特許第6293088号(P6293088)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルプス電気株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6293088-回転コネクタの製造方法 図000002
  • 特許6293088-回転コネクタの製造方法 図000003
  • 特許6293088-回転コネクタの製造方法 図000004
  • 特許6293088-回転コネクタの製造方法 図000005
  • 特許6293088-回転コネクタの製造方法 図000006
  • 特許6293088-回転コネクタの製造方法 図000007
  • 特許6293088-回転コネクタの製造方法 図000008
  • 特許6293088-回転コネクタの製造方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6293088
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】回転コネクタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 35/04 20060101AFI20180305BHJP
【FI】
   H01R35/04 S
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-96628(P2015-96628)
(22)【出願日】2015年5月11日
(65)【公開番号】特開2016-213092(P2016-213092A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2016年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプス電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120204
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 巌
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(72)【発明者】
【氏名】対馬 光男
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 俊晃
(72)【発明者】
【氏名】稲田 裕二
【審査官】 竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−216922(JP,A)
【文献】 特開2001−093638(JP,A)
【文献】 特開2001−177968(JP,A)
【文献】 特開2000−323254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 35/00 − 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、前記ハウジングの内部に設けられた回転体と、前記ハウジングと前記回転体との間の配線空間内に位置する帯状のケーブルとを有する回転コネクタの製造方法において、
(1)前記ケーブルの可動側端部を可動側リードブロックに固定して、前記ケーブルの導体部を前記可動側リードブロックに設けられた可動側端子に導通させる工程と、
(2)前記(1)の工程と同時にまたはそれと前後して、前記ケーブルの固定側端部を固定側リードブロックに固定して、前記ケーブルの導体部を前記固定側リードブロックに設けられた固定側端子に導通させる工程と、
(3)前記配線空間内の前記ケーブルと前記可動側端部とが前記回転体の回転中心線に沿う方向で同じ高さとなるように、前記可動側リードブロックを、前記回転体の回転中心線に沿う向きで前記回転体に組み付け、前記回転体に固定する工程と、
(4)前記(3)の工程の後に、前記回転体の外周面に前記ケーブルを巻き付ける工程と、
(5)前記(4)の工程の後に、前記ハウジングを前記回転体に、前記可動側リードブロックの組み付け方向と同じ方向から組み合わせ、
)前記()の工程の後に、前記配線空間内の前記ケーブルと前記固定側端部とが前記回転中心線に沿う方向で同じ高さとなるように、前記固定側リードブロックを、前記可動側リードブロックの組み付け方向と同じ方向から前記ハウジングに組み付け、前記ハウジングに固定する工程と、
