特許第6293135号(P6293135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6293135ウエハキャリアおよびこれを用いたエピタキシャル成長装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6293135
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】ウエハキャリアおよびこれを用いたエピタキシャル成長装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20180305BHJP
   H01L 21/673 20060101ALI20180305BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   H01L21/68 N
   H01L21/68 U
   H01L21/205
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-521360(P2015-521360)
(86)(22)【出願日】2014年5月14日
(86)【国際出願番号】JP2014062800
(87)【国際公開番号】WO2014196323
(87)【国際公開日】20141211
【審査請求日】2017年2月14日
(31)【優先権主張番号】特願2013-120207(P2013-120207)
(32)【優先日】2013年6月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 敏樹
【審査官】 儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−291916(JP,A)
【文献】 特開昭62−252931(JP,A)
【文献】 特開2007−042844(JP,A)
【文献】 特開2005−236279(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/041578(WO,A1)
【文献】 特開2004−075493(JP,A)
【文献】 特表平07−505261(JP,A)
【文献】 特表2004−513857(JP,A)
【文献】 特表2011−507266(JP,A)
【文献】 特表2013−507776(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/156371(WO,A1)
【文献】 米国特許第06213478(US,B1)
【文献】 国際公開第2011/128811(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/205
H01L 21/673
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハを保持するための一以上のキャビティを有する上面と、回転スピンドルの上端を取り外し可能に挿入するための結合孔を中心に有する下面と、前記上面と前記下面とをつなぐ外周部を有し、黒鉛からなる基材と、少なくとも前記上面と前記下面及び前記外周部とを覆うセラミック被膜と、からなるウエハキャリアであって、
前記結合孔は、上面側から下面側に向かって拡大するテーパ状の壁面と、前記壁面との境界よりも中央部が深い底面とからなり、
前記底面は、前記壁面との境界から延びるテーパ面を有することを特徴とするウエハキャリア。
【請求項2】
ウエハを保持するための一以上のキャビティを有する上面と、回転スピンドルの上端を取り外し可能に挿入するための結合孔を中心に有する下面と、前記上面と前記下面とをつなぐ外周部を有し、黒鉛からなる基材と、少なくとも前記上面と前記下面及び前記外周部とを覆うセラミック被膜と、からなるウエハキャリアであって、
前記結合孔は、上面側から下面側に向かって拡大するテーパ状の壁面と、前記壁面との境界よりも中央部が深い底面とからなり、
前記底面は、前記壁面との境界から延びるドーム状の面であることを特徴とするウエハキャリア。
【請求項3】
前記壁面は、前記セラミック被膜で覆われていることを特徴とする請求項1または2に記載のウエハキャリア。
【請求項4】
前記セラミック被膜は、炭化珪素であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のウエハキャリア。
【請求項5】
前記黒鉛からなる基材は、一体的に構成されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のウエハキャリア。
【請求項6】
前記外周部には、下側を向いた保持面を有するフランジが形成され、
前記セラミック被膜は、前記上面における厚さより、前記保持面における厚さが薄く形成されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のウエハキャリア。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか一項に記載のウエハキャリアと、
上端に開口部を有する回転スピンドルと、
前記ウエハキャリアを加熱する加熱手段と、
前記ウエハキャリアの上に配置された原料ガスの供給手段と、
を有し、
