特許第6293025号(P6293025)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6293025
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】押出機及び押出機の操作方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 33/10 20060101AFI20180305BHJP
   C10B 29/06 20060101ALN20180305BHJP
【FI】
   C10B33/10
   !C10B29/06
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-184993(P2014-184993)
(22)【出願日】2014年9月11日
(65)【公開番号】特開2016-56310(P2016-56310A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2016年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】502369746
【氏名又は名称】住友重機械プロセス機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100148471
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 博之
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 義和
(72)【発明者】
【氏名】二井 大祐
(72)【発明者】
【氏名】川戸 俊彦
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−033062(JP,A)
【文献】 特開2007−225266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 29/00
C10B 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉の炭化室に対して押出ラムを出し入れ可能に配置した押出機において、
前記押出ラムは、乾留されたコークスを前記炭化室外に押し出すラムヘッドを前方に備え、当該ラムヘッドの後方に接続されて水平方向に延びるラムビームを備え、
前記ラムビームは、
前記炭化室に入り込む部分に設けられた、前記炭化室内の状況を観察するための観察機器と、
当該ラムビームに沿って前後に延びる冷却用空気管路であって、前方端の吐出部が前記観察機器に対応して位置し、前記観察機器に炉外の空気を当てて冷却する冷却用空気管路と、を備え
前記冷却用空気管路の後方端には、当該冷却用空気管路に前記空気を導入する、可撓性を有する常用ホースが接続され
前記常用ホースを含んで構成される常用空気経路のうち、前記常用ホースよりも更に気流方向上流側と下流側の位置に仮ホース接続部が設けられ、
前記仮ホース接続部は、前記常用空気経路に対してバイパスとなる臨時空気経路を形成する仮ホースを接続した際に、前記仮ホースを介して前記冷却用空気管路に前記空気を導入することを特徴とする押出機。
【請求項2】
前記仮ホース接続部に前記仮ホースを接続した際に、前記常用空気経路と前記臨時空気経路とを切り換える切換バルブを備えたことを特徴とする請求項1に記載の押出機。
【請求項3】
前記常用ホースは、前記観察機器に接続される機器用電気等配線と平行して配置されており、
前記常用空気経路と前記機器用電気等配線とを各々中継するためのターミナル部が前記常用ホースの気流方向上流側と下流側とに設けられており、
前記仮ホース接続部は二つの前記ターミナル部の更に上流側と下流側とに位置することを特徴とする請求項2に記載の押出機。
【請求項4】
前記常用ホースから空気が漏れていることを検知する検知部と、
前記検知部が作動したことを報知する報知部とを備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の押出機。
【請求項5】
請求項4に記載のうちで請求項2または3を引用した押出機を用い、
前記報知部による報知があった際、前記押出ラムが前記炭化室外の定位置にない場合は定位置へ移動させ、
その後、あらかじめ用意されていた前記仮ホースを前記仮ホース接続部に接続した上で前記切換バルブを前記臨時空気経路に空気を通すように切り換え、
その後、前記臨時空気経路に通された空気で前記観察機器の冷却を行うことを特徴とする押出機の操作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉の炭化室に対して押出ラムを出し入れ可能に配置した押出機及び押出機の操作方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コークス炉の炭化室内を観察して例えば壁面の破損やカーボンの付着状況を把握するため、カメラ、炉幅測定装置、温度測定装置等の観察機器が、押出機の押出ラムに設置されている(例えば特許文献1に記載)。炭化室で乾留されたコークスを取り出すため、押出ラムは炭化室に対して前後に移動する。
