特許第6293150号(P6293150)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6293150生物学的に活性な材料をデリバリーするための分岐ポリアミン
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6293150
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】生物学的に活性な材料をデリバリーするための分岐ポリアミン
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/04 20060101AFI20180305BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20180305BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20180305BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20180305BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180305BHJP
   C07H 13/10 20060101ALN20180305BHJP
   C07D 319/06 20060101ALN20180305BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20180305BHJP
【FI】
   C08G73/04
   A61K31/7105
   A61K47/34
   A61K48/00
   A61P35/00
   !C07H13/10
   !C07D319/06
   !C12N15/00 A
【請求項の数】15
【全頁数】69
(21)【出願番号】特願2015-531951(P2015-531951)
(86)(22)【出願日】2013年9月4日
(65)【公表番号】特表2015-533889(P2015-533889A)
(43)【公表日】2015年11月26日
(86)【国際出願番号】US2013057976
(87)【国際公開番号】WO2014042920
(87)【国際公開日】20140320
【審査請求日】2016年8月17日
(31)【優先権主張番号】13/613,338
(32)【優先日】2012年9月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
(73)【特許権者】
【識別番号】503231882
【氏名又は名称】エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ
(74)【復代理人】
【識別番号】100110607
【弁理士】
【氏名又は名称】間山 進也
(74)【代理人】
【識別番号】100108501
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 剛史
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】チェング、ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】コーディ、ダニエル、ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】アングリラ、アマンダ、シー.
(72)【発明者】
【氏名】ヘドリック、ジェームズ、エル.
(72)【発明者】
【氏名】テオ、ペイ、ユン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、チュアン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、イ、ヤン
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−522809(JP,A)
【文献】 特表2003−529633(JP,A)
【文献】 特表2015−531421(JP,A)
【文献】 特表2015−533889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/02−73/04
A61K 47/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
45〜70個の主鎖第3アミン基、90〜140個の主鎖第2アミン基、0より大きな正数n′個の主鎖停止第1アミン基、および0より大きな正数q個の、式(2)で示される、環状カーボネートの開環した構造を有する主鎖停止カルバメート基:
【化1】
を有する分岐ポリアミン。(ここで、(n′+q)は、45〜70に等しい数であり、式(2)の星印の結合が分岐ポリアミンの主鎖窒素に結合し、L′は、炭素数3〜30個の2価ラジカルであり、q/(n′+q)×100%は、9〜47%に等しい。)
【請求項2】
前記分岐ポリアミンは、n′個の第1エチレンイミン繰り返し単位、90〜140個の第2エチレンイミン繰り返し単位、45〜70個の第3エチレンイミン繰り返し単位、およびq個の、式(2)のカルバメート基からなる、請求項1に記載の分岐ポリアミン。
【請求項3】
前記分岐ポリアミンは、カルバメートで官能化され、数平均分子量が8500〜15000の分岐ポリエチレンイミンである、請求項1に記載の分岐ポリアミン。
【請求項4】
前記分岐ポリアミンは、N/P10〜N/P50で細胞毒性を有しない、請求項1に記載の分岐ポリアミン。
【請求項5】
L′は、糖残基を有し、前記糖残基は、マンノース、ガラクトース、またはグルコース残基である、請求項1に記載の分岐ポリアミン。
【請求項6】
45〜70個の主鎖第3アミン基、90〜140個の主鎖第2アミン基、0より大きな正数n′個の主鎖停止第1アミン基および0より大きな正数q個の、式(4)で示される主鎖停止カルバメート基:
【化2】
を有する分岐ポリアミン。
(式(4)の星印の結合が分岐ポリアミンの主鎖窒素に結合し、
は、水素原子、メチル基、またはエチル基であり、
は、水素原子または炭素数が1〜27個の1価ラジカルであり、
(n′+q)は、45〜70の数であり、
q/(n′+q)×100%が、9〜47%に等しい。)。
【請求項7】
45〜70個の第1アミン基、複数の第2アミン基、および複数の第3アミン基を有する分岐した第1のポリマーを、環状カーボネート・モノマーと、前記環状カーボネート・モノマーを重合させることなく処理し、
i)45〜70個の主鎖第3アミン基、
ii)90〜140個の主鎖第2アミン基、
iii)0より大きな正数n′個の主鎖停止第1アミン基、および
iv)0より大きな正数q個の下記式(2)で示される主鎖停止カルバメート基:
【化3】
を有する分岐ポリアミンを形成する方法。
(ここで、(n′+q)は、45〜70に等しい数であり、式(2)の星印の結合が分岐ポリアミンの主鎖窒素に結合し、
L′は、3〜30の炭素を有する2価ラジカルであり、
q/(n′+q)×100%は、9〜47%に等しい。)
【請求項8】
前記環状カーボネート・モノマーは、6員環の環状カーボネート・モノマーである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
分岐した前記第1のポリマーは、
構造
【化4】
を有する45〜70個の第1エチレンイミン繰り返し単位、
構造
【化5】
を有する90〜140個の第2エチレンイミン繰り返し単位、
および
構造
【化6】
を有する45〜70個の第3エチレンイミン繰り返し単位からなり、各星印の結合は、主鎖の他の繰り返し単位に結合することを示す、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記環状カーボネート・モノマーは、
【化7】

およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
遺伝子と、
45〜70個の主鎖第3アミン基、90〜140個の主鎖第2アミン基、0より大きな正数n′個の主鎖停止第1アミン基および0より大きな正数q個の、式(2)で示される、環状カーボネートの開環した構造を有する主鎖停止カルバメート基:
【化8】
を有する分岐ポリアミンと
を含む複合体。
(上記中、(n′+q)は、45〜70に等しい数であり、式(2)の星印の結合が分岐ポリアミンの主鎖窒素に結合し、L′は、炭素数が3〜30個の2価ラジカルであり、q/(n′+q)×100%は、9〜47%に等しい。)
【請求項12】
前記遺伝子は、siRNAである、請求項11に記載の複合体。
【請求項13】
請求項11または12に記載の複合体を細胞に接触させる、処理方法(ただし、人間を手術、治療又は診断する方法を除く。)
【請求項14】
前記細胞は、ヒトの腫瘍細胞、ガン化した肝細胞、ガン化した子宮頚管細胞、ガン化した卵巣細胞およびヒト間葉系幹細胞を含む群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
下記式(5)の構造を有する分岐ポリアミン。
【化9】
(ここで、j,k,m,n′およびqは、0より大きいモル量を示し、jは、185〜280の値を有し、kは、45〜70の値を有し、mは、90〜140の値を有しており、(n′+q)は、45〜70の値を有し、q/(n′+q)×100%が、9%〜47%の値を有し、それぞれZ′は、独立して、下記の基:
【化10】
およびそれらの組み合わせからなる群から選択される基である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
共同研究に対する当事者合意
本発明は、インターナショナル・ビジネスマシーンズ・コーポレイションと、エージェンシー フォア サイエンス,テクノロジー アンド リサーチとの間の共同研究合意にもとでなされたものである。
【背景技術】
【0002】
本発明は、生物学的に活性な材料をデリバリーするための分岐ポリアミンに関し、より詳細には、遺伝子デリバリーのためのカルバメート疎水性末端基を有する、カルバメートで官能化した分岐ポリエチレンイミンに関する。
【0003】
核酸に基づく治療は、人間の疾病の治療において大きな保障を提供する。原理的に欠陥や欠点のある遺伝子を修正したり、機能性の遺伝子で置換したりするばかりではなく、冗長な遺伝子発現は、また、RNA干渉を使用することにより通常のレベルに再発現させることもできるであろう。一般的には、遺伝子デリバリー・ベクターには、2つの主要なタイプがあり、これらは、ウィルス性ベクターおよび非ウィルス性ベクターである。ウィルス性ベクターは、形質導入能に優れるが、ウィルス性ベクターの免疫源性および発ガン性の可能性は、それらの療法的応用を制限する。この問題を迂回するために、多くの非ウィルス性の遺伝子デリバリー系が提案されてきており、これらは、(1)脂質、ポリマーおよびペプチドを含む種々のカチオン性分子と、核酸との複合体および(2)例えば、コレステロールおよび細胞侵入性のペプチドといった天然リガンドと核酸とのコンジュゲーションを挙げることができる。非ウィルス性遺伝子デリバリー・ベクターは、生物学的安全性、低い製造コスト、輸送および貯蔵容易性、再生産性、ターゲットとする特定の細胞タイプへの官能性の可調整性のために益々注目を受けている。
【0004】
種々のタイプの非ウィルス性ベクターの中でも、第1、第2、第3アミン基を含有する分岐ポリエチレンイミン(bPEI)は、in vitroで高い遺伝子トランスフェクション効率を提供する。具体的には、重量平均分子量(Mw)が約25kDaであり、数平均分子量(Mn)が約10kDaのbPEI(これを本明細書においてbPEI−25として参照する)は、工業的標準として認識されている。bPEI−25は、約20%のアミン基(すなわち第1アミン基)がプロトン化された場合、生理学的なpHにおいて高いカチオン電荷密度を有する。これは、bPEI−25が広いpH範囲にわたり負に帯電した核酸と静電的に相互作用すること、およびナノ粒子中で複合化することを可能とする。一度、bPEI−25/核酸のナノ複合体が細胞に取り込まれると、第2および第3アミンが“プロトン・スポンジ効果”を通してエンドソームからの核酸の放出を可能とする。デオキシリボ核酸(DNA)の場合、放出された核酸の細胞核への取り込みが高い遺伝子移入効率を与える。
【0005】
その高い遺伝子トランスフェクション効率にも関わらず、bPEI−25の全体の正電荷は、特にin vivoにおいて毒性、凝集性および細胞・非細胞成分と、bPEI−25/核酸コンプレックスとの望ましくない非特異的相互作用に関する主要な欠点を有する。不利な影響としては、肝壊死、凝固血小板の付着および高い投与量での全身注入の後のショックなどを挙げることができる。
【0006】
bPEI−25により直面する細胞毒性の点では、低分子量の分岐ポリエチレンイミン(Mw約2.0kDa、Mn約1.8kDa、以下、本明細書では、bPEI−2として参照する。)は、その好ましい細胞毒性プロファイルもあって興味を集めている。しかしながら、bPEI−2の主要な欠点は、遺伝子トランスフェクション・ベクターとして使用するには、不十分な程に、トランスフェクション能力が不十分なことにある。
【0007】
したがって、より効果的でより細胞毒性の低い、生物学的に活性な材料のデリバリーのためのポリエチレンイミンを開発することが依然として要求されていた。
【発明の概要】
【0008】
すなわち、約45〜約70個の主鎖第3アミン基、約90〜約140個の主鎖第2アミン基、0より大きな正数n′個の主鎖停止第1アミン基、および0より大きな正数q個の下記式(2)で示される主鎖停止カルバメート基
【0009】
【化1】
を有する分岐ポリアミンが開示される。
ここで、(n′+q)は、約45〜約70に等しい数であり、式(2)の星印の結合が分岐ポリアミンの主鎖窒素に結合し、
L′は、3〜30の炭素を有する2価ラジカルであり、
q/(n′+q)×100%は、約9〜約47%に等しい。
【0010】
また、約45〜約70個の主鎖第3アミン基、約90〜約140個の主鎖第2アミン基、0よりも大きな正数n′個の主鎖停止第1アミン基、および0より大きな正数q個の下記式(4)で示される主鎖停止カルバメート基
【0011】
【化2】
を有する分岐ポリアミンが開示される。
ここで、式(4)の星印の結合が分岐ポリアミンの主鎖窒素の結合し、
は、水素原子、メチル基、またはエチル基である、
は、水素原子または炭素数が1〜27個の1価ラジカルであり、
(n′+q)は、約45〜約70の数であり、
q/(n′+q)×100%が、約9〜約47%に等しい。
【0012】
さらに、
約45〜約70個の第1アミン基、複数の第2アミン基および複数の第3アミン基を有する第1のポリマーを、環状カーボネート・モノマーを重合させることなく環状カーボネート・モノマーで処理して、i)約45〜約70個の主鎖第3アミン基、ii)約90〜約140個の主鎖第2アミン基、iii)0より大きな正数n′個の主鎖停止第1アミン基、およびiv)0より大きな正数q個の下記式(2)で示される主鎖停止カルバメート基
【0013】
【化3】
を有する分岐ポリアミンを形成する方法が開示される。
ここで、(n′+q)は、約45〜約70に等しい数であり、式(2)の星印の結合が分岐ポリアミンの主鎖窒素に結合し、
L′は、3〜30の炭素を有する2価ラジカルであり、
q/(n′+q)×100%は、約9〜約47%に等しい。
【0014】
また、
遺伝子と、
約45〜約70個の主鎖第3アミン基、約90〜約140個の主鎖第2アミン基、0より大きな正数n′個の主鎖停止第1アミン基、および0より大きな正数q個の下記式(2)で示される主鎖停止カルバメート基
【0015】
【化4】
を有する分岐ポリアミンと
を含む複合体が開示される。
ここで、(n′+q)は、約45〜約70に等しい数であり、式(2)の星印の結合が分岐ポリアミンの主鎖窒素に結合し、
L′は、3〜30の炭素を有する2価ラジカルであり、
q/(n′+q)×100%は、約9〜約47%に等しい。
【0016】
細胞を上述した複合体で処理することを含む、細胞の処理方法が開示される。
【0017】
さらに、式(5)の構造を有する分岐ポリアミンが開示される。
【0018】
【化5】
ここで、j,k,m,n′およびqは、0より大きいモル量を示し、jは、約185〜約280の値を有し、kは、約45〜約70の値を有し、mは、約90〜約140の値を有しており、(n′+q)は、約45〜約70の値を有し、q/(n′+q)×100%が、約9%〜約47%の値を有し、それぞれZ′は、独立して、下記およびそれらの組み合わせからなる郡から選択される基である。
【0019】
【化6】
【0020】
