特許第6293061号(P6293061)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6293061可撓性のナノワイヤをベースにした太陽電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6293061
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】可撓性のナノワイヤをベースにした太陽電池
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0352 20060101AFI20180305BHJP
【FI】
   H01L31/04 342B
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-555379(P2014-555379)
(86)(22)【出願日】2013年2月4日
(65)【公表番号】特表2015-509657(P2015-509657A)
(43)【公表日】2015年3月30日
(86)【国際出願番号】IB2013050943
(87)【国際公開番号】WO2013118048
(87)【国際公開日】20130815
【審査請求日】2016年1月26日
(31)【優先権主張番号】61/595,728
(32)【優先日】2012年2月7日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516043960
【氏名又は名称】フィリップス ライティング ホールディング ビー ヴィ
(74)【代理人】
【識別番号】100163821
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 沙希子
(72)【発明者】
【氏名】ディーデンホーフェン シルケ ルジア
(72)【発明者】
【氏名】デ ボーア ディルク コルネリス ヘルハルドス
【審査官】 佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−261666(JP,A)
【文献】 特開2010−028092(JP,A)
【文献】 特開2011−138804(JP,A)
【文献】 特表2010−538464(JP,A)
【文献】 特表2005−538573(JP,A)
【文献】 特表2008−544529(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/005462(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0240099(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00−31/078、31/18−31/20、
51/42−51/48
H02S 10/00−10/40、30/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
p/nをドープした半導体ナノワイヤの層と、少なくとも1つのポリマ層とを有する太陽電池であって、前記p/nをドープした半導体ナノワイヤの層が、複合層を形成するよう、前記ポリマ層に部分的に埋め込まれ、前記ポリマ層が、第1面及び第2面を持ち、動作状態において、前記第1面が、前記第2面と比べて、入射位置にある入射光に対してより近く、前記pnをドープした半導体ナノワイヤの上部が、前記ポリマ層の前記第1面から突き出ており、
前記第1面の面積が、前記第2面の面積より大きくなり、前記複合層の有効屈折率が、前記第1面の近くにおいて、空気の屈折率と一致すると共に、前記p/nをドープした半導体ナノワイヤの平均体積密度が、前記第1面の近くと比べて、前記第2面の近くにおいて、より高くなるように、前記複合層が曲げられている太陽電池。
【請求項2】
前記第1面の少なくとも一部が、少なくとも1つの方向に湾曲している請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記pnをドープした半導体ナノワイヤの大部分が、前記第1面に対して本質的に垂直である方向に配向される請求項1に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記pnをドープした半導体ナノワイヤの層が、少なくとも1つの方向において周期構造を持つ請求項1乃至3のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記ポリマ層の前記第1面及び前記第2面が、本質的に平行に整列される請求項1乃至4のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項6】
透明導電酸化物から作成される最上層を更に有し、前記最上層が、動作状態において、前記第1面と比べて、前記入射位置にある前記入射光に対してより近い、より上の第3面を持つ請求項1乃至5のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項7】