前記開口部は、気体を吸引する吸引機構に接続されていることを特徴とするエピタキシャル成長装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハなどの基板上にエピタキシャル膜を成長させるためのウエハキャリア及びこれを用いたエピタキシャル成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体産業では、良質な単結晶ウエハを得る方法としてエピタキシャル成長法が知られている。半導体産業で用いられる気相エピタキシャル成長は、CVD装置内のウエハキャリアに単結晶ウエハを載置するとともに原料ガスを供給し、単結晶ウエハの表面に、気相中の成分を堆積させる。
【0003】
特許文献1には、リアクタ・サイクルの低減と、構成部品の低コストおよび長寿命と、高精度の温度制御とが可能な、ウエハ上にエピタキシャル層を蒸着させるエピタキシャル成長装置(リアクタ)が記載されている。特許文献1のエピタキシャル成長装置では、ウエハキャリアは、装着位置Lと蒸着位置Dの間を移動する。蒸着位置では、ウエハキャリアは、中間サセプタを必要とせずに、回転式スピンドルの上端に取り外し可能に取り付けられる。特許文献1のリアクタは、単一ウエハまたは同時に複数のウエハを処理できる。
具体的には、以下のことが記載されている。
【0004】
スピンドルの上端をウエハキャリアのくぼみへと挿入することにより、スピンドル壁とくぼみ壁との間に摩擦接合を形成し、別個の保持手段を必要とせずにスピンドルによるウエハキャリアの回転を可能にする。その結果、蒸着の間、スピンドルは回転し、ウエハキャリアとキャビティに置かれたウエハとを回転させる。スピンドルの上のウエハキャリアを摩擦だけで保持することにより、ウエハキャリア−スピンドルのアセンブリの機械的慣性が最少になり、その結果としてスピンドルのひずみが減少する。スピンドルが突然停止し、ウエハキャリアに作用する慣性力がスピンドルの上端間の摩擦力を超える場合には、ウエハキャリアは、スピンドルから独立して回転し、スピンドルのひずみを減少させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2004−525056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記記載のエピタキシャル成長装置ではスピンドルとウエハキャリアが摩擦接合によって結合されている。このため、スピンドルとウエハキャリアとの間の接合は確実なものでなく、特に回転開始時、停止時にスピンドルとウエハキャリアとの間に滑りが生じ、摩耗によってパーティクル発生の原因となる。
また、前記記載のエピタキシャル成長装置のウエハキャリアは、グラファイト(黒鉛)またはモリブデンで製作することが例示されている。しかしながらこれら素材には以下の問題がある。グラファイトは、a軸方向には共有結合によって炭素原子の六角網面を形成し、c軸方向にはファンデルワールス力によって積層した結晶構造をしている。このため、グラファイトはc軸方向に剥離しやすく、摩耗しやすい素材である。摩耗した黒鉛は、パーティクルとなってくぼみ(結合孔)に残留しやすくなる。また、発生した黒鉛のパーティクルは落下し、装置内を汚染しやすくなる。モリブデンは、密度が10.28g/cm融点が2896Kの金属である。黒鉛の密度に対し、5倍以上の密度を有しているので、スピンドルにかかる負担が大きいこと、回転モーメントが大きいことより、摩擦によるパーティクルが発生しやすくなる。
【0007】
前述した課題を鑑み、本発明では、スピンドルとの結合部である結合孔からのパーティクルが発生しにくく、また,パーティクルが発生しても拡散しにくく容易に除去することができるウエハキャリア及びこれを用いたエピタキシャル成長装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための本発明のウエハキャリアは、
(1)ウエハを保持するための一以上のキャビティを有する上面と、回転スピンドルの上端を取り外し可能に挿入するための結合孔を中心に有する下面と、前記上面と前記下面とをつなぐ外周部を有し、黒鉛からなる基材と、少なくとも前記上面と前記下面及び前記外周部とを覆うセラミック被膜と、からなるウエハキャリアであって、
前記結合孔は、上面側から下面側に向かって拡大するテーパ状の壁面により構成される貫通孔である。
【0009】
本発明のウエハキャリアによれば、結合孔が、上面側から下面側に向かって拡大するテーパ状の壁面により構成されているので、結合孔内部にパーティクルが付着しやすいコーナーができにくく、結合孔内部にパーティクルが発生しても、容易に除去することができる。
【0010】
前記課題を解決するための本発明のウエハキャリアは、
(2)ウエハを保持するための一以上のキャビティを有する上面と、回転スピンドルの上端を取り外し可能に挿入するための結合孔を中心に有する下面と、前記上面と前記下面とをつなぐ外周部を有し、黒鉛からなる基材と、少なくとも前記上面と前記下面及び前記外周部とを覆うセラミック被膜と、からなるウエハキャリアであって、
前記結合孔は、上面側から下面側に向かって拡大するテーパ状の壁面と、前記壁面との境界よりも中央部が深い底面とからなる。
【0011】
本発明のウエハキャリアによれば、結合孔が、上面側から下面側に向かって拡大するテーパ状の壁面と、前記壁面との境界よりも中央部が深い底面とからなるので、結合孔内部にパーティクルが付着しやすいコーナーができにくく、結合孔内部にパーティクルが発生しても容易に除去することができる。