【0003】
操業中の炭化室内は1000度以上の高温となっているため、炭化室に押出ラムが入った場合、観察機器が高熱で故障しないように、炉外の空気を当てることで観察機器を冷却している。冷却用の空気はコンプレッサー及びエアタンク等の空気供給手段により供給される。押出ラムは前後に移動するが、空気供給手段は押出機の本体に固定されているため、前記空気供給手段と押出ラムとは、長さに余裕のあるホースで接続されて押出ラムの前後方向変位を吸収している。なお、押出ラムには鋼管が取り付けられており、この鋼管にホースを通った空気が流されて観察機器に至る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4873962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ホースは経年劣化や磨耗等により破損するかもしれない。ホースが破損すると空気がホースから漏れ、ホースを通る空気の供給量が低下したり0になったりするため、押出ラムに設置した観察機器が充分に冷却されずに故障するかもしれない。観察機器が故障した場合には交換または修理が必要となるが、カメラ等、高額で納期のかかる機器もあるため、復旧に多大な費用と時間を要するかもしれない。
【0006】
本発明は、ホースが破損した場合であっても、観察機器が高熱で故障することを抑制した押出機及び押出機の操作方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、コークス炉の炭化室に対して押出ラムを出し入れ可能に配置した押出機において、前記押出ラムは、乾留されたコークスを前記炭化室外に押し出すラムヘッドを前方に備え、当該ラムヘッドの後方に接続されて水平方向に延びるラムビームを備え、前記ラムビームは、前記炭化室に入り込む部分に設けられた、前記炭化室内の状況を観察するための観察機器と、当該ラムビームに沿って前後に延びる冷却用空気管路であって、前方端の吐出部が前記観察機器に対応して位置し、前記観察機器に炉外の空気を当てて冷却する冷却用空気管路と、を備え、前記冷却用空気管路の後方端には、当該冷却用空気管路に前記空気を導入する、可撓性を有する常用ホースが接続され、前記常用ホースを含んで構成される常用空気経路のうち、前記常用ホースよりも更に気流方向上流側と下流側の位置に仮ホース接続部が設けられ、前記仮ホース接続部は、前記常用空気経路に対してバイパスとなる臨時空気経路を形成する仮ホースを接続した際に、前記仮ホースを介して前記冷却用空気管路に前記空気を導入することを特徴とする押出機である。
【0008】
この構成によると、常用ホースを含んで構成される常用空気経路に対して、バイパスとなる臨時空気経路を形成する仮ホースを接続可能である。このため、常用ホースの破損によりホースを通る空気の供給量が低下したり0になったりしても、常用空気経路に仮ホースを接続して臨時空気経路を形成することにより、観察機器に炉外の空気を当てて冷却することを継続できる。
【0009】
また、前記仮ホース接続部に前記仮ホースを接続した際に、前記常用空気経路と前記臨時空気経路とを切り換える切換バルブを備えることもできる。
【0010】
この構成によると、仮ホース接続部と切換バルブとを備える。このため、仮ホース接続部に仮ホースを接続した上で切換バルブにより常用空気経路と臨時空気経路とを切り換えることで、臨時空気経路に容易に空気を通すことができる。
【0011】
また、前記常用ホースは、前記観察機器に接続される機器用電気等配線と平行して配置されており、前記常用空気経路と前記機器用電気等配線とを各々中継するためのターミナル部が前記常用ホースの気流方向上流側と下流側とに設けられており、前記仮ホース接続部は二つの前記ターミナル部の上流側と下流側とに位置することもできる。
【0012】
この構成によると、仮ホース接続部は二つのターミナル部の上流側と下流側とに位置する。このため、常用ホースの全長分を仮ホースで代用できる。
【0013】
また、前記常用ホースから空気が漏れていることを検知する検知部と、前記検知部が作動したことを報知する報知部とを備えることもできる。
【0014】
この構成によると、検知部と報知部とを備える。このため、常用ホースの破損を迅速に把握でき、仮ホースを接続して観察機器を冷却することへ移行するタイムラグを小さくできる。
【0015】
また、本発明は、前記報知部による報知があった際、前記押出ラムが前記炭化室外の定位置にない場合は定位置へ移動させ、その後、あらかじめ用意されていた前記仮ホースを前記仮ホース接続部に接続した上で前記切換バルブを前記臨時空気経路に空気を通すように切り換え、その後、前記臨時空気経路に通された空気で前記観察機器の冷却を行うことを特徴とする押出機の操作方法である。