を有することを特徴とする回転コネクタの製造方法。
【請求項2】
前記(1)と(2)の工程では、前記ケーブルを折り曲げることなく、前記可動側リードブロックと前記固定側リードブロックに固定する請求項1記載の回転コネクタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のステアリング装置などに設けられるものであり、ハウジングとその内部に設けられた回転体との間の配線空間内にケーブルが配置された構造の回転コネクタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、自動車のステアリング装置に設置される回転コネクタが記載されている。
【0003】
この回転コネクタは、固定側ハウジングの内部に可動側ハウジングが回転自在に組み合わされており、両ハウジングの間の環状空間内に、平型ケーブルが配置されている。固定側ハウジングに第1のリードブロックが固定され、可動側ハウジングに第2のリードブロックが固定されている。それぞれのリードブロックは、絶縁性の支持部材と、この支持部材に保持された複数のピン端子とを有している。
【0004】
前記平型ケーブルは、ケーブル表面が、可動側ハウジングの回転中心線と平行に向くように巻回されて環状空間内に配置されている。そして、平型ケーブルの固定側の端部が第1のリードブロックの支持部材に固定されて、平型ケーブル内の帯状導体が固定側のピン端子に溶接され、平型ケーブルの可動側の端部が第2のリードブロックの支持部材に固定されて、帯状導体が可動側のピン端子に溶接されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−182072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の図9に記載されているように、従来の回転コネクタは、固定側ハウジングにおいて、平型ケーブルが巻かれている環状空間と、第1のリードブロックとが、可動側ハウジングの回転中心線に沿う方向において同じ位置に配置されておらず、環状空間と第1のリードブロックとが上下に離れて位置している。そのため、環状空間内に巻かれている平型ケーブルの固定側の端部を環状空間よりも下側へ引き出せるように三次元的に折り曲げて引き延ばし、第1のリードブロックに固定している。
【0007】
この構造では、平型ケーブルを三次元的に複雑に折り曲げる作業が煩雑であり、組立作業が煩雑である。また、平型ケーブルの折り曲げ位置が設計位置からずれてしまうと、環状空間内の平型ケーブルに不要な応力を与えることになり、平型ケーブルが環状空間内で動くときに曲がったり、環状空間の内壁に強い力で押し付けられて、過大な摩擦力を受けて損傷するおそれもある。
【0008】
また、環状空間内に平型ケーブルを三次元的に折り曲げた状態で収納させる工程を、自動機で自動的に行わせるのは困難である。
【0009】
本発明は従来の課題を解決するものであり、ケーブルを複雑に折り曲げることなく、ケーブルを、不要な応力を与えることなく配線空間内に配置することができる回転コネクタの製造方法を提供することを目的としている。
【0010】
また本発明は、組立工程を容易にし、組立作業の自動化も可能な回転コネクタの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
発明は、ハウジングと、前記ハウジングの内部に設けられた回転体と、前記ハウジングと前記回転体との間の配線空間内に位置する帯状のケーブルとを有する回転コネクタの製造方法において、
(1)前記ケーブルの可動側端部を可動側リードブロックに固定して、前記ケーブルの導体部を前記可動側リードブロックに設けられた可動側端子に導通させる工程と、
(2)前記(1)の工程と同時にまたはそれと前後して、前記ケーブルの固定側端部を固定側リードブロックに固定して、前記ケーブルの導体部を前記固定側リードブロックに設けられた固定側端子に導通させる工程と、
(3)前記配線空間内の前記ケーブルと前記可動側端部とが前記回転体の回転中心線に沿う方向で同じ高さとなるように、前記可動側リードブロックを、前記回転体の回転中心線に沿う向きで前記回転体に組み付け、前記回転体に固定する工程と、
(4)前記(3)の工程の後に、前記回転体の外周面に前記ケーブルを巻き付ける工程と、
(5)前記(4)の工程の後に、前記ハウジングを前記回転体に、前記可動側リードブロックの組み付け方向と同じ方向から組み合わせ、