【0012】
さらに本発明のウエハキャリアは、次の態様が望ましい。
【0013】
(3)前記底面は、前記壁面との境界から延びるテーパ面を有する。
底面に壁面との境界から延びるテーパ面を有していると、壁面と底面とが形成するコーナーを、より緩やかにすることなできる。このため、コーナー部分にパーティクルが付着しにくくすることができる。
【0014】
(4)前記底面は、前記壁面との境界から延びるドーム状の面である。
底面は、壁面との境界から延びるドーム状の面であると、壁面と底面とが形成するコーナーを、より緩やかにすることができる。このため、コーナー部分にパーティクルが付着しにくくすることができる。
【0015】
(5)前記壁面は、前記セラミック被膜で覆われている。
【0016】
前記壁面が前記セラミック被膜で覆われていると、回転スピンドルとの摩擦でカーボンのパーティクルを発生しにくくすることができる。
【0017】
(6)前記セラミック被膜は、炭化珪素である。
【0018】
前記セラミック被膜が炭化珪素であると、硬いセラミック被膜であるので摩擦による摩耗を少なくすることができ、パーティクルの発生量をより少なくすることができる。また、炭化珪素は導電性を有しているので帯電しにくく、摩擦で発生したパーティクルが付着しにくくすることができ、容易に除去することができる。
【0019】
(7)前記黒鉛からなる基材は、一体的に構成されている。
【0020】
黒鉛からなる基材は、金属並みに固有抵抗が低いので、一体的に構成されていることにより電荷移動を促進し電荷を外部に逃がすことによって、パーティクルの付着を防止し、一旦付着したパーティクル除去を容易にすることができる。また、ウエハキャリアの表面を覆うセラミック被膜が導電性を有する炭化珪素などである場合、さらにその効果が発揮される。
【0021】
(8)前記外周部には、下側を向いた保持面を有するフランジが形成され、
前記セラミック被膜は、前記上面における厚さより、前記保持面における厚さが薄く形成されている。
ウエハキャリアの上面は、原料ガスによる黒鉛の基材の腐食を防止するためセラミック被膜を厚くすることが重要であるが、保持面は原料ガスが供給される領域ではないのでその必要性は小さい。このため、黒鉛の基材より固有抵抗の高いセラミック被膜をフランジの保持面に薄く形成することにより、搬送治具を用いて搬送する際に搬送治具を通して電荷を逃がすことができる。このため、保持面に形成されたセラミック被膜は前記上面のセラミック被膜より薄く形成することにより帯電防止効果を発揮することができる。
【0022】
前記課題を解決するための本発明のエピタキシャル成長装置は、
(9)前記記載のウエハキャリアと、上端に開口部を有する回転スピンドルと、前記ウエハキャリアを加熱する加熱手段と、前記ウエハキャリアの上に配置された原料ガスの供給手段と、を有し、前記開口部は、気体を吸引する吸引機構に接続されている。
【0023】
本発明のエピタキシャル成長装置は、回転スピンドルの開口部が吸引機構に接続されることにより、回転スピンドルとウエハキャリアとが形成する空間に蓄積されたパーティクルを、エピタキシャル成長装置内部に拡散する前に取り除くことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のウエハキャリアによれば、結合孔が、上面側から下面側に向かって拡大するテーパ状の壁面により構成されているので、結合孔内部にパーティクルが付着しやすいコーナーができにくく、結合孔内部にパーティクルが発生しても、容易に除去することができる。
また、本発明のウエハキャリアによれば、結合孔が、上面側から下面側に向かって拡大するテーパ状の壁面と、前記壁面との境界よりも中央部が深い底面とからなるので、結合孔内部にパーティクルが付着しやすいコーナーができにくく、結合孔内部にパーティクルが発生しても容易に除去することができる。
また、本発明のウエハキャリアは、回転スピンドルの開口部が吸引機構に接続されることにより、回転スピンドルとウエハキャリアとが形成する空間に蓄積されたパーティクルを、エピタキシャル成長装置内部に拡散する前に装置内から取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】エピタキシャル成長装置の一例の断面図
図2】ウエハキャリアの一例の斜視図。
図3図2のウエハキャリアの上面のキャビティを示す平面図であり、(a)は、実施形態1および実施形態2のキャビティ、(b)〜(d)はその変形例。
図4】ウエハキャリアの外周部の断面図であり、(a)は、実施形態1のウエハキャリア、(b)〜(d)はその変形例。
図5】ウエハキャリアの結合孔に関する断面図であり、(a)は、本発明の実施形態1のウエハキャリア、(b)〜(c)はその変形例。
図6】実施形態1のウエハキャリアの変形例の結合孔にピンを挿入した断面図。
図7】ウエハキャリアの結合孔に関する断面図であり、(a)は、実施形態2のウエハキャリア、(b)〜(c)はその変形例。
図8】実施形態2のウエハキャリアのセラミック被覆に関する断面図であり、(a)は、上面、下面及び外周部にセラミック被膜を有するウエハキャリア、(b)はさらに結合孔のテーパ状の壁面にセラミック被膜を有するウエハキャリア
図9】実施形態2のウエハキャリアの変形例であり、ウエハキャリアの上面の中央が盛り上がり、ウエハキャリアの上面のウエハを載置する面よりも結合孔の底面が上にあるウエハキャリアである。