【0016】
この方法によると、報知部による報知があった際、仮ホースを仮ホース接続部に接続した上で切換バルブを切り換えて観察機器の冷却を行う。このため、常用ホースの破損によりホース内の空気の供給量が低下したり0になったりしても、仮ホースを迅速に接続して臨時空気経路を形成することにより、観察機器に炉外の空気を当てて冷却することを、タイムラグを小さくして継続できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、仮ホースを接続して臨時空気経路を形成することにより、前記観察機器に炉外の空気を当てて冷却することを継続できる。このため、常用ホースが破損した場合であっても、観察機器が高熱で故障することを抑制した押出機及び押出機の操作方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る押出機とコークス炉の構成及び位置関係を示す、側面視の概略図であり、押出ラムが前方位置にある状態を破線で示し、押出ラムが後方位置(定位置)にある状態を実線で示す。
図2】同押出機の押出ラムの構成を示す概略図である。
図3】同押出機に仮ホースを接続する際のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る押出機について説明する。
【0020】
コークス炉は、燃料を燃焼させる複数の燃焼室と、燃焼室の熱により石炭を乾留する複数の炭化室Cとが幅方向において交互に設置されている。図1に示すように、押出機1は、例えばコークス炉前方に敷設された線路に沿い、コークス炉の炭化室Cに対して炉幅方向に移動可能に構成された本体(図示しない)と、この本体に対して前後方向(炭化室Cに対して接近・離反する方向であり、接近方向を「前方」とする)に移動可能とされた押出ラム2を備える。
【0021】
図1及び図2に示すように、押出ラム2は前方側にラムヘッド21を備え、後方側にラムビーム22を備える。ラムヘッド21は、押出ラム2の移動時に炭化室Cの壁面と干渉しないよう、前端部の正面視形状が炭化室Cの室内空間の形状よりもやや小さい形状とされている。ラムビーム22はラムヘッド21の後方に接続されており、水平方向に延びるように形成されている。このラムビーム22は下方からローラ23により支持されている。これにより、ラムビーム22は押出機1の本体に対して、前後方向に移動可能とされている。
【0022】
このラムビーム22は駆動手段24により前後方向に移動させられる。この駆動手段24としてラック241とピニオン242とが用いられている。ラック241はラムビーム22の上面に位置している。一方、ピニオン242は押出機1の本体に設けられ、モータ及び減速機(図示しない)により駆動するものとされており、駆動したピニオン242の回転量に応じてラムビーム22を前後方向に移動させられる。
【0023】
以上のように構成された押出ラム2は、図1に示すように、コークス炉の炭化室Cに対して出し入れ可能に配置される。前記駆動手段24を駆動させることにより、押出ラム2は前方に移動して、蓋が開放された状態とされた炭化室Cにラムヘッド21とラムビーム22の一部が入り込む。そして、乾留されたコークスをラムヘッド21が押出機1とは反対側の炭化室C外に押し出す。なお、押し出されたコークスはガイド車を介して消火電車に移動させられ(図示しない)、後の工程へと運ばれる。
【0024】
図2に示すように、ラムビーム22には、炭化室C内の状況を観察するための観察機器3が設けられている。観察機器3としては、例えば、壁面の画像を得るCCDカメラ31、炭化室Cの壁面間寸法を測定する炉幅測定装置32、炭化室C内の温度を測定する温度測定装置33が挙げられ、その他種々の装置(光学機器、センサー等)で構成することができる。本実施形態の温度測定装置33は、押出ラム2における上部(33a)、中間部(33b)、下部(33c)の3箇所に設けられている。
【0025】
ラムビーム22は鋼管等からなる冷却用空気管路221を備える。この冷却用空気管路221の先端に位置する吐出部は各観察機器3に対応して位置している。このため、各観察機器3に炉外の空気を当てて冷却することができる。
【0026】
冷却用空気管路221の後方端には、可撓性を有する常用ホース4が接続されている。この常用ホース4を含んで常用空気経路(メインライン)L1が構成されている。常用ホース4の基端(押出ラム22から遠い側の端部)にはコンプレッサー及び空気タンク等の空気供給手段51から空気が導入されて、先端からラムビーム22上の冷却用空気管路221に空気を導入できる。本実施形態の常用ホース4には耐圧ゴムホースが用いられているが、空気圧により破損しにくく可撓性を有するホースであれば種々のものを用いることができる。
