(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の釘状のアンカー部材では、地面に対する固定力が弱く、防草シートを十分に固定することができなかった。このため、例えば、竜巻や突風などの強風に防草シート等が煽られると、アンカー部材が地面から抜けて、防草シート等が飛散する虞があった。また、近年、防草シートの代りに樹脂等により作成された軽量な防草ボードが開発されている。このような、防草ボードは、輸送し易く、地面への敷設も容易である反面、風に飛ばされ易い。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、防草シートや防草ボード等を地面に対して強固に固定することができるアンカー部材を提供することにある。
【0006】
本発明は、上記した目的を達成するために提案されたもので、請求項1に記載のものは、軸の外周にねじ山を有し、先端から地面にねじ込まれるねじ本体と、
該ねじ本体の後端側に設けられた、工具が係合される係合部と、
前記係合部の外周よりも外方に延出された延出部と、を備え、少なくとも前記ねじ本体の一部が地中に埋設される樹脂製のアンカー部材であって、
前記係合部の外周と前記延出部
の係合部側の端部との間に
先端側に凹んだ空間が形成されたことを特徴とするアンカー部材である。
【0007】
請求項2に記載のものは、前記延出部の後端面は、前記係合部の後端面と同じ位置或いは前記係合部の後端面よりも後方に形成されたことを特徴とする請求項1に記載のアンカー部材である。
【0008】
請求項3に記載のものは、前記ねじ本体の軸の後端部は、前記延出部に向けて次第に拡径されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアンカー部材である。
【0009】
請求項4に記載のものは、前記軸の拡径された部分に前記ねじ山が形成されたことを特徴とする請求項3に記載のアンカー部材である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、ねじ本体の軸の外周にねじ山を有しているので、地中にねじ山に対応するねじ谷(雌ねじ)を作りながらそのまま締めることができ、例えば防草シートや防草ボード等を地面に対して容易に固定することができる。また、ねじ山にかかる土圧によってアンカー部材が不用意に地面から抜けることを抑制でき、防草シートや防草ボード等を地面に対して強固に固定することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、延出部の後端面と係合部の後端面との間の段差を無くすことができる。これにより、人が躓くことを一層抑制できる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、アンカー部材を地中に締め込む際に、この拡径した軸の後端部によって地表近くの土を斜め下方に強く押圧することができる。これにより、アンカー部材が不用意に地面から抜けることを一層抑制できる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、ねじ山の最上部の強度を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各実施形態に示すアンカー部材1や防草ボード28の寸法等は、説明の都合上、実際の寸法、縮尺と異なる場合がある。
【0016】
図1〜
図3はアンカー部材1の説明図であり、
図1(a)はアンカー部材1の正面図、
図1(b)はアンカー部材1の平面図、
図1(c)はアンカー部材1の底面図、
図1(d)は
図1(a)におけるA−A断面図である。また、
図2(a)は内部を透視したアンカー部材1の正面図、
図2(b)はアンカー部材1の斜視図である。さらに、
図3はアンカー部材1の後端部分の構成を説明する断面図であり、
図1(d)におけるB−B断面の要部を拡大した図である。
【0017】
