特許第6293077号(P6293077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6293077-水門開閉器の補助駆動装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6293077
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】水門開閉器の補助駆動装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/20 20060101AFI20180305BHJP
【FI】
   E02B7/20 109
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-40220(P2015-40220)
(22)【出願日】2015年3月2日
(65)【公開番号】特開2016-160650(P2016-160650A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2016年10月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】510220622
【氏名又は名称】谷 一身
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】谷 一身
【審査官】 岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−326040(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/090984(WO,A1)
【文献】 特開2011−089286(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3175435(JP,U)
【文献】 特開昭63−161210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/20−7/54,8/02−8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲートを昇降するスクリュー軸、該スクリュー軸に噛合する雌ねじを内側に有するウォームホイル、該ウォームホイルを駆動するウォーム、及び該ウォームを駆動し、手動ハンドルが取付け可能な水平軸を備えた前記ゲートの昇降機構と、該昇降機構が内装されたケーシングとを有する水門開閉器に付設する補助駆動装置であって、
前記ケーシングに支持手段を介して高さ調整可能に取付けられるギアボックスと、前記ギアボックス内にあって第1の軸受によって支持され、使用にあっては前記水平軸に連結される第1の駆動軸と、該第1の駆動軸に取付けられた第1のギアと、前記第1のギアに直接又は仲介ギア機構を介して連結された第2のギアと、第2の軸受によって支持され、前記第2のギアを回転可能に支持する第2の駆動軸とを有し、
前記ギアボックスは、断面円形の管材と、該管材の一側に溶接固定された底材と、前記管材の他側に設けられ、該管材にねじ止め可能な蓋材とを有し、
前記第1の駆動軸の他側には、前記手動ハンドル又は別の手動ハンドルが取付け可能なハンドル取付け手段が設けられ、
前記第2の駆動軸には一側から他側にかけて、市販の電動工具のチャックに取付けられた断面多角形の回転伝達具が嵌入する角孔が設けられていると共に、前記蓋材の所定位置には前記電動工具に取付け金具を介して取付けられた水平ロッドが嵌入する貫通孔が設けられ、前記電動工具で前記第2の駆動軸を回転させた場合の反回転力を防止し、かつ前記水平ロッドと前記貫通孔を有して、前記第2の駆動軸に前記回転伝達具が正規の連結状態を保つ保持手段を構成することを特徴とする水門開閉器の補助駆動装置。
【請求項2】
請求項記載の水門開閉器の補助駆動装置において、前記仲介ギア機構は、前記第1のギアに噛合する第3のギアと、該第3のギアに軸心を合わせて固着され、前記第2のギアに噛合する第4のギアと、前記第3、第4のギアを回転可能に支持する固定軸とを有しており、前記第1〜第4のギアが減速機構を構成することを特徴とする門開閉器の補助駆動装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の水門開閉器の補助駆動装置において、前記電動工具の電源は充電式の電池であることを特徴とする水門開閉器の補助駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用水路又は揚水場の水路等の各種の水路に配置された水門開閉器に取付けて使用し、特に、回転駆動源として電動工具を用いる水門開閉器の補助駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
比較的小型の従来の水門開閉器は、手動のハンドル操作によって駆動軸を回転し、歯車機構によって減速し、大きな力を発生させて水門の開閉を行うようにしている。
しかしながら、人力で水門を開閉する場合には、十分な力と時間を必要とし、極めて作業性が悪いという問題があった。
