特許第6293208号(P6293208)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6293208
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】壁面用目地装置
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/68 20060101AFI20180305BHJP
【FI】
   E04B1/68 100A
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-138155(P2016-138155)
(22)【出願日】2016年7月13日
(65)【公開番号】特開2018-9341(P2018-9341A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2016年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110365
【氏名又は名称】ドーエイ外装有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 光康
(74)【代理人】
【識別番号】100194261
【弁理士】
【氏名又は名称】栢原 崇行
(72)【発明者】
【氏名】後藤 英夫
【審査官】 富士 春奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−064653(JP,A)
【文献】 特開2008−095393(JP,A)
【文献】 特開2015−071908(JP,A)
【文献】 特開2015−158086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/68
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下の躯体間の目地部を塞ぐ壁面用目地装置であって、前記上下の躯体間の一方の躯体にその上端部が上部のヒンジ部材を介して取付けられ、その下端部が他方の躯体に下部のヒンジ部材を介して取り付けられた複数の枢支部を有するリンク部材と、該リンク部材の前記枢支部にそれぞれ枢支され、かつ左右方向に延びる複数のバー部材と、該複数のバー部材に一端部がそれぞれ固定され、目地部を塞ぐ複数の目地カバーとから成り、前記複数の目地カバーは略クランク状に折り曲げられているとともに、その他端部は折り曲げ加工によりレールが形成され、該レールに端部カバープレートを更に備え、該端部カバープレートは、地震によって上下の躯体が異なる左右方向に揺れ動いた場合に、前記レールから引き出され、目地部を塞ぐことを特徴とする壁面用目地装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は目地部を介して設けられた上下の躯体間の目地部を塞ぐ壁面用目地装置に関す
る。
【背景技術】
【0002】
従来の壁面用目地装置は、左右の躯体間の目地部を塞ぐものであり、例えば、「目地部を介して設けられた左右の建物の目地部側の外壁面に両端部が枢支された中央部に3個の中央枢支部を有する、少なくとも2個以上の伸縮リンク機構と、この少なくとも2個以上の伸縮リンク機構の両側部の中央枢支部に、内側プレートの中央部に固定された枢支ピンで枢支された前記左右の建物側が開口するコ字状のカバープレートと、このコ字状のカバープレートの外側プレートと接触するようにスライド移動して内部へ先端部が挿入された前記少なくとも2個以上の伸縮リンク機構の両端部の枢支部に枢支された端部カバープレートと、前記少なくとも2個以上の伸縮リンク機構の中央部の中央枢支部に枢支された両端部が、前記カバープレートの外側プレートと重なり、スライド移動できる中央カバープレートとからなることを特徴とする壁用目地カバー装置」が知られている。
【0003】
しかし、このような壁面用目地装置では、中間層免震構造や屋根免震構造等の構造物に用いた場合には、地震等によって躯体が揺れ動いた場合に、その揺れ動きを吸収することができず、目地プレート等が破損等してしまう欠点があった。
【0004】
具体的には中間層免震構造の場合には、地震によって非免震階層と免震階層との間の目地部が前後左右だけでなく上下方向にも動きが生じるため、従来の目地カバー装置では、このような三次元的な揺れに対応することができなかった。
【0005】
また、屋根免震構造の場合には、地震だけでなく、強風によっても屋根が上下左右前後方向に動くおそれがあり、屋根部分(免震構造)と構造物本体(非免震構造)との間に従来の目地カバー装置を設置することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−1111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、中間層免震構造や屋根免震構造等の構造物に用いた場合であっても、破損等することなく地震等による揺れ動きを吸収できる壁面用目地装置を提供することを目的としている。