図10】実施形態2のウエハキャリアの変形例であり、(a)は、結合孔の開口部が、突出しウエハキャリアの下面より下にあるウエハキャリア、(b)は、結合孔の開口部が、陥没しウエハキャリアの下面より上にあるウエハキャリアである。
図11】本発明のエピタキシャル成長装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下本発明の実施形態について説明する。
ウエハキャリアは、エピタキシャル成長装置内で用いられる。図1は、エピタキシャル成長装置の一例を示す。エピタキシャル成長装置100は、内部にウエハの載置されるウエハキャリア10を備え、ウエハキャリア10の下には、加熱手段40を備えている。ウエハキャリア10は、回転スピンドル20の上端に備えられている。原料ガスをエピタキシャル成長装置内に導入することにより、ウエハに被膜を形成する。図2図1のエピタキシャル成長装置に用いられるウエハキャリアの斜視図である。
実施形態1では、結合孔5が貫通孔であるウエハキャリア、実施形態2では、結合孔5が有底孔であるウエハキャリアを説明する。特に限定しない場合には、実施形態1及び実施形態2の両方に適用可能である。
実施形態1は、請求項1に係るウエハキャリアであり、実施形態2は、請求項2に係るウエハキャリアである。また、実施形態1及び実施形態2にはそれぞれ変形例があり、適宜説明する。
本明細書において、ウエハキャリアの上下方向は、エピタキシャル成長装置に取り付けられたときの上下方向と一致する。即ち、ウエハを載置するためのキャビティが形成された側が上方向であり、反対に回転スピンドルを取り付けるための結合孔が形成されている側が下方向である。
【0027】
本発明に係る実施形態1のウエハキャリアは、ウエハを保持するための一以上のキャビティ6aを有する上面6と、回転スピンドル20の上端を取り外し可能に挿入するための結合孔5を中心に有する下面7と、前記上面6と前記下面7とをつなぐ外周部4を有し、黒鉛からなる基材1と、少なくとも前記上面と前記下面及び前記外周部とを覆うセラミック被膜2と、からなるウエハキャリアであって、前記結合孔5は、上面側から下面側に向かって拡大するテーパ状の壁面5aにより構成される貫通孔である。
【0028】
本実施形態のウエハキャリア10は、回転スピンドル20に直接取り付けられる。
本実施形態のウエハキャリアは、エピタキシャル成長装置100の外部からオートローダーなどで搬送され容易に取り付け取り外しができるようにウエハキャリア10の下面の中心に回転スピンドル20との結合孔5を有している。
【0029】
本実施形態のウエハキャリアは、上面6にウエハを載置するためのキャビティ6aを有している。キャビティの形状、数は特に限定されない。キャビティの形状は、例えば、ウエハの形状に対応し、円形のキャビティ(図3(a)参照)のほか、ウエハを取り出す際、へら(spatula)を側面から差し込みやすいよう大円と小さな方形が組み合わされたキャビティ(図3(b)参照)、大円と1つの小円が組み合わされたキャビティ(図3(c)参照)、大円と2つの小円が組み合わされたキャビティ(図3(d)参照)などが変形例として挙げられ特に限定されない。
本実施形態のウエハキャリアは、上面6と、下面7と、上面と下面とをつなぐ外周部4と、によって構成される。本発明のウエハキャリア10は、ウエハを載置するためのキャビティを除く部分が、上面及び下面に垂直な中心軸周りに回転対称の円盤であることが好ましい。言い換えると本実施形態のウエハキャリアは、上面及び下面に垂直な中心軸周りに回転対称に構成された円盤の上面側にウエハを載置するためのキャビティが形成された形状である。
【0030】
本実施形態のウエハキャリア10の外周部4の形状は特に限定されない。例えば、外周部の形状は、上面及び下面を垂直に接続する円筒の側面(図4(a)参照)、中心軸を含む断面視が上面及び下面を滑らかに接続する円弧となる曲面(図4(d)参照)、下側を向いた保持面を有するフランジが形成された形状(図4(b)参照)、鍔を有する形状(図4(c)参照)などが挙げられる。中でも下側を向いた保持面を有するフランジが形成された形状が好ましい。
本実施形態のウエハキャリアに下側を向いた保持面を有するフランジが形成されていると、搬送に使用する保持具の間隔が下面の直径よりも大きく、フランジの直径よりも小さい搬送治具を先端に有するオートローダーを用いて容易にエピタキシャル成長装置にウエハキャリアを搬入及び搬出することができる。
【0031】
本実施形態のウエハキャリア10は、回転スピンドル20の上端を取り外し可能に挿入するための結合孔5を下面の中心に有している。言い換えるとウエハキャリアを構成する円盤の中心軸部分に結合孔5が形成されている。
本実施形態のウエハキャリアの結合孔5は、上面側から下面側に向かって拡大するテーパ状の壁面5aを有している。本実施形態のウエハキャリアの結合孔5は、テーパ状の壁面を有する孔であるので、対応するテーパ状の突起を有する回転スピンドル20と結合することによって、適度な摩擦接合を形成することができる。このため、別個の保持手段を必要とせずに、回転スピンドル20からウエハキャリア10に回転力が伝達することができ、容易に取り付け取り外しをすることができる。
【0032】
