(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン樹脂は結晶性ポリオレフィン樹脂に属する。融点以上の溶融状態のポリプロピレン樹脂をフラットダイから押出し、冷却ロール上で固化させてシートを製造するプロセス(以下「溶融押出法」とよぶ)においては、シート温度は冷却ロール上で結晶化温度を通過し、その際に結晶核の生成と結晶成長が進むことでシートが半透明な製品になる。
【0003】
一般包装用として市場に出回っているポリプロピレンフィルム(本明細書では、「フィルム」の厚みは100μm未満、「シート」の厚みは100μm以上とする。)はその厚みが10〜30μmと非常に薄い。ポリプロピレンフィルムは溶融状態から冷却固化したシートを二軸延伸させて製造するが、ポリプロピレンは二軸延伸を行うと透明度が高まる性質を有しており、延伸後の製品フィルムの透明性は確保できる。そのため、延伸前の冷却シート自体は半透明でも問題は生じない。
【0004】
一方、延伸過程を経ない無延伸フィルム製造において透明性の確保を行うためには、ポリプロピレンの結晶化温度を急速に通過する急速冷却を行うことにより、結晶の成長を抑制し、高透明な製品を製造することが可能である。無延伸フィルム製造においてはその基材の薄さゆえ、1本の大径ロールで冷却固化させるだけでフィルムの両面を十分に急速冷却することができ、したがって透明性の確保は比較的容易である。一方、無延伸シート製造においては、シートが厚いため、シート温度が結晶化温度を通過する際の冷却速度を速くすることが困難であり、そのため結晶成長が進み、結果として透明性の確保が難しくなる。例えば仮にロールに接触しているシート面の温度が結晶化温度を通過する際の冷却速度を速くすることができたとしても、ロールに接触していないシート面の温度については、結晶化温度通過時の冷却速度を速くすることは困難である。
【0005】
透明ポリプロピレンシートの製造方法に関する技術が知られている。特許文献1にはポリオレフィン樹脂シートの強度および透明性を向上させることを目的として、非等速法と呼ばれる圧延法によるシートの製造方法が示されている。この製造方法では、周速度が順次異なる一対の圧延ロールにシート材料を通過させてシートを製造する。しかしこの方法は、一対のロール間隙を通過させる圧延法が基本となる製造方法であるため、本発明が対象としている溶融押出法とは製造プロセス自体が異なるものである。
【0006】
特許文献2は、溶融押出法における冷却工程とその後の熱処理工程を有する透明ポリプロピレンシートの製造方法に関する。しかしこの方法では、ポリプロピレン樹脂にポリプロピレンへメタロセン系エチレン−α−オレフィン共重合体を加えた材料を用いている。すなわちこの文献は、純粋なポリプロピレン樹脂の透明シート製造法に言及したものではない。
【0007】
特許文献3、4および5もまた透明ポリプロピレンシートに関する。しかし、これらもまたポリプロピレン樹脂に数種の添加物を加えた材料を提案している。
【0008】
なお、特許文献6には、大径ロールと小径ロールとを用いて平らなプラスチック製品を冷却する方法が記載される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、ポリプロピレン樹脂を単一原材料としてポリプロピレン樹脂シートを製造する方法に関する。なお、本明細書において、最初の冷却ロール(後述するNo.1ロール)に接触するシート面を「表(おもて)面」と呼び、他方の面すなわち最初の冷却ロールに接触しないシート面を「裏面」と呼ぶことがある。
【0017】
〔原材料〕
単一原材料として、ただ一種類のポリプロピレン樹脂のみを用いる。ポリプロピレン樹脂以外の原材料は使用しない。
【0018】
ポリプロピレン樹脂としては、公知のポリプロピレン樹脂を適宜用いることができ、従来からポリプロピレンシートの原料として公知の材料から適宜選ぶことができる。
【0019】
〔吐出工程〕
本発明では、溶融押出法によってポリプロピレン樹脂シートを製造する。溶融押出法は、吐出工程と、冷却工程とを有する。
【0020】