)前記()の工程の後に、前記配線空間内の前記ケーブルと前記固定側端部とが前記回転中心線に沿う方向で同じ高さとなるように、前記固定側リードブロックを、前記可動側リードブロックの組み付け方向と同じ方向から前記ハウジングに組み付け、前記ハウジングに固定する工程と、
を有することを特徴とするものである。
【0021】
本発明の回転コネクタの製造方法は、前記(1)と(2)の工程では、前記ケーブルを折り曲げることなく、前記可動側リードブロックと前記固定側リードブロックに固定することが可能である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の回転コネクタの製造方法は、可動側リードブロックと固定側リードブロックを、配線空間と同じ高さ位置で、回転体とハウジングに組み込むことで、ケーブルを配線空間内に配置できるため、組み立て作業が容易であり、組み立て工程の自動化も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】2本のケーブルが組み合わされたケーブル構造体を回転体に取り付ける工程を示す分解斜視図、
図2】2本のケーブルのそれぞれに可動側リードブロックが取り付けられた状態を示す分解斜視図、
図3】2本のケーブルのそれぞれに固定側リードブロックが取り付けられた状態を示す分解斜視図、
図4】回転体に2本のケーブルが取り付けられ、さらに下部ハウジングが組み合わされる工程を示す分解斜視図、
図5】下部ハウジング内に、ローラ回転部が組み付けられる工程を示す分解斜視図、
図6】回転体にローラ回転部が取り付けられた状態を示す分解斜視図、
図7】組立てが完了した回転コネクタの斜視図、
図8】回転コネクタの内部構造の概略を説明する断面図、
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、図1ないし図8に基づいて、回転コネクタ100の構造とその組み立て工程を順に説明する。図7図8に、組立が完了した回転コネクタ100が示されている。
【0027】
<ケーブル構造体1の構造とその組み立て工程>
図1にケーブル構造体1が示されている。ケーブル構造体1は第1のケーブル2と第2のケーブル3とが組み合わされている。第1のケーブル2と第2のケーブル3は、帯状ケーブル(フラットケーブル)であり、ケーブルの長手方向に平行に延びる複数本の導線(導体部)と、導線を被覆する絶縁樹脂層とを有している。第1のケーブル2と第2のケーブル3は幅方向が一致するように重ねられている。
【0028】
図1に示す回転体10に形成された円筒部12の外周面12aと、図4に示す下部ハウジング20の内周面22との間に、図5に示す環状の配線空間Sが形成され、ケーブル構造体1はこの配線空間Sの内部に収納される。配線空間S内では、2本のケーブル2,3が重ねられ、回転体10の回転中心線Oを周回するようにして円筒部12の外周面12aに巻き付けられて、ケーブル構造体1の内側周回部1aが形成されている。内側周回部1aでは、内側に第1のケーブル2が現れ、外側に第2のケーブル3が現れる。
【0029】
配線空間S内では、内側周回部1aに巻かれた2本のケーブル2,3の巻き方向が反転部1bで反転され、さらに外側周回部1cとして巻かれる。内側周回部1aと外側周回部1cは巻き方向が逆であり、図5に示すように、外側周回部1cは、下部ハウジング20の内周面22に巻き付けられる。外側周回部1cでは、内側に第2のケーブル3が現れ、外側に第1のケーブル2が現れる。
【0030】
第1のケーブル2は第2のケーブル3よりも長いものが使用されており、反転部1bでは、第1のケーブル2の反転部2dと第2のケーブル3の反転部3dとの間に反転隙間1dが形成されている。
【0031】
図2図3で、ケーブル構造体1を構成する第1のケーブル2と第2のケーブル3が上下に分離した状態で示されている。
【0032】
図1に示すように、第1のケーブル2の可動側端部2aと第2のケーブル3の可動側端部3aは、可動側リードブロック30に固定されている。図2に示すように、可動側リードブロック30は、可動内側ブロック31と可動外側ブロック35とが組み合わされて構成されている。
【0033】