本実施形態のウエハキャリア10は、黒鉛からなる基材1と、上面、下面及び外周部とを覆うセラミック被膜2を有している。本実施形態のウエハキャリア10は、基材1が黒鉛からなるので、モリブデンなどの耐熱性の金属より、軽量かつ、回転モーメントを小さくすることができる。このため、結合孔5にかかる荷重及びトルクを小さくすることができる。これによって、結合孔5の壁面5aにかかる摩擦力を小さくすることができ、発生するパーティクルの量を減らすことができる。
本実施形態のウエハキャリア10は、上面と下面及び外周部とを覆うセラミック被膜2を有しているので、エピタキシャル成長で使用するアンモニア、水素、有機金属などを用いた場合でも原料ガスによる黒鉛の腐食を抑えることができる。
【0033】
実施形態1のウエハキャリア10の結合孔5は貫通孔である。摩耗によって発生したパーティクルを、貫通孔を通過するように例えば上からエアブローすることで容易に除去することができる。また、パーティクルの除去の方法は、エアブローに限定されず、貫通孔であるのでブラシ、布などで払拭することで容易に除去することができる。また、実施形態1のウエハキャリアの結合孔はパーティクルの蓄積しやすいコーナーを形成しないよう単一のテーパ面である。(図5(a)参照)この他に変形例として例えば、連続的に傾斜の変化する曲面(図5(b)参照)、緩やかな傾斜角度のテーパ面(図5(c)参照)、などが挙げられる。いずれの場合にも、結合孔は貫通孔である。また、本発明のウエハキャリアの結合孔は貫通孔であるので、上面側が開口している。開口から原料ガスが結合孔内部に侵入しないようピン8を差し込んで使用しても良い(図6参照)。ピン8の材質は特に限定されないが、ウエハキャリア10と同一材料であることが好ましい。ウエハキャリア10と同一材料であると、熱膨張の挙動が同じであるので、使用後に抜けにくくなったり、使用中に隙間ができ、振動などの原因となりにくい。ピン8は、使用毎に洗浄して再利用することができる。また、使用毎にピン8を交換しても良い。
【0034】
本実施形態のウエハキャリア10は、テーパ状の壁面5aがセラミック被膜2で覆われていることが好ましい。図8(a)は結合孔のテーパ状の壁面がセラミック被膜で覆われておらず黒鉛が露出したウエハキャリアである。図8(b)は結合孔のテーパ状の壁面がセラミック被膜で覆われたウエハキャリアである。なお、図8は、貫通孔を有していないが、貫通孔を有している本実施形態についても同様に適用できる。
本実施形態のウエハキャリア10の基材に用いる黒鉛は、a軸方向に共有結合によって炭素原子の六角網面を形成し、c軸方向にファンデルワールス力によって積層した結晶構造をしている。このため、黒鉛はc軸方向に剥離しやすく、軟らかい素材である。
本実施形態のウエハキャリア10は、テーパ状の壁面5aが前記セラミック被膜2で覆われているので、セラミック被膜により黒鉛が摩耗しにくくすることができる。
【0035】
本実施形態のウエハキャリア10は、軽量な黒鉛を基材に用い、テーパ状の壁面5aが前記セラミック被膜2でさらに覆われているので回転スピンドルとウエハキャリア間に発生する摩擦力による摩耗を低減し、摩耗によるパーティクルの発生を低減することができる。
本実施形態のウエハキャリアのセラミック被膜2としては、熱分解炭素被膜、炭化珪素被膜などが挙げられる。これらのセラミック被膜の形成方法は、特に限定されないが、例えばCVD法で形成することができる。中でも炭化珪素被膜は、硬く、導電性を有しているのでテーパ状の壁面を覆うセラミック被膜として使用すると次のような特徴がある。硬い被膜であるので回転スピンドルとの摩擦力によって摩耗しにくい。さらに固有抵抗の低い黒鉛の表面を導電性のある炭化珪素被膜が覆っているので、帯電しにくく、摩擦で発生したパーティクルが付着しにくくすることができ、容易に除去することができる。
【0036】
また本実施形態のウエハキャリアのテーパ状の壁面を覆う炭化珪素被膜は、β型であることが好ましい。β型の炭化珪素被膜は例えば1100〜1400℃のCVD法で成膜すると得ることができる。β型の炭化珪素は、硬度が3000〜4000Hvであるので好適に利用することができる。ウエハキャリアのテーパ状の壁面を覆う炭化珪素被膜の望ましい面粗さ(Ra)は 0.1〜5μmである。面粗さ(Ra)が0.1μm以上であると、十分な摩擦力が得られるので、回転スピンドルからの回転力を効率良くウエハキャリアに伝達することができる。面粗さ(Ra)が5μm以下であると、回転スピンドルを研磨する能力が充分に無いのでパーティクルの発生を少なくすることができる。CVD法で得られた炭化珪素は一般的な焼結法の炭化珪素と比較し、焼結助剤を用いないことから高純度である。CVD法で得られたβ型の炭化珪素被膜は導電性を有しているので、ウエハキャリアの帯電を防止しパーティクルの付着を防止し、さらには一旦付着したパーティクルも容易に除去することができる。また、ウエハキャリアに回転スピンドルが挿入され、回転している間に摩擦によって発生したパーティクルは、その多くが回転スピンドルとウエハキャリアとが形成する空間に蓄積される。なお、炭化珪素被膜の望ましい固有抵抗は、0.01〜1Ωcmである。1Ωcm以下であれば、帯電したウエハキャリア表面の電荷を逃がしやすくすることができ、発生したパーティクルを付着させにくくすることができる。なお、炭化硅素の固有抵抗は不純物をドープすることにより容易に調整することができる。