吐出工程では、フラットダイから、溶融状態の原材料すなわちポリプロピレン樹脂をシート状に吐出する。フラットダイとしては、溶融押出法によるポリプロピレン樹脂シート製造の分野において、従来から知られているフラットダイを適宜用いることができる。吐出のために使用する機械も、当該分野において公知のものを適宜用いることができる。
【0021】
〔冷却工程〕
冷却工程では、吐出工程で吐出されたシート状原材料を、複数の冷却ロールに順次接触させて冷却する。つまり例えば、シート状原材料を、まず1本目の冷却ロールに接触させて冷却し、次に2本目の冷却ロールに接触させて冷却し、次に3本目の冷却ロールに接触させて冷却する(3本目の冷却ロールが存在する場合)。以下場合により、i本目(iは正の整数を表す)の冷却ロールを、No.iロールと表記する。つまり、フラットダイから吐出した溶融樹脂を接触させてシートを冷却させるロールを「No.1ロール」という(一般的にこのロールの180°程度はシートに接触させる)。そのNo.1ロールに対し吐出された樹脂を介した対面に存在する補助ロールを「タッチロール」というが、タッチロールは必ずしも必要ではない。No.1ロールの下流に設置された冷却ロールを「No.2ロール」「No.3ロール」と順次表現する。
【0022】
複数の冷却ロールは回転方向が順次反転して回転している。例えば、No.1ロールが時計回りに回転している場合、No.2ロールは反時計回り、No.3ロールは時計回り、に回転する。この構成により、吐出工程から得られたシート状原材料の一方の面と他方の面を複数の冷却ロールによって交互に冷却することができる。例えば、シート状原材料の表面をNo.1ロールで冷却し、次いで裏面をNo.2ロールで冷却し、再び表面をNo.3ロールで冷却することができる。
【0023】
冷却ロールは、シート状原材料の温度を細かく調節する観点から、4本以上が好ましいが、3本あるいは2本でもよい。
【0024】
最初の冷却ロールすなわちNo.1ロールによる冷却は、シート状原材料のNo.1ロールと接している面が融点未満の温度にはなるが結晶化温度に到達しないうちに終了する。つまり、No.1ロールによる冷却の終点において、シート状原材料のNo.1ロールとの接触面の温度は、原材料の融点未満になっている。そして、No.1ロールによる冷却過程において、シート状原材料のNo.1ロールとの接触面の温度が、原材料の結晶化温度に到達することはない。
【0025】
溶融押出法にて結晶性樹脂のシートを冷却する際、前述のように大径ロールを用いてシートを急冷しようとしても、シート温度(特にはロールに接触していない面の温度)が結晶化温度を通過する際の冷却速度を速くすることが困難で、そのため結晶成長が進み、結果としてシートの透明性が低下する傾向がある。
【0026】
このような現象を避けるため、本発明では、No.1ロールによるシート状原材料の一方の面の冷却を、早めに終了させ、具体的にはシート状原材料のNo.1ロールとの接触面の温度が結晶化温度に到達する前に終了させ、次いでNo.2ロールによってシート状原材料の反対側の面を冷却する。
【0027】
なお、原材料の融点および結晶化温度は、JIS−K7121に基づいて示差走査熱量測定(DSC)により求めることができる。
【0028】
〔シート製造装置の例〕
以下図面を参照しつつ本発明を説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0029】
図1に、本発明を実施することのできるシート製造装置の例の概略を示す。この装置では、小径ロールが連続して配置される。それにより、シートの一方の面と他方の面を比較的短時間で交互に冷却することが容易となる。したがって、最初の冷却ロールによる冷却を、シート状原材料の最初の冷却ロールと接している面が融点未満の温度にはなるが結晶化温度に到達しないうちに終了することが容易である。その結果、シートにおける結晶成長の進展を抑え、透明度の高いシートを製造することが容易である。
【0030】
前述のように、シート原材料にはポリプロピレン樹脂のみを用いる。タッチロール10は、フラットダイ11から吐出された溶融状態のシートをNo.1ロール1の表面に十分に密着させることを目的として使用される。タッチロール10を考慮外とすると、この装置では、冷却ロールが4本(No.1〜No.4ロール)設置される。
