特許第6293119号(P6293119)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6293119インク組成物、インクセット、インクジェット記録方法及び着色体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6293119
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】インク組成物、インクセット、インクジェット記録方法及び着色体
(51)【国際特許分類】
   C09D 17/00 20060101AFI20180305BHJP
   C09D 11/326 20140101ALI20180305BHJP
   C09B 67/46 20060101ALI20180305BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20180305BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20180305BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   C09D17/00
   C09D11/326
   C09B67/46 B
   C09B67/20 L
   B41M5/00 120
   B41J2/01 501
【請求項の数】21
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2015-508314(P2015-508314)
(86)(22)【出願日】2014年3月17日
(86)【国際出願番号】JP2014057096
(87)【国際公開番号】WO2014156758
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2016年12月15日
(31)【優先権主張番号】特願2013-69559(P2013-69559)
(32)【優先日】2013年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】桑原 明央
(72)【発明者】
【氏名】崔 波
(72)【発明者】
【氏名】川口 彬
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−100728(JP,A)
【文献】 特開平08−319429(JP,A)
【文献】 特開2010−222557(JP,A)
【文献】 特開2009−126941(JP,A)
【文献】 特開2007−016225(JP,A)
【文献】 特開2011−167968(JP,A)
【文献】 特開平11−188966(JP,A)
【文献】 特開2003−293298(JP,A)
【文献】 特開2010−222446(JP,A)
【文献】 特開2012−246383(JP,A)
【文献】 特開平05−064954(JP,A)
【文献】 特開2010−222418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 17/00
B41J 2/01
B41M 5/00
C09B 67/20
C09B 67/46
C09D 11/326
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色分散液、水溶性有機溶剤、及び界面活性剤を含有するインク組成物であって、
前記界面活性剤が、アニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤よりなる群から選択される少なくとも1種類であり、
前記着色分散液が、水、着色剤、及び分散剤を含有し、該分散剤が、以下のモノマー(A)、(B)、及び(C)の共重合体であるインク組成物
モノマー(A):スチレン。
モノマー(B):アクリル酸。
モノマー(C):アクリル酸C4−C9アルキルエステル。
【請求項2】
前記分散剤の質量平均分子量が8,000〜100,000であり、酸価が50〜400mg/KOHである請求項1に記載のインク組成物
【請求項3】
前記分散剤の質量平均分子量が8,000〜50,000であり、酸価が100〜300mg/KOHである請求項1又は2に記載のインク組成物
【請求項4】
前記モノマー(C)がアクリル酸2−エチルヘキシルである請求項1乃至3のいずれか一項に記載のインク組成物
【請求項5】
前記着色剤が実質的に水に不溶な着色剤である請求項1乃至4のいずれか一項に記載のインク組成物
【請求項6】
前記着色剤が、有機顔料、無機顔料、及びカーボンブラックよりなる群から選択される少なくとも1種類の着色剤である請求項1乃至5のいずれか一項に記載のインク組成物
【請求項7】
前記水溶性有機溶剤が、グリコールエーテル及びアルカンジオールよりなる群から選択される少なくとも1種類である請求項1乃至6のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項8】
前記グリコールエーテルが、エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、及びプロピレングリコールモノプロピルエーテルよりなる群から選択される少なくとも1種類である請求項に記載のインク組成物。
【請求項9】
前記アルカンジオールが、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、及び2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールよりなる群から選択される少なくとも1種類である請求項又はに記載のインク組成物。
【請求項10】
前記アニオン界面活性剤が、ポリオキシエチレンジノニルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩、及びジオクチルスルホコハク酸塩よりなる群から選択される少なくとも1種類である請求項1乃至9のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項11】
前記ノニオン界面活性が、ポリオキシエチレンアセチレングリコールエーテル及びポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルよりなる群から選択される少なくとも1種類である請求項1乃至10のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項12】
インクジェット記録に用いる請求項乃至11のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項13】
請求項乃至11のいずれか一項に記載のインク組成物の液滴を、記録信号に応じて吐出させて、被記録材に付着させることにより記録を行うインクジェット記録方法。
【請求項14】
前記被記録材が情報伝達用シートである請求項13に記載のインクジェット記録方法。
【請求項15】
前記情報伝達用シートが、多孔性白色無機物を含有するインク受容層を有するシートである請求項14に記載のインクジェット記録方法。
【請求項16】
前記情報伝達用シートがキャストコート紙である請求項14に記載のインクジェット記録方法。
【請求項17】
前記情報伝達用シートがコート紙又はアート紙である請求項14に記載のインクジェット記録方法。
【請求項18】
前記情報伝達用シートが、コロナ放電処理、プラズマ処理、及びフレーム処理から選択される少なくとも1種類の表面改質処理が施されたシートである請求項16又は17に記載のインクジェット記録方法。
【請求項19】
請求項乃至12のいずれか一項に記載のインク組成物により着色された着色体。
【請求項20】
請求項乃至11のいずれか一項に記載のインク組成物を含有する容器が装填されたインクジェットプリンタ。
【請求項21】
ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、及びイエローインクの4種類のインクを備えたインクセットであって、該4種類のインクのうち、少なくとも1種類のインクが請求項乃至12のいずれか一項に記載のインク組成物であるインクセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク組成物、インクセット、インクジェット記録方法、及び着色体に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットインクに用いられる着色剤としては、水溶性の染料と、顔料、分散染料、及び油溶性染料のような実質的に水に不要な着色剤との、2種類の着色剤が一般的に知られている。これらのうち、水溶性の染料を着色剤として用いた記録画像は、例えば鮮明性といった画質に優れ、また、水に不要な着色剤、及びそれらの中でも顔料を用いた記録画像は、光、オゾン、水等に対する各種の堅牢性に優れるとされている。この各種の堅牢性に優れる利点から、水に不要な着色剤を含有するインクジェットインク(インクジェット用顔料インク)の利用が広がっている。
【0003】
特に、産業用途においては、インクジェット技術の向上により、デジタル印刷出力機としての利用が期待され、環境面、安全面等から水性インクが求められている。
【0004】
しかし、水に不溶な着色剤をインクジェットインクに使用するときは、着色剤を微細化した後、インク中で分散状態とし、その状態を安定化させることが必要となる。このため、分散状態を長期間、安定に保つために、分散剤の選定が極めて重要になる。
分散剤とは、着色剤表面との親和性が高く、着色剤表面に吸着する疎水性部位と、インクが含有する水や水溶性有機溶剤等の水性媒体に対して親和性が高く、水性媒体に対して溶解性を示す親水性部位とを有する化合物であり、ノニオン及びアニオン界面活性剤や種々の高分子化合物が分散剤として提案されている。