本発明の上述し、かつ他の特徴および効果は、後述する詳細な説明、図面および添付する請求項から、当業者により認識され、理解されるところのものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、カルバメート官能化分岐ポリエチレンイミンポリマーA,B,Cで調整した緑蛍光性タンパク(GFP)レポータ遺伝子複合体の粒径を示す棒グラフである。A,B,Cは、市販のものが利用できるbPEI−25から調整した。遺伝子複合体は、N/P5〜30で調整した。“N/P”は、カルバメート官能化bPEI−25ポリマーの窒素原子の、遺伝子リン酸基に対するモル比を示し、カルバメート官能化bPEI−25/遺伝子複合体の全体の電荷を示す。bPEI−25の対照遺伝子複合体を、N/P10(不図示)で調整したところ、これは、約84nmの平均粒径および約22mVのゼータ電位を有した。
図2図2は、N/P10〜50で調整したカルバメート官能化bPEI−25ポリマーS,T,F,G,L,MおよびNのルシフェラーゼリポータ遺伝子複合体の粒径を示す棒グラフである。
図3図3は、N/P10〜50で調整したカルバメート官能化bPEI−25ポリマーU,R,IおよびHのルシフェラーゼリポータ遺伝子複合体の粒径を示す棒グラフである。
図4図4は、N/P10〜50で調整したカルバメート官能化bPEI−25ポリマーV,P,K,J,およびOのルシフェラーゼレポータ遺伝子複合体の粒径を示す棒グラフである。
図5図5は、図1のGFPレポータ遺伝子複合体のN/P10〜30におけるゼータ電位に対応する棒グラフである。対照bPEI−25/遺伝子複合体は、N/P10(不図示)で調整し、その粒径は、約84nmであり、ゼータ電位が約22mVであった。
図6図6は、図2のカルバメート官能化bPEI−25/遺伝子複合体のN/P10〜50でのゼータ電位を示す棒グラフである。
図7図7は、図3のカルバメート官能化bPEI−25/遺伝子複合体のN/P10〜50でのゼータ電位を示す棒グラフである。
図8図8は、図4のカルバメート官能化bPEI−25/遺伝子複合体のN/P10〜50でのゼータ電位を示す棒グラフである。
図9図9は、カルバメート官能化bPEI−25ポリマーAのルシフェラーゼレポータ遺伝子複合体について得られたDNAラダーの写真である。
図10図10は、カルバメート官能化bPEI−25ポリマーBのルシフェラーゼレポータ遺伝子複合体について得られたDNAラダーの写真である。
図11図11は、カルバメート官能化bPEI−25ポリマーCのルシフェラーゼレポータ遺伝子複合体について得られたDNAラダーの写真である。
図12図12は、カルバメート官能化bPEI−25ポリマーFのルシフェラーゼレポータ遺伝子複合体について得られたDNAラダーの写真である。
図13図13は、カルバメート官能化bPEI−25ポリマーGのルシフェラーゼレポータ遺伝子複合体について得られたDNAラダーの写真である。
図14図14は、カルバメート官能化bPEI−25ポリマーSのルシフェラーゼレポータ遺伝子複合体について得られたDNAラダーの写真である。
図15図15は、カルバメート官能化bPEI−25ポリマーTのルシフェラーゼレポータ遺伝子複合体について得られたDNAラダーの写真である。
図16図16は、カルバメート官能化bPEI−25ポリマーLのルシフェラーゼレポータ遺伝子複合体について得られたDNAラダーの写真である。
図17図17は、カルバメート官能化bPEI−25ポリマーMのルシフェラーゼレポータ遺伝子複合体について得られたDNAラダーの写真である。
図18図18は、カルバメート官能化bPEI−25ポリマーNのルシフェラーゼレポータ遺伝子複合体について得られたDNAラダーの写真である。
図19図19は、カルバメート官能化bPEI−25ポリマーUのルシフェラーゼレポータ遺伝子複合体について得られたDNAラダーの写真である。
図20図20は、カルバメート官能化bPEI−25ポリマーRのルシフェラーゼレポータ遺伝子複合体について得られたDNAラダーの写真である。
図21図21は、カルバメート官能化bPEI−25ポリマーIのルシフェラーゼレポータ遺伝子複合体について得られたDNAラダーの写真である。
図22図22は、カルバメート官能化bPEI−25ポリマーHのルシフェラーゼレポータ遺伝子複合体について得られたDNAラダーの写真である。
図23図23は、カルバメート官能化bPEI−25ポリマーVのルシフェラーゼレポータ遺伝子複合体について得られたDNAラダーの写真である。
図24図24は、カルバメート官能化bPEI−25ポリマーPのルシフェラーゼレポータ遺伝子複合体について得られたDNAラダーの写真である。
図25図25は、カルバメート官能化bPEI−25ポリマーKのルシフェラーゼレポータ遺伝子複合体について得られたDNAラダーの写真である。
図26図26は、カルバメート官能化bPEI−25ポリマーJのルシフェラーゼレポータ遺伝子複合体について得られたDNAラダーの写真である。
図27図27は、カルバメート官能化bPEI−25ポリマーOのルシフェラーゼレポータ遺伝子複合体について得られたDNAラダーの写真である。
図28図28は、bPEI−25のルシフェラーゼレポータ遺伝子複合体のDNAラダーの写真である。
図29図29は、bPEI−2(Mw2000、Mn1800)のルシフェラーゼレポータ遺伝子複合体のDNAラダーの写真である。
図30図30は、GFPレポータ遺伝子で調整した種々のカルバメート官能化bPEI−25ポリマー複合体のN/Pの関数としてHepG2細胞内でのGFPトランスフェクション効率を示す棒グラフである。遺伝子単独でのトランスフェクション効率(DNAラダー単独としてラベルした)およびbPEI−25で調整した対照複合体もまた示されている。
図31図31は、GFPレポータ遺伝子で調整した種々のカルバメート官能化bPEI−25ポリマー複合体のN/Pの関数としてHepG2細胞内でのGFPトランスフェクション効率を示す棒グラフである。遺伝子単独でのトランスフェクション効率(DNAラダー単独としてラベルした)およびbPEI−25で調整した対照複合体もまた示されている。
図32図32は、GFPレポータ遺伝子で調整した種々のカルバメート官能化bPEI−25ポリマー複合体のN/Pの関数としてHepG2細胞内でのGFPトランスフェクション効率を示す棒グラフである。遺伝子単独でのトランスフェクション効率(DNA単独としてラベルした)およびbPEI−25で調整した対照複合体もまた示されている。
図33図33は、GFPレポータ遺伝子で調整した種々のカルバメート官能化bPEI−25ポリマー複合体O,K,P43およびP44のN/Pの関数としてHepG2細胞内でのGFPトランスフェクション効率を示す棒グラフである。P43は、ベンジルエステルを有し、P44は、2−フェニルウレアエチルエステル基を有する。
図34図34は、GFPレポータ遺伝子で調整した種々のカルバメート官能化bPEI−25ポリマー複合体A,B,C,FおよびGのN/Pの関数としてHeLa2細胞内でのGFPトランスフェクション効率を示す棒グラフである。遺伝子単独でのトランスフェクション効率(DNA単独としてラベルした)およびbPEI−25で調整した対照複合体もまた示されている。
図35図35は、GFPレポータ遺伝子で調整した種々のカルバメート官能化bPEI−25ポリマー複合体O,K,P44,P46,P48〜P49のN/Pの関数としてSK−OV−3細胞内でのGFPトランスフェクション効率を示す棒グラフである。P44は、芳香族ウレア基を有する。P46は、コレステリル基を有する。
図36図36は、GFPレポータ遺伝子で調整したカルバメート官能化bPEI−25ポリマー複合体A,BおよびCで調整したルシフェラーゼレポータ遺伝子複合体による異なるN/P比でのHepG2細胞内でのin vitroルシフェラーゼ発現レベルを示す棒グラフである。対照群は、bPEI−25のルシフェラーゼ遺伝子複合体、ルシフェラーゼ単独(DNAのみとラベルした)およびポリマー単独(“0”とラベルした)である。結果は、平均±3×標準偏差で示す。
図37図37は、N/P比を2〜50とし、種々のカルバメート官能化bPEI25ポリマーのGFPレポータ遺伝子複合体で培養した後のHepG2細胞の細胞生存性を示す棒グラフである。また、bPEI−25の対照群を示す。
図38図38は、N/P比を2〜50とし、種々のカルバメート官能化bPEI25ポリマーのGFPレポータ遺伝子複合体で培養した後のHepG2細胞の細胞生存性を示す棒グラフである。また、bPEI−25の対照群を示す。
図39図39は、N/P比を2〜50とし、種々のカルバメート官能化bPEI25ポリマーのGFPレポータ遺伝子複合体で培養した後のHepG2細胞の細胞生存性を示す棒グラフである。また、bPEI−25の対照群を示す。
図40図40は、N/P比を2〜50とし、種々のカルバメート官能化bPEI25ポリマーのGFPレポータ遺伝子複合体で培養した後のHeLa細胞の細胞生存性を示す棒グラフである。また、bPEI−25の対照群を示す。
図41図41は、N/P50でのカルバメート官能化bPEI25ポリマーA,BおよびCのsiRNA複合体によるHeLa細胞内でのBcl−2 mRNAのダウンレギュレーションを示すグラフである。siRNA濃度は、100nMであった。
図42】種々のN/P比でのカルバメート官能化bPEI−25ポリマー/siRNA複合体による処理後のHeLa細胞の細胞生存性を示す棒グラフである。
図43】ヒト間葉系幹細胞におけるN/P比の関数とした、カルバメート官能化bPEI−25ポリマーT,S,G,M,KおよびOとルシフェラーゼレポータ遺伝子について、ルシフェラーゼ発現レベルを示すグラフである。
図44図44は、ヒト間葉系幹細胞(hMSC)に対するルシフェラーゼ複合体T,S,G,M,KおよびOの細胞毒性を示すグラフである。
図45図45は、異なるN/P比における、カルバメート官能化bPEI−25ポリマーP45,P46(比較例)およびP47(比較例)のGFPレポータ遺伝子複合体のHepG2細胞におけるトランスフェクション効率を比較した棒グラフである。P45は、コレステロールで置換した環状カーボネート(Chol−MTC)から調整した。P46は、コレステロールクロロホルメートから調整し、P47は、ブチルクロロホルメートから調整した。
図46図46は、異なるN/P比におけるP45,P47のGFPレポータ遺伝子複合体の存在下でのHepG2細胞の細胞生存性を比較したグラフである。
図47図47は、異なるN/P比におけるO,K,P44,P46,P48,P49のGFPレポータ遺伝子複合体の存在下でのSK−OV−3細胞の細胞生存性を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
開示されるのは、遺伝子、タンパク、薬剤、これらのいずれか1つまたは全部を含む生物学的に活性な材料のデリバリーのための分岐ポリアミンである。分岐ポリアミンは、好ましくは、疎水性環状カルボネートと、約40〜約70個の第1アミン基、複数の第2アミン基および複数の第3アミン基を含む分岐ポリエチレンイミン(bPEI)とを反応させることにより調整される。明確化のため、カルバメート形成反応のための環状カルボネート・モノマーとの反応の出発材料である、分岐ポリエチレンイミンについて、後述する詳細な説明では非修飾分岐ポリエチレンイミン(“非修飾bPEI”)として参照する。反応生成物は、カルバメート官能化bPEIポリマーであり、修飾された分岐ポリエチレンイミン(“修飾bPEI”)として参照する。被修飾bPEIは、約8000〜約12000の数平均分子量(Mn)および約8000〜30000の重量平均分子量(Mw)を有する。より具体的な分岐ポリアミンは、bPEI−25(以下、“非修飾bPEI−25”として参照する)を環状カーボネート化合物で処理することにより形成される。得られた分岐ポリアミンは、カルバメート官能化ポリアミンであり、これらは、“修飾bPEI−25”ポリマーとして参照される。分岐ポリエチレンイミン以外の分岐アミン含有ポリマーは、カルバメート形成反応(例えば、約45〜70個の第1アミン基、複数の第2アミン基および複数の第3アミン基を有するアミン樹状基)のために使用することができる可能性がある。
【0023】
分岐ポリアミンは、遺伝子トランスフェクションのプロセス中で遺伝子に対するキャリアとして機能することができる。例えば、修飾bPEIポリマーは、HepG2細胞(ガン化したヒト肝細胞)、SK−OV−3細胞(ガン化した卵巣細胞)、mHSC(ヒト間葉系幹細胞)のいずれかまたは全部では、非修飾bPEIの遺伝子複合体に比較して、より有効な遺伝子トランスフェクション剤である。修飾bPEI/遺伝子複合体は、またN/P比が20〜50では、N/P比が20以上で高い細胞毒性を示す対応非修飾bPEIの遺伝子複合体と比較して、その細胞毒性はより低い。加えて修飾bPEIおよびルシフェラーゼレポータ遺伝子によって調整した複合体でトランスフェクションした細胞は、対応する非修飾bPEIのルシフェラーゼ複合体と同等、またはこれを超えるレベルでルシフェラーゼ遺伝子を発現させることができる。
【0024】
非修飾bPEIは、複数の2官能エチレン基(*−CHCH−*)、複数の主鎖第3アミン基、複数の主鎖第2アミン基、および複数の主鎖停止第1アミン基を含有する。より具体的には、Mnの範囲およびエチレンイミン・サブユニットの分子量が43であることに基づき、非修飾bPEIは、約185〜約280個のエチレン基、約45〜約70個の主鎖第3アミン基、約90〜約140個の主鎖第2アミン基、約45〜約70個の主鎖停止第1アミン基を有する。非修飾bPEIの主鎖末端ユニットは、第1アミン基を含む。
【0025】
したがって、非修飾bPEIは、本質的に下記構造の約45〜約70個の第1エチレンイミン繰り返し単位、
【0026】
【化7】
下記構造の約90〜約140個の第2エチレンイミン繰り返し単位、
【0027】
【化8】
、および下記構造の約45〜約70個の第3エチレンイミン繰り返し単位
【0028】
【化9】
を含み、存在しうる上述した繰り返し単位の如何なる水性塩を含まない。上述した繰り返し単位の各星印の結合は、非修飾bPEIの他の繰り返し単位への結合ポイントを示す。
【0029】
非修飾bPEIは、また本明細書では、式(1)で示される。
【0030】
【化10】
上式中、j,kおよびnは、非修飾bPEI構造のそれぞれ独立した官能基のモルを表し、jは、約185〜約280であり、kは、約45〜約70の値を有し、mは、約90〜約140の値を有し、nは、約45〜約70の値を有する。式(1)の記法により、括弧()の各セットは、ポリマー鎖ではなく、鍵括弧[]の内側で開始し、鉤括弧の外側で停止する非修飾bPEIの独立した官能基であることを理解されたい。星印の結合は、ブラケットの反対側の星印の結合への結合ポイントを示す。したがって、鉤括弧の右手側の各窒素原子は、鉤括弧の左手側のエチレン基の炭素原子に結合する。
【0031】
例えば、上述した市販に利用できる分岐ポリエチレンイミンであるbPEI−25は、25000の重量平均分子量(Mw)、約10000の数平均分子量(Mn)を有し、平均で58個の主鎖第3アミン基、116個の主鎖第2アミン基、58個の主鎖停止第1アミン基、および233個のエチレン基(Mnおよびエチレンイミン繰り返し単位の分子量が平均で43に等しいことに基づく)。この例においては、j=233、k=58、m=116、n=58である。この材料はまた、本明細書で“非修飾bPEI−25”として参照される。
【0032】
他の実施例として、上述した市販に利用できる分岐ポリエチレンイミンであるbPEI−2は、2000の重量平均分子量(Mw)、約1800の数平均分子量を有し、平均で10個の主鎖第3アミン基、20個の主鎖第2アミン基、10個の主鎖停止第1アミン基および35個のエチレン基を含有する(Mnおよびエチレンイミン繰り返し単位の分子量が平均で43に等しいことに基づく)。この例では、j=35、k=10、m=20およびn=10である。この材料を、本明細書では、bPEI−2または“非修飾bPEI−2”として参照する。
【0033】
非修飾bPEIの主鎖停止第1アミン基は、環状カーボネート化合物でカルバメートを形成する開環反応を行うことで、分岐ポリアミンを形成する。この開環反応は、環状カーボネート化合物に最小の重合、またはまったく重合させないで生じることが好ましい。
【0034】
分岐ポリアミンは、約45〜約70個の主鎖第3アミン基、約90〜約140個の主鎖第2アミン基、0より大きな正数n′個の主鎖停止第1アミン基および0より大きな正数q個の、下記式(2)で示される主鎖停止カルバメート基を含む。
【0035】
【化11】
上記式(2)中の星印つきの結合は、分岐ポリアミンの主鎖窒素原子に結合し、q/(n′+q)×100%が、約9〜約47%に等しく、(n′+q)が、約45〜約70の数に等しく、L′が3〜30の炭素原子を含む2価架橋基である。
【0036】
より具体的な分岐ポリアミンは、
i)0より大きい正数n′個の主鎖停止第1エチレンイミン繰り返し単位の構造が、
【0037】
【化12】
であり、
ii)約90〜約140個の主鎖第2エチレンイミン繰り返しユニットの構造が、
【0038】
【化13】
であり、
iii)約45〜約70個の主鎖第3エチレンイミン繰り返し単位の構造が、
【0039】