【0027】
空気供給手段51は押出機1の本体上に固定されている。これに対して押出ラム2は前後方向に移動することから、押出ラム2の変位を吸収するために、常用ホース4は、押出ラム2が最前方に移動した状態を基準として余裕のある長さとされている。このように常用ホース4は余裕のある長さとされていることから、常用ホース4がからんだりしないように巻取機52に巻き取られており、必要に応じて巻取機52から引き出されるようにされている。
【0028】
常用ホース4は機器用電気等配線53と平行して配置されている。機器用電気等配線53としては、例えば、観察機器3等に電力を供給する電源配線、観察機器3等を操作するための電気信号を送る操作配線、観察機器3等により得られたデータを押出機1上の操作室M等に送る信号配線、カメラ等の映像データを送る光ファイバケーブルが挙げられるが、その他種々の配線を用いることができる。機器用電気等配線53は、複数種類の配線を1本にまとめた複合ケーブルとすることができる。また、機器用電気等配線53の一部は常用ホース4内に配置されることができる。本実施形態では、機器用電気等配線53として光ファイバケーブルを用いる場合、この光ファイバケーブルに関しては常用ホース4内に配置され、機器用電気等配線53を構成する他の配線と複合ケーブルを構成しないようにされている。そして、常用空気経路L1と機器用電気等配線53とを各々中継するための配管接続部及び端子等を備えたターミナル部54が、常用ホース4の気流方向上流側(押出機1の本体上)と下流側(押出ラム2上)とに設けられている。
【0029】
本実施形態の押出機1は、常用空気経路L1に対して、バイパスとなる臨時空気経路(バイパスライン)L2を形成する仮ホース6を接続可能に構成されている。仮ホース6は、常用ホース4破損の際に臨時的(応急的)に用いられ、常用空気経路L1を閉鎖して臨時空気経路L2に空気を通すために用いられるホースである。つまり、臨時空気経路L2は仮ホース6を含んで構成される。この仮ホース6は必要な場合にだけ押出ラム2に取り付けられる。仮ホース6は常用ホース4と同じ材質であるが(なお、仮ホース6使用時の耐圧性能が確保できるのなら、常用ホース4と異なる材質であってもよい)、臨時的に用いられるものであるから、その長さは炭化室Cから後方に移動した定位置(図1に実線で示した位置)にある押出ラム2の冷却用空気管路221と空気供給手段51とを接続する(より詳しくは二つのターミナル部54,54を接続する)に足る長さとしてもよい。また本実施形態では、常用ホース4のように巻取機52に巻き取られるようにはなっていない。また、この仮ホース6は、常用ホース4と異なり機器用電気等配線を備えておらず、専ら空気を流すためだけに用いられる。
【0030】
仮ホース6を常用空気経路L1に対して接続するため、本実施形態の押出機1は、仮ホース6を接続可能な仮ホース接続部71と、常用空気経路L1と臨時空気経路L2とを切り換える切換バルブ72とを備える。
【0031】
仮ホース接続部71は上流側ターミナル部54よりも更に上流側と、下流側ターミナル部54よりも更に下流側との2箇所に位置する。なお、各ターミナル部54に仮ホース接続部71を位置させることもできる。この2箇所のターミナル部54,54の間に常用ホース4の全長が位置するため、常用ホース4の破損の際には常用ホース4の全長分を仮ホース6で代用できる。仮ホース接続部71は、空気供給手段51から観察機器3に至る常用空気経路L1において、巻取機52の上流側位置と、常用ホース4と押出ラム2(ラムビーム22)上に固定された冷却用空気管路221の基端部付近の位置とに、気流を二系統に分岐する分岐部73,73が設けられ、上流側の分岐部73と下流側の分岐部73との間において仮ホース6を接続できるようにされたものである。但し、通常時(常用ホース4に破損が発生していない場合)において、少なくとも押出ラム2側に位置する仮ホース接続部71に仮ホース6は接続されない。本実施形態では、仮ホース6の長さは常用ホース4破損の際に臨時的に用いることのできる最小限の長さとされており、通常時における押出ラム2の前後移動には対応できないからである。なお、押出機1の本体側の仮ホース接続部71については、常時仮ホース6が接続されていてもよいし、接続がされず、仮ホース6を押出機1内外に別途保管してもよい。
【0032】
本実施形態では仮ホース6の接続は手動で行われるが、例えば、アクチュエータ等を設置しておき、接続が自動でなされるよう構成されてもよい。また、仮ホース接続部71の具体的な接続方式は、カプラー(例えば、いわゆる「タケノコ」)、ねじ、フランジ等、種々の接続方式を採用できる。
【0033】
また、本実施形態では、巻取機52は押出機1の2階部分に設置され、押出ラム2は押出機1の1階部分に設置される。このため、前記臨時空気経路L2は、巻取機52側の分岐部73から押出ラム2の近傍までは鋼管等からなる固定配管を押出機1の本体に設置しておき、仮ホース接続部71を押出ラム2の近傍に位置させて構成することが、必要な仮ホース6の長さが短くなることにより、仮ホース6がからみにくくなって取り扱いが容易とできるため好ましい。