【0008】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の壁面用目地装置は、上下の躯体間の目地部を塞ぐ壁面用目地装置であって、前記上下の躯体間の一方の躯体にその上端部が上部のヒンジ部材を介して取付けられ、その下端部が他方の躯体に下部のヒンジ部材を介して取り付けられた複数の枢支部を有するリンク部材と、該リンク部材の前記枢支部にそれぞれ枢支され、かつ左右方向に延びる複数のバー部材と、該複数のバー部材に一端部がそれぞれ固定され、目地部を塞ぐ複数の目地カバーとから成り、前記複数の目地カバーは略クランク状に折り曲げられているとともに、その他端部は折り曲げ加工によりレールが形成され、該レールに端部カバープレートを更に備え、該端部カバープレートは、地震によって上下の躯体が異なる左右方向に揺れ動いた場合に、前記レールから引き出され、目地部を塞ぐことを特徴とする
【発明の効果】
【0010】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1に記載の発明においては、上下の躯体間に上下のヒンジ部材を介してそれぞれ設けられたリンク部材の枢支部に、バー部材を介して目地カバーを取り付けているので、躯体が前後左右上下方向に揺れた場合であっても、壁面用目地装置は、その揺れ動きに追従するので、破損等することなく目地部を塞ぐことができる。
(2)端部カバープレートによって、上下の躯体が左右方向に揺れ動いた場合に、目地カバーの左右端部から目地部が露出することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1乃至図7は本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図8乃至図11は本発明の第2の実施形態を示す説明図である。
図1】第1の実施形態の壁面用目地装置の正面図。
図2図1の2−2線断面図。
図3】目地カバーの説明図。
図4】地震等によって躯体が異なる左右方向に揺れ動いた場合の動作説明図。
図5】地震等によって躯体が異なる前後方向に揺れ動いた場合の動作説明図。
図6】地震等によって躯体が異なる上下方向に揺れ動き、目地部が広くなった場合の動作説明図。
図7】地震によって躯体が異なる上下方向に揺れ動き、目地部が狭くなった場合の動作説明図。
図8】第2の実施形態の壁面用目地装置の正面図。
図9図8の9−9線断面図。
図10】目地カバーの説明図。
図11】端部カバープレートの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書では図1を基準として左右方向(水平方向)、上(図面上方)下(図面下方)方向という。図2を基準として前(図面右)後(図面左)方向という。
また、本発明において躯体とは、建物、スラブ、エレベーターシャフト、屋根等の建造物をいう。
【0013】
図1乃至図7に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は本実施の形態においては、目地部2を介して設けられた上下の躯体3、4間に設置された壁面用目地装置である。本実施の形態においては、上方の躯体を一方の躯体3、下方の躯体を他方の躯体として説明する。
【0014】
本実施の形態において、一方の躯体3は、中間層免震構造の建造物の上階部分の躯体であって、地面に固定された他方の躯体4と免震ゴム等(図示せず)で接続されている。
この壁面用目地装置1は、一方の躯体3と他方の躯体4間に上部のヒンジ部材5を介して設けられた複数の枢支部6を有するリンク部材7と、該リンク部材7の枢支部6にそれぞれ枢支された複数のバー部材8と、該複数のバー部材8に一端部9aがそれぞれ固定され、目地部2を塞ぐ薄板状の複数の目地カバー9とで構成されている。
【0015】
前記リンク部材7は、左右方向に所定間隔を有して複数個設けられ、本実施の形態においては、左右方向に2つのリンク部材7が設けられている。
【0016】
このリンク部材7はパンタグラフ状で、本実施の形態においては、リンク部材7が伸縮しても左右方向に位置変位しない部位を枢支部6としている。すなわち、上下端部及びリンク部材がX状に交差する部分を枢支部6としている。
【0017】
このリンク部材7の上下の端部はヒンジ部材5を介して上下の躯体3、4に取り付けられている。このヒンジ部材5は前後方向に回動可能なものである。
【0018】
複数のバー部材8は角柱状又は角パイプ状の部材で、本実施の形態においては、角柱状のバー部材8となっている。このバー部材8は、左右のリンク部材7の枢支部6に枢支され、略水平に左右方向に延伸するように固定される。なお、左右方向の寸法は、上下の躯体3、4の幅と略同じであることが望ましい。
【0019】
目地カバー9は、略クランク状に折り曲げ加工された金属板で、その一端部9aが前記バー部材8にそれぞれ固定されている。この目地カバー9は、その他端部9bが隣り合う目地カバー9と重なりあって目地部2を塞いでおり、その長さは、目地部が広くなった場合でも隙間が生じない程度の長さとなっている。
【0020】