【化14】
であり、
iv)0より大きな正数q個の主鎖停止カルバメート末端基が式(2)
【0040】
【化15】
である構造を有する。
上記構造中、星印の結合は、主鎖ポリアミンの他の繰り返し単位への結合ポイントを示し、q/(n′+q)×100%が約9%〜約47%に等しく、(n′+q)は、約45〜約70の数に等しく、L′は、炭素数3〜30個の2価架橋基である。式(2)の星印の結合は、分岐ポリアミンの主鎖窒素原子に結合する。1実施形態では、分岐ポリアミンは、本質的に上述した第1エチレンイミン繰り返し単位、第2エチレンイミン繰り返し単位、第3エチレンイミン繰り返し単位、およびカルバメート停止基からなる。他の実施形態では、分岐ポリアミンは、カルバメート官能化bPEI−25(すなわち、修飾bPEI−25ポリマー)である。他の実施形態では、L′は、非帯電基であり、分岐ポリアミンは、第4アミン基をまったく含有しない。
【0041】
分岐ポリアミンはまた下記式(3)で表される。
【0042】
【化16】
上記式中、j,k,m,n′およびqは、式(3)の括弧内に含まれる独立した官能基それぞれの0よりも大きなモルを示し、jは、約185〜約280の値を有し、kは、約45〜約70の値を有し、mは、約90〜約140の値を有し、q/(n′+q)×100%は、約9%〜約47%の値を有する。ブラケットおよび括弧を用いた記法は、式(1)について説明したと同一の意味を有する。L′は、炭素数3〜30個の2価架橋基である。
【0043】
分岐ポリアミンを製造する方法において、反応混合物は、環状カーボネート化合物および2修飾bPEIを含有し、環状カーボネート化合物は、非修飾bPEIの第1アミン基の全モルに基づいて、50mol%未満で存在する。したがって、非修飾bPEIの少なくとも50%の第1アミン基が、分岐ポリアミンに残留する。1実施形態では、式(3)でq/(n′+q)×100%は、約9%〜約25%に等しい。さらに具体的な実施形態では、式(3)でq/(n′+q)×100%は、約9%〜約12%に等しい。
【0044】
分岐ポリアミンのそれぞれの主鎖第3アミン基、主鎖第2アミン基、主鎖停止第1アミン基のいずれかまたは全部は、フリーな塩基または水性塩(例えば、負に帯電した、例えば水酸基、塩化物イオン、酢酸イオン、スルホン酸基のいずれか1つまたは全部といったカウンタイオンを伴う、正に帯電したプロトン化アミン)として存在しうる。
【0045】
他のより具体的な分岐ポリアミンは、約45〜約70個の主鎖第3アミン基、約90〜約140個の主鎖第2アミン基、0より大きな正数n′個の主鎖停止第1アミン基および0より大きい正数q個の下記式(4)で示される主鎖停止カルバメート基を含む。
【0046】
【化17】
式(4)の星印の結合は、分岐ポリアミンの主鎖窒素原子の結合する、Rは、水素原子、メチル基またはエチル基である。Rは、水素原子または炭素数が1〜27個の一価ラジカルである。(n′+q)の値は、約45〜約70に等しく、q/(n′+q)×100%は、約9%〜約47%に等しい。
【0047】
他のより具体的な分岐アミンは、
i)0より大きな正数n′個の、構造式が、
【0048】
【化18】
である主鎖停止第1エチレンイミン繰り返し単位、
ii)約90〜約140個の、構造式が、
【0049】
【化19】
である主鎖第2アミン繰り返し単位、
iii)約45〜約70個の、構造式が、
【0050】
【化20】
である主鎖第3アミン繰り返し構造単位、
iv)0より大きな正数q個の、式(4)
【0051】
【化21】
である主鎖停止カルバメート末端基を含む。
ここで、星印を付けた結合は、分岐ポリアミンの他の繰り返し単位に結合し、Rは、水素原子、メチル基、またはエチル基であり、Rは、水素原子または炭素数が1〜27個の基であり、(n′+q)×100%は、約9%〜約47%の値を有する。1実施形態では、分岐ポリアミンは、本質的に第1エチレンイミン繰り返し単位、第2エチレンイミン繰り返し単位、第3エチレンイミン繰り返し単位、第2エチレンイミン繰り返し単位、第3エチレンイミン繰り返し単位およびカルバメート末端基を含む。他の実施形態では、分岐ポリアミンは、カルバメート官能化bPEI−25である。
【0052】
1実施形態では、式(4)のRは、*−C(=O)ORであって、Rは、1〜26個の炭素を有する。
【0053】
は、糖残基を有していても良い。例示的なR基は、マンノース、ガラクトース、グルコースのいずれか1つまたは全部のエステル類を含むことができる。
【0054】
は、炭素数が1〜26個の一価の炭化水素ラジカルを含むことができる。例示的な一価炭化水素ラジカルとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、セプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、およびドデシル基を挙げることができる。一価の炭化水素ラジカルは、分岐または直鎖とすることができる。
【0055】
他のRとしては、ベンジルエステル類および尿素基を含むエステル類を挙げることができる。
【0056】
分岐ポリアミンは、約8500〜約15000の数平均分子量(Mn)を有することができる。分岐ポリアミンは、約8500〜約35000の重量平均分子量を有することができる。
【0057】
こカルバメート基は、任意的に1つ、またはそれ以上の保護基を有していても良い。これらの例において、分岐ポリアミンを形成する方法は、さらに選択的に1つまたはそれ以上の保護基を除去することを含む。
【0058】
例示的な環状カーボネート・モノマーとしては、表1の化合物を挙げることができる。
【0059】
【表1】
【0060】
環状カーボネート・モノマーの追加的な例としては、表2に掲げる化合物を挙げることができる。
【0061】
【表2】
【0062】
環状カーボネート・モノマーは、単独でまたは組み合わせて使用することができる。
【0063】
さらにより具体的な分岐ポリアミンは、式(5)の構造を有する。
【0064】
【化22】
ここで、j,k,n′およびqは、0よりも大きなモル数を示し、jは、約35〜約60の値を有し、kは、約8〜約20の値を有し、mは、約15〜約40の値を有し、(n′+q)は、約45〜約70の値を有し、(n′+q)×100%は、約9%〜約47%を有し、Z′は、下記および下記の組み合わせからなる群から独立して選択される。
【0065】
【化23】
【0066】
また、開示されるものは、遺伝子と上述した分岐ポリアミンとを含む複合体である。さらに開示されるものは、細胞を上記の複合体と接触して細胞を処理する方法である。
【0067】
後述する実施例は、マンノース、ガラクトース、グルコース分子およびトリメチレンカーボネート、脂肪族炭化水素、ベンジル、芳香族ウレア基を、非修飾bPEI−25に複数導入することによって、分岐ポリアミン(修飾bPEI−25)を形成する容易な方法を示すものである。環状カーボネートは、有機触媒(1,8−ジアザビシクロウンデク−7−エン、DBU)を使用し、または使用すること無くして開環させることができる。DBUが無い場合、第1アルコールを有するカルバメートを形成できる。DBUを使用すると、第1アミン基が環状カーボネートよりも過剰に存在する場合には、また、第1アルコールを有するカルバメートが形成される(例えば、それぞれ非修飾bPEI−25マクロ分子には、約58の第1アミン基が存在するため、環状カーボネートと非修飾bPEI−25とを25:1および8:1のモル比でそれぞれ使用する)。しかしながら、非修飾bPEI−25に対する環状カーボネートのモル比が、75:1では、ポリ(カーボネート)鎖を有する修飾bPEI−25は、非修飾bPEI−25の第1アミンに結合する傾向にある。
【0068】
種々の修飾bPEI−25/遺伝子複合体のDNA結合、粒径、ゼータ電位、および遺伝子発現特性について説明する。HepG2(ヒト肝ガン細胞ライン)、SK−OV−3(ヒト卵巣ガン細胞ライン)およびヒト間葉系幹細胞における遺伝子トランスフェクション効率および細胞毒性を、ルシフェラーゼレポータ遺伝子および緑蛍光タンパク(GFP)レポータ遺伝子を使用して検討し、非修飾bPEI−25と比較した。さらにマンノース修飾bPEI−25ポリマーの、siRNA、siRNAターゲットBcl−2、のデリバリー能力を例示すために、アポトーシスの開始後およびしばしばガン細胞において発現過剰となるシトクロムCの放出をブロックしたタンパクを使用し、ヒト上皮ガンHeLa細胞ラインにデリバリーした。細胞中のBcl−2 mRNA発現レベルは、マンノース修飾bPEI−25/Bcl−2siRNAでの処理後、リアルタイム・リバース・トランスクリプション・ポリメラーゼ・チェイン反応(RT−PCR)を使用して測定した。HeLa細胞の細胞生存性は、siRNA複合体で培養した後に、MTTアッセイにより分析した。
【実施例】
【0069】
後述する実施例において使用した材料を、表3に纏める。
【0070】
【表3】
【0071】
本明細書において、Mnは、数平均分子量であり、Mwは、重量平均分子量であり、MWは、1分子の分子量である。
【0072】
1.8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデク−7−エン(DBU)をCaH上で攪拌し、グローブボックスに移す前に真空蒸留した。重量平均分子量25kDa(bPEI−25)および1.8kDa(bPEI−2)の分岐ポリエチレンイミン、細胞毒性アッセイのための1−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−3,5−ジフェニルホルマザン(MTT)、およびポリマー合成のための他の試薬は、Aldrichから市販ものが利用でき、これらを特に記載しない限り、さらに精製すること無く使用した。Bcl−2ターゲットsiRNAデュプレックス(シーケンス:sense 5’-GUA CAU CCA UUA UAA GCU G; antisense 5’-CAG CUU AUA AUG GAU GUA C)、βアクチンターゲットsiRNAデュプレックスおよびスクランブルsiRNA(ネガティブ・コントロール)は、Dharmacon(U.S.A)から購入した。ルシフェラーゼ・サブストレートおよび5×lysisバッファは、Promega(シンガポール)から購入した。GFPレポータ遺伝子(サイトメガロウィルス・プロモータにより機能させる野生タイプGFPのレッドシフトした変異体をエンコードしたもの)およびルシフェラーゼレポータ遺伝子(サイトロメガロウィルス・プロモータで機能させる6.4kbのホタル・ルシフェラーゼをエンコードした)は、それぞれ、Clontech(U.S.A)およびCarl Wheeler,Vical(U.S.A)から入手した。BCAタンパクアッセイ・キットは、Pierce製のものを使用した。HepG2(肝)、SK−OV−3(卵巣)、HeLa(子宮頸管)のヒトガン細胞ラインは、ATCC(U.S.A)から購入した。
【0073】
MTC−OHは、R.C.Prattら、Chemical Communications、2008、114−116の方法に従って調整した。
【0074】
MTC−C6H5(MW326.2)の調整
【0075】
【化24】
【0076】
100mLの丸底フラスコに、bisMPA(7)、(5.00g、37mmol、MW134.1)、bis−(ペンタフロロフェニル)カーボネート(PFC、31.00g、78mmol、MW394.1)および70mlsのテトラヒドロフラン(THF)で洗浄したCsF(2.5g、16.4mmmol)を投入した。反応の最初には、不均一系であったが、1時間後には透明で均一な溶液が形成され、これを20時間攪拌した。溶液を真空除去し、残留物をメチレンクロライドに再溶解した。溶液を、約10分間静置し、その時点でペンタフロロフェニルバイプロダクトが沈殿し、これを定量的に回収した。このペンタフロロバイプロダクトは、19FNMRにてペンタフロロフェノールに特徴的な3つのピークを示し、GCMSで、質量184の単一ピークを示した。濾過物を重炭酸ナトリウム、水で抽出し、MgSOで乾燥させた。溶媒を真空中で留去し、生成物を再結晶(酢酸エチル/ヘキサン混合物)して、白色結晶固体としてMTC−C6F5を得た。GCMSでは、質量326g/molの単一ピークを有した。C12について計算した分子量は、当該構造と一致した。1H-NMR (400MHz in CDCl3): delta 4.85 (d, J = 10.8Hz, 2H, CHaHb), 4.85 (d, J = 10.8Hz, 2H, CHaHb), 1.55 (s, 3H, CCH3)
【0077】
I.モノマー合成
実施例1;MTC−Cl(MW178.6)の調整
【0078】
【化25】
【0079】
50mLの乾燥テトラヒドロフラン(THF)中のオキザリルクロライド(2.48mL、19.0mmol)に、5−メチル−5−カルボキシル−1,3−ジオキサン−2−オン(MTC−OH)(2.75g、17.2mmol、MW160.1)の50mLの乾燥THF溶液を滴下して添加し、その後、窒素雰囲気下で30min以上かけて触媒量(3滴)の無水ジメチルホルムアミド(DMF)を加えた。Nをバブルさせながら反応溶液を1時間攪拌して、揮発分を除去した、反応後、溶液を真空下で留去して、MTC−Clを得た。これはさらに精製を行わなかった。
【0080】
実施例2:MTC−C2(MW188.2)の調整
【0081】
【化26】
【0082】
I)ビスMPA(22.1g、0.165mol、MW134.1)を、Amberlyst−15(6.8g)を含むエタノール(150mL)に添加し、一晩環流した。樹脂をその後、フィルタ除去し、濾液を留去した。ジクロロメタン(200mL)を残留した粘調な液体に加え、未反応の試薬およびバイプロダクトを濾別した。溶液をMgSOで乾燥させ、留去した後、エチル2,2−bis(メチロイル)プロピオネート(MW162.2)を、透明な無色液体として得た(24.3g、91%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3, 22℃): delta 4.09 (q, 2H, -OCH2CH3), 3.74 (d, 2H, -CH2OH), 3.57 (d, 2H, -CH2OH), 1.18 (t, 3H, -OCH2CH3), 0.98 (s, 3H, -CH3).
【0083】
II)ジクロロメタン(150mL)中のトリホスゲン(11.7g、0.039mol)を、エチル2,2−ビス(メチロイル)プロピオネート(12.6g、0.078mol、MW162.2)およびピリジン(39mL、0.47mol)に30min以上かけて、ドライアイス/アセトンの−75℃、窒素雰囲気下で滴下して加えた。反応混合物をさらに2時間冷却下で攪拌し、その後室温まで暖めた。反応を飽和NHCl水溶液(75mL)を添加して停止し、その後、有機層を1MHCL水溶液(3×100mL)、飽和NaHCO(1×100mL)で洗浄し、MgSO上で乾燥、濾過および留去した。残留物を酢酸エチルから再結晶して、MTC−C2(MW188)を白色結晶(8.0g、55%)として得た。
【0084】
実施例3:MTC−C8(MW272.3)の調整
【0085】
【化27】
【0086】
MTC−C6F5(5.5g、16.9mmol、MW326.2)、オクタノール(2.0g、15.4mmol)、PROTON SPONGE(3.29g、15.4mmol)およびTHF(8mL)をフラスコに投入した。反応混合物を12時間攪拌し、過剰の酢酸アンモニウムを添加した。反応混合物をさらに3時間攪拌し、その後、直接シリカゲルカラムに添加した。生成物を、溶離液をヘキサン/酢酸エチルとしたカラムクロマトグラフィーで分離し、油状のMTC−Cを得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3, 22℃): delta 4.71 (d, 2H, -CH2OCOO), 4.23 (d, 2H, -CH2OCOO), 4.22 (t, 2H, -OCH2CH2), 1.68 (t, 2H, -OCH2CH2(CH2)5), 1.36 (s, 3H, - CH3), 1.31 (t, 10H, -CH2(CH2)5 CH3), 0.90 (t, 3H, - (CH2)5CH3).
【0087】
実施例4:MTC−C12(MW328.4)を、エタノールをドデカノールに変えたことを除き、概ね実施例3の手順に従って製造した。
【0088】
【化28】
【0089】
MTC−C12:1H NMR (400 MHz, CDCl3, 22℃): delta 4.69 (d, 2H, -CH2OCOO), 4.23 (d, 2H, -CH2OCOO), 4.21 (t, 2H, -OCH2CH2), 1.68 (t, 2H, -OCH2CH2(CH2)5), 1.35 (s, 3H, - CH3), 1.28 (t, 10H, -CH2(CH2)5 CH3), 0.90 (t, 3H, - (CH2)5CH3).
