【実施例】
【0034】
実施例1
(1)前処理:
厚さが1mmである市販のA5052アルミニウム合金プレートを18mm×45mmの矩形シートに切断し、次いで、これらを40g/LのNaOH水溶液に浸漬した。NaOH水溶液の温度は40℃であった。1分後、矩形シートを水で洗浄し、乾燥して、前処理されたアルミニウム合金シートを得た。
【0035】
(2)表面処理1:
陽極としての各アルミニウム合金シートを、20wt%のH
2SO
4溶液を含有する陽極酸化浴に置き、アルミニウム合金を20Vの電圧で18℃にて10分間、電解処理し、次いで、アルミニウム合金シートをドライヤーで乾燥した。
【0036】
表面処理1の後のアルミニウム合金シートの断面を金属顕微鏡によって観察して、厚さが5μmである酸化アルミニウム層が電解処理後のアルミニウム合金シートの表面に形成されたことを見出した。表面処理1の後のアルミニウム合金シートの表面を電子顕微鏡によって観察して、平均細孔サイズが約40nm〜約60nmであり、かつ、深さが1μmであるナノ細孔が酸化アルミニウム層に形成されたことを見出した。
【0037】
(3)表面処理2:
温度が20℃である500mlの10wt%炭酸ナトリウム溶液(pH=12)をビーカーにおいて調製した。工程(2)の後のアルミニウム合金シートをこの炭酸ナトリウム溶液に浸漬し、5分後に取り出し、浸漬される水を含有するビーカーに1分間置いた。5サイクルの後、最後に水に浸漬した後、アルミニウム合金シートをドライヤーで乾燥した。
【0038】
表面処理2の後のアルミニウム合金シートの表面を電子顕微鏡によって観察して、平均細孔サイズが300nm〜1000nmであり、かつ、深さが4μmである腐食細孔が浸漬後のアルミニウム合金シートの表面に形成されたことを見出した。酸化アルミニウム層における二重層の三次元細孔構造が存在したこと、および腐食細孔がナノ細孔と連通していたことも観察することができる。
【0039】
(4)成形:
46重量部のポリフェニレンエーテル(PPO)(ZhongLanChenGuang PPO LXR040)、23重量部のポリフェニレンスルフィド(PPS)(SiChuanDeYang PPS−HC1)、3重量部の流動度改善剤の環状ポリカルボナート(CBT100)、8重量部の、65℃の融点を有するグラフト化ポリエチレン(Arkema Lotader AX8900)、および20重量部のガラス繊維(ZheJiangJuShi 988A)を秤量し、均一に混合して、樹脂混合物を得る。次いで、射出成形機を使用して、溶融した樹脂混合物を工程(3)の後のアルミニウム合金シートの表面に射出成形して、本実施例における金属−樹脂複合材S1を得た。
【0040】
実施例2
本実施例における金属−樹脂複合材S2を、下記の点を除いて、実施例1における方法と実質的に同じである方法によって調製した。
【0041】
工程(1)において、実施例1におけるアルミニウム合金プレートの代わりに、厚さが3mmである市販のマグネシウム合金プレートを18mm×45mmの矩形シートに切断した。
【0042】
工程(2)において、陽極としての各マグネシウム合金シートを、20wt%のH
2SO
4溶液を含有する陽極酸化浴に置き、マグネシウム合金を15Vの電圧で18℃にて10分間、電解処理し、次いで、マグネシウム合金シートをドライヤーで乾燥した。
【0043】
表面処理1の後のマグネシウム合金シートの断面を金属顕微鏡によって観察して、厚さが5μmである酸化マグネシウム層が電解処理後のマグネシウム合金シートの表面に形成されたことを見出した。表面処理1の後のマグネシウム合金シートの表面を電子顕微鏡によって観察して、平均細孔サイズが20nm〜40nmであり、かつ、深さが1μmであるナノのミクロ細孔が酸化マグネシウム層に形成されたことを見出した。
【0044】
表面処理2の後のマグネシウム合金シートの表面を電子顕微鏡によって観察して、平均細孔サイズが300nm〜1000nmであり、かつ、深さが4μmである腐食細孔が浸漬後のマグネシウム合金シートの表面に形成されたことを見出した。酸化マグネシウム層における二重層の三次元細孔構造が存在したこと、および、腐食細孔がナノ細孔と連通していたことも観察することができる。