アンカー部材1は、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂等の熱可塑性を有する樹脂(合成樹脂)から成形され、ワッシャー20が離脱しない状態で組み付けられた(一体となった)雄ねじである。このアンカー部材1は、軸5の外周にねじ山6を有し、先端から地面にねじ込まれるねじ本体2と、ねじ本体2の後端側に設けられた頭部3(本発明における係合部に相当)と、ねじ本体2と頭部3との間に形成された接続部14と、接続部14に回動可能な状態で保持されたワッシャー20と、を備えている。本実施形態のアンカー部材1は、長手方向の寸法(全長)が約20cm、ねじ本体2の直径(ねじ山6を含む径)が約2.5cmに形成されている。また、ワッシャー20の外径が約6cm、ワッシャー20の厚みが約0.75cmに形成されている。なお、このような樹脂製のアンカー部材1のワッシャー20以外の雄ねじ部分およびワッシャー20を成型する方法としては、例えば、加熱により樹脂を軟化させて金型に押し込み、その後、冷却により樹脂を固化させてから金型から取り出す射出成形加工等が好適である。
【0018】
本実施形態のねじ本体2は、
図1および
図2に示すように、軸5の先端部5aが尖って(先細って)おり、この先端部5aの途中から軸5の後端(頭部3)側に亘ってねじ山6が形成されている。ねじ山6は、軸5の外周において螺旋状に形成されており、例えば、約1.5cmピッチで軸5の周りを約10周している。なお、ねじ山6のピッチおよび周回数は、アンカー部材1の全長や使用される地面の状態に応じて適宜に設定することができる。また、ねじ山6は、
図1(c)等に示すように、軸5からの高さが先端側から軸5の途中まで徐々に高くなるように形成されている。本実施形態では、先端側から数えて1周目のねじ山6から約5周目のねじ山6まで徐々に高さが高くなっており、5周目以降のねじ山6は略同じ高さに揃えられている。これにより、地面に対してねじ本体2を先端からねじ込む際に、アンカー部材1に加える力を少なくでき、作業性が向上する。
【0019】
ねじ本体2の軸5の後端部には、頭部3(あるいは後述する先端側保持部16)に向けて次第に拡径したテーパー部7が設けられている。換言すると、テーパー部7は、後端側(頭部3側)から先端側に向けて次第に縮径している。本実施形態のテーパー部7は、
図3に示すように、内部にテーパー穴8が形成された筒状に構成されている。このテーパー穴8は、後述する頭部3の凹部4の底面に開口し、この開口縁からテーパー部7の先端側の近傍まで凹んだ穴である。そして、
図3に示すように、テーパー穴8の内径は、テーパー部7の外径とほぼ同じ傾斜角度で先端側に向けて縮径している。これにより、テーパー穴8の内周面とテーパー部7の外周面との間の壁の厚さをほぼ一定に揃えることができる。すなわち、テーパー部7の偏肉を抑制することができる。その結果、樹脂成型する際における所謂ヒケ等による歪みを抑制できる。また、厚肉になると発生し易い真空ボイド(単にボイドともいう)を抑制することができる。これにより、テーパー部7の強度を確保することができる。なお、本実施形態では、テーパー部7の先端側の部分までねじ山6が形成されている。すなわち、テーパー部7の先端側の部分とねじ山6の後端部(最上部)とが重畳している。これにより、ねじ山6の他の部分と比べて強度が弱くなり易いねじ山6の最上部の強度を高めることができる。
【0020】
また、
図1および
図2に示すように、本実施形態におけるねじ本体2の軸5の断面は、十字状に形成されている。具体的には、先端部5aの途中であってねじ山6が形成された部分より先端側の部分からテーパー部7との境界に亘って断面十字状に形成されている。すなわち、軸5の断面において四方に突出した凸条11が形成され、この凸条11間に断面V字状の溝12が形成されている。そして、ねじ山6は、この凸条11および溝12の周りを周回している。すなわち、軸5の外周面には、ねじ山6と交差しながら当該軸5の長手方向に沿って延在する凸条11が4つ形成されている。換言すると、軸5の外周面には、ねじ山6と交差しながら当該軸5の長手方向に沿って延在する溝12が4つ形成されている。なお、各凸条11の厚さは一定の厚さに揃えられている。これにより、樹脂成型する際におけるヒケ等による歪みを抑制できる。また、軸5の内部に真空ボイドが発生することを抑制でき、軸5の強度を確保することができる。その結果、太い軸5であっても樹脂成型によって容易に作成することが可能になる。