【0090】
実施例5:MTC−Bn(MW250.3)の合成
【0091】
【化29】
【0092】
2,2−ビス(メチロイル)プロパン酸(bis−MPA)(20g、149.1mmol、MW134.1)および水酸化ナトリウム(5.96g、149.1mmol)を、100mLのDMSO中で混合し、一晩80℃で攪拌した。ベンジルブロマイド(30.6g、178.9mmol)を滴下して加えた。溶液が透明化し、反応をNMRでモニタした。反応が完了した後、溶液を室温まで冷却し、水(500mL)を添加した。溶液をジエチルエーテルで数回抽出し、ジエチルエーテル溶液を250mLまで濃縮減容した。この溶液を水、重炭酸ナトリウム、食塩水で洗浄し、固化するまで濃縮した。固体をTHF/ヘキサンから再結晶して、白色結晶のMPA−Bn(10.0g、30%)を得た。MPA−Bn(4.76g、21.2mmol、MW224.3)およびトリメチルアミン(5.4g、53.1)をその後乾燥THF(210mL)に溶解し、0℃まで冷却した。窒素下で、エチルクロロホルメート(5.1g、46.7mmol)を滴下して加え、溶液を攪拌した。この溶液を室温まで温め、18時間反応させた。反応溶液をその後、固化するまで濃縮し、この固体をジエチルエーテルから2度再結晶してMTC−Bnを、白色結晶として得た(3.86g、72.6%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3, 22℃): delta 7.38 (m, 2H, C5H6), 5.24 (s, 2H, -OCH2C5H6) 4.72 (d, 2H, -CH2OCOO), 4.21 (d, 2H, -CH2OCOO), 4.21 (t, 2H, -OCH2C5H6), 1.36 (s, 3H, - CH3).
【0093】
保護された糖ペンダント基を有する環状カーボネート・モノマーMTC−IPMAN、MTC−IPCGAL、MTC−IPGLU
【0094】
実施例6:MTC−IPMAN(MW402.2)の調整
【0095】
【化30】
【0096】
MTC−IPMANの調整は、代表的なものである。MTC−Clを上述したとおりに製造し、乾燥ジクロロメタン(DCM)50mLに溶解した。50mLの乾燥ジクロロメタン(DCM)中の2,3,5,6−ジ−O−イソプロピリデン−D−マンノフラノース(IPMAN)(4.13g、15.8mmol、MW260.3)およびトリエチルアミン(2.8mL、20.6mmol)の混合物を、室温にて溶液に30min以上かけて滴下して加えた。その後、反応混合物を、40℃で48時間加熱した。混合物を室温まで冷却した後、この溶液を濃縮し、100mLTHFを加えてトリエチルアミン塩を析出させた。塩を濾別し、溶液を除去した後、得られた粗生成物を、酢酸エチルおよびヘキサン(20/80〜50/50)を使用した傾斜溶出法によりシリカゲルカラムを通過させて、粘着性のある無色のオイルとして生成物を得た。これはゆっくりと白色固体に固形化した(5.85g、85%)。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, 22℃): delta 6.17 (s, 1H, H-a), 5.79 (dd, 1H, H-b), 4.83 (m, 1H, H-d), 4.66 (d, 2H, H-c), 4.41 (m, 1H, H-g), 4.22 (m, 2H, H-c), 4.03 (m, 2H, H-e + H-f), 3.73 (m, 1H, H-e), 1.33-1.50 (m, 15H, H-h + H-i).
【0097】
実施例7:MTC−IPGAL(MW402.2)の調整
【0098】
【化31】
【0099】
MTC−IPGALを、実施例6の手法および1,2,3,4−ジ−O−イソプロピリデン−D−ガラクトピラノースを使用して調整した。収率81%。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, 22℃): delta 5.54 (d, 1H, H-a), 4.70 (m, 2H, H-c), 4.62 (m, 1H, H-b), 4.41 (m, 1H, H-f), 4.33 (m, 2H, H-d and H-e), 4.26 (m, 3H, H-c and H-g), 4.03 (m, 1H, H-g), 1.32-1.49 (5 s, 15H, H-h + H-i).
【0100】
実施例8:MTC−IPGLU(MW402.2)の調整
【0101】
【化32】
【0102】
MTC−IPGLUを、実施例6の手法および1,2,5,6−ジ−O−イソプロピリデン−D−グルコフルクトース(IPGLU、260.3)を使用して調整した。収率75%。1H-NMR (400MHz, CDCl3, 22℃): delta 5.90 (d, 1H, H-a), 5.39 (d, 1H, H-b), 4.69 (d, 2H, H-c), 4.46 (d, 1H, H-g), 4.18 (m, 2H, H-c), 4.06 (m, 2H, H-e and H-f), 4.00 (m, 1H, H-e), 1.30-1.52 (5 s, 15H, H-h + H-i).
【0103】
ペンダントフェニルウレア基を有する環状カーボネートをスキーム1に従って調整した。
【0104】
【化33】
【0105】
実施例9:MTC−PUC2(MW322.3)の合成
【0106】
1)エタノールアミン(5.0g、48.5mmol、1eq)を、攪拌棒を装着し、乾燥させた100mL丸底フラスコに投入し、乾燥THF(30mL)を添加した。得られた溶液を、氷浴中で0℃に冷却した。フェニルイソシアネート(5.19g、4.74mL、43.6mmol、0.9eq)および30mLの乾燥THFを、エタノールアミン/THF混合物へと滴下ファネルを通して30min以上かけて滴下して添加した。得られた混合物を室温まで暖まるまで放置し、さらに16時間攪拌した。THFを除去するためにローテーション留去を用いた。得られた粗生成物を、さらに4時間激しく攪拌させ、酢酸エチルから再結晶させた。再結晶した固体を濾過して分離し、さらに酢酸エチルで洗浄し、重量が一定になるまで乾燥させ、収量7.0g(〜80%)の中間体フェニルウレアエタノール(スキーム1のn=2)を得た。1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6, 22℃): delta 8.55 (s, 1H, -NHPh), 7.36 (d, 2H, PhH), 7.20 (t, 2H, PhH), 6.88 (t, 1H, PhH), 6.18 (t, 1H, -CH2NHCO-), 4.76 (t, 1H, -OH), 3.43 (q, 2H, -CH2OH), 3.15 (q, 2H, -CH2NHCO-).
【0107】
2)MTC−OH(4.3g、26.8mmol)を、上述したようにオキザリルクロライドを使用してMTC−Clに変換した。MTC−Clを、50mLの乾燥メチレンクロライドに溶解し、追加のファネルに充填した。攪拌棒を装着した500mLの乾燥した丸底フラスコにフェニルウレアエタノール(5.55g、25mmol)、ピリジン(1.97g、2.02mL、25mmol)および乾燥メチレンクロライド(150mL)を充填した。追加のファネルを窒素雰囲気下で装着し、氷浴を使用してフラスコを0℃に冷却した。MTC−Cl溶液を、30minの期間の間に滴下して加え、得られた溶液をさらに30min攪拌した。氷浴を撤去し、溶液を室温まで温め、さらに16時間攪拌した。粗生成物を、シリカゲルを使用したカラムクロマトグラフィーで精製した。メチレンクロライドを最初に溶離液とし、極性を徐々に増加させながら最終的に5vol%のメタノールの最終濃度とした。生成物フラクションを回収し、溶液をローテーション流去で除去した。分離した生成物を重量が一定になるまで真空乾燥して、8.0g(約80%)のオフホワイト/黄色みがかったオイルを得、放置により結晶化させた。1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6, 22℃): delta 8.59 (s, 1H, -NHPh), 7.38 (d, 2H, PhH), 7.21 (t, 2H, PhH), 6.89 (t, 1H, PhH), 6.26 (t, 1H, -CH2NHCO-), 4.57 (d, 2H, -COOCH2CH2-), 4.35 (d, 2H, -CH2OCOO-), 4.16, (t, 2H, -CH2OCOO-), 3.35 (q, 2H, -CH2NHCO-), 1.20 (s, 3H, -CH3).
【0108】
実施例10:MTC−PUC8(MW406.5)を実施例9の手順および8−アミノ−1−オクタノールを使用して調整した。収率86%。1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6, 22℃): delta 8.37 (s, 1H, -NHPh), 7.38 (d, 2H, PhH), 7.21 (t, 2H, PhH), 6.86 (t, 1H, PhH), 6.10 (t, 1H, -CH2NHCO-), 4.57 (d, 2H, -COOCH2CH2-), 4.39 (d, 2H, -CH2OCOO-), 4.17, (t, 2H, -CH2OCOO-), 3.06 (q, 2H, -CH2NHCO-), 1.26-1.40 (2 s, 15H, -(CH2)6- and -CH3).
【0109】
実施例11:MTC−PUC12(MW462.6)を、実施例9の手順および12−アミノ−1−ドデカノールを使用して調整した。収率65%。1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6, 22℃): delta 8.37 (s, 1H, -NHPh), 7.34 (d, 2H, PhH), 7.17 (t, 2H, PhH), 6.83 (t, 1H, PhH), 6.09 (t, 1H, -CH2NHCO-), 4.51 (d, 2H, -COOCH2CH2-), 4.33 (d, 2H, -CH2OCOO-), 4.09, (t, 2H, -CH2OCOO-), 3.02 (q, 2H, -CH2NHCO-), 1.28-1.56 (m, 23H, -(CH2)10- and -CH3).
【0110】
II.bPEI−25修飾
MTC−IPGAL修飾bPEI−25
スキーム2にしたがってマンノース修飾bPEI−25を製造した。
【0111】
【化34】

【0112】
上記構造中、波括弧のセットは、ポリマー鎖を囲んでおり、下付文字(例えば、x、x′)は、鎖中の繰り返し単位の数を表す。n′+qの量は、非修飾bPEI−25の巨大分子当たりの第1アミン基の平均全モル量である。m′+pは、非修飾bPEI−25の巨大分子当たりの第2アミン基の平均全モル量である。
【0113】
実施例12:ポリマーA、マンノース修飾bPEI−25の合成。ポリマーAを形成するためのbPEI−25によるMTC−IPMANの開環手順は、代表的な実施例である。グローブボックスにMTC−IPMAN(0.25g、0.625mmol、MW=402.15g)に、bPEI−25(0.25g、1モル=10,000g=Mnとして0.025mmol)の2MlDCM溶液を添加し、次いで1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデク−7−エン(DBU、4.7マイクロリットル、0.031mmol)を加えた。bPEI−25:MTC−IPMANの質量供給比は1:1であり、モル比は、1:25であった。反応溶液を1時間攪拌した。メタノール10mLおよび1MHCl(aq.)10mLを添加した。得られた反応混合物を室温に冷却する前に2時間過熱環流した。最後に上記混合物をVivaspin20濃縮器(カットオフ分子量(MWCO)=5k、Sartorius AG、ゲッチンゲン、ドイツ)内で限外濾過し、脱イオン水(DI)で3度洗浄し、凍結乾燥を行った(0.36g、80%)1H-NMR (400MHz, D2O, 22℃): delta 4.08 (s, 40H, H-d and H-e), 2.70-3.65 (br, m, 992H, H-e, H-f, H-g and分岐ポリエチレンイミンのH), 1.06 (s, 61H, H-i).
【0114】
bPEI−25は、1モル=10000gということに基づき、0.025mmolのbPEI−25が、1.45mmolの平均で58個の第1アミン基、116個の第2アミン基、58個の第3アミン基、および233個のエチレン基を有する、すなわち、0.025mmolのbPEI−25は、環状カーボネート・モノマーと反応する可能性のある1.45mmolの第1アミン、1.45mmolの第2アミンを有する。しかしながら、bPEI−25の第1アミンサイトは、より反応性に富み、MTC−IPMANに比較して過剰に存在する。上述した反応条件下で、bPEI−25の第1アミン基は、MTC−IPMANとだけ反応し、MTC−IPMANの開環重合は、観測されなかった(ポリマーAについてのスキーム2の上記構造において、x=0およびx′=0)。ポリマーAに対するスキーム2の最終的な構造における理論上の下付き文字の値は、x = 0, x' = 0, p = 0 , m' = 116, q = 25, n' = 33, k = 58, and j = 233である。NMRによる実際の値は、x = 0, x' = 0, p = 0 , m' = 116, q = 20, n' = 38, k = 58, and j = 233であることが見出された。
【0115】
実施例13および14:実施例12の手順を使用し、ポリマーB、およびCを、bPEI−25:MTC−IPMANのモル供給比を1:8および1:75を使用してそれぞれ合成した。ポリマーBについてのNMRによるbPEI−25マンノースモル比は、1:7であった。したがって、ポリマーBについては、スキーム2の最終構造中、x = 0, x' = 0, p = 0 , m' = 116, q = 7, n' = 51, k = 58, and j = 233であった。ポリマーCの場合では、使用可能なアミンサイトに比較して過剰のMTVC−IPMANを使用した。過剰のMTC−IPMANは、第2アミンサイトと反応するか、または修飾第1アミンサイトの最初に開環したサブユニットを含むアルコールにより開始される開環重合を生じさせる。ポリマーCについてNMRにより見出されたbPEI−25マンノースモル比は、1:67であった。すなわち、ポリマーCについては、スキーム2の最終構造において、x ≧ 0, x ≧ 0, p ≧ 0 , m' ≦ 116, q = 58, n' = 0, k = 58, and j = 233であった。
【0116】
実施例15および実施例16:DBUの不存在下でのマンノース修飾bPEI−25の合成。実施例12の手順を使用し、bPEI−25:IPMANのモル供給比として1:25を用いて、酸性化前にポリマーFおよびGをそれぞれ18時間および1時間で合成した。各場合において、利用可能なアミンサイトは、利用可能なMTC−IPMANよりも過剰であった。ポリマーFについてNMRで見出されたbPEI−25:マンノース比は、1:23であった。ポリマーFについては、スキーム2の最終構造において、x = 0, x' = 0, p = 0 , m' = 116, q = 23, n' = 35, k = 58, and j = 233であった。ポリマーGについてNMRで観測されたbPEI−25:マンノースモル比は、1:23であった。ポリマーGについては、スキーム2の最終構造中、x = 0, x' = 0, p = 0 , m' = 116, q = 23, n' = 35, k = 58, and j = 233であった。
【0117】