【0005】
一方、インクジェットプリンタ技術の向上に伴い、高解像度印刷及び高速印刷が可能となってきており、水に不要な着色剤を含有するインクジェットインクには、これまで以上に着色剤の微細化が求められている。このように微細化された着色剤を含有するインクは、保存により、粒子径の大きさや粘度が変動してしまうこと等の問題から、その保存安定性を保つことが従来以上に難しくなってきており、保存安定性の向上に対して様々な検討が行われている。
【0006】
さらに、水に不要な着色剤を含有するインクは、何らかの要因により含有する水分を失って乾燥状態になると顔料の分散状態が壊れ、着色剤の凝集が生じるという欠点があった。このように一度凝集した着色剤は、水等の水性媒体を加えても再び分散状態に戻すことができない(再分散性が悪い)ため、その改善が強く求められている。
【0007】
例えば、特許文献1乃至10には、種々の高分子化合物を分散剤として使用することが提案されている。しかし、水に不要な着色剤を含有する着色分散液やインク組成物の保存安定性は未だ十分ではないため、その改善が強く要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平08−253716号公報
【特許文献2】特開2009−144060号公報
【特許文献3】特開平08−183920号公報
【特許文献4】特開2004−217916号公報
【特許文献5】特開平11−228891号公報
【特許文献6】特開平06−306317号公報
【特許文献7】特開平08−183920号公報
【特許文献8】特開2009−132781号公報
【特許文献9】特開2011−63769号公報
【特許文献10】特開2011−202037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、夾雑物を除去するときの濾過性が良く、保存安定性が良好であり、インク組成物に含有させた際の発色性、再分散性、保存安定性に優れる着色分散液を含有するインク組成物、該インク組成物を備えるインクセット、該インク組成物を用いるインクジェット記録方法、該インク組成物により着色された着色体の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のモノマーの共重合体を分散剤として含む着色分散液を含有するインク組成物により、上記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[21]に関する。
【0011】
[1]
着色分散液、水溶性有機溶剤、及び界面活性剤を含有するインク組成物であって、
上記界面活性剤が、アニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤よりなる群から選択される少なくとも1種類であり、
上記着色分散液が、水、着色剤、及び分散剤を含有し、該分散剤が、以下のモノマー(A)、(B)、及び(C)の共重合体であるインク組成物
モノマー(A):スチレン。
モノマー(B):アクリル酸。
モノマー(C):アクリル酸C4−C9アルキルエステル。
[2]
上記分散剤の質量平均分子量が8,000〜100,000であり、酸価が50〜400mg/KOHである上記[1]に記載のインク組成物
[3]
上記分散剤の質量平均分子量が8,000〜50,000であり、酸価が100〜300mg/KOHである上記[1]又は[2]に記載のインク組成物
[4]
上記モノマー(C)がアクリル酸2−エチルヘキシルである上記[1]乃至[3]のいずれか一項に記載のインク組成物
[5]
上記着色剤が実質的に水に不溶な着色剤である上記[1]乃至[4]のいずれか一項に記載のインク組成物
[6]
上記着色剤が、有機顔料、無機顔料、及びカーボンブラックよりなる群から選択される少なくとも1種類の着色剤である上記[1]乃至[5]のいずれか一項に記載のインク組成物。
[7
上記水溶性有機溶剤が、グリコールエーテル及びアルカンジオールよりなる群から選択される少なくとも1種類である上記[1]乃至[6]のいずれか一項に記載のインク組成物。

上記グリコールエーテルが、エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、及びプロピレングリコールモノプロピルエーテルよりなる群から選択される少なくとも1種類である上記[]に記載のインク組成物。

上記アルカンジオールが、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、及び2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールよりなる群から選択される少なくとも1種類である上記[]又は[]に記載のインク組成物
[10
上記アニオン界面活性剤が、ポリオキシエチレンジノニルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩、及びジオクチルスルホコハク酸塩よりなる群から選択される少なくとも1種類である上記[1]乃至[9]のいずれか一項に記載のインク組成物。
11
上記ノニオン界面活性が、ポリオキシエチレンアセチレングリコールエーテル及びポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルよりなる群から選択される少なくとも1種類である上記[1]乃至[10]のいずれか一項に記載のインク組成物。
12
インクジェット記録に用いる上記[]乃至[11]のいずれか一項に記載のインク組成物。
13
上記[]乃至[11]のいずれか一項に記載のインク組成物の液滴を、記録信号に応じて吐出させて、被記録材に付着させることにより記録を行うインクジェット記録方法。
14
上記被記録材が情報伝達用シートである上記[13]に記載のインクジェット記録方法。
15
上記情報伝達用シートが、多孔性白色無機物を含有するインク受容層を有するシートである上記[14]に記載のインクジェット記録方法。
16
上記情報伝達用シートがキャストコート紙である上記[14]に記載のインクジェット記録方法。
17
上記情報伝達用シートがコート紙又はアート紙である上記[14]に記載のインクジェット記録方法。
18
上記情報伝達用シートが、コロナ放電処理、プラズマ処理、及びフレーム処理から選択される少なくとも1種類の表面改質処理が施されたシートである上記[16]又は[17]に記載のインクジェット記録方法。
19
上記[]乃至[12]のいずれか一項に記載のインク組成物により着色された着色体。
20
上記[]乃至[11]のいずれか一項に記載のインク組成物を含有する容器が装填されたインクジェットプリンタ。
21
ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、及びイエローインクの4種類のインクを備えたインクセットであって、該4種類のインクのうち、少なくとも1種類のインクが上記[]乃至[12]のいずれか一項に記載のインク組成物であるインクセット。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、夾雑物を除去するときの濾過性が良く、保存安定性が良好であり、インク組成物に含有させた際の発色性、再分散性、保存安定性に優れる着色分散液を含有するインク組成物、該インク組成物を備えるインクセット、該インク組成物を用いるインクジェット記録方法、該インク組成物により着色された着色体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書において、「C.I.」とは、カラーインデックスの略語である。また、本明細書中、「%」及び「部」数については、特に断りのない限り実施例等も含めて、いずれも質量基準で記載する。
【0014】
上記の着色分散液が含有する着色剤は、特に限定されるものではなく、公知慣用の顔料、分散染料等がいずれも使用できる。また、必要に応じてこれらを併用してもよい。実質的に水に不要な着色剤が好ましく、有機顔料、無機顔料、及びカーボンブラックよりなる群から選択される少なくとも1種類の着色剤がより好ましい。
本明細書において、実質的に水に不要な着色剤とは、水1リットルあたりの溶解度が通常0.5g以下、好ましくは0.1g以下、より好ましくは0.03g以下程度である着色剤のことを意味する。このような着色剤としては、有機顔料、無機顔料、カーボンブラック、体質顔料、分散染料等が挙げられる。
これらの着色剤は単独で使用してもよいし、2種類又はそれ以上を配合してもよい。
着色剤を配合する目的としては、記録画像の色相調整;着色分散液やインク組成物としたときの保存安定性の向上;等が挙げられる。ここでいう色相調整とは、記録画像の濃淡をつけること;記録画像の色域を広げること;等を意味する。好ましくは、2種類以内の着色剤を併用することが望ましく、単一の着色剤を用いることが特に好ましい。
着色剤の含有量は、インク組成物中の含有量として、インク組成物の総質量に対して通常1〜30%、好ましくは1〜10%、より好ましくは2〜7%である。
【0015】