【0045】
上記工程の後、本実施例における金属−樹脂複合材S2を得た。
【0046】
実施例3
本実施例における金属−樹脂複合材S3を、下記の点を除いて、実施例1における方法と実質的に同じである方法によって調製した。
【0047】
工程(2)において、陽極としての各アルミニウム合金シートを、20wt%のH
2SO
4溶液を含有する陽極酸化浴に置き、アルミニウム合金を40Vの電圧で18℃にて10分間、電解処理し、次いで、アルミニウム合金シートをドライヤーで乾燥した。
【0048】
表面処理1の後のアルミニウム合金シートの断面を金属顕微鏡によって観察して、厚さが5μmである酸化アルミニウム層が電解処理後のアルミニウム合金シートの表面に形成されたことを見出した。表面処理1の後のアルミニウム合金シートの表面を電子顕微鏡によって観察して、平均細孔サイズが60nm〜80nmであり、かつ、深さが1μmであるナノ細孔が酸化アルミニウム層に形成されたことを見出した。
【0049】
表面処理2の後のアルミニウム合金シートの表面を電子顕微鏡によって観察して、平均細孔サイズが300nm〜1000nmであり、かつ、深さが4μmである腐食細孔が浸漬後のアルミニウム合金シートの表面に形成されたことを見出した。酸化アルミニウム層における二重層の三次元細孔構造が存在したこと、および腐食細孔がナノ細孔と連通していたことも観察することができる。
【0050】
上記工程の後、本実施例における金属−樹脂複合材S3を得た。
【0051】
実施例4
本実施例における金属−樹脂複合材S4を、下記の点を除いて、実施例1における方法と実質的に同じである方法によって調製した。
【0052】
工程(4)において、35重量部のポリフェニレンエーテル(PPO)(ZhongLanChenGuang PPO LXR040)、35重量部のポリフェニレンスルフィド(PPS)(SiChuanDeYang PPS−HC1)、10重量部の流動度改善剤のエポキシドオリゴエステル(CBT100)、8重量部の、105℃の融点を有するグラフト化ポリエチレン(Arkema Lotader AX8900)、および20重量部のガラス繊維(ZheJiangJuShi 988A)を秤量し、次いで、射出成形機を使用して、溶融した樹脂混合物を工程(3)の後のアルミニウム合金シートの表面に射出成形して、本実施例における金属−樹脂複合材S4を得た。
【0053】
実施例5
本実施例における金属−樹脂複合材S5を、下記の点を除いて、実施例2における方法と実質的に同じであった方法によって調製した。
【0054】
工程(4)において、59重量部のポリフェニレンエーテル(PPO)(ZhongLanChenGuang PPO LXR040)、30重量部のポリフェニレンスルフィド(PPS)(SiChuanDeYang PPS−HCL)、3重量部の流動度改善剤のエポキシドオリゴエステル(CBT100)、および8重量部の、65℃の融点を有するグラフト化ポリエチレン(Arkema Lotader AX8900)を秤量し、樹脂混合物を均一な混合の後で得た。次いで、射出成形機を使用して、溶融した樹脂混合物を工程(3)の後のアルミニウム合金シートの表面に射出成形して、本実施例における金属−樹脂複合材S5を得た。
【0055】
比較例1
本比較例における金属−樹脂複合材DS1を、下記の点を除いて、実施例1における方法と実質的に同じであった方法によって調製した。
【0056】
工程(4)において、51重量部のポリフェニレンエーテル(PPO)(ZhongLanChenGuang PPO LXR040)、26重量部のポリフェニレンスルフィド(PPS)(SiChuanDeYang PPS−HCL)、3重量部の流動度改善剤のエポキシドオリゴエステル(CBT100)、および20重量部のガラス繊維(ZheJiangJuShi 988A)を秤量し、樹脂混合物を均一な混合の後で得た。次いで、射出成形機を使用して、溶融した樹脂混合物を工程(3)の後のアルミニウム合金シートの表面に射出成形して、本比較例における金属−樹脂複合材DS1を得た。