実施例17、18、および19:実施例12の手順を使用し、bPEI−25:MTC−IPMANのモル供給比として1:58、1:120および1:400を用いて、酸性化前にポリマーL、MおよびNをそれぞれ質量供給比1:2.3、1:5、および1:16を使用して1時間調整した。ポリマーLについてNMRにより見出されたbPEI−25:マンノースモル比は、1:53であった。ポリマーLについては、スキーム2の最終構造で、x = 0, x' = 0, p = 0 , m' = 116, q = 53, n' = 5, k = 58, and j = 233であった。ポリマーMの場合については、MTC−IPMANは、利用可能な第1アミンサイトよりも過剰であった。過剰なMTC−IPMANは、第2アミンサイトと反応するか、または修飾第1アミンサイトの最初に開環したサブユニットを含むアルコールにより開始される開環重合を生じさせる。ポリマーMについてNMRにより見出されたbPEI−25:マンノースモル比は、1:120であった。ポリマーMについては、スキーム2の最終構造で、x ≧ 0, x' ≧ 0, p ≧ 0 , m' ≦ 116, q = 58, n' = 0, k = 58, and j = 233であった。ポリマーNの場合については、MTC−IPMANは、利用可能な第1アミンサイトおよび利用可能な第2アミンサイトよりも過剰であった。過剰なMTC−IPMANは、第2アミンサイトと反応するか、または修飾第1アミンサイトの最初に開環したサブユニットを含むアルコールにより開始される開環重合を生じさせる。ポリマーNについてNMRにより見出されたbPEI−25:マンノースモル比は、DO中でポリマーが自己組織化する傾向のため、決定できなかった。ポリマーNについては、スキーム2の最終構造で、x ≧ 0, x' ≧ 0, p ≧ 0 , m' ≦ 116, q = 58, n' = 0, k = 58, and j > 1と見積もった。
【0118】
実施例20および21:DBUを使用しないマンノース修飾bPEI−25の合成。実施例12の手順を使用し、DBUを用いること無く、bPEI−25:MTC−IPMANのモル供給比として1:12.5、および1:6を用いて、酸性化前にポリマーL、MおよびNをそれぞれ質量供給比2:1.および4:1を使用して1時間調整した。ポリマーSについてNMRにより見出されたbPEI−25:マンノースモル比は、1:12.2であった。ポリマーSについては、スキーム2の最終構造で、x = 0, x' = 0, p = 0 , m' = 116, q = 12.2, n' = 45.8, k = 58, and j = 233であった。ポリマーTについてNMRにより見出されたbPEI−25:マンノースモル比は、1:5.5であった。ポリマーTについては、スキーム2の最終構造で、x = 0, x' = 0, p = 0 , m' = 116, q = 5.5, n' = 52.5, k = 58, and j = 233であった。
【0119】
MTC−IPGAL修飾bPEI−25
グルコース修飾bPEI−25をスキーム3にしたがって製造した。
【0120】
【化35】
【0121】
実施例22:ポリマーHの調整。実施例12の手順を使用し、DBUを用いること無く、MTC−IPGLU(MW402.15)とbPEI−25(1モル=10000g)の反応を、bPEI−25:MTC−IPGLUのモル供給比として1:25および質量供給比1:1を使用して行った。反応時間を酸性化前1時間とし、限外濾過により精製してポリマーHを得た。ポリマーHについては、NMRにより、bPEI−25グルコースモル比が、1:23であることが見出された。ポリマーHについては、スキーム3の最終構造で、x = 0, x' = 0, p = 0 , m' = 116, q = 23, n' = 35, k = 58, and j = 233であった。
【0122】
MTVC−IPGAL修飾bPEI−25
スキーム4に従ってガラクトース修飾bPEI−25を製造した。
【0123】
【化36】
【0124】
実施例23:ポリマーIの調整。実施例12の手順を使用し、DBUを用いること無く、MTC−IPGAL(MW402.15)とbPEI−25(1モル=10000g)の反応を、bPEI−25:MTC−IPGALのモル供給比として1:25および質量供給比1:1を使用して行った。反応時間を酸性化前1時間とし、限外濾過により精製してポリマーIを得た。ポリマーIについては、NMRにより、bPEI−25:ガラクトースモル比が、1:24であることが見出された。ポリマーIについては、スキーム4の最終構造で、x = 0, x' = 0, p = 0 , m' = 116, q = 24, n' = 34, k = 58, and j = 233であった。
【0125】
実施例24:ポリマーRを、実施例23の手順を使用し、bPEI−25:MTC−IPGALのモル供給比として1:12.5および質量供給比2:1を使用して調整した。ポリマーRについては、NMRにより、bPEI−25:ガラクトースモル比が、1:12であることが見出された。ポリマーRについては、スキーム4の最終構造で、x = 0, x' = 0, p = 0 , m' = 116, q = 12, n' = 46, k = 58, and j = 233であった。
【0126】
実施例25:ポリマーRを、実施例23の手順を使用し、bPEI−25:MTC−IPGALのモル供給比として1:6および質量供給比4:1を使用して調整した。ポリマーUについては、NMRにより、bPEI−25:ガラクトースモル比が、1:5.6であることが見出された。ポリマーUについては、スキーム4の最終構造で、x = 0, x' = 0, p = 0 , m' = 116, q = 5.6, n' = 52.4, k = 58, and j = 233であった。
【0127】
スキーム5に従い、TMC修飾bPEI−25を調整した。
【0128】
【化37】
【0129】
実施例26:ポリマーJの調整。実施例12の手順を使用し、DBUを用いること無く、TMC(MW102.1)と、bPEI−25(1モル=10000g)の反応を、bPEI−25:TMCのモル供給比として1:100および質量供給比1:1を使用して行った。反応時間を1時間とした。ポリマーJについては、NMRにより、bPEI−25:開環TMCのモル比が、1:109であることが見出された。ポリマーJについては、スキーム4の最終構造で、x ≧ 0, x' ≧ 0, p ≧ 0 , m' ≦ 116, q = 58, n' = 0, k = 58, and j = 233であった。
【0130】
実施例27:実施例26の手順を使用し、bPEI−25:TMCのモル供給比として1:25および質量供給比4:1を使用してポリマーKを合成した。ポリマーKについては、NMRにより、bPEI−25:開環TMCのモル比が、1:27であることが見出された。ポリマーKについては、スキーム4の最終構造で、x = 0, x' = 0, p = 0 , m' = 116, q = 25, n' = 33, k = 58, and j = 233であった。
【0131】
実施例28:実施例26の手順を使用し、bPEI−25:TMCのモル供給比として1:8および質量供給比12:1を使用してポリマーPを合成した。ポリマーPについては、NMRにより、bPEI−25:開環TMCのモル比が、1:7であることが見出された。ポリマーPについては、スキーム4の最終構造で、x = 0, x' = 0, p = 0 , m' = 116, q = 8, n' = 50, k = 58, and j = 233であった。
【0132】
実施例29:実施例26の手順を使用し、bPEI−25:TMCのモル供給比として1:1および質量供給比100:1を使用してポリマーVを合成した。ポリマーVについては、NMRにより、bPEI−25:開環TMCのモル比が、1:1であることが見出された。ポリマーVについては、スキーム4の最終構造で、x = 0, x' = 0, p = 0 , m' = 116, q = 1, n' = 57, k = 58, and j = 233であった。
【0133】
実施例30:ポリマーO。MTC−C2修飾bPEI−25をスキーム6に従って調整した。
【0134】
【化38】
【0135】
ポリマーOを、実施例12の手順およびMTC−C2を使用して合成した。bPEI−25:MTC−C2のモル供給比として1:25および質量供給比2:1を使用した。ポリマーOについては、NMRにより、bPEI−25:開環したMTC−C2のモル比が、1:27であることが見出された。ポリマーOについては、スキーム6の最終構造で、x = 0, x' = 0, p = 0 , m' = 116, q = 25, n' = 33, k = 58, and j = 233であった。
【0136】
MTC−Bn修飾bPEI−25
実施例31。ポリマーP43。実施例12の手順を使用し、スキーム7に従い、MTC−Bn修飾bPEI−25を調整した。
【0137】
【化39】
【0138】
bPEI−25:MTC−Bnのモル供給比として1:25および質量供給比1.6:1を使用した。反応時間を、エーテルによる析出精製前に1時間とした。製造されたP43では、NMRにより、bPEI−25:カルバメートのモル比が、1:29であることが見出された。ポリマーP43については、スキーム7の最終構造で、m = 116, q = 29, n' = 29, k = 58, and j = 233であった。
【0139】
実施例32(比較例):bPEI−25:MTC−Bnのモル供給比として1:3(bPEI−25の1モル=10000gであり、MTC−BnのMW=250.3であることに基づき)、および質量供給比13.3:1を使用した。反応時間を、エーテルによる析出精製前に1時間とした。製造されたP48では、NMRにより、bPEI−25:カルバメートのモル比が、1:3であることが見出された。ポリマーP48については、スキーム7の最終構造で、m = 116, q = 3, n' = 55, k = 58, and j = 233であった。
【0140】
MTC−PUC2修飾bPEI−25
実施例33。ポリマーP44、MTC−PUC2修飾bPEI−25を、スキーム8に従って調整した。
【0141】
【化40】
【0142】
ポリマーP44を、疎水性モノマーMTC−PUC2を使用して実施例12に従い合成した。bPEI−25:MTC−PUVC2のモル供給比として1:25および質量供給比1.2:1を使用した。反応時間を、エーテルによる析出精製前に1時間とした。製造されたP44では、NMRにより、bPEI−25:カルバメートのモル比が、1:27であることが見出された。ポリマーP44については、スキーム8の最終構造で、m = 116, q = 27, n' = 31, k = 58, and j = 233であった。
【0143】
実施例34(比較例)ポリマーP49、MTC−PUC2修飾bPEI−25を、実施例33に従い調整した。bPEI−25:MTC−PUVC2のモル供給比として1:3および質量供給比10.4:1を使用した。反応時間を、エーテルによる析出精製前に1時間とした。製造されたポリマーP49では、NMRにより、bPEI−25:カルバメートのモル比が、1:3.4であることが見出された。ポリマーP49については、スキーム8の最終構造で、m = 116, q = 3.4, n' = 54.6, k = 58, and j = 233であった。
【0144】
コレステリル修飾bPEI−25
コレステリル担持環状カーボネート・モノマーChol−MTCを、市販に利用できるコレステリルクロロホルメート(Chol−Cl)から、スキーム9に従って合成した。
【0145】
【化41】
【0146】
調整は、以下の3ステップを含む:1)クロロホルメートChol−Clと、2ブロモエチルアミンハイドロブロマイドを、ジクロロメタン中で、トリエチルアミン(TEA)を反応させ、カルバメートChol−Brを形成する、2)Chol−Brと、アシッドジオールビスMPAをジメチルホルムアミド(DMF)/KOH中で塩基触媒反応させ、ジオールエステルChol−MPAを形成する、3)Chol−MPaのトリホスゲンを介在した環状化により、環状カーボネート・モノマーChol−MTCを形成する。これはオーバーオールの収率で約26%である。上記3ステップそれぞれの詳細な手順を、以下に説明する。Hおよび13CNMRを、中間体および環状カーボネート・モノマーの構造を確認するために使用した。
【0147】
Chol−Brの調整。マグネチック攪拌バーを装着した500mLの丸底フラスコに、コレステリルクロロホルメート(25.0g、55.7mmol、1.0当量)および2−ブロモエチルアミンハイドロブロマイド(12.9g、63.0mmol、1.1当量)を、ジクロロメタン(200mL)中に懸濁し、この懸濁物を氷浴中で冷やした。この懸濁物にジクロロメタン(100mL)中のトリエチルアミン(TEA)(18.0mL、13.06g、129.1mmol、2.3当量)を1時間以上かけて滴下した。反応混合物を、浴中でさらに1時間保持し、室温まで暖めた。反応を、その後さらに14時間行い、その後、ジクロロメタンを真空除去し、得られた固体を酢酸エチルおよびヘキサン1:1混合物(300mL)中に懸濁させた。有機層を、飽和食塩水(100mL)、脱イオン水(50mL)の混合物で2度洗浄し、飽和食塩水(100mL)で一度洗浄した。有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を真空除去し、ペールイエロー黄色の固体(29.1g、97.4%)を得た。粗生成物は、HNMRにより充分な純度を有していることを確認し、さらに精製を行わなかった。HNMR(400MHz、CDCl、δ、ppm):5.38 (コレステロールのCH=C), 5.03 (側鎖のNHCOO), 4.50 (コレステロールのCH-OCONH), 3.58 (BrCH2CH2NH), 2.45 - 0.6 (コレステロールの残りのプロトン).
【0148】
Chol−MPAの合成。マグネチック攪拌バーを装着した500mL丸底フラスコ中、KOH(85%、2.0g、30.3mmol、1.1当量)、ビス−MPA(4.20g、31.3mmol、1.1当量)およびジメチルホルムアミド(DMF)(200mL)の混合物を100℃で1.5時間加熱した。均一な溶液が形成され、Chol−Br(15.0g、28.0mmol、1.0当量)を熱い溶液に加えた。攪拌を続けながら16時間加熱し、ほとんどのDMFを減圧除去して、油状の半固体を得、これをその後、2:1酢酸エチル:ヘキサン混合物(300mL)に溶解した。有機溶液を飽和食塩水(100mL)および脱イオン水(100mL)で洗浄した。得られた水層を酢酸エチル(3×100mL)で抽出して、洗浄プロセスで失われたChol−MPAを回収した。混ぜた有機層を、飽和食塩水(80mL)および脱イオン水(20mL)混合物で洗浄した。混ぜた有機層をNaSOで乾燥し、溶媒を真空除去してペールホワイトのワックス状の固体(16.5g)として、粗生成物を得た。粗生成物を、充填剤としてシリカ、溶離液としてヘキサン−酢酸エチルのグラジエントを使用したフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、ワックス状の固体(10.7g、64.8%)として最終生成物であるChol−MPAを得た。HNMR(400MHz、CDCl、δ、ppm):5.35 ( コレステロールのCH=C および側鎖の NHCOO), 4.47 (コレステロールのCH-OCONH), 4.26 (CH2CH2NHCOO), 3.88 and 3.72 (CH2OH) 3.45 (CH2CH2NHCOO), 3.34 (OH), 2.50 - 0.60 (コレステロールおよびビス−MPAのCH3).
【0149】
Chol−MTCの調整。マグネチック攪拌バーを装着した500mL底フラスコ中で、Chol−MPA(10.1g、17.1mmol、1.0当量)を、無水ジクロロメタン(150mL)に溶解した。ピリジン(8.2mL、8.0g、101.5mmol、5.9当量)を加え、溶液をドライアイス−アセトン浴(−78℃)で冷却した。この冷却した反応混合物にトリホスゲン(2.69g、9.06mmol、トリホスゲンの機能当量に基づき1.9当量)溶液(ジクロロメタン50mLに溶解した)を1時間以上かけて滴下した。1時間後、反応混合物を−78℃から室温まで暖め、2時間後反応を飽和塩化アンモニウム水溶液(50mL)を加えて、停止させた。有機層を1.0N HCl(20mL)および飽和食塩水(80mL)、次いで飽和食塩水(50mL)および飽和NaHCO(50mL)の混合物で2度洗浄し、NaSOを使用して乾燥させた。溶媒を真空除去して、組成製物を、わずかに黄味がかった固体として得た。粗生成物をさらに、充填剤としてシリカ、クロロホルム酢酸エチル(4:1)混合物のグラジエントを溶離液として精製して、ワックス状の白色固体として最終生成物を得た。HNMR(400MHz、CDCl、δ、ppm):5.35 (コレステロールのCH=C), 4.95(NHCOO), 4.86 and 4.27 (CH2OCOOCH2), 4.47 (コレステロールのCH-OCONH), 4.27 (CH2CH2NHCOO), 3.45 (CH2CH2NHCOO), 2.40 - 0.60 (コレステロールおよび環状カーボネート・モノマーの残りのCH3).