可動内側ブロック31は合成樹脂材料で形成されており、回転体10の回転中心線Oと平行に立ち上がるケーブル固定部32と、回転中心線Oと垂直に延びる端子引出し部33とが一体に形成されている。可動内側ブロック31には、複数の可動側端子34が埋設されている。複数の可動側端子34のそれぞれは導電性の金属材料から打ち抜かれて形成されている。それぞれの可動側端子34は、可動側接続部34aと可動側延出端部34bとを有している。それぞれの可動側端子34は折り曲げられており、可動側接続部34aは、ケーブル固定部32において回転中心線Oと交差する(直交する)方向に延びている。可動側延出端部34bは端子引出し部33の下面から下向きで、回転中心線Oと平行に延び出ている。
【0034】
前記ケーブル固定部32には、外側に向く支持面32aが形成されており、この支持面32aにそれぞれの可動側端子34の可動側接続部34aが露出している。支持面32aは、回転中心線Oと平行に延びる平面である。第1のケーブル2の可動側端部2aは支持面32aに重ねられ、支持面32aから突出する突起が可動側端部2aに形成された穴に係止されて、可動側端部2aが支持面32aに位置決めされる。そして、可動側端部2aで絶縁樹脂層が除去されて導体部(導線の一部)が露出され、それぞれの可動側端子34の可動側接続部34aとそれぞれの導体部とが個別に溶接されて接続され導通される。
【0035】
図2に示すように、可動外側ブロック35は合成樹脂材料で形成されており、回転中心線Oと平行に立ち上がるケーブル固定部36と、回転中心線Oと垂直に延びる端子引出し部37とが一体に形成されている。ケーブル固定部36は、内側に向く支持面36aと外側に向く外面36bとを有している。支持面36aは回転中心線Oと平行な平面であり、外面36bは、回転中心線Oを中心とする円筒面の一部に一致している。
【0036】
可動外側ブロック35には、複数の可動側端子38が埋設されている。複数の可動側端子38のそれぞれは導電性の金属材料から打ち抜かれて形成されている。それぞれの可動側端子38は、可動側接続部38aと可動側延出端部38bとを有している。なお、図2では、可動側接続部38aが、第2のケーブル3の可動側端部3aで覆われており図に現れていない。
【0037】
それぞれの可動側端子38は折り曲げられており、可動側接続部38aは、回転中心線Oと交差する(直交する)方向に延びて、ケーブル固定部36の支持面36aに露出している。可動側延出端部38bは端子引出し部37の下面から下向きで、回転中心線Oと平行に延び出ている。
【0038】
第2のケーブル3の可動側端部3aはケーブル固定部36の支持面36aに内側から重ねられ、支持面36aから突出する突起36cが可動側端部2aに形成された穴に係止されて、可動側端部2aが支持面36aに位置決めされる。そして、可動側端部3aで絶縁樹脂層が除去されて導体部(導線の一部)が露出され、それぞれの可動側端子38の可動側接続部38aとそれぞれの導体部とが個別に溶接されて接続され導通される。
【0039】
図1に示すように、可動内側ブロック31の支持面32aは、可動外側ブロック35の支持面36aに対して内側から重ねられ、可動内側ブロック31の端子引出し部33は、可動外側ブロック35の端子引出し部37の下側に重ねられる。そして、可動内側ブロック31と可動外側ブロック35とが凹凸嵌合により互いに位置決めされて接合され、図1に示す可動側リードブロック30が組み立てられる。可動側リードブロック30が組み立てられると、第1のケーブル2の可動側端部2aと第2のケーブル3の可動側端部3aとが、重ねられた状態で、可動内側ブロック31のケーブル固定部32と可動外側ブロック35のケーブル固定部36との間に挟まれる。この状態は図8にも示されている。
【0040】
また、可動内側ブロック31に設けられた可動側端子34の可動側延出端部34bと、可動外側ブロック35に設けられた可動端子38の可動側延出端部38bは、並んだ状態で、可動側リードブロック30から下向きに突出する。
【0041】
図1に示すように、第1のケーブル2の固定側端部2bと第2のケーブル3の固定側端部3bは、固定側リードブロック40に固定されている。図3に示すように、固定側リードブロック40は、固定外側ブロック41と固定内側ブロック45とが組み合わされて構成されている。
【0042】
図3に示すように、固定外側ブロック41は合成樹脂材料で形成されており、ケーブル固定部42と端子引出し部43とが、回転中心線Oに沿う方向である上下方向に連続して一体に形成されている。固定外側ブロック41には、複数の固定側端子44が埋設されている。複数の固定側端子44のそれぞれは導電性の金属材料から打ち抜かれて形成されている。それぞれの固定側端子44は、固定側接続部44aと固定側延出端部44bとを有している。それぞれの固定側端子44は折り曲げられており、固定側接続部44aは、ケーブル固定部42において回転中心線Oと交差する(直交する)方向に延びている。固定側延出端部44bは端子引出し部43の上端部から上向きで、回転中心線Oと平行に延び出ている。
