推定手段は、所定地域範囲毎に過去の地上高推定履歴を保存し、階高候補値を所定ステップで変化させた際の、各階高となる地上高と、地上高推定履歴の全地上高との誤差が最小となる階高候補値を当該エリアにおける階高とを決定し、
前記滞在階数推定手段は、当該階高に基づいて滞在階数を推定する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の移動端末。
【背景技術】
【0002】
近年、センサの小型化及び高精度化に伴って、携帯電話機やスマートフォンのような移動端末に、種々のセンサが内蔵されてきている。特に、GPS(Global Positioning System)センサは一般的であって、衛星からの測位電波を受信することによって、その移動端末の現在位置及び高さを測位することができる。これによって、現在位置を精度高く特定することができ、周辺地域情報を様々な観点から検索することができる。但し、GPSセンサは、衛星からの測位電波を受信する必要があるために、主に屋外での測位に限られる。
【0003】
一方で、屋内では、無線LANやセルラ通信ネットワークを介して、以下の3つの方式が主に用いられている(例えば非特許文献1、2参照)。
「複数基地局測位方式」:複数の隣接基地局からの通信電波によって測位する
「ハイブリッド測位方式」:GPS測位方式+複数基地局測位方式
「セルベース測位方式」:接続先基地局の位置を、当該移動端末の現在位置とする
屋内で測位可能なこれら測位方式によれば、緯度及び経度は推定できるものの、高度までは推定できない。
【0004】
高度を推定するためには、GPSセンサの他、「気圧センサ」が用いられる。移動端末に内蔵された気圧センサを用いて、当該移動端末の等高(海抜(シーレベル)からの高さ)を測位することができる(例えば特許文献2、3参照)。この高度は、例えば登山の際における現在位置の等高線の確認に用いることができる。
【0005】
また、高度が既知である基準用無線センサ端末の気圧値を基準とし、気圧センサを搭載し且つ高度が未知である無線センサ端末の高度を推定する技術もある(例えば特許文献4参照)。この技術によれば、地上高が既知の基準用無線センサ端末を配置して、当該端末の気圧を基準とすることによって、地上高が未知の無線センサ端末の地上高を推定することができる。
【0006】
更に、気圧センサを搭載した移動端末を所持したユーザについて、歩行中の気圧値の変化量から、ユーザの歩行経路における高度差を算出する技術もある(例えば特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
高層ビルが建ち並ぶ都会のような場所で現実的に必要となる位置サービスとしては、ユーザが屋内に位置する地上高や階数が重要となる。気圧センサを用いた場合、前述したように、海抜(シーレベル)に対する絶対高度を推定することはできる。しかしながら、例えば高度100mであっても、海辺に建つ高層ビルの上層階なのか?、又は、山の麓なのか?を推定することは難しい。特許文献1によれば、ユーザの歩行経路における高度差は、相対的な差であり、地上高ではない。また、特許文献2及び3によれば、推定できる端末位置の高度は、絶対高度であって、地上高ではない。
【0010】
また、気圧値は、同じ場所であっても、日々刻々と変動する。そのために、気圧値のみから高度を算出しようとすると、天候(例えば晴天の日と台風の日)によって大きく変動する。更に、気象データベースから所定日時の所定場所における気圧値を取得することも可能であるが、移動端末の気圧センサに個体差がある場合、同じ場所、同じ時刻であっても観測される気圧値に差が生じるため、誤差が生じる。
【0011】
更に、特許文献4によれば、基準用無線センサ端末からの無線センサ端末までの距離が大きくなるほど、気圧の変化量が増える。その推定精度を保つためには、数多くの基準用無線センサ端末を遍く配置する必要がある。そのように考えると、日本全国どこでも、移動端末の高度を推定することまではできない。
【0012】