【0150】
実施例35:ポリマーP45の調整。Chol−MTC修飾bPEI−25ポリマーP45を、スキーム10に従って調整した。
【0151】
【化42】
【0152】
この実施例では、3つのコレステリル基を含有する側鎖基が、最終ポリマーに不溶性を与えるべく、目的とするqの値は、3であり目的とするn′の値は、55である。bPEI−25:Chol−MTCモル供給比を1:3(1モルのbPEI−25=10000gであり、Chol−MTCMW615.9であることに基づく)とし、質量供給比を5.41:1とした。反応時間を、エーテルによる精製前の1時間とした。ポリマーP45について、NMRによれば、bPEI−25:カルバメートのモル比は、1:2.91であることが見出された。ポリマーP45について、m = 116, q = 2.9, n' = 55.1, k = 58, and j = 233であった。
【0153】
実施例36(比較例)ポリマーP46の調整。コレステリルクロロホルメート修飾bPEI−25ポリマーP46をスキーム11に従って調整した。
【0154】
【化43】
【0155】
この例では、目的とするqの値は、3であり、目的とするn′の値は、55である。反応を、bPEI−25:Chol−Clモル供給比を1:3.2(1モルのbPEI−25=10000gであり、CholClMW449.11であることに基づく)とし、質量供給比を7:1とした。反応時間を、エーテルによる精製前の2時間とした。ポリマーP46について、NMRによれば、bPEI−25:カルバメートのモル比は、1:2.2であることが見出された。ポリマーP46について、m = 116, q = 2.2, n' = 55.8, k = 58, and j = 233であった。
【0156】
ブチルクロロホルメート修飾bPEI−25
実施例37(比較例)ポリマーP47の調整。ブチルクロロホルメート(BuOCOCl)修飾bPEI−25ポリマーP47をスキーム12に従って調整した。
【0157】
【化44】
【0158】
この例では、目的とするqの値は、25であり、目的とするn′の値は、33である。反応を、bPEI−25:BuOCOClモル供給比を1:25.2(1モルのbPEI−25=10000gであり、BuOCOClMW136.57であることに基づく)とし、質量供給比を2.9:1とした。反応時間を、エーテルによる精製前の2時間とした。ポリマーP47について、NMRによれば、bPEI−25:カルバメートのモル比は、1:24.4であることが見出された。ポリマーP47について、m = 116, q = 24.4, n' = 33.6, k = 58, and j = 233であった。
【0159】
表4にポリマーの調整を纏めた。
【0160】
【表4】
【0161】
表5に修飾bPEI−25ポリマーのNMRによる分析を纏めた。
【0162】
【表5】
【0163】
III.生物学的活性材料の複合体
細胞培養
HepG2、HeLA、およびSK−OV−3細胞を、ミニマム・エッセンシャル・メディアム・イーグル(HepG2についてMEM、Invitrogen、シンガポール)およびRPMI 1640培地(HeLaおよびSK−OV−3について、Invitrogen、シンガポール)中で培養した。両方の培地は、10%ウシ胎児血清(FBS、Invitrogen、シンガポール)、100マイクログラム/mLのストレプトマイシン、100U/mLのペニシリン、2mMのL−グルタミン酸および1mMのピルビン酸ナトリウム(Sigma−Aldrich、シンガポール)で補養した。細胞は、37℃でCO5%、湿度95%の空気雰囲気中で培養した。すべての細胞ラインは、90%のコンフルエンスの時点でトリプシン/EDTA培地を使用して分離した。
【0164】
ポリマー/siRNAおよびポリマー/DNA複合体の形成
bPEI−25およびbPEI−2をDNase/RNaseフリーの水およびHPLC水中にそれぞれ溶解して、ポリマーの水溶液を作成した。複合体を形成するために、約10秒間、穏やかな渦流下で、等容量のsiRNAまたはDNA溶液をポリマー溶液中に滴らせて所望するN/P比(核酸のリン酸に対するポリマーの窒素含有量のモル比)を得た。この混合物を、後続する検討の前に、室温で30min平衡化して、ポリマーとsiRNAまたはDNA分子との間で静電的に相互作用させた。
【0165】
ポリマー/DNA複合体の平衡化前の粒径およびゼータ電位を、658nmのHe−Neを使用したレーザ動的光散乱(Brookhaven Instrument Corp.Holtsville、New York、U.S.A)で散乱角を90°として測定し、かつZetasizer(Malvern Instrument Ltd. Worcestershire、UK)、で測定した。
【0166】
表6は、2つのN/P比におけるいくつかの修飾bPEI−25ポリマー/GFPレポータ遺伝子複合体の流体動力学的粒径をリストする。
【0167】
【表6】
【0168】
典型的には、20〜200nmのサイズ範囲のポリマーナノ粒子は、腎臓における糸球体濾過を介した早期の排出を防止する程度に充分大きく、血管に侵入し、浸透を向上させ、またターゲット腫瘍組織に受動的に蓄積されるための遅延(EPR)効果を得るに充分なだけ小さい。図1図4に示されるように、GFPレポータ遺伝子(図1)およびルシフェラーゼレポータ遺伝子(図2〜4)を使用したDNA複合体のサイズは、概ねN/P比が増加するにしたがって減少する。これは、カチオン性ポリマーとアニオン性DNAとの間のより強い静電的相互作用が、カチオン性ポリマーとアニオン性DNAとの間のより緊密な複合体を形成させることを示す。この効果は、ポリマーA,B,F,U,R,PおよびJで、より顕著であった。ポリマーAおよびBのGFP遺伝子複合体は、N/P5でそれぞれ400〜1000nmからN/P30における119nmおよび103nmに減少した。ポリマーRF,U,R,PおよびJのルシフェラーゼ遺伝子複合体は、N/P10での250nm、280nm、370nm、270nmおよび260nmから、それぞれ、N/P50での91nm、96nm、99nm、113nm、131nmに低下した。ポリマーG/ルシフェラーゼ遺伝子複合体の粒径は、N/P10での269nmから所望するナノサイズ範囲であるN/P50での202nmに減少した。ポリマーS,T,UおよびVについては、環状カーボネート・モノマーで修飾された第1アミン基のパーセンテイジが最も低く、図2図4における他のポリマー2比較してより緊密なルシフェラーゼ遺伝子複合体が観測された。ポリマーVは、最小のルシフェラーゼ遺伝子複合体(87nm)を形成した。ポリマーCおよびLは、他のポリマーの様に効率的に遺伝子複合体を形成せず、N/P比が高くとも大粒子を形成した(図1および図2)。遺伝子複合体A,B,S,T,F,G,L,U,R,I,H,V,P,J,KおよびOについては、狭い粒径分布が得られ、それぞれ、0.178, 0.200, 0.168, 0.104, 0.129, 0.078, 0.150, 0.130, 0.120, 0.207, 0.209, 0.149, 0.075, 0.104, 0.097 および0.123の多分散指数を有していた。遺伝子複合体MおよびNの多分散指数は、それぞれ0.4および0.7よりも大きかった。比較として、非修飾bPEI−25のN/P10のルシフェラーゼレポータ遺伝子複合体は、84nmの粒径を有していた。
【0169】
遺伝子複合体の全正電荷は、複合体の細胞膜の負に帯電したリン脂質表面との相互作用に影響し、したがってまた遺伝子トランスフェクション効率に影響する。図5は、GFPレポータ遺伝子複合体A、B、Cのゼータ電位を示す。図6は、ルシフェラーゼレポータ遺伝子複合体S,T,G,L,MおよびNのゼータ電位を示す。GFP遺伝子複合体A,B,S,T,FおよびGは、N/P10〜N/P50でカチオン性の表面電荷密度を有し、これは非修飾bPEI−25のGFP遺伝子複合体の値と同程度である。ルシフェラーゼ遺伝子複合体S,T,FおよびGは、非修飾bPEI−25/ルシフェラーゼ遺伝子複合体と同程度、またはわずかに低い値のカチオン性表面電荷を有する。したがって、遺伝子複合体A,B,S,T,FおよびGの遺伝子複合体のゼータ電位は、15mVから約26mVの範囲だが、N/P10で調整したbPEI−25の対応する遺伝子複合体は、約22mV(bPEI−25/GFP)または26mV(bPEI−25/ルシフェラーゼ)のゼータ電位を有した(不図示)。
【0170】
遺伝子複合体C(GFP)、L(ルシフェラーゼ)、M(ルシフェラーゼ)およびN(ルシフェラーゼ)は、同一のN/P比で顕著に低いカチオン性電荷密度を有した(図5および図6)。ゼータ電位は、複合体Cについては、5mV〜13mVであり、複合体Lについては、−11mV〜2mVであり、複合体Mについては、−14mV〜−8mVであり、複合体Nについては、−25mV〜−14mVであった。理論に関連づけるわけではないが、ポリマーC、L,MおよびNの遺伝子複合体は、それらの大きな粒径および低いゼータ電位のため、より効率的ではないトランスフェクション剤と考えられる。
【0171】
ルシフェラーゼ遺伝子複合体I,R,U(ガラクトース修飾bPEI−25)およびH(グルコース修飾bPEI−25)のゼータ電位は、全N/P比において7〜20mVであった(図7)。これらの値は、N/P比が10の非修飾bPEI−25のものよりわずかに低い。同様に、ルシフェラーゼレポータ遺伝子複合体V,P,K,J,Oのゼータ電位は、全N/P比で7〜20mVであった(図8)。
【0172】
ゲル遅延度アッセイ
ポリマー/DNA複合体の種々の配合を、N/P比を1〜30の範囲で上述したように調整した。平衡化後、DNAラダー複合体を1%アガロースゲル上でエレクトロポレートした。アガロースゲルは、アガロース溶液50mLにつき10mg/エチジウムブロマイド5マイクロリットルで染色した。ゲルを0.5×TBEバッファで、80V50min動作させ、その後、UVイルミネータ(Chemi Genius、Evolve、シンガポール)で、コンプレックス化したDNAおよびネイキッドのDNAプラスミドの相対位置を検査した。
【0173】
図9図27は、種々の修飾ポリマーのルシフェラーゼレポータ遺伝子複合体のDNAラダーの写真を示す。A(図9)、B(図10)、 F(図12)、G(図13)、S(図14)、T(図15)、U(図19)、R(図20)、I(図21)、H(図22)、V(図23)、P(図24)、K(図25)、J(図26)およびO(図27)は、DNAに効率的に結合してこれを濃縮し、完全に複合体中でのN/P3以下でのDNA移動度を遅延した。これと比較して、C(図11)、L(図16)、M(図17)およびN(図18)は、DNA結合性に乏しく、完全なDNA結合は、CについてN/P15でだけ、観察された。N/P30でもL,M,Nは、効率的にDNAに結合せず、またDNAラダーを濃縮しなかった(より多くのアミン基がカーボネート−マンノース結合のために消費された。)。
【0174】
図28は、非修飾bPEI−25/ルシフェラーゼ複合体についてのDNAラダーの写真を示す。図29は、非修飾bPEI−2/ルシフェラーゼ複合体についてのDNAラダーの写真を示す。図28および図29は、N/P比3で各複合体が完全なDNA結合を達成しているのを示す。
【0175】
In vitro遺伝子発現
修飾bPEI−25ポリ真生のGFPレポータ遺伝子およびルシフェラーゼ遺伝子複合体のin vitro遺伝子トランスフェクション効率を、HepG2、HeLaおよびSK−OV−3細胞ラインを使用して検討した。HepG2およびHeLa細胞は、GFP遺伝子デリバリーのために12ウェルプレートに、1ウェル当たり、1000マイクロリットルにつき2×10セルの密度でシードした。HepG2細胞は、ルシフェラーゼ遺伝子デリバリーのために、24ウェルプレートに、1ウェル当たり、500マイクロリットルにつき1×10セルの密度でシードした。SK−OV−3細胞は、ルシフェラーゼ遺伝子デリバリーのために、24ウェルプレートに、1ウェル当たり、500マイクロリットルにつき8×10セルの密度でシードした。24時間後、プレートの培養液を、新鮮な成長培養液に交換し、次いで種々のN/P比で100マイクロリットルの複合体溶液(3.5マイクログラムのGFPプラスミドDNAを含有)または50マイクロリットルの複合体溶液(2.5マイクログラムのルシフェラーゼプラスミドDNAを含有)を滴下して加えた。その後、4時間培養し、遊離の複合体を各ウェル内の培養液を交換することによって除去した。さらに培養68時間後、各ウェル内の細胞培養培液を除去し、細胞を0.5mLのリン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.4)で一回洗浄した。
【0176】
GFPタンパク発現を解析するために、0.3mLのトリプシンを各ウェルのデタッチ細胞に加えた。新鮮な成長培養液(0.3mL)をその後加え、細胞懸濁液を1500rpmで5min遠心分離した。さらに2回、再懸濁および遠心分離の細胞洗浄サイクルをFACSバッファ(2%のウシ血清アルブミンで付養したPBS)内で行った。GFPを発現した細胞のパーセンテイジを、その後、フローサイトメーター(FACSCalibur、BDBioscience,USA)を使用して10000例から決定し、平均±標準偏差の3倍として記載した。
【0177】
ルシフェラーゼ発現アッセイのため、0.2mLのレポータ・リシス・バッファを各ウェルに添加した。冷凍(−80℃、30min)および解凍を2サイクル行った後、細胞溶解物を14000rpmで5min遠心分離して清浄化し、その後、ルミノメータ(Lumat LB9507、Berthold、ドイツ)を使用して相対光度ユニット(RLU)を決定するために、20マイクロリットルのスーパーネータントを100マイクロリットルのルシフェラーゼ基質に混合した。RLUの読値は、BCAタンパクアッセイを使用して決定したスーパーネータントのタンパク濃度に対して規格化し、全ルシフェラーゼ発現効率を得た。in vitro遺伝子発現においては、ネイキッドDNAを、ネガティブ対照群として使用した。非修飾bPEI−25/遺伝子複合体、およびいくつかの例としての非修飾bPEI−2/遺伝子複合体をポジティブ対照群とした。これらの対照群は、高い遺伝子発現効率を有しつつ、50%以上の細胞生存性を提供する、最適なN/P比(すなわち、bPEI−25で、N/P10、bPEI−2でN/P40)で調整した。データは、平均±標準偏差の4倍で表した。
【0178】
後述する手順は、siRNAトランスフェクションおよびリアルタイム・リバース・トランスクリプション−ポリメラーゼ・チェイン・リアクション(RT−PCR)に対して使用したものである。ポリマーのin vitro siRNAデリバリー特性を、HeLa細胞ラインを使用して検討した。細胞は、12ウェルプレートにウェルにつき、1000マイクロリットル当たり1×10の密度でシードした。24時間後、プレート培養液を新鮮な成長培養液に交換し、次いでN/P比50で、100マイクロリットルの複合体溶液(100nM bcl−2siRNAまたは種々のポリマーで複合体としたネガティブ対照群のsiRNAを含有する)を滴下して添加した。その後4時間培養し、遊離した複合体を、各ウェルの培養液を交換することによって除去した。さらに68時間培養し、各ウェルの細胞培養液を除去し、細胞にRNAイクストラクションを適用した。
【0179】
各条件を繰り返して行い、結果の再現性を保障し、各サンプルを、12ウェルプレートの別々のウェルから採取した。未処理のHeLa細胞からの全RNAまたはポリマーbcl−2 siRNAでトランスフェクトした全RNA、またはネガティブ対照群のsiRNAを、RNeasy(登録商標)Mini Kit ハンドブックに従って、RNeasy(登録商標)Mini Kit(Qiagen、シンガポール)で抽出した。その後、全RNASuperScript(商標)III Reverse Transcriptase(Invitrogen、シンガポール)により、製造者の指示に従って、オリゴ(dT)18プライマーを用いてリバース−トランスクリプトした。得られたcDNAに対し、リアルタイムPCR反応を適用した。これは、SYBR(登録商標)GreenPCRマスタミックス(2x)(Stategene、シンガポール)で行い、Rotorgene6000(Corbett Reaserch)を使用して検出した。Bcl−2(ターゲット遺伝子)およびβ−アクチン(内在性対照群)のカスタム・プライマーは、購入した。各配列は、以下の通りである。Bcl−2:sense 5’-CGACGACTTCTCCCGCCGCTACCGC-3’、antisense 5’-CCGCATGCTGGGGCCGTA CAGTTCC-3’; β-アクチン, sense 5’-GCTCGTCGTCGACAACGGCTC-3’, antisense 5’-CAAACATGATCTGGGTCATCTTCTC-3’。β−アクチン・プライマー配列は、SuperScriptIIIリバース−トランフェクションキットで与えられたInvitrogenプライマーに基づいたものであり、353−bp生成物を得た。カスタムBcl−2プライマーは、文献(Huangら、ActaPharmacologia Sinica、2006、Feb、27(2):242−248)に基づいた。25マイクロリットルの反応混合物は、12.5マイクロリットルのSYBR(登録商標)GreenI PCTRマスタミックス(2x)、10マイクロリットルの各プライマー、9.5マイクロリットルのDEPC−処理水および2マイクロリットルのcDNAサンプルを含んでいた。反応条件は、以下のように設定した:(1)95℃で10min培養;(2)45サイクルで増幅(各サイクルについて、95℃で45sec、55℃で、45sec、72℃で90sec);(3)最終イクステンションのため72℃で7min、1サイクル;(4)ステップあたり1度の変化で各ステップの間に5secの間隔を開け、72℃〜95℃に昇温。種々の処理にあたってのBcl−2の遺伝子発現レベルの平均フォールド・チェンジは、β−アクチンの自家培養遺伝子に対し、2−ΔΔCT法を使用して規格化した(Livakら、Method、25、402−408(2001)。
【0180】
HepG2細胞におけるGFPトランスフェクション効率
図30図33は、種々のN/P比での種々の修飾bPEI−25ポリマーにより行ったHepG2細胞におけるin vitroGFP遺伝子のトランスフェクション効率を示す棒グラフである。図34は、種々のN/P比での種々の修飾bPEI−25ポリマーにより行ったHeLa細胞におけるin vitroGFP遺伝子のトランスフェクション効率を示す棒グラフである。結果は、平均±標準偏差の3倍で表示した。N/P比で特定したポリマー濃度(mg/mL)は、以下の通りである:非修飾bPEI−25- 0, 0.8, 1.6, 2.4, 3.2, 4.0, 6.0, 8.0, 12.0, 16.0 および 20.0 mg/L; A, F, G, H, I, J - 0, 3.3, 4.9, 6.6, 8.2, 12.3, 16.4, 24.6, 32.8 および 41.0 mg/L; B - 0, 2.2, 3.3, 4.4, 5.5, 8.2, 11.0, 16.4, 21.9 および 27.4 mg/L; C - 0, 6.6, 9.9, 13.1, 16.4, 24.6, 32.8, 49.3, 65.7 および 82.1 mg/L. K - 0, 2.1, 3.1, 4.1, 5.2, 7.7, 10.3, 15.5, 20.6 および 25.8 mg/L; L - 0, 4.4, 6.7, 8.9, 11.1, 16.7, 22.2, 33.3, 44.4, および 55.5 mg/L; M - 0, 9.5, 14.3, 19.1, 23.9, 35.8, 47.7, 71.6, 95.5, および 119.3 mg/L; N - 0, 28.1, 42.2, 56.3, 70.3, 105.5, 140.7, 211.0, 281.3, および 351.7 mg/L; T, U - 0, 2.0, 3.1, 4.1, 5.1, 7.7, 10.2, 15.3, 20.4, 25.5 mg/L; R, S - 0, 2.5, 3.7, 4.9, 6.2, 9.2, 12.3, 18.5, 24.6, および 30.8 mg/L; V - 0, 1.7, 2.5, 3.3, 4.2, 6.2, 8.3, 12.5, 16.6, および 20.8 mg/L; P - 0, 1.8, 2.7, 3.6, 4.5, 6.7, 8.9, 13.4, 17.8, および 22.3 mg/L; O - 0, 2.4, 3.6, 4.8, 6.0, 9.1, 12.1, 18.1, 24.2, および 30.2 mg/L. P43 - 0, 2.7, 4.0, 5.3, 6.7, 10.0, 13.4, 20.0, 26.7, および 33.4 mg/L; P44 - 0, 3.0, 4.5, 5.9, 7.4, 11.1, 14.8, 22.3, 29.7, および 37.1 mg/L.