本実施形態のウエハキャリア10は、結合孔のテーパ状の壁面が導電性を有しているので、回転スピンドル20を通して電荷を逃がし、発生したパーティクルが容易に落下することができる。回転スピンドル20が金属など導電体の場合には電荷が逃げやすくさらに有効である。
【0037】
本実施形態のウエハキャリア10は、黒鉛の基材が一体的(monolithic)に構成されていることが好ましい。黒鉛の基材は、金属並みに固有抵抗が低いので、一体的に構成されることにより電荷移動を促進し電荷を外部に逃がしやすくでき、パーティクルの付着を防止し、一旦付着したパーティクル除去を容易にすることができる。また、ウエハキャリア10の表面を覆うセラミック被膜2が導電性を有する炭化珪素などである場合、さらにその効果が維持できる。
【0038】
本実施形態のウエハキャリア10は、外周部4には、下側を向いた保持面を有するフランジが形成され、セラミック被膜は、上面における厚さより、保持面における厚さが薄くなるように形成されていることが好ましい。ウエハキャリア10の上面は、原料ガスによる黒鉛の基材の腐食を防止するためセラミック被膜2を厚くすることが重要であるが、下側を向いた保持面4bは原料ガスが回り込みにくいので黒鉛の基材を保護する必要性は小さい。このため、黒鉛の基材より固有抵抗の高いセラミック被膜であってもフランジの保持面に薄く覆うことにより、導電性の搬送治具を用いて搬送する際に搬送治具を通して電荷を逃がすことができる。このため、保持面に形成されたセラミック被膜は前記上面のセラミック被膜より薄く形成することによりこのような効果を発揮することができる。
【0039】
次に、本実施形態のエピタキシャル成長装置について説明する。
本実施形態のエピタキシャル成長装置100は、ウエハキャリア10と回転スピンドル20との摩擦で生じたパーティクルを、上端に開口部を有する回転スピンドル20を用いることによって捕集することができる。上端に開口部を有する回転スピンドルを用いると、開口部の中を清掃することによって発生したパーティクルを容易に除去することができる。上端に開口部を有する回転スピンドル20とは、特に限定されない。回転スピンドルは、開口部が浅く、開口部が上端のみに形成された棒状の回転スピンドルであっても、開口部が深くパイプ状の回転スピンドルであっても良い。
本発明のエピタキシャル成長装置の回転スピンドル20は、さらに上端の開口部から気体を吸引する吸引機構30を備えている。吸引機構を備えることにより、回転スピンドルとウエハキャリアとが形成する空間に蓄積されたパーティクルを、エピタキシャル成長装置内部に拡散する前に取り除くことができる。
【0040】
次に、実施形態2のウエハキャリアについて説明する。
本発明に係る実施形態2のウエハキャリアは、ウエハを保持するための一以上のキャビティ6aを有する上面6と、回転スピンドルの上端を取り外し可能に挿入するための結合孔5を中心に有する下面7と、前記上面と前記下面とをつなぐ外周部4を有し、黒鉛からなる基材と、少なくとも前記上面と前記下面及び前記外周部とを覆うセラミック被膜と、からなるウエハキャリアであって、前記結合孔5は、上面側から下面側に向かって拡大するテーパ状の壁面と、前記壁面との境界よりも中央部が深い底面とからなる。
【0041】
本実施形態のウエハキャリア10は、回転スピンドル20に直接取り付けられる。
本実施形態のウエハキャリア10は、エピタキシャル成長装置100の外部からオートローダーなどで搬送され容易に取り付け取り外しができるようにウエハキャリア10の下面の中心に回転スピンドル20との結合孔5を有している。
【0042】
本実施形態のウエハキャリア10は、上面にウエハを載置するためのキャビティ6aを有している。キャビティの形状、数は特に限定されない。キャビティの形状は、例えば、ウエハの形状に対応し、円形のキャビティ(図3(a)参照)のほか、ウエハを取り出す際、へら(spatula)を側面から差し込みやすいよう大円と小さな方形が組み合わされたキャビティ(図3(b)参照)、大円と1つの小円が組み合わされたキャビティ(図3(c)参照)、大円と2つの小円が組み合わされたキャビティ(図3(d)参照)などが変形例として挙げられ特に限定されない。
本実施形態のウエハキャリア10は、上面6と、下面7と、上面と下面とをつなぐ外周部4と、によって構成される。本実施形態のウエハキャリア10は、ウエハを載置するためのキャビティを除く部分が、上面及び下面に垂直な中心軸周りに回転対称の円盤であることが好ましい。言い換えると本実施形態のウエハキャリアは、上面及び下面に垂直な中心軸周りに回転対称に構成された円盤の上面側にウエハを載置するためのキャビティを形成された形状である。
【0043】
本実施形態のウエハキャリア10の外周部4の形状は特に限定されない。例えば、外周部4の形状は、上面及び下面を垂直に接続する円筒の側面(図4(a)参照)、中心軸を含む断面視が上面及び下面を滑らかに接続する円弧となる曲面(図4(d)参照)、下側を向いた保持面を有するフランジが形成された形状(図4(b)参照)、鍔を有する形状(図4(c)参照)などが挙げられる。中でも下側を向いた保持面を有するフランジが形成されていることが好ましい。尚、図4のウエハキャリアは、結合孔として貫通孔があいているが、非貫通孔の実施形態2にも同様に適用できる。
本実施形態のウエハキャリアに下側を向いた保持面を有するフランジが形成されていると、搬送装置の保持具の間隔が下面の直径よりも大きく、フランジの直径よりも小さい搬送治具を先端に有するオートローダーを用いて容易にエピタキシャル成長装置にウエハキャリアを搬入及び搬出することができる。