【0043】
前記ケーブル固定部42には、内側に向く支持面42aが形成されており、この支持面42aにそれぞれの固定側端子44の固定側接続部44aが露出している。支持面42aは、回転中心線Oと平行に延びる平面である。第1のケーブル2の固定側端部2bは支持面42aに重ねられ、支持面42aから突出する突起が固定側端部2bに形成された穴に係止されて、固定側端部2bが支持面42aに位置決めされる。そして、固定側端部2bで絶縁樹脂層が除去されて導体部(導線の一部)が露出され、それぞれの固定側端子44の固定側接続部44aとそれぞれの導体部とが個別に溶接されて接続され導通される。
【0044】
図3に示すように、固定内側ブロック45は合成樹脂材料で形成されており、ケーブル固定部46と端子引出し部47とが上下に連続して一体に形成されている。ケーブル固定部46は、外側に向く支持面46aと内側向く内面46bとを有している。支持面46aは回転中心線Oと平行な平面である。図1に示すように、内面46bは回転中心線Oを中心とする円筒面の一部に一致している。
【0045】
固定内側ブロック45には、複数の固定側端子48が埋設されている。複数の固定側端子48のそれぞれは導電性の金属材料から打ち抜かれて形成されている。それぞれの固定側端子48は、固定側接続部48aと固定側延出端部48bとを有している。なお、図3では、固定側接続部48aが、第2のケーブル3の固定側端部3bで覆われており図に現れていない。
【0046】
それぞれの固定側端子48は折り曲げられており、固定側接続部48aは、回転中心線Oと交差する(直交する)方向に延びて、ケーブル固定部46の支持面46aに露出している。固定側延出端部48bは端子引出し部47の上端部から上向きで、回転中心線Oと平行に延び出ている。
【0047】
第2のケーブル3の固定側端部3bはケーブル固定部46の支持面46aに外側から重ねられ、支持面46aから突出する突起46cが固定側端部3bに形成された穴に係止されて、固定側端部3bが支持面46aに位置決めされる。そして、固定側端部3bで絶縁樹脂層が除去されて導体部が露出され、それぞれの固定側端子48の固定側接続部48aとそれぞれの導体部とが個別に溶接されて接続され導通される。
【0048】
図1に示すように、固定外側ブロック41は、固定内側ブロック45の外側に重ねられ、図3に示すように、固定外側ブロック41に形成された位置決め穴49aが、固定内側ブロック45に形成された位置決め突起49bに嵌合し、互いに位置決めされて組み合わされる。このとき、固定外側ブロック41のケーブル固定部42が、固定内側ブロック45のケーブル固定部46の外側に重ねられ、固定外側ブロック41の端子引出し部43が固定内側ブロック45の端子引出し部47の外側に重ねられる。
【0049】
図1に示すように固定側リードブロック40が組み立てられると、第1のケーブル2の固定側端部2bと第2のケーブル3の固定側端部3bは、重ねられた状態で、ケーブル固定部42とケーブル固定部46との間に挟まれる。この状態は図8にも示されている。
【0050】
また、固定外側ブロック41に設けられた固定側端子44の固定側延出端部44bと、固定内側ブロック45に設けられた固定側端子48の固定側延出端部48bは、互いに並んだ状態で、固定側リードブロック40から上向きに突出する。
【0051】
<回転体10にケーブル構造体1を組み付ける工程>
図1に示すように、回転体10は合成樹脂材料で形成されており、支持フランジ部11と円筒部12とが一体に形成されている。回転体10の回転中心線Oは、円筒部12の中心に一致している。
【0052】
回転体10には、リードブロック取付け部13が形成されている。リードブロック取付け部13は、円筒部12の外周面の一部に凹状に形成されたケーブル取付け部13aと、支持フランジ部11の上面の一部に凹状に形成された端子取付け部13bとを有している。ケーブル取付け部13aは、図8にも示されている。
【0053】
回転コネクタ100の組み立て工程では、まず、図4に示すように、ケーブル構造体1の可動側リードブロック30が、回転体10のリードブロック取付け部13に組み付けられる。
【0054】