【0181】
図30の棒グラフに示すように、いくつかのマンノース修飾bPEI−25ポリマー(A,B,S,TおよびG)のGFP複合体は、高いGFPトランスフェクション効率をHepG2細胞において示した(約20%〜約50%)。一般に、N/P比が増加することで、トランスフェクション効率は高まる。非修飾bPEI−25の対照GFPトランスフェクション効率レポータ遺伝子複合体は、4.8%の効率をN/P15で有しており、N/P40および50で約25%の一定に達した。N/Pが30以下では、AおよびBは、MTC−IPMAN結合の後、より未反応のアミン基を有しており、このため、非修飾bPEI−25程度のGFPトランスフェクション効率を有している。N/P30〜50では、ポリマーAおよびBのGFPトランスフェクション効率は、非修飾bPEI−25を超える。C,L,MおよびNのGFP複合体は、非修飾bPEI−25に比較して、ずっと低いトランスフェクション効率を有する。これは、これらの大きな粒径、広い粒径分布、および表面の低いカチオン性電荷密度のためである。全マンノース修飾ポリマーの中では、S,T,Gが、非修飾bPEI−25について試験した全部のN/P比で、より高いGFPトランスフェクション効率(N/P50でそれぞれ、37%、36%、および47%)を有する(図30)。
【0182】
グルコースおよびガラクトース修飾bPEI−25ポリマーのうち、ポリマーR(bPEI−25:ガラクトース=1:12.5)は、最も高いGFPトランスフェクション効率(37%)を、N/P50で達成した。ポリマーU(bPEI−25:ガラクトース1:6)、I(bPEI−25:ガラクトース=1:25)およびH(bPEI=25:グルコース1:25)は、非修飾bPEI=25と同程度のGFPトランスフェクション効率を有していた(図31)。
【0183】
図32に示すように、修飾bPEI−25ポリマーP,KおよびOは、疎水性環状カルボニル・モノマー(TMCおよびMTC−C2)で調整されており、とりわけポリマーK(bPEI−25:TMC=1:25)で非修飾bPEI−25に比較してHepG2細胞では大きく向上したGFPトランスフェクション効率を有した。N/P50でのそのトランスフェクション効率は、64%に達し、全ポリマーの中で最も高い値を達成した。ポリマーP(bPEI−25:TMC=1:8)およびO(bPEI−25:MTC−C2=1:25)は、N/P50でそれぞれ、35%および48%のGFPトランスフェクション効率を有した。ポリマーJ(bPEI−25:TMC=1:100)およびV(bPEI−25:TMC=1:1)は、N/P50で非修飾bPEI−25と同程度のGFPトランスフェクション効率(22%〜26%)を有した。
【0184】
カルバメート基内のエステルを含むベンジルエステルまたはフェニルウレア修飾bPEI−25は、非修飾bPEI−25よりも、より低いGFPトランスフェクション効率を、HepG2細胞ライン(図33)で有した。すなわち、ポリマーP43(第1アミン基の46%が修飾されたベンジルエステル)およびP43(第1アミンの46%が修飾されたフェニルウレアエステル)は、それぞれN/P50で、約12および約15%のGFPトランスフェクション効率を有した。
【0185】
HeLa細胞においては、非修飾bPEI−25のGFPレポータ遺伝子複合体は、修飾bPEI−25ポリマーA,B,C,FおよびGの複合体に比較してより高いGFPトランスフェクション効率(8〜9%)を示した(図34)。ポリマーFは、N/P50で、HeLa細胞に対して6.9%の最も高いGFPトランスフェクション効率を有した。しかしながら、N/P20〜50では、非修飾bPEI−25は、また、ポリマーFに比較してより高い細胞毒性を示した(図40)。GFPトランスフェクション効率を同等の細胞生存性で比較する場合、非修飾bPEI−25は、より低いトランスフェクション効率を有した(N/P20で<2%)(図34)。
【0186】
SK−OV−3細胞におけるGFPトランスフェクション効率
図35に、SK−OV−3細胞ラインにおける修飾bPEI−25ポリマーO,KおよびP44,P46およびP49のGFPトランスフェクション効率を比較した。N/P10では、O,KP48およびP49の効率は、(60%〜68%)であり、これらは、非修飾bPEI−25(45%)を超えていた。N/P15では、ポリマーOおよびKは、非修飾bPEI−25(約705)に比較してわずかに高いGFPトランスフェクション効率(それぞれ、約72%および約78%)を有した。N/P15よりも上では、修飾bPEI−25ポリマーは、非修飾bPEI−25に比較してその効率が低下した。非修飾bPEI−25は、約80%の最大効率をN/P20で示した。コレステリル修飾bPEI−25ポリマー46は、少なくともN/P10〜20では最小の効率を示し(約5%〜20%)、最大効率は、N/P20〜30の約25%であった。
【0187】
GFPトランスフェクション効率は、GFP発現のために、GFPプラスミドで成功裏にトランスフェクトされたパーセンテイジを反映し、ルシフェラーゼ・アッセイは、トランスフェクトされた細胞における平均タンパク発現を検出する。図36に示されるように、ポリマーA、Bおよび非修飾bPEI−25のルシフェラーゼ発現プロファイルは類似し、N/P比が約15まではルシフェラーゼ発現レベルが増加し、N/P比が15〜40で1×10RLU/mgのタンパクでレベルが低下する。Cにより誘導されたルシフェラーゼ発現レベルは、非修飾bPEI−25のものよりも2桁低かった。C/DNAによる低い遺伝子トランスフェクションは、そのサイズおよびゼータ電位データに関連づけられた(図1および図5)。図36で特定されるN/P比におけるポリマー濃度は、以下の通りである:非修飾 PEI−25 - 0, 1.1, 2.3, 3.4, 4.6, 5.7, 8.6, 11.5, 17.2 and 22.9 mg/L; A - 0, 2.3, 4.7, 7.0, 9.4, 11.7, 17.6, 23.4, 35.1 および 46.8 mg/L; B - 0, 1.6, 3.1, 4.7, 6.3, 7.8, 11.7, 15.6 23.5 および 31.3 mg/L; C - 0, 4.7, 9.4, 14.1, 18.8, 23.5, 35.2, 46.9, 70.4 および 93.8 mg/L.
【0188】
細胞毒性試験手順
修飾bPEI−25/遺伝子複合体および修飾bPEI−25/siRNA複合体の細胞毒性を、HepG2、HeLaおよびSK−OV−3細胞について、標準MTTアッセイ・プロトコルを使用して検討した。GFPプラスミドを、複合体形成およびHepG2およびHeLa細胞を処理するために使用し、ルシフェラーゼプラスミドを、SK−OV−3細胞の複合体形成および処理のために使用した。
【0189】
HepG2、HeLaおよびSK−OV−3細胞を、96ウェルプレートに、ウェル当たり、10000セル、5000セル、16000セルの密度でそれぞれシードし、処理前にコンフルエンシが60%〜70%となるように培養した。ポリマー/遺伝子またはポリマーsiRNA複合体をその後、10マイクロリットルのポリマー/核酸複合体および100マイクロリットルのフレッシュな成長培養液で37℃、4時間培養した。培養の後、培養液をフレッシュな成長培養液で交換し、さらに68時間培養した。続いて、100マイクロリットルの成長培養液および20マイクロリットルのMTT溶液(PBS中、5mg/mL)を各ウェルに加え、細胞を37℃で4時間培養した。成長培養液を除去し、各ウェル内に形成されたホルマザン結晶を150マイクロリットルのDMSOを使用して溶解した。各ウェルからの100マイクロリットルのアリコートをその後、新たな96ウェルプレートに移し、マイクロプレート分光器を使用して、550nmおよび690nmの吸光度を決定した。相対的な細胞生存性を、[(A550−A690)サンプル/(A550−A690)対照群]×100%として表現した。N/P比ごとに少なくとも8回の繰り返しに対するデータを平均±標準偏差で表現した。
【0190】
HepG2およびHeLa細胞ラインにおける細胞毒性
図37〜39は、種々のN/P比において、修飾bPEI−25ポリマーA,B,C,S,T,F,G,L,M,N,U,R,I,H,V,P,K,J,Oおよび非修飾bPEU−25のGFPレポータ遺伝子複合体で培養した後のHepG2細胞生存率を示す棒グラフである。図40は、種々のN/P比において、修飾bPEI−25ポリマーA,B,C,F,Gおよび非修飾bPEI−25のGFPレポータ遺伝子で培養した後のHeLa細胞の細胞生存率を示す棒グラフである。修飾bPEI−25ポリマーのすべての遺伝子複合体は、両方の細胞ラインで、N/P20〜50で非修飾bPEI−25よりもより低い細胞毒性であった。結果を、少なくとも8回の繰り返しについての平均±標準偏差で表現した。N/P比の順でポリマー濃度を特定した非修飾bPEI−25:- 0, 0.8, 1.6, 2.4, 3.2, 4.0, 6.0, 8.0, 12.0, 16.0 および 20.0 mg/L; A, F, G, H, I, J - 0, 1.6, 3.3, 4.9, 6.6, 8.2, 12.3, 16.4, 24.6, 32.8 および 41.0 mg/L; B - 0, 1.1, 2.2, 3.3, 4.4, 5.5, 8.2, 11.0, 16.4, 21.9 および 27.4 mg/L; C - 0, 3.3, 6.6, 9.9, 13.1, 16.4, 24.6, 32.8, 49.3, 65.7 and 82.1 mg/L; K - 0, 1.0, 2.1, 3.1, 4.1, 5.2, 7.7, 10.3, 15.5, 20.6 and 25.8 mg/L; L - 0, 2.2, 4.4, 6.7, 8.9, 11.1, 16.7, 22.2, 33.3, 44.4, and 55.5 mg/L; M - 0, 4.8, 9.5, 14.3, 19.1, 23.9, 35.8, 47.7, 71.6, 95.5, and 119.3 mg/L; N - 0, 14.1, 28.1, 42.2, 56.3, 70.3, 105.5, 140.7, 211.0, 281.3, and 351.7 mg/L; T, U - 0, 1.0, 2.0, 3.1, 4.1, 5.1, 7.7, 10.2, 15.3, 20.4, 25.5 mg/L; R, S - 0, 1.2, 2.5, 3.7, 4.9, 6.2, 9.2, 12.3, 18.5, 24.6, および 30.8 mg/L; V - 0, 0.8, 1.7, 2.5, 3.3, 4.2, 6.2, 8.3, 12.5, 16.6, および 20.8 mg/L; P - 0, 0.9, 1.8, 2.7, 3.6, 4.5, 6.7, 8.9, 13.4, 17.8, および 22.3 mg/L; O - 0, 1.2, 2.4, 3.6, 4.8, 6.0, 9.1, 12.1, 18.1, 24.2, and 30.2 mg/L.