そこで、本発明は、気圧センサによって観測された気圧値を用いて、自ら位置する地上高を推定する移動端末、プログラム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、気圧センサ
及びGPS(Global Positioning System)センサを搭載する移動端末において、
気圧センサによって観測した気圧値に、位置及び/又は時刻
とGPS測位可否情報とを対応付けて取得する気圧値取得手段と、
所定地域範囲及び/又は所定時間範囲毎に、
「測位可」に対応する複数の気圧値における代表気圧値を、地上レベル(グランドレベル)の基準気圧値とする基準気圧値決定手段と、
所定地域範囲及び/又は所定時間範囲毎に、基準気圧値を記憶する基準気圧値蓄積手段と、
現に観測した気圧値の位置及び/又は時刻を用いて、基準気圧値蓄積手段から基準気圧値を検索する基準気圧値検索手段と、
現に観測した気圧値から、基準気圧値をベースとした当該端末が存在する地上高を推定する滞在地上高推定手段と
を有することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、気圧センサ
及び照度センサを搭載する移動端末において、
気圧センサによって観測した気圧値に、位置及び/又は時刻
と照度値とを対応付けて取得する気圧値取得手段と、
所定地域範囲及び/又は所定時間範囲毎に、
照度値が所定閾値以上となる複数の気圧値における代表気圧値を、地上レベル(グランドレベル)の基準気圧値とする基準気圧値決定手段と、
所定地域範囲及び/又は所定時間範囲毎に、基準気圧値を記憶する基準気圧値蓄積手段と、
現に観測した気圧値の位置及び/又は時刻を用いて、基準気圧値蓄積手段から基準気圧値を検索する基準気圧値検索手段と、
現に観測した気圧値から、基準気圧値をベースとした当該端末が存在する地上高を推定する滞在地上高推定手段と
を有することを特徴とする。
【0015】
本発明の移動端末における他の実施形態によれば、
基準気圧値決定手段は、複数の気圧値の最大値、平均値又は中央値を、基準気圧値とすることも好ましい。
【0016】
本発明の移動端末における他の実施形態によれば、
基準気圧値決定手段は、
複数の気圧
値をクラスタリングし、クラスタ毎に代表気圧値を算出し、
気圧値を最も多く含むクラスタにおける代表気圧値、又は、各クラスタの代表気圧値の中で最も高い代表気圧値を、所定地域範囲の地上レベル(グランドレベル)の基準気圧値とすることも好ましい。
【0017】
本発明の移動端末における他の実施形態によれば、
無線通信インタフェース部、測位部又は地磁気測定部の少なくともいずれか1つを更に搭載しており、
気圧値取得手段は、位置として、接続先/隣接基地局識別子、緯度・経度情報又は地磁気情報の少なくともいずれか1つを更に対応付けて取得することも好ましい。
【0018】
本発明の移動端末における他の実施形態によれば、
気候データベースから、当該移動端末の位置周辺における標準気圧値を受信する気候データ受信手段と、
前記基準気圧値と、当該基準気圧値を決定する際に用いた複数の気圧値における当該平均観測時刻に最も近い第1の時刻の標準気圧値とを対応付けて記憶し、第1の時刻の標準気圧値と第2の時刻の標準気圧値との間の気圧差によって、平均観測時刻の基準気圧値を補正した第2の時刻の基準気圧値を算出する基準気圧値補正手段と
を更に有することも好ましい。
【0019】
本発明の移動端末における他の実施形態によれば、
滞在地上高推定手段によって推定された地上高から、階高(フロア高)を推定する階高推定手段と、滞在階数(フロアレベル)を推定する滞在階数推定手段とを更に有し、
階高推定手段は、所定地域範囲毎に過去の地上高推定履歴を保存し、階高候補値を所定ステップで変化させた際における、各階高となる地上高と、地上高推定履歴の全地上高との誤差が最小となる階高候補値を当該エリアにおける階高として決定し、
滞在階数推定手段は、当該階高に基づいて滞在階数を推定することも好ましい。
【0020】
本発明によれば、気圧センサ