【0021】
本実施形態の頭部3は、軸5の長手方向に沿って延在する六角柱状に形成されている。この頭部3の内部には、当該頭部3の頂面から先端側に向けて凹んだ凹部4が形成されている。この凹部4の断面形状(平面形状)は、
図1(b)に示すように、頭部3の断面(平面視)において、頭部3の外周面の断面形状(平面形状)と相似形、すなわち六角形に形成され、かつ、位相が同じ方向に揃えられている。換言すると、凹部4の中心からみた内周面の各頂点は、頭部3の外周面の各頂点と同じ方向に揃えられている。これにより、内周面と外周面との間の壁の厚さをほぼ一定に揃えることができる。その結果、樹脂成型する際におけるヒケ等による歪みを抑制できる。また、内部に真空ボイドが発生することを抑制できる。なお、凹部4の底面には、上述したテーパー穴8が開口している。
【0022】
図3に示すように、接続部14は、ワッシャー20を保持する保持軸15と、保持軸15より先端側に突条環状に形成された先端側保持部16と、保持軸15より後端側に鍔状あるいはフランジ状に形成された後端側保持部17と、を備えている。保持軸15は、ワッシャー20に形成された後述する挿通孔22に挿通されて、当該ワッシャー20を回転可能な状態で保持する部分であり、その外径は、ワッシャー20の挿通孔22の内径よりも小さく形成されている。例えば、挿通孔22の内径が約1.8cmに対し、保持軸15の外径は約1.73cmに形成される。これにより、挿通孔22の内周と保持軸15の外周との間に隙間が形成され、保持軸15に保持された状態でワッシャー20の回転が阻害されることを抑制できる。また、先端側保持部16および後端側保持部17は、ワッシャー20の挿通孔22の周縁部を上下から挟んで当該ワッシャー20が外れないようにする部分であり、それぞれの外径が挿通孔22の内径よりも大きく形成されている。特に、後端側保持部17の外径は、頭部3の外径よりも大きく、且つワッシャー20の後述する収容空間23の内径よりも小さく形成されている。一方、先端側保持部16の外径は、後端側保持部17の外径および頭部3の外径よりも小さく形成されている。例えば、後端側保持部17の外径は約2.9cmに形成され、先端側保持部16の外径は約1.86cmに形成される。そして、先端側保持部16と後端側保持部17との間隔は、ワッシャー20の挿通孔22の周縁部における板厚よりも広く形成されている。例えば、挿通孔22の周縁部の板厚が約0.27cmに対し、先端側保持部16と後端側保持部17との間隔は約0.3cmに形成される。これにより、ワッシャー20は、先端側保持部16と後端側保持部17との間において、保持軸15に対して相対的に回転可能な状態で保持される。
【0023】
ここで、先端側保持部16の先端側の面は、樹脂製のワッシャー20の挿通孔22が当該先端側保持部16の先端側から保持軸15側に向けて通過可能なように、ねじ本体2の後端側から保持軸15側に向けて次第に拡径されている。具体的には、先端側保持部16の先端側の面は、テーパー部7の後端部分からこのテーパー部7よりも急峻な傾斜角度で保持軸15側に向けて拡径している。なお、テーパー部7の後端部分の外径、すなわちテーパー部7の最大外径は、ワッシャー20の挿通孔22の内径よりも小さく形成されている。例えば、テーパー部7の後端部分の外径は約1.6cmに形成される。これにより、ワッシャー20の挿通孔22をねじ本体2の軸5に挿通し、挿通孔22の縁がテーパー部7の後端部分において先端側保持部16の先端側の面に当接した状態で、当該ワッシャー20を保持軸15側に向けて強く押圧すれば、挿通孔22の縁および内周面が僅かに撓み、ワッシャー20の保持軸15側への移動が許容されることになる。このようにして、ワッシャー20の挿通孔22を保持軸15に嵌めることができる。
【0024】