【0057】
比較例2
本比較例における金属−樹脂複合材DS2を、下記の点を除いて、実施例1における方法と実質的に同じであった方法によって調製した。
【0058】
工程(4)において、89重量部のポリフェニレンスルフィド(PPS)(SiChuanDeYang PPS−HCL)、3重量部の流動度改善剤のエポキシドオリゴエステル(CBT100)、および8重量部の、105℃の融点を有するグラフト化ポリエチレン(Arkema Lotader AX8900)、樹脂混合物を均一な混合の後で得た。次いで、射出成形機を使用して、溶融した樹脂混合物を工程(3)の後のアルミニウム合金シートの表面に射出成形して、本比較例における金属−樹脂複合材DS2を得た。
【0059】
比較例3
本比較例における金属−樹脂複合材DS3を、下記の点を除いて、実施例1における方法と実質的に同じであった方法によって調製した。
【0060】
工程(4)において、91重量部のポリフェニレンスルフィド(PPS)(SiChuanDeYang PPS−HCL)、3重量部の流動度改善剤のエポキシドオリゴエステル(CBT100)、および8重量部の、105℃の融点を有するグラフト化ポリエチレン(Arkema Lotader AX8900)を秤量し、樹脂混合物を均一な混合の後で得た。次いで、射出成形機を使用して、溶融した樹脂混合物を工程(3)の後のアルミニウム合金シートの表面に射出成形し、物品全体を180℃でのアニール処理に1時間供して、本比較例における金属−樹脂複合材DS3を得た。
【0061】
比較例4
本比較例における金属−樹脂複合材DS4を、下記の点を除いて、実施例1における方法と実質的に同じであった方法によって調製した。
【0062】
工程(4)において、84重量部のポリフェニレンスルフィド(PPS)(SiChuanDeYang PPS−HCL)、3重量部の流動度改善剤のエポキシドオリゴエステル(CBT100)、8重量部の、105℃の融点を有するグラフト化ポリエチレン(Arkema Lotader AX8900)、および5重量部の柔軟剤(Arkema Lotader AX8840)を秤量し、樹脂混合物を均一な混合の後で得た。次いで、射出成形機を使用して、溶融した樹脂混合物を工程(3)の後のアルミニウム合金シートの表面に射出成形し、物品全体を180℃でのアニール処理に1時間供して、本比較例における金属−樹脂複合材DS4を得た。
【0063】
性能試験
1)金属−樹脂複合材S1〜S4およびDS1〜DS4を引張試験用の万能試験機に固定して、それらの最大負荷をそれぞれ得た。試験結果を表1に示した。
2)金属−樹脂複合材S1〜S4およびDS1〜DS4の標準サンプルの衝撃強度を、ASTM D256に開示される方法に従って片持ち梁衝撃試験機を使用して試験した。
試験結果を表1に示した。
【0064】
【表1】
【0065】
金属−樹脂複合材S1〜S5が19MPa〜22MPaの破壊強度を有すること(このことは、金属−樹脂複合材S1〜S5における金属シートとプラスチック層との間の連結力が非常に強いことを示している)、および金属−樹脂複合材S1〜S5が270J/m〜350J/mの衝撃強度を有すること(このことは、金属−樹脂複合材S1〜S5が高い機械的強度を有することを示している)が、表1における試験結果から分かる。
【0066】
金属−樹脂複合材S1の試験結果を金属−樹脂複合材DS3およびDS4の試験結果と比較することによって、先行技術において使用されるポリフェニレンオキシド樹脂の靭性が非常に不良であり、靭性が、強化剤により改質される場合でさえ依然として不良であることが分かる。
【0067】
説明的な実施形態が示され、記載されているが、上記の実施形態は、本開示を限定すると解釈され得ないこと、また、変更、代替および改変を、本開示の精神、原理および範囲から逸脱することなく、該実施形態においてなし得ることが、当業者によって理解されよう。