【0034】
切換バルブ72は、常用ホース4を通る常用空気経路L1と、仮ホース6を通る臨時空気経路L2とを切り換えることができるものである。本実施形態の切換バルブ72は、図2に示すように分岐部73に隣接し、二系統に分岐された各空気経路L1,L2にそれぞれ配置されているが、これに限られず、例えば分岐部73に三方弁が配置されていてもよい。
【0035】
また、押出機1には、常用ホース4から空気が漏れていることを検知する検知部81と、検知部81が作動したことを報知する報知部82とが備えられている。報知部82は、本実施形態では押出機1上の操作室Mに位置しているが、例えば押出機1を遠隔操作する場合等には、押出機1から離れた位置に設けられていてもよい。
【0036】
検知部81は、常用ホース4から空気が漏れていることを直接的または間接的に検知できればよく、種々の構成を採用できる。例えば、常用空気経路L1中に圧力センサーを設置しておき、圧力の低下を検知することにより空気漏れを検知することができる。また、常用空気経路L1中に流量計を設置しておき、流量の低下を検知することにより空気漏れを検知することができる。また、カメラ等に設置した温度センサーにより、機器温度の上昇を検知することにより空気漏れを検知してもよい。
【0037】
報知部82は、押出機1のオペレーター等に検知部81が作動したこと(空気漏れを検知したこと)を報知できるものであればよく、液晶ディスプレイ、LED、ブザー等の種々の装置を用いることができる。
【0038】
検知部81と報知部82とを備えたことにより、オペレーター等が常用ホース4の破損を迅速に把握でき、仮ホース6を接続して観察機器3を冷却することへ移行するタイムラグを小さくできる。
【0039】
次に、前記のように構成された押出機1の操作方法について説明する。図3に示すように、操業中(ステップS1)に、検知部81が作動したことにより報知部82による報知があった際(ステップS2)、押出ラム2が炭化室C外の定位置(図1に実線で示した位置)にあるか否かを判断する(ステップS3)。ステップS3において押出ラム2が定位置にある場合はステップS5に進む。一方、押出ラム2が定位置にない場合はコークスの炭化室Cからの押出し作業を最後まで完了させて、押出ラム2を定位置へ移動させる(ステップS4)。なお、ステップS4にかかる時間は数十秒であってそう長くないため、観察機器3が高熱で故障するまでには定位置へ移動させることができる。
【0040】
その後、あらかじめ用意されていた仮ホース6を仮ホース接続部71に接続する(ステップS5)。そして、切換バルブ72のうち、臨時空気経路(バイパスライン)L2を開閉するものを開き(ステップS6)、常用空気経路(メインライン)L1を開閉するものを閉じる(ステップS7)。つまり、切換バルブ72を臨時空気経路L2に空気を通すように切り換える。これ以降は、臨時空気経路L2に通された空気で観察機器3の冷却がなされる(ステップS8)。なお、空気経路の切り換えを行った後も、機器用電気等配線53は継続して使用される。
【0041】
冷却は観察機器3が常温に下がるまでなされ、その後、常用ホース4及び常用ホース4内に配置された機器用電気等配線53の一部(存在する場合)を交換して常用空気経路L1を復旧する。常用ホース4の破損状況が軽い場合には、ホース全体の交換は行わず、常用ホース4の破損箇所を空気漏れしないように補修するにとどめる場合もある。
【0042】
ここで、従来の押出機では、停電が起こると空気供給手段を構成するコンプレッサーが停止するため、予備的に用いるエンジン駆動のコンプレッサーを設置することで停電対策がなされていた。しかしながら、ホースの破損に対する対策はなされていなかったのが実情であった。これに対して本実施形態では、常用ホース4を含んで構成される常用空気経路L1に対して、バイパスとなる臨時空気経路L2を形成する仮ホース6を接続可能に構成されている。このため、常用ホース4の破損によりホース内の空気の供給量が低下したり0になったりしても、仮ホース6を接続して臨時空気経路L2を形成することにより、観察機器3に炉外の空気を当てて冷却することを継続できる。その結果、常用ホース4が破損した場合であっても、観察機器3が高熱で故障することを抑制できるのである。
【0043】
本実施形態は前述した通りであるが、本発明に係る押出機及び押出機の操作方法は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 押出機
2 押出ラム
221 冷却用空気管路
3 観察機器
4 常用ホース
54 ターミナル部
6 仮ホース
71 仮ホース接続部
72 切換バルブ
81 検知部
82 報知部
C 炭化室
L1 常用空気経路
L2 臨時空気経路
図1
図2
図3