有機顔料としては、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、ピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料;リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料;アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料;キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系顔料;ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系顔料;イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系顔料;ベンズイミダゾロンイエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッド等のイミダゾロン系顔料;ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系顔料;チオインジゴ系顔料;縮合アゾ系顔料;フラバンスロンイエロー、アシルアミドイエロー、キノフタロンイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等のその他の顔料が挙げられる。
【0016】
有機顔料の具体例としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、12、13、14、16、17、24、55、73、74、75、83、93、94、95、97、98、108、114、120、128、129、138、139、150、151、154、155、180、185、193、199、202、213等のイエロー色の顔料;C.I.Pigment Red 5、7、12、48、48:1、48:2、48:3、48:4、57、58、58:1、58:2、88、112、122、123、146、149、150、166、168、177、178、179、184、185、202、206、207、254、255、257、260、264、269、272等のレッド色の顔料;C.I.Pigment Blue 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、25、60、66、80等のブルー色の顔料;C.I.Pigment Violet 19、23、29、37、38、50等のバイオレット色の顔料;C.I.Pigment Orange 13、16、36、38、43、64、68、69、71、73等のオレンジ〜ブラウン色の顔料;C.I.Pigment Green 7、36、54、58等のグリーン色の顔料;C.I.Pigment Black 1等のブラック色の顔料;等が挙げられる。
【0017】
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物、金属フェロシアン化物、金属塩化物等が挙げられる。特に黒色の着色剤としてはカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックの種類としては、例えば、サーマルブラック、アセチレンブラック、オイルファーネスブラック、ガスファーネスブラック、ランプブラック、ガスブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。これらの中では、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックが好ましい。
【0018】
カーボンブラックの具体例としては、例えば、Raven760ULTRA、Raven780ULTRA、Raven790ULTRA、Raven1060ULTRA、Raven1080ULTRA、Raven1170、Raven1190ULTRA II、Raven1200、Raven1250、Raven1255、Raven1500、Raven2000、Raven2500ULTRA、Raven3500、Raven5000ULTRA II、Raven5250、Raven5750、Raven7000(以上、コロンビア・カーボン社製);Monarch700、Monarch800、Monarch880、Monarch900、Monarch1000、Monarch1100、Monarch1300、Monarch1400、Regal1330R、Regal1400R、Regal1660R、Mogul L(以上、キャボット社製);NEROX−305、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW200、NIPEX 150IQ、NIPEX 160IQ、NIPEX 170IQ、NIPEX 180IQ、Printex 35、Printex U、Printex V、 Printex 140U、 Printex 140V、 Special Black 4、Special Black 4A、Special Black 5、Special Black 6(以上、オリオンエンジニアドカーボンズ社製);MA7、MA8、MA100、MA600、MCF−88、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300(以上、三菱化学社製);等が挙げられる。
【0019】
体質顔料として、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、クレー、硫酸バリウム、ホワイトカーボ等が挙げられる。これらの体質顔料は単独で使用されることはなく、通常、無機顔料又は有機顔料と併用して使用される。併用する目的としては、流動性の改良等の効果が挙げられる。
【0020】
分散染料としては、例えば、アゾベンゼン系、アントラキノン系等の分散染料が挙げられる。
【0021】
分散染料の具体例としては、例えば、C.I.Dispers Yellow 9、23、33、42、49、54、58、60、64、66、71、76、79、83、86、90、93、99、114、116、119、122、126、149、160、163、165、180、183、186、198、200、211、224、226、227、231、237;C.I.Dispers Red 60、73、88、91、92,111、127、131、143、145、146、152、153、154、167、179、191、192、206,221,258,283;C.I.Dispers Orange 9、25、29、30、31、32、37、38、42、44、45、53、54、55、56、61、71、73、76、80、96、97;C.I.Dispers Violet 25、27、28、54、57、60、73、77、79、79:1;C.I.Dispers Blue 27、56、60、79:1、87、143、165、165:1、165:2、181、185、197、202、225、257、266、267、281、341、353、354、358、364、365、368等が挙げられる。
【0022】
上記の着色分散液が含有する分散剤は、スチレンであるモノマー(A)、アクリル酸であるモノマー(B)、及びアクリル酸C4−C9アルキルエステルであるモノマー(C)の共重合体、すなわち、コポリマーである。
モノマーとしてメタクリル酸やメタクリレートエステルを使用して得られる共重合体は、着色分散液に含有させても安定な分散状態を保つことができないため、分散剤としては不適である。
【0023】
上記モノマー(C)のアクリル酸C4−C9アルキルエステルとしては、アルキル部分が直鎖、分岐鎖、又は環状のものが挙げられ、直鎖又は分岐鎖のものが好ましい。また、アルキル部分の炭素数の範囲としては通常C4−C9、好ましくはC4−C8である。
具体例としては、例えば、ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、ノニルアクリレート等のアルキル部分が直鎖のもの;1−メチルプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、1−、2−、又は3−メチルブチルアクリレート、1,1−、1,2−、又は2,2−ジメチルプロピルアクリレート、1−エチルプロピルアクリレート、1−、2−、3−、又は4−メチルペンチルアクリレート、1,1−、1,2−、2,2−、1,3−、又は3,3−ジメチルブチルアクリレート、1−又は2−エチルブチルアクリレート、1−イソプロピルプロピルアクリレート、1−、2−、3−、4−、又は5−メチルヘキシルアクリレート、1,1−、1,2−、1,3−、1,4−、2,2−、2,3−、2,4−、3,3−、3,4−、又は4,4−ジメチルペンチルアクリレート、1−、2−、又は3−エチルペンチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキル部分が分岐鎖のもの;シクロブチルアクリレート、シクロペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等のアルキル部分が環状のもの;等が挙げられる。
これらの中では、工業的に安定供給が見込まれ、分散安定性の向上と印字濃度の向上との観点から、ブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートよりなる群から選択されるモノマー(C)が好ましく、後者がより好ましい。
【0024】
分散剤におけるモノマー(A)、モノマー(B)、モノマー(C)の含有割合は、通常、モノマー(A)が20〜60%、モノマー(B)が10〜50%、モノマー(C)が20〜60%であり、好ましくはモノマー(A)が30〜50%、モノマー(B)が10〜40%、モノマー(C)が30〜50%である。
【0025】
上記の分散剤は、質量平均分子量が通常8,000〜100,000、好ましくは8,000〜50,000、より好ましくは8,000〜30,000、さらに好ましくは10,000〜30,000、特に好ましくは10,000〜28,000の範囲である。