ワッシャー20は、アンカー部材1と同じく樹脂によって成形された浅い椀状の部材であり、その中心に保持軸15に挿通される挿通孔22が形成されている。本実施形態のワッシャー20は、挿通孔22の外周縁に表面(後端側の面)から先端側に向けて凹んだ収容空間23を有している。すなわち、収容空間23の底面の略中央に挿通孔22が開口している。そして、この収容空間23内に後端側保持部17が収容されている。上述したように、この収容空間23の内径は、後端側保持部17の外径よりも大きく形成されている。例えば、収容空間23の内径は約3cmに形成される。これにより、収容空間23の内周と後端側保持部17の外周との間に隙間が形成され、ワッシャー20の回転が阻害されることを抑制できる。また、本実施形態の収容空間23の軸5の長手方向に沿った方向における寸法(深さ)は、後端側保持部17の厚さと略同じ寸法に形成されている。例えば、収容空間23の深さは約0.2cmに形成される。これにより、ワッシャー20が保持軸15に保持された状態で、収容空間23内に後端側保持部17の全体が収容され、ワッシャー20の後端側の面と後端側保持部17の後端側の面との位置を揃えることができる。なお、収容空間23内に後端側保持部17の全体を収容せずに、後端側保持部17の先端側の一部が収容されるように収容空間23の深さを設定することもできる。
【0025】
また、本実施形態のワッシャー20は、各部の板厚が略同じになるように、収容空間23の表面からの凹みの分だけ、裏面(先端側の面であり、表面とは反対側の面)が先端側に突出している。すなわち、裏面側から見て、ワッシャー20の椀状空間内の底面が先端側に向けて円柱状に突出している。さらに、ワッシャー20の外周縁には、先端側に向けて湾曲した湾曲部21が形成されている。この湾曲部21の先端部は、椀状空間内の底面から突出した部分よりも先端側に延在している。なお、湾曲部21の厚みもワッシャー20の他の部分の厚みと略同じに揃えられている。これにより、ワッシャー20を樹脂成型する際において、ヒケ等による歪みを抑制できる。また、内部に真空ボイドが発生することを抑制できる。
【0026】
次に、アンカー部材1を用いて防草ボード28を地面に固定する方法について説明する。
図4は、防草ボード28の地面への固定を説明する模式図であり、一部を欠截した斜視図である。また、
図5は、敷設される防草ボード28の一部を下方から見た斜視図である。なお、本実施形態では、略水平な路肩25、および当該路肩25の端部から下方に下り傾斜した法面26に亘って防草ボード28を敷設している。
【0027】
本実施形態で敷設される防草ボード28は、植物の繁茂を抑制するだけでなく、敷設された地表の表面を平らにして、路肩25や法面26の構造を予定した寸法(規格通りの寸法)に設定し易くするために用いられる平らな板(ボード)である。この防草ボード28は、
図5に示すように、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル樹脂、ポリエステル、ABS樹脂等の樹脂からなる硬質な樹脂板29と、この樹脂板29の表面(敷設時において地面に対向する面とは反対側の面)に積層された不織布30とからなる。樹脂板29は、板厚が約5mmの中空板であり、空気を内在する円筒形の空気室32が内部に複数形成されている。本実施形態の樹脂板29は、裏面側が開放された円筒形状の中空突起を複数備えた中間板34と、中間板34の表面側に張り合わされて複数の中空突起の頂部を接続する表面板33と、中間板34の裏面側に張り合わされて中空突起を開放側から密封する裏面板35と、からなる三層構造の板である。空気室32は、中間板34の中空突起と裏面板35とにより形成されている。不織布30は、板厚が約1mmに形成された遮光性、耐候性、耐熱性のあるシートであり、例えば、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン等の合成繊維のほか動物性繊維や植物性繊維等が用いられる。この不織布30を表面に設けることで、摩擦を増大させることができ、防草ボード28の表面の滑りを抑えることができる。
【0028】