この工程では、可動側リードブロック30が、上方から回転中心線Oに沿って下向きに組み付けられ、可動側リードブロック30のケーブル固定部32,36が、円筒部12に形成されたケーブル取付け部13aに設置され、端子引出し部33,37が、支持フランジ部11に形成された端子取付け部13bに設置される。可動側リードブロック30は、凹状に形成されたリードブロック取付け部13に嵌合して位置決めされて固定される。このとき、可動側リードブロック30から下向きに突出する複数の可動側端子34,38の可動側延出端部34b,38bが、図1に示すように、支持フランジ部11の端子取付け部13bに形成された貫通穴13cに挿入され、回転体10の図示下側へ突出する。
【0055】
可動側リードブロック30が回転体10に取り付けられた時点では、第1のケーブル2と第2のケーブル3に、内側周回部1aや外側周回部1cが形成されていない。
【0056】
具体的な組立工程では、回転体10を図示しない回転治具に設置した状態で、前記のように可動側リードブロック30を上方から回転中心線Oに沿う向きで回転体10に組み付ける。また、固定側リードブロック40を図1図4に示す向きで、図示しない保持治具に保持させる。
【0057】
そして、回転治具と共に回転体10を反時計方向(CCW)へ回転させると、第1のケーブル2と第2のケーブル3とが互いに重ねられた状態で、回転体10の円筒部12の外周面12aに巻き付けられて、内側周回部1aが形成される。また固定側リードブロック40が図1図4に示す向きで保持治具に保持されているため、第1のケーブル2と第2のケーブル3に外側周回部1cと反転部1bが形成される。
【0058】
図8にも示されているように、可動側リードブロック30が回転体10に取り付けられると、可動外側ブロック35に形成されたケーブル固定部36の外面36bが、回転体10の円筒部12の外周面12aと連続し、外面36bが円筒状の外周面12aの一部として機能する。よって、内側周回部1aでは、第1のケーブル2と第2のケーブル3が、外周面12aと外面36bの表面に巻き付けられることになる。
【0059】
図4に示すように、可動側リードブロック30が回転体10に組み付けられた状態で、第1のケーブル2の可動側端部2aと第2のケーブル3の可動側端部3aとが、外周面12aに巻かれるケーブル2,3と同じ高さ位置にあるため、回転体10を回転させてケーブル2,3を外周面12aにスムースに巻き取ることが可能になる。
【0060】
<回転体10と下部ハウジング20の組み立て工程>
図4に下部ハウジング20が示されている。下部ハウジング20は合成樹脂材料で形成されている。
【0061】
下部ハウジング20には、内側に円筒面状の内周面22が形成され、内周面22の外側にリードブロック取付け部23が形成されている。リードブロック取付け部23は、ケーブル取付け部23aと端子取付け部23bとが上下に連続して形成されている。ケーブル取付け部23aは、内周面22の一部が欠如して外周方向へ向けて凹状に形成されている。端子取付け部23bはケーブル取付け部23aの上に連続して角枠形状に形成されている。
【0062】
図4に示すように、可動側リードブロック30を回転体10に取付け、回転体10を反時計方向(CCW)へ回転させて、第1のケーブル2と第2のケーブル3を円筒部12の周囲に巻き回させて、内側周回部1aと外側周回部1cを形成した後に、回転体10に下部ハウジング20が組み付けられる。
【0063】
下部ハウジング20の図示下側の開口部の周囲は回転受け部21となっており、図1図4に示すように、回転体10の支持フランジ部11の外周縁に支持段差部14が形成されている。下部ハウジング20を回転体10に対して上方から下向きに装着すると、下部ハウジング20の回転受け部21が回転体10の支持段差部14の上に重ねられ、回転受け部21と支持段差部14とが嵌合して、下部ハウジング20に対して回転体10が回転中心線Oを中心として回転自在に組み合わされる。
【0064】
下部ハウジング20と回転体10とが組み合わされると、回転体10の円筒部12の外周面12aと、下部ハウジング20の内周面22との間に、環状の配線空間Sが形成され、第1のケーブル2と第2のケーブル3が、配線空間Sの内部に配置される。
【0065】
下部ハウジング20を回転体10に組み付ける工程では、固定側リードブロック40を円筒部12の上などに保持しておく。そして、下部ハウジング20と回転体10とが組み合わされたときに、図5に示すように、下部ハウジング20のリードブロック取付け部23に固定側リードブロック40を固定する。