【0031】
より詳しくは、この装置は、タッチロール10と同等の径(直径300mm)を有するNo.1ロール1とNo.2ロール2、これらよりやや小径(直径250mm)のNo.3ロール3およびNo.4ロール4を有する。No.1ロールは紙面において反時計回りに回転し、二本目以降の冷却ロールは直前のロールと逆方向の回転を行う。一連の冷却ロールによって、シートの一方の面と他方の面とが交互に冷却される。No.4ロールから冷却されたポリプロピレン樹脂シート12が得られる。
【0032】
なお、全ての冷却ロールについて、さらにはタッチロールについても、回転軸が同一平面上に互いに平行に配されている。
【0033】
〔冷却ロール設定温度〕
冷却ロール(特にはNo.1ロール)からシートを剥がす際に、シートの変形を抑制することが望まれる。これは、ポリプロピレン樹脂シートの製造において公知の適宜の手法を適用することによって達成することができるが、例えばこのために、最初の冷却ロール(No.1ロール)の設定温度を原材料樹脂の結晶化温度より50℃以上低い温度とし、二本目以降の冷却ロールの設定温度を、それぞれのロールの直前のロールの設定温度以下とすることが好ましい。一方、例えば、全ての冷却ロールの設定温度は、原材料樹脂の結晶化温度より100〜110℃程度低い温度かそれ以上とすることができる。
【0034】
なお、一般的に冷却ロールの温度は、温度管理した液状媒体(水あるいは油など)をロール内に循環することで調整している。その液状媒体の管理温度が、冷却ロールの設定温度である。
【0035】
〔冷却ロールの周速〕
冷却ロールの回転速度に関しては、圧延法とは異なり基本的には全てのロールの周速度は同一とする。ただし、樹脂シートでは、引っ張りにより若干の伸びが発生したり、冷却するに従って収縮が生じたりすることがある。このような現象が発生するとシート状原材料が冷却ロールに対して摺動することもある。このような摺動を回避するために、全ての冷却ロールの周速度は必ずしも厳密に同一とする必要はなく、概等速とすればよい。例えば、二本目以降の冷却ロールの周速度を、その直前の冷却ロールの周速度に対して0.98〜1.02(増減速比±2%以内)の範囲で、調整することができる。
【0036】
〔ロール間のシート浮遊領域〕
1本の冷却ロールとその直後のロールとの間に、シートが浮遊する領域(シートがいずれのロールにも接していない領域)が生じることもある。実質的にこの領域ではシートの冷却が行われないため、この領域は可能な限り狭い方がよく、その距離は、その領域の直前のロールの周長の1/10以下が好ましい。シート浮遊領域の距離の下限値は0(ゼロ)である。
【0037】
〔冷却ロールの径〕
冷却ロールの径が全て同一であることが好ましい。シート表裏面を均等に冷却することが容易であり、したがって表面性および透明性に優れたシートを得ることが容易だからである。
【0038】
〔その他〕
例えば、
図1に示した装置で、おおむねNo.1からNo.2ロールにて樹脂の結晶化温度を若干上回る温度まで冷却を行い、概ねNo.3ロールでシート全体の温度を結晶化温度以下へ冷却させ、その後のロールでさらなる冷却を行うことができる。
【0039】
冷却ロールによる冷却の後は、従来のポリプロピレン樹脂シートの製造において知られている各種工程(トリミングなど)やそれに伴うシートの搬送などを適宜行うことができる。通例、ポリプロピレン樹脂シートは、これら各種工程もしくは搬送などの間に最終的に略常温になり、必要に応じてロール状に巻き取られる。
【0040】
本発明によれば、フィルムやシートの透明度の指標であるヘイズ(入射光に対する平行光線透過率と拡散光線透過率の比率)の最低値が10%以下、好ましくは8%以下の高透明シートを得ることが可能となる。ヘイズの最低値が10%以下のシートとは、ヘイズ値が10%以下を示す領域が少なくとも一カ所存在するシートを意味する。また、ヘイズ測定はJIS−K7136に基づいて行うことができる。
【0041】
本発明の方法は、全幅方向の平均厚みが100μm以上、1000μm以下の透明なポリプロピレン樹脂シート、特には全幅方向の平均厚みが100μm以上、500μm以下の透明なポリプロピレン樹脂シートを製造するために、極めて好適である。