分散剤の質量平均分子量が8,000以上であると、着色分散液やインク組成物の保存安定性が良好なものとなる。また、質量平均分子量が100,000以下であると、着色分散液の粘度の増加を抑えられる。このため、そのような着色分散液を含有するインク組成物を調製したとき、遊離の分散剤がプリンタノズルの近傍に付着することが防止され、プリンタからのインクの吐出性が良好なものとなる。
【0026】
上記の分散剤の酸価は通常50〜400mgKOH/g、好ましくは100〜300mgKOH/g、より好ましくは120〜250mgKOH/gである。分散剤の酸価が50mgKOH/g以上であると、着色分散液やインク組成物の保存安定性や、プリンタからのインクの吐出性が良好なものとなる。また、分散剤の酸価が400mgKOH/g以下であると、着色分散液やインク組成物の保存安定性が良好なものとなる。質量平均分子量や酸価は、公知の方法によって測定することができる。
一例として、酸価は、ポリマーの構成単位から算出できるが、適当な溶剤(例えばメチルエチルケトン等)に分散剤を溶解し、滴定により求めることもできる。
【0027】
上記の分散剤は、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合方法により製造することができる。これらの中では、溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒としては、重合により生成する分散剤と親和性の高い極性の有機溶媒が好ましく、水に対する溶解度が20℃において、50%以下のものがより好ましく、5%以上のものがさらに好ましい。
上記の極性の有機溶媒としては、例えば、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、ブトキシエタノール等の脂肪族アルコール;トルエン、キシレン等の芳香族類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;等が挙げられる。これらの中では、脂肪族アルコール、エステル類、グリコールエーテル類が好ましい。
なお、上記インク組成物が含有する着色剤は、マイクロカプセル化されたものでもよい。着色剤をマイクロカプセル化するときに使用する有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、ブトキシエタノール、又はこれらの1種以上と水との混合溶媒が挙げられる。これらの中ではメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が好ましい。
【0028】
上記の重合方法において使用する重合開始剤に特に制限はなく、任意の化合物が適宜使用できる。それらの中ではラジカル重合開始剤が好ましい。重合開始剤としては、アゾ化合物、有機過酸化物等の公知の重合開始剤が挙げられる。
上記アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(AMBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)(ACHN)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(MAIB)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)(ACVA)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチルアミド)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルアミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−シアノ−2−プロピルアゾホルムアミド、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)等が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、ジベンゾイルオキシド、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
重合開始剤の使用量は、モノマー1モル(モノマーの種類が複数あるときは、モノマー配合モノマー比から求めた分子量1モルあたり)あたり、好ましくは0.001〜5モル、より好ましくは0.01〜2モルである。
重合反応を行うときは、さらに、オクチルメルカプタン、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類、チウラムジスルフィド類等の公知の重合連鎖移動剤を反応系に添加することができる。
【0030】
重合反応の反応条件は、使用する重合開始剤、モノマー、溶媒の種類等によって異なり、一概にいうことは困難であるが、通常、重合温度は30〜150℃、好ましくは50〜100℃であり、重合時間は1〜20時間程度である。また、反応は、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成した分散剤を単離することができる。また、得られたポリマーは、再沈澱を繰り返すこと、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去して精製することができる。
【0031】
重合反応により生成した分散剤を単離することなく、反応溶媒である上記の極性の有機溶媒を水性媒体へ置換することにより、分散剤の水溶液、又は水分散液を得ることもできる。
そのような方法としては、例えば、以下の2つの方法が挙げられる。
方法1:
水と共沸する溶媒中で重合反応を行い、反応の終了後、水と中和剤とを加えて生成した分散剤を水層に移し、溶剤を水と共沸させて除去することにより、分散剤の水溶液、又は水分散液を得る方法。
方法2:
インク組成物の組成が決定し、例えば水溶性有機溶剤を含有するときは、その水溶性有機溶剤を反応溶媒として重合反応を行った後、水と中和剤とを加えて分散剤の水溶液、又は水分散液を得る方法。
上記の方法2においては、得られた分散剤の水溶液又は水分散液が水溶性有機溶剤を含有する。このように水溶性有機溶剤を含有するものであっても、本明細書においては水を含有する限り、「分散剤の水溶液、又は水分散液」という。
上記の中和剤としては、後記する「インク調製剤」における「pH調整剤」と同じものが挙げられる。
中和剤は1種類を使用してもよく、また2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
上記の中和剤の使用量は、中和度から算出することができる。中和度は、通常10〜200%であり、20〜150%が好ましく、50〜100%がさらに好ましい。
中和度は、下記式によって求めることができる。
中和度(%)={[中和剤の重量(g)/中和剤の当量]/(ポリマーの酸価×中和剤の分子量)/(KOHの分子量×中和剤の当量×1000)×ポリマーの重量(g)}×100
例えば、ポリマー酸価:200(ポリマー1gを完全中和するのに必要なKOHのmg数)、ポリマー量:10g、中和剤トリエタノールアミン(Mw149.2、当量1)、トリエタノールアミン量:5gのとき、その中和度は、以下の計算式から93.8%と算出できる。
中和度(%)={5g/(200×149.2/56×1000)×10}×100=93.8%
【0033】
着色剤に対する上記の分散剤の使用比率は、着色剤に対して通常10〜150%、好ましくは10〜60%、より好ましくは15〜45%である。分散剤の使用比率を上記の範囲とすることで、着色分散液の保存安定性低下や、該着色分散液を含有するインク組成物を用いた記録画像の劣化等を防止することができる。
上記の着色分散液中における各成分の含有量を一概に決めることは困難であるが、インク組成物としたときの印字濃度を良好にする観点からは、
着色剤が通常5〜60%、好ましくは10〜40%、より好ましくは、10〜30%、
分散剤が通常2〜40%、好ましくは3〜20%、より好ましくは4〜10%、
必要に応じて水溶性有機溶剤が通常3〜40%、好ましくは5〜20%、
残部が水である。なお、これらの含有量は、いずれも固形分としての換算値である。
【0034】
上記インク組成物が含有する水溶性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール等のC1−C6アルカノール;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルピロリジン−2−オン等のラクタム;1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−オン、1,3−ジメチルヘキサヒドロピリミド−2−オン等の環式尿素類;アセトン、2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オン、エチレンカーボネート等のケトン又はケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(好ましくは分子量400、800、1540、又はそれ以上のもの)、ポリプロピレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール等のC2−C6アルキレン単位を有するモノ、オリゴ、若しくはポリアルキレングリコール又はチオグリコール;グリセリン、ジグリセリン、ヘキサン−1,2,6−トリオール、トリメチロールプロパン等のC3−C9ポリオール(トリオール);エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル(好ましくはモノ、ジ、又はトリエチレングリコールC1−C6エーテル、及びモノ又はジプロピレングリコールC1−C4エーテルよりなる群から選択されるグリコールエーテル);1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール等のC5−C9アルカンジオール;γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド等;等が挙げられる。これらの有機溶剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