及びGPSセンサを有する移動端末に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムにおいて、
気圧センサによって観測した気圧値に、位置及び/又は時刻
とGPS測位可否情報とを対応付けて取得する気圧値取得手段と、
所定地域範囲及び/又は所定時間範囲毎に、
「測位可」に対応する複数の気圧値における代表気圧値を、地上レベル(グランドレベル)の基準気圧値とする基準気圧値決定手段と、
所定地域範囲及び/又は所定時間範囲毎に、基準気圧値を記憶する基準気圧値蓄積手段と、
現に観測した気圧値の位置及び/又は時刻を用いて、基準気圧値蓄積手段から基準気圧値を検索する基準気圧値検索手段と、
現に観測した気圧値から、基準気圧値をベースとした当該端末が存在する地上高を推定する滞在地上高推定手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、気圧センサ
及びGPSセンサを有する移動端末の滞在地上高推定方法において、
移動端末は、
気圧センサによって観測した気圧値に、位置及び/又は時刻
とGPS測位可否情報とを対応付けて取得する第1のステップと、
所定地域範囲及び/又は所定時間範囲毎に、
「測位可」に対応する複数の気圧値における代表気圧値を、地上レベル(グランドレベル)の基準気圧値とする第2のステップと、
所定地域範囲及び/又は所定時間範囲毎に、基準気圧値を記憶する第3のステップと、
現に観測した気圧値の位置及び/又は時刻を用いて、
第3のステップに基づく基準気圧値蓄積手段から基準気圧値を検索する第4のステップと、
現に観測した気圧値から、基準気圧値をベースとした当該端末が存在する地上高を推定する第5のステップと
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の移動端末、プログラム及び方法によれば、気圧センサによって観測された気圧値を用いて、自ら位置する地上高を推定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0025】
図1は、気圧値に対する地上高を表す説明図である。
【0026】
図1によれば、移動端末を所持した多数のユーザが、屋外や、ビルの各フロアに位置している。本願発明の移動端末には、気圧センサが搭載されている。また、スマートフォンのような移動端末によれば、GPSセンサも一般的に搭載されている。但し、移動端末は、ビルや地下街のような屋内に位置する場合、携帯電話網の基地局とは通信可能であるが、GPS衛星からの測位電波を受信することはできない。更に、スマートフォンのような移動端末によれば、照度センサも一般的に搭載されている。
【0027】
移動端末に搭載された気圧センサは、例えば所定単位時間毎に、その高度に応じた気圧値を電力値として出力する。高度が低いほど、気圧値は高く、逆に、高度が高いほど、気圧値は低い。そのために、同一ビル内にあっても、そのユーザが位置する地上高(階数)によっては、気圧センサによって観測される気圧値は異なる。ビルの1階や屋外の地上で観測される気圧値は高く、ビルの高層階で観測させる気圧値は低い。
【0028】
図2は、本発明における移動端末の機能構成図である。
【0029】
<移動端末1>
図2によれば、移動端末1は、ハードウェアとして、通信インタフェース100と、気圧センサ101と、GPSセンサ102と、気温センサ103と、照度センサ104と、地磁気センサ105を有する。また、移動端末1は、気圧値取得部11と、基準気圧値決定部12と、基準気圧値蓄積部13と、基準気圧値検索部14と、滞在地上高推定部15と、滞在階数推定部16と、気候データ受信部17と、基準気圧値補正部18と、階高推定部19とを有する。これら機能構成部は、移動端末に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。また、これら機能構成部の処理の流れは、移動端末の滞在地上高推定方法としても理解できる。
【0030】
[気圧値取得部11]