そこで、特許文献1に示すように、電池駆動の電動工具をギアボックス(ケーシング)に内蔵し、ドリル等を取付けるチャックに駆動軸を装着し、歯車によって減速し、水門開閉器の駆動軸を時計方向又は反時計方向に回転駆動する構造となった電動式の水門開閉器が提案されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−89286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の電動水門開閉器においては、各水門開閉器毎に電動工具を必要とし、更にギアボックス内に電動工具を収納する空間も必要であるので、全体的に嵩張るという問題があった。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、電動工具(「電動ドライバー/電動ドリル」をいう)を動力源として用いた、全体として小型で安価な水門開閉器の補助駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係る水門開閉器の補助駆動装置は、ゲートを昇降するスクリュー軸、該スクリュー軸に噛合する雌ねじを内側に有するウォームホイル、該ウォームホイルを駆動するウォーム、及び該ウォームを駆動し、手動ハンドルが取付け可能な水平軸を備えた前記ゲートの昇降機構と、該昇降機構が内装されたケーシングとを有する水門開閉器に付設する補助駆動装置であって、
前記ケーシングに支持手段を介して高さ調整可能に取付けられるギアボックスと、前記ギアボックス内にあって第1の軸受によって支持され、使用にあっては前記水平軸に連結される第1の駆動軸と、該第1の駆動軸に取付けられた第1のギアと、前記第1のギアに直接又は仲介ギア機構を介して連結された第2のギアと、第2の軸受によって支持され、前記第2のギアを回転可能に支持する第2の駆動軸とを有し、
前記ギアボックスは、断面円形の管材と、該管材の一側に溶接固定された底材と、前記管材の他側に設けられ、該管材にねじ止め可能な蓋材とを有し、
前記第1の駆動軸の他側には、前記手動ハンドル又は別の手動ハンドルが取付け可能なハンドル取付け手段が設けられ、
前記第2の駆動軸には一側から他側にかけて、市販の電動工具のチャックに取付けられた断面多角形の回転伝達具が嵌入する角孔が設けられていると共に、前記蓋材の所定位置には前記電動工具に取付け金具を介して取付けられた水平ロッドが嵌入する貫通孔が設けられ、前記電動工具で前記第2の駆動軸を回転させた場合の反回転力を防止し、かつ前記水平ロッドと前記貫通孔を有して、前記第2の駆動軸に前記回転伝達具が正規の連結状態を保つ保持手段を構成する
【0007】
【0008】
【0009】
本発明に係る水門開閉器の補助駆動装置において、前記仲介ギア機構は、前記第1のギアに噛合する第3のギアと、該第3のギアに軸心を合わせて固着され、前記第2のギアに噛合する第4のギアと、前記第3、第4のギアを回転可能に支持する固定軸とを有しており、前記第1〜第4のギアが減速機構を構成することもできる。
【0010】
そして、本発明に係る水門開閉器の補助駆動装置において、前記電動工具の電源は充電式の電池であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る水門開閉器の補助駆動装置は、動力源にギアボックスに取付け取外しが容易な電動工具を用いているので、電動工具を収納する部屋を設ける必要がなく、装置全体の小型化が図れ、必要な場合は、一台の電動工具で複数の水門開閉器を駆動することができる。
【0012】
特に、電池駆動型の電動工具を用いた場合は、電源のない場所に設置される水門開閉器であっても操作できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施の形態に係る水門開閉器の補助駆動装置の側面図である。
図2】(A)は同装置の一部省略側断面図、(B)は電動工具の一部側面図である。
図3】同装置のギアボックスの内部を示す正面図である。
図4】同装置の一部省略正面図である。
図5】同装置の一部省略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
続いて、添付した図面を参照しながら、本発明を具体化した実施の形態について説明する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る水門開閉器の補助駆動装置10(以下、単に、「補助駆動装置10」という)を取付ける水門開閉器11は、例えば、水門(ゲート)11aを昇降するスクリュー軸12と、スクリュー軸12に噛合する雌ねじを内側に有するウォームホイル13と、ウォームホイル13を駆動するウォーム14と、ウォーム14を駆動する水平軸15と、これらのケーシング16とを有する。そして、水平軸15、ウォーム14、ウォームホイル13、及びスクリュー軸12が水門11aの昇降機構18を形成する。また、水平軸15の他側は多角形軸(又は多角形穴)となって、この補助駆動装置10を使用しない場合には、この多角形軸又は多角形穴に係合する図示しない手動ハンドルが取付け可能となって、水平軸15を回転駆動することによって、水門11aを昇降(開閉)できるようになっている。なお、以上に記載した多角形は通常断面四角形であり、更に、一側とは図1において水門11a側Aをいい、他側とは水門11aに対して遠ざかる側Bをいう。
【0015】
図1図5に示すように、この補助駆動装置10の主要部は、断面L字状の2つの連結金具19、19a(支持手段の一例)と複数のねじ20、21とでケーシング16に高さ調整可能に固定保持されたギアボックス(カバー枠)23内に配置されている。2つの連結金具19、19aは先部(他側)が直角に曲がり、曲がった部分が溶接又はねじ等によって、ギアボックス23の片側(底材23b)に固着されている。ギアボックス23は断面円形の管材23aとその一側に溶接固定された底材23bと、管材23aの他側に設けられ、管材23aにねじ止め可能な蓋材23cとを有している。
【0016】
ギアボックス23の下内側(この実施の形態では内側下部)には、第1の駆動軸25が第1の軸受の一例であるベアリング26、27を介して回転自由に配置されている。このベアリング26、27は、ギアボックス23の底材23bに固定されたハウジング28内に固定配置されている。第1の駆動軸25の一側には、断面正方形の角孔29aが形成され、使用にあっては、水平軸15の他側に形成された多角形軸が嵌入し、第1の駆動軸25から水平軸15に回転動力の伝達ができる。ここで、水平軸15の他側に断面正方形の多角形穴が設けられている場合は、第1の駆動軸の一側には角軸が形成されている。