上記のうち、水溶性有機溶剤としては、グリコールエーテル及びアルカンジオールよりなる群から選択される少なくとも1種類の水溶性有機溶剤を用いるのが好ましい。
上記のうち、グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテルが好ましく、エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテルがより好ましい。
また同様に、アルカンジオールとしては、上記したいずれの化合物も好ましい。
水溶性有機溶剤の含有量は、インク組成物の総質量に対して、通常0.5〜50%、好ましくは1.0〜30%、より好ましくは3〜15%である。
【0036】
上記インク組成物は、さらに、界面活性剤を含有するのが好ましい。
界面活性剤の例としては、例えば、アニオン界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等の公知の界面活性剤が挙げられる。これらの中では、アニオン及びノニオン界面活性剤よりなる群から選択される少なくとも1種類の界面活性剤が好ましい。
【0037】
アニオン界面活性剤としては、アルキルスルホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンジノニルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩、N−アシルアミノ酸又はその塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。市販品として入手できるものの具体例としては、例えば、ハイテノールTMLA−10、LA−12、LA−16、NE−05、NE−15、NF−13、NF−17、ネオハイテノールTMECL−30S、ECL−45(以上、第一工業製薬製)、アデカコールTMEC−8600(アデカ製)、ぺレックスTMOT−P(花王製)等が挙げられる。
これらの中では、ポリオキシエチレンジノニルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩が好ましい。
なお、本明細書において、上付きの「TM」は商標を意味する。
【0038】
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアセチレングリコールエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル等のエーテル系(例えば、日本触媒製のソフタノールTM EP−5035、7085、9050;アデカ製のプルロニックTML−31、L−34、L−44;花王製のエマルゲンTMA−90等);ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等のアセチレングリコール(アルコール)系;いずれも日信化学社製のサーフィノールTM104、104PG50、105PG50、82、420、440、465、485;オルフィンTMSTG;ポリグリコールエーテル系(例えばSIGMA−ALDRICH社製のTergItolTM15−S−7等);等が挙げられる。
これらの中では、サーフィノール、ポリオキシエチレンアセチレングリコールエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルが好ましい。
【0039】
カチオン界面活性剤としては、2−ビニルピリジン誘導体、ポリ4−ビニルピリジン誘導体等が挙げられる。
【0040】
両性界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0041】
上記シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。市販品として入手できるものの具体例としては、例えば、いずれもビックケミー社製の、BYK−347(ポリエーテル変性シロキサン);BYK−345、BYK−348、BYK−349(ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン);等が挙げられる。
【0042】
上記フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸系化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物等が挙げられる。市販品として入手できるものの具体例としては、例えば、Zonyl TBS、FSP、FSA、FSN−100、FSN、FSO−100、FSO、FS−300、Capstone FS−30、FS−31(以上、DuPont社製);PF−151N、PF−154N(以上、オムノバ社製);等が挙げられる。
【0043】
上記インク組成物が界面活性剤を含有するとき、界面活性剤の総含有量は、インク組成物の総質量に対して通常0.1〜3%、好ましくは0.3〜1.5%である。0.1%以上とすることで界面活性剤としての効果を得ることができ、3%以下とすることでインクの保存安定性が良好なものとなる。
【0044】
上記インク組成物は、必要に応じて上記以外のインク調製剤をさらに含有してもよい。そのようなインク調製剤としては、例えば防腐防黴剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤、水溶性紫外線吸収剤、酸化防止剤、水溶性高分子、水分散性高分子、消泡剤等が挙げられる。
上記インク組成物中における、これらのインク調製剤の総含有量は、おおよそ0.05〜30%である。
【0045】
防黴剤の具体例としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン及びその塩等が挙げられる。
【0046】
防腐剤の具体例としては、例えば、有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリールスルホン系、ヨードプロパギル系、ハロアルキルチオ系、ニトリル系、ピリジン系、8−オキシキノリン系、ベンゾチアゾール系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系、無機塩系等の化合物が挙げられる。有機ハロゲン系化合物の具体例としては、例えばペンタクロロフェノールナトリウムが挙げられる。ピリジンオキシド系化合物の具体例としては、例えば2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウムが挙げられる。イソチアゾリン系化合物の具体例としては、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンマグネシウムクロライド、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド等が挙げられる。その他の防腐防黴剤の具体例として、無水酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、アーチケミカル社製、商品名プロクセルRTMGXL(S)やプロクセルRTMXL−2(S)等が挙げられる。
【0047】
pH調整剤としては、調製されるインクに悪影響を及ぼさずに、インクのpHを例えば5〜11の範囲に制御できるものであれば任意の物質を使用することができる。その具体例としては、例えば、モノ、ジ、又はトリエタノールアミン;N−メチルジエタノールアミン;モノ、ジ、又はトリプロパノールアミン;メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等のアルカノールアミン;モノ、ジ、又はトリメチルアミン;モノ、ジ、又はトリエチルアミン等のアルキルアミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化アンモニウム(アンモニア水);炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;ケイ酸ナトリウム、酢酸カリウム等の有機酸のアルカリ金属塩;リン酸二ナトリウム等の無機塩基等が挙げられる。
【0048】
キレート試薬の具体例としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラシル二酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0049】
防錆剤の具体例としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト等が挙げられる。
【0050】
水溶性紫外線吸収剤の具体例としては、例えば、スルホ化したベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾ−ル系化合物、サリチル酸系化合物、桂皮酸系化合物、トリアジン系化合物が挙げられる。
【0051】
水溶性高分子化合物としては、水へ溶解する高分子であれば特に限定されないが、分散安定性の観点からアニオン性高分子及びノニオン性高分子が好ましい。アニオン性高分子の具体例としては、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸等のアクリル酸誘導体、及びポリスチレンスルホン酸塩等のポリスチレン誘導体が挙げられる。ノニオン性高分子の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ゼラチン等が挙げられる。