【0191】
図37に示されるように、非修飾bPEI−25/遺伝子複合体で処理したHepG2およびHeLa細胞は、15より大きなN/P比で急激に減少する(非修飾bPEI−25濃度の増加につれて)。HepG2細胞の細胞生存率は、N/P20以上で60%未満であった。HeLa細胞の細胞生存率は、N/P30以上で46%未満であった(図40)。非修飾bPEI−25/DNA複合体で処理した場合、特にN/P50では、細胞の細胞生存率は、HepG2については約20%に過ぎず、HeLa細胞では、4.6%に過ぎなかった。しかしながら、N/P50で、DNA結合複合体A、B,C,S,T,F,G,L,M,N,U,R,I,H,V,P,K,Oで処理したHepG2細胞の細胞生存率は、それぞれ、7%, 57%, 82%, 84%, 87%, 63%, 73%, 95%, 94%, 94%, 87%, 81%, 87%, 82%, 75%, 91%, 87%, 89%, 99%であった(図37〜39)。N/P50でDNA複合体A,B,C,F,Gにより処理されたHeLa細胞の細胞生存率は、各場合について100%であった(図40)。
【0192】
非修飾bPEI−25は、HepG2細胞ラインにおいて約25%(N/P40)、およびHeLa細胞ラインではN/P50で、約9%のピークトランスフェクション効率を示すものの、N/P15より高いところにおける、その高い毒性は、通常顕著な治療効果を達成するためには高いポリマー濃度が要求される、in vivo用途の可能性を失わせてしまう。本検討においては、細胞生存性は、マンノース機能化環状カーボネートおよび他の官能化環状カーボネートにより、顕著に改善された。マンノースは、普通の代謝物であり、本検討は、哺乳動物のグリコプロテイン生合成の直接的な利用を示した。したがって、細胞に対していかなる毒性も与えることはない。非修飾bPEI−25(HepG2細胞でN/P15よりも上、HeLa細胞でN/P20よりも上で細胞生存率<60%)に比較し、N/P30および50でマンノース修飾bPEI−25が高いパーセンテイジで生存し、N/P50であってもすべてのHeLa細胞は、生存していた。重要なことは、N/P30〜50では、修飾bPEI−25ポリマーにより提供される遺伝子トランスフェクション効率は、N/P15における非修飾bPEI25のそれよりも顕著に高いことである(図30〜34)。ガラクトース、グルコース、および疎水性基で修飾したbPEI−25もまた、非修飾bPEI−25に比較して細胞毒性が低減されていた。
【0193】
SK−OV−3細胞ラインにおける細胞毒性
O/GFP遺伝子複合体の存在下でのSK−OV−3細胞の細胞生存生は、N/P15から40の修飾bPEI−25の複合体よりも低かった(図47)。しかしながら、ポリマーK(46%アミン修飾のTMCで調整したもの)は、N/P10〜15で効率(約75%)および細胞生存率(90%以上)と両方とも非修飾bPEI−25より好ましいものであった。
【0194】
HeLa細胞におけるsiRNAによるBcl−2ノックダウンの調整
図41の棒グラフに示されるように、siRNAは、ポリマーAおよびポリマーBを使用してHeLa細胞内に良好に導入され、mRNAレベルでBcl−2のダウンレギュレーションが明確であった。図41には、使用した対応ポリマーの濃度は、非修飾bPEI−25- 8.4 mg/L; A - 17.1 mg/L; B - 11.4 mg/L; C - 34.3 mg/Lであった。ポリマーA/siRNAおよびポリマーB/siRNA複合体によるBcl−2のノックダウンについて、mRNA発現レベルは、それぞれ未処理のHeLa細胞のそれの25%および29%であり、これは、非修飾bPEI−25/siRNA複合体(26%)により誘起されるノックダウンレベルと同程度であった。ネガティブ対照群siRNA(すなわち、スクランブルしたsiRNA)を使用した対照実験において、mRNAのダウンレギュレーションはまったく観測されなかった。しかしながら、ポリマーCによるsiRNAのデリバリーは、Bcl−2mRNAの量が依然として未処理の細胞のそれの85%であることから、良好ではなかった。
【0195】
ポリマー/siRNA複合体で処理した後のHeLa細胞の細胞生存性
図42は、修飾bPEI−25/siRNA複合体で処理した後のHeLa細胞の細胞生存率を示す棒グラフである。しRNA濃度は、100nMに固定した。異なるN/P比に対応するポリマー濃度を用いた。非修飾bPEI−25- 0.7, 1.0, 1.3, 1.7, 2.5, 3.4, 5.0, 6.7, 8.4 および 10.1 mg/L; A - 1.4, 2.1, 2.7, 3.4, 5.1, 6.9, 10.3, 13.7, 17.1 および 20.6 mg/L; B - 0.9, 1.4, 1.8, 2.3, 3.4, 4.6, 6.9, 9.2, 11.4 and 13.7 mg/L; およびC - 2.7, 4.1, 5.5, 6.9, 10.3, 13.7, 20.6, 27.4, 34.3 および 41.2 mg/Lであった。
【0196】
本検討で試験したsiRNAおよびポリマー濃度において、HeLa細胞は、Bcl−2siRNAに誘発された細胞死に対し、抵抗性を示した。図42に示されるように、Bcl−2siRNAまたはスクランブルしたsiRNA(ネガティブ対照群)をHeLa細胞に種々のN/P比でデリバーした場合、細胞毒性にはまったく差異は見られなかった。したがって、細胞生存性におけるいかなる相違でも、使用したポリマーの性質によるものである。非修飾bPEI−25/Bcl−2siRNA複合体に対し、82%の細胞は、N/P比60での処理後でも生存していた。A、B、C/Bcl−2siRNA複合体では、ほぼ100%のHeLa細胞が、N/P60でも生存した。mRNAノックダウンのデータと共に、ポリマーAおよびBは、負に帯電したsiRNAの複合化およびHeLa細胞内へのsiRNAの取り込みの調整に有効であり、このことは、良好な細胞生存性を維持しながら、非修飾bPEI−25と同レベルで良好なBcl−2mRNAのダウンレギュレーションを生じさせたといえる。HeLa細胞は、Bcl−2mRNAのノックダウン後の細胞死に抵抗性を示すが、これは、このmRNAのノックダウンが、ガン細胞を抗ガン剤に鋭敏化させることを示す。
【0197】
表7は、HepG2、HeLaおよびSK−OV−3細胞ラインにおける選択した修飾bPEI−25ポリマーおよび非修飾bPEI−25について、細胞生存率が80%以上で得られた最大GFPトランスフェクション効率を比較する。また、表7には、細胞生存率が80以上の最大N/P比をリストした。
【0198】
【表7】
【0199】
HepG2細胞ライン(表7)においては、非修飾bPEI−25は、最大N/P比が15であり、細胞生存率が80%以上につき、5%の最大GFPトランスフェクション効率を有する。一般に、環状カーボネート修飾bPEI−25ポリマーは、より高いN/P比(N/P20〜50)およびより高い最大GFPトランスフェクション効率(8%〜64%)を有する。ポリマーJおよびVを除き、GFPトランスフェクション効率は、約1:6〜約1:25のbPEI−25環状カーボネートモル供給比(約10%〜約45%の第1アミン基が修飾される)を使用すると、10%を超えた。不溶性により、コレステロール修飾bPEI−25ポリマーP45およびP46(比較例)は、約5%の第1アミン基の修飾に制限された。この修飾レベルについて、P45およびP46は、最大N/P比および最大GFPトランスフェクション効率が、非修飾bPEI−25と同様であった。BuOCOCl修飾bPEI−25(P47,43%の第1アミン基が修飾された)は、また、最大N/P比および最大GFPトランスフェクション効率が、非修飾bPEI−25と同程度であった。これらの結果は、第1アミン基を環状カーボネートで修飾することは、最大N/P比および最大GFPトランスフェクション効率に好ましく、TMC(ポリマーK)は、約45%の修飾レベル(モル供給比1:25)を有しているためとりわけ好ましいものとなっていることを示す。
【0200】
HeLa細胞ラインにおいても、選択したポリマーについて全GFPトランスフェクション効率は低いものの、同一の傾向が観察された。
【0201】
修飾bPEI−25ポリマーと非修飾bPEI−25との間で小さな差は、SK−OV−3細胞ラインで見られた。この例においては、非修飾bPEI−25は、最大N/P比が15であり、最大効率が70%であった。ポリマーKは、saidaiN/P比20および最大効率75%を示した。ポリマーOは、最大N/P比15で、最大効率が約78%であった。
【0202】
これらの結果は、ポリカーKが、非修飾bPEI−25に比較して多種のガン細胞に対する、より有効であり、より毒性のないトランスフェクション剤であることを示すものである。
【0203】
ヒト間葉系幹細胞(hMSC)におけるin vitroルシフェラーゼ発現
Poietics(商標)ヒト間葉系幹細胞(mHSC)をLonza,シンガポールから購入し、間葉系幹細胞の基本培地(MSCBM)(Lonza、シンガポール)で培養した。基本培地は、間葉系幹細胞成長サプリメント(MCGS)、L−グルタミン酸、GA−1000(MSCGM(商標)SingleQuotes(商標)、Lonza、シンガポール)により付養した。細胞を37℃、5%CO、湿度95%の空気下で培養した。トリプシン/EDTA培養液を使用してコンフルエンスが90%に達した時に分離した。
【0204】
修飾bPEI−25ポリマー/DNA複合体のmHSC中でのin vivo遺伝子トランスフェクション効率を評価するために、細胞を24ウェルプレートに、ウェルごとに、500マイクロリットルあたり1×105セルの密度でシードした。24時間後、プレートの培養液をフレッシュな成長培養液に交換し、次いで50マイクロリットルの複合体溶液(1.75マイクログラムのGFPプラスミドDNAまたは2.5マイクログラムのルシフェラーゼプラスミドDNAを含有する)を種々のN/P比で滴下して加えた)。その後、4時間培養を行い、遊離した複合体を、各ウェル内の培養液を交換して除去した。さらに68時間の培養の後、各ウェル内の細胞培養液を除去し、細胞を0.5mLのリン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.2)で1度洗浄した。0.2mLのレポータ・リシス・バッファを各ウェルに添加した。凍結(−80℃、30min)および乾燥を2サイクル行なった後、細胞溶解物を回収し、14,000rpmで、5min遠心分離して清浄化し、その後、20マイクロリットルのスーパーネータントを、100μリットルのルシフェラーゼ基質と混合し、光度計(Lumat LB9507、Berthold、ドイツ)を使用して、相対光度ユニット(RLU)を決定した。RLUの読値は、BCAタンパクアッセイを使用して決定したスーパーネータントのタンパク濃度に対して規格化し、全ルシフェラーゼ発現効率を得た。すべてのin vitro遺伝子発現実験において、未処理細胞をネガティブ対照群とし、非修飾bPEI−25/DNA複合体で処理した細胞をポジティブ対照群として使用した。データを、3度繰り返し、平均±標準偏差で表した。
【0205】
図43は、ヒト間葉系幹細胞(hMSC)における修飾bPEI−25ポリマーT,S,G,M,KおよびOについての、N/P比の関数としてルシフェラーゼ発現レベルを示したグラフである。ポリマーG(マンノース修飾bPEI−25)は、ヒト間葉系幹細胞に対し、ポリマーK(TMC修飾bPEI−25)およびO(MTC−C2修飾bPEI−25)よりも高いルシフェラーゼ発現レベルを有していた。この理由は、細胞がマンノース・レセプタを過剰発現するためである。他の組成物に比較してGは、遺伝子トランスフェクションにおいて最適であった。
【0206】
ポリマー/DNA複合体の細胞毒性を、標準MTTアッセイ手法を使用して検討した。トランスフェクションの一日前に、hMSCを96ウェルプレートに、ウェルあたり10000セルの密度でシードした。各ウェル内の細胞をその後、10マイクロリットルのポリマー/DNA複合体および100マイクロリットルのフレッシュな培養液を含む成長培養液で、37℃、4時間培養した。培養後、培養液をフレッシュな培養液で交換し、さらに68時間培養した。次いで、100マイクロリットルの成長培養液と20マイクとリットルのMTT溶液(PBS中、4mg/mL)を各ウェルに添加し、細胞をさらに37℃で4時間培養した。各ウェル内に形成されたホルマザン結晶を、成長培養液の除去に際して150マイクロリットルのDMSOを使用して溶解させた。波長550nmおよび690nmでマイクロプレート分光計を用いて吸光度を測定した。相対細胞生存率を、[(A550−A690)サンプル/(A550−A690)対照群]×100%として表現した。少なくとも8回繰り返して、データを、平均±標準偏差として表した。
【0207】
図44は、T、S,G,M,K,Oのルシフェラーゼ複合体の細胞毒性を示すグラフである。G/DMNA複合体は、細胞に対して顕著な毒性を示さなかった。細胞生存率は、N/P40において、75%よりも高かった。
【0208】
P45〜P47でのGFPトランスフェクション効率およびHepG2細胞の細胞生存率
P45〜P47のGFPレポータ遺伝子複合体を、概ね上述した手順にしたがって異なるN/P比で調整した。図45は、HepG2細胞内でのこれらの複合体のGFPトランスフェクション効率を示す棒グラフである。ブチルクロロホルメートで修飾したbPEI−25は、最も低い、約5%の効率を有していた。コレステロールクロロホルメートで修飾したbPEI−25は、3つの修飾bPEI−25ポリマーの中で、約25%の最も高い効率を有していた。上述の結果は、P45〜P47が、G(図30で約50%の効率)およびK(図32、約65%の効率)に比較してHepG2細胞内におけるより、遙かに低いGFPトランスフェクション効率を有することを示す。
【0209】
図46は、GFP複合体P45〜P47によるHepG2細胞生存率を比較した棒グラフである。トランスフェクトされたHepG2細胞は、N/P30〜N/P50で約70%が生存していた。
【0210】
修飾bPEI−25ポリマーの抗微生物活性
ミューラー・ヒントン寒天培地(II)(MHB)パウダーおよびイースト・モールド・ブロス(YMB)パウダーを使用して、製造者の指示に従って培地を調整した。Staphylocpccus aureus(S.aureus)(ATCCNo.6538)、Escherichia Coli(E.coli)(ATCCNO.25922)を、ATCC(U.S.A)から入手し、指示されたプロトコルに従って再培養した。3−[4,5−ジメチルチアゾリル−2]−2,5−ジフェニルテトラゾールブロマイド(MTT)を、受け取ったままで使用した。
【0211】
修飾bPEI−25ポリマーの最小発育阻止濃度(MIC)を、ブロス・マイクロ・ダイリューション法を使用して測定した。修飾bPEI−25ポリマーを、DI水に5000mg/Lで溶解した。サンプルをさらに、MHBまたはYMBを使用して、7.8125、15.625、31.25、62.5、125、250.0、 500.0 および1000mg/Lに希釈した。バクテリア溶液の光学密度を、MHBまたはYHBの添加により、OD600nm=0.07〜0.08に調整した。このバクテリア溶液をさらに、1000倍に希釈した。カチオン性化合物溶液(100マイクロリットル)を96ウェルプレート(NUNC)の各ウェルに移し、次いで、100マイクロリットルのバクテリア溶液を添加した。MHBまたはYMBを対照群として使用した。バクテリア溶液の光学濃度の読みは、所定の時間でOD600nmを読み取ることによりモニタした。アッセイを、各サンプルについて6回繰り返し、かつ実験を少なくとも3度繰り返した。表8は、選択した修飾bPEI−25ポリマーに対するE.coliおよびS.aureusのMICをリストする。
【0212】
【表8】
【0213】
結果は、Gram陰性であるE.coliおよびGram陽性であるS.aureusに対する修飾bPEI−25ポリマーG,S,T,Kの抗微生物活性は、非修飾bPEI−25と同程度であることを示す。
【0214】
まとめ
非修飾bPEI−25は、種々の供給モル比のカーボネート−マンノース/ガラクトース/疎水性基で良好に修飾できた。修飾bPEI−25ポリマーの遺伝子複合体のHepG2細胞中でのトランスフェクション効率は、bPEI−25を環状カーボネート・モノマーの第1アミンを、約9%〜約47%修飾して、それぞれポリマーA、B,F,G,S,T,H,I,R,U,K,Pとして好ましいものであった。ポリマーC,L,M,Nは、47%以上の第1アミンが修飾されており、大粒子を形成し、その表面電荷が低いことから遺伝子トランスフェクション効率が低かった。修飾bPEI−25ポリマーの遺伝子複合体の細胞毒性は、HepG2およびHeLa細胞においては、対応する非修飾bPEI−25複合体よりも著しく低く、また遺伝子トランスフェクション効率は、HepG2細胞で2倍(50%対非修飾bPEI−25の25%)であった。加えて、マンノース修飾ポリマーは、効果的にBcl−2 simRNAをHeLa細胞にデリバーし、明らかな細胞毒性無しに、Bcl−2 simRNAを、通常レベルの1/4にまでダウングレードした。上述の種々の官能化を施した修飾bPEI−25ポリマーは、ターゲット治療遺伝子のデリバリー(例えば、ケラチノサイト、マクロファージ、樹状細胞へのマンノース、肝細胞をターゲットとしたガラクトース)のためのベクターとして大きな可能性を有している。
【0215】
特に、トランスフェクション効率および細胞生存率は、非帯電のカルバメート修飾基だけを使用して改善された。さらに、修飾bPEIポリマーのいずれもが、第4アミンを含有してはいない。
【0216】
修飾した分岐ポリエチレンイミンポリマーは、また、タンパク、または薬剤のうちのいずれか1つまたは両方をデリバーするための部比来るとして使用できる。
【0217】
本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を説明するためのみに使用され、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書で使用される単数形態“a”、“an”、および“the”は、文脈が明らかに他を示さない限り、同様に複数形態を含むことを意図する。さらに本明細書における用語“含む”または“含んでいる”、またはそれら両方は、記述された特徴、整数、ステップ、操作、要素、またはコンポーネント、またはこれらの如何なる組み合わせの存在を規定するものであって1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、コンポーネントまたはそれらのグループやこれらの如何なる組み合わせを排除するものではない。可能な値の範囲を表現するために2つの数値限定XおよびY(例えば、濃度XppmからYppm)を使用する場合、他のことが記述されない限り、値は、X,Y、またはXとYの間の如何なる数とすることができる。
【0218】
本発明の記述は、例示および説明の目的のために提示されたのであって、本発明を開示された形態に終止させるものであるとか、本発明を制限するものとかを意図するものではない。実施形態は、本発明の原理、実際的な適用を、当業者が本発明を理解することを可能とするため最適に説明するべく選択され、記述されたものである。
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