【実施例】
【0042】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0043】
図2に、各例において原材料として用いたポリプロピレン樹脂のDSC測定結果を示す。このグラフから、この材料の融点は164.0℃、結晶化温度は117.7℃であることがわかる。
【0044】
〔比較例1〕
図3は、従来技術において典型的なポリプロピレン樹脂シート製造装置構成の概略図である。この装置は、大径(直径700mm)の冷却ロール(No.1ロール1)と、タッチロール10(直径350mm)および小径(直径350mm)のNo.2冷却ロール2を備える。
【0045】
この装置によるシート製造では、フラットダイ11から押し出されたシート状の溶融樹脂が反時計回りに回転するNo.1ロール1に接触し冷却が開始される際に、No.1ロールと同じ周速度で時計回りに回転するタッチロール10で樹脂をNo.1ロールに確実に密着させる。No.1ロール上でシート状樹脂の冷却固化が進行した後、シートはNo.1ロールから剥離され、No.2ロールに接触し、シート裏面(No.1ロールに接触していた面とは反対側の面)の冷却がなされる。
【0046】
この構成を有するシート製造装置について、シミュレーションにより、シート冷却工程の温度解析を行った。
図4にその結果を示す。
【0047】
想定した製造条件としては、フラットダイ11から押し出された溶融ポリプロピレンの温度は当該分野で一般的な250℃に設定し、全てのロールは20m/minの周速度で回転し、No.1ロール1の設定温度は30℃、No.2ロール2の設定温度は15℃とし、厚さ0.6mmのシート12を得ることとした。
【0048】
図4に示されるように、No.1ロール表面に接触しているシート表面の温度は、融点を下回るだけでなく、結晶化温度に到達し、さらに低下している。この温度は最初は急激に低下し、融点を下回るが、冷却速度は徐々に緩やかになるため、結晶化温度を通過する際には冷却速度が速いとは言えない。また、No.1ロールに接していないシート裏面の温度は緩やかに低下し、融点を下回り固化状態には至っているものの結晶化温度よりも高い状態でシートがNo.2ロールに搬送され、No.2ロール上にて結晶化温度を下回る結果となっている。さらにはシート中間面の温度も結晶化温度付近で緩やかに低下している。
【0049】
このような温度変化状況では、特にはシート表面(No.1ロール接触面)からシート中間面付近において、結晶成長が進行することが推測される。
【0050】
なお、冷却時間約3.5〜3.8秒の領域は、No.1ロールとNo.2ロールとの間でシートが浮遊している領域である。
【0051】
〔実施例1〕
図1に示した構成を有するシート製造装置について、シミュレーションにより、シート冷却工程の温度解析を行った。
図5にその結果を示す。
【0052】
想定した製造条件としては、全てのロールは20m/minの周速度で回転し、No.1冷却ロール1の設定温度は55℃、No.2ロール2の設定温度は30℃、No.3ロール3およびNo.4ロール4の設定温度はいずれも20℃とし、厚さ0.6mmのシート12を得ることとした。
【0053】
図5から、シートは各冷却ロールに順次素早く搬送され、表面裏面が交互に冷却されつつシート全体が冷却固化されていることがわかる。シート面の温度は、或る冷却ロール表面と接触して冷却された後に、次の冷却ロールに送られて反ロール表面(冷却ロールに接触しない側)に移行した段階で一旦温度が上昇する。一方、シート中間面の温度はほぼ一定速度で冷却が進み、No.3ロール上で結晶化温度を下回る結果となっている。
【0054】
最初の冷却ロールすなわちNo.1ロール1による冷却によって、シート表面(No.1ロールに接触している面)の温度は、融点未満になるが、結晶化温度に到達することはない。No.2ロール2による冷却によって、シート裏面(No.1ロールに接触していなかった面)の温度が結晶化温度を下回るが、その際の冷却速度は比較的速い。またNo.3ロール3による冷却によってシート表面(No.1ロールに接触していた面)が結晶化温度を下回るが、その際の冷却速度も比較的速い。
【0055】