【0052】
水分散性樹脂は、常温で被膜化することによりインク組成物中の着色剤を被記録材に定着させる働きを有する。水分散性樹脂に使用される樹脂としては特に制限はなく、例えば、ウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂、スチレンブタジエン系樹脂等が挙げられる。
水分散性樹脂は、例えば、連続相としての水中に分散された樹脂エマルションの状態で使用される。
樹脂エマルションの中には、市販品として入手できるものもある。その具体例としては、例えば、スーパーフレックスTM126、130、150、170、210、420、470、820、830、890(ウレタン系樹脂エマルション、第一工業製薬社製);ハイドランTMHW−350、HW−178、HW−163、HW−171、AP−20、AP−30、WLS−201、WLS−210(ウレタン系樹脂エマルション、DIC社製);0569、0850Z、2108(スチレン−ブタジエン系樹脂エマルション、JSR社製);AE980、AE981A、AE982、AE986B、AE104(アクリル系樹脂エマルション、イーテック社製);等が挙げられる。
水分散性樹脂を使用するとき、上記インク組成物の総質量中における水分散性樹脂の含有量は、固形分換算で通常0.5〜20%、好ましくは1〜15%、より好ましくは2〜10%である。0.5%以上とすることで被記録材に対して十分な定着性を得ることが容易になり、20%以下とすることでインクジェット記録におけるインク液滴の正常な吐出を阻害する虞がなくなる。
【0053】
酸化防止剤の具体例としては、例えば、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。上記有機系の褪色防止剤の例としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、複素環類等が挙げられる。
【0054】
消泡剤の具体例としては、例えば、シリコーン系、シリカ鉱物油系、オレフィン系、アセチレン系等が挙げられる。市販の消泡剤で入手可能なものとして、例えば、いずれも信越化学工業株式会社製のサーフィノールTMDF37、DF58、DF−110D、DF220、MD−20、オルフィンTMSK−14が挙げられる。これらの消泡剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
消泡剤を使用するとき、その添加量は、添加する液の総質量に対して0.01〜5%が好ましく、0.03〜3%がより好ましく、0.05〜1%がさらに好ましい。0.01%以上とすることで消泡剤としての効果が良好なものとなり、5%以下とすることで分散安定性が良好なものとなる。
【0055】
上記インク組成物は、少なくとも上記の着色分散液、及び水溶性有機溶剤を含有し、界面活性剤等の上記インク調製剤を必要に応じてさらに含有してもよい。これら以外の残部は水である。
【0056】
上記インク組成物をインクジェット記録に用いるときは、インク組成物中における金属陽イオンの塩化物(例えば塩化ナトリウム)、硫酸塩(例えば硫酸ナトリウム)等の無機不純物の含有量は、少ないものが好ましい。無機不純物は、着色剤の原末中に混在していることも多く、必要に応じて原末を精製することも好ましい。無機不純物の含有量の目安としては、おおよそ着色剤の総質量に対して1%以下程度であり、下限は分析機器の検出限界以下、すなわち0%でよい。着色剤から無機不純物を除去する方法としては、例えば、色素の乾燥品あるいはウェットケーキを適当な水溶性有機溶剤(例えば、メタノール等のC1−C4アルコール)及び、必要に応じて水溶性有機溶剤と水との混合溶媒中で撹拌し、析出物を濾過分離して、乾燥する等の方法;イオン交換樹脂で無機不純物を交換吸着する方法;等で脱塩処理すればよい。
【0057】
上記インク組成物のpHは、保存安定性を向上させる目的及びインクジェットプリンタ部材との適合性から、通常pH7〜11、pH8〜10が好ましい。また、インク組成物の表面張力としては、通常10〜50mN/mであり、20〜40mN/mが好ましい。さらに、インク組成物の粘度としては、通常2〜30mPa・sであり、3〜20mPa・sが好ましい。
上記インク組成物のpH、表面張力はpH調整剤、界面活性剤、水溶性有機溶剤等で適宜調整することが可能である。
【0058】
上記インク組成物の製造方法に特に制限はないが、下記工程1乃至3等を行うことにより、効率的に製造することができる。
工程1:
上記の着色剤、分散剤、水、及び、必要に応じて水溶性有機溶剤とインク調整剤とを含有する混合物を分散処理することにより、着色分散液を得る工程。
工程2:
工程1で得られた着色分散液に、上記の水溶性有機溶剤、及び、必要に応じてインク調整剤と水とを加えて混合し、インク組成物を得る工程。
工程3:
工程2で得られたインク組成物を精密濾過し、インク組成物中の粗大粒子等の夾雑物を除去する工程。
なお、上記の工程3は必ずしも必須ではないが、上記インク組成物をインクジェット記録に用いるときは、工程3を行うことが好ましい。
【0059】
工程1における分散処理としては、例えば、上記の混合物をロールミル、ビーズミル、ニーダー、エクストルーダ等の混練機;高圧ホモゲナイザー[(株)イズミフードマシナリ製]、ミニラボ8.3H型[Rannie社製]等のホモバルブ式の高圧ホモジナイザー;マイクロフルイダイザー[Microfluidics社製]、ナノマイザー[ナノマイザー(株)製]、アルティマイザー[スギノマシン(株)製]、ジーナスPY[白水化学(株)製]、DeBEE2000[日本ビーイーイー(株)製]等のチャンバー式の高圧ホモジナイザー;ホモミキサー、ディゾルバー等の高せん断撹拌機;等を用いて十分に混合し、着色分散液を得る方法等が挙げられる。
【0060】
上記着色分散液中における着色剤の平均粒子径は、着色分散液やインク組成物の保存安定性及び吐出性の観点から、通常200nm以下、好ましくは50〜200nm、より好ましくは70〜170nm、さらに好ましくは80〜130nmである。
また、場合により平均粒子径に加えて、着色剤のD90及びD10を測定することも好ましく行われる。
着色剤のD90(散乱強度の頻度分布における、小粒子側から計算した累積90%の値)は、粗大粒子を減らして、分散液の保存安定性を高める観点から、通常300nm以下、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下である。下限は、製造のし易さから、100nm以上が好ましい。
着色剤のD10(散乱強度の頻度分布における、小粒子側から計算した累積10%の値)は、インク組成物としたときの印字濃度の観点、製造のし易さから、通常10nm以上、好ましくは20nm以上、より好ましくは30nm以上50nm以下である。
【0061】
上記の工程2としては、各成分が十分に混合されれば特に制限はないが、ディゾルバーやホモミキサー等の高速撹拌機が調製時間の観点から好ましい。また、各成分を添加する順序も特に制限はないが、溶媒ショック等の凝集作用を減少させる目的で、水溶性有機溶剤と、必要に応じてインク調製剤とを水に溶解させた後、着色分散液を添加することも好ましく行われる。
【0062】
工程3は、インクジェットプリンタのノズル詰まりの防止等を目的として、インク組成物中の粗大粒子、埃、塵等を、濾過分離する工程である。濾過に使用するフィルターの開口径は特に制限されないが、通常0.5〜10μm、好ましくは1〜3μm程度である。
フィルターの材質に特に制限はないが、価格と濾過効率の観点からポリプロピレン、ガラス繊維等が好ましい。
上記のフィルターは単独で濾過に用いてもよいし、2種類以上のフィルターを用いて濾過することも好ましく行われる。
【0063】
上記インク組成物は、各種分野において使用することができる。例えば、筆記、印刷、情報記録、捺染等の用途が挙げられ、インクジェット記録に用いることが特に好ましい。
【0064】
上記インクジェット記録方法は、上記インク組成物の液滴を記録信号に応じて吐出させて、被記録材に付着させることにより記録を行う方法である。記録の際に使用するインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
上記の記録方法に用いる方式としては、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式;ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式);電気信号を音響ビームに変えインクに照射し、その放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式;インクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット、すなわちバブルジェット(登録商標)方式;等の、いずれの公知の方法も採用することができる。
また、フォトインク等と呼称する、色素含有量の少ないインクを、小さい体積で多数射出する方式;実質的に同じ色相で、色素濃度の異なる複数のインクを併用して画質を改良する方式;無色透明のインクを用いる方式;等の方式も含まれる。
【0065】
上記の被記録材としては、特に制限はないが、例えば、紙、フィルム等の情報伝達用シート、繊維や布(セルロース、ナイロン、羊毛等)、皮革、カラーフィルター用基材等が挙げられる。これらの中では情報伝達用シートが好ましい。