金属によって形成される底部層を更に有し、前記底部層が、前記p/nをドープした半導体ナノワイヤの大部分及び前記ポリマ層の前記第2面と接触する請求項1乃至6のいずれか一項に記載の太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ナノワイヤを有する太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
光電池又は太陽電池の分野において、ポリマ誘電材料に埋め込まれるp/nをドープした半導体ナノワイヤを用いることが提案されている。半導体ナノワイヤは、一般に、エピタキシャル成長のための結晶基板における有機金属気相成長(MOVPE)又は分子線エピタキシ(MBE)などの化学蒸着技術によって成長させられる。通常、ナノワイヤの成長は、ナノワイヤの直径を規定する金属触媒粒子によって引き起こされる。金属触媒粒子は、基板上に金の薄膜を堆積させることによって、又は整列が必要とされる場合には、SCIL(substrate-conformal imprint lithography)のようなナノインプリント技術によって、構造化され得る。この技術を用いて、半径方向及び軸方向のpn接合の成長、並びにヘテロエピタキシャル成長が、実証されている。ナノワイヤは、<111>結晶学的方向に優先的に成長し、故に、(111)基板上で成長させられるナノワイヤは、垂直配向のものである。成長した垂直配向ナノワイヤは、ポリマに埋め込まれることができ、これは、基板からのナノワイヤの拭い取りを可能にし、別の成長の実施のための基板の再使用を可能にする。この種の半導体ナノワイヤ光起電装置は、例えば、文献US 2011/0240099 A1に記載されている。
【0003】
可撓性構造及び向上した効率を示す半導体ナノワイヤを用いる太陽電池を提供することは望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それ故、本発明の目的は、機械的に安定しており、可撓性であり、入射光を変換する効率の向上も示す、半導体ナノワイヤをベースにした太陽電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の或る態様においては、前記目的は、p/nをドープした半導体ナノワイヤの層と、少なくとも1つのポリマ層とを有する太陽電池であって、前記p/nをドープした半導体ナノワイヤの層が、前記ポリマ層に部分的に埋め込まれる太陽電池によって達成される。前記ポリマ層は、第1面及び第2面を持ち、動作状態において、前記第1面は、前記第2面と比べて、入射位置にある入射光に対してより近い。更に、前記第1面の面積は、前記第2面の面積より大きい。本願において用いられている「面の面積」という表現は、詳細には、前記面に対して平行であり、同じ境界線によって境界をつけられる総面積全体として理解されるべきであり、これは、詳細には、前記面の領域から突き出る如何なる物体によって占められる前記面の領域の一部も、前記面の領域から減算されるべきでないことを意味する。
【0006】
本発明は、前記第1面の面積が前記第2面の面積より大きいことで、前記半導体ナノワイヤの体積密度が、前記第2面の近くと比べて、前記第1面の近くにおいて、より低くなるという概念に基づいている。
【0007】
これの効果は、2要素から成る。1つには、前記ポリマ層及び前記少なくとも部分的に埋め込まれるp/nをドープした半導体ナノワイヤの層から成る複合層の有効屈折率も、前記第1面の近くにおいて最も低く、空気の屈折率と一致するように、変えられる。前記入射光の反射分は、空気/複合層境界面の近くにおける空気の屈折率と前記複合層の有効屈折率との差の二乗に比例するので、これは、前記入射光の前記複合層内へのほぼ完璧な結合を可能にするだろう。適している実施例においては、如何なる反射防止(AR)コーティングも用いずに前記入射光の前記複合層内への結合の実質的な改善が達成され得る。
【0008】
第2に、前記第1面の面積が前記第2面の面積より大きいことで、前記半導体ナノワイヤの体積密度が、前記第1面の近くと比べて、前記第2面の近くにおいて、より高くなる。これは、前記第2面の近くにおけるより高い吸収媒体密度をもたらし、そこでの最大吸収を可能にする。
【0009】
更に、材料の選択により、結果として生じる太陽電池は、軽量であり、且つコスト効率が高い。それらの構造の固有の可撓性は、本発明の太陽電池を、街灯の柱、又は他の電子的に制御される標識、例えば、ハイウェイにおける速度標識などのまわりに取り付けられるのに優れたものにする。
【0010】
本発明の別の態様においては、前記第1面の少なくとも一部が、少なくとも1つの方向に湾曲している。それによって、前記第1面のより大きな面積が、容易に達成され得る。或る実施例においては、前記第1面の前記一部は、円筒のように湾曲させられてもよく、前記第1面が湾曲させられる方向は、前記円筒の中心軸のまわりの方位方向である。更に別の実施例においては、前記第1面の前記一部は、交差する又はとりわけ互いに対して垂直である2つの方向に湾曲させられてもよく、球状キャップの形状又はより一般的には楕円体表面の一部の形状を持つ前記第1面をもたらす。