また、防草ボード28の裏面(敷設時において地面に対向する面)には、断面V字状の折曲溝37が形成されている。この折曲溝37は、防草ボード28の一部を裏面側へ折り曲げ易くするための溝であり、本実施形態では、防草ボード28の地面への固定を強固にするために地中へ埋没させる部分との境界、および法面26に敷設される部分と水平な路肩25に敷設される部分との境界に形成されている。なお、折曲溝37の内面(谷の両側の斜面)は、
図5に示すように、防草ボード28内の空間(空気室32および空気室32の外側の空間)と連通しないように、その表面の開口を潰して平坦に形成されている。これにより、雨水等が防草ボード28の内部に進入することを防止できる。さらに、防草ボード28には、板厚方向に貫通した貫通孔38が複数形成されている。この貫通孔38は、アンカー部材1が挿通される孔であり、少なくともアンカー部材1の軸5の先端部5aが挿通可能な大きさに形成されている。
【0029】
上記のように構成された防草ボード28は、軽量な樹脂で形成されているため、現場に合わせた加工や地面への敷設がし易いうえ、輸送コストを抑えることができる反面、地面への敷設後に風などによって飛散し易い。しかしながら、
図4に示すように、このような防草ボード28であっても、本発明のアンカー部材1を用いれば、容易かつ強固に地面(路肩25および法面26)へ固定することができる。
【0030】
具体的には、まず、防草ボード28を敷設して植物の繁茂を抑制したい路肩25および法面26を平坦に均す。この路肩25の上面に、防草ボード28の一部を防草ボード28の折曲溝37が路肩25と法面26との境界になるように載置し、その後、折曲溝37に沿って防草ボード28のその他の部分を下方に折り曲げて、当該部分を法面26の上面に載置する。なお、防草ボード28の法面26に対応する部分の下端部は、折曲溝37に沿って地面側に折り曲げられ、地中に埋め込まれる。同様に複数の防草ボード28を路肩25および法面26に列状に並べて載置する。このとき、各防草ボード28の側端部同士を重ねて配置する。次に、アンカー部材1の先端部5aを防草ボード28の貫通孔38に挿通し、アンカー部材1を防草ボード28の面に対して略垂直に立てる。この時、ワッシャー20は、接続部14に保持されて落下しないので、ワッシャー20の落下に煩わされることがなく、取り扱いが容易である。この状態で、スパナやレンチあるいは電動インパクト等(すなわち、工具)を用いて右回りに回しながら地面にねじ込んでいく。これにより、アンカー部材1は、地中にねじ山6に対応するねじ谷(雌ねじ)を作りながら埋没(進入)していく。
【0031】
なお、本実施形態のアンカー部材1は、頭部3が六角柱状に形成されると共に、当該頭部3の頂面から凹んだ凹部4の断面形状が六角形状に形成されているため、頭部3の外周面に係合させる開口を有するスパナやレンチあるいは電動インパクト等だけでなく、凹部4の内周面に係合させるスパナやレンチあるいは電動インパクト等を用いて、アンカー部材1を地中にねじ込むことができる。すなわち、2種類のスパナやレンチあるいは電動インパクト等を用いて、アンカー部材1を地中にねじ込むことができる。
【0032】
ここで、この様なアンカー部材1の設置作業(ねじ込み作業)を法面26に対して行う場合には、アンカー部材1の先端部5aを防草ボード28の貫通孔38に挿通した際に、アンカー部材1が法面26に対して略垂直に立った状態になる。すなわち、路肩25(水平面)に対しては、アンカー部材1が傾いた状態となる。このため、先端部5aを防草ボード28の貫通孔38に挿通しただけでは、自立し難く、倒れ易い。そこで、この様な場合には、一方の手でワッシャー20を把持し、アンカー部材1の倒れを防止しつつ、他方の手でスパナやレンチあるいは電動インパクト等を操作して、アンカー部材1を地中にねじ込むようにする。これにより、アンカー部材1の設置作業が一層容易になる。なお、ワッシャー20はねじ本体2や頭部3とは独立して回転可能なので、ワッシャー20を把持した状態でスパナやレンチあるいは電動インパクト等を用いてアンカー部材1の頭部3を回転させたとしても、何らの支障も生じない。また、このような設置作業(ねじ込み作業)は、法面26だけでなく、路肩25(水平面)に対しても同様に行うことができる。すなわち、水平面に対してアンカー部材1をねじ込む際においても、ワッシャー20を把持してアンカー部材1の倒れを防止ながら、スパナやレンチあるいは電動インパクト等によりアンカー部材1の頭部3を回転させることができる。