情報伝達用シートとしては、紙、合成紙、フィルム等の基材にインク受容層を設けたものが挙げられる。インク受容層は、例えば、上記基材にカチオン系ポリマーを含浸あるいは塗工する方法;多孔質シリカ、アルミナゾル、特殊セラミックス等の無機微粒子をポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーと共に上記基材表面に塗工する方法;等により設けられる。このようなインク受容層を設けたものは、通常、インクジェット専用紙、インクジェット専用フィルム、光沢紙、光沢フィルム等と呼ばれる。
これらのシートは表面光沢度が高く、また耐水性も優れるため、写真画像の記録に適している。このようなシートの市販品としては、例えば、キヤノン(株)製 商品名:プロフェッショナルフォトペーパー、スーパーフォトペーパー、光沢ゴールド及びマットフォトペーパー;セイコーエプソン(株)製 商品名:写真用紙クリスピア(高光沢)、写真用紙(光沢)、フォトマット紙;日本ヒューレット・パッカード(株)製 商品名:アドバンスフォト用紙(光沢);富士フィルム(株)製 商品名:画彩写真仕上げPro;等が挙げられる。
【0066】
インク受容層を有さない情報伝達用シートとしては、グラビア印刷、オフセット印刷等の用途に用いられるコート紙、アート紙等の各種の用紙(例えば、王子製紙製のフォームグロスTM、OKトップコートTM、日本製紙製のオーロラコートTM、三菱製紙製のパールコートTM等);ラベル印刷用途に用いられるキャストコート紙;等が挙げられる。
また、インク受容層を有さない情報伝達用シートとしては、例えば、日本製紙社製のNpi70、三菱製紙社製のPD−W70等の普通紙も挙げられる。一般に普通紙は、表面に露出したパルプの繊維方向に沿ってインクの滲み(フェザリング)が発生し易い。そのため、多くの場合、水性インクの滲みを抑制するために、パルプ重量に対し、0.1%程度のサイズ剤が添加されている。このサイズ剤の添加は、インクの滲みを抑制し、画質を向上させる効果がある反面、インクの浸透速度を低下させることから、付着したインクの乾燥が遅くなる欠点を有する。インクの乾燥が遅くなると、例えば両面印刷するときに、インクの乾燥不良から画像の汚れや乱れ等が生じる。しかし、上記インク組成物を用いることにより、このような普通紙であっても良好な記録画像を得ることができる。
【0067】
インク受容層を有さない情報伝達用シートを用いるときは、表面改質処理を施すことも好ましく行われる。
表面改質処理としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、及びフレーム処理から選択される、公知の表面改質処理が好ましい。ここで、表面改質処理の効果は、経時的に減少していくことが一般的に知られている。このため、表面改質処理工程とインクジェット記録工程とは連続して行うことが好ましく、表面改質処理工程をインクジェット記録工程の直前に行うことが好ましい。
【0068】
コロナ放電処理は、接地された金属ロールと、それに数mmの間隔で置かれた針金状の電極との間に数千ボルトの高電圧をかけてコロナ放電を発生させる処理方法である。
コロナ放電中の電極−ロール間に、情報伝達用シートを配置して処理することにより、その表面が親水化される。
【0069】
プラズマ処理は、情報伝達用シートをアルゴン、ネオン、ヘリウム、窒素、二酸化窒素、酸素、空気等を含む容器内におき、グロー放電により生ずるプラズマに暴露し、その表面に酸素、窒素等を含む官能基を導入することにより親水化処理が施される。アルゴンやネオン等の不活性ガスが低圧で存在するとき、プラズマにより、情報伝達用シートの表面にラジカルが発生すると考えられている。その後、空気に晒されることにより、ラジカルは酸素と結合して、該シートの表面にカルボン酸基やカルボニル基、アミノ基等が導入されると考えられている。
【0070】
フレーム処理は火炎処理ともいい、情報伝達用シートの表面にバーナー等から噴射したガス酸化炎等を吹きかけ、その表面を酸化することにより親水性を向上させる処理をいう。
【0071】
上記の表面改質処理は、所望の効果が得られるように、処理の回数;処理の時間;印可する電圧;等を適宜調整して行うこともできる。
【0072】
上記の着色体は、上記インク組成物により着色された物質を意味し、その材質は、上記インクにより着色される物質であれば特に制限されない。好ましくは、上記インクジェット記録方法により着色された被記録材である。
【0073】
上記インクジェット記録方法で被記録材に記録を行うときは、例えば上記インク組成物を含有する容器をインクジェットプリンタの所定の位置に装填し、上記の記録方法で記録を行えばよい。
【0074】
上記インク組成物は、含有する着色剤を選択することにより、各色のインク組成物とすることができる。例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、及びイエローの少なくとも4種類のインクを備えたインクセットとして、フルカラーの記録を行うこともできる。上記インクセットは、これら4種類のインクのうち少なくとも1種類のインクが、上記インク組成物であるインクセットである。
また、上記インクセットは、より豊かな色彩等を表現するために、必要に応じて、グリーン、ブルー(又はバイオレット)、レッド(又はオレンジ)等の各色のインク組成物をさらに併用してもよい。
各色のインク組成物はそれぞれの容器に注入され、その各容器をインクジェットプリンタの所定の位置に装填してインクジェット記録を行う。
【0075】
本発明の着色分散液は保存安定性が良く、これを含有する本発明のインク組成物は、保存安定性が良好で、保管時のインク粘度変化及び粒子径変化が小さく、インクジェットプリンタでの吐出性能が長期間に亘り変化せず、さらに、濾過性及び再分散性が良好であるため、インクジェット記録に用いるとき、長期間使用しても吐出不良やノズル詰まりが生じない。また、インクジェット専用紙のみならず、普通紙に記録したときであっても印字濃度が高く、耐水性、耐光性、耐擦化性等の堅牢性の高い、高品位で画像安定性の優れる印刷物が得られる。さらに、用紙の種類を変更した場合においても、色相変化が小さい色安定性の高い印刷物が得られる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
特に断りのない限り、濾過分離の操作を行ったときは、濾紙としてガラス濾紙GC−50とガラス濾紙GA−100とを適宜単独又は併用し、吸引濾過を行った。
着色分散液の総質量中における着色剤の含有量を測定するときは、株式会社エイ・アンド・デイ社製の水分計MS−70を用い、乾燥重量法により求めた。
粘度の測定には、RE105L形粘度計(東機産業株式会社製)を用いた。
また、1回の合成等により目的とする生成物の量が得られなかったときは、目的の量が得られるまで、同じ操作を繰り返し行った。
【0077】
(A)分散剤の合成及び分散剤溶剤溶液の調製
[合成例1]
還流冷却器、滴下ロート、及び撹拌機を備えた1Lのフラスコ内に窒素を0.02L/分で流して窒素雰囲気とし、イソプロパノール126.0部、酢酸エチル84.0部を入れ、撹拌しながら88℃に加熱した。この液に、スチレン115.5部、アクリル酸ブチル115.2部、アクリル酸69.3部、イソプロパノール36.0部、及び酢酸エチル24.0部からなるモノマー溶液を、3時間かけて滴下した。一方、パーブチルO(日油製)13.5部、イソプロパノール18.0部、及び酢酸エチル12.0部からなる溶液を、モノマー溶液の滴下と並行して、3時間かけて同じ液に滴下した。各溶液の滴下が終了した後、同温度で1時間反応させた。得られた液に、パーブチルO(日油製)3.0部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル15.0部からなる溶液を加え、同温度でさらに3時間反応させた。得られた液にイソプロパノール81.0部、及び酢酸エチル54.0部を加え、室温まで冷却することにより、固形分39.5%、酸価177mgKOH/g(固形分換算)の分散剤の溶剤溶液を得た。得られた溶剤溶液を「分散剤溶液1」とする。
【0078】
[合成例2]
還流冷却器、滴下ロート、及び撹拌機を備えた1Lのフラスコ内に窒素を0.02L/分で流して窒素雰囲気とし、イソプロパノール126.0部、酢酸エチル84.0部を入れ、撹拌しながら88℃に加熱した。この液に、スチレン115.5部、アクリル酸2−エチルヘキシル115.2部、アクリル酸69.3部、イソプロパノール36.0部、及び酢酸エチル24.0部からなるモノマー溶液を、3時間かけて滴下した。一方、パーブチルO(日油製)13.5部、イソプロパノール18.0部、及び酢酸エチル12.0部からなる溶液を、モノマー溶液の滴下と並行して、3時間かけて同じ液に滴下した。各溶液の滴下が終了した後、同温度で1時間反応させた。得られた液に、パーブチルO(日油製)3.0部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル15.0部からなる溶液を加え、同温度でさらに3時間反応させた。得られた液に、イソプロパノール81.0部、及び酢酸エチル54.0部を加え、室温まで冷却することにより、固形分39.5%、酸価176mgKOH/g(固形分換算)の分散剤の溶剤溶液を得た。得られた溶剤溶液を「分散剤溶液2」とする。
【0079】
[合成例3〜9]
下記表1に記載したモノマーを用いた以外は合成例1及び2と同様にして、分散剤溶液3〜9を得た。
なお、下記表1〜4中、各成分の量を示す数値はいずれも「部」数であり、「−」を記載したものは、その成分を含まないことを意味する。
表1中で使用した略号等は、以下の意味を有する。
ST:スチレン
BA:ブチルアクリレート
EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
EHMA:2−エチルヘキシルメタクリレート
AA:アクリル酸
MA:メタクリル酸
PBO:パーブチルO(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノアート)