【0066】
この工程では、固定側リードブロック40を、回転中心線Oに沿うように上方から下方へ向けて組み付けて、下部ハウジング20に形成されたリードブロック取付け部23に差し込む。このとき、固定側リードブロック40のケーブル固定部42,46をケーブル取付け部23aに嵌合させ、端子引出し部43,47を、下部ハウジング20に形成された端子取付け部23bに嵌合させる。そして、図5に示すように、凹凸係止部24において、固定側リードブロック40をリードブロック取付け部23に凹凸係止させて、固定側リードブロック40を下部ハウジング20に固定する。
【0067】
図5に示すように、固定側リードブロック40が、下部ハウジング20のリードブロック取付け部23に取り付けられると、固定内側ブロック45のケーブル固定部46の内面46bが、下部ハウジング20の内周面22と連続し、内周面22と内面46bとが連続する円筒面となり、回転体10が回転したときに、第1のケーブル2と第2のケーブル3が、内周面22と内面46bに内側から巻き付けられるようになる。
【0068】
図5に示すように、固定側リードブロック40が下部ハウジング20に取り付けられたときに、第1のケーブル2の固定側端部2bと第2のケーブル3の固定側端部3bが、配線空間S内のケーブル2,3と同じ高さ位置となるため、ケーブル2,3の固定側端部2b,3b、および配線空間Sの内部で周回するケーブル2,3に無理な力が作用することがない。
【0069】
また、図5に示すように、固定側リードブロック40に設けられた固定側端子44,48の固定側延出端部44b,48bが、下部ハウジング20のリードブロック取付け部23から上向きに突出する。
【0070】
上記組立工程では、可動側リードブロック30を回転体10の円筒部12に上から下向きに組み付け、回転体10を回転させて、内側周回部1aと反転部1bおよび外側周回部1cを形成する。その後に下部ハウジング20を回転体10に組み合わせ、固定側リードブロック40を上から下降させて下部ハウジング20のリードブロック取付け部23に組み付けて、内側周回部1aと反転部1bおよび外側周回部1cを配線空間S内に収納させている。
【0071】
このように、第1のケーブル2と第2のケーブル3を複雑に折り曲げることなく、可動側リードブロック30と固定側リードブロック40を上から下向きに装着するだけで、回転体10と下部ハウジング20に対してケーブル構造体1を簡単に組み付けることができる。したがって、自動機を使用した自動組み立て作業も容易に行うことができるようになる。
【0073】
なお、本発明では、可動側端部2a,3aと固定側端部2b,3bが配線空間Sと同じ高さにあれば、可動側端部2a,3aと固定側端部2b,3bが2つ折りなどに折られてリードブロック30,40に固定されていてもよい。
【0074】
<ローラ回転部50を組み付ける工程>
図5に示すように、下部ハウジング20と回転体10を組み合わせた後に、下部ハウジング20内にローラ回転部50が組み付けられる。ローラ回転部50は、環状のローラ支持板51と、ローラ支持板51の下に回転自在に支持された複数のローラ52とを有している。図8に示すように、ローラ支持板51には5個のローラが回転方向に等間隔に設けられている。
【0075】
図6に示すように、ローラ支持板51の中心穴53が、回転体10の円筒部12の上部に回転自在に装着される。このとき、図8に示すように、それぞれのローラ52は、配線空間Sの内部に入り込み、それぞれのローラ52が、ケーブル構造体1のケーブル2,3の内側周回部1aと外側周回部1cとの間に介在させられる。
【0076】
<上部ハウジング60と上部キャップ70の取付け工程>
図6に示すように、下部ハウジング20内にローラ回転部50が装着された後に、図7に示す上部ハウジング60が装着され、その後に、図6図7に示す上部キャップ70が取り付けられる。
【0077】
上部ハウジング60は合成樹脂製であり、外周側に円形の外周縁部61が、内周側に円形の穴部62が形成されている。上部ハウジング60は、下部ハウジング20の開口部に装着され、外周縁部61が下部ハウジング20の開口縁部26の内側に嵌着される。また回転体10の円筒部12の上端部12bが、上部ハウジング60の穴部62の内側に回転自在に保持される。
【0078】
上部ハウジング60には角筒状のコネクタ部63が一体に形成されており、図5図6に示すように、固定側リードブロック40から延びる固定側端子44,48の延出端部44b,48bがコネクタ部63の内部に収納される。また上部ハウジング60には、ステアリング装置に固定するための固定片64が一体に形成されている。