ログ蓄積部11は、気圧センサによって観測された「気圧値」を取得する。その気圧値には、少なくとも、観測した位置及び/又は時刻(日時)を対応付けて取得する。位置としては、GPSセンサや複数基地局測位方式、その他測位方式に基づく緯度・経度情報の他に、例えば以下のような情報であってもよい。
・地磁気センサから取得した地磁気(磁場)情報(例えば全磁力、偏角、伏角)
・通信インタフェースから取得した、携帯電話通信システムにおける
接続先基地局及び/又は隣接基地局の識別子と、それら基地局からの受信電力
・通信インタフェースから取得した、無線LANシステムにおける
接続先基地局(アクセスポイント)/隣接基地局の識別子と、
それら基地局からの受信電力
また、例えば以下のような情報の全て又は一部を対応付けて取得するものであってもよい。
・GPSセンサの測位可否情報
=捕捉衛星数、測位電波品質(例えばSNR(Signal-Noise Ratio))
=緯度・経度情報
・照度センサから取得した照度値
【0031】
[基準気圧値決定部12]
基準気圧値決定部12は、所定地域範囲及び/又は所定時間範囲毎に、複数の気圧値における代表気圧値を、地上レベル(グランドレベル)の基準気圧値とする。代表気圧値は、観測した複数の気圧値の最大値、平均値又は中央値とする。
【0032】
気圧値に対応付けられた観測日時を用いて、基準気圧値決定部12は、所定時間範囲毎に基準気圧値を決定することができる。所定時間範囲は、例えば1時間毎であってもよい。また、気圧値に対応付けられた位置を用いて、基準気圧値決定部12は、所定地域範囲毎に基準気圧値を決定することができる。所定地域範囲は、例えば1/10地域メッシュ(約100m四方)であってもよい。
【0033】
基準気圧値は、所定地域範囲及び所定時間範囲の組毎における、地上レベルの気圧値を意味する。このように、基準気圧値決定部12は、所定地域範囲及び所定時間範囲の組毎に、時々刻々と基準気圧値を、基準気圧値蓄積部13へ出力する。
【0034】
他の実施形態として、気圧値を観測したデータに、測位可否情報が対応付けられている場合、「測位可」の気圧値のみを対象に、代表気圧値を算出するものであってもよい。代表気圧値を算出する理由として、当該移動端末にとっての地上レベルの気圧値(基準気圧値)を検出することにある。即ち、GPSセンサによって「測位可」であるということは、屋外に位置する可能性が高い。勿論、ビルの高層階の窓際でGPS「測位可」となる場合もあるかもしれない。しかしながら、ビルの高層階の窓際における気圧値は、当該ビルの周囲の地上レベルの気圧値よりも低い。そのために、例えば収集した気圧値の最大値を代表気圧値としたり、クラスタのCentroidが最も大きいものを代表気圧値とすることで、地上レベルの気圧値(基準気圧値)を得ることができる。また、移動端末毎に基準気圧値が決定されるため、移動端末の気圧センサに個体差がある場合であっても問題が生じない。
【0035】
また、他の実施形態として、気圧センサによって観測された気圧値に、測位可否情報「測位可」に加えて、衛星補足数及び/又はSNRを対応付けることも好ましい。この場合、基準気圧値決定部12は、衛星補足数及び/又はSNRが所定閾値以上となる気圧値のみを対象に、代表気圧値を算出することができる。即ち、衛星補足数が多く、及び/又は、SNRが高い場合、当該移動端末は確実に屋外に位置しているであろうと推測することができる。
衛星補足数>x個 & 最大SNR>ydB
x、y:所定閾値
ここでは、屋外にいるであろう移動端末における気圧値から、グラウンドレベルの気圧値を検出する。
【0036】
更に、他の実施形態として、気圧センサによって観測された気圧値に、照度値を対応付けることも好ましい。基準気圧値決定部12は、照度値が所定閾値以上となる気圧値のみを対象に、代表気圧値を算出する。即ち、日中に限られるものの、例えば照度が10,000ルクス以上であれば、屋外に位置している可能性が非常に高いと推測することができる。
照度値>zルクス
z:所定閾値
【0037】