なお、表1〜6中で適宜使用される「固形分」とは、各分散剤溶液中に含有される分散剤の固形分換算値を意味し、単位は「%」である。同様に、「酸価」の単位は「mgKOH/g」、「平均粒子径」の単位は「nm」、「粘度」の単位は「mPa・s」である。
【0080】
【表1】
【0081】
(B)分散剤水溶液の調製
[調製例1]
上記の合成例1で得られた分散剤溶液1(150.8部)、トリエタノールアミン(72.1部)、及び精製水(159.8部)を500mLビーカーに入れ、撹拌することにより溶液を得た。得られた溶液を1Lナス型フラスコに移し、エバポレーター(−90bar、55℃)にて、イソプロパノール、酢酸エチル、及び一部の水を留去することにより、分散剤水溶液を得た。得られた分散剤水溶液の固形分は上記の水分計を用いて120℃での乾燥重量から算出し、イオン交換水を加えることにより、分散剤の含有量が20%である分散剤の水溶液を調製した。得られた分散剤の水溶液を、「分散剤水溶液1」とする。
【0082】
[調製例2〜11]
表2に記載した各成分を用いる以外は調製例1と同様にして、分散剤水溶液2〜11を得た。
なお、上記のようにして調製した分散剤水溶液1〜11において、各水溶液が含有する分散剤の中和度は1.0、分散剤の含有量は20%である。
【0083】
【表2】
【0084】
(C)着色分散液の調製
[実施例1]
C.I.ピグメントレッド122(MEGHMANI PIGMENTS社製Alpa Fast Pink E AS−2709−S、25部)、上記の調製例1で得た分散剤水溶液1(37.5部)、ジエチレングリコール(10.0部)、オルフィンSK−14(0.02部)を混合し、サンドグラインダーで2000rpmの条件下、15時間分散処理を行った。得られた液を精製水159.8部で希釈し、分散用ビーズを濾過分離することにより、マゼンタ色の着色分散液を調製した。得られた着色分散液を「着色分散液1」とする。
分散液1の総質量中における着色剤の含有量は15%であった。また、着色分散液1における着色剤の平均粒子径は94nm、粘度は3.1mPa・sであった。
【0085】
[実施例2〜7]
下記表3に記載の各成分を使用した以外は実施例1と同様にして、着色分散液2〜7を得た。
【0086】
[比較例1〜7]
下記表3に記載の各成分を使用した以外は実施例1と同様にして、着色分散液8〜14を得た。
なお、上記のようにして得た各実施例及び比較例の着色分散液において、各着色分散液が含有する着色剤の含有量は15%、着色剤に対する分散剤の比率は30%である。
また、下記表3中、「PY151」は、「C.I.ピグメントイエロー151」を意味する。
【0087】
【表3】
【0088】
(D)インク組成物の調製
[実施例8]
上記実施例1で得た着色分散液1(33.3部)、グリセリン(22.0部)、トリエチレングリコール(8.0部)、2−ピロリドン(9.0部)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(1.0部)、サーフィノールTM465(0.7部)、ハイテノールLA−16(0.3部)、サーフィノールTMDF−110D(0.01部)、及びトリエタノールアミン(0.2部)を混合した後、3μmのメンブレンフィルターで夾雑物を濾別することにより、実施例8のインク組成物を得た。いずれのインク組成物も着色剤の総含有量が5%となるように調整した。
【0089】
[実施例9〜14]
下記表4に記載の各成分を用いる以外は実施例8と同様にして、実施例9〜14の各インク組成物を得た。
【0090】
[比較例8〜11]
下記表4に記載の各成分を用いる以外は実施例8と同様にして、比較例8〜11のインク組成物を得た。なお、比較例1及び2の着色分散液は、後記「(G)保存安定性試験」における保存後に着色分散液がゲル化し、また、比較例3の着色分散液は、保存後の粘度増加が極めて大きく、いずれも着色分散液としての保存安定性が極めて悪かったため、インク組成物の調製には用いなかった。
上記のようにして調製した各実施例及び比較例のインク組成物は、いずれも着色剤の含有量が5%となるように調整した。
なお、下記表4中に記載の「DGMBE」は、「ジエチレングリコールモノブチルエーテル」を意味する。
【0091】
【表4】
【0092】
[着色分散液及びインク組成物の物性値の測定]
上記の各実施例及び比較例の着色分散液、及びインク組成物の物性値として、平均粒子径、及び粘度の測定を行った。
(E)平均粒子径の測定
実施例及び比較例にて得た各着色分散液の調製直後と、密閉容器中70℃で5日間又は60℃で7日間保存した後、の2種類ずつのサンプルについて、色素成分の濃度が0.02%となるように着色分散液をイオン交換水にて希釈し、実施例及び比較例の各被検液を調製した。得られた各被検液について、平均粒子径を測定した。平均粒子径の測定には、動的光散乱式粒度分布測定装置LB−500(株式会社堀場製作所製)を用いた。
【0093】
(F)粘度の測定
実施例及び比較例にて得た各着色分散液について、着色分散液の調製直後と、密閉容器中70℃で5日間又は60℃で7日間保存した後の、25℃における粘度をそれぞれ測定した。
粘度の測定には、E型粘度計RE105L(東機産業株式会社製)を用いた。
【0094】
(G)保存安定性試験
上記(E)及び(F)で測定した平均粒子径及び粘度について、調製直後と70℃で5日間又は60℃で7日間保存後の各測定値の変化率を下記式にて算出し、下記A〜Dの4段階の基準で評価した。
調製直後と5日間保存後の各測定値の間に乖離が少ないものほど保存安定性が良いことを意味し、保存安定性に優れることを示す。また、保存安定性は、最も評価結果の悪かった基準に基づき総合判定とした。
なお、上記の通り、比較例1及び2の着色分散剤は保存後にゲル化し、比較例3の着色分散液は保存後の粘度増加が極めて大きく、いずれも保存安定性が極めて悪かったため、比較例1及び2については平均粒子径及び粘度の、また、比較例3については平均粒子径の測定自体を行わなかった。
平均粒子径又は粘度の変化率=(保存後の測定値−調製直後の測定値)/(調製直後の測定値)×100%
A:変化率が±5%未満
B:変化率が±5%以上、±10%未満
C:変化率が±10%以上、±15%未満
D:変化率が±15%以上、±20%未満
【0095】
(H)再分散性試験
上記各実施例、及び比較例のインク組成物をそれぞれガラスシャーレの上に25μLのせ、60℃の恒温恒湿機で1時間乾燥させた。得られた乾燥したインク組成物に、室温で10mLのイオン交換水を滴下し、再分散するか否かを目視にて観察し、下記4段階の基準で評価した。再分散するインクほど、乾燥後の目詰まりを解消し易いため優れている。結果を下記表6に示す。
A:残渣なく、全てが再分散した。
B:残渣が少し残るが、ほとんどが再分散している。
C:残渣は多く残るが、多少再分散している。
D:まったく再分散しない。
【0096】
(I)濾過性試験
上記各実施例、及び比較例の着色分散液100gをガラス濾紙GC−50及びガラス濾紙GA−100にて濾過を行い、濾過の状態を目視観察し、以下A〜Cの3段階の基準で評価した。
A:GC−50、GA−100共に目詰りなく濾過できる。
B:GC−50では目詰りが発生するが、GA−100では目詰りなく濾過できる。
C:GC−50、GA−100共に目詰りが発生して濾過できない。
【0097】
(J)発色性評価
上記の各実施例及び比較例のインク組成物を、市販のインクジェットプリンタ(エプソン社製PX−101)を用いて、下記の2種類の被記録材にベタ印字した。得られた着色体を試験片とし、測色計(X−Rite社製SpectroEye)にて発色性(印字濃度)を下記3段階の評価基準で評価した。結果を下記表6に示す。
A:印字濃度が1.2以上
B:印字濃度が0.9以上1.2未満
C:印字濃度が0.9未満
[被記録材]
普通紙1:日本製紙社製Npi70
普通紙2:三菱製紙社製PD−W70
【0098】
下記表5に着色分散液の評価結果を示す。
【0099】
【表5】
【0100】
上記の結果より、各実施例の着色分散液は、保存安定性、濾過性が優れることが明らかとなった。
【0101】
一方、各比較例着色分散液は、比較例5〜7を除き、保存後の粘度上昇等の物性値の変動が激しく、保存安定性が不良であった。
【0102】
下記表6にインク組成物の評価結果を示す。
【0103】
【表6】
【0104】
上記の結果より、実施例8〜14のインク組成は、比較例8〜11のインク組成物に比べて、保存安定性及び再分散性が顕著に優れることが明らかとなった。保存安定性が高いということは、インク組成の物性値が長期間に亘り変化しないことを示しており、安定性した吐出性能と安定性した画像品質とを担保するものである。また、再分散性が良好であるということは、ヘッドノズル面でインクが乾燥した場合でも、ノズル詰まりせず、吐出曲りや不吐出等の吐出異常が生じないことを示しており、インクジェット用インクとして、非常に高い信頼性を有することが明らかである。
【0105】
また、発色性においても、実施例8〜14のインク組成物の方が比較例8〜11よりも優れており、印刷物の品位に優れることが明らかとなった。
【0106】
上述の如く、実施例9〜16のインク組成物をインクジェット用インクとして使用した場合は、印刷物の品質が高いだけでなく、その印刷品質を長期間に亘り提供できるインク組成物であることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の着色分散液は、保存安定性及び濾過性が非常に優れ、さらに、該着色分散液用いたインク組成物は、保存安定性、再分散性、及び発色性に優れ、インクジェットインクの信頼性が極めて高い。また、長期間に亘り品質の高い印刷物を提供できるため、インクジェット記録用インクとして極めて有用である。