【0011】
本発明の他の態様においては、前記pnをドープした半導体ナノワイヤの上部が、前記ポリマ層の前記第1面から突き出ており、従って、前記半導体ナノワイヤの前記上部と電気的に接続するための容易なアクセスを供給する。
【0012】
前記pnをドープした半導体ナノワイヤの大部分を前記第1面に対して本質的に垂直である方向に配向することによって、前記第1面から前記第2面に向かう方向における前記複合層の有効屈折率の単調増加が得られ得る。本願において用いられる「本質的に垂直」という表現は、詳細には、前記ナノワイヤの配向は、前記第1面に対して垂直である配向から、30°までの角度だけ、好ましくは、20°までの角度だけ、より好ましくは、10°までの角度だけ異なり得るというように理解されるべきである。境界に入射する光の反射の原因となる屈折率の観点からの境界がないため、前記入射光の如何なる反射も防止されることができ、これは、前記入射光のほぼ全てが、前記太陽電池内で捕らえられるだろうこと意味する。好ましくは、前記p/nをドープした半導体ナノワイヤは、マイクロメートルのレンジ内の長さを持つ。
【0013】
好ましい実施例においては、前記pnをドープした半導体ナノワイヤの層は、少なくとも1つの方向において周期構造を持つ。本願において用いられる「周期構造」という表現は、詳細には、構造であって、前記構造の或る特徴が、少なくとも1つの方向において規則的な距離において繰り返される構造として理解されるべきである。前記繰り返される特徴は、前記構造の幾つかの特徴の組み合わせを含み得る。前記距離は、好ましくは、100nmと1500nmとの間の範囲内にある。それによって、前記入射光の均一な屈折条件が達成可能であり得る。
【0014】
本発明の別の態様においては、前記ポリマ層の前記第1面及び前記第2面は、本質的に平行に整列される。本願において用いられる「本質的に整列される」という表現は、詳細には、完璧な整列からのずれが、前記第1面と前記第2面との間の平均距離の20%より小さく、好ましくは、10%より小さいというように理解されるべきである。これは、埋め込まれた半導体ナノワイヤを備える平板状ポリマ層からの、単純な曲げるプロセスによる、前記第2面の面積より大きい前記第1面の面積の容易な実現を可能にし得る。
【0015】
本発明の別の態様においては、前記太陽電池は、透明導電酸化物(TCO)から作成される最上層を更に有し、前記最上層は、動作状態において、前記第1面と比べて、前記入射位置にある前記入射光に対してより近い、より上の第3面を持つ。それによって、適している実施例においては、前記pnをドープした半導体ナノワイヤに対する透明な電気接続が達成されることができ、湾曲した第1面も持つ。好ましくは、前記最上層と前記半導体ナノワイヤとの間に供給される前記電気接続は、オーミック接触である。
【0016】
好ましくは、前記太陽電池は、金属によって形成される底部層を更に有してもよく、前記底部層は、前記p/nをドープした半導体ナノワイヤの大部分及び前記ポリマ層の前記第2面と接触する。従って、前記第2面の近くにおける前記pnをドープした半導体ナノワイヤとの電気接続の容易な実現が、達成されることができ、前記半導体ナノワイヤに面する好ましくは光沢のある金属面による入射光の反射も達成されることができ、故に、前記入射光の光路長は、前記層の最初の通過中に吸収されない光を前記光沢のある面において反射することによって、増加させられる。
【0017】
下記の実施例を参照して、本発明のこれら及び他の態様を説明し、明らかにする。しかしながら、このような実施例は、必ずしも、本発明の全範囲を表すものではなく、本願明細書において本発明の範囲を解釈するためには、請求項に対する参照がなされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】半導体ナノワイヤの層を平面図及び傾斜上面図で図示する。
図2】製造の中間ステップにおける図1の半導体ナノワイヤ及びポリマの複合層の概略的な断面図を示す。
図3】製造のより後のステップにおける図1の半導体ナノワイヤ及びポリマ層の複合層の概略的な断面図を示す。
図4】空気/複合層境界に対する距離と図2の複合層の有効屈折率の関数依存性を図示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、層12の面内にあり、互いに垂直に配設される2つの方向26、28において周期構造を持つ半導体ナノワイヤ22の層12を示している。周期構造のピッチ30は、両方の方向26、28において約515nmである。
【0020】