更に、他の実施形態として、気圧センサによって観測された気圧値に、磁場(地磁気)情報や接続先/隣接基地局情報等が対応付けられている場合、基準気圧値決定部12は、所定磁場情報範囲や接続先/隣接基地局範囲毎に、基準気圧値を決定することができる。
【0038】
図3は、本発明における気圧値に対応付けられたログを表す説明図である。
【0039】
図3によれば、気圧値に、観測日時、GPS測位可否、捕捉衛星数、最大SNRが対応付けられている。尚、4つのデータ#1〜#4は、同一地域範囲内で取得されたものとする。所定時間範囲を1時間とすると、#1〜#3が1つの範囲内となる。その中で、GPSセンサの「測位可」の#1、#2のみが、基準気圧値の算出に用いられる。例えば、これら気圧値の平均値を、基準気圧値とする場合、基準気圧値は1011.2となり、平均観測時刻は2014/2/1 11:36となる。
【0040】
<クラスタリングを用いた基準気圧値の算出>
また、基準気圧値決定部12は、「測位可」である、及び/又は、照度値が所定閾値以上である複数の気圧値のみをクラスタリングし、クラスタ毎に代表気圧値を算出するものであってもよい。気圧値を最も多く含むクラスタにおける代表気圧値、又は、各クラスタの代表気圧値の中で最も高い代表気圧値を、所定地域範囲の地上レベル(グランドレベル)の基準気圧値とする。
【0041】
特に、移動端末の位置する所定地域範囲毎に、複数の気圧値をクラスタリングする。その理由は、地上の等高線の違いによって、場所毎に気圧値が異なるためである。例えば、標準地域メッシュにおける第3次地域メッシュ区画(3次メッシュ;約1km四方の矩形)毎に区分するものであってもよい。他の実施形態としては、携帯電話網の基地局毎に区分するものであってもよい。この場合、ログには、移動端末1の接続先/隣接基地局識別子が含まれる。つまり、接続先/隣接基地局識別子が含まれる複数の気圧値をクラスタリングし、クラスタ毎に代表気圧値を算出する。
【0042】
気圧値は場所や時間によって異なるために、所定地域範囲及び「所定時間範囲」の組毎に、複数の気圧値をクラスタリングするものであってもよい。「所定時間範囲」としては、例えば1時間毎に区分する。
【0043】
図4は、本発明における気圧値のクラスタリングの説明図である。
【0044】
図4によれば、複数の「測位可」であるログの気圧値をクラスタリングしたものである。地上レベルの気圧値が最も多く、それら気圧値を含むクラスタのサイズが最も大きくなっており、次いでビル最上階レベルの気圧値が多くなっている。
【0045】
クラスタリングには、例えばk-meansを用いる。k-meansクラスタリングとは、非階層型クラスタリングであって、クラスタの平均を用いて、与えられたクラスタ数k個に分類する。また、クラスタ数は、所定の情報量基準(例えばベイズ情報量基準(BIC)に基づいて決定してもよい。
【0046】
そして、クラスタ毎に、複数の気圧値の平均値(重心)又は中央値を「代表気圧値」とする。このとき、全ての気圧値の数に対する各クラスタに含まれる気圧値の割合を、当該クラスタのサイズとし(最大100%)、ノイズを除外するべく、所定サイズ(例えば10%)以上のクラスタのみを、代表気圧値を導出する対象とすることも好ましい。
【0047】
また、クラスタリングにおける他の実施形態として、全体の気圧値の数に対して所定割合以上の気圧値の数を含むクラスタが複数存在する場合がある。所定割合30%とした場合、例えば40%の気圧値を含むクラスタと、35%の気圧値を含むクラスタと、それ以外の複数のクラスタとに区分されたと想定する。この場合、クラスタリングの対象となる所定地域範囲を縮小する。勿論、所定時間範囲を短くするものであってもよい。そして、所定割合30%以上の気圧値の数を含むクラスタが1個となるまで、クラスタリングを繰り返す。
【0048】
具体的には、空間的に急激な地上高変化(例えば坂)があり、サイズが大きいクラスタが複数検出された場合、2分の1メッシュ区画(例えば約500m四方の矩形)毎に区分する。また、時間的に急激な気圧変化があり、サイズが大きいクラスタが複数検出された場合、所定時間範囲を2分の1(例えば30分間)時間範囲毎に区分する。