【0033】
そして、ねじ山6が地中に埋没した状態からさらにアンカー部材1をねじ込ませると、テーパー部7の外周面が地面(地表近くの土)を斜め下方に押圧しながら地中に埋没していく。その後、アンカー部材1の地面への進入が進むと、ワッシャー20の下端(湾曲部21の先端部)が地面に布設された防草ボード28の表面に当接して、防草ボード28を地面側へ押圧し始め、さらにアンカー部材1を地中に締め込むと、ワッシャー20が防草ボード28を更に強い力で押圧する。なお、ワッシャー20が接続部14対して相対的に回転可能なので、ワッシャー20が防草ボードの表面に当接して、摩擦により回転が停止したとしても、アンカー部材1の頭部3をさらに回転させることができる。これにより、アンカー部材1を最後まで容易に締め込むことができる。
【0034】
同様の方法で、防草ボード28の各貫通孔38にアンカー部材1を挿通し、アンカー部材1を地面に固定する。これにより、防草ボード28が地面に対して強固に固定される。特に、防草ボード28同士が重なった部分にアンカー部材を打ち込むことで、防草ボード28間の隙間を無くすことができる。これにより、防草ボード28間への雨水等の進入を抑制することができると共に、防草ボード28間を強固に固定することができる。なお、各防草ボード28の側端部同士を重ねずに、側端同士を面一に配置してもよい。この場合、隣接する防草ボード28の境界部分にテープを貼り付けて、防草ボード28間の隙間を無くすようにする。また、防草ボード28は、地面に敷設する前に、現場において、ハサミ、カッター、糸鋸等の工具を用いて、敷設する場所の構造に合わせた形状(例えば、電柱の外縁に沿うように円状に切欠いた形状等)に加工しても良い。
【0035】
このように、アンカー部材1は、地中にねじ山6に対応するねじ谷(雌ねじ)を作りながら防草ボード28を地面に固定するので、ねじ山6にかかる土圧によってアンカー部材1が不用意に地面から抜けることを抑制できる。これにより、防草ボード28を地面に対して容易かつ強固に固定することができる。すなわち、本実施形態のような軽量な防草ボード28であっても、風により飛散することなく、地面に敷設することができる。また、ワッシャー20は、アンカー部材1の接続部14に回転可能な状態で保持されているので、このワッシャー20により頭部3より広い面積で地面を押圧することができる。さらに、現場において、ねじ本体2の軸5にワッシャー20を通す手間が省け、また、ワッシャー20を手で支えなくても外れて落下することが無い。このため、アンカー部材1の取り扱いが容易になり、防草ボード28の敷設作業が一層容易になる。
【0036】
また、本実施形態のアンカー部材1は、ねじ本体2の軸5の断面を十字状に形成したので、この軸5の溝12に地中の土等が進入することにより、ねじ山6にかかる土圧を大きくすることができると共に、軸5の回転に対する抵抗を大きくすることができる。これにより、アンカー部材1が不用意に地面から抜けることを一層抑制でき、防草ボード28の固定を一層強固にすることができる。また、凸条11によって軸5の強度を向上させることができるため、軸5の径を小さくすることができ、ひいては、アンカー部材1を小型化することができる。
【0037】
さらに、ワッシャー20は、アンカー部材1の先端側保持部16と後端側保持部17との間に、保持軸15に対して相対的に回転可能な状態で保持されたので、簡単な構成でワッシャー20を保持することが可能になり、アンカー部材1の取り扱いを容易ならしめる。また、ワッシャー20の収容空間23内にアンカー部材1の後端側保持部17の少なくとも一部が収容されたので、ワッシャー20と後端側保持部17との間の段差を小さくする(あるいは、無くす)ことができる。これにより、アンカー部材1を地面に設置した際において、当該段差で人が躓くことを抑制できる。さらに、アンカー部材1の外観を美しくできる。
【0038】