【0017】
第1の駆動軸25の他側には、手動ハンドル29が取付け可能な角軸30(角穴でもよい、ハンドル取付け手段の一例)が設けられている。この第1の駆動軸25は右軸部31と左軸部32を有し、右軸部31には大径の第1のギア34がキー35を介して取付けられ、左軸部32には有底円筒状の連結部材36が固着されている。そして、連結部材36は4本のねじ37によって第1のギア34に固定されている。これによって、右軸部31と左軸部32とが一体となって連結され、第1の駆動軸25を形成している。断面円形の連結部材36の周囲にはギアボックス23の蓋材23cと僅少の隙間を有して環状フランジ38が設けられ、環状フランジ38と蓋材23cとの間にはダスト防止材が設けられている。ここで、手動ハンドル29には、水平軸15の他側に形成された多角形軸に装着可能なものを使用するのが好ましいが、別タイプの手動ハンドルであってもよい。
【0018】
一方、図2(A)、(B)、図3に示すように、ギアボックス23の内側上部にはハウジング40a、41aを介して第2の軸受の一例であるベアリング40、41に回転可能に支持された第2の駆動軸42が設けられている。第2の駆動軸42の一側から他側にかけて、電動工具(具体的には電動ドリル)43のチャック44に取付けられる断面多角形(例えば、六角形)の回転伝達具45の係合手段の一例である角孔(断面六角)46が設けられている。また、第2の駆動軸42の中間には小径の第2のギア47がキー48を介して固定され、第2の駆動軸42は第2のギア47を回転可能に支持している。
【0019】
また、ギアボックス23の蓋材23cには、市販の電動工具43に取付け金具50を介して取付けられた水平ロッド51が嵌入する貫通孔52が設けられている。これによって、電動工具43が第2の駆動軸42を回転させた場合の反回転力が作業者に伝わるのを防止できる。なお、水平ロッド51と貫通孔52を有して、第2の駆動軸42に回転伝達具45が正規の連結状態を保つ保持手段が構成される。
図3に示すように、第1のギア34と第2のギア47との間には、仲介ギア機構54が設けられている。この仲介ギア機構54は中央の水平配置された固定軸55を有し、固定軸55は両端が底材23b及び蓋材23cにねじ等で固定されている。また、固定軸55は、第1のギア34に噛合する小径の第3のギア56、及び第2のギア47に噛合する中径の第4のギア57を回転可能に支持しており、第3のギア56と第4のギア57は軸心を合わせて一体構造となって同時回転するようになっている。
【0020】
従って、第2のギア47の回転は第4のギア57に伝わり、第4のギア57に一体となっている第3のギア56から第1のギア34に伝わり、電動工具43に取付けられた回転伝達具45の有するトルクを拡大して、第1の駆動軸25に伝達している。
これによって、電動工具43による回転伝達具45の回転速度を下げて、水平軸15に伝えるようになっている。即ち、第1〜第4のギア34、47、56、57は減速機構を形成している。
【0021】
なお、図2図5に示すように、ギアボックス23の一側及び他側の上部には雨除けカバー61、60が設けられ、降下する雨が内部に浸入しにくいようになっている。また、図4において、62はグリス孔で通常はゴム栓63が取付けられている。
この電動工具43は充電可能な電池64によって駆動される。
【0022】
次に、補助駆動装置10の使用方法について説明する。製造された補助駆動装置10を2本の連結金具19、19aを介して予め設置されている水門開閉器11にねじ20、21で高さ調整しながら固定する。
そして、回転伝達具45(六角棒からなる)が装着された電動工具43をギアボックス23に取付けるが、予め、水平ロッド51を取付け金具50を用いて電動工具43に取付ける。次に水平ロッド51を貫通孔52に装着すると共に、回転伝達具45を第2の駆動軸42の角孔(六角孔)46内に入れる。
【0023】
この状態で、電動工具43を正転又は逆転させて、第2のギア47、第4のギア57、第3のギア56、第1のギア34を連動させ、第1の駆動軸25を回転駆動し、水平軸15を回転する。図3において、24はねじ孔を示す。
【0024】
本発明は前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲でその構成を変更することもできる。
例えば、上記実施の形態において、仲介ギア機構を省略し、直接第2のギアで第1のギアの回転をさせることもできる。
【符号の説明】
【0025】
10:水門開閉器の補助駆動装置、11:水門開閉器、11a:水門、12:スクリュー軸、13:ウォームホイル、14:ウォーム、15:水平軸、16:ケーシング、18:昇降機構、19、19a:連結金具、20、21:ねじ、23:ギアボックス、23a:管材、23b:底材、23c:蓋材、24:ねじ孔、25:第1の駆動軸、26、27:ベアリング、28:ハウジング、29:手動ハンドル、29a:角孔、30:角軸、31:右軸部、32:左軸部、34:第1のギア、35:キー、36:連結部材、37:ねじ、38:環状フランジ、40、41:ベアリング、40a、41a:ハウジング、42:第2の駆動軸、43:電動工具、44:チャック、45:回転伝達具、46:角孔、47:第2のギア、48:キー、50:取付け金具、51:水平ロッド、52:貫通孔、54:仲介ギア機構、55:固定軸、56:第3のギア、57:第4のギア、60、61:雨除けカバー、62:グリス孔、63:ゴム栓、64:電池
図1
図2
図3
図4
図5