【0049】
[基準気圧値蓄積部13]
基準気圧値蓄積部13は、所定地域範囲及び/又は所定時間範囲毎に、基準気圧値を記憶する。
【0050】
[基準気圧値検索部14]
基準気圧値検索部14は、現に観測した気圧値の位置及び/又は時刻を用いて、基準気圧値蓄積部13から基準気圧値を検索する。検索した基準気圧値は、滞在地上高推定部15へ出力される。
【0051】
基準気圧値に位置が対応付けられているので、基準気圧値決定部12は、当該移動端末の現在の位置から所定地域範囲内の基準気圧値を検索することができる。例えば、当該移動端末1の位置から例えば500m以内の地域範囲内の基準気圧値を、滞在地上高の推定に用いることができる。
また、基準気圧値に時刻が対応付けられているので、基準気圧値決定部12は、現在の時刻から所定時間範囲内の基準気圧値を検索することができる。例えば、現在の時刻から3時間以内の基準気圧値を、滞在地上高の推定に用いることができる。
【0052】
[滞在地上高推定部15]
滞在地上高推定部15は、現に観測した気圧値から、基準気圧値をベースとした当該端末が存在する地上高を推定する。推定した地上高は、滞在階数推定部16へ出力される。地上高を、地上からの高度h(m:メートル)として算出する場合、例えば以下の式を用いる。
h=(((Pb/P)
(1/5.257)−1)×(Temp+273.15))/0.0065
P:現に観測した気圧値
Pb:基準気圧値
Temp:気温
図3の♯3によれば、Pb=1011.2hPa、Temp=15度とすると、h=56.09mとなる。
【0053】
気温は、気候データベース2からリアルタイムに予め、その所定地域範囲の気温を取得しておくものであってもよい。また、移動端末1が気温センサを搭載している場合、その気温を用いてもよい。気温を取得できない場合、季節に応じて予め設定した所定気温(例えば5月であれば15度)を用いてもよい。
【0054】
[滞在階数推定部16]
滞在階数推定部16は、滞在地上高推定部15によって推定された地上高から、滞在階数(フロアレベル)を推定する。
滞在階数=ceil(h/階高)
=ceil(56.09/4)
階高:例えば4m
ceil():天井関数
図3の♯3によれば、例えばceil(14.02)=15階となる。
【0055】
[階高推定部19]
また、他の実施形態として、階高推定部19を更に有することも好ましい。階高推定部19は、所定地域範囲毎に過去の地上高推定履歴を保存する。そして、階高(フロア高)候補値を、所定ステップで変化(例えば3mから5mまでの間で0.1mずつ変化)させて、当該所定地域範囲における階高を決定する。
即ち、地上高推定履歴における滞在地上高と最も近い、階高候補値の倍数間の誤差が最小となる階高候補値を、当該地域範囲のフロア高とする。
例えば、ある地域範囲について、地上高推定履歴がh={3.82、3.79、3.81、7.61、11.39、15.22}となっている場合を想定する。ここで、階高候補値を3mとすると、2階部分は6m、3階部分は9m、・・・、6階部分は18m(地上高推定履歴数=6とする)となる。地上高推定履歴の各値と、x階部分のうち最も地上高推定履歴の各値と近い値との差に基づいて、以下の式のように算出される。
差=sqrt((1/地上高推定履歴数)
×Σ(地上高推定履歴の値−階高候補値で最も近い値)
2)
=sqrt(1/6*((3.82−3)
2+(3.79−3)
2+(3.81−3)
2+(7.61−9)
2
+(11.39−12)
2+(15.22−15)
2))
=0.847
階高候補地Fi=3.8の時が最も誤差が少なくなり(上記例だと0.014)、この地域範囲における階高=3.8と決定することができる。滞在階数推定部16は、当該階高を利用して、滞在階数(フロアレベル)を推定できる。
【0056】
そして、滞在階数推定部16によって推定された滞在階数は、アプリケーションへ出力される。アプリケーションは、当該移動端末が位置する地上高に応じたサービスを提供することができる。