加えて、アンカー部材1の先端側保持部16の先端側の面は、ワッシャー20の挿通孔22が当該先端側保持部16の先端側から保持軸15側に向けて通過可能なように、ねじ本体2の後端側から保持軸15側に向けて次第に拡径されたので、ねじ本体2とは別に成形されたワッシャー20の挿通孔22を保持軸15に容易に嵌めることができる。これにより、アンカー部材1の製造が容易になる。また、ねじ本体2の軸5の後端部には、先端側保持部16に向けて次第に拡径されたテーパー部7が形成されているため、アンカー部材1を地中に締め込む際に、このテーパー部7によって地表近くの土を斜め下方に強く押圧することができる。これにより、地中の土等を軸5の溝12内に積極的に進入させることができ、アンカー部材1が不用意に地面から抜けることを一層抑制できる。
【0039】
ところで、アンカー部材1の形状は上記した実施形態に限られない。例えば、上記した実施形態では、軸5が断面十字状に形成されていたが、これには限られず、断面円形状に形成されてもよい。すなわち、凸条および溝が形成されていなくてもよい。また、上記した実施形態では、頭部3が六角柱状に形成されていたが、これには限られず、三角柱、四角柱等の多角柱状に形成することもできる。そして、この頭部の形状に合わせて凹部が形成されていればよい。さらに、上記した実施形態では、防草ボード28を地面に固定する場合を例示したが、これには限られず、植物の繁茂を抑制する一般的な防草シートや雨水等の地面への浸入を防ぐ防水シート等のシート材を地面に固定する場合にも、本発明のアンカー部材1を使用することができる。この場合、ワッシャー20の外周縁が先端側に向けて湾曲されているので、アンカー部材1を地中に締め込む際に、地面から盛り上がって外方へ逃げようとする土等をワッシャー20の内側に留めることができる。これにより、地面を押圧する力を強めることができ、ねじ山6にかかる土圧を大きくすることができる。
【0040】
そして、ワッシャー20の形状は、上記した実施形態に限られない。例えば、
図6に示す第2実施形態のアンカー部材1に保持されるワッシャー20は、収容空間23の外周縁が、後端側保持部17よりも後端側に形成されている。すなわち、収容空間23の軸5の長手方向に沿った方向における寸法(深さ)が、後端側保持部17の厚さよりも大きい寸法に設定されている。この収容空間23内に頭部3の先端側の一部が収容されている。このように構成することで、ワッシャー20と頭部3との間の段差を小さくすることができる。これにより、アンカー部材1を地面に設置した際において、当該段差で人が躓くことを抑制できる。また、アンカー部材1の外観を美しくできる。なお、収容空間23が本発明における空間に相当し、ワッシャー20のうち収容空間23よりも外側の部分が本発明における延出部に相当する。
【0041】
なお、本実施形態では、上記した実施形態と比べて、収容空間23の深さが深くなるため、裏面側の椀状空間内に突出した部分の高さも高くなっている。このため、湾曲部21は、その曲率が上記した実施形態よりも大きい曲率に設定されると共に、その先端部が前記した突出部分と略同じ位置、あるいは、突出部分よりも先端側となるように延在されている。すなわち、湾曲部21の先端部がワッシャー20の最先端部(最下端部)となるように延在されている。これにより、防草ボード28を地面に固定する際に、ワッシャー20の最外周で当該防草ボード28を地面側へ押圧することができる。ところで、収容空間23の深さは、適宜に設定し得る。例えば、収容空間23の深さを当該収容空間23内に頭部3の全体が収容可能な深さに設定すれば、ワッシャー20と頭部3との間の段差を無くすことができる。これにより、人が躓くことを一層抑制できる。なお、その他の構成は上記した実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0042】
ところで、上記した各実施形態におけるアンカー部材1のねじ本体2の長さ、ねじ山6の高さ、ねじ山6の周回数、頭部3の大きさ、ワッシャー20の大きさ、湾曲部21の曲率等の各所の寸法は、適宜に決定することができる。
そして、本発明は上記した実施形態に限らず、特許請求の範囲内での全ての変更が含まれる。