【0079】
上部ハウジング60が下部ハウジング20に装着された後に、上部ハウジング60の穴部62の内側に位置する円筒部12の上端部12bに、上部キャップ70が装着される。図6に示すように、上部キャップ70は合成樹脂製であり、円板形状の蓋体部71と、蓋体部71から下向きに延びる係止片72とが一体に形成されている。一方、回転体10の円筒部12の内面には係止突起16が一体に形成されている。上部キャップ70が円筒部12の上端部12bに装着されると、蓋体部71の外周部が上部ハウジング60の穴部62の縁部の上に重ねられる。
【0080】
係止片72は円筒部12の内部に挿入されて、係止突起16に係止される。これにより、図7に示すように、回転体10と上部キャップ70とが連結され、回転体10と上部キャップ70が、下部ハウジング20と上部ハウジング60から抜け出ることなく、回転自在に支持される。また、配線空間S内では、回転体10の回転に追従してローラ支持板51が回転自在となる。
【0081】
<回転コネクタの動作および作用効果>
図7図8に示すように組み立てが完了した回転コネクタ100は、自動車のステアリング装置に装着される。回転体10は、円筒部12がステアリングシャフトに装着されてステアリングシャフトと共に回転する。下部ハウジング20と上部ハウジング60は固定側に固定される。
【0082】
可動側リードブロック30に設けられた可動側端子34,38が、ステアリングホイール側の配線部に接続され、固定側リードブロック40に設けられた固定側端子44,48が車体側の配線部に接続される。第1のケーブル2と第2のケーブル3によって、ステアリングホイールに設けられたエアーバック装置への通電経路や、ステアリングホイールに設けられた操作部への配線経路が形成される。
【0083】
図8において、回転体10が反時計方向(CCW)へ回転すると、第1のケーブル2と第2のケーブル3が、下部ハウジング20の内周面22から解かれて、円筒部12の外周面12aに巻かれていく。回転体が時計方向(CW)へ回転すると、第1のケーブル2と第2のケーブル3は、円筒部12の外周面12aから解かれて下部ハウジング20の内周面22に巻き付けられていく。その間、第2のケーブル3の反転部3dの周回に伴って、ローラ支持体51とローラ52とが配線空間S内で回転中心軸Oを中心として周回する。
【0084】
可動側リードブロック30に固定されるケーブル2,3の可動側端部2a,3aと、固定側リードブロック40に固定されるケーブル2,3の固定側端部2b,3bが、配線空間S内のケーブル2,3と同じ高さ位置にあるため、可動側端部2a,3aまたは固定側端部2b,3bを配線空間Sと異なる高さ位置に延ばすために三次元的に折り曲げる必要がなくなる。よって、配線空間S内に引き回されるケーブル2,3に余分な応力が作用することもなく、ケーブル2,3が配線空間S内で不要な摩擦力を受けることなくスムースに動けるようになる。
【符号の説明】
【0085】
1 ケーブル構造体
1a 内側周回部
1b 反転部
1c 外側周回部
2 第1のケーブル
2a 可動側端部
2b 固定側端部
2d 反転部
3 第2のケーブル
3a 可動側端部
3b 固定側端部
3d 反転部
10 回転体
12 円筒部
12a 外周面
13 リードブロック取付け部
20 下部ハウジング
22 内周面
23 リードブロック取付け部
30 可動側リードブロック
31 可動内側ブロック
32 ケーブル固定部
32a 支持面
33 端子引出し部
34 可動側端子
34a 可動側接続部
34b 可動側延出端部
35 可動外側ブロック
36 ケーブル固定部
36a 支持面
36b 外面
37 端子引出し部
38 可動側端子
38a 可動側接続部
38b 可動側延出端部
40 固定側リードブロック
41 固定外側ブロック
42 ケーブル固定部
42a 支持面
43 引出し部
44 固定側端子
44a 固定側接続部
44b 固定側延出端部
45 固定内側ブロック
46 ケーブル固定部
46a 支持面
46b 内面
48 固定側端子
48a 固定側接続部
48b 固定側延出端部
50 ローラ回転部
51 ローラ板
52 ローラ
60 上部ハウジング
70 上部キャップ
O 回転中心線
S 配線空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8