【0057】
[気候データ受信部17]
気候データ受信部17は、気候データベース2から、当該移動端末の位置周辺における標準気圧値を定期的に、又はアプリケーションからのフロアレベル推定要求に応じて受信する。当該移動端末自身の位置情報を、気候データベース2へ送信することによって、当該移動端末の近隣における標準気圧値を受信してもよいし、全国分のデータを受信した気候データ受信部が、当該移動端末の位置に近い標準気圧値のみを抽出してもよい。位置情報は、GPSの緯度経度に限られず、複数基地局測位情報等であってもよいし、接続先基地局/隣接基地局の識別子を位置情報としてもよい。そして、受信した標準気圧値は、基準気圧値補正部18へ出力される。
【0058】
[基準気圧値補正部18]
ログには、気圧値における観測日時が更に対応付けられているとする。そして、基準気圧値補正部18は、基準気圧値と、当該基準気圧値を決定する際に用いた複数の気圧値における当該平均観測時刻に最も近い第1の時刻の標準気圧値とを対応付けて記憶する。そして、基準気圧値補正部18は、第1の時刻の標準気圧値と第2の時刻の標準気圧値との間の気圧差によって、平均観測時刻の基準気圧値を補正した第2の時刻の基準気圧値を算出する。その基準気圧値は、基準気圧値蓄積部13に対して更新する。
【0059】
前述した
図3によれば、複数のログにおける平均観測時刻2014/2/1 11:36の基準気圧値として、1011.20hPaが算出されている。また、平均観測時刻に最も近い第1の時刻2014/2/1 12:00の標準気圧値として、1012.00hPaを、2014/2/1 12:00以降に気候データベース2から受信している。平均観測時刻における基準気圧値と標準気圧値とは、対応付けて記憶されている。
平均観測時刻2014/2/1 11:36->
基準気圧値1011.20hPa、標準気圧値1012.00hPa
そして、第2の時刻2014/2/2 12:00には、平均観測時刻の標準気圧値1012.00hPaと現在の標準気圧値1010.00hPaとの間の気圧差-2hPaによって、平均観測時刻の基準気圧値1011.20hPaを補正した現在の基準気圧値を算出する。
第2の時刻の基準気圧値=平均観測時刻の基準気圧値1011.20hPa−
(平均観測時刻の標準気圧値1012.00hPa−現在の標準気圧値1010.00hPa)
=1009.20hPa
【0060】
他の実施形態として、補正後の基準気圧値Pb
hoseiは、以下のように算出することもできる。
Pb
hosei=P0×(1-0.0065h
sealevel/(Temp+273.15))
5.257
P0:更新された標準気圧値
h
sealevel:海抜
例えば、
図3の2014/2/2 12:00に更新された標準気圧値を用いると、基準気圧値は、1009.20hPaとなり、前述の例と同じ補正後の基準気圧値となる。
【0061】
図5は、従来技術におけるGPS測位に基づく高さを表す第1のグラフである。
図6は、
図5に対して、本発明における滞在階数推定を表す第2のグラフである。
図5と比較して、
図6の方が極めて高い精度且つ安定して、滞在階数が推定できている。
【0062】
図7は、従来技術におけるGPS測位に基づく高さを表す第3のグラフである。
図8は、
図7に対して、本発明における滞在階数推定を表す第4のグラフである。
同様に、
図7と比較して、
図8の方が極めて高い精度且つ安定して、滞在階数が推定できている。
【0063】
以上、詳細に説明したように、本発明の移動端末、プログラム及び方法によれば、気圧センサによって観測された気圧値を用いて、自ら位置する地上高を推定することができる。本発明によれば、移動端末のみで、ユーザ位置の地上高を推定することができ、ビル内の地上高に応じた位置サービスを提供することができる。
【0064】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。