【0044】
本実施形態のウエハキャリア10は、回転スピンドル20の上端を取り外し可能に挿入するための結合孔5を下面の中心に有している。言い換えるとウエハキャリアを構成する円盤の中心軸部分に結合孔が形成されている。
本実施形態のウエハキャリアの結合孔は、上面側から下面側に向かって拡大するテーパ状の壁面と、前記壁面との境界よりも中央部が深い底面とからなる。本実施形態のウエハキャリア10の結合孔5は、テーパ状の壁面5aを有する孔であるので、テーパ状の突起を有する回転スピンドル20と結合することによって、適度な摩擦接合を形成することができる。このため、別個の保持手段を必要とせずに、回転スピンドルからウエハキャリアに回転力が伝達することができ、容易に取り付け取り外しをすることができる。
本実施形態のウエハキャリア10は、黒鉛からなる基材1と、上面6と下面7及び外周部4とを覆うセラミック被膜2を有している。本実施形態のウエハキャリア10は、基材が黒鉛からなるので、モリブデンなどの耐熱性の金属より、軽量かつ、回転モーメントを小さくすることができる。このため、結合孔にかかる荷重及びトルクを小さくすることができる。これによって、結合孔の壁面にかかる摩擦力を小さくすることができ、発生するパーティクルの量を減らすことができる。
本実施形態のウエハキャリア10は、上面6と下面7及び外周部4とを覆うセラミック被膜2を有しているので、エピタキシャル成長で使用するアンモニア、水素、有機金属などを用いた場合でも原料ガスによる黒鉛の腐食を抑えることができる。
【0045】
本実施形態のウエハキャリアの結合孔5の底面5bは、壁面との境界よりも中央部が深い。壁面5aとの境界よりも中心部が深いとは、結合孔の形状がテーパ状の壁面と接続する部分よりも中心軸との交点の方が深いことを示す。結合孔5の深さはテーパ状の壁面5aから中心軸との交点に向かうに従って徐々に深くなっていくことが好ましい。このような形状としては、底面が壁面との境界から延びるテーパ面を有している場合(図7(b)、図7(c))参照)、底面が壁面との境界から延びるドーム状の面である場合(図7(a)参照)などが挙げられる。
本実施形態のウエハキャリア10は、このような形状に限定されず、例えば、ウエハキャリアの上面の中央が盛り上がり、ウエハキャリアの上面のウエハを載置する面よりも結合孔の底面が上にあるウエハキャリア(図9参照)、結合孔の開口部が、突出しウエハキャリアの下面より下にあるウエハキャリア、(図10(a)参照)、結合孔の開口部が、陥没しウエハキャリアの下面より上にあるウエハキャリア(図10(a)参照)などが変形例として利用できる。
【0046】
本実施形態のウエハキャリア10の結合孔5の底面が壁面5aとの境界から延びるテーパ面を有するあるいは、壁面との境界から延びるドーム状の面であることによって、摩耗によって発生したパーティクルが付着しやすいコーナー部分を無くすことができる。付着したパーティクルは例えばエアブローすることで容易にパーティクルを除去することができる。また、パーティクルの除去の方法は、エアブローに限定されず、ブラシ、布などで払拭することで容易に除去することができる。
【0047】
本実施形態のウエハキャリア10は、テーパ状の壁面5aがセラミック被膜2で覆われていることが好ましい。図8(a)は結合孔のテーパ状の壁面がセラミック被膜で覆われておらず黒鉛が露出したウエハキャリアである。図8(b)は結合孔のテーパ状の壁面がセラミック被膜で覆われたウエハキャリアである。
本実施形態のウエハキャリア10の基材に用いる黒鉛は、a軸方向に共有結合によって炭素原子の六角網面を形成し、c軸方向にファンデルワールス力によって積層した結晶構造をしている。このため、黒鉛はc軸方向に剥離しやすく、軟らかい素材である。
本実施形態のウエハキャリアは、テーパ状の壁面が前記セラミック被膜で覆われているので、セラミック被膜によって黒鉛が摩耗しにくくすることができる。
【0048】
本実施形態のウエハキャリア10は、軽量な黒鉛を基材に用い、テーパ状の壁面5aが前記セラミック被膜2でさらに覆われているので回転スピンドル20とウエハキャリア10間に発生する摩擦力による摩耗を低減し、摩耗によるパーティクルの発生を低減することができる。
本実施形態のウエハキャリア10のセラミック被膜2としては、熱分解炭素被膜、炭化珪素被膜などが挙げられる。これらのセラミック被膜の形成方法は、特に限定されないが、例えばCVD法で形成することができる。中でも炭化珪素被膜は、硬く、導電性を有しているのでテーパ状の壁面を覆うセラミック被膜として使用すると次のような特徴がある。硬い被膜であるので回転スピンドルとの摩擦力によって摩耗しにくい。さらに固有抵抗の低い黒鉛の表面を導電性のある炭化珪素被膜が覆っているので、帯電しにくく、摩擦で発生したパーティクルが付着しにくくすることができ、容易に除去することができる。
【0049】