半導体ナノワイヤ22は、有機金属気相成長によって(111)半導体基板上に成長させられ、基板の面に対して垂直に配向され、約3μmの平均長さを持つ。半導体ナノワイヤ22の各々は、軸方向pn接合を呈する。成長後、スピンコーティングによって、半導体ナノワイヤ22上にポリマ層10が付される。ポリマ層10は、第1面32及び第2面34を持ち、これらの両方が、図2の断面図に図示されているように、半導体基板の面に対して平行に整列される。第1面32及び第2面34は、破線によって示されている。それ故、pnをドープした半導体ナノワイヤ22の大部分は、第1面32に対して垂直である方向38に配向される。
【0021】
ポリマ層10及びp/nをドープした半導体ナノワイヤ22の層12は、p/nをドープした半導体ナノワイヤ22の層12がポリマ層10に部分的に埋め込まれ、pnをドープした半導体ナノワイヤ22の上部24がポリマ層10の第1面32から突き出るような複合層14を形成する。次のステップにおいて、複合層14は、下にある半導体基板からかみそりの刃を用いて機械的に取り除かれる。図2は、半導体基板の除去後の複合層を示しており、半導体基板は、洗浄後に再使用可能であり、それによって、製造コストが低下させられる。
【0022】
次いで、複合層14は、第1面32全体が、第1半径40を持つ円筒面の一部の形状を構築するよう湾曲させられるように曲げられる(図3)。第1面32及び第2面34は互いに対して平行に整列したままであり、故に、第2面34も、より小さい第2半径42の別の円筒面の形状を持つ。従って、曲げるプロセスによって、第1面32の面積は、明らかに、第2面34の面積より大きくなる。
【0023】
曲げた結果として、周期構造のピッチ30より大きい辺長を持つ立方体の体積にわたる半導体ナノワイヤ22の平均体積密度は、第2面34の近くと比べて、第1面32の近くにおいて、より低くなる。従って、複合層14の有効屈折率neffも、第1面32の近くで最も低くなり、第2面34の近くで最も高くなるように変えられる(図4)。複合層14の曲げ加工は、第1面32に対する距離に関して有効屈折率neffの所望の依存性が達成されるように実行される。完成後、太陽電池は、入射光20が、第2面34に到達する前に第1面32を通過するように、配設される必要がある。
【0024】
太陽電池の他の製造ステップにおいて、第2面34上に金属底部層18が蒸着又はスパッタリングされる(図3)。金属底部層18は、p/nをドープした半導体ナノワイヤ22及びポリマ層10の第2面34と接触する。金属は、その仕事関数が、第2面34の近くにおいてp/nをドープした半導体ナノワイヤ22とのオーミック接触を供給するように、選択される。金属底部層18は、ポリマ層10の第2面34に面する光沢のある面44を持ち、故に、太陽電池には、光反射器が備わっており、第1面32から底部層18への第1経路中に吸収されなかった入射光20は、前記構造から漏れることができず、引き続き吸収され、従って、太陽電池の変換効率を向上させる。
【0025】
太陽電池の製造の更に別のステップにおいて、複合層14の上部における透明導電酸化物(TCO)の蒸着又はスパッタリングによって最上層16が形成される。最上層16は、より上の第3面36を形成する(図3)。更に、最上層16は、p/nをドープした半導体ナノワイヤ22とのオーミック接触を構築する。
【0026】
図3は、動作可能な状態の太陽電池を示している。第1面32は、第2面34と比べて、入射位置にある入射光20に対してより近く、第3面36は、第1面32と比べて、入射位置にある入射光20に対してより近い。図4に示されているように、太陽電池の複合層14の屈折率neffは、空気と透明導電酸化物(TCO)層との間の境界を形成する第3面36において階段状に上昇し、第1面32からの距離と共に、半導体ナノワイヤ22の体積密度の増加により、ゆっくりと増加していく。
【0027】
本発明を、図面において図示し、上記の説明において詳細に説明しているが、このような図及び説明は、説明的なもの又は例示的なものとみなされるべきであって、限定するものとみなされるべきではない。本発明は、開示されている実施例に限定されない。請求項に記載の発明を実施する当業者は、図面、明細及び添付の請求項の研究から、開示されている実施例に対する他の変形を、理解し、達成し得る。請求項において、「有する」という用語は、他の要素又はステップを除外せず、単数形表記は、複数の存在を除外しない。単に、特定の手段が、相互に異なる従属請求項において引用されているという事実は、これらの手段の組み合わせが有利になるように用いられることができないことを示すものではない。請求項におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されてはならない。
【符号の説明】
【0028】
10 ポリマ層
12 半導体ナノワイヤの層
14 複合層
16 最上層
18 底部層
20 入射光
22 半導体ナノワイヤ
24 上部
26 方向
28 方向
30 ピッチ
32 第1面
34 第2面
36 第3面
38 方向
40 第1半径
42 第2半径
44 光沢のある面
neff 有効屈折率
図1
図2
図3
図4