このような温度変化の場合、結晶成長の進行が抑制され、したがって得られるポリプロピレン樹脂シートが透明性に優れると推測される。
【0056】
〔実施例2〕
図6に本発明を実施できるシート製造装置の別の例の概略を示す。実施例1の装置構成では、隣り合う冷却ロールの間に、シートの浮遊領域は存在しない。一方、この装置では、No.2以降のロールをそれぞれ直前のロールからやや離して設置し、ロール間のシートの浮遊領域を設けている。具体的には、上流側から順にそれぞれ、111.4mm、119.9mm、87.9mmの区間で、シートが浮遊する。この点を除いて、本例の装置構成は実施例1の装置構成と同じである。
【0057】
この構成を有するシート製造装置について、シミュレーションにより、実施例1と同一の製造条件でシート温度の予測解析を実施した。その結果を
図7に示す。
【0058】
この図から、ロールを剥離した後の浮遊領域でシートの冷却速度は鈍化し(場合によって温度上昇が見られる)、実施例1と比較して結晶化温度付近での冷却がやや緩やかになっている。シートの透明性の観点から結晶化温度付近での冷却は速いほど良いので、ロール間のシート浮遊領域は存在しないことが理想ではあるものの、透明性に関して本例でも比較例1に対して優位である。
【0059】
また本例のロールレイアウトでは、ロール間の浮遊距離が、直前のロールの周長の1/10超(直前のロールの周長に対するロール間の浮遊距離は、上流側から順に0.12、0.13、0.11)であったが、それぞれの浮遊領域でシート中間面の温度が一定値に漸近しつつある。したがって、装置構成上やむなく浮遊領域が生じる場合でも、冷却効率を高めるためには、ロール間の浮遊距離は、直前のロール周長の1/10以下としたほうが好ましいといえる。例えば、No.2ロールとNo.3ロールとの間のシートの浮遊距離が、No.2ロールの周長(942mm)の1/10以下(94.2mm以下)となるように、No.3ロールを配置することが好ましい。
【0060】
〔比較例2〕
比較例1で使用したシート製造条件に基づいて、実際にシートを製造し、シートサンプルを得た。ロールの設定温度は比較例1の解析条件と同一とし、ただし冷却ロールの周速度はNo.1ロールが20.00m/min、No.2ロールが20.20m/minであった。
【0061】
〔実施例3〕
実施例1で使用したシート製造条件に基づいて、実際にシートを製造した。ただし小径連続冷却ロールの周速度は、No.1ロールが20.00m/min、No.2ロールが19.99m/min、No.3ロールが19.97m/min、No.4ロールが19.93m/minであった。
【0062】
〔実施例4〕
実施例2で使用したシート製造条件に基づいて、実際にシートを製造した。ただし小径連続冷却ロールの周速度は、実施例3と同じであった。
【0063】
図8は製造したポリプロピレン樹脂シートを通して青空に浮かぶ白雲を撮影した写真であるが、この図の左側約半分には比較例2のシートが配置され、右側約半分には実施例3のシートが配置されている。この図から、右側のシートの透明度が明らかに高いことがわかる。
【0064】
実施例3および4並びに比較例2で得られたシートの全幅方向平均厚さとヘイズを表1に示す。比較例2ではヘイズを15%以下に下げることが困難であったが、本発明に基づいて製造したシートのヘイズは11%程度、さらには8%程度を達成出来ている。したがって、従来技術で製造したシートに対し本発明に基づいて製造したシートは透明性に優れることが判明した。
【0065】
【表1】
【0066】
〔実施例5〕
フラットダイからの樹脂の吐出量を半減させたこと以外は実施例3と同様にして、厚さ0.3mmの比較的薄いシートを製造した。ヘイズが6.5%と非常に透明性に優れたシートを得ることができた。
【0067】
上述のように、実施例においては、まず、シミュレーションによってシート表面温度を予測することにより、No.1ロールによる冷却をシート状原材料のNo.1ロールと接している面が融点未満の温度にはなるが結晶化温度に到達しないうちに終了するようなポリプロピレン樹脂シート製造条件を推定した。そして実際にその製造条件でポリプロピレン樹脂シートを製造して、透明性の高いシートが得られることを確認した。