また本実施形態のウエハキャリア10のテーパ状の壁面5aを覆う炭化珪素被膜は、β型であることが好ましい。β型の炭化珪素被膜は例えば1100〜1400℃のCVD法で成膜すると得ることができる。β型の炭化珪素は、硬度が3000〜4000Hvであるので好適に利用することができる。ウエハキャリアのテーパ状の壁面を覆う炭化珪素被膜の望ましい面粗さ(Ra)は0.1〜5μmである。面粗さ(Ra)が0.1μm以上であると、十分な摩擦力が得られるので、回転スピンドルからの回転力を効率良くウエハキャリアに伝達することができる。面粗さ(Ra)が5μm以下であると、回転スピンドルを研磨する能力が充分に無いのでパーティクルの発生を少なくすることができる。CVD法で得られた炭化珪素は一般的な焼結法の炭化珪素と比較し、焼結助剤を用いないことから高純度である。CVD法で得られたβ型の炭化珪素被膜は導電性を有しているので、ウエハキャリアの帯電を防止しパーティクルの付着を防止し、さらには一旦付着したパーティクルも容易に除去することができる。また、ウエハキャリアに回転スピンドルが挿入され、回転している間に摩擦によって発生したパーティクルは、その多くが回転スピンドルとウエハキャリアとが形成する空間に蓄積される。なお、炭化珪素被膜の望ましい固有抵抗は、0.01〜1Ωcmである。1Ωcm以下であれば、帯電したウエハキャリア表面の電荷を逃がしやすくすることができ、発生したパーティクルを付着させにくくすることができる。なお、炭化硅素の固有抵抗は、不純物をドープすることにより容易に調整することができる。
本実施形態のウエハキャリアは、結合孔5のテーパ状の壁面5aが導電性を有しているので、回転スピンドル20を通して電荷を逃がし、発生したパーティクルが容易に落下することができる。回転スピンドル20が金属など導電体の場合には電荷が逃げやすくさらに有効である。
【0050】
本実施形態のウエハキャリアは、黒鉛の基材が一体的(monolithic)に構成されていることが好ましい。黒鉛の基材は、金属並みに固有抵抗が低いので、一体的に構成されることにより電荷移動を促進し電荷を外部に逃がしやすくでき、パーティクルの付着を防止し、一旦付着したパーティクル除去を容易にすることができる。また、ウエハキャリア表面を覆うセラミック被膜が導電性を有する炭化珪素などである場合、さらにその効果が維持できる。
【0051】
本実施形態のウエハキャリア10は、外周部4には、下側を向いた保持面4bを有するフランジ4aが形成され、セラミック被膜は、上面における厚さより、保持面における厚さが薄くなるように形成されていることが好ましい。ウエハキャリア10の上面は、原料ガスによる黒鉛の基材の腐食を防止するためセラミック被膜2を厚くすることが重要であるが、下側を向いた保持面は原料ガスが回り込みにくいので黒鉛の基材を保護する必要性は小さい。このため、黒鉛の基材より固有抵抗の高いセラミック被膜であってもフランジの保持面4bに薄く覆うことにより、導電性の搬送治具を用いて搬送する際に搬送治具を通して電荷を逃がすことができる。このため、保持面に形成されたセラミック被膜は前記上面のセラミック被膜より薄く形成することによりこのような効果を発揮することができる。
【0052】
次に、本実施形態のエピタキシャル成長装置100について説明する。図11は、本実施形態のエピタキシャル成長装置の断面図である。
本実施形態のエピタキシャル成長装置100は、ウエハキャリア10と回転スピンドル20との摩擦で生じたパーティクルを、上端に開口部を有する回転スピンドル20を用いることによって捕集することができる。上端に開口部を有する回転スピンドル20を用いると、開口部の中を清掃することによって発生したパーティクルを容易に除去することができる。
本実施形態のエピタキシャル成長装置に使用するウエハキャリア10は、結合孔の底面が壁面との境界から延びるテーパ面を有するあるいは、壁面との境界から延びるドーム状の面であることによって、摩耗によって発生したパーティクルが付着しやすいコーナー部分を無くすことができる。また、ウエハキャリアは回転スピンドルによって高速回転しているので、摩耗により発生したパーティクルは遠心力により底部の周辺部(壁面との境界)に集められる。周辺部に集められたパーティクルは、結合孔5には、パーティクルが付着しやすいコーナー部分が無いため、多くが落下して回転スピンドル20の開口部に集められる。さらに固有抵抗の低い黒鉛の表面を導電性のある炭化珪素被膜が覆っていると帯電しにくくすることができる。このため、発生したパーティクルが回転スピンドル20の開口部に落下しやすくなり、エピタキシャル成長装置100内に飛散しにくくすることができる。
上端に開口部を有する回転スピンドル20とは、特に限定されない。回転スピンドルは、開口部が浅く、開口部が上端のみに形成された棒状の回転スピンドルであっても、開口部が深くパイプ状の回転スピンドルであっても良い。
本発明のエピタキシャル成長装置100の回転スピンドル20は、さらに上端の開口部から気体を吸引する吸引機構30を備えている。吸引機構を備えることにより、回転スピンドルとウエハキャリアとが形成する空間に蓄積されたパーティクルを、エピタキシャル成長装置内部に拡散する前に取り除くことができる。
このように本実施形態のウエハキャリアと、エピタキシャル成長装置とを組み合わせることにより、パーティクルの発生の少ないエピタキシャル成長装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 基材
2 セラミック被膜
4 外周部
4a フランジ
4b 保持面
5 結合孔
5a 壁面
5b 底面
6 上面
6a キャビティ
7 下面
8 ピン
10 ウエハキャリア
20 回転スピンドル
30 吸引機構
40 加熱手段
50 原料ガスの供給手段
100 エピタキシャル成長装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11