目地カバー9は本実施の形態においては、上方から下向きに固定されているが、最下部の目地カバー9(下部の枢支部6に固定される目地カバー9)は、上向きに固定されており、最下部の目地カバー9とその直上の目地カバー9は、目地部が狭くなっても他端部9bが他の目地カバー9に衝突せず、かつ、目地部2が広くなった場合でも目地部2が開口しない程度の寸法となっている。
【0021】
なお、目地カバー9を上向きに固定することも可能ではあるが、このように設置すると雨水等が目地カバー9の間から内側へ進入するおそれがあるため、目地カバー9はその他端部9bが下向きになるように設置することが望ましい
本実施の形態においては、最上部と最下部の目地カバー9の一端部側9aと躯体3、4の間にはシール剤10が充填されている。このシール剤10は雨等が目地カバー9の内側に入り込むことを防止でき、前記ヒンジ部材5の回動等を妨げないような軟質の樹脂材を用いることが望ましい。
【0022】
最下部の目地カバー9と他方の躯体4間にシール剤10を充填しない場合には、最下部の目地カバー9を下向きに固定し、目地カバー9の内側の面(目地部側の面、後側の面)が他方の躯体4の壁面と接するように配置してもよい。
【0023】
地震等によって上下の躯体3、4が異なる左右方向に揺れ動いた場合には、図4に示すように、リンク部材7が上下の端部の枢支部6を支点に左右方向に回動し、その揺れ動きを吸収する。
【0024】
地震等によって上下の躯体3、4が異なる前後方向に揺れ動いた場合には、図5に示すように、リンク部材7の上下端部に設けられたヒンジ部材5を支点に、リンク部材7が前後方向に回動し、その揺れ動きを吸収する。
【0025】
地震等によって上下の躯体3、4が異なる上下方向に揺れ動き目地部が広くなった場合には、図6に示すように、リンク部材7が伸長し、その揺れ動きを吸収する。この時隣り合う目地カバー9の間に隙間が生じないように目地カバー9の長さを設定するとよい。
地震等によって上下の躯体3、4が異なる上下方向に揺れ動き目地部が狭くなった場合には、図7に示すように、リンク部材7が縮小し、その揺れ動きを吸収する。
【0026】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、図8乃至図11に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0027】
図8乃至図11に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、他端部9bにレール部11を形成した目地カバー9Aを用いるとともに、このレール部11に端部カバープレート12を備えた点で、このような壁面用目地装置1Aにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0028】
目地カバー9の他端部9bは、折り曲げ加工(ヘミング曲げ)により、レール部11が形成されており、このレール部11には、摺動可能に端部カバープレート12が収納される。
【0029】
この端部カバープレート12は、金属製の板で、その本体部分12aが前記レール部11に係止状態で摺動可能に取り付けられており、突出端部には折り曲げ部13が形成され、平面視略L字状となっている。上下部分の端部カバープレート12の折り曲げ部13は、一方の躯体3又は他方の躯体4の壁面に係止され、地震によって上下の躯体3、4が左右方向に揺れ動いた際に、目地カバー9から引き出される。
【0030】
また、この折り曲げ部13は隣り合う端部カバープレート12の折り曲げ部13と接続され、地震によって上下の躯体3、4が左右方向に揺れ動いた際に、これらの端部カバープレート12が一体となって引き出される。すなわち、震によって上下の躯体3、4が左右方向に揺れ動いた際に、壁面用目地装置1の左右端部が段差状にならないとともに、この部分に目地部2が開口することを防止できる。
【0031】
この端部カバープレート12は、目地カバー9から引き出された場合であっても脱落しない程度の寸法に構成され、スプリング等の付勢手段(図示せず)により常時中央部側に付勢されている。このため、地震等による揺れ動きが収まった場合には、引き出された端部カバープレート12は、自動的に元の位置に復帰する。
【0032】
なお、本発明の実施形態においては、中間層免震構造の構造物を例に説明したが、屋根免震構造の建物と屋根ユニットの間の目地部等に本発明の壁面用目地装置を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は壁面用目地装置を製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0034】
1、1A:壁面用目地装置、 2:目地部、
3:一方の躯体、 4:他方の躯体、
5:ヒンジ部材、 6:枢支部、
7:リンク部材、 8:バー部材、
9:目地カバー、 10:シール剤、
11:レール部、 12:端部カバープレート、
